介護認定結果の通知を受け、いざサービスを利用・継続しようと思ったものの、 「希望するサービスが受けられない」 「介護の手間は増えているのに介護度が低くなり、今まで受けていたサービスが受けられなくなった」 ということが起きることがあります。 状態に適した認定結果をもらうために、介護認定調査時のポイントについて説明します。 介護認定申請とは 介護保険によるサービスを利用・継続するには、要介護認定の申請を行う必要があり、介護保険申請書が必要となります。 40~64歳までの第2号被保険者が申請を行う場合には、要介護状態等の原因である身体上及び精神上の障害が特定疾病によることが要件とされています。 認定調査とは 介護認定には、認定調査員が行う「認定調査」と主治医が作成する「主治医の意見書」の2つの書類が必要になります。 認定調査は新規申請を除き、介護認定有効期間の満了の日の60日前から満了の日までに市町村へ提出します。 申請後は、市区町村の職員または委託を受けた介護支援専門員が自宅や施設などを訪問し、心身の状況に関する調査を行います。 主治医意見書の作成については市区町村が主治医に依頼をしますが、主治医がいない場合は、市区町村の指定医の診察が必要です。 認定調査員とは 令和2年4月 1日 より指定市町村事務受託法人における認定調査は介護支援専門員が行うことを基本とはしています。 しかしm介護支援専門員その他の保健、医療または福祉に関する専門的知識を有する者が行うこともできるようになりました。 厚生労働省「要介護認定等の実施について」の一部改正について.pdf 認定調査内容とは 認定調査は74項目の基本調査と特記事項からなり、認定調査の74項目は大きく次の5つの群と3軸の判定から成り立ちます。 認定調査の5つの群 ・1群 身体機能・起居動作 ・2群 生活機能 ・3群 認知機能 ・4群 精神・行動障害 ・5群 社会生活への適応 判定基準の3軸 ・能力を確認して判定する ・介助の方法(生活を営む上で他者からどのような介助が提供されているか) ・障がいや現象(行動)の有無 これらの5つの群を3軸の内容を組み合わせて調査することにより、タイムスタディに基づく樹形モデルから、申請者にかかる介護の手間としての「要介護認定等基準時間」が算出されます。 介護度が決定する仕組み 介護認定は一次判定結果をもとに二次判定で審査され決定します。 一次判定とは、調査結果および主治医意見書の5項目をコンピューターに入力し、全国一律の判定方法により要介護度が判定されます。 一次判定の結果と主治医意見書に基づき、介護認定審査会による要介護度の判定が行われることを二次判定といいます。 そのため、一次判定結果の内容で例え要介護状態であっても、審査会で要支援状態になることがあります。 認定審査会に伝わる特記を書いてもらうには 判定基準の能力判定および介助の方法については、原則として実際に出来るか、出来ないか、介助が行われている、いないかで選択します。 認定調査時に普段は行えていない動作を無理に行うことや、出来ていない事も自分で行っていると答えてしまう可能性があります。 本人の返答が事実と違う場合も想定されるため、調査員に伝えやすいよう本人の死角になる位置で本人の言った言葉に対し、首を横に振るなどジェスチャーで違うことを気付いて貰うとよいでしょう。 本人の前で事実を説明することで、調査後に本人と家族がトラブルになる事もあるので、調査後に電話で再確認して貰うようメモを調査員に渡す事も効果的です。 実際に試行した結果と日頃の状況が異なる場合は、一定期間(調査日よりおおむね過去1週間)の状況において、より頻回な状況に基づき選択されます。 家族が同席し日頃の動作について調査員に説明することが望ましいでしょう。 認定審査会で検討されるケースとは 調査時に行えている行為が適切でない場合や、介助項目における「見守り等」や「一部介助」「全介助」といった選択肢は、介助の量を意味していません。 具体的な介助の量については、その内容が具体的に特記事項に記載されていることが必要です。 例えば、麻痺や疼痛などがある独居高齢者の更衣動作の場合、介助をする人がおらずベッド上で1時間程度かけている、認知症高齢者の場合では着衣動作自体は可能ではあるが、同じ衣類や汚れた衣類を何日も実際には着ている、下着が後ろ前や裏返しで着用しているなどの場合もあります。 また、有無の項目(BPSD関連)は、その有無だけで介護の手間が発生しているかどうかは必ずしも判断できません。 介護の手間を二次判定で適切に評価するためには、特記事項に記載されている介護の手間を、頻度もあわせて検討する必要があります。 介護者による介助がBPSDを引き起こしている場合などもあり、介助方法が、不適切であると認定調査員が判断する場合は、特記事項にその理由と適切な介助について記載し、介護認定審査会の判断を仰ぎます。 BPSD(行動心理症状)とは、記憶障害や見当識障害といった認知症の中核症状に伴ってみられる二次的な症状を指します。 不安や混乱が続くことに適応しようと模索して、強い不安・混乱・自尊心の低下等から徘徊や興奮、暴力行為といった様々な問題が起こってしまうのです。 実際に行われている介助が不適切と考える状況 ・独居や日中独居などによる介護者不在のために適切な介助が提供されていない場合 ・介護放棄、介護抵抗のために適切な介助が提供されていない場合 ・介護者の心身の状態から介助が提供できない場合 ・介護者による介助がむしろ本人の自立を阻害しているような場合 介護の手間の判断は、一部介助であるか全介助であるかといった選択だけで行われるものではありません。 介助をするほうが本人にとって適切な介助であったり、介助者にとっても介護の手間がかからないものの、本人のこだわりや介護拒否から見守りや声掛けなどをしながら本人の意向に配慮して変更するなどの対応が求められる場合もあります。 このような細かい内容を認定調査員に説明することが必要です。 介護認定審査会とは 介護認定審査会とは、市町村の附属機関として設置され、要介護者などの保健、医療、福祉に関する学識経験者によって構成される合議体です。 介護認定審査会複数の市町村が共同で設置することも可能になっています。 認定審査委員会のメンバーは、医師や歯科医師・薬剤師・看護師・保健師・歯科衛生士・介護福祉士・社会福祉士・介護支援専門員などの有識者が市町村長から任命されます。 認定審査会では認定調査員が作成した調査書からコンピューターによる一次判定結果を元に、主治医に意見書をもとに介護度を決定することとなります。 そのため、実際に申請者から直接、審査に必要な情報を記載する認定調査員と主治医は重要な立場と言えるでしょう。 介護度の違いによるサービスへの影響 要支援2と要介護1、要介護1と要介護2では使えるサービスに大きな違いが出てきます。 例えば、要支援2と要介護1では訪問介護や通所介護の利用回数が大きく異なるので注意が必要です。 要支援状態になると訪問介護では通院乗降等介助や通院介助といった受診に伴うサービスや、 看護小規模多機能型居宅介護の利用が出来なくなります。 また、施設系サービスでは老人保健施設への入所も出来なくなります。 また、要介護1と要介護2では車椅子や特殊寝台などの福祉用具貸与など、生活環境に与える影響が大きいため、注意が必要です。 要支援状態から介護状態に切り替わるポイント ・認知症の有無 ・状態の安定性 運動機能だけでなく思考力や理解力の低下がみられるなど、認知症の疑いが高いと判断された場合、一次判定で要支援2であっても要介護1と判定されることや、主治医の意見書などの調査により 半年以内に状態が大きく変わる可能性があると判断された場合、要介護1と判定されることがあります。 認定審査会の簡素化及び有効期間の延長について 平成30年4月1日以降、一定の要件を満たす場合、認定審査会の簡素化が可能となりました。 簡素化の要件は以下の6つです。 簡素化の要件 ・第1号被保険者であること ・要介護更新申請であること ・一次判定における要介護度が、前回認定結果の要介護度と同一であること ・現在の認定有効期間が12か月以上であること ・一次判定における要介護度が「要支援2」又は「要介護1」であり、状態の安定性判定ロジックの判定結果が「不安定」でないこと ・一次判定における要介護認定等基準時間が、一段階高い要介護度から3分以内でないこと 簡素化により審査会の審議が迅速に対応できるので、多くの件数の認定結果を出せる事となります。 しかし、認定調査の特記事項などの詳細な審査が行われなくなるため、申請者の不利益・不公平につながる可能性があるとの見解もあります。 認定結果や身体状態変化に併せ都度、区分変更なども検討する事が望ましいでしょう。 まとめ 介護保険では、要介護度に応じて受けられるサービスが決まっているため、適切な介護認定結果を受けられるよう認定調査時には家族が同席して普段の生活について確実に調査員に説明しましょう。 介護認定審査会における一次判定からの判定の変化には、認定調査の69項目と併せ主治医意見書による5項目が認知症の有無や病状の安定性が反映されます。 介護認定結果への反映の為には明確な根拠と具体的な「介護の手間」と「頻度」を特記事項に記載し、認定調査員が適切と考える介助の方法と実際に行われている介助の方法との判断の違いを、介護認定審査会で検討して貰えるよう、その理由や事実を特記事項に記載して貰う事が重要です。 最後までお読みいただきましてありがとうございます。
高齢化が進む中、多くの人は介護を必要とする状態になっても、可能な限り住み慣れた自宅や、地域での生活を希望する事が多いです。 しかし、単身世帯や高齢者のみの世帯増加もあり、行政や関係者の力だけではさまざまなニーズに対応する事に限界があります。 介護保険などの支援を受けている高齢者はもちろん、介護保険を受けていない高齢者高齢者が住み慣れた地域で生活を続けるにはインフォーマルな支援が重要です。 ここではオススメの社会資源や保険外サービスについて紹介します。 インフォーマルなサービスとは インフォーマルなサービスとは、公的機関や制度に基づく専門職によるサービス(フォーマルサービス)以外の支援の事をいいます。 インフォーマルサービスは家族や友人、地域住民、ボランティアなど制度に基づかない援助ですが、 補えない支援や住み慣れた地域と事情に応じた支援ができます。 インフォーマルの種類 ・家族や友人 ・ボランティア ・民生委員 ・商店 社会資源は、地域包括ケアシステムを基幹としたさまざまなサービスが誕生することにより、高齢者の細かなニーズに対応できる環境を整備することができます。 民間事業者が提供するサービスは全額自己負担ですが、法的規制が少なく公的サービスにない細やかなニーズに対応できるため、希望するサービスを受けることができます。 高齢者を取り巻く社会的問題 高齢者を取り巻く社会的問題として、独居による孤独死や買い物難民、認知症高齢者の増加などが問題となっています。 高齢者が住み慣れた自宅や地域で住み続けるうえでの困りごととして、日本能率協会総合研究所の「高齢者未充足ニーズ調査 2019年」の結果による高齢者の生活全般に関する代表的な困りごと57項目は以下のとおりです。 57項目の代表的な困りごと ・文章を読んでいて理解するのに時間がかる ・相手の言っていることが、すぐに理解できない ・何をしようとしたのか忘れる ・コンロの火の消し忘れが不安になる ・買い物に行っても必要なものを買い忘れる ・買い物がおっくうと感じる ・薄暗くなると段差が見えず怖い 等 このように、認知機能の低下や身体的変化が危惧されます。 インフォーマルサービスの一例 インフォーマルサービスには以下のようなものがあります。 ・病院や介護施設から帰宅するときの介助 ・民間企業による食事や入浴、排せつ介助や見守りなど ・声かけや傾聴ボランティアによる話し相手 ・地域サロン ・各種機関による電話相談 など インフォーマルサービスのメリットとデメリット インフォーマルサービスのメリットは、支援内容に縛りがないため、幅広い支援を受けられることです。 そのため、フォーマルサービスでは対応できないような細かいニーズを解消できます。 ボランティアなどが運営しているため、金銭的に厳しくないものも多いです。 しかし、フォーマルサービスのように専門性のあるサービや安定た支援を受けることができません。 また、インフォーマルサービスは全額負担になるため、サービス内容によっては、高額の介護費用がかかることがあります。 高齢者の悩みに寄り添ったITツールが必要不可欠 健康・福祉分野では健康づくりの総合的推進や持続可能な介護保険制度の運営、介護サービスの充実(介護離職ゼロの実現)、認知症高齢者支援施策の推進などが実施されています。 反面、インターネットによる情報収集やSNSなどコミュニケーションがオンラインでおこなわれるなか、高齢者の情報リテラシーの低さにより格差が生まれており、地域に取り残されている高齢者が増加しています。 高齢者におすすめのIT機器 身体的に不自由があっても、適したITツールを活用することで生活の困りごとを解消できます。 高齢者は身体的機能低下による活動範囲の縮小や認知機能低下により、コミュニケーションスキルに不安を感じているものです。 ここでは、高齢者自身が問題を解決出来るようスムーズに扱えるIT機器について紹介します。 音声で情報を入力できる Alexa Echo Show Echo Showは、15.6インチフルHDのディスプレイでビデオ通話ができるので、離れて暮らす高齢の家族をサポートが出来るだけでなくコミュニケーションを緊密にしてくれます。 そのほか、ウィジェット機能で、天気やメモ、買い物リスト、カレンダー、お気に入りのスマートホームなど、さまざまな情報をホーム画面に配置できます。 また、ビジュアルID機能にも対応しているので、自分だけにカスタマイズされた情報をチェックすることも可能です。 機能性だけでなく声をかけるだけであらゆる操作ができるので、機械の操作が苦手な高齢者世代でも直感的に使用できます。 見守りに活用 Echo Showは、呼びかけ機能やビデオ通話でいつでも実家とつながる事ができるので、安否確認・コミュニケーションツールとして活用できます。 セキュリティカメラを実家に設置しておけば、Echo Showシリーズのデバイスを介して、家族と会話できるだけでなく、モーション検知やライブ映像などの見守り機能を利用し転倒や徘徊などの早期発見ができます。 スケジュール管理 通院日や介護サービスなどの予定などの情報をひと目で確認できるよう、ホーム画面に表示するウィジェットを選択できます。 服薬を忘れてしまう高齢者に対して、Alexaに「朝食後に薬を飲む、をリマインドして」と声をかけると、薬の飲み忘れをしないように時間になったらリマインドしてくれます。 声掛けにより飲み物忘れを回避することが可能です。 買物や調理の準備をお手伝い 店舗先までの移動に不安があっても、Echo ShowがあればAmazonで買い物のサポートができます。 買い物忘れもAlexaなら、足りない材料を買い物リストに追加しておくことで買い物中にスマホのAlexaアプリで確認できたり、いつもAmazonで買っている常備品を声だけで再注文できます。 調理面でも冷蔵庫にある食材で献立に不安があっても、Alexaでクックパッドのレシピ検索を活用したり、Echo Show 15の大きな画面でレシピを見ながら調理できます。 スマートホームを一元管理 Alexaに対応する別売りのライト、エアコン、ロボット掃除機などのスマート家電やスマートリモコンを使えば、旧来のリモコン家電の多くがEcho Show で操作可能です。 対応するスマートホームデバイスをホーム画面に追加して手軽に操作できるだけでなく、それらすべてのデバイスをダッシュボードで一元管理することもできます。 そのため、ベッド上で過ごすことが多い寝たきりの高齢者でも、自室の環境を整える事が出来るので介護負担の軽減になります。 高齢者を支える地域の活動 地域のさまざまな生活課題に対して課題の把握から解決のため、関係機関や団体などと連携することで具体的な方向性を示すことができます。 認知症カフェ 認知症カフェには認知症を患っている方だけでなく、そのご家族の方や地域の方など誰でも参加できる場所で、「オレンジカフェ」と呼ばれることもあります。 認知症カフェは認知症の方々が触れ合うだけでなく、専門家に相談することや、地域の方々と情報交換をする場です。 参加費用は数百円であることが多いので、金銭的な負担はあまりありません。 認知症カフェの開催日は地域によって異なるため、各自治体のHPなどで調べてみるとよいでしょう。 食事の宅配サービス 近年では食事の宅配サービスが増えてきました。 食事配達サービスを利用することで、食事を準備することや片づけをしなくてよくなります。 介護の必要な家族の負担軽減だけでなく、高齢者の一人暮らしや高齢者のみの世帯にもおすすめのサービスです。 企業シャトルバスやスクールバスを活用したコミュニティバス事業 コミュニティバス事業は、公共交通空白地の地域住民の移動手段の確保として活用できます。 高齢に伴い免許を返納した方や、路線の削減や廃線により通院や買物などの移動手段が困難になっている方は大勢います。 次世代モビリティとして企業のシャトルバスやスクールバスとして活用されている車両に一般利用者が混乗することで、移動に係る問題の解決と利便性の充実を図れます。 また、タクシーを利用する場合、配車アプリと併せて活用する事によって、出先でも正確な乗車位置を伝える事ができ、目的地までの乗車料金や距離が把握できるため、予定や予算などの心配がなく使用できます。 生活支援コーディネーター 生活支援コーディネーターは、高齢者やその家族が暮らしやすい環境を実現するために、地域の方々と支え合う仕組みを考え、課題解決をします。 生活支援コーディネーターの役割として生活支援ニーズの把握をしたり、地域でボランティアとして活動する方の養成や支援を行うほか、高齢者自身がこれまでの経験を活かし地域を支えてくれる支援のマッチングなどインフォーマルな取り組みを繋げてくれます。 まとめ インフォーマルなサービスは介護保険制度のルールに縛られることなく、介護保険対象者以外の方も利用することができます。 高齢化が進む中で、専門職による人材不足が懸念される中、自由にサービスを選択できるインフォーマルにも目を向け、高齢者自身が活用できるIT機器を活用することで生活レベルは大きく変化するでしょう。 制度の中でできる、できないにこだわるのではなく、自分の地域に地域になにがあるのかを把握すると共に各地域の情報を参考に地域特性に応じたインフォーマルを作り出すことが重要です。 上記に記載したものだけでなく、さまざまなサービスがありますので、興味のある方は一度調べてみることをおすすめします。 最後までお読みいただきましてありがとうございます。
2000年に介護保険制度が創設され、20年以上が経過しました。 全国に多くの介護施設が作られてきた中、残念ながら入居や利用に注意すべき問題のある介護施設も見受けられます。 ここでは、ご家族の方が介護施設を見分ける確認ポイントをお伝えしていきます。 確認したい4つのポイント 1,「見学お断り」の施設は要注意 施設の利用を検討する前に、見学ができるかどうか施設側に確認してみましょう。 見学のお願いをした段階で、「うちの施設では、見学は無理です」と言われたら、その施設は要注意です。 施設側としては「入居者のプライバシーを守るため」と断りをいれてくることが多いです。 しかし介護保険などの公的資金を使っている施設であれば、国民には見る権利があります。 入居者のプライバシーを守りながら施設を見学できる方法を考えていない施設というのは、その時点で問題です。 見学を拒否する背景として ・劣悪なケアをしている ・身体拘束など、入居者や利用者が自由に生活できない といったことが挙げられます。 しかし、最近は新型コロナの影響で、見学を制限する施設もあるため、「見学できないから、悪い施設だ」とは一概には言えません。 ですが良い施設は、以下のような制限を設けることで、見学者への対応を可能な限り行っています。 ・予め見学可能な日時を伝える ・見学者には検温と消毒、マスクやディスポグローブを着用してもらう ・入浴場など、入居者や利用者がいない場所だけでも案内する 逆に、なんの工夫も交渉もなく見学を一切お断りする施設は要注意です。 その様な施設は候補から外しましょう。 2,私物の持ち込めない介護施設は、認知症の対応ができていない 施設内の見学ができないのであれば、私物を持ち込めるかどうか確認してみましょう。 なぜなら、私物は認知症の人にとって「自分を保つための必需品」だからです。 住み慣れた家から突然、無機質な部屋にベッドだけの空間に移動されたら誰だって不安になりますよね。 そんなとき、私物があることで、心の不安が軽減されるのです。 「私物が多いと、他の入居者とトラブルになったりしないの?」 と、不安に思う人もいますよね。 確かに認知症の中には「私の物だ」と考え、勝手に他人の物を取ることがあります。 しかしそのトラブルを防ぐのは、介護職員など施設側の役割です。 知識があり経験豊富なスタッフであれば、私物を持ってくる人に対しては、 ・物を取られないよう、私物は部屋から出さないように依頼をする ・食堂など皆が集まる場所で使う場合は、必ず名前を書いてもらうようお願いする と、事前に説明をします。 また物を取りやすい入居者や利用者がいる場合は、その人と距離を取ったり、私物を持ってきている人には状況を説明して、なるべく私物を共用スペースへ持ってこないように伝えます。 良い介護施設であれば、職員は自然とこの対応を取ることができます。 「私物を持ってこられると、困ります」と断る施設は、スキルがない職員が多いと考えた方が良いです。 3,機械浴を自慢する介護施設は要注意 介護施設を見学するとき、特にチェックしてもらいたいのが「お風呂場」です。 介護施設の中には、ストレッチャー浴やリフト浴などの機械浴(特殊浴槽)を自慢そうに見せているところもあります。 しかしこういう施設は、考え方が古いです。 ストレッチャーに乗せられた入浴は、怖いし恥ずかしいものなのです。 中には「こんな身体になってしまった」と情けなくなり、ますます閉じこもりがちになってしまう方もいらっしゃいます。 また一般浴に対しても、プールのように広い埋め込み式の浴槽を使っている施設は、古い考え方が残っていることが多いです。 埋め込み式の浴槽は、バリアフリーという言葉を誤解し、段差をまたがないですむようにと作られたものです。 浴槽が広いと掴まる場所がないので溺れそうになります。 