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2023年1月の記事一覧

  • やりがい満載!ヘルパーが利用者に行う一対一の支援の良いところとは?

    ヘルパーの仕事の醍醐味はなんと言ってもご利用者様との一対一の支援です! やりがい満載!ヘルパーとご利用者様の一対一の支援について、その魅力をお伝えしていきます。 介護は一対一の支援が1番 介護の仕事をする上で、ご利用者様にとっても職員にとっても1番ベストなのは一対一の支援です。 何がどのように良いのかを、実際の介護の現場を経験してきた体験も交えつつご説明していきます。 基本的に同じ人のケアを受けられる 訪問介護のヘルパー援助において一対一の支援の魅力は、ご利用者様にとって「基本的にいつも同じ人のケアを受けられる」と言う点です。 もちろんシフト制のため毎日同じと言うわけではありませんが、施設系の現場に比べると訪問介護の方が、ヘルパーが固定されていることが多いです。 例えば施設で行う介護ですと、ある一定の職員がシフト制で多数のご利用者様のケアにあたります。 これはご利用者様目線で言うと、いつも入浴や排泄介助の職員が変わるため、ご利用者様によっては落ち着かない人も出てくるのです。 特に、施設入所されている方でもご自身でしっかりと意思を伝える方もいらっしゃいます。 そのようなご利用者様ですと、特定の職員に対してケアされたくないとおっしゃる方もいらっしゃいます。 しかし施設型の介護環境ですと、そのような要望が人員的に困難なため、仕方なくケアを受けるご利用者様を多く見てきました。 なので、施設介護も訪問介護も経験した者から言えるのは、訪問介護のヘルパーの方がご利用者が安心してケアを受けれてもらえます。 しかも、訪問介護は基本的に一対一の支援がメインになります。 コミュニケーションを取るのも、ケアを行うのも目の前のご利用者様一名のみです。 ご利用者様にとって訪問介護の一対一の支援は、メンタル的にも安心できる環境なのです。 ご利用者様に丁寧なケアを提供できる 介護の仕事を長くやっていると、ご利用者様との関わりが多くなり、職員のご利用者様への対応が大雑把になってくる職員が出てきます。 この差は個人差はあるものの、多くの職員に見られる傾向です。 特に訪問介護と違い、特別養護老人ホームや、有料老人ホームなどの施設系の介護現場だと、特にこの傾向が強く見てとれます。 訪問介護の一対一の支援と違い、介護施設だと一対多数の所がほとんどなのです。 ケアにあたるその瞬間は一対一なのですが、排泄介助や入浴介助を行う際は制限時間内に順番のケアを行うため、あまり丁寧にケアを行えない時もあります。 これは介護施設の大きな問題で、人員不足により生じてしまう問題でもあります。 その点訪問介護の良いところとして挙げられるのが、ケアが一対一の支援であるということです。 一対一の支援だと、目の前のご利用者様に集中できます。 1人に対するケアのためサービス内容が決まっていて、そのサービスに集中できるからです。 施設介護だと一対多数の環境ですので、他のご利用者の見守りを行いながらケアをします。 そのため丁寧にケアできない環境も生まれてきてしまいます。 このようなことから訪問介護において一対一の支援ほど、ご利用者様と職員にとって良い環境はないのです。 ご利用者様のストレス軽減 訪問介護による一対一の支援は、ご利用者様にとってストレス軽減の効果もあります。 それは、限りなくご自身が安心する環境下でサービスを受けることができるからです。 詳しい内容を以下でご説明いたします。 一体一の支援はヘルパーにとっても良い 一対一の支援に特化した訪問介護の良いところは、ご利用者様の住みたい環境下でサービスを提供することができると言うところです。 介護業界で働いていると分かるのですが、施設で入居しているご利用者様より、訪問介護を活用し在宅介護で過ごされているご利用者様の方が、落ち着いていらっしゃる傾向があります。 不穏な様子を見せる人が少なく、全体に落ち着いている印象を私は持っています。 施設で仕事をしていると、「自分の家に帰りたい」と帰宅願望を訴える方を多く見てきました。 例えば夜中に居室から出てきて、「もう帰らなきゃ、帰って朝ごはん作らなきゃいけない」と訴えるご利用者様などがいらっしゃいます。 その方は認知症で、半年前に入居されていたのですが半年経った今でも夜中に同じ訴えを言い、落ち着かない夜を過ごされています。 職員としても、施設外へ出てしまう恐れもあるので見守りが欠かせません。 ご利用者様も、やりたいことを止められてストレスになりますし、職員としても他のご利用者様の対応などもあるので大変ではあります。 ご利用者様、職員ともに良い環境とは言えないのです。 その点、一対一の支援ができる訪問介護はご利用者様と職員双方のストレスを軽減できます。 いきなり知らないところに入居して、見慣れない景色や環境の中、生活しなければならないことを考えると誰でも不安になります。 なのでヘルパーの視点から言っても、環境をあまり変えずに一対一の支援を受けられる訪問介護はご利用者様と職員にとって良いことづくしであると言えます。 一対一の支援はヘルパーの実力アップ シンプルに、一対一の支援はヘルパーとしてのスキル全体の実力アップにつながります。 どう言う実力がつくのかと言う点についてご説明していきます。 臨機応変力がつく 一対一の支援がメインになる訪問介護では、基本的に職員1人に対してご利用者様1人です。 訪問介護は、特別養護老人ホームや有料老人ホームなどの施設介護との大きく異なり、なんでも1人で対応していかなくてはいけません。 実際に訪問介護の現場では、1人での介護が厳しいと感じるご利用者様は多くいました。 私の経験の中で1つ上げると、ある男性利用者が体が180㎝くらいある大きい方でした。 その方は体重が重い上に半身麻痺の症状をお持ちだった為、1人で介護をするには困難を伴いました。 もう1人いれば簡単に介助できるのですが、もちろん現場では自分1人です。 そのため、私は自身で様々な工夫をして介助を試み、そのご利用者様にも満足頂くことができました。 その時の経験により、その後大きな体格のご利用者様の介護でも、腰を痛めることもなく1人で介助できる技術を身につける事ができました。 訪問介護の一対一の支援で、介護現場での臨機応変さを学ぶ事ができ、それは大きなメリットと言えます。 訪問介護の現場では、ヘルパーとして得られることは非常に多いです。 いろいろな介護度の人から学べる 一対一の支援がメインである訪問介護は、多種多様なご利用者様と関わります。 認知症を発症しているご利用者様や、半身麻痺のご利用者様など、症状も様々に在宅で過ごされています。 その介護度は要支援1から要介護5まで幅広く、中には安否確認だけを必要とする要支援1の方もいれば、全介助で要介護5の寝たきりの一人暮らしの方もいました。 グループホームなどは別ですが、費用の安い特別養護老人ホームは要介護3以上でないと入所できません。 在宅では症状が幅広く様々な介護度のご利用者様を知ることができます。   まとめ ここでは、ヘルパーが利用者に行う一対一の支援の良いところについて、ご紹介してきました。 ①基本的に同じ人の支援(介助)を受けられる ②ご利用者様に丁寧なケアを提供できる ③ご利用者様のストレス軽減が可能 ④一対一の支援でヘルパーもストレス軽減になる ⑤ヘルパー介護力の臨機応変力がつく ⑥いろんな介護度のご利用者様を知ることができる 一対一の支援に特化した訪問介護の良いところは、限りなくご利用者様の住みたい環境下でサービスを提供することができると言うところです。 最後までお読みいただきましてありがとうございます。

  • 介護保険の上限を超過したときはどうすればよい?対処方法や自己負担を軽減する方法について解説

    介護保険制度では、要介護度によって受けられるサービス料の上限が決まっています。 ケアマネジャーは、決められた上限の範囲におさまるようにサービスを調整しなければなりません。 本記事では、介護保険の上限が決まっていることや、この上限を超過した場合の対策、自己負担を軽くする制度について解説します。 介護保険の上限は区分支給限度基準額で決まっている 介護保険のサービスは、訪問介護やショートステイ等のサービスごとに使用できる単位数が決められています。 そして、要介護度によって1ヶ月間に使用できる単位数の上限が決められており、それを区分支給限度基準額といいます。 区分支給限度基準額とは 区分支給限度基準額とは、要介護度ごとに設定された介護保険サービスの月の上限を単位数として設定しているものです。 介護保険はサービス毎に単位が決められており、ケアマネジャーは区分支給限度基準額を超えない範囲で、サービスを組み合わせて調整します。 利用者の自己負担は、所得によって1〜3割に設定されていますが、在宅介護を続けていくと、加齢やADLの低下にともない必要なサービス量は増えるものです。 サービス量が増えると、自己負担とともに介護保険の公的なお金の利用も増えていきます。 しかし、財源に限りがあるので上限が設けられているため、その範囲内でサービスを調整するよう求められています。 ○在宅サービスの区分支給限度額と自己負担額 区分 支給限度基準額(単位) 利用限度額 (円) 1割負担の時の 自己負担額(円) 要支援1 5,032 50,320 5,032 要支援2 10,531 105,310 10,531 要介護1 16,765 167,650 16,765 要介護2 19,705 197,050 19,705 要介護3 27,048 270,480 27,048 要介護4 30,938 309,380 30,938 要介護5 36,217 362,170 36,217 ※1割負担、1単位=10円の場合 参考:目黒区 区分支給限度額(介護保険から給付される一か月あたりの上限額) 区分支給限度額を超過すると全額自己負担になる 区分支給限度基準額を超過してしまった場合、超過した分の介護保険は利用できないので、全額自己負担で支払うことになります。 例えば、1割負担で要介護5の人が1ヶ月に400,000円分の介護保険サービスを利用したとします。 1割負担の支払額は40,000円ですが、限度額は36,217円なので、40,000−36,217の3,783円分超過してしまいます。 この場合、超過した3,783円は全額自己負担になりますので負担額は10倍の37,830円です。 全ての負担額の1割負担分の36,217円と全額自己負担分の37,830円を足して、74,047円がこの方の自己負担額になります。 急に負担が増えてしまいますので、ケアマネジャーは上限の範囲内でサービス調整する必要があります。 介護保険の上限を超えないようにするための対策の一つは、要介護度の区分変更を申請することです。 介護保険の上限を超えないようにするには区分変更を申請する 介護保険の上限を超えないようにするには区分変更申請が有効です。 要介護度が上がると区分支給限度基準額が上がりますので、利用できるサービスの量を増やせるからです。 例を挙げると以下のようになります。 要介護1の時は車椅子のレンタルができなかったが、要介護3になったらできるようになった。 要介護2では他のサービスとの兼ね合いでショートステイが1週間しか利用できなかったが、要介護4になったことで10日利用できるようになった。 特養入所を考えているが、要介護2の状態では入所できないので要介護3以上にしたい。 上記のように、区分支給限度基準額を超えてしまいそうな時は区分変更申請が有効です。 ケアマネジャーとして、利用者本人や家族の生活状況を見ながら提案してみるのもよいでしょう。 しかし、ご利用者様のご家族から「要介護度が上がると自己負担が増えてしまうので困る」という声が聞こえてくることもあるかもしれません。 次は自己負担を軽減させる制度について解説していきます。 介護保険の自己負担を軽くする制度 在宅介護を続ける上で、費用負担を軽くすることも大きなポイントです。 ここでは、自己負担を軽くする制度である「高額介護サービス費」「介護保険負担限度額認定」や、「介護保険料を滞納すると自己負担が増える」ことについて説明します。 高額介護サービス費 参考:厚生労働省 令和3年8月利用分から高額介護サービス費の負担限度額が見直されます 高額介護サービス費は、「1ヶ月に支払った利用者負担の合計が所得に応じた負担限度額を超えた時に、超えた分が払い戻される」制度です。 例えば、市町村民税が課税されていて課税所得が380万円未満の人は、上限額44,400円になっているので、1か月の費用が50,000円かかった場合後から6,000円が返還されます。 介護保険の給付対象外の食費や、全額自己負担分は対象にはなりません。 該当する時に、市町村から申請書が届きますので、必要事項を記載して役所へ提出します。 次回以降は自動で振り込まれますが、はじめに申請をしないともらえないので注意が必要です。 介護保険負担限度額認定 介護保険負担限度額認定は、ショートステイや特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院などの介護保険施設を利用する際の負担軽減対策です。 これらの施設の利用料金は、介護保険の自己負担分(1〜3割負担)と食費、居住費が主なものになります。 このうち、食費と居住費が住民税の課税状況や年金額、預貯金などによって段階的に減額されます。 施設入所の場合は通常15〜16万円かかる利用料金が半額程度になる場合もあります。 要件が複雑ですので、役所の介護保険窓口で対象になるのかどうか確認してみてはいかがでしょうか。 介護保険料の滞納 こちらは自己負担を軽くするというよりは、負担を重くしないようにするための注意点です。 40歳から納付義務のある介護保険料は、健康保険料とあわせて納付します。 年金を受給するようになると、特別徴収といって年金から天引きされるのが基本です。 ただし、年金額が年間18万円未満だったり年度途中で65歳になったり、引っ越したりすると普通徴収になり、納付書や口座振替で支払うことになります。 介護保険料を滞納すると、期間によって以下のようなペナルティが課せられるので、注意しましょう。 滞納期間 対応 内容 1年以上 介護保険給付の支払い方法の変更(償還払い化) 通常1〜3割負担のところ、一旦10割支払い、その後申請をして7〜9割分の払い戻しを受ける。 1年6か月以上 介護保険給付の一時差し止め 一旦10割支払った後、7〜9割の払い戻しが差し止められる。介護保険料を支払えば払い戻されるが、支払わないと差し止め分から差し引かれる場合がある。 2年以上 介護保険給付の減額 時効により介護保険料が納付できなくなる。 また、通常1〜3割の自己負担が3〜4割負担になり、高額介護サービス費の対象外になる。 介護保険料を滞納すると上記のようなペナルティが課され、自己負担が重くなります。 滞納すると市町村から督促状や催告書が送られてきますので、速やかに納付しましょう。 まとめ いかがでしたでしょうか。 本記事では、介護保険の上限や、上限を超過した場合の対策と、自己負担を軽くする制度について解説しました。 介護保険の上限は区分支給限度基準額で決まっている 区分支給限度基準額を超過すると、超過した分は全額自己負担になる 区分支給限度基準額を超えないようにするには要介護度の区分変更申請が有効 介護保険の自己負担を軽減させるには、高額介護サービス費や介護保険負担限度額認定などの制度を活用する 介護保険料を滞納すると自己負担が重くなる場合がある 介護保険の制度は複雑で、利用者やその家族が自ら理解して制度を活用することは現実的ではありません。 ケアマネジャーには利用者やその家族が安心してサービスを受けられるよう、制度をうまく活用し導く役割が求められています。 最後までお読みいただきありがとうございました。