また階段の昇降ができる人というのは、施設の入所者では滅多にいません。 そのため「自分の家ではお風呂に入れていたのに、施設に入所したら入れなくなった」という事態が起こりうるのです。 最近の一般浴は、家庭と同じような浴槽に、浴槽と同じ高さの洗い台を設置して入ることが多いです。 浴槽を跨がず片足ずつ浴槽に入れれば、立てない人や歩けない人でも、家庭と同じように入ることができます。 4,施設の運営状態を公表していない事業所は、要注意 介護施設を「終の棲家」と考えている場合、運営している事業所の財務状況や運営状態をチェックしておきましょう。 経営状態の良くない事業所が運営している施設に入居した場合、運営事業者が変わってサービスの質が低下したり、最悪の場合倒産によって退去を求められる場合があるからです。 最近の事業所は、ホームページで決算書などを公表していることが多いです。 視点を変えれば、運営状態を入居希望者に公表しない事業所は、情報公開に前向きでないとも取れるので、注意しましょう。 更に確認したい3つの情報とは!? 事業所が公表している情報で着目してほしい情報は、下記の3つです。 1,入居率 施設のオープンから数年経っているのに入居率が極端に低い場合、施設に何らかの問題がある可能性があります。 2,退去者数 入院や死亡以外に退去者数が多い施設は、トラブルや劣悪な環境など、様々な原因が潜んでいる可能性があります。 3,職員の離職率 職員の離職率が高い施設は、労働環境が良くなかったり、サービスの質が低いことが考えられます。 もしトラブルが起こったら、どうすれば良い? ここまで、注意すべき介護施設のポイントをお伝えしてきました。 しかし、どんなに吟味して選んだ介護施設でも、トラブルは発生するものです。 場合によっては、退去を求められる可能性もあります。 せっかく時間や手間をかけて選んだ施設を、離れたくないという人もいますよね。 そこで、ここではトラブルが起こったときにどうすれば良いか、お伝えしていきます。 1,施設に相談する 利用している中で気になる点や些細なことがあれば、現場スタッフなどの施設に相談しましょう。 現場レベルで解決できれば、大きなトラブルへの発展を防ぐことができます。 状況が改善されない場合は、施設や運営会社へ訴えましょう。 2,第三者へ相談する 施設や運営会社に相談しても解決されない場合や、苦情が言いにくい場合もあります。 そんなときは、第三者へ相談するという方法をとりましょう。 気軽に相談できる電話相談もありますし、市区町村の苦情相談窓口もあります。 連絡先は、施設の契約書や重要事項説明書に「苦情相談窓口」と明記されていることが多いので、予め確認しておくとよいでしょう。 3,国保連へ申し立てる 最終手段として「国保連(国民健康保険団体連合会)」へ申し立てましょう。 国保連は、都道府県と市町村、国民健康保険連合組合が運営している法人です。 国保連では介護相談窓口を設置しており、介護保険サービスについての苦情を受け付けています。 市区町村には介護保険施設の指定を取り消す権限があり、国保連は介護サービス事業者に対して調査や指導、助言を行う権限があります。 トラブルの内容や改善状況によっては、住み替えの検討が最善策となる可能性もあるということも、考えておくと良いです。 まとめ ・施設見学お断りの介護施設は、劣悪な環境など他人に見せられない部分があるのかも知れない ・私物を持ち込めない介護施設は、認知症の対応が上手くできない施設であることが多い ・機械浴を自慢する介護施設は、昔ながらの介護のやり方をしている ・施設の運営状態を公表していない施設は、情報公開に消極的であったり、運営状態が悪いことが多い ・トラブルが起こったら、施設に相談する。 ・施設に言いにくい場合は、市区町村の苦情相談窓口や国保連の介護相談窓口へ相談する。 最後までご覧いただきましてありがとうございます。
訪問介護サービスの一つに、利用者の病院受診の一連を介助する「通院介助」があります。 今回は通院介助一連に纏わるトラブルや対応について、事例を交えながら紹介します。 通院介助とはどんな介助? ここでは通院介護がどのようなサービスなのかを解説します。 病院受診する為に利用者の移動支援を行う介護サービスです。 訪問介護サービスには、大きく分けて「身体介護」「生活援助」「通院等乗降介助」の3つに分かれます。 通院介助は下記の図の通り①~⑤の対応の仕方があり、其々の介助に分けられています。 ①と②に代表されるのは介護タクシーで、介護資格のある運転手が病院への行き帰りの対応を行うものです。 一般的に通院等乗降介助と呼ばれるもので、病院受診前の準備や外出する為の身体介護(移動・移乗・整容・更衣・排泄等)も含まれます。 ③は病院へ受診する為の外出介助で、帰宅まで訪問介護のためヘルパーが対応しますが、院内は基本病院側の対応となる為、介護保険適用外となります。 例外として、病院側が対応できない、院内での家族付き添い対応ができない、利用者の心身不安定による見守りや介助を要する等、理由によってはケアマネージャーが事前確認の上で訪問介護にて院内介助が行える場合もあります。 ④の様に介護度が4~5と重度で相当時間数の身体介護を必要とする場合は、病院受診前の準備や外出する為の身体介護(移動・移乗・整容・更衣・排泄等)も、通院等乗降介助の乗車前や降車後介助の一環とならずに身体介護中心型という形になります。 ⑤は要介護認定(介護度1~5)の利用者が病院受診をする前と後に、受診に関連する介助ではない別の身体介護中心の介護を30分~1時間程度以上のサービスを行う場合が対象となります。 ①~⑤に関して、要介護度認定を受けた利用者が病院受診前後の介助を訪問介護サービス(介護保険)で対応し。病院内の対応は医療機関である病院側(医療保険)が対応する事が前提です。 但し③でも述べましたが、例外として院内介助も介護サービスとして対応できるケースもあります。 要支援の人はどうするの? 基本的に通院介助は要介護認定を受けた利用者でケアマネージャーがケアプランに通院介助が必要であると記載され、訪問介護を計画された場合のみです。 要支援1~2の認定を受けた利用者は、通院等乗降介助は介護保険サービスとして算定できません。 要支援は簡単に言うと「基本的に日常生活を送る能力は持っているが、支援を必要する部分もある」という事を示しいます。 そのため、要支援者の介助は、 「自分でできる事は自分で行う」 「できない事のみ支援する」 「できない事が少しでもできる様になる」 という利用者が自立を維持しながら日々を過ごせる為の支援であると考えると分かりやすいかもしれません。 要支援者と認定された場合、「移動」という動作・行動が自身でできる状態にある事が多く、通院に関してもヘルパーが介助する必要性は無いと判断される傾向にあります。 また要支援は、日常生活支援総合事業の訪問型サービス(旧:介護予防訪問介護)という形でヘルパーがサービスに入る事もありますが、週に1~3回程度で月に4~13回程度入るといった回数が決まっています。 月に回数が定められている中で、病院受診が毎週あるとは考えづらい点や、病院までの移動にヘルパーの介助の必要性を問われる点からも、要支援の認定を受けた利用者がヘルパーによる通院介助を受けづらいとされるのです。 要支援であっても病院受診をするのに不安な面がある場合等、理由によっては支援を受ける事ができる例もあります。 (例1)要支援認定であるが、現病歴による後遺症があり、身体の動きが悪く、躓いたり転倒する危険性があり、日常生活において支障がある場合。 (例2)入院していた要支援の利用者が退院し、退院後の日々の生活において身体状態の不安定がみられ、支援を必要とする場合。 他にも色々なケースがありますが、いずれもヘルパーによる支援が必要とされる場合は、ケアマネージャーや包括支援センター、市町村等の自治体と相談や協議を行い、その上でケアプランに必要性を謳う事で可能となる事もあります。 但し要介護の利用者の様な通院介助ではなく、外出支援(移動支援)という形での対応です。 そのため、介護タクシー(介護保険適用)は利用できない代わりに福祉タクシー(介護保険の適用無し)で対応する等の対応になります。 あくまでも「支援」であり「介助」では無い事と、基本的に要支援対象者は通院介助は介護保険では認められない傾向にあると考えた方が良いでしょう。 利用者の思惑、ヘルパーの困惑 通院介助を行う上でサービスの内容を確認するのは当然です。 例えば、訪問介護側と利用者側で「通院介助にかかる費用」や、「どこまで介助が可能なのか」「病院受診後ついでに、と急な依頼への対応」など、色々と確認しなければいけない事があります。 ケアマネージャーからも通院介助をケアプランに追加する際は事前に説明等を行いますが、介護を行う側と受ける側双方が認識を共有しておかなければなりません。 <下記の図にある、様々なトラブルに繋がってしまう言動事例も参照下さい。> 移動手段もいろいろ、意外とお金もかかる? 「病院受診は訪問介護でヘルパーが対応するから大丈夫だ。」と、受診に関する一連の行動や必要とされる介護のみにクローズアップされがちです。 しかし、介護保険とは別にお金がかかる場合もある事を忘れてはいけません。 勿論、ヘルパーも通院介助においてできる事・できない事の認識をしておく事は絶対です。 例えば、利用者側からすれば「訪問介護サービスでの介護利用だから1割負担(又は2割負担)で済む」との認識をされている場合もあります。 間違いでは無いのですが、通院等乗降介助では「利用者宅から車両で病院へ移動し、受診手続きや薬の受取り等対応しまた利用者宅へ移動する介助」に該当する介護サービスのみ、介護単価で行われます。 当然、車両運賃は介護サービスには含まれません。 介護タクシーでは、通院等乗降介助の介護サービス費とタクシーとしての運賃との合算で請求されます。 介護タクシーを利用しない場合でも、ヘルパーの介助を伴いながら各交通機関を利用した際は 利用者本人の交通機関の運賃と共にヘルパーの運賃も発生します。 一般タクシーを利用する場合は乗合となる為に、1人でも2人でも料金は同じです。 しかし、バスや電車を利用する場合は2人分の運賃が発生し、それは利用者負担となるのです。 また院内介助を行う際に、介護保険対応とならない場合は自費サービスを利用される事があります。 自費サービスは介護保険の様に1割負担(又は2割負担)ではなく、全額負担であったり、介護事業所による金額設定が為されています。 そのため、介護サービス費用の感覚でいくと割高に感じるかもしれません。 重ねて院内での時間が長くなれば、自費サービスの時間も長くなります。 また、通院介助の総額が高額になる場合もあるので、ヘルパーに介助を依頼したいけれど金銭面での負担が苦となることがあります。 利用者側のストレスが、更にトラブルへと発展しかねない状況を生み出す原因とも成り得るのです。 予め、利用者へのモニタリングで病院への経路や受診に掛かる時間を確認しておき、費用を概算し、事前に書面化してお知らせしておく事が出来たらお互い安心かもしれません。 いざ病院へ!と行ったはいいけれど。 何度も言いますが、基本的に病院内での対応は医療管轄である病院側であり、介護保険での利用はできません。 でも実際は、病院受診で受付を済ませて、診察又は検査で待つ間や呼ばれて対応する際に病院側の介助は無く、ヘルパーが対応する事態になる事も少なくはありません。 病院側も人手不足であったり、ヘルパーの付添があるならばそちらで対応したらいいと言う様な言動を取られた事もヘルパーを経験した者ならばあるでしょう。 そんな病院内での対応に関するトラブルの例です。 何れも、通院介助を行う訪問介護側と病院側との連携・確認不足による不手際がトラブルに繋がってしまったケースです。 事前にケアマネージャーと病院側との確認はなされており、その通りに進むべきではあるのですが まれにこういった予想しなかった事態になってしまう事も起こり得るのです。 事前確認し、ケアプランに追加された後、訪問介護側でも通院介助時の訪問介護計画や予定の再確認 予測外の事態に備えての対応策を講じておく等、訪問介護側もヘルパーと再度情報を共有して介助を行う様にしていく事が重要になってきます。 また、自費サービスが発生する場合は、利用者側にも了解を得る形をしっかり取って双方できる限り負担の掛からないようにしなければなりません。 利用者側と訪問介護側で金銭面以外でもこんなトラブルが発生する事もあります。 ①~③の例を上げましたが、通院介助を行う前はきちんと説明をして了承を得ていても、いざ病院に行く=外出するとなると「ああしたい、こうしたい」の欲求が出てくる事もあるようです。 ①の様に「ちょっとだけ良いだろう」という考えでヘルパーに依頼してくる事もあります。 これは訪問介護で対応可能なのか?ケアプランにその介助内容は含まれているか?をよく考えて対応し、分からない場合は訪問介護事業所の責任者に報告・連絡・相談が必要です。 ②のケースは、たまたまその利用者の訪問介護計画に買い物や整理整頓の見守り的支援があった為に 可能となったサービスです。 これが「美容室に寄って帰りたい」や「娘家族のお土産買って帰りたい」等であった場合は対応不可となります。 ③に関して滅多に無いとは思われますが、利用者やその家族からの「訪問介護の契約をしているから、ヘルパーに何でも頼んでおけば良い」という考えの下に出た発言です。 訪問介護のヘルパーによくある「何でも屋」扱いですが、ここでは利用者からきちんと断ってくれた為、トラブルとはなりませんでした。 ヘルパーは第三者からの突然の言動にも落ち着いて対応できないといけません。 他にも色々とトラブルへ繋がる様な事態が発生する事もあります。 基本はケアマネージャーと病院側で確認した上で計画された訪問介護(通院介助)の計画をよく確認し、当日どう対応するのかをヘルパー含めたチームで理解し対応する事が求められます。 また、ヘルパー自身が対応に困る事態が起きた場合は、すぐに訪問介護事業所へ連絡することが重要です。 サービス提供責任者や、場合によってはケアマネージャーに対応を依頼する事も必要となります。 ヘルパー自身の曖昧な判断で対応したり、良かれと思って対応した結果、後に難しいトラブルへと発展してしまう事にも繋がりかねません。 病院という在宅外での介護の為、臨機応変な対応が求められる場合もありますが、あくまでも訪問介護サービスである事を踏まえた上での対応にヘルパーは従事しましょう。 まとめ 今回は通院介助についてや介助時のトラブル、対応等を紹介しました。 ・通院介助とは、要介護度認定を受けた利用者が病院受診をする為に行われる訪問介護であり、通院等乗降介助や身体介護中心型といった形がある。 ・基本的に病院内は医療機関の対応となるが、事前確認によっては訪問介護で対応する事もある。 ・要支援は通院介助の対象外であるが、場合によっては外出支援として対応できる事もある。 ・通院介助では利用者の負担が介護保険以外にも発生する事があるので、双方の確認が必要である。 ・訪問介護で院内の介助を行う場合は、病院側と訪問介護側との連携や確認が再度必要であり、利用者との間にも自費サービスが発生する場合の確認を行っておく必要がある。 ・利用者と訪問介護側の間でも、通院介助をする際にできる事やできない事の確認を行い、双方が理解しておく必要がある。 通院介助は各自治体によっての解釈が異なる場合があります。 利用者の居住する自治体が、どこまで通院に対し、介護対応を許容するのかをよく確認した上で、病院側、利用者側、訪問介護側との連携を踏まえてサービスする事も大切です。 訪問介護でヘルパーが通院介助を行う為の情報の一つとしてお役立て下さい。
ショートステイを運営しているけど、「ショートステイを利用していくことで、利用者や家族はどのようなことを求めているのか」と考えている事業主の方もおられるのではないでしょうか。 この記事では、今後ショートステイに求められるニーズについて考えていきます。 そもそもショートステイとは何か? ここではショートステイの「主な利用目的」や「ルール」について解説していきます。 ショートステイの利用シーン ショートステイは一時的に利用できる短期の宿泊サービスです。 自宅での介護が困難な時や介護者のリフレッシュのために利用されることが多いでしょう。 あくまでも短期的に利用するサービスであり、生活の拠点として長期的に利用するサービスではありません。 ショートステイの主な利用シーンは、次のようなケースが考えられます。 介護者の出張や旅行で自宅での介護が困難な時 介護者の入院などで自宅での介護が困難な時 介護者の休息が必要な時(レスパイトケア) 介護者の体調が優れない時 施設への入所前に施設生活に慣れるため ショートステイの日数制限ルール ショートステイは介護保険が利用できる日数に制限が設けられています。 なぜなら、介護保険サービスは各介護度に応じて一ヶ月に利用できる単位数が決められているからです。 そのため単位数を超えない範囲で、利用日数を抑える必要があります。 各介護度で定められた単位数を超えた場合は、介護保険が適用されず利用料金が全額自己負担となります。 最も介護度の低い要支援1の場合5,032単位、一番重度である要介護度5の場合36,217単位となります。 介護保険内でショートステイを利用できる日数の上限は下記のようになります。 要支援1 要支援2 要介護1 要介護2 要介護3 要介護4 要介護5 日数 6日/月 11日/月 17日/月 20日/月 28日/月 30日/月 30日/月 ※一ヶ月あたりの日数の上限になります ※実際の利用可能日数はサービス加算費などによって異なります。 当然のことではありますが、他の介護保険サービスを利用した場合にはさらに日数が短くなります。 上記のことからもショートステイは長期に利用できるサービスとは言い難いでしょう。 ショートステイに求められること ここでは介護業界の現状を踏まえた上で、ショートステイに求められるニーズについて考えていきます。 介護業界の現状 日本では少子高齢化が進み人口は減少してますが高齢者の数は年々増えています。 特に後期高齢者である75歳以上の増加は顕著になっています。 75歳以上の人口を各年度ごとにまとめてみました。※()内は全人口に占める割合です。 2020年……1,860万人(15%) 2025年……2,180万人(18%) 2040年……2,239万人(20%) このように高齢者が増えることで、介護施設の需要はさらに高まっていくと考えられます。 しかし、高齢者を支える働き手が減少していくなかで、満足な介護サービスを受けることができない介護難民が増えていくのではないでしょうか。 肝心の施設を建設しても、働き手が減少している社会構造の中で人材の確保が難しいのが現状です。 ショートステイに求められるニーズとは? 今後、少子高齢化により介護施設の需要が高まるなか、ショートステイに求められるのは足りない施設サービスの穴埋め的存在ではないでしょうか。 いわゆる「長期利用(終の棲家)」です。 また、長期利用を想定した場合「看取り」のニーズも高まるでしょう。 今後のショートステイは長期利用のニーズがさらに高まる ショートステイの本来の目的は短期利用ですが、実情として利用が長期にわたるケースは一定数、存在しています。 2020年の三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査によると、ショートステイ事業所の6割が31日以上の長期利用を受け入れています。 また、調査対象となった3万9,375人の利用者のうち、3,396人が長期での利用をしています。 これは全体の8.6%を占める数字です。 長期利用をする理由には「特養入所までの待機場所として」が89.2%と最も多くなっています。 これは準特養と言ってもおかしくないです。 今後、後期高齢者の数が増えることや介護人材の減少が進むことを考えると、その数はさらに増えていくのではないでしょうか。 今後のショートステイでは看取り対応が求められる 今後ショートステイでの長期利用が進むことを考えると、ショートステイでの看取り対応のニーズも高まっていくでしょう。 なぜなら施設への入所を待っている間に、老衰や体調不良で亡くなってしまうケースも避けられないからです。 介護事業所で看取りを行う場合、一定の基準を満たしていれば看取り対応を行うことは可能です。 看取りを行うには、介護保険法の定めによって、下記の条件を満たしている必要があります。 看護職員・医師・診療所指定訪問看護ステーションと24時間連絡をとれる体制である 施設入所の際の指針について、本人や家族に説明し同意を得る 医師・看護師・ケアマネージャー・介護職員が看取りに対し見直しをする 看取りに対して研修を行う 看取りの際は自宅や静養室などの環境を整え、他の入所者に配慮する 現在の看取りは8割が病院、2割が施設や自宅となっています。 今後高齢化が進む中で介護施設での看取りの需要は高まるでしょう。 ただ看取りは「介護職員の精神面への負担も大きいこと」や、「人材の確保」、「医療機関との連携が難しい」などの理由により行ってない施設が多いです。 ショートステイを展開する上で大切なポイント 今後、ショートステイの事業を展開していく上で、求められているニーズをしっかりと踏まえ、差別化をしていくことが大切になってくるでしょう。 具体的なニーズに関しては下記が考えられます。 ショートステイの長期利用 ショートステイでの看取り対応 サービス事業者と利用者をつなぐ居宅介護事業所(ケアマネージャー)に、これらのニーズを満たす事業所と認知してもらえれば、様々なケースの依頼も増えていくでしょう。 各事例を一つ一つクリアしていくことで、その実績が強力な営業ツールになるのではないでしょうか。 各市町村によりショートステイの長期利用に関しての見解も違うためハードルがあるのも事実です。 ただ、可能な範囲で他社との差別化をはかっていくことは、経営していく上で重要です。 まとめ ここまでショートステイの求められるニーズについてまとめてきました。 今後、75歳以上の後期高齢者は加速的に増えていく 高齢者の増加と働き手不足で特養などの施設に入れない高齢者が出てくる 施設不足によりショートステイの長期利用のニーズは高まっていく ショートステイの看取りのニーズは高まっていく 今後、ショートステイでは「長期利用」と「看取り」対応で差別化する事も重要 最後までお読みいただきありがとうございました。