  • 介護業務を楽にする!チームで取り組むIT連携の重要さを解説

    厚生労働省は、介護現場のIT化を進め、根拠を基にした科学的介護を推奨しています。 介護保険施設で働くスタッフの中にも、チームでIT連携に取り組み、業務を効率化したいと感じている人は多いのではないでしょうか。 業務が効率化できれば人手不足や残業が減少し、直接利用者に関わる時間が増えることにより、ケアの質の向上につながります。 本記事では、介護業務が楽になる、チームで取り組むIT連携について説明します。 介護業務とIT連携の現状 ITとは、「情報技術」のことで、コンピューターやデータ通信に関する技術の総称です。 介護保険施設の管轄である厚生労働省は、科学的介護を推奨し、介護現場におけるIT化を進めています。 ITを活用し業務を効率化することで、本来の介護業務に集中できるよう働きかけており、その為の補助金もだしています。 また、ITを活用しビッグデータを収集することで、根拠に基づく介護サービスを提供できる環境作りを目指しています。 とはいえ業界全体のIT化はなかなか進んでいないのが現状です。 記録や行政への提出書類、契約関係の書類等、介護業界はとにかく紙ベースの仕事が多くなっています。 新しくITを導入しようにも、コストがかかりますし、従来のやり方に慣れているスタッフの抵抗感もあります。 ITに詳しいスタッフや、指導できるスタッフがいる施設とそうでない施設で差が大きくなっているのが現状です。 しかし、ITを活用できれば大きな業務改善につながります。 情報共有をスムーズにするために介護業務×IT連携が効率的 介護業務とITは非常に相性がよいとされています。 厚生労働省が行った令和2年度 ICT導入支援事業 導入効果報告まとめ によると、ITを導入によって間接業務が見直されたり、業務管理が効率化されたと感じている事業所が約70%あることが分かりました。 引用:令和2年度 ICT導入支援事業 導入効果報告まとめ | 厚生労働省 介護業務にITを導入すると情報共有がスムーズになり、以下のような効果があります。 ・間接業務の時間が削減される ・業務管理が効率化される ・単純ミスが減る ・研修等の動画コンテンツを活用しやすくなる ・人手不足の解消につながる 一つずつ説明していきます。 間接業務の時間が削減される 前述の厚生労働省の調査によると、約70%の事業所がITを活用することで、間接業務の削減につながったと感じています。 利用者に対する直接的なケアにかかる労力を削減するのは難しいものです。 しかし、利用者の安全で安楽な生活を守る上でも直接的なケアには時間をかけるべきです。 ITを活用することで、記録にかける時間の削減や内容を充実なものにし、ムダな文書をなくしたり、前回作成したデータを活用することができます。 すると、時間を削減することができるため、直接利用者に関わらない部分の業務スピードを上げることが可能です。 業務管理が効率化される 事業所内外との情報共有が円滑にする、シフト管理を効率化できる、重複する記録を廃止したりする等して、職員一人当たり一日30分から1時間削減することが可能です。 一日3人勤務していたら、1.5時間から3時間が確保できることになります。 これだけ時間が確保できたら、直接利用者に関わる時間も自然と増えていきます。 単純ミスが減る 業務のIT化が進むと、紙に書いていた記録をスマホやタブレット等を使って行うことになるため、文字を書くことなく記録業務が完了します。 記録時間を削減するとともに清書や転記作業がなくなり、同時に他部署との情報共有も可能です。 ・紙に書く ・PCで入力 ・他部署へ報告 これらの工程が端末への入力のみになるので、この間に起こるヒューマンエラーはなくなります。 うまくITを活用できれば、業務が簡略化されると同時に単純なミスが減ります。 研修等の動画コンテンツを活用しやすくなる 介護現場はシフト制のことが多く、スタッフが一つの場所に集まって行う研修は、時間設定が難しい場合があります。 今は新型コロナウィルス対策で集合研修を控えている事業所も多いのではないでしょうか。 最近ではYou Tubeで動画研修を行ったり、Zoom等を活用してオンラインで講義を行う方法が広まっています。 現場で行うOJT以外にも、動画コンテンツを活用した研修を取り入れることで、法定研修や職員育成につなげることができます。 人手不足の解消につながる IT化が進むと時間が生まれます。 それまで2時間かかっていたことが半分の1時間でできるようになります。 そうすることで、フロアに一人多く配置できる時間帯もできるでしょう。 普段できない後回しにしていた業務に手が届くようになります。 また、業務にITを取り入れていることをうまく発信できれば、就職や転職活動をしている人に良いアピールが可能です。 結果的にスタッフが集まりやすい事業所になっていきます。 このように、介護業務とITの相性はとても良く、情報共有がスムーズになることで、業務の効率化がすすみ、時間が生まれ、ケアの質を向上することに繋がります。 ただし、個人情報を取り扱うことになるので、人まちがいなどの入力ミスや業務用携帯電話、USBメモリなどの紛失による情報漏洩には十分注意しましょう。 介護業務×IT連携の導入例 実際に介護現場に導入されているIT機器にはどのようなものがあるのでしょうか。 代表的なものには以下のものがあります。 ・インカム ・見守り支援システム ・ケア記録システム ・SNSを活用した一括メッセージ送信 ・共有フォルダの活用 それぞれ一つずつ説明していきます。 インカム インカムは、マイク付きのイヤホンやヘッドセットを装着し、相互に通信できる無線機のことです。 複数のスタッフ間で一斉に情報伝達できるのが特徴です。 業務連絡やセンサー作動時に誰が対応するか等、他の業務をしながら相談や指示出しができます。 コストや衛生面、介助中に機器が邪魔になる、自分が望んでいない情報も聴こえてしまう等のデメリットはありますが、補助金の対象になることもあり、介護現場での導入が進んでいます。 見守り支援システム 慢性的な人手不足の介護現場で、見守り支援システムは利用者の状態を察知し、スタッフをサポートしてくれます。 利用者の居室やベッドにカメラやセンサーを設置し、呼吸数や心拍数、眠りの深さや体の動きを可視化することが可能です。 異常や状態に変化のある場合はナースコールやアラームが作動しスタッフに知らせてくれます。 巡回の頻度を減らすことができるのでスタッフの心身の負担軽減にも繋がります。 利用者の動きをリアルタイムで確認できるので事故の防止にも繋がるでしょう。 システムを導入していることが施設の売りの一つとなり、スタッフや利用者の募集に繋がる可能性もあります。 ですが、過度にシステムに頼りすぎると「監視」という形で利用者のプライバシーを侵害することにもなりかねません。 見守り支援システムができるのはあくまで利用者の動きを察知するところまでです。 システムから得た情報を使うのは人間であることに変わりはありません。 転倒リスクのある利用者の動きをセンサーが察知したら、そこに駆けつけるのは人間のスタッフです。 機械を過信しすぎず、上手に活用することが大切です。 ケア記録システム 昔は日々の記録を紙に書いて綴っていましたが、現在ではPC入力が主流です。 さらに近年はスマホと連動し、ケアをしたその場でケア記録を入力することができます。。 利用者の様子やバイタルの測定等の記録をスマホやタブレットから入力すれば、記録時間が短縮され、多職種との情報共有をその場で完結します。 紙へのプリントも不要です。 機器によっては音声入力も可能なため、さらに入力時間が短縮されます。 外出先からも入力できるので訪問先から事業所に戻って記録をすることもなくなります。 検索機能を活用すれば過去の記録を探す時間も大幅削減できるでしょう。 上記のように介護業務を効率化するIT機器には多くのものがありますが、前提としてWi-Fi環境の整備は必須です。 機器の購入やスマホやタブレット等の端末、専用ソフトの整備も必要なので、うまく補助金を活用し負担がかかりすぎないよう工夫しながら導入できるとよいでしょう。 SNSを活用した一括メッセージ送信 スタッフや利用者家族へ一斉に連絡事項を伝えたい時にSNSを活用すると、一括でメッセージを送信することができます。 以前は1件1件電話をしたり、手紙を送ったり、スタッフには連絡網を活用したりと、手間と時間がかかる対応をしていました。 事前に登録しておけば、LINEでメッセージを全体発信することが可能で、公式アカウントを活用すれば家族の個人アカウントが他者へ漏れることもありません。 家族懇談会や施設の会議にZOOMを活用するのもメッセージの発信になります。 内部研修にYoutubeを活用するのも良いでしょう。 導入時に勉強する必要はありますが、効果は絶大なので、検討してみるのはいかがでしょうか。 共有フォルダの活用 他部署で同じ書式を使用するときは、共有フォルダを活用すると効果があります。 例えば委員会の議事録や事故報告書などです。 共有フォルダに保管しておけば、他部署が作成した議事録や報告書もパソコン上で確認することができるようになるので、確認したい時にすぐに確認できるようになります。 各フロアや医務、栄養士とそれぞれの部署のパソコンのデスクトップに保管していると、書式が変わったのに反映されていないなんてことが起きてしまいます。 施設のサーバーに保管され、データを失うリスクも少なくなるので、共有フォルダを活用することも効率化の一つとなります。 まとめ いかがでしたでしょうか。 介護業務とITが連携することで業務が効率化できることを説明してきました。 介護業務×IT連携が効率的な理由は 情報共有がスムーズになる ・間接業務の時間が削減される ・業務管理が効率化される ・単純ミスが減る ・研修等の動画コンテンツを活用しやすくなる ・人手不足の解消につながる 介護業務×IT連携の導入例として ・インカム ・見守り支援システム ・ケア記録システムなど ・SNSを活用した一括メッセージ送信 ・共有フォルダの活用 について説明しました。 IT機器を導入する目的は情報共有をスムーズに行い業務を効率化することで時間を生み、ケアの質を向上させることです。 個人情報の取り扱いとのバランスに留意し、それぞれの事業所にあったIT機器を導入するとよいでしょう。 最後までお読みいただきありがとうございました。

  • 監視カメラを介護現場で活用する目的とは?問題点と活用方法等を解説!

    最近、介護現場での犯罪や暴力行為等が報道されることが増えています。 客観的な証拠を残すという目的で、監視カメラを導入している施設も多くなってきています。 監視カメラの設置を希望しているのは、施設運営する事業者と大切な家族を施設へ預けている利用者家族の双方です。 監視カメラを活用すると、防犯や虐待に対する抑止力、事故の検証等の面で、速やかかつ明確な事実確認ができ、スタッフや利用者を守ることにもつながります。 ですが、常に監視されているスタッフや利用者の心理的な負担は大きいものです。 本記事では、介護現場で上手に監視カメラを活用する方法と、今後の監視カメラの使用目的について解説します。 介護現場に監視カメラを導入する目的 Wikipediaによると、監視カメラとは「何らかの目的で何らかの対象を監視するためのビデオカメラである」とのことです。 起きた出来事を映像として記録する監視カメラですが、介護現場に設置する目的は以下のようになります。 ・防犯 ・虐待等、スタッフの言動に対する抑止力 ・事故発生時の検証 以下で一つずつ説明していきます。 防犯 主に施設の正面玄関やスタッフ専用の出入り口等、外部から施設内への入口部分に設置します。 外部からの予期せぬ侵入者の証拠が残るため、障害者施設で起きた外部侵入者による殺傷事件以降、需要が高まっています。 他には、利用者の家族が帰った時刻を確認したり、近隣で事件が起きた時に警察からデータ提供を求められたりする場合もあります。 虐待等、スタッフの言動に対する抑止力 スタッフの不適切な言動や金品の紛失について報道されるケースがあります。 起きてはならないことですが、今後も起きてしまう可能性はゼロではありません。 事業所としても、まさか自施設で起こるとは思いたくありませんが、リスク管理としてカメラを設置する選択肢は有効です。 食堂や廊下、場合によっては居室にカメラを設置し普段から映像を録画しておくことで、何か起きた際に確認できる環境を作ります。 カメラがあるというだけで抑止力になりますし、業務改善としてスタッフの動き方を考える上でも有効活用できます。 事故発生時の検証 転倒等の事故が起きた時、転倒した瞬間を見ていないケースが多く、日ごろの利用者の行動や発見時の状況から「おそらくこのように転んでしまったのだろう」と原因を推測します。 食堂や廊下にカメラが設置してあれば、事故が起きた時の映像がそのまま残ります。 何かにぶつかったのか、体の向きを変えたときにバランスを崩したのか、頭を打っていないか等の原因や状況が誰が見ても明らかです。 初期対応の応急処置や受診が必要かどうかの判断がスムーズになり、受診先でも医師への正確な情報提供が可能になります。 再発防止策を検討する際も、映像を見ながら検討することでより現実的な対策を出せるでしょう。 監視カメラを設置する目的は以上のようなものがありますが、導入するには主に心理面の障壁もありますので、次の項目で説明していきます。 介護現場に監視カメラを導入する時の問題点 介護現場への監視カメラの導入を進めるにあたり、一番問題となるのはプライバシーの侵害にあたることです。 施設とは言え利用者にとっては生活の場です。 生活の場を監視して管理するというイメージがあり、道徳的にいかがなものかと考える方も多いのではないでしょうか。 生活する利用者からみてもカメラに監視されて生活するのは息苦しいものです。 まじめに働いているスタッフも、自分の些細な言動が逐一チェックされるのは働きにくいでしょう。 