高齢化社会が進む中、毎年人口が減っている日本では介護業界の人材不足が課題となっています。 今回は、介護業界をより魅力的にする方法と、人材不足を解消する方法について紹介します。 介護業界の人材が不足している理由 介護業界の人材が不足している理由は、主に以下の2つが挙げられます。 日本は少子高齢化が進み、人口バランスが崩れている。 介護業界はネガティブなイメージが多く、求職者はすくなく離職率も高い。 まずは、この2つを説明します。 日本の少子高齢化 介護業界の人材が不足している理由の1つ目は、「少子高齢化」です。 内閣府のホームページによると、2019年現在で、日本の人口の28.4%が65歳以上となっています。 総人口は減少するも高齢化は進み続け、総人口における65歳以上の割合は、2036年には33.3%になると言われています。 高齢化によって、介護を受ける高齢者が増えていくことでしょう。 また、日本は高齢化が進む中、出生率の減少が続き少子化も問題となっています。 介護を必要とする高齢者が増えるにも関わらず、働き手である若者の割合が減少することが主な原因です。 そのため、企業が人材を確保する競争率も高くなります。 ネガティブなイメージがある 介護職を知らない人に介護業界のイメージを尋ねると、ほとんどの人が「大変そう」「体力仕事」「汚い」「給料が安い」と答えるのではないでしょうか。 介護職の経験を持つ筆者も、親戚や友人に介護職として働くことを伝えた際には同じような回答が返ってきました。 このように介護業界には、ネガティブなイメージが植え付けられています。 これらの理由で、介護業界の人材は不足すると言えます。 介護業界をより魅力的に 介護業界の人材不足を解消するために、まずは介護業界をより魅力的にする必要があります。 介護業界をより魅力的にするためには、「イメージアップ」が重要です。 筆者も介護業界について全く知識がなかった頃は、「介護の仕事は、大変そうで汚い、給料が安い」というネガティブなイメージを持っていました。 しかし、実際に現場で働いてみると、もちろん「大変」と思う面もありましたが、介護職になって良かったと実感する瞬間もありました。 「介護職の仕事は大変で汚い」というイメージをなくす 介護の仕事は、入浴介助やオムツ交換などの排泄介助を一般的な介護の仕事として想像されます。 しかし、働く施設や利用者の介護度によって働き方も異なります。 働く施設や形態などによる違い 介護の仕事は、働く施設や形態によってさまざまです。 デイサービスや介護付きの高齢者施設に勤務する働き方と、介護を必要とする高齢者が住む家を回る訪問介護と呼ばれる働き方があります。 デイサービスは、日中のみ高齢者を受け入れる施設のため、レクリエーションや食事などがメインとなります。 介護スタッフも、基本的な勤務時間は営業時間の8時〜18時です。 また、デイサービスは土日の営業がない施設が多く、休日も確保しやすいと言えます。 高齢者施設は規模に合わせて介護スタッフが必要なため、数十人の介護スタッフが同じ現場で働きます。 そのため、スタッフ同士の協力によって一人ひとりの負担を減らすことができます。 また、苦手とする仕事や大変な仕事は手伝ってもらうなど、働き方の工夫も可能です。 利用者の介護度による違い 介護職の仕事は、介護サービスを利用する高齢者の介護度によっても異なります。 介護度は、要支援1.2と要介護1〜5で表される要介護状態等区分のことであり、その人が必要とする介護、支援の物差しとなる数字です。 ある程度自立した生活を送ることができる支援1.2の高齢者に行うケアは、一般的に「掃除や食事などの一部を介助する」「買い物、通院に同行する」などがあります。 家事の手伝いなどがメインとなるため、体力的な負担は少なくなります。 「介護職は給料が安い」というイメージをなくす 介護業界の賃金を改善するために、2019年10月1日に「介護職員等特定処遇改善加算」が創設されました。 介護職員等特定処遇改善加算は、職場のリーダー的立場にある職員の年収を平均年収まで引き上げ、介護業界の人手不足解消を促すものです。 また、勤続10年以上の介護福祉士には月8万円の手当が支給されます。 介護業界で働くと、キャリアアップと給料アップも可能です。 介護業界の人材不足を解消するには 介護業界の人材不足を解消するためには、どのようにすればよいのでしょうか? 新たな人材の発掘 介護業界の人材不足を解消するには、「新たな人材の発掘」が必要です。 新しい人材を発掘するためには、以下の方法が考えられます。 介護未経験者を「介護助手」とする 介護業界の人材不足を解消するための対策1つ目は、「介護助手という役割を作ること」です。 介護未経験者や介護の資格を持っていない人を介護助手として雇うことで、介護スタッフが介護の仕事に専念できるようになります。 例えば、生活援助と呼ばれる部屋の掃除や買い物は、介護の資格を必要としません。 資格を必要とする仕事とそうでない仕事の役割を分担することで、介護職が働きやすい環境を作ることができます。 外国人労働者を雇う 介護業界の人手不足を解消するための対策2つ目は、「外国人労働者を活用すること」です。 すでに政府は、技能実習制度や特定技能などの制度を作り、インドネシアやフィリピンなどの国と協定を結んでいます。 技能実習制度は、外国人を日本で最長5年間受け入れ、母国では取得できない技能を取得できるようにする制度です。 この制度を利用して、外国人でも介護の資格を取得できます。 環境の工夫 介護業界の人材不足を解消するには、環境を工夫することが重要です。 環境の工夫をするために必要なことは「ICTの導入」です。 ICTは、「Information and Communication Technology」の総称を指します。 日本語では「情報通信技術」と訳され、通信を使用してデジタル化された情報をやり取りする技術です。 例えば、スマートフォンなどのタブレット端末で、先輩や同僚とコミュニケーションや情報共有をすることが挙げられます。 介護業界でICTを使用するメリットは2つあります。 業務の効率化を図れる 情報の連携がしやすい ICTを使用するメリットの1つ目は、「業務の効率化を図れる」ことです。 業務の効率化を図ることで、介護職の負担を軽減できます。 さらに、事務作業にかかる時間を減らすことができれば、介護サービスに時間を割くことが可能です。 利用者に関する記録などを、紙媒体に記入するよりタブレットなどで入力できるため効率が良くなります。 データでまとめて記録できるため、印刷する書き換えるなどの手間が省けて情報共有も簡単です。 ICTを使用するメリットの2つ目は、「情報の連携がしやすい」ことです。 介護サービスには、サービス利用者の家族・介護施設・病院などの医療機関・訪問介護事業所などの繋がりが重要になります。 高齢者に体調不良が見られた場合、医療機関へ繋ぎ、家族にも連絡しなければいけません。 タブレットなどの端末上で、高齢者に関する情報をどこからでも閲覧できます。 スムーズに情報交換ができることで、余分な連絡を取る必要がなく、介護職の負担も削減されます。 また、介護サービスを利用する高齢者の情報は、膨大な量になります。 ICTを利用すると、膨大な量の情報を一括でまとめ、複数の場所で管理可能です。 ICTを利用し、介護職に時間を設けることで、介護サービスの質を向上できます。 そのため高齢者や家族の満足度もあがり、クレームなどを減らすことにも繋がります。 まとめ 今回は、介護業界に魅力を持ってもらう方法と、人材を確保する方法についてお伝えしました。 介護業界の人材が不足している理由には、「少子高齢化」と 「ネガティブなイメージが多い」ことが挙げられる。 介護業界をより魅力的にするために「イメージアップ」が重要である。 介護業界の人材不足を解消するためには、「介護助手という役割を作る」 「外国人労働者を雇う」、「環境の工夫をする」ことが必要である。 最後までご覧くださり、ありがとうございます。
2022年11月1日、神戸地方裁判所において兵庫県立西宮病院で起きた転倒事故についての判決が下されました。 この判決は多くの医療、福祉分野の関係者を困惑させています。 本記事では、転倒事故の判例を確認し、病院や介護施設など現場で働く自分たちを守るために抑えるべきポイントについて解説します。 事故に至った個別の事情についての批評や、裁判に至った経緯やその判決事態への批判を意図するものではありません。 下されてしまった判決により、今後関係者にどのような影響を与えるかの考察ですのでご注意ください。 転倒事故から判例までの概要 2016年4月2日早朝、認知症を患っている男性は看護師に付き添われてトイレにはいりました。 付き添った看護師は、男性が用を足す間別室の患者にナースコールで呼び出されて排便介助の対応をしました。 用を足し終えた認知症男性は、トイレから出て一人で廊下を歩き転倒してしまいます。 その結果、外傷性くも膜下出血と頭蓋骨骨折の診断を受けました。 その後寝たきりになってしまった男性は、2年後に心不全で死亡しています。 男性の家族は、入院中の転倒により怪我をして治療が必要となった結果、寝たきりになり両手足の機能が衰えたと主張しました。 転倒させた病院に責任があるとし、兵庫県に対し2,575万円の損害賠償を求めます。 対する県側は、「別室の患者は感染症を患っており、排便の介助を急いだことはやむをえないと主張しました。 6年後の今年11月、神戸地裁で出された判決は以下の通りです。 「認知症の男性から目を離せば、勝手にトイレを出て転倒する可能性は充分に予見できた。 別室の患者はおむつに排便すれば問題はなかった。 すでにトイレに入っている人よりも、後からナースコールを押した患者はおむつにすればよかった」 として、県側に532万円の支払うよう命じました。 転倒事故の判例を受けた現場の声 この判例を受け、SNS上では、医療や福祉の関係者から多くの反響がでています。 夜勤一人で20人の対応。コールは重なる。おむつをしていてもおむつにできない。 変な判例を作らないでほしい。認知症の人は抑制をデフォルトにしろということか。 両手に火のついたダイナマイトを持たされて。爆発は予見できたって言ってるようなもの。 これは厳しい。今後、リスクの高い人はおむつにしろと言ってるようなもの。 無理ゲー。 マンパワーが足りない。転ぶ時は一緒に転ぼう。 2チャンネル創設者で実業家のひろゆき氏は、「『87歳の認知症患者が病院で歩いて、転倒したので病院は532万円支払え』という判決。認知症患者は、ベッドに縛り付けて動けなくするのが正解ということですね」と呟いています。 転倒事故の判例の問題点 この判決は、ただ単に一つの病院で起きた裁判というだけではなく、病院や高齢者施設で働く全ての関係者にも影響を起こしかねないことです。 この判決の問題点は3つあります。 訴えられるリスク 身体拘束の助長や認知症のある利用者の受け入れ拒否 スタッフは守られない では、一つずつ説明します。 訴えられるリスク 自分が働く施設で同じような転倒事故が起きてしまった場合に、施設が訴えられるリスクが上がったと言えます。 判例が出たということはそれだけ影響のあるものです。 日頃から施設の対応に疑問を持っていた家族が、転倒事故をきっかけに訴えるようになることは容易に想像できるでしょう。 夜勤帯にナースコールが重なり、対応が間に合わず転倒事故が起きてしまうことは、対策をしていても起きてしまうもの。 しかし、判例が出てしまった以上は「転ばないで」と祈るだけではどうにもなりません。 いくら丁寧にケアをしていても、訴えられたら負けてしまいます。 身体拘束の助長や認知症のある利用者の受け入れ拒否 今回の判例は、安易な身体拘束を助長させるとともに、認知症のある利用者の受け入れを拒否する施設を増やす危険性を高めてしまいました。 病院では治療のために身体拘束を行うことはありますが、高齢者施設では原則身体拘束は行いません。 しかし、転倒事故が裁判に発展し損害賠償を求められるのであれば話は別です。 利用者本位を謳い一生懸命ケアしていても、一つの転倒事故から多額の損害賠償を求められてしまっては経営が成り立ちません。 身体拘束が認められる緊急やむをえない場合、「切迫性、非代替性、一時性」に当てはめて身体拘束を行う施設が増えることも考えられます。 最終的には認知症のある利用者の受け入れを拒否することに繋がってしまうリスクがあります。 スタッフは守られない 今回の判例を受け、利用者の安全を守るために少ない人員で走り回っても、転倒事故が起きてしまえば、スタッフは守られないことがわかってしまいました。 訴えられているのは県や病院ですが、事故の当事者や同僚のショックは計り知れません。 働き続けるのが難しくなるケースもでてきます。 転倒事故を完全に防ぐにはマンツーマンの対応が必要ですが、急に人員が増えることはないでしょう。 自分たちを守るためにどうすれば良いかを考えなくてはなりません。 介護事故訴訟は増加傾向にある 介護事故の訴訟件数について、具体的な統計は判明していません。 しかし、介護事故による訴訟数は増加傾向にあるとされています。 介護事故による訴訟で最も多いのは転倒事故です。 転倒することで骨折や脱臼をしてしまうなど重傷を負ったため、訴訟になってしまうことが挙げられます。 その他にも、誤飲や誤食、薬の誤配なども訴訟になることがあります。 施設側の責任を否定した裁判もある 先に施設側の責任を認めた判例についてご紹介しましたが、訴訟の中には施設側の責任を否定したものもあります。 それは、東京地裁にて、平成24年11月13日に判決が出たものです。 事案内容は、71歳の利用者がデイケアを利用していた際、転倒してケガを負ったというものです。 原告は利用者の親族でした。 この際、施設側は以下の記録を提出しています。 利用者のアセスメント表(利用者の状態を情報収集した表)には、寝返りや起き上がり、移乗、歩行についての評価は「自立」であった。また、歩行、立位、座位でのバランスも「安定」という記載がされていた 利用者は施設の見学や利用の際にも一人で歩行しており、その際転倒したことはない 日常的に通院していた病院の診療録でも、利用者は転倒や転落歴がなく、歩行時のふらつきもなかった 上記による記載事項から、利用者には歩行能力において特に問題はなく、階段の昇降を含めて歩行時に介助を必要とする状況にはない、とされました。 このため、施設側は、利用者が転倒することを予見するのは不可能だったと認定し、この裁判の判決では施設側に責任はない、とされました。 このほかにも施設側に責任はなかった、とされる事案がいくつか出ています。 予見可能性が重要 上記の判決から見ても、施設やその職員が事故が発生する可能性があると予め認識できたかどうか(予見可能性)、あるいは、実際に認識すべきであったかどうか(予見義務)がとても重要です。 また、事故を回避できる可能性や、事故を回避する義務があるかどうかも考えなければいけません。 基本的に予見と結果回避は別のものです。 基本的に両方がそろわなければ、施設側の責任にはなりません。 しかし、多くの事件では予見が出来れば結果回避するための措置が必要であるとされ、施設側が責任を負う結果になりやすいのです。 自分たちを守るために抑えるべきポイント 転倒事故が起きてしまった時に自分たちを守るためには何が必要でしょうか。 上記の判例を受けての対応として、ここでは3つのポイントを説明します。 ニュースや事例を共有する 施設のマニュアルや書類を確認する 自分たちを守る仕組みを作る それぞれ説明します。 ニュースや事例を共有する 今回の西宮病院の判例は病院や高齢者施設で働く全ての人に関係します。 報道されている事故の経緯を確認し、チーム内で共有することが第一歩です。 西宮病院の判例以外にも病院や高齢者施設での事故に関する判例は多くありますので、自分たちに関係のあるものを共有し、自分たちの身に降りかかる可能性があることを認識しましょう。 施設のマニュアルや書類を確認する 次に自分たちが働く施設は、利用者や家族に転倒や事故についてどのような説明をしているのかを確認します。 高齢者は転倒しやすいこと、施設で身体拘束はしないこと等、その中でどのような事故予防をしているのか等の説明内容や交わしている書類を確認しましょう。 何が足りないのかを明らかにし、その仕組みを整えるにはどうすればいいか検討し行動する準備をします。 自分たちを守る仕組みを作る それぞれの事業所の中で、自分たちを守る仕組みができているのであれば特に問題はありません。 しかし、ほとんどの事業所は日ごろの業務や現場で起きていることに集中するあまり、自分たちを守る仕組みづくりに着手できていないのが現状ではないでしょうか。 仕組み作りには「個人だけで考えるのではなく、部署や事業所単位で相談し検討する」ことが大切です。 一人ひとりの自己犠牲ややりがいに頼っていては何も変わりません。 委員会や会議、部署内のミーティング等、スタッフ間で意見交換できる場を作り検討する必要があります。 複数のコールが重なったらどのように動くか 起きてしまった転倒事故の再発防止策 家族への説明書類について不足部分がないか確認し、状況に応じて更新する 利用者に対する記録を付けるようにする 上記のように、細かいことからでも始めて自分たちを守る認識を強く持つよう働きかけ、仕組みを作っていくことが必要です。 まとめ いかがでしたでしょうか。 本記事では、兵庫県立西宮病院で起きた転倒事故に関する判例から 判例の問題点、自分たちを守るために抑えるべきポイントについて説明しました。 判例の問題点 訴えられるリスクが増した 身体拘束の助長や認知症のある利用者の受け入れ拒否に繋がる スタッフは守られない 自分たちを守るために抑えるべきポイント ニュースや事例を共有する 施設のマニュアルや書式を確認する 自分たちを守る仕組みを作る 判例がでてしまった以上は自分たちの身は自分たちで守らなければなりません。 今日転倒事故が起きたら訴えらえれてしまう可能性もあります。 自分たちを守り安心して働き続けられるよう、事業所や部署内で検討を重ね、仕組みを作りをしていくことが大切です。 最後までお読みいただきありがとうございました。
介護施設では必ずと言っていいほど一日のスケジュールの中に「レクリエーション」の時間が組み込まれています。 介護にとって身近なレクリエーションですが、楽しめるということは勿論、得られる効果は様々です。 今回はレクリエーションの目的と、効果的に行うための注意点についてご紹介します。 レクリエーションの目的って? レクレーションには3つの目的があると言われています。 ただ参加するのではなく、得られる効果や目的を意識して行いましょう。 ①身体機能の維持や向上が期待できる 介護施設を利用する方のみならず、どんな方でも少なからず年をとるにつれて身体機能は低下していきます。 例えば転びやすくなったり、着脱や入浴など生活の動作が難しくなったりしていくのです。 介護施設で働いていると、転倒やケガを恐れて今まで気軽に外出していた方の行動範囲が狭くなってしまうという話はよく耳にします。 そういった方の運動の機会は日常生活の動作のみとなりますが、その運動量だけでは十分とは言えません。 さらに身体への影響だけではなく、運動量の低下で精神的なストレスとなる可能性も考えられます。 また今は日常生活に支障なく過ごせている方でも今後は分かりません。 そこで必要となるのが介護施設で行う運動や体操です。 身体を動かすレクリエーションの主な目的は、日常生活のサポートや運動機能低下の予防となります。 低下してきている身体機能を今以上に落ちないようにしたり、より向上したりする効果が期待できます。 ②脳の活性化につながる 運動することで身体だけでなく脳の活性化にもつながります。 身体を動かすと「筋肉を動かす」という命令が脳から神経を通って筋肉へ、さらに筋肉から脳へ信号が発信されます。 つまり筋肉と脳は密接な関係にあり、「運動する」ということは認知症の予防や改善に効果があるということです。 また運動のレクリエーションだけではなく、オセロや麻雀、塗り絵やクイズなどそういった活動も脳の活性化につながります。 笑ったり、大きな声を出したりすると認知症の予防にも効果的です。 ③コミュニケーションの場となる 個人で行うものもあれば、皆で一緒に参加できるものも多いレクリエーションもあります。 チーム戦で勝利するために協力したり、話をしながら一緒に間違い探しをしたりなどコミュニケーションをとる機会が多々取り入れることが可能です。 普段はあまり会話をされなくても、レクリエーションでゲームをする時だけは明るく笑顔を見せてくださる方もいらっしゃいます。 1人暮らしをしている方はどうしても他の人と話したり笑ったりする機会は少ないですよね。 また家族と暮らしている方でも家族だけとコミュニケーションをとるのではなく、いつもと違った人と会話をすることも大切です。 交流の場があることで前向きでポジティブになれることがレクリエーションの魅力です。 レクリエーションの内容は? レクリエーションを行うときには、目的に合わせて決めることも大切です。 ①個人のレクリエーション 塗り絵や間違い探しなど1人でも楽しめるレクリエーションのことです。 話すことが苦手だったり、できなかったりする方でも行えるのが利点です。 利用者の方の中に本当に上手に絵を描かれる方がいらっしゃって、聞くと昔は絵を描くことを趣味としていたようです。 そのうち趣味を再開して自宅で描いた絵を持ってきてくださるようになりました。 ただ楽しむだけでなく、過去のことを思い出しながら行うことでより脳の活性化につながります。 ②集団のレクリエーション スプーンリレーや棒サッカーなど皆で協力して行うレクリエーションです。 個人戦も良いですがチーム戦にすることで非常に盛り上がり、得られる効果も大きくなります。 もし参加することが難しくても、観戦で応援して一緒に盛り上がれることができるので一丸となって楽しめます。 どうやったら勝てるのか頭や身体を使ったり、応援のため大きな声を出したりするので心身ともに効果があります。 ③運動のレクリエーション デイサービスなどでよく目にする運動マシンをつかった活動です。 理学療法士や機能訓練指導員の元、適切に身体を使って運動機能の維持や向上を目指します。 日常生活の動作とは全く違う動きができるので、運動不足を感じている方もここで補えます。 ④外出のレクリエーション 付近の公園で季節の花を見たり、普段行かない場所に買い物に行ったりするレクリエーションです。 いつも屋内で過ごすのではなく屋外に出ることでリフレッシュできるため楽しみにする方も多くいます。 また自身の足では外出が難しい方にとっては介護スタッフが一緒なので安心して参加できます。 以前外出レクリエーションで紫陽花を見に行ったことで、外に出ることに対して前向きになった利用者の方がいらっしゃいました。 その後その方は最寄りのコンサートを見に行かれて、会場で友人をつくったという話を聞かせてくださいました。 レクリエーションの結果、運動や脳の活性化だけでなく、外出できるきっかけになることもあります。 こんなレクリエーションを行うデイサービスも!? スリーA「予防ディサービス 折り梅」 「スリーA」とは「あかるく、あたまをつかって、あきらめない」の頭文字から来ている言葉です。 「予防ディサービス 折り梅」では、そんなスリーAを意識したサービスを展開されています。 こちらは静岡県内の病院で看護師長として勤務されていた増田未知子氏が立ち上げた施設です。 認知症の進行を食い止めることだけでなく、今よりさらに良い状態になれることを目指しており、楽しく認知症予防に取り組めるようになっています。 さらには毎月第二水曜日に介護保険の有無にかかわらず、付近に住む方たちが気軽に参加できる「さわやか教室」を開催し、スリーA方式のリハビリで認知症予防を行っています。 カジノ型デイサービス「ラスベガス」 東京を中心に全国に展開している「ラスベガス」というデイサービスがあります。 介護施設らしくない黒のミニバンで送迎し、施設内では機能訓練や食事だけでなく、麻雀やパチンコも楽しめます。 運動したりゲームに勝ったりすると「ベガス」と呼ばれる仮想通貨が得られ、まるで本当のラスベガスで遊んでいるようなデイサービスです。 しかし機能訓練の時間もしっかりと設けられていて、デイサービスとしての機能も十分発揮しています。 このような施設はここだけでなく全国で増加しており、楽しんで通うことでより効果を得られます。 レクリエーションの注意点は? ①無理に参加させない 麻痺などで参加が難しい方は勿論ですが、精神的に参加したくない方もいます。 ご家族からなるべく参加するようお願いされている場合を除き、無理矢理に参加させるのは逆効果です。 それにより怒ってしまったり、デイサービスの場合利用中止になってしまう可能性もゼロではありません。 その方の表情を見て参加をお願いしましょう。 ②トラブルが起きないように注意する 「ズルをした」「負けて悔しい」などがきっかけでトラブルに繋がるケースを目にしたことがあります。 ゲームのレクリエーションは盛り上がるのですが、利用者の方によっては本気になりすぎてケンカとなる場合もあります。 そういったトラブルが起きないように相性を考えながらチームを組んだり、職員は盛り上げつつも注意して進行したりすることが大切です。 万が一トラブルとなってしまった場合は、職員が間に入って話を聞いたり、他のことに意識がうつるように会話の内容を変えたりしましょう。 ③ケガには十分気をつける レクリエーションは日常生活とは違った動きをすることも多いです。 転倒やケガなどには気をつけて行ってください。 特にゲームや外出をする場合は、本番を行う前に職員同士で実践したり、想像できる危険性を話し合ったりすると良いでしょう。 ④マイナスな評価はしない 利用者の方の意欲を削ぐような発言は控えましょう。 例えば絵であれば「この花はこんな色じゃない」「塗り絵の色がはみ出ている」など評価する必要はありません。 レクリエーションは楽しむため、心身機能のために行っていることを忘れずにいてください。 利用者の方がポジティブな気持ちで楽しめるよう職員はサポートすることに努めましょう。 ⑤大きな声でハッキリ明るく進める ゲームなどを進行する際は大きな声でゆっくりと分かりやすく、そして明るく行いましょう。 私たちでもテーマパークなどの進行係の方が楽しく進めてくれると、気分がのってより楽しめます。 それと同じように利用者の方の気分を盛り上げることが大切です。 また中には聴力の弱い方もいるので、全員が平等に参加できるように進行しましょう。 まとめ この記事では、レクリエーションの目的や効果、注意点などについて解説しました。 ・レクリエーションの目的は「身体機能の維持や向上」「脳の活性化につながる」「コミュニケーションの場となる」の3つである。 ・コミュニケーションの苦手な方にとって塗り絵などの個人のレクリエーションは良い。 ・ゲームで協力して盛り上がることで脳の活性化につながる。 ・専門職員指導のもと日常生活とは違った運動で行うことで、身体機能の維持や向上に期待ができる。 ・普段外出のできない方でも外出レクリエーションは、安心して参加でき、気持ちのリフレッシュにもなる。 ・無理矢理参加させることはしない。 ・利用者間でトラブルが起きないように職員は注意する。 ・日常とは違う動きとなる可能性もあるので安全に行う。 ・楽しんで行うことが大切なのでマイナスな評価はしないようにする。 ・大きな声でハッキリと明るく進行して、全員が楽しめるようにサポートする。 最後までご覧いただきありがとうございました。
認知症はだれもがなりうる病気で、家族や身近な人が認知症になることなどを含め、多くの人にとって身近なものです。 認知症が進行すると興奮や幻覚、徘徊など、介護者に多くの負担がかかる場合があります。 その負担が蓄積してくると在宅での介護に限界が生じて共倒れとなる恐れが出てきます。 在宅での介護が辛くなってきたとき、もう限界となる前に、施設への入所、特に認知症グループホームという選択肢があるという知識を持っていることが大切です。 今回は認知症グル-プホームがお薦めな理由についてご紹介させていただきます。 グループホームとは 認知症対応型共同生活介護は、認知症グループホーム(以下グループホームと表記)とも呼ばれています。 認知症の方が住み慣れた地域で可能な限り自立した日常生活を送ることができるよう、家庭的な 環境の中で食事や入浴などの日常生活上の支援が受けられるサービスです。 それでは、入所についての条件やメリットを説明していきます。 グループホームの入居条件 グループホームに入所するためには以下の条件がそろっていることが必要です。 ➀専門医から認知症の診断を受けている。 ②施設の所在地と同一市区町村に住民票を持っている。 ③要介護認定で要支援2以上の認定が必要。 グループホームのメリット それでは、グループホームには、どんなメリットがあるでしょうか? ➀少人数でのユニット制 5~9人で一つのユニットとなっており、少人数のグループのなかで家庭的でゆったりとした、気心知れた環境で暮らすことが出来ます。 ②認知症の対応を知り尽くした職員が対応 入所当初は、周囲の雰囲気に馴染めず居心地が悪くなったり、徘徊につながる場合があります。 しかし、認知症の対応に熟知しているスタッフは、適切な声掛けや寄り添いながら支援することで、利用者と信頼関係を構築しているのです。 そのため、利用者の問題行動が落ち着き、穏やかに暮らしていける支援を受けられます。 ③利用者と介護従事者が共同で行い、日常生活を維持できる。 グループホームの特徴として、利用者の食事その他の家事等は原則として利用者と介護従事者が共同で行うよう努めるものと運営基準上で示されています。 「台所」を設けることも基準化されており、これまで在宅で出来ていた生活を維持する為の支援を目的としています。 ④役割・生きがい、楽しみの創出 認知症の人の中では、役割がなく生き甲斐が失われて寂しい思いを持たれている方も多いのです。 以前好きだった趣味活動、料理が得意だったことなど、そんな情報を基にしながら職員と入居者が一緒にコミュニケーションを取っていきます。 そうしていくことで、出来なかったことを出来るように変えていく働きかけが刺激となって、認知機能の低下や予防が図れます。 グループホームでの仕事は高齢者の失われかけた能力を最大限に引き出しながら活かすことが出来る仕事です。 そんなところにやりがいを感じると言われる職員さんの言葉はとても素敵ですね。 グループホームのデメリット グループホームはメリットだけではありません。 以下のようなデメリットもあります。 ➀他入居者とトラブルになる可能性がある 少人数という環境は入居者同士の相性がとても重要となります。 集団生活に支障をきたす恐れのある方や、他の入居者と相性が合わないために居心地の悪さを感じてしまう方もでてしまいます。 その場合は、調整が難しく、退所も検討しなければならなくなります。 ②グループホーム自体が少ない グループホームは元々数が多くありません。 そのため、人気のあるグループホームは満床になりやすく、すぐに入居することは難しいです。 なかには予約待ちを入れて空きが出るまで有料老人ホームに入っている方もいらっしゃいます。 ③医療的なケア対応に限界がある グループホームは、看護師の配置の義務がないため、医療ケア対応に限界があります。 他施設との違いについて 老人ホームにはさまざまな種類があります。 介護付き有料老人ホーム、サービス付き高齢者住宅などの民間施設であり、公的施設としては特別養護老人ホームと介護老人保健施設、介護医療院などがあります。 簡単にそれぞれの特長をお伝えします。 特別養護老人ホーム 特別養護老人ホームは、「要介護3以上」の認定を受けている方が対象の施設です。 車椅子や寝たきりの利用者が多く、入所にかかる費用は他の施設より一番安いので、希望者も多いことがあります。 そのため、入所できるまで時間を要する事が可能性が高いです。 また、要介護度1〜2の入居には自治体による特例入所が必要となります。 介護老人保健施設 介護老人保健施設は、骨折や脳梗塞などで退院後すぐに在宅生活ができない高齢者が、在宅復帰を目指す施設です。 そのため大抵は3か月という一定期間の間で退去することが前提の施設です。 特別養護老人ホームと比較すると入居しやすい状況ではありますが、終(つい)の棲家にはできません。 介護医療院とは 介護医療院とは、胃ろう等の経管栄養や喀痰吸引等、日常生活上に医療処置が必要な方が入所できる施設となります 。 グループホームのおすすめポイント それでは、グループホームのおすすめポイントを見ていきましょう。 ➀人員配置基準が手厚い グループホームは以下のような人員配置がされています。 ・日中の体制 グループホームでは入居者3名に対し常勤換算で職員1名以上の配置が必要と定められています。 従来型特養は「定員あたりの人員配置」に対しての基準です。 グループホームは「1日あたりの人員配置」が基準となっています。 ・夜勤体制 グループホームでの夜間は入居者9名に対し常勤換算で職員1名以上の配置が必要と定められています。 サービス付き高齢者住宅とか有料老人ホームの場合は住宅のため基準がありませんが、一般的には30人〜70人に一人の夜勤の配置となっているようです。 人員配置基準上、最も人手がある配置基準となっているのがグループホームであると言えます。 ②費用面について 公的施設と比べると高額となりますが、他の民間施設より大体5万円程度安い月額費用で入居できるようです。 ただし、入所一時金がかかるところもあるので、良く調べておく必要があります ③計画作成担当者は、ユニットごとに1名以上配置 グループホームでは適切な介護サービスを提供するために、利用者に合わせたケアプランを作成するための計画作成担当者の配置基準があります。 計画作成担当者のうち、1名以上は介護支援専門員の資格を有していることが人員配置基準の1つです。 また、グループホームの運営基準は、最大3ユニットまでですので、27名までの計画作成となります。 これは、居宅介護支援事業所の介護支援専門員の担当件数である35件よりも、担当件数が少なく、認知症の方の支援に併せたプランが期待されている背景とも汲み取れるでしょう。 施設選びの要は介護者自身 今までデイサービスやヘルパーの手配をしてくれていたケアマネですが、ケアマネは在宅支援のコーディネーターという役割です。 施設への入所を検討をする場合には、役割外となります。 そのため、施設の情報が入った資料の提供をしますが、各施設の詳しい情報を持ち合わせていません。 施設選びを率先して行うのは、介護者自身となるというところを心得ておきましょう。 最初は有料老人ホームに入所しておきながら、グループホームの空き待ちを予約しておくことが重要です。 空いたのちに、認知症の知識を持ったスタッフの元で残存能力を生かし、生活支援を受けながら入居者も介護者も笑顔が戻ったという話もあります。 グループホームへの入所も選択肢の一つとして検討してみてはいかがでしょうか。 まとめ 認知症の人は、理解力や記憶力などの中核症状と併せ徘徊や興奮などの周辺症状の増悪を伴う場合があり、長期の介護負担は介護者の生活を脅かす危険性があります。 特に認知症を有する高齢者は入所後、精神的に不安定になりやすい事もあります。 できれば少人数で自宅のような環境や人員配置の多いグループホームでの生活が望ましいでしょう。 在宅生活の限界を感じ施設入所を検討する場合、認知症グループホームは入所の条件として施設と同一の市町村に住民票が必要なので注意が必要です。 しかし、グループホームは小規模な施設であるため馴染みの環境を作りやすいです。 また、介護の知識や認知症の対応を知り尽くした職員が対応をするため、認知症の方でも安心して暮らすことが出来ます。 是非、介護の限界になるまえに事前に情報を得ておいて検討してみてはいかがでしょうか? 最後までお読みいただきましてありがとうございます。
「ユマニチュードで介護拒否が少なくなったと聞くけど本当?」 「そもそもユマニチュードって何?」 今回の記事ではこのようなユマニチュードの疑問について解説していきます。 ユマニチュードとは ユマニチュードはフランスの体育学の専門家であるイヴ・ジネストとロゼット・マレスコッティが開発したケアの技法になります。 言葉の意味は「人間らしさを取り戻す」という意味を持つフランス語の造語です。 ユマニチュードの基本理念は相手との信頼関係を構築して「絆」を深めることにあります。 代表的な4つの技術である「見る」「話す」「触れる」「立つ」を駆使して相手との「絆」を深めることを目指しているものです。 相手との信頼関係を構築するために嫌がること(強制ケア)をしないのも大切なポイントになります。 なぜ介護の現場でユマニチュードが必要なのか? ユマニチュードは相手との信頼関係を構築し「絆」を深める技法です。 介護の仕事は人を相手にする仕事であるため、相手との信頼関係を深めることは非常に重要です。 そのような理由からも介護の仕事ではユマニチュードは必要ではないでしょうか。 ユマニチュードの具体的な技術4選 人は「周囲からのまなざし」や「声をかけられること」「触れられること」が希薄になると周囲との絆が弱まり、「人間として扱われているという感覚」を失ってしまいます。 ユマニチュードではより良い絆を結ぶための具体的な技術として、「見る」「話す」「触れる」「立つ」という4つの柱を定めてます。 ここでは各項目に沿ってそれぞれ説明していきます。 ①ユマニチュードの「見る」技術 相手を見るという行為は、あなたは存在していると伝えることです。 最悪な状態は「相手を見ない」ということです。 なぜなら「相手を見ない」ということは、「あなたは存在しない」というメッセージを発していることに他ならないからです。 では「見る」とは実際にどのようにすればいいのでしょうか。 水平な高さで相手を見る 正面の位置から相手を見る 近い距離から相手を見る 逆にやってはいけないのが、以下の行動です。 相手を見下ろす……これは「支配・見下し」という非言語のメッセージになります 横から目の端で見る……これは「攻撃的」な印象を相手に与えます 遠くから見る……これは「関係性の薄さや否定的」な印象を相手に与えます 相手を見るというのは非常に重要な技術になります。 ぜひ試してみましょう ②ユマニチュードの「話す」技術 進行した認知症のかたは、話しかけても適切な反応が得られないことがあります。 時には無反応なこともあるでしょう。 私たちは相手が反応を示さないと、だんだんと話しかけなくなってしまいます。 それは、ある意味仕方の無いことではあります。 しかし、私たちはケアのプロフェッショナルです。 相手が無反応だからと言って無視してもいい理由にはなりません。 相手に話しかけることは「あなたはここにいる」と相手に伝える重要なメッセージにもなります。 しかし、実際に反応のない認知症の利用者様に対してどう接すればよいか悩むのではないでしょうか。 そこでユマニチュードでは、自分が行なっているケアの動きを「オートフィードバック」という手法で実況中継します。 実際の入浴時のシーンで「今から頭を洗いますよ」と声をかけたり、背中を洗う際は「背中を流していきますね」と、実際に行っているケアの内容を声に出しながら行っていきます。 メッセージを伝える際は「気持ちいいですよ」「肌が綺麗ですね」とポジティブな表現を使うことが大切です。 「相手が応答してくれないから、こちらも反応しなくてもいい」という罠に陥らないよう注意しましょう。 ③ユマニチュードの「触れる」技術 介助で相手に優しく触れることは、ケアを受ける相手に優しさを伝える技術になります。 ユマニチュードでは広い面積で、ゆっくりと、優しく触れます。 同じ力でも面積が広くなれば、相手に与える圧力も小さくなり、逆に面積が小さくなれば与える圧力も強くなり相手に不快感を与えることになります。 ケアを行う人が「必要な行為」と考えて行う触れ方が受け手にとっては「攻撃的な触れ方」になっていることもあるため注意が必要です。 ユマニチュードの「立つ」技術 人間の尊厳は立つことによってもたらされる側面が強く、これは死の直前まで尊重されなければいけません。 また立つことは下記に示すように身体的によい影響を及ぼします。 立つことによる身体に与える効果は以下の通りです。 骨・関節系…骨に体重がかかることにより骨粗鬆症を防ぐ 骨格筋系…立つことで筋力の低下を防げる 循環器系…血液の循環状態を改善する 呼吸器系…肺の容積を増やすことができる 立つことは「人間らしさ」の表現のひとつでもあります。 現在病院や介護施設で寝たきりになっている人も、「レベルに応じた適切なケア」を受けていれば今でも立つことができたかもしれません。 少なくとも1日合計20分立つ時間を作れば立つ能力は保たれ、寝たきりになることを防げるでしょう。 実際にケアに入る前の5つのステップ 実際にケアに入る前には、ケアを受ける相手に私たちのことを受け入れてもらう必要があります。 認知症が進行し相手が分からないだろうと考えて、相手の了解も得ずにケアに入っては相手との信頼関係は築けません。 認知機能が低下した人だからこそ、普段常識的におこなっている関わり方が大切になってきます。 ここから実際にケアに入る前の5つのステップを紹介します。 ①出会いの準備 最初のステップでは自分の来訪を相手に伝えケアの予告をする段階になります。 ケアの予告をすることは非常に重要です。 なぜなら相手がケアに同意してないのに突然布団をめくってしまうと、相手は驚きケアに対して拒否反応を示す可能性にも繋がるためです。 まず自分の来訪を告げ、相手の領域に入りケアの説明をしましょう。 ②ケアの準備 2つめのステップでは、相手からこれから行うケアに対して合意を得ることです。 ここで大切なことは、3分以内に合意が得られなければ「ケアをあきらめる」ことです。 長い時間相手を説得しても、相手は不信感ばかりが強くなり信頼関係の構築はできません。 あまりにも拒否が強い場合は、午前に声かけをしたら次の声かけは午後にするなどしましょう。 合意のないままケアを行うことは「強制ケア」になってしまいます。 例え必要なケアであったとしても、相手は暴力を振るわれたと思い込みます。 これでは「この人は悪い人」という印象を与え、顔を見ただけで拒否されるようになってしまうでしょう。 ③知覚の連結 知覚の連結とは実際にケアに入った際に使う手法になります。 「視覚」「聴覚」「触覚」の3つの感覚に対して、ポジティブな感情を与えることにより、ケアを受ける人が心地よい状態になることを目指します。 実際にケアを行う際に「笑顔」で「穏やかな声」で、そして「優しく触れる」ことです。 知覚の連結を意識したケアを実践することで相手の緊張感がやわらぎます。 「見る」「話す」「触れる」の技術を包括的に行うことが必要になります。 ④感情の固定 感情の固定とはケアが終わった後に、「気持ちよかった」「楽しかった」と利用者様にポジティブな感情をしっかりと残すことです。 そうすることで次のケアにつなげることができます。 シャワー後の声かけを例に説明します ケアの内容を前向きに評価 「シャワー気持ちよかったですね」 相手を前向きに評価 「○○さん、シャワーをして綺麗になりましたよ」 「○○さん、たくさん協力して下さいましたね」 共に過ごした時間を前向きに評価する 「わたしもとっても楽しかったですよ」 「お話しできて嬉しかったです」 このようにケアの後にポジティブな声かけをすることで、「この人は嫌なことをしない人だ」と記憶してもらうのです。 認知症になっても「楽しい」「嬉しい」という感情は維持されます。 やや大げさにポジティブな声かけをすることがオススメです。 そうすることで相手との「絆」もより深まるでしょう。 ⑤再会の約束 最後のステップは、ケアが終わり相手のそばを離れる前に「再会の約束」をします。 相手が約束した内容を忘れたとしても心地よかった記憶や感情が残っていれば、次にそのスタッフの顔を見たときに笑顔で迎えてくれるでしょう ユマニチュードの実際の効果は? ユマニチュードによるケアを実施することで、認知症患者の態度が柔らかくなったり、攻撃的な言動や行動が減ったりするという効果があります。 これは介護者と認知症患者で信頼関係が結べていることが大きな理由ではないでしょうか。 実際にユマニチュードを取り入れた病院での報告を取り上げてみました。 『福岡県久留米市の聖マリア病院では、集中治療室の全看護師が技法を学ぶと患者を身体拘束する割合は半減し、せん妄の発生率は5分の1に下がった』 福岡市で導入3カ月後の変化を調査した結果、介護への抵抗など認知症に伴う行動・心理症状の発生頻度が減り、家族の介護負担感の軽減に有効と確認された』 一番の効果は、介護者が抱きがちな「罪悪感」から解放されることではないでしょうか。 実際に介護現場で働いていると介護する側もされる側も「申し訳ない」という気持ちを感じる場面が多いのも事実です。 信頼関係を高め「絆」を深めることにより一緒に笑い、充実感に包まれることが、ユマニチュードの一番の効果ではないでしょうか。 まとめ ここまでユマニチュードの技術について説明してきました。 ユマニチュードは相手との信頼関係を構築するための技法である ユマニチュードでは決して強制ケアをしない ユマニチュードの技術には「見る」「話す」「触れる」「立つ」の4つのがある ユマニチュードでは実際にケアに入る前に5つの段階を踏む 「出会いの準備」「ケアの準備」「知覚の連結」「感情の固定」「再会の約束」 最後までお読みいただきありがとうございます。