「信頼されていない」と感じるスタッフがでてくる可能性もあります。 導入すれば活躍の場面が多い監視カメラですが、心理面の障壁はモチベーションが低下する一因になることもあります。 スタッフや利用者、利用者の家族に向けて導入の目的を明確にし、根気よく説明することが求められます。 次は監視カメラを上手に活用する方法について説明していきます。 介護現場で監視カメラを活用する方法 介護現場で監視カメラを活用するために押さえておきたいポイントが5つあります。 ・目的を明確にする ・ルールを作る ・設置場所を検討する ・家族や利用者への説明 ・スタッフへの説明 以下で一つずつ説明していきます。 目的を明確にする 施設としてなぜ監視カメラを設置するのか、どのように活用するのかを明確にしましょう。 前述の防犯、虐待予防、事故検証が主なものになります。 自身の施設にとっての目的を明確にし、利用者やその家族、スタッフの理解を得られるようにしておきます。 傷害事件や虐待について大きく報道される機会もあるので、監視カメラを設置することが自分たちを守ることにつながることを、本人、ご家族、スタッフに説明し相互理解を得る努力をすることが大切です。 ルールを作る 次のポイントは「録画した映像をどのように活用するか」です。 録画した映像は個人情報の為、開示の仕方を決めておく必要があります。 監視カメラを設置した後は基本的には常に録画されている状況です。 家族から「普段の生活の場面を見たい」と映像の開示を求められても安易に見せるものではありません。 行政や警察からの依頼、事故発生時の検証、その他トラブル発生時の確認等、映像を使用する場面をあらかじめ決めておき、文書化しておく必要があります。 設置場所を検討する 設置場所を検討し決めることも必要です。 食堂、廊下、玄関等の共有部分への設置にさほど悩むことはないでしょう。 一番悩ましいのは居室をどうするかです。 居室はスタッフと利用者が密室で1対1になる場なので虐待や不適切なケアが起きやすい環境でもあります。 転倒リスクの高い利用者には行動の把握のためにできれば設置したいところではありますが、プライバシーの侵害になることが心配です。 居室に設置する場合はよく話し合い、どのような目的でどのように設置するのか検討することが大切です。 家族や利用者への説明 安全を守る為に使用する監視カメラですが、一人の人の行動を常に見られる状況であることは間違いありません。 入所する際に、施設の方針として監視カメラを設置していることや、設置している場所や録画している映像の活用方法について説明しましょう。 スタッフへの説明 監視カメラを設置する際は、スタッフへの説明も必要です。 監視することが目的ではなく、事故発生時の検証や虐待を防止することで、自分たちを守ることにつながることを理解してもらう必要があるからです。 施設に過失のない転倒事故が起きた時に、家族から「施設の対応が悪い」等の事実でないクレームを言われてしまっては、関わったスタッフはショックを受けてしまいます。 映像が残っていれば施設は毅然と対応することができます。 監視カメラを設置する目的を利用者や家族だけではなく、スタッフにもしっかり説明することが大切です。 今後の監視カメラの使用目的は「監視」から「記録」へ これまでの監視カメラは、文字通り「監視」が目的でした。 施設にどんな人が出入りしたか、スタッフの振る舞いは適切だったかなどを確認するために監視カメラを導入していたのです。 しかし、権利者意識の強い利用者や家族が増えている昨今、理不尽な要求を強いられたり、事故に対して施設に責任を押し付けられるような場面も想定しなければなりません。 今は一つの転倒事故が裁判にまで発展する時代です。 もちろん、施設側に過失のある事故については相応の対応をする必要があります。 ですが、転倒した場面が記録されていることで、訴訟リスクを回避できる場合もあるでしょう。 「監視」だけでなく「記録」のためにカメラを使用していくことを考える時期がやってきています。 まとめ いかがでしたでしょうか。 介護現場に監視カメラを導入する目的や心理的な障壁、活用する方法について解説しました。 監視カメラを導入する目的は、 ・防犯 ・虐待等、スタッフの言動に対する抑止力 ・事故発生時の検証 等 監視カメラの活用方法については、 ・目的を明確にする ・ルールを作る ・設置場所を検討する ・家族や利用者への説明 ・スタッフへの説明 監視カメラの今後について、 ・使用目的が「監視」から「記録」へ変わっていく ・転倒事故などの映像が適切に保管されると訴訟などのリスクを軽減させられる場合もある 現在は車にもドライブレコーダーがついている時代です。 プライバシーやスタッフの心理的な負担には最大限の配慮をしつつ、上手に監視カメラを活用することで、利用者の安心できる生活や、スタッフの働く環境を整備することができます。 最後までお読みいただきありがとうございます。

  • 家族に突然介護が必要になった!慌てずに準備するために覚えておくこととは?

    今まで元気だった家族が突然倒れ、介護が必要な状況になったら、あなたはどうしますか? 病院に任せきりになっても、いつかは、自宅または転院、施設の入所などを決断する時はやってきます。 この記事は、突然の介護に慌てないための事前準備について紹介します。 家族が、いざという時の基本的な知識として持っていて欲しい内容です。 介護は突然始まるもの 家族介護は、何の前触れもなく、突然、始まることが多く、不十分な準備のもとで介護に臨めば、困ることが多々あります。 特に仕事を持つ社会人にとっては、今後の対応が予想困難で仕事と介護の両立ができずに離職する可能性もあるのです。 今は親も家族も健康だからといって、介護の基本的な知識がないと突然の介護でパニックに陥ることも考えられます。 今は大丈夫だからではなく、これから起こるかもしれない現実から目をそらさない行動が、介護で困らない第一歩です。 突然の介護に困らないようにするには 病気や怪我で倒れた家族の介護は、準備を怠れば不十分な状態で不安を抱えながら、始まります。 突然の介護に困らないようにするには、事前の心構えや準備が大切です。 家族でよく話し合う 家族で介護についてよく話し合うことは大切ですが、ベストなタイミングは、介護を必要としない親や家族が元気な時です。 このタイミングを逃すと、突然の介護に対応できる時間の余裕がなくなります。 家族のライフスタイルは、年齢や生活環境によって変わりますが、話し合いだけでもしておけば、突然の介護でも動揺する気持ちを最小限に抑えられます。 以下のポイントについて家族で話し合っておきましょう。 在宅介護ができるか、家族の意見を聞く 介護の中心者を決める 介護の協力者を決める 親の経済状況を確認しておく 経済状況に不安があれば、家族の介護費用の負担割合を決めておく 厚生労働省ツールを活用する 厚生労働省のホームページに「介護への事前の備え」といったツールが用意されています。 このツールは、親や配偶者など家族の個人情報をはじめ、介護に関する必要な情報を網羅できるシートです。 家族の話し合いに活用でき、家族の状況に応じてシートを増やすことで、介護に直面した時に役立ちます。 介護情報が豊富な本を見ておく 介護に関する本は数多くありますが、中でも介護情報が豊富な本を事前に見ておくことも大切です。 特に在宅介護に特化し、介護保険制度など最新の情報を記載した本は必ず役に立ちます。 介護が始まるまでには、最低1~2冊購入し、知識を増やしておけばいざという時に活用できます。 