介護認定結果の通知を受け、いざサービスを利用・継続しようと思ったものの、 「希望するサービスが受けられない」 「介護の手間は増えているのに介護度が低くなり、今まで受けていたサービスが受けられなくなった」 ということが起きることがあります。 状態に適した認定結果をもらうために、介護認定調査時のポイントについて説明します。 介護認定申請とは 介護保険によるサービスを利用・継続するには、要介護認定の申請を行う必要があり、介護保険申請書が必要となります。 40~64歳までの第2号被保険者が申請を行う場合には、要介護状態等の原因である身体上及び精神上の障害が特定疾病によることが要件とされています。 認定調査とは 介護認定には、認定調査員が行う「認定調査」と主治医が作成する「主治医の意見書」の2つの書類が必要になります。 認定調査は新規申請を除き、介護認定有効期間の満了の日の60日前から満了の日までに市町村へ提出します。 申請後は、市区町村の職員または委託を受けた介護支援専門員が自宅や施設などを訪問し、心身の状況に関する調査を行います。 主治医意見書の作成については市区町村が主治医に依頼をしますが、主治医がいない場合は、市区町村の指定医の診察が必要です。 認定調査員とは 令和2年4月 1日 より指定市町村事務受託法人における認定調査は介護支援専門員が行うことを基本とはしています。 しかしm介護支援専門員その他の保健、医療または福祉に関する専門的知識を有する者が行うこともできるようになりました。 厚生労働省「要介護認定等の実施について」の一部改正について.pdf 認定調査内容とは 認定調査は74項目の基本調査と特記事項からなり、認定調査の74項目は大きく次の5つの群と3軸の判定から成り立ちます。 認定調査の5つの群 ・1群 身体機能・起居動作 ・2群 生活機能 ・3群 認知機能 ・4群 精神・行動障害 ・5群 社会生活への適応 判定基準の3軸 ・能力を確認して判定する ・介助の方法(生活を営む上で他者からどのような介助が提供されているか) ・障がいや現象(行動)の有無 これらの5つの群を3軸の内容を組み合わせて調査することにより、タイムスタディに基づく樹形モデルから、申請者にかかる介護の手間としての「要介護認定等基準時間」が算出されます。 介護度が決定する仕組み 介護認定は一次判定結果をもとに二次判定で審査され決定します。 一次判定とは、調査結果および主治医意見書の5項目をコンピューターに入力し、全国一律の判定方法により要介護度が判定されます。 一次判定の結果と主治医意見書に基づき、介護認定審査会による要介護度の判定が行われることを二次判定といいます。 そのため、一次判定結果の内容で例え要介護状態であっても、審査会で要支援状態になることがあります。 認定審査会に伝わる特記を書いてもらうには 判定基準の能力判定および介助の方法については、原則として実際に出来るか、出来ないか、介助が行われている、いないかで選択します。 認定調査時に普段は行えていない動作を無理に行うことや、出来ていない事も自分で行っていると答えてしまう可能性があります。 本人の返答が事実と違う場合も想定されるため、調査員に伝えやすいよう本人の死角になる位置で本人の言った言葉に対し、首を横に振るなどジェスチャーで違うことを気付いて貰うとよいでしょう。 本人の前で事実を説明することで、調査後に本人と家族がトラブルになる事もあるので、調査後に電話で再確認して貰うようメモを調査員に渡す事も効果的です。 実際に試行した結果と日頃の状況が異なる場合は、一定期間(調査日よりおおむね過去1週間)の状況において、より頻回な状況に基づき選択されます。 家族が同席し日頃の動作について調査員に説明することが望ましいでしょう。 認定審査会で検討されるケースとは 調査時に行えている行為が適切でない場合や、介助項目における「見守り等」や「一部介助」「全介助」といった選択肢は、介助の量を意味していません。 具体的な介助の量については、その内容が具体的に特記事項に記載されていることが必要です。 例えば、麻痺や疼痛などがある独居高齢者の更衣動作の場合、介助をする人がおらずベッド上で1時間程度かけている、認知症高齢者の場合では着衣動作自体は可能ではあるが、同じ衣類や汚れた衣類を何日も実際には着ている、下着が後ろ前や裏返しで着用しているなどの場合もあります。 また、有無の項目(BPSD関連)は、その有無だけで介護の手間が発生しているかどうかは必ずしも判断できません。 介護の手間を二次判定で適切に評価するためには、特記事項に記載されている介護の手間を、頻度もあわせて検討する必要があります。 介護者による介助がBPSDを引き起こしている場合などもあり、介助方法が、不適切であると認定調査員が判断する場合は、特記事項にその理由と適切な介助について記載し、介護認定審査会の判断を仰ぎます。 BPSD(行動心理症状)とは、記憶障害や見当識障害といった認知症の中核症状に伴ってみられる二次的な症状を指します。 不安や混乱が続くことに適応しようと模索して、強い不安・混乱・自尊心の低下等から徘徊や興奮、暴力行為といった様々な問題が起こってしまうのです。 実際に行われている介助が不適切と考える状況 ・独居や日中独居などによる介護者不在のために適切な介助が提供されていない場合 ・介護放棄、介護抵抗のために適切な介助が提供されていない場合 ・介護者の心身の状態から介助が提供できない場合 ・介護者による介助がむしろ本人の自立を阻害しているような場合 介護の手間の判断は、一部介助であるか全介助であるかといった選択だけで行われるものではありません。 介助をするほうが本人にとって適切な介助であったり、介助者にとっても介護の手間がかからないものの、本人のこだわりや介護拒否から見守りや声掛けなどをしながら本人の意向に配慮して変更するなどの対応が求められる場合もあります。 このような細かい内容を認定調査員に説明することが必要です。 介護認定審査会とは 介護認定審査会とは、市町村の附属機関として設置され、要介護者などの保健、医療、福祉に関する学識経験者によって構成される合議体です。 介護認定審査会複数の市町村が共同で設置することも可能になっています。 認定審査委員会のメンバーは、医師や歯科医師・薬剤師・看護師・保健師・歯科衛生士・介護福祉士・社会福祉士・介護支援専門員などの有識者が市町村長から任命されます。 認定審査会では認定調査員が作成した調査書からコンピューターによる一次判定結果を元に、主治医に意見書をもとに介護度を決定することとなります。 そのため、実際に申請者から直接、審査に必要な情報を記載する認定調査員と主治医は重要な立場と言えるでしょう。 介護度の違いによるサービスへの影響 要支援2と要介護1、要介護1と要介護2では使えるサービスに大きな違いが出てきます。 例えば、要支援2と要介護1では訪問介護や通所介護の利用回数が大きく異なるので注意が必要です。 要支援状態になると訪問介護では通院乗降等介助や通院介助といった受診に伴うサービスや、 看護小規模多機能型居宅介護の利用が出来なくなります。 また、施設系サービスでは老人保健施設への入所も出来なくなります。 また、要介護1と要介護2では車椅子や特殊寝台などの福祉用具貸与など、生活環境に与える影響が大きいため、注意が必要です。 要支援状態から介護状態に切り替わるポイント ・認知症の有無 ・状態の安定性 運動機能だけでなく思考力や理解力の低下がみられるなど、認知症の疑いが高いと判断された場合、一次判定で要支援2であっても要介護1と判定されることや、主治医の意見書などの調査により 半年以内に状態が大きく変わる可能性があると判断された場合、要介護1と判定されることがあります。 認定審査会の簡素化及び有効期間の延長について 平成30年4月1日以降、一定の要件を満たす場合、認定審査会の簡素化が可能となりました。 簡素化の要件は以下の6つです。 簡素化の要件 ・第1号被保険者であること ・要介護更新申請であること ・一次判定における要介護度が、前回認定結果の要介護度と同一であること ・現在の認定有効期間が12か月以上であること ・一次判定における要介護度が「要支援2」又は「要介護1」であり、状態の安定性判定ロジックの判定結果が「不安定」でないこと ・一次判定における要介護認定等基準時間が、一段階高い要介護度から3分以内でないこと 簡素化により審査会の審議が迅速に対応できるので、多くの件数の認定結果を出せる事となります。 しかし、認定調査の特記事項などの詳細な審査が行われなくなるため、申請者の不利益・不公平につながる可能性があるとの見解もあります。 認定結果や身体状態変化に併せ都度、区分変更なども検討する事が望ましいでしょう。 まとめ 介護保険では、要介護度に応じて受けられるサービスが決まっているため、適切な介護認定結果を受けられるよう認定調査時には家族が同席して普段の生活について確実に調査員に説明しましょう。 介護認定審査会における一次判定からの判定の変化には、認定調査の69項目と併せ主治医意見書による5項目が認知症の有無や病状の安定性が反映されます。 介護認定結果への反映の為には明確な根拠と具体的な「介護の手間」と「頻度」を特記事項に記載し、認定調査員が適切と考える介助の方法と実際に行われている介助の方法との判断の違いを、介護認定審査会で検討して貰えるよう、その理由や事実を特記事項に記載して貰う事が重要です。 最後までお読みいただきましてありがとうございます。
高齢化が進む中、多くの人は介護を必要とする状態になっても、可能な限り住み慣れた自宅や、地域での生活を希望する事が多いです。 しかし、単身世帯や高齢者のみの世帯増加もあり、行政や関係者の力だけではさまざまなニーズに対応する事に限界があります。 介護保険などの支援を受けている高齢者はもちろん、介護保険を受けていない高齢者高齢者が住み慣れた地域で生活を続けるにはインフォーマルな支援が重要です。 ここではオススメの社会資源や保険外サービスについて紹介します。 インフォーマルなサービスとは インフォーマルなサービスとは、公的機関や制度に基づく専門職によるサービス(フォーマルサービス)以外の支援の事をいいます。 インフォーマルサービスは家族や友人、地域住民、ボランティアなど制度に基づかない援助ですが、 補えない支援や住み慣れた地域と事情に応じた支援ができます。 インフォーマルの種類 ・家族や友人 ・ボランティア ・民生委員 ・商店 社会資源は、地域包括ケアシステムを基幹としたさまざまなサービスが誕生することにより、高齢者の細かなニーズに対応できる環境を整備することができます。 民間事業者が提供するサービスは全額自己負担ですが、法的規制が少なく公的サービスにない細やかなニーズに対応できるため、希望するサービスを受けることができます。 高齢者を取り巻く社会的問題 高齢者を取り巻く社会的問題として、独居による孤独死や買い物難民、認知症高齢者の増加などが問題となっています。 高齢者が住み慣れた自宅や地域で住み続けるうえでの困りごととして、日本能率協会総合研究所の「高齢者未充足ニーズ調査 2019年」の結果による高齢者の生活全般に関する代表的な困りごと57項目は以下のとおりです。 57項目の代表的な困りごと ・文章を読んでいて理解するのに時間がかる ・相手の言っていることが、すぐに理解できない ・何をしようとしたのか忘れる ・コンロの火の消し忘れが不安になる ・買い物に行っても必要なものを買い忘れる ・買い物がおっくうと感じる ・薄暗くなると段差が見えず怖い 等 このように、認知機能の低下や身体的変化が危惧されます。 インフォーマルサービスの一例 インフォーマルサービスには以下のようなものがあります。 ・病院や介護施設から帰宅するときの介助 ・民間企業による食事や入浴、排せつ介助や見守りなど ・声かけや傾聴ボランティアによる話し相手 ・地域サロン ・各種機関による電話相談 など インフォーマルサービスのメリットとデメリット インフォーマルサービスのメリットは、支援内容に縛りがないため、幅広い支援を受けられることです。 そのため、フォーマルサービスでは対応できないような細かいニーズを解消できます。 ボランティアなどが運営しているため、金銭的に厳しくないものも多いです。 しかし、フォーマルサービスのように専門性のあるサービや安定た支援を受けることができません。 また、インフォーマルサービスは全額負担になるため、サービス内容によっては、高額の介護費用がかかることがあります。 高齢者の悩みに寄り添ったITツールが必要不可欠 健康・福祉分野では健康づくりの総合的推進や持続可能な介護保険制度の運営、介護サービスの充実(介護離職ゼロの実現)、認知症高齢者支援施策の推進などが実施されています。 反面、インターネットによる情報収集やSNSなどコミュニケーションがオンラインでおこなわれるなか、高齢者の情報リテラシーの低さにより格差が生まれており、地域に取り残されている高齢者が増加しています。 高齢者におすすめのIT機器 身体的に不自由があっても、適したITツールを活用することで生活の困りごとを解消できます。 高齢者は身体的機能低下による活動範囲の縮小や認知機能低下により、コミュニケーションスキルに不安を感じているものです。 ここでは、高齢者自身が問題を解決出来るようスムーズに扱えるIT機器について紹介します。 音声で情報を入力できる Alexa Echo Show Echo Showは、15.6インチフルHDのディスプレイでビデオ通話ができるので、離れて暮らす高齢の家族をサポートが出来るだけでなくコミュニケーションを緊密にしてくれます。 そのほか、ウィジェット機能で、天気やメモ、買い物リスト、カレンダー、お気に入りのスマートホームなど、さまざまな情報をホーム画面に配置できます。 また、ビジュアルID機能にも対応しているので、自分だけにカスタマイズされた情報をチェックすることも可能です。 機能性だけでなく声をかけるだけであらゆる操作ができるので、機械の操作が苦手な高齢者世代でも直感的に使用できます。 見守りに活用 Echo Showは、呼びかけ機能やビデオ通話でいつでも実家とつながる事ができるので、安否確認・コミュニケーションツールとして活用できます。 セキュリティカメラを実家に設置しておけば、Echo Showシリーズのデバイスを介して、家族と会話できるだけでなく、モーション検知やライブ映像などの見守り機能を利用し転倒や徘徊などの早期発見ができます。 スケジュール管理 通院日や介護サービスなどの予定などの情報をひと目で確認できるよう、ホーム画面に表示するウィジェットを選択できます。 服薬を忘れてしまう高齢者に対して、Alexaに「朝食後に薬を飲む、をリマインドして」と声をかけると、薬の飲み忘れをしないように時間になったらリマインドしてくれます。 声掛けにより飲み物忘れを回避することが可能です。 買物や調理の準備をお手伝い 店舗先までの移動に不安があっても、Echo ShowがあればAmazonで買い物のサポートができます。 買い物忘れもAlexaなら、足りない材料を買い物リストに追加しておくことで買い物中にスマホのAlexaアプリで確認できたり、いつもAmazonで買っている常備品を声だけで再注文できます。 調理面でも冷蔵庫にある食材で献立に不安があっても、Alexaでクックパッドのレシピ検索を活用したり、Echo Show 15の大きな画面でレシピを見ながら調理できます。 スマートホームを一元管理 Alexaに対応する別売りのライト、エアコン、ロボット掃除機などのスマート家電やスマートリモコンを使えば、旧来のリモコン家電の多くがEcho Show で操作可能です。 対応するスマートホームデバイスをホーム画面に追加して手軽に操作できるだけでなく、それらすべてのデバイスをダッシュボードで一元管理することもできます。 そのため、ベッド上で過ごすことが多い寝たきりの高齢者でも、自室の環境を整える事が出来るので介護負担の軽減になります。 高齢者を支える地域の活動 地域のさまざまな生活課題に対して課題の把握から解決のため、関係機関や団体などと連携することで具体的な方向性を示すことができます。 認知症カフェ 認知症カフェには認知症を患っている方だけでなく、そのご家族の方や地域の方など誰でも参加できる場所で、「オレンジカフェ」と呼ばれることもあります。 認知症カフェは認知症の方々が触れ合うだけでなく、専門家に相談することや、地域の方々と情報交換をする場です。 参加費用は数百円であることが多いので、金銭的な負担はあまりありません。 認知症カフェの開催日は地域によって異なるため、各自治体のHPなどで調べてみるとよいでしょう。 食事の宅配サービス 近年では食事の宅配サービスが増えてきました。 食事配達サービスを利用することで、食事を準備することや片づけをしなくてよくなります。 介護の必要な家族の負担軽減だけでなく、高齢者の一人暮らしや高齢者のみの世帯にもおすすめのサービスです。 企業シャトルバスやスクールバスを活用したコミュニティバス事業 コミュニティバス事業は、公共交通空白地の地域住民の移動手段の確保として活用できます。 高齢に伴い免許を返納した方や、路線の削減や廃線により通院や買物などの移動手段が困難になっている方は大勢います。 次世代モビリティとして企業のシャトルバスやスクールバスとして活用されている車両に一般利用者が混乗することで、移動に係る問題の解決と利便性の充実を図れます。 また、タクシーを利用する場合、配車アプリと併せて活用する事によって、出先でも正確な乗車位置を伝える事ができ、目的地までの乗車料金や距離が把握できるため、予定や予算などの心配がなく使用できます。 生活支援コーディネーター 生活支援コーディネーターは、高齢者やその家族が暮らしやすい環境を実現するために、地域の方々と支え合う仕組みを考え、課題解決をします。 生活支援コーディネーターの役割として生活支援ニーズの把握をしたり、地域でボランティアとして活動する方の養成や支援を行うほか、高齢者自身がこれまでの経験を活かし地域を支えてくれる支援のマッチングなどインフォーマルな取り組みを繋げてくれます。 まとめ インフォーマルなサービスは介護保険制度のルールに縛られることなく、介護保険対象者以外の方も利用することができます。 高齢化が進む中で、専門職による人材不足が懸念される中、自由にサービスを選択できるインフォーマルにも目を向け、高齢者自身が活用できるIT機器を活用することで生活レベルは大きく変化するでしょう。 制度の中でできる、できないにこだわるのではなく、自分の地域に地域になにがあるのかを把握すると共に各地域の情報を参考に地域特性に応じたインフォーマルを作り出すことが重要です。 上記に記載したものだけでなく、さまざまなサービスがありますので、興味のある方は一度調べてみることをおすすめします。 最後までお読みいただきましてありがとうございます。
2000年に介護保険制度が創設され、20年以上が経過しました。 全国に多くの介護施設が作られてきた中、残念ながら入居や利用に注意すべき問題のある介護施設も見受けられます。 ここでは、ご家族の方が介護施設を見分ける確認ポイントをお伝えしていきます。 確認したい4つのポイント 1,「見学お断り」の施設は要注意 施設の利用を検討する前に、見学ができるかどうか施設側に確認してみましょう。 見学のお願いをした段階で、「うちの施設では、見学は無理です」と言われたら、その施設は要注意です。 施設側としては「入居者のプライバシーを守るため」と断りをいれてくることが多いです。 しかし介護保険などの公的資金を使っている施設であれば、国民には見る権利があります。 入居者のプライバシーを守りながら施設を見学できる方法を考えていない施設というのは、その時点で問題です。 見学を拒否する背景として ・劣悪なケアをしている ・身体拘束など、入居者や利用者が自由に生活できない といったことが挙げられます。 しかし、最近は新型コロナの影響で、見学を制限する施設もあるため、「見学できないから、悪い施設だ」とは一概には言えません。 ですが良い施設は、以下のような制限を設けることで、見学者への対応を可能な限り行っています。 ・予め見学可能な日時を伝える ・見学者には検温と消毒、マスクやディスポグローブを着用してもらう ・入浴場など、入居者や利用者がいない場所だけでも案内する 逆に、なんの工夫も交渉もなく見学を一切お断りする施設は要注意です。 その様な施設は候補から外しましょう。 2,私物の持ち込めない介護施設は、認知症の対応ができていない 施設内の見学ができないのであれば、私物を持ち込めるかどうか確認してみましょう。 なぜなら、私物は認知症の人にとって「自分を保つための必需品」だからです。 住み慣れた家から突然、無機質な部屋にベッドだけの空間に移動されたら誰だって不安になりますよね。 そんなとき、私物があることで、心の不安が軽減されるのです。 「私物が多いと、他の入居者とトラブルになったりしないの?」 と、不安に思う人もいますよね。 確かに認知症の中には「私の物だ」と考え、勝手に他人の物を取ることがあります。 しかしそのトラブルを防ぐのは、介護職員など施設側の役割です。 知識があり経験豊富なスタッフであれば、私物を持ってくる人に対しては、 ・物を取られないよう、私物は部屋から出さないように依頼をする ・食堂など皆が集まる場所で使う場合は、必ず名前を書いてもらうようお願いする と、事前に説明をします。 また物を取りやすい入居者や利用者がいる場合は、その人と距離を取ったり、私物を持ってきている人には状況を説明して、なるべく私物を共用スペースへ持ってこないように伝えます。 良い介護施設であれば、職員は自然とこの対応を取ることができます。 「私物を持ってこられると、困ります」と断る施設は、スキルがない職員が多いと考えた方が良いです。 3,機械浴を自慢する介護施設は要注意 介護施設を見学するとき、特にチェックしてもらいたいのが「お風呂場」です。 介護施設の中には、ストレッチャー浴やリフト浴などの機械浴(特殊浴槽)を自慢そうに見せているところもあります。 しかしこういう施設は、考え方が古いです。 ストレッチャーに乗せられた入浴は、怖いし恥ずかしいものなのです。 中には「こんな身体になってしまった」と情けなくなり、ますます閉じこもりがちになってしまう方もいらっしゃいます。 また一般浴に対しても、プールのように広い埋め込み式の浴槽を使っている施設は、古い考え方が残っていることが多いです。 埋め込み式の浴槽は、バリアフリーという言葉を誤解し、段差をまたがないですむようにと作られたものです。 浴槽が広いと掴まる場所がないので溺れそうになります。 また階段の昇降ができる人というのは、施設の入所者では滅多にいません。 そのため「自分の家ではお風呂に入れていたのに、施設に入所したら入れなくなった」という事態が起こりうるのです。 最近の一般浴は、家庭と同じような浴槽に、浴槽と同じ高さの洗い台を設置して入ることが多いです。 浴槽を跨がず片足ずつ浴槽に入れれば、立てない人や歩けない人でも、家庭と同じように入ることができます。 4,施設の運営状態を公表していない事業所は、要注意 介護施設を「終の棲家」と考えている場合、運営している事業所の財務状況や運営状態をチェックしておきましょう。 経営状態の良くない事業所が運営している施設に入居した場合、運営事業者が変わってサービスの質が低下したり、最悪の場合倒産によって退去を求められる場合があるからです。 最近の事業所は、ホームページで決算書などを公表していることが多いです。 視点を変えれば、運営状態を入居希望者に公表しない事業所は、情報公開に前向きでないとも取れるので、注意しましょう。 更に確認したい3つの情報とは!? 事業所が公表している情報で着目してほしい情報は、下記の3つです。 1,入居率 施設のオープンから数年経っているのに入居率が極端に低い場合、施設に何らかの問題がある可能性があります。 2,退去者数 入院や死亡以外に退去者数が多い施設は、トラブルや劣悪な環境など、様々な原因が潜んでいる可能性があります。 3,職員の離職率 職員の離職率が高い施設は、労働環境が良くなかったり、サービスの質が低いことが考えられます。 もしトラブルが起こったら、どうすれば良い? ここまで、注意すべき介護施設のポイントをお伝えしてきました。 しかし、どんなに吟味して選んだ介護施設でも、トラブルは発生するものです。 場合によっては、退去を求められる可能性もあります。 せっかく時間や手間をかけて選んだ施設を、離れたくないという人もいますよね。 そこで、ここではトラブルが起こったときにどうすれば良いか、お伝えしていきます。 1,施設に相談する 利用している中で気になる点や些細なことがあれば、現場スタッフなどの施設に相談しましょう。 現場レベルで解決できれば、大きなトラブルへの発展を防ぐことができます。 状況が改善されない場合は、施設や運営会社へ訴えましょう。 2,第三者へ相談する 施設や運営会社に相談しても解決されない場合や、苦情が言いにくい場合もあります。 そんなときは、第三者へ相談するという方法をとりましょう。 気軽に相談できる電話相談もありますし、市区町村の苦情相談窓口もあります。 連絡先は、施設の契約書や重要事項説明書に「苦情相談窓口」と明記されていることが多いので、予め確認しておくとよいでしょう。 3,国保連へ申し立てる 最終手段として「国保連(国民健康保険団体連合会)」へ申し立てましょう。 国保連は、都道府県と市町村、国民健康保険連合組合が運営している法人です。 国保連では介護相談窓口を設置しており、介護保険サービスについての苦情を受け付けています。 市区町村には介護保険施設の指定を取り消す権限があり、国保連は介護サービス事業者に対して調査や指導、助言を行う権限があります。 トラブルの内容や改善状況によっては、住み替えの検討が最善策となる可能性もあるということも、考えておくと良いです。 まとめ ・施設見学お断りの介護施設は、劣悪な環境など他人に見せられない部分があるのかも知れない ・私物を持ち込めない介護施設は、認知症の対応が上手くできない施設であることが多い ・機械浴を自慢する介護施設は、昔ながらの介護のやり方をしている ・施設の運営状態を公表していない施設は、情報公開に消極的であったり、運営状態が悪いことが多い ・トラブルが起こったら、施設に相談する。 ・施設に言いにくい場合は、市区町村の苦情相談窓口や国保連の介護相談窓口へ相談する。 最後までご覧いただきましてありがとうございます。
訪問介護サービスの一つに、利用者の病院受診の一連を介助する「通院介助」があります。 今回は通院介助一連に纏わるトラブルや対応について、事例を交えながら紹介します。 通院介助とはどんな介助? ここでは通院介護がどのようなサービスなのかを解説します。 病院受診する為に利用者の移動支援を行う介護サービスです。 訪問介護サービスには、大きく分けて「身体介護」「生活援助」「通院等乗降介助」の3つに分かれます。 通院介助は下記の図の通り①~⑤の対応の仕方があり、其々の介助に分けられています。 ①と②に代表されるのは介護タクシーで、介護資格のある運転手が病院への行き帰りの対応を行うものです。 一般的に通院等乗降介助と呼ばれるもので、病院受診前の準備や外出する為の身体介護(移動・移乗・整容・更衣・排泄等)も含まれます。 ③は病院へ受診する為の外出介助で、帰宅まで訪問介護のためヘルパーが対応しますが、院内は基本病院側の対応となる為、介護保険適用外となります。 例外として、病院側が対応できない、院内での家族付き添い対応ができない、利用者の心身不安定による見守りや介助を要する等、理由によってはケアマネージャーが事前確認の上で訪問介護にて院内介助が行える場合もあります。 ④の様に介護度が4~5と重度で相当時間数の身体介護を必要とする場合は、病院受診前の準備や外出する為の身体介護(移動・移乗・整容・更衣・排泄等)も、通院等乗降介助の乗車前や降車後介助の一環とならずに身体介護中心型という形になります。 ⑤は要介護認定(介護度1~5)の利用者が病院受診をする前と後に、受診に関連する介助ではない別の身体介護中心の介護を30分~1時間程度以上のサービスを行う場合が対象となります。 ①~⑤に関して、要介護度認定を受けた利用者が病院受診前後の介助を訪問介護サービス(介護保険)で対応し。病院内の対応は医療機関である病院側(医療保険)が対応する事が前提です。 但し③でも述べましたが、例外として院内介助も介護サービスとして対応できるケースもあります。 要支援の人はどうするの? 基本的に通院介助は要介護認定を受けた利用者でケアマネージャーがケアプランに通院介助が必要であると記載され、訪問介護を計画された場合のみです。 要支援1~2の認定を受けた利用者は、通院等乗降介助は介護保険サービスとして算定できません。 要支援は簡単に言うと「基本的に日常生活を送る能力は持っているが、支援を必要する部分もある」という事を示しいます。 そのため、要支援者の介助は、 「自分でできる事は自分で行う」 「できない事のみ支援する」 「できない事が少しでもできる様になる」 という利用者が自立を維持しながら日々を過ごせる為の支援であると考えると分かりやすいかもしれません。 要支援者と認定された場合、「移動」という動作・行動が自身でできる状態にある事が多く、通院に関してもヘルパーが介助する必要性は無いと判断される傾向にあります。 また要支援は、日常生活支援総合事業の訪問型サービス(旧:介護予防訪問介護)という形でヘルパーがサービスに入る事もありますが、週に1~3回程度で月に4~13回程度入るといった回数が決まっています。 月に回数が定められている中で、病院受診が毎週あるとは考えづらい点や、病院までの移動にヘルパーの介助の必要性を問われる点からも、要支援の認定を受けた利用者がヘルパーによる通院介助を受けづらいとされるのです。 要支援であっても病院受診をするのに不安な面がある場合等、理由によっては支援を受ける事ができる例もあります。 (例1)要支援認定であるが、現病歴による後遺症があり、身体の動きが悪く、躓いたり転倒する危険性があり、日常生活において支障がある場合。 (例2)入院していた要支援の利用者が退院し、退院後の日々の生活において身体状態の不安定がみられ、支援を必要とする場合。 他にも色々なケースがありますが、いずれもヘルパーによる支援が必要とされる場合は、ケアマネージャーや包括支援センター、市町村等の自治体と相談や協議を行い、その上でケアプランに必要性を謳う事で可能となる事もあります。 但し要介護の利用者の様な通院介助ではなく、外出支援(移動支援)という形での対応です。 そのため、介護タクシー(介護保険適用)は利用できない代わりに福祉タクシー(介護保険の適用無し)で対応する等の対応になります。 あくまでも「支援」であり「介助」では無い事と、基本的に要支援対象者は通院介助は介護保険では認められない傾向にあると考えた方が良いでしょう。 利用者の思惑、ヘルパーの困惑 通院介助を行う上でサービスの内容を確認するのは当然です。 例えば、訪問介護側と利用者側で「通院介助にかかる費用」や、「どこまで介助が可能なのか」「病院受診後ついでに、と急な依頼への対応」など、色々と確認しなければいけない事があります。 ケアマネージャーからも通院介助をケアプランに追加する際は事前に説明等を行いますが、介護を行う側と受ける側双方が認識を共有しておかなければなりません。 <下記の図にある、様々なトラブルに繋がってしまう言動事例も参照下さい。> 移動手段もいろいろ、意外とお金もかかる? 「病院受診は訪問介護でヘルパーが対応するから大丈夫だ。」と、受診に関する一連の行動や必要とされる介護のみにクローズアップされがちです。 しかし、介護保険とは別にお金がかかる場合もある事を忘れてはいけません。 勿論、ヘルパーも通院介助においてできる事・できない事の認識をしておく事は絶対です。 例えば、利用者側からすれば「訪問介護サービスでの介護利用だから1割負担(又は2割負担)で済む」との認識をされている場合もあります。 間違いでは無いのですが、通院等乗降介助では「利用者宅から車両で病院へ移動し、受診手続きや薬の受取り等対応しまた利用者宅へ移動する介助」に該当する介護サービスのみ、介護単価で行われます。 当然、車両運賃は介護サービスには含まれません。 介護タクシーでは、通院等乗降介助の介護サービス費とタクシーとしての運賃との合算で請求されます。 介護タクシーを利用しない場合でも、ヘルパーの介助を伴いながら各交通機関を利用した際は 利用者本人の交通機関の運賃と共にヘルパーの運賃も発生します。 一般タクシーを利用する場合は乗合となる為に、1人でも2人でも料金は同じです。 しかし、バスや電車を利用する場合は2人分の運賃が発生し、それは利用者負担となるのです。 また院内介助を行う際に、介護保険対応とならない場合は自費サービスを利用される事があります。 自費サービスは介護保険の様に1割負担(又は2割負担)ではなく、全額負担であったり、介護事業所による金額設定が為されています。 そのため、介護サービス費用の感覚でいくと割高に感じるかもしれません。 重ねて院内での時間が長くなれば、自費サービスの時間も長くなります。 また、通院介助の総額が高額になる場合もあるので、ヘルパーに介助を依頼したいけれど金銭面での負担が苦となることがあります。 利用者側のストレスが、更にトラブルへと発展しかねない状況を生み出す原因とも成り得るのです。 予め、利用者へのモニタリングで病院への経路や受診に掛かる時間を確認しておき、費用を概算し、事前に書面化してお知らせしておく事が出来たらお互い安心かもしれません。 いざ病院へ!と行ったはいいけれど。 何度も言いますが、基本的に病院内での対応は医療管轄である病院側であり、介護保険での利用はできません。 でも実際は、病院受診で受付を済ませて、診察又は検査で待つ間や呼ばれて対応する際に病院側の介助は無く、ヘルパーが対応する事態になる事も少なくはありません。 病院側も人手不足であったり、ヘルパーの付添があるならばそちらで対応したらいいと言う様な言動を取られた事もヘルパーを経験した者ならばあるでしょう。 そんな病院内での対応に関するトラブルの例です。 何れも、通院介助を行う訪問介護側と病院側との連携・確認不足による不手際がトラブルに繋がってしまったケースです。 事前にケアマネージャーと病院側との確認はなされており、その通りに進むべきではあるのですが まれにこういった予想しなかった事態になってしまう事も起こり得るのです。 事前確認し、ケアプランに追加された後、訪問介護側でも通院介助時の訪問介護計画や予定の再確認 予測外の事態に備えての対応策を講じておく等、訪問介護側もヘルパーと再度情報を共有して介助を行う様にしていく事が重要になってきます。 また、自費サービスが発生する場合は、利用者側にも了解を得る形をしっかり取って双方できる限り負担の掛からないようにしなければなりません。 利用者側と訪問介護側で金銭面以外でもこんなトラブルが発生する事もあります。 ①~③の例を上げましたが、通院介助を行う前はきちんと説明をして了承を得ていても、いざ病院に行く=外出するとなると「ああしたい、こうしたい」の欲求が出てくる事もあるようです。 ①の様に「ちょっとだけ良いだろう」という考えでヘルパーに依頼してくる事もあります。 これは訪問介護で対応可能なのか?ケアプランにその介助内容は含まれているか?をよく考えて対応し、分からない場合は訪問介護事業所の責任者に報告・連絡・相談が必要です。 ②のケースは、たまたまその利用者の訪問介護計画に買い物や整理整頓の見守り的支援があった為に 可能となったサービスです。 これが「美容室に寄って帰りたい」や「娘家族のお土産買って帰りたい」等であった場合は対応不可となります。 ③に関して滅多に無いとは思われますが、利用者やその家族からの「訪問介護の契約をしているから、ヘルパーに何でも頼んでおけば良い」という考えの下に出た発言です。 訪問介護のヘルパーによくある「何でも屋」扱いですが、ここでは利用者からきちんと断ってくれた為、トラブルとはなりませんでした。 ヘルパーは第三者からの突然の言動にも落ち着いて対応できないといけません。 他にも色々とトラブルへ繋がる様な事態が発生する事もあります。 基本はケアマネージャーと病院側で確認した上で計画された訪問介護(通院介助)の計画をよく確認し、当日どう対応するのかをヘルパー含めたチームで理解し対応する事が求められます。 また、ヘルパー自身が対応に困る事態が起きた場合は、すぐに訪問介護事業所へ連絡することが重要です。 サービス提供責任者や、場合によってはケアマネージャーに対応を依頼する事も必要となります。 ヘルパー自身の曖昧な判断で対応したり、良かれと思って対応した結果、後に難しいトラブルへと発展してしまう事にも繋がりかねません。 病院という在宅外での介護の為、臨機応変な対応が求められる場合もありますが、あくまでも訪問介護サービスである事を踏まえた上での対応にヘルパーは従事しましょう。 まとめ 今回は通院介助についてや介助時のトラブル、対応等を紹介しました。 ・通院介助とは、要介護度認定を受けた利用者が病院受診をする為に行われる訪問介護であり、通院等乗降介助や身体介護中心型といった形がある。 ・基本的に病院内は医療機関の対応となるが、事前確認によっては訪問介護で対応する事もある。 ・要支援は通院介助の対象外であるが、場合によっては外出支援として対応できる事もある。 ・通院介助では利用者の負担が介護保険以外にも発生する事があるので、双方の確認が必要である。 ・訪問介護で院内の介助を行う場合は、病院側と訪問介護側との連携や確認が再度必要であり、利用者との間にも自費サービスが発生する場合の確認を行っておく必要がある。 ・利用者と訪問介護側の間でも、通院介助をする際にできる事やできない事の確認を行い、双方が理解しておく必要がある。 通院介助は各自治体によっての解釈が異なる場合があります。 利用者の居住する自治体が、どこまで通院に対し、介護対応を許容するのかをよく確認した上で、病院側、利用者側、訪問介護側との連携を踏まえてサービスする事も大切です。 訪問介護でヘルパーが通院介助を行う為の情報の一つとしてお役立て下さい。
ショートステイを運営しているけど、「ショートステイを利用していくことで、利用者や家族はどのようなことを求めているのか」と考えている事業主の方もおられるのではないでしょうか。 この記事では、今後ショートステイに求められるニーズについて考えていきます。 そもそもショートステイとは何か? ここではショートステイの「主な利用目的」や「ルール」について解説していきます。 ショートステイの利用シーン ショートステイは一時的に利用できる短期の宿泊サービスです。 自宅での介護が困難な時や介護者のリフレッシュのために利用されることが多いでしょう。 あくまでも短期的に利用するサービスであり、生活の拠点として長期的に利用するサービスではありません。 ショートステイの主な利用シーンは、次のようなケースが考えられます。 介護者の出張や旅行で自宅での介護が困難な時 介護者の入院などで自宅での介護が困難な時 介護者の休息が必要な時(レスパイトケア) 介護者の体調が優れない時 施設への入所前に施設生活に慣れるため ショートステイの日数制限ルール ショートステイは介護保険が利用できる日数に制限が設けられています。 なぜなら、介護保険サービスは各介護度に応じて一ヶ月に利用できる単位数が決められているからです。 そのため単位数を超えない範囲で、利用日数を抑える必要があります。 各介護度で定められた単位数を超えた場合は、介護保険が適用されず利用料金が全額自己負担となります。 最も介護度の低い要支援1の場合5,032単位、一番重度である要介護度5の場合36,217単位となります。 介護保険内でショートステイを利用できる日数の上限は下記のようになります。 要支援1 要支援2 要介護1 要介護2 要介護3 要介護4 要介護5 日数 6日/月 11日/月 17日/月 20日/月 28日/月 30日/月 30日/月 ※一ヶ月あたりの日数の上限になります ※実際の利用可能日数はサービス加算費などによって異なります。 当然のことではありますが、他の介護保険サービスを利用した場合にはさらに日数が短くなります。 上記のことからもショートステイは長期に利用できるサービスとは言い難いでしょう。 ショートステイに求められること ここでは介護業界の現状を踏まえた上で、ショートステイに求められるニーズについて考えていきます。 介護業界の現状 日本では少子高齢化が進み人口は減少してますが高齢者の数は年々増えています。 特に後期高齢者である75歳以上の増加は顕著になっています。 75歳以上の人口を各年度ごとにまとめてみました。※()内は全人口に占める割合です。 2020年……1,860万人(15%) 2025年……2,180万人(18%) 2040年……2,239万人(20%) このように高齢者が増えることで、介護施設の需要はさらに高まっていくと考えられます。 しかし、高齢者を支える働き手が減少していくなかで、満足な介護サービスを受けることができない介護難民が増えていくのではないでしょうか。 肝心の施設を建設しても、働き手が減少している社会構造の中で人材の確保が難しいのが現状です。 ショートステイに求められるニーズとは? 今後、少子高齢化により介護施設の需要が高まるなか、ショートステイに求められるのは足りない施設サービスの穴埋め的存在ではないでしょうか。 いわゆる「長期利用(終の棲家)」です。 また、長期利用を想定した場合「看取り」のニーズも高まるでしょう。 今後のショートステイは長期利用のニーズがさらに高まる ショートステイの本来の目的は短期利用ですが、実情として利用が長期にわたるケースは一定数、存在しています。 2020年の三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査によると、ショートステイ事業所の6割が31日以上の長期利用を受け入れています。 また、調査対象となった3万9,375人の利用者のうち、3,396人が長期での利用をしています。 これは全体の8.6%を占める数字です。 長期利用をする理由には「特養入所までの待機場所として」が89.2%と最も多くなっています。 これは準特養と言ってもおかしくないです。 今後、後期高齢者の数が増えることや介護人材の減少が進むことを考えると、その数はさらに増えていくのではないでしょうか。 今後のショートステイでは看取り対応が求められる 今後ショートステイでの長期利用が進むことを考えると、ショートステイでの看取り対応のニーズも高まっていくでしょう。 なぜなら施設への入所を待っている間に、老衰や体調不良で亡くなってしまうケースも避けられないからです。 介護事業所で看取りを行う場合、一定の基準を満たしていれば看取り対応を行うことは可能です。 看取りを行うには、介護保険法の定めによって、下記の条件を満たしている必要があります。 看護職員・医師・診療所指定訪問看護ステーションと24時間連絡をとれる体制である 施設入所の際の指針について、本人や家族に説明し同意を得る 医師・看護師・ケアマネージャー・介護職員が看取りに対し見直しをする 看取りに対して研修を行う 看取りの際は自宅や静養室などの環境を整え、他の入所者に配慮する 現在の看取りは8割が病院、2割が施設や自宅となっています。 今後高齢化が進む中で介護施設での看取りの需要は高まるでしょう。 ただ看取りは「介護職員の精神面への負担も大きいこと」や、「人材の確保」、「医療機関との連携が難しい」などの理由により行ってない施設が多いです。 ショートステイを展開する上で大切なポイント 今後、ショートステイの事業を展開していく上で、求められているニーズをしっかりと踏まえ、差別化をしていくことが大切になってくるでしょう。 具体的なニーズに関しては下記が考えられます。 ショートステイの長期利用 ショートステイでの看取り対応 サービス事業者と利用者をつなぐ居宅介護事業所(ケアマネージャー)に、これらのニーズを満たす事業所と認知してもらえれば、様々なケースの依頼も増えていくでしょう。 各事例を一つ一つクリアしていくことで、その実績が強力な営業ツールになるのではないでしょうか。 各市町村によりショートステイの長期利用に関しての見解も違うためハードルがあるのも事実です。 ただ、可能な範囲で他社との差別化をはかっていくことは、経営していく上で重要です。 まとめ ここまでショートステイの求められるニーズについてまとめてきました。 今後、75歳以上の後期高齢者は加速的に増えていく 高齢者の増加と働き手不足で特養などの施設に入れない高齢者が出てくる 施設不足によりショートステイの長期利用のニーズは高まっていく ショートステイの看取りのニーズは高まっていく 今後、ショートステイでは「長期利用」と「看取り」対応で差別化する事も重要 最後までお読みいただきありがとうございました。