Webサイトで最新の介護情報を確認しておく 本と共に、ネット上にあるWebサイトでも最新情報が確認できます。 自分が必要とする情報だけでも有効活用すれば、事前の準備に役立てられるのです。 特に医療・介護従事者が作成した記事がある介護情報サイトは、信頼性の高い情報が得られるため、おススメです。 在宅介護をスムーズに行うためには 在宅介護をスムーズに行うためには、介護者が自覚を持つことは大切ですが、準備すべきことは沢山あります。 しかし、介護をスタートダッシュすれば、必ず、介護疲れを早めに感じてしまいます。 介護はマラソンです。 決して短距離走で息切れしない対策も考えておきましょう。 症状や薬の情報を知っておく 被介護者の症状や薬の情報を知っておくことはとても大事です。 介護が始まると、日々の介護に追われて、処方された薬の情報まで詳しく知る時間がありません。 しかし、薬の作用、副作用を介護者が知っておかないと、訪問診療の際に問題が起こることも考えられます。 担当医に薬の情報を確認しておけば、訪問医療や訪問看護でも要介護者の正確な情報を伝えられます。 また、過去の既往歴や服用していた薬は、かかりつけ医やお薬手帳で確認しておくことも大切です。 入院先で治療にあたる医師や看護師の情報になり、在宅での診療にも役立ちます。 入院中から行動しておく 病気や怪我によって入院した場合、退院までの期間が症状や状況により変わることがありますす。 退院後の介護を視野に入れるには、入院中から行動しておくことが大切です。 病院のソーシャルワーカーに相談し、退院に向けた道筋をはっきり決めておけば、在宅介護をスムーズに行えます。 介護力を上げておく 家族の介護力を上げておくことも大切なポイントです。 介護に自信がない状況で介護生活を迎えると、最悪、介護放棄につながりかねません。 入院期間中に、病院の看護師やヘルパーに介護方法について学び、可能であれば、実際におむつ交換や体位変換、痰の吸引などを経験しておけば、安心し、介護を始められます。 ただし、コロナ禍で直接介護ができない場合は、自治体などが行っている介護教室を利用するのもおススメです。 ケアマネを探しておく 介護サービスを利用し、在宅ケアにつなげるためにはケアマネの存在が不可欠です。 特に入院中の場合は、病院の医療相談員やソーシャルワーカーなどに相談してケアマネを紹介してもらえば、介護サービスの手続きや福祉用具相談員とも連携でき、在宅介護の不安が減ります。 自宅の環境を整備する 在宅介護は、現在の自宅の環境で問題がないかプロの目で確認してもらわないと、転倒などの思わぬ事故につながる可能性があります。 要介護者や介護家族のストレスの軽減、福祉用具の準備のためにもプロのアドバイスは必須といえるでしょう。 しかし、居住している家によっては、在宅介護が不可能と判断されることも考えられます。 自宅の環境整備を早めに行えば、万が一の場合も次の対応をとる時間もできます。 自治体に相談しておく 介護サービス以外で介護に役に立つのがお住いの市町村の介護福祉課や地域包括支援センターです。 介護費用に補填できる補助金などの支援があり、知っておいても損はありません。 介護が必要な主な病気や原因 突然の介護は、どのような病気や原因で始まるのでしょうか。 2019年国民生活基礎調査の概況では、介護が必要になる病気や原因ははっきりと示されています。 介護が必要になる病気であれば、退院までに介護支援を確認、調整しておくことが大切です。 介護が必要になる主な病気 介護が必要になる主な病気は、認知症、脳血管疾患、高齢による衰弱が主となっており、脳疾患による介護が全体の4割を占めています。 また、事故や転倒などによる骨折で、車椅子生活になり、在宅介護になるケースも増えています。 特に長期間の入院生活で認知症になり、家族介護の大変さから在宅から施設入所を決断する家族も増えているのです。 健康で高齢になる前に、介護に直面した時の備えが必要なことは明らかでしょう。 退院支援は病気によって変わる 退院支援は病気によって変わります。 入院中の健康状態や障害によって介護方法は変わるため、病院や施設との連携が大切です。 入院中の対応が遅れると、家族の心構えを初めとする在宅介護にスムーズにつながりません。 退院支援の体制を整えておくには次の点に注意しておきましょう。 病院と話し合っておく 医師や看護師、ソーシャルワーカーなど、病院と話し合い、退院後の治療方針などを確認して決めておくことが大切です。 入院時と退院時では健康状態や障害の状況など変わっていることが多いため、退院前には医師に聞いておきたいことを挙げてみます。 病気はこれからどうなるのか 病気は治る見込みはあるのか 食事などで気をつける点は何か 在宅で気をつける点は何か 症状の悪化や緊急時の連絡体制はどうなるのか 訪問診療や訪問看護の頻度は 介護施設の利用はどうするのか 介護が始まるまでに家族で考えておこう 介護が始まるまでに家族で考え、話し合いを重ねることは重要です。 退院時の症状によっては、在宅介護か施設の利用かの検討が必要になることもあるでしょう。 しかし、基本は患者本人の希望です。 自宅に帰りたいという意向が強いのであれば、在宅介護に向けた家族の対応や医療・介護支援が必要であるという認識を持つことが大切なのです。 まとめ この記事のポイントは次のとおりです。 突然の介護は事前の備えが大切 元気な間に、家族との話し合いや各種ツール、本、ネットから情報を得ておく 在宅介護をスムーズに迎えるためには、入院直後から動き出す 退院支援を病院やソーシャルワーカーに確認し、悩みを解決しておく 高齢になると、些細な病気や怪我でも、介護が必要になる可能性が高くなります。 親や配偶者が元気な間に、突然の介護に困らないように、在宅か施設かを考えておくことが大切です。

  • 認知症を改善・予防する3つの方法とは?食べ物や運動の効果について解説

    「認知症の症状を改善したい」 「認知症にならないように予防したい」 そう考えることはないでしょうか。 認知症の症状は正しいケアをすることで改善できます。 また生活習慣を整えることによって認知症は予防することが可能です。 この記事では認知症の症状の改善や認知症の予防について解説していきます。 認知症の予防にはカレーがおすすめ みんな大好きなカレー、もはや国民食と言っても良いでしょう。 そんなカレーですが、実は認知症の予防に効果があると言われてます。 カレーを食べれば認知症予防になる!カレーの3つの効果 ではカレーはどのような理由から認知症予防に効果があると言われているのでしょうか。 詳しく解説していきます。 【効果①】カレーに含まれるスパイスの一種クルクミンに秘密がある カレーに含まれる代表的なスパイスにターメリックがあります。 そのターメリックにはポリフェノールの一種であるクルクミンが含まれていますが、そのクルクミンに認知症の原因となる「アミロイドβ」の生成を防ぎ、分解する作用があると言われています。 実際にシンガポールに住む60歳から93歳の1,000人を調査した結果によると、カレーを一ヶ月に一回食べる人は、まったく食べない人と比較して認知症の発症率が50%も低かったという調査もあります。 【効果②】カレーはバランスの良い優秀な食べ物。 カレーは肉や野菜など様々な具材が入っているバランスの良い食事です。 バランスの良い食事は低栄養状態を防ぎ、筋肉量の低下を防ぐことにも繋がります。 