高齢化社会が進む中、毎年人口が減っている日本では介護業界の人材不足が課題となっています。 今回は、介護業界をより魅力的にする方法と、人材不足を解消する方法について紹介します。 介護業界の人材が不足している理由 介護業界の人材が不足している理由は、主に以下の2つが挙げられます。 日本は少子高齢化が進み、人口バランスが崩れている。 介護業界はネガティブなイメージが多く、求職者はすくなく離職率も高い。 まずは、この2つを説明します。 日本の少子高齢化 介護業界の人材が不足している理由の1つ目は、「少子高齢化」です。 内閣府のホームページによると、2019年現在で、日本の人口の28.4%が65歳以上となっています。 総人口は減少するも高齢化は進み続け、総人口における65歳以上の割合は、2036年には33.3%になると言われています。 高齢化によって、介護を受ける高齢者が増えていくことでしょう。 また、日本は高齢化が進む中、出生率の減少が続き少子化も問題となっています。 介護を必要とする高齢者が増えるにも関わらず、働き手である若者の割合が減少することが主な原因です。 そのため、企業が人材を確保する競争率も高くなります。 ネガティブなイメージがある 介護職を知らない人に介護業界のイメージを尋ねると、ほとんどの人が「大変そう」「体力仕事」「汚い」「給料が安い」と答えるのではないでしょうか。 介護職の経験を持つ筆者も、親戚や友人に介護職として働くことを伝えた際には同じような回答が返ってきました。 このように介護業界には、ネガティブなイメージが植え付けられています。 これらの理由で、介護業界の人材は不足すると言えます。 介護業界をより魅力的に 介護業界の人材不足を解消するために、まずは介護業界をより魅力的にする必要があります。 介護業界をより魅力的にするためには、「イメージアップ」が重要です。 筆者も介護業界について全く知識がなかった頃は、「介護の仕事は、大変そうで汚い、給料が安い」というネガティブなイメージを持っていました。 しかし、実際に現場で働いてみると、もちろん「大変」と思う面もありましたが、介護職になって良かったと実感する瞬間もありました。 「介護職の仕事は大変で汚い」というイメージをなくす 介護の仕事は、入浴介助やオムツ交換などの排泄介助を一般的な介護の仕事として想像されます。 しかし、働く施設や利用者の介護度によって働き方も異なります。 働く施設や形態などによる違い 介護の仕事は、働く施設や形態によってさまざまです。 デイサービスや介護付きの高齢者施設に勤務する働き方と、介護を必要とする高齢者が住む家を回る訪問介護と呼ばれる働き方があります。 デイサービスは、日中のみ高齢者を受け入れる施設のため、レクリエーションや食事などがメインとなります。 介護スタッフも、基本的な勤務時間は営業時間の8時〜18時です。 また、デイサービスは土日の営業がない施設が多く、休日も確保しやすいと言えます。 高齢者施設は規模に合わせて介護スタッフが必要なため、数十人の介護スタッフが同じ現場で働きます。 そのため、スタッフ同士の協力によって一人ひとりの負担を減らすことができます。 また、苦手とする仕事や大変な仕事は手伝ってもらうなど、働き方の工夫も可能です。 利用者の介護度による違い 介護職の仕事は、介護サービスを利用する高齢者の介護度によっても異なります。 介護度は、要支援1.2と要介護1〜5で表される要介護状態等区分のことであり、その人が必要とする介護、支援の物差しとなる数字です。 ある程度自立した生活を送ることができる支援1.2の高齢者に行うケアは、一般的に「掃除や食事などの一部を介助する」「買い物、通院に同行する」などがあります。 家事の手伝いなどがメインとなるため、体力的な負担は少なくなります。 「介護職は給料が安い」というイメージをなくす 介護業界の賃金を改善するために、2019年10月1日に「介護職員等特定処遇改善加算」が創設されました。 介護職員等特定処遇改善加算は、職場のリーダー的立場にある職員の年収を平均年収まで引き上げ、介護業界の人手不足解消を促すものです。 また、勤続10年以上の介護福祉士には月8万円の手当が支給されます。 介護業界で働くと、キャリアアップと給料アップも可能です。 介護業界の人材不足を解消するには 介護業界の人材不足を解消するためには、どのようにすればよいのでしょうか? 新たな人材の発掘 介護業界の人材不足を解消するには、「新たな人材の発掘」が必要です。 新しい人材を発掘するためには、以下の方法が考えられます。 介護未経験者を「介護助手」とする 介護業界の人材不足を解消するための対策1つ目は、「介護助手という役割を作ること」です。 介護未経験者や介護の資格を持っていない人を介護助手として雇うことで、介護スタッフが介護の仕事に専念できるようになります。 例えば、生活援助と呼ばれる部屋の掃除や買い物は、介護の資格を必要としません。 資格を必要とする仕事とそうでない仕事の役割を分担することで、介護職が働きやすい環境を作ることができます。 外国人労働者を雇う 介護業界の人手不足を解消するための対策2つ目は、「外国人労働者を活用すること」です。 すでに政府は、技能実習制度や特定技能などの制度を作り、インドネシアやフィリピンなどの国と協定を結んでいます。 技能実習制度は、外国人を日本で最長5年間受け入れ、母国では取得できない技能を取得できるようにする制度です。 この制度を利用して、外国人でも介護の資格を取得できます。 環境の工夫 介護業界の人材不足を解消するには、環境を工夫することが重要です。 環境の工夫をするために必要なことは「ICTの導入」です。 ICTは、「Information and Communication Technology」の総称を指します。 日本語では「情報通信技術」と訳され、通信を使用してデジタル化された情報をやり取りする技術です。 例えば、スマートフォンなどのタブレット端末で、先輩や同僚とコミュニケーションや情報共有をすることが挙げられます。 介護業界でICTを使用するメリットは2つあります。 業務の効率化を図れる 情報の連携がしやすい ICTを使用するメリットの1つ目は、「業務の効率化を図れる」ことです。 業務の効率化を図ることで、介護職の負担を軽減できます。 さらに、事務作業にかかる時間を減らすことができれば、介護サービスに時間を割くことが可能です。 利用者に関する記録などを、紙媒体に記入するよりタブレットなどで入力できるため効率が良くなります。 データでまとめて記録できるため、印刷する書き換えるなどの手間が省けて情報共有も簡単です。 ICTを使用するメリットの2つ目は、「情報の連携がしやすい」ことです。 介護サービスには、サービス利用者の家族・介護施設・病院などの医療機関・訪問介護事業所などの繋がりが重要になります。 高齢者に体調不良が見られた場合、医療機関へ繋ぎ、家族にも連絡しなければいけません。 タブレットなどの端末上で、高齢者に関する情報をどこからでも閲覧できます。 スムーズに情報交換ができることで、余分な連絡を取る必要がなく、介護職の負担も削減されます。 また、介護サービスを利用する高齢者の情報は、膨大な量になります。 ICTを利用すると、膨大な量の情報を一括でまとめ、複数の場所で管理可能です。 ICTを利用し、介護職に時間を設けることで、介護サービスの質を向上できます。 そのため高齢者や家族の満足度もあがり、クレームなどを減らすことにも繋がります。 まとめ 今回は、介護業界に魅力を持ってもらう方法と、人材を確保する方法についてお伝えしました。 介護業界の人材が不足している理由には、「少子高齢化」と 「ネガティブなイメージが多い」ことが挙げられる。 介護業界をより魅力的にするために「イメージアップ」が重要である。 介護業界の人材不足を解消するためには、「介護助手という役割を作る」 「外国人労働者を雇う」、「環境の工夫をする」ことが必要である。 最後までご覧くださり、ありがとうございます。
2022年11月1日、神戸地方裁判所において兵庫県立西宮病院で起きた転倒事故についての判決が下されました。 この判決は多くの医療、福祉分野の関係者を困惑させています。 本記事では、転倒事故の判例を確認し、病院や介護施設など現場で働く自分たちを守るために抑えるべきポイントについて解説します。 事故に至った個別の事情についての批評や、裁判に至った経緯やその判決事態への批判を意図するものではありません。 下されてしまった判決により、今後関係者にどのような影響を与えるかの考察ですのでご注意ください。 転倒事故から判例までの概要 2016年4月2日早朝、認知症を患っている男性は看護師に付き添われてトイレにはいりました。 付き添った看護師は、男性が用を足す間別室の患者にナースコールで呼び出されて排便介助の対応をしました。 用を足し終えた認知症男性は、トイレから出て一人で廊下を歩き転倒してしまいます。 その結果、外傷性くも膜下出血と頭蓋骨骨折の診断を受けました。 その後寝たきりになってしまった男性は、2年後に心不全で死亡しています。 男性の家族は、入院中の転倒により怪我をして治療が必要となった結果、寝たきりになり両手足の機能が衰えたと主張しました。 転倒させた病院に責任があるとし、兵庫県に対し2,575万円の損害賠償を求めます。 対する県側は、「別室の患者は感染症を患っており、排便の介助を急いだことはやむをえないと主張しました。 6年後の今年11月、神戸地裁で出された判決は以下の通りです。 「認知症の男性から目を離せば、勝手にトイレを出て転倒する可能性は充分に予見できた。 別室の患者はおむつに排便すれば問題はなかった。 すでにトイレに入っている人よりも、後からナースコールを押した患者はおむつにすればよかった」 として、県側に532万円の支払うよう命じました。 転倒事故の判例を受けた現場の声 この判例を受け、SNS上では、医療や福祉の関係者から多くの反響がでています。 夜勤一人で20人の対応。コールは重なる。おむつをしていてもおむつにできない。 変な判例を作らないでほしい。認知症の人は抑制をデフォルトにしろということか。 両手に火のついたダイナマイトを持たされて。爆発は予見できたって言ってるようなもの。 これは厳しい。今後、リスクの高い人はおむつにしろと言ってるようなもの。 無理ゲー。 マンパワーが足りない。転ぶ時は一緒に転ぼう。 2チャンネル創設者で実業家のひろゆき氏は、「『87歳の認知症患者が病院で歩いて、転倒したので病院は532万円支払え』という判決。認知症患者は、ベッドに縛り付けて動けなくするのが正解ということですね」と呟いています。 転倒事故の判例の問題点 この判決は、ただ単に一つの病院で起きた裁判というだけではなく、病院や高齢者施設で働く全ての関係者にも影響を起こしかねないことです。 この判決の問題点は3つあります。 訴えられるリスク 身体拘束の助長や認知症のある利用者の受け入れ拒否 スタッフは守られない では、一つずつ説明します。 訴えられるリスク 自分が働く施設で同じような転倒事故が起きてしまった場合に、施設が訴えられるリスクが上がったと言えます。 判例が出たということはそれだけ影響のあるものです。 日頃から施設の対応に疑問を持っていた家族が、転倒事故をきっかけに訴えるようになることは容易に想像できるでしょう。 夜勤帯にナースコールが重なり、対応が間に合わず転倒事故が起きてしまうことは、対策をしていても起きてしまうもの。 しかし、判例が出てしまった以上は「転ばないで」と祈るだけではどうにもなりません。 いくら丁寧にケアをしていても、訴えられたら負けてしまいます。 身体拘束の助長や認知症のある利用者の受け入れ拒否 今回の判例は、安易な身体拘束を助長させるとともに、認知症のある利用者の受け入れを拒否する施設を増やす危険性を高めてしまいました。 病院では治療のために身体拘束を行うことはありますが、高齢者施設では原則身体拘束は行いません。 しかし、転倒事故が裁判に発展し損害賠償を求められるのであれば話は別です。 利用者本位を謳い一生懸命ケアしていても、一つの転倒事故から多額の損害賠償を求められてしまっては経営が成り立ちません。 身体拘束が認められる緊急やむをえない場合、「切迫性、非代替性、一時性」に当てはめて身体拘束を行う施設が増えることも考えられます。 最終的には認知症のある利用者の受け入れを拒否することに繋がってしまうリスクがあります。 スタッフは守られない 今回の判例を受け、利用者の安全を守るために少ない人員で走り回っても、転倒事故が起きてしまえば、スタッフは守られないことがわかってしまいました。 訴えられているのは県や病院ですが、事故の当事者や同僚のショックは計り知れません。 働き続けるのが難しくなるケースもでてきます。 転倒事故を完全に防ぐにはマンツーマンの対応が必要ですが、急に人員が増えることはないでしょう。 自分たちを守るためにどうすれば良いかを考えなくてはなりません。 介護事故訴訟は増加傾向にある 介護事故の訴訟件数について、具体的な統計は判明していません。 しかし、介護事故による訴訟数は増加傾向にあるとされています。 介護事故による訴訟で最も多いのは転倒事故です。 転倒することで骨折や脱臼をしてしまうなど重傷を負ったため、訴訟になってしまうことが挙げられます。 その他にも、誤飲や誤食、薬の誤配なども訴訟になることがあります。 施設側の責任を否定した裁判もある 先に施設側の責任を認めた判例についてご紹介しましたが、訴訟の中には施設側の責任を否定したものもあります。 それは、東京地裁にて、平成24年11月13日に判決が出たものです。 事案内容は、71歳の利用者がデイケアを利用していた際、転倒してケガを負ったというものです。 原告は利用者の親族でした。 この際、施設側は以下の記録を提出しています。 利用者のアセスメント表(利用者の状態を情報収集した表)には、寝返りや起き上がり、移乗、歩行についての評価は「自立」であった。また、歩行、立位、座位でのバランスも「安定」という記載がされていた 利用者は施設の見学や利用の際にも一人で歩行しており、その際転倒したことはない 日常的に通院していた病院の診療録でも、利用者は転倒や転落歴がなく、歩行時のふらつきもなかった 上記による記載事項から、利用者には歩行能力において特に問題はなく、階段の昇降を含めて歩行時に介助を必要とする状況にはない、とされました。 このため、施設側は、利用者が転倒することを予見するのは不可能だったと認定し、この裁判の判決では施設側に責任はない、とされました。 このほかにも施設側に責任はなかった、とされる事案がいくつか出ています。 予見可能性が重要 上記の判決から見ても、施設やその職員が事故が発生する可能性があると予め認識できたかどうか(予見可能性)、あるいは、実際に認識すべきであったかどうか(予見義務)がとても重要です。 また、事故を回避できる可能性や、事故を回避する義務があるかどうかも考えなければいけません。 基本的に予見と結果回避は別のものです。 基本的に両方がそろわなければ、施設側の責任にはなりません。 しかし、多くの事件では予見が出来れば結果回避するための措置が必要であるとされ、施設側が責任を負う結果になりやすいのです。 自分たちを守るために抑えるべきポイント 転倒事故が起きてしまった時に自分たちを守るためには何が必要でしょうか。 上記の判例を受けての対応として、ここでは3つのポイントを説明します。 ニュースや事例を共有する 施設のマニュアルや書類を確認する 自分たちを守る仕組みを作る それぞれ説明します。 ニュースや事例を共有する 今回の西宮病院の判例は病院や高齢者施設で働く全ての人に関係します。 報道されている事故の経緯を確認し、チーム内で共有することが第一歩です。 西宮病院の判例以外にも病院や高齢者施設での事故に関する判例は多くありますので、自分たちに関係のあるものを共有し、自分たちの身に降りかかる可能性があることを認識しましょう。 施設のマニュアルや書類を確認する 次に自分たちが働く施設は、利用者や家族に転倒や事故についてどのような説明をしているのかを確認します。 高齢者は転倒しやすいこと、施設で身体拘束はしないこと等、その中でどのような事故予防をしているのか等の説明内容や交わしている書類を確認しましょう。 何が足りないのかを明らかにし、その仕組みを整えるにはどうすればいいか検討し行動する準備をします。 自分たちを守る仕組みを作る それぞれの事業所の中で、自分たちを守る仕組みができているのであれば特に問題はありません。 しかし、ほとんどの事業所は日ごろの業務や現場で起きていることに集中するあまり、自分たちを守る仕組みづくりに着手できていないのが現状ではないでしょうか。 仕組み作りには「個人だけで考えるのではなく、部署や事業所単位で相談し検討する」ことが大切です。 一人ひとりの自己犠牲ややりがいに頼っていては何も変わりません。 委員会や会議、部署内のミーティング等、スタッフ間で意見交換できる場を作り検討する必要があります。 複数のコールが重なったらどのように動くか 起きてしまった転倒事故の再発防止策 家族への説明書類について不足部分がないか確認し、状況に応じて更新する 利用者に対する記録を付けるようにする 上記のように、細かいことからでも始めて自分たちを守る認識を強く持つよう働きかけ、仕組みを作っていくことが必要です。 まとめ いかがでしたでしょうか。 本記事では、兵庫県立西宮病院で起きた転倒事故に関する判例から 判例の問題点、自分たちを守るために抑えるべきポイントについて説明しました。 判例の問題点 訴えられるリスクが増した 身体拘束の助長や認知症のある利用者の受け入れ拒否に繋がる スタッフは守られない 自分たちを守るために抑えるべきポイント ニュースや事例を共有する 施設のマニュアルや書式を確認する 自分たちを守る仕組みを作る 判例がでてしまった以上は自分たちの身は自分たちで守らなければなりません。 今日転倒事故が起きたら訴えらえれてしまう可能性もあります。 自分たちを守り安心して働き続けられるよう、事業所や部署内で検討を重ね、仕組みを作りをしていくことが大切です。 最後までお読みいただきありがとうございました。
介護施設では必ずと言っていいほど一日のスケジュールの中に「レクリエーション」の時間が組み込まれています。 介護にとって身近なレクリエーションですが、楽しめるということは勿論、得られる効果は様々です。 今回はレクリエーションの目的と、効果的に行うための注意点についてご紹介します。 レクリエーションの目的って? レクレーションには3つの目的があると言われています。 ただ参加するのではなく、得られる効果や目的を意識して行いましょう。 ①身体機能の維持や向上が期待できる 介護施設を利用する方のみならず、どんな方でも少なからず年をとるにつれて身体機能は低下していきます。 例えば転びやすくなったり、着脱や入浴など生活の動作が難しくなったりしていくのです。 介護施設で働いていると、転倒やケガを恐れて今まで気軽に外出していた方の行動範囲が狭くなってしまうという話はよく耳にします。 そういった方の運動の機会は日常生活の動作のみとなりますが、その運動量だけでは十分とは言えません。 さらに身体への影響だけではなく、運動量の低下で精神的なストレスとなる可能性も考えられます。 また今は日常生活に支障なく過ごせている方でも今後は分かりません。 そこで必要となるのが介護施設で行う運動や体操です。 身体を動かすレクリエーションの主な目的は、日常生活のサポートや運動機能低下の予防となります。 低下してきている身体機能を今以上に落ちないようにしたり、より向上したりする効果が期待できます。 ②脳の活性化につながる 運動することで身体だけでなく脳の活性化にもつながります。 身体を動かすと「筋肉を動かす」という命令が脳から神経を通って筋肉へ、さらに筋肉から脳へ信号が発信されます。 つまり筋肉と脳は密接な関係にあり、「運動する」ということは認知症の予防や改善に効果があるということです。 また運動のレクリエーションだけではなく、オセロや麻雀、塗り絵やクイズなどそういった活動も脳の活性化につながります。 笑ったり、大きな声を出したりすると認知症の予防にも効果的です。 ③コミュニケーションの場となる 個人で行うものもあれば、皆で一緒に参加できるものも多いレクリエーションもあります。 チーム戦で勝利するために協力したり、話をしながら一緒に間違い探しをしたりなどコミュニケーションをとる機会が多々取り入れることが可能です。 普段はあまり会話をされなくても、レクリエーションでゲームをする時だけは明るく笑顔を見せてくださる方もいらっしゃいます。 1人暮らしをしている方はどうしても他の人と話したり笑ったりする機会は少ないですよね。 また家族と暮らしている方でも家族だけとコミュニケーションをとるのではなく、いつもと違った人と会話をすることも大切です。 交流の場があることで前向きでポジティブになれることがレクリエーションの魅力です。 レクリエーションの内容は? レクリエーションを行うときには、目的に合わせて決めることも大切です。 ①個人のレクリエーション 塗り絵や間違い探しなど1人でも楽しめるレクリエーションのことです。 話すことが苦手だったり、できなかったりする方でも行えるのが利点です。 利用者の方の中に本当に上手に絵を描かれる方がいらっしゃって、聞くと昔は絵を描くことを趣味としていたようです。 そのうち趣味を再開して自宅で描いた絵を持ってきてくださるようになりました。 ただ楽しむだけでなく、過去のことを思い出しながら行うことでより脳の活性化につながります。 ②集団のレクリエーション スプーンリレーや棒サッカーなど皆で協力して行うレクリエーションです。 個人戦も良いですがチーム戦にすることで非常に盛り上がり、得られる効果も大きくなります。 もし参加することが難しくても、観戦で応援して一緒に盛り上がれることができるので一丸となって楽しめます。 どうやったら勝てるのか頭や身体を使ったり、応援のため大きな声を出したりするので心身ともに効果があります。 ③運動のレクリエーション デイサービスなどでよく目にする運動マシンをつかった活動です。 理学療法士や機能訓練指導員の元、適切に身体を使って運動機能の維持や向上を目指します。 日常生活の動作とは全く違う動きができるので、運動不足を感じている方もここで補えます。 ④外出のレクリエーション 付近の公園で季節の花を見たり、普段行かない場所に買い物に行ったりするレクリエーションです。 いつも屋内で過ごすのではなく屋外に出ることでリフレッシュできるため楽しみにする方も多くいます。 また自身の足では外出が難しい方にとっては介護スタッフが一緒なので安心して参加できます。 以前外出レクリエーションで紫陽花を見に行ったことで、外に出ることに対して前向きになった利用者の方がいらっしゃいました。 その後その方は最寄りのコンサートを見に行かれて、会場で友人をつくったという話を聞かせてくださいました。 レクリエーションの結果、運動や脳の活性化だけでなく、外出できるきっかけになることもあります。 こんなレクリエーションを行うデイサービスも!? スリーA「予防ディサービス 折り梅」 「スリーA」とは「あかるく、あたまをつかって、あきらめない」の頭文字から来ている言葉です。 「予防ディサービス 折り梅」では、そんなスリーAを意識したサービスを展開されています。 こちらは静岡県内の病院で看護師長として勤務されていた増田未知子氏が立ち上げた施設です。 認知症の進行を食い止めることだけでなく、今よりさらに良い状態になれることを目指しており、楽しく認知症予防に取り組めるようになっています。 さらには毎月第二水曜日に介護保険の有無にかかわらず、付近に住む方たちが気軽に参加できる「さわやか教室」を開催し、スリーA方式のリハビリで認知症予防を行っています。 カジノ型デイサービス「ラスベガス」 東京を中心に全国に展開している「ラスベガス」というデイサービスがあります。 介護施設らしくない黒のミニバンで送迎し、施設内では機能訓練や食事だけでなく、麻雀やパチンコも楽しめます。 運動したりゲームに勝ったりすると「ベガス」と呼ばれる仮想通貨が得られ、まるで本当のラスベガスで遊んでいるようなデイサービスです。 しかし機能訓練の時間もしっかりと設けられていて、デイサービスとしての機能も十分発揮しています。 このような施設はここだけでなく全国で増加しており、楽しんで通うことでより効果を得られます。 レクリエーションの注意点は? ①無理に参加させない 麻痺などで参加が難しい方は勿論ですが、精神的に参加したくない方もいます。 ご家族からなるべく参加するようお願いされている場合を除き、無理矢理に参加させるのは逆効果です。 それにより怒ってしまったり、デイサービスの場合利用中止になってしまう可能性もゼロではありません。 その方の表情を見て参加をお願いしましょう。 ②トラブルが起きないように注意する 「ズルをした」「負けて悔しい」などがきっかけでトラブルに繋がるケースを目にしたことがあります。 ゲームのレクリエーションは盛り上がるのですが、利用者の方によっては本気になりすぎてケンカとなる場合もあります。 そういったトラブルが起きないように相性を考えながらチームを組んだり、職員は盛り上げつつも注意して進行したりすることが大切です。 万が一トラブルとなってしまった場合は、職員が間に入って話を聞いたり、他のことに意識がうつるように会話の内容を変えたりしましょう。 ③ケガには十分気をつける レクリエーションは日常生活とは違った動きをすることも多いです。 転倒やケガなどには気をつけて行ってください。 特にゲームや外出をする場合は、本番を行う前に職員同士で実践したり、想像できる危険性を話し合ったりすると良いでしょう。 ④マイナスな評価はしない 利用者の方の意欲を削ぐような発言は控えましょう。 例えば絵であれば「この花はこんな色じゃない」「塗り絵の色がはみ出ている」など評価する必要はありません。 レクリエーションは楽しむため、心身機能のために行っていることを忘れずにいてください。 利用者の方がポジティブな気持ちで楽しめるよう職員はサポートすることに努めましょう。 ⑤大きな声でハッキリ明るく進める ゲームなどを進行する際は大きな声でゆっくりと分かりやすく、そして明るく行いましょう。 私たちでもテーマパークなどの進行係の方が楽しく進めてくれると、気分がのってより楽しめます。 それと同じように利用者の方の気分を盛り上げることが大切です。 また中には聴力の弱い方もいるので、全員が平等に参加できるように進行しましょう。 まとめ この記事では、レクリエーションの目的や効果、注意点などについて解説しました。 ・レクリエーションの目的は「身体機能の維持や向上」「脳の活性化につながる」「コミュニケーションの場となる」の3つである。 ・コミュニケーションの苦手な方にとって塗り絵などの個人のレクリエーションは良い。 ・ゲームで協力して盛り上がることで脳の活性化につながる。 ・専門職員指導のもと日常生活とは違った運動で行うことで、身体機能の維持や向上に期待ができる。 ・普段外出のできない方でも外出レクリエーションは、安心して参加でき、気持ちのリフレッシュにもなる。 ・無理矢理参加させることはしない。 ・利用者間でトラブルが起きないように職員は注意する。 ・日常とは違う動きとなる可能性もあるので安全に行う。 ・楽しんで行うことが大切なのでマイナスな評価はしないようにする。 ・大きな声でハッキリと明るく進行して、全員が楽しめるようにサポートする。 最後までご覧いただきありがとうございました。
認知症はだれもがなりうる病気で、家族や身近な人が認知症になることなどを含め、多くの人にとって身近なものです。 認知症が進行すると興奮や幻覚、徘徊など、介護者に多くの負担がかかる場合があります。 その負担が蓄積してくると在宅での介護に限界が生じて共倒れとなる恐れが出てきます。 在宅での介護が辛くなってきたとき、もう限界となる前に、施設への入所、特に認知症グループホームという選択肢があるという知識を持っていることが大切です。 今回は認知症グル-プホームがお薦めな理由についてご紹介させていただきます。 グループホームとは 認知症対応型共同生活介護は、認知症グループホーム(以下グループホームと表記)とも呼ばれています。 認知症の方が住み慣れた地域で可能な限り自立した日常生活を送ることができるよう、家庭的な 環境の中で食事や入浴などの日常生活上の支援が受けられるサービスです。 それでは、入所についての条件やメリットを説明していきます。 グループホームの入居条件 グループホームに入所するためには以下の条件がそろっていることが必要です。 ➀専門医から認知症の診断を受けている。 ②施設の所在地と同一市区町村に住民票を持っている。 ③要介護認定で要支援2以上の認定が必要。 グループホームのメリット それでは、グループホームには、どんなメリットがあるでしょうか? ➀少人数でのユニット制 5~9人で一つのユニットとなっており、少人数のグループのなかで家庭的でゆったりとした、気心知れた環境で暮らすことが出来ます。 ②認知症の対応を知り尽くした職員が対応 入所当初は、周囲の雰囲気に馴染めず居心地が悪くなったり、徘徊につながる場合があります。 しかし、認知症の対応に熟知しているスタッフは、適切な声掛けや寄り添いながら支援することで、利用者と信頼関係を構築しているのです。 そのため、利用者の問題行動が落ち着き、穏やかに暮らしていける支援を受けられます。 ③利用者と介護従事者が共同で行い、日常生活を維持できる。 グループホームの特徴として、利用者の食事その他の家事等は原則として利用者と介護従事者が共同で行うよう努めるものと運営基準上で示されています。 「台所」を設けることも基準化されており、これまで在宅で出来ていた生活を維持する為の支援を目的としています。 ④役割・生きがい、楽しみの創出 認知症の人の中では、役割がなく生き甲斐が失われて寂しい思いを持たれている方も多いのです。 以前好きだった趣味活動、料理が得意だったことなど、そんな情報を基にしながら職員と入居者が一緒にコミュニケーションを取っていきます。 そうしていくことで、出来なかったことを出来るように変えていく働きかけが刺激となって、認知機能の低下や予防が図れます。 グループホームでの仕事は高齢者の失われかけた能力を最大限に引き出しながら活かすことが出来る仕事です。 そんなところにやりがいを感じると言われる職員さんの言葉はとても素敵ですね。 グループホームのデメリット グループホームはメリットだけではありません。 以下のようなデメリットもあります。 ➀他入居者とトラブルになる可能性がある 少人数という環境は入居者同士の相性がとても重要となります。 集団生活に支障をきたす恐れのある方や、他の入居者と相性が合わないために居心地の悪さを感じてしまう方もでてしまいます。 その場合は、調整が難しく、退所も検討しなければならなくなります。 ②グループホーム自体が少ない グループホームは元々数が多くありません。 そのため、人気のあるグループホームは満床になりやすく、すぐに入居することは難しいです。 なかには予約待ちを入れて空きが出るまで有料老人ホームに入っている方もいらっしゃいます。 ③医療的なケア対応に限界がある グループホームは、看護師の配置の義務がないため、医療ケア対応に限界があります。 他施設との違いについて 老人ホームにはさまざまな種類があります。 介護付き有料老人ホーム、サービス付き高齢者住宅などの民間施設であり、公的施設としては特別養護老人ホームと介護老人保健施設、介護医療院などがあります。 簡単にそれぞれの特長をお伝えします。 特別養護老人ホーム 特別養護老人ホームは、「要介護3以上」の認定を受けている方が対象の施設です。 車椅子や寝たきりの利用者が多く、入所にかかる費用は他の施設より一番安いので、希望者も多いことがあります。 そのため、入所できるまで時間を要する事が可能性が高いです。 また、要介護度1〜2の入居には自治体による特例入所が必要となります。 介護老人保健施設 介護老人保健施設は、骨折や脳梗塞などで退院後すぐに在宅生活ができない高齢者が、在宅復帰を目指す施設です。 そのため大抵は3か月という一定期間の間で退去することが前提の施設です。 特別養護老人ホームと比較すると入居しやすい状況ではありますが、終(つい)の棲家にはできません。 介護医療院とは 介護医療院とは、胃ろう等の経管栄養や喀痰吸引等、日常生活上に医療処置が必要な方が入所できる施設となります 。 グループホームのおすすめポイント それでは、グループホームのおすすめポイントを見ていきましょう。 ➀人員配置基準が手厚い グループホームは以下のような人員配置がされています。 ・日中の体制 グループホームでは入居者3名に対し常勤換算で職員1名以上の配置が必要と定められています。 従来型特養は「定員あたりの人員配置」に対しての基準です。 グループホームは「1日あたりの人員配置」が基準となっています。 ・夜勤体制 グループホームでの夜間は入居者9名に対し常勤換算で職員1名以上の配置が必要と定められています。 サービス付き高齢者住宅とか有料老人ホームの場合は住宅のため基準がありませんが、一般的には30人〜70人に一人の夜勤の配置となっているようです。 人員配置基準上、最も人手がある配置基準となっているのがグループホームであると言えます。 ②費用面について 公的施設と比べると高額となりますが、他の民間施設より大体5万円程度安い月額費用で入居できるようです。 ただし、入所一時金がかかるところもあるので、良く調べておく必要があります ③計画作成担当者は、ユニットごとに1名以上配置 グループホームでは適切な介護サービスを提供するために、利用者に合わせたケアプランを作成するための計画作成担当者の配置基準があります。 計画作成担当者のうち、1名以上は介護支援専門員の資格を有していることが人員配置基準の1つです。 また、グループホームの運営基準は、最大3ユニットまでですので、27名までの計画作成となります。 これは、居宅介護支援事業所の介護支援専門員の担当件数である35件よりも、担当件数が少なく、認知症の方の支援に併せたプランが期待されている背景とも汲み取れるでしょう。 施設選びの要は介護者自身 今までデイサービスやヘルパーの手配をしてくれていたケアマネですが、ケアマネは在宅支援のコーディネーターという役割です。 施設への入所を検討をする場合には、役割外となります。 そのため、施設の情報が入った資料の提供をしますが、各施設の詳しい情報を持ち合わせていません。 施設選びを率先して行うのは、介護者自身となるというところを心得ておきましょう。 最初は有料老人ホームに入所しておきながら、グループホームの空き待ちを予約しておくことが重要です。 空いたのちに、認知症の知識を持ったスタッフの元で残存能力を生かし、生活支援を受けながら入居者も介護者も笑顔が戻ったという話もあります。 グループホームへの入所も選択肢の一つとして検討してみてはいかがでしょうか。 まとめ 認知症の人は、理解力や記憶力などの中核症状と併せ徘徊や興奮などの周辺症状の増悪を伴う場合があり、長期の介護負担は介護者の生活を脅かす危険性があります。 特に認知症を有する高齢者は入所後、精神的に不安定になりやすい事もあります。 できれば少人数で自宅のような環境や人員配置の多いグループホームでの生活が望ましいでしょう。 在宅生活の限界を感じ施設入所を検討する場合、認知症グループホームは入所の条件として施設と同一の市町村に住民票が必要なので注意が必要です。 しかし、グループホームは小規模な施設であるため馴染みの環境を作りやすいです。 また、介護の知識や認知症の対応を知り尽くした職員が対応をするため、認知症の方でも安心して暮らすことが出来ます。 是非、介護の限界になるまえに事前に情報を得ておいて検討してみてはいかがでしょうか? 最後までお読みいただきましてありがとうございます。
「ユマニチュードで介護拒否が少なくなったと聞くけど本当?」 「そもそもユマニチュードって何?」 今回の記事ではこのようなユマニチュードの疑問について解説していきます。 ユマニチュードとは ユマニチュードはフランスの体育学の専門家であるイヴ・ジネストとロゼット・マレスコッティが開発したケアの技法になります。 言葉の意味は「人間らしさを取り戻す」という意味を持つフランス語の造語です。 ユマニチュードの基本理念は相手との信頼関係を構築して「絆」を深めることにあります。 代表的な4つの技術である「見る」「話す」「触れる」「立つ」を駆使して相手との「絆」を深めることを目指しているものです。 相手との信頼関係を構築するために嫌がること(強制ケア)をしないのも大切なポイントになります。 なぜ介護の現場でユマニチュードが必要なのか? ユマニチュードは相手との信頼関係を構築し「絆」を深める技法です。 介護の仕事は人を相手にする仕事であるため、相手との信頼関係を深めることは非常に重要です。 そのような理由からも介護の仕事ではユマニチュードは必要ではないでしょうか。 ユマニチュードの具体的な技術4選 人は「周囲からのまなざし」や「声をかけられること」「触れられること」が希薄になると周囲との絆が弱まり、「人間として扱われているという感覚」を失ってしまいます。 ユマニチュードではより良い絆を結ぶための具体的な技術として、「見る」「話す」「触れる」「立つ」という4つの柱を定めてます。 ここでは各項目に沿ってそれぞれ説明していきます。 ①ユマニチュードの「見る」技術 相手を見るという行為は、あなたは存在していると伝えることです。 最悪な状態は「相手を見ない」ということです。 なぜなら「相手を見ない」ということは、「あなたは存在しない」というメッセージを発していることに他ならないからです。 では「見る」とは実際にどのようにすればいいのでしょうか。 水平な高さで相手を見る 正面の位置から相手を見る 近い距離から相手を見る 逆にやってはいけないのが、以下の行動です。 相手を見下ろす……これは「支配・見下し」という非言語のメッセージになります 横から目の端で見る……これは「攻撃的」な印象を相手に与えます 遠くから見る……これは「関係性の薄さや否定的」な印象を相手に与えます 相手を見るというのは非常に重要な技術になります。 ぜひ試してみましょう ②ユマニチュードの「話す」技術 進行した認知症のかたは、話しかけても適切な反応が得られないことがあります。 時には無反応なこともあるでしょう。 私たちは相手が反応を示さないと、だんだんと話しかけなくなってしまいます。 それは、ある意味仕方の無いことではあります。 しかし、私たちはケアのプロフェッショナルです。 相手が無反応だからと言って無視してもいい理由にはなりません。 相手に話しかけることは「あなたはここにいる」と相手に伝える重要なメッセージにもなります。 しかし、実際に反応のない認知症の利用者様に対してどう接すればよいか悩むのではないでしょうか。 そこでユマニチュードでは、自分が行なっているケアの動きを「オートフィードバック」という手法で実況中継します。 実際の入浴時のシーンで「今から頭を洗いますよ」と声をかけたり、背中を洗う際は「背中を流していきますね」と、実際に行っているケアの内容を声に出しながら行っていきます。 メッセージを伝える際は「気持ちいいですよ」「肌が綺麗ですね」とポジティブな表現を使うことが大切です。 「相手が応答してくれないから、こちらも反応しなくてもいい」という罠に陥らないよう注意しましょう。 ③ユマニチュードの「触れる」技術 介助で相手に優しく触れることは、ケアを受ける相手に優しさを伝える技術になります。 ユマニチュードでは広い面積で、ゆっくりと、優しく触れます。 同じ力でも面積が広くなれば、相手に与える圧力も小さくなり、逆に面積が小さくなれば与える圧力も強くなり相手に不快感を与えることになります。 ケアを行う人が「必要な行為」と考えて行う触れ方が受け手にとっては「攻撃的な触れ方」になっていることもあるため注意が必要です。 ユマニチュードの「立つ」技術 人間の尊厳は立つことによってもたらされる側面が強く、これは死の直前まで尊重されなければいけません。 また立つことは下記に示すように身体的によい影響を及ぼします。 立つことによる身体に与える効果は以下の通りです。 骨・関節系…骨に体重がかかることにより骨粗鬆症を防ぐ 骨格筋系…立つことで筋力の低下を防げる 循環器系…血液の循環状態を改善する 呼吸器系…肺の容積を増やすことができる 立つことは「人間らしさ」の表現のひとつでもあります。 現在病院や介護施設で寝たきりになっている人も、「レベルに応じた適切なケア」を受けていれば今でも立つことができたかもしれません。 少なくとも1日合計20分立つ時間を作れば立つ能力は保たれ、寝たきりになることを防げるでしょう。 実際にケアに入る前の5つのステップ 実際にケアに入る前には、ケアを受ける相手に私たちのことを受け入れてもらう必要があります。 認知症が進行し相手が分からないだろうと考えて、相手の了解も得ずにケアに入っては相手との信頼関係は築けません。 認知機能が低下した人だからこそ、普段常識的におこなっている関わり方が大切になってきます。 ここから実際にケアに入る前の5つのステップを紹介します。 ①出会いの準備 最初のステップでは自分の来訪を相手に伝えケアの予告をする段階になります。 ケアの予告をすることは非常に重要です。 なぜなら相手がケアに同意してないのに突然布団をめくってしまうと、相手は驚きケアに対して拒否反応を示す可能性にも繋がるためです。 まず自分の来訪を告げ、相手の領域に入りケアの説明をしましょう。 ②ケアの準備 2つめのステップでは、相手からこれから行うケアに対して合意を得ることです。 ここで大切なことは、3分以内に合意が得られなければ「ケアをあきらめる」ことです。 長い時間相手を説得しても、相手は不信感ばかりが強くなり信頼関係の構築はできません。 あまりにも拒否が強い場合は、午前に声かけをしたら次の声かけは午後にするなどしましょう。 合意のないままケアを行うことは「強制ケア」になってしまいます。 例え必要なケアであったとしても、相手は暴力を振るわれたと思い込みます。 これでは「この人は悪い人」という印象を与え、顔を見ただけで拒否されるようになってしまうでしょう。 ③知覚の連結 知覚の連結とは実際にケアに入った際に使う手法になります。 「視覚」「聴覚」「触覚」の3つの感覚に対して、ポジティブな感情を与えることにより、ケアを受ける人が心地よい状態になることを目指します。 実際にケアを行う際に「笑顔」で「穏やかな声」で、そして「優しく触れる」ことです。 知覚の連結を意識したケアを実践することで相手の緊張感がやわらぎます。 「見る」「話す」「触れる」の技術を包括的に行うことが必要になります。 ④感情の固定 感情の固定とはケアが終わった後に、「気持ちよかった」「楽しかった」と利用者様にポジティブな感情をしっかりと残すことです。 そうすることで次のケアにつなげることができます。 シャワー後の声かけを例に説明します ケアの内容を前向きに評価 「シャワー気持ちよかったですね」 相手を前向きに評価 「○○さん、シャワーをして綺麗になりましたよ」 「○○さん、たくさん協力して下さいましたね」 共に過ごした時間を前向きに評価する 「わたしもとっても楽しかったですよ」 「お話しできて嬉しかったです」 このようにケアの後にポジティブな声かけをすることで、「この人は嫌なことをしない人だ」と記憶してもらうのです。 認知症になっても「楽しい」「嬉しい」という感情は維持されます。 やや大げさにポジティブな声かけをすることがオススメです。 そうすることで相手との「絆」もより深まるでしょう。 ⑤再会の約束 最後のステップは、ケアが終わり相手のそばを離れる前に「再会の約束」をします。 相手が約束した内容を忘れたとしても心地よかった記憶や感情が残っていれば、次にそのスタッフの顔を見たときに笑顔で迎えてくれるでしょう ユマニチュードの実際の効果は? ユマニチュードによるケアを実施することで、認知症患者の態度が柔らかくなったり、攻撃的な言動や行動が減ったりするという効果があります。 これは介護者と認知症患者で信頼関係が結べていることが大きな理由ではないでしょうか。 実際にユマニチュードを取り入れた病院での報告を取り上げてみました。 『福岡県久留米市の聖マリア病院では、集中治療室の全看護師が技法を学ぶと患者を身体拘束する割合は半減し、せん妄の発生率は5分の1に下がった』 福岡市で導入3カ月後の変化を調査した結果、介護への抵抗など認知症に伴う行動・心理症状の発生頻度が減り、家族の介護負担感の軽減に有効と確認された』 一番の効果は、介護者が抱きがちな「罪悪感」から解放されることではないでしょうか。 実際に介護現場で働いていると介護する側もされる側も「申し訳ない」という気持ちを感じる場面が多いのも事実です。 信頼関係を高め「絆」を深めることにより一緒に笑い、充実感に包まれることが、ユマニチュードの一番の効果ではないでしょうか。 まとめ ここまでユマニチュードの技術について説明してきました。 ユマニチュードは相手との信頼関係を構築するための技法である ユマニチュードでは決して強制ケアをしない ユマニチュードの技術には「見る」「話す」「触れる」「立つ」の4つのがある ユマニチュードでは実際にケアに入る前に5つの段階を踏む 「出会いの準備」「ケアの準備」「知覚の連結」「感情の固定」「再会の約束」 最後までお読みいただきありがとうございます。