筋肉量の低下を防げれば転倒防止になり、寝たきりリスクを減らすこが可能です。 寝たきり状態は認知症リスクを高めるため、いかに転倒しないよう注意するかが大切です。 筋肉量を維持するためにもバランスの良い食事を心がけましょう。 【効果③】料理をすること自体が認知症予防になる カレーだけでなく料理全般に言えることですが、料理は脳と身体を使います。 同時に脳と身体を使うことにより認知症の予防になると言われています。 料理は「献立を考える」「具材の買出し」「料理の段取りを考える」「実際に料理をする」「味を整える」「盛り付ける」など複数の工程から成り立ちます。 複数のことを同時に進めるには、脳の司令塔である「前頭葉」を使うため、脳に良い刺激となるため、認知症予防になると言われています。 また、作った料理を誰かに食べてもらう喜びも、感情的に脳に良い刺激になるでしょう。 認知症の予防には適度な運動が最適 運動が健康に良いと良く言われていますが、これは本当のことです。 では認知症の予防に対してどこまで効果があるのでしょうか。 なぜ運動が認知症予防になるのか?4つの理由 運動すればすぐに認知症予防になるわけではなく、継続的に運動を続けていく必要があります。 その理由について以下で解説していきます。 ①運動することで脳への血流が改善し、栄養や酸素が行き渡りやすくなる 高齢者やアルツハイマー型認知症の方は、若い人と比較して脳への血流低下が見られます。 そのため脳に必要な栄養や酸素が行き届かなくなり、脳機能に影響を及ぼすと言われています。 しかし、定期的に運動すれば身体の血流が改善され、脳に必要な栄養や酸素が行き届くようになります。 また歩くことで脳の血流を良くするアセチルコリンの分泌が増えるとも言われています。 ②運動することで物理的に脳が成長する 運動をすると脳の神経を成長させるBDNFという物質が海馬で分泌されます。 BDNFには 代表的な効果に「脳細胞の新生を促す」「脳細胞の老化を遅らせる」「脳細胞が傷つかないように保護する」などがあります。 運動することでBDNFを分泌させ、海馬の機能維持や成長に効果を得るのです。 海馬は記憶を司る機能があるため、海馬の機能維持や成長を促すことは認知症予防に大きな効果があります。 ③運動によって認知症の危険因子である高血圧、肥満、糖尿病のリスクを減らせる 肥満、高血圧、糖尿病は認知症の危険因子とも言われています。 実際に成人後期のBMI(体格指数)が「肥満」と判定された人は、「正常」な範囲内にある人と比較して、認知症を発症するリスクが3割も増加するというデータがあるほどです。 認知症を予防するためにはこれらの危険因子を改善する必要があります。 定期的な運動は肥満の解消になり、ひいては高血圧や糖尿病リスクも軽減させることが可能です。 当然ですが運動をしても暴飲暴食をしては意味がないので、あわせて食生活も整えていきましょう。 ④運動により認知症の原因物質が取り除かれる。 認知症を予防するためには、「アミロイドβ」や「タウたんぱく」という毒素を脳内から取り除く必要があります。 なぜなら、認知症は「アミロイドβ」や「タウたんぱく」といった毒素が脳内に溜まることで発症すると言われているからです。 「運動習慣のない人」の脳内には「アミロイドβ」や「タウたんぱく」が排出されないことが判明しています。 その詳しいメカニズムは解明されていませんが、運動により脳内の血流が改善し、結果として老廃物と一緒に原因物質が排出されるのではないかと言われています。 認知症予防にはどんな運動が効果的? では実際に認知症予防に効果的な運動はどういったものか解説していきます。 認知症の予防では決して激しい運動をする必要はありません。 逆に無理のない範囲で行える有酸素運動が効果的であると言われています。 ①ウォーキング 「歩く」ことは認知症の予防に効果的です。 血圧があまり上がらない程度の無理のない歩行を行うと、海馬でのアセチルコリン(脳の血流を良くする物質)の分泌量が増え、海馬の血流が良くなります。 1日3.2㎞歩くと、認知症発生率は42%低下するというデータもあります。 歩行する際の目安は1日30分以上、週3回を目安に取り組みましょう。 ②コグニサイズ コグニサイズは英語のcognition (認知) とexercise (運動)を組み合わせた造語で、国立長寿医療研究センターが開発した「ながら運動」になります。 コグニサイズ(ながら運動)は、身体運動と同時に認知課題に取り組むことによって、認知症予防を目的としたエクササイズになります。 具体的には、①身体運動(歩行や足踏み運動など)と②認知課題(足し算引き算などの計算)を同時に、30秒で1セットを目安に行います。 国立長寿医療研究センターが愛知県で行った調査によると、軽度認知症と診断された高齢者のうち、コグニサイズを行ったグループは記憶テストの成績が改善し、脳萎縮の進行も抑えられたというデータもあります。 水分を飲むことで認知症の周辺症状が改善する 脱水により引き起こされる症状には認知症の周辺症状によく似た症状があるため、認知症と間違われてしまうことがよくあります。 ただ、しっかりと水分を摂取し脱水を防ぐことにより症状は治まります。 脱水による症状にはどういうものがある? まずは認知症の周辺症状によく似た脱水の症状には「せん妄」があります。 せん妄は一種の意識精神障害で、高齢者に多く見られる症状です。 せん妄の症状は「見当識障害(時間や場所を上手く認識できなくなる)」「思考力の低下」「注意力の低下」「感情の変動」など認知症の症状と非常によく似ています。 せん妄は脱水のほかに身体疾患や薬の影響などでも症状が現れることがあります。 また、以下のような症状が起きることもあるので。注意が必要です。 傾眠脱水…意識が朦朧としてウトウトとする状態 便秘…水分摂取が少なくなることで、便が硬くなり排便することが困難になる。 脱水にならないためには? 脱水にならないためには1日に2,500㎖の水分摂取が必要と言われています。 「そんなにたくさん飲めない」と感じるのではないでしょうか。 しかし、水分は飲むだけでなく、食事からも摂取できます。 例えば、味噌汁、果物、野菜などが挙げられます。 一般的に普段の食事から1,000㎖は摂取しているので、純粋な水分からの必要摂取量は1,500㎖ほどで大丈夫です。 効率的に水分を取って頂くために 高齢者や認知症のかたに一日1,500㎖の水分を摂取して頂くのは難しいものです。 以下のような方法で水分摂取を促してみましょう。 お茶の時間を定期的に設ける ゼリーや寒天を上手に使う 本人の好みに応じた水分を提供する スポーツ飲料などの吸収率の良いものを活用する 体操やレクリエーションの後に飲んでもらう 散歩時に外で水分を飲んでもらう まとめ ここまで認知症の周辺症状に効果のあることや、認知症予防に効果のあることを解説してきました。 認知症予防にはカレーがおすすめである   ・クルクミンが認知症に効果的   ・バランスの良い食事が認知症予防になる   ・料理をすることで認知症予防である 認知症予防には軽い運動がおすすめである   ・30分程度のウォーキングを週に3回程度行う   ・頭と身体を使ったコグニサイズを取り入れる 脱水を防げば認知症の周辺症状を改善できる   ・1日1,500㎖の水分摂取を目標にする   ・寒天やゼリー、本人の好みを意識して水分を飲んでもらう 最後までお読みいただきありがとうございました。  

  • 訪問介護のあり方とは?「自立支援型」とはどのようなことを指すのかを解説!

    訪問介護とは、要介護度の利用者が日常生活の上で困難とする動作や作業をヘルパーが訪問し介護を行うサービスです。 今回は、訪問介護の「自立支援型」について紹介します。 訪問介護のあり方 訪問介護はなぜ存在しているのか、その理由についてご紹介します。 なぜ訪問してまで介護をするの? 昨今、団塊の世代が75歳(後期高齢者)を迎える「2025年問題」がすぐそこまで迫ってきています。 まだまだ元気で若々しい高齢者も増えている反面、介護を必要とする高齢者も増加してきているのが現状です。 「子供達に迷惑をかけない」「事前に調べてサービスに興味を持った」等、様々な理由で施設入所を希望される方もいます。 しかし、多くの人は「できるだけ長く住み慣れた自宅で過ごしたい」という思いが強いようです。 家族のいる高齢者は、一日も長く一緒に家で過ごす事を、独居となった高齢者は思い出が詰まった家でゆっくり過ごしたいと其々の理由はある様です。 しかし、在宅生活に支障を来す様になってはそんな思いも叶えられません。 また、最初にも述べましたが「2025年問題」は少子高齢化が進み、国民の4人に1人が75歳以上となる事で様々な影響を及ぼすと言われています。 支えて欲しい人が増える一方、反比例する様に支える人が居なくなるという事は、日常生活に困難があっても支えてくれる人が少ない利用者側と、支えたくても人数も支援も負担も賄い切れない介護側とのパワーバランスが崩れて共倒れに成りかねないことを意味しているのです。 要介護認定を受けたとしても、住み慣れた自宅で日常生活上必要な動作や行為が少しでも自身で行える様になれたら、それは身体的にも日常生活を送る上でも生活の質を維持向上する上でも意義のあるものであり差し迫った問題に対し解答の糸口へと繋がります。 介護が必要になった方たちの生活の質を維持しながら、在宅で過ごせるようにするために訪問介護があるのです。   昔は「お世話型」今は? 介護保険制度が始まったのは2000年(平成12年)4月からです。 介護保険制度は「高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組み=介護保険」という形でスタートしています。 現在の介護保険も、「高齢者が尊厳を保ちながら暮らし続けることができる社会の実現を目指す」とされていて、高齢者も皆と同じ様に其々が地域で元気に自立し暮らしていく事ができる共存社会を目指しています。 基本的に介護保険は「高齢者の自立支援」を始めから謳っているのですが、昔から ・お年寄りは大切に ・お年寄りの面倒は若い者が看るもの ・子が親の老後を看るのは当たり前 という思考や伝承の傾向が根強くあります。 そのためか、訪問介護サービスもどちらかと言えば「お世話型」と呼ばれるサービスを行いがちでした。 事実介護認定を受けて訪問介護サービスを受ける事になった利用者は、生活を送る上でできない事をヘルパーにしてもらう=日常生活が送れる様になるというプランでヘルパーによるサービスを受けていた所が多かったのではないでしょうか? 上記の図の様に、要介護1も要介護5も同じようにできない事をしてもらっているばかりでは、どんどんできない事が増えていくだけです。 そして、介護度が増すに連れてサービスの内容も日数も増えていくという緩やかな悪循環に陥ります。 家族の形は変わっていきます。 大家族から核家族へ、子供も兄弟姉妹から一人っ子へ、結婚して家庭に入っても夫婦共働きが増え、隣近所が誰か分からないというようにご近所同士の繋がりも薄くなりました。 そのため、近年では孤立化が目立つようになっています。 そんな現実の中、上記にも述べた様な高齢者に対する昔からの思考・伝承が特に介護では反映されている事態が多い為、 「お年寄りにあれこれさせてはいけない=お世話する、面倒を看るのが介護だ」 という認識を世間一般では当然とされているのが現状です。 介護サービスも例に洩れず、「お世話型」という形で行われていたのも少なくはありません。 ここで間違えないで頂きたいのは、決してこの思考・伝承が悪いという事ではないということです。 古来より守り継がれてきた先駆者、功労者を大切にするという考えは大切であり、素晴らしい事です。 しかし、何でも大切にした結果「まだできる」事を「できない」事に変えてはいけないという事がとても重要です。 腰痛により重い物があまり持てず、歩行もやや不安定な利用者が訪問介護で生活援助を利用したとします。 お世話型のサービスでは、ヘルパーによる掃除機での掃除や洗濯物の取り込み整理整頓が行われた場合は利用者はただそのサービスをしてもらうのみです。 この場合、ヘルパーによって「清潔が維持できる」「安全に過ごす事ができる」「生活環境が保たれる」のみの授受一択となってしまいます。 例えば、利用者が軽い物が持てた場合は、柄の長い箒を使用して掃くことをお願います。 洗濯物の取り込みはヘルパーが行い、利用者はヘルパー見守りの下テーブルで洗濯物を畳む 整理整頓はヘルパーと共に行ってもらいます。 このように利用者も出来得る範囲で行動し今後に繋がる形にすれば、 「共に行う事で清潔が維持できる」 「共に行い確認する事で安全に過ごす事ができる」 「共に行う事で生活環境が保たれる」 という自立支援に向けたサービスの提供となります。 利用者の中には、何でもしてもらいたい人もいるかもしれません。 訪問介護サービスを契約して利用しているのだから、ヘルパーにはできない事を何でもしてもらいたいという気持ちは分かります。 しかし、ヘルパーは家政婦ではありません。 この先地域で暮らしていく上で、本当に困った事を地域社会全体で支え合い、日常生活を維持していく為の介護保険である事を今一度見直す必要があるのではないでしょうか。 その人なりの自立した生活を 訪問介護サービスのケアプランに謳われる「残存機能の維持」は、身体介護にも生活援助にも該当し、自立した生活を送る為に最低限必要とされる能力です。 介護度も人様々であり、生活環境や身体状況や経済状況、現症歴によって、できる事とできない事には差があります。 ケアプランに沿った訪問介護サービスを提供する事は当然ですが、ヘルパーは誰よりも利用者の近くで対応する為、利用者の心身の変化に気付きやすいものです。 現在の介護保険は自立支援型であり、 「その人が生活する上で行える動作をどうすれば継続していけるか?」 「プランでは共に行う作業であっても今の身体状況ではちょっと無理なのでは?」 「この部分はヘルパーが対応する形だけれど、一緒に行う能力があるのでは?」 等、訪問介護に入ったヘルパーからの報告でプランが見直され変わっていく事も珍しくはありません。 例えば、生活援助で夕食の下ごしらえをヘルパーが行うというプランがあるとします。 ケアプランに沿った訪問介護計画が立てられ、ヘルパーは計画通りに訪問介護に入ります。 長時間の立位が困難で台所に立つ事が難しいけれど、最後の味付けは自分でしたいという希望があれば、下ごしらえはヘルパーが行います。 しかし、実はイスに座って玉ねぎの皮を剥くやピューラーで根菜の側を剥くといった作業ができると 気付いた場合にヘルパーの取るべき対応はどうすべきなのでしょうか? ①ケアプラン通りに、そのまま調理の下ごしらえをヘルパーが行い、最後の味付けは利用者にしてもらう。 ②サービスの度にその場に応じて利用者ができる調理の下ごしらえ(イスに座っての野菜の皮剥き等)をしてもらい、調理を完成させる。 一応両方とも「形式上」は自立支援型の訪問介護サービスではあります。 不正解ではないのですが、①はほぼ「生活援助の調理」です。 ケアプラン通り、訪問介護計画書通りにサービスを遂行しているだけであり、別に悪い訳ではありません。 しかし、最後の味付け以外にも利用者のできる作業があると気付いていても、プランは下ごしらえがヘルパー対応となっています。 ヘルパーがプラン通りに料理を作ってしまうのは、自立を促すという自分でできる事を少しずつでも広げて利用者のできる能力を維持するのには弱いかもしれません。 ②は自立支援型の訪問介護に見えますが、一点注意すべき所があります。 「サービスの度にその場に応じて利用者ができる調理の下ごしらえ」がきちんとサービス提供責任者やケアマネージャー、本人や家族に伝えられているはずです。 それに応じて担当者会議が行われケアプランの変更が為され了承されています。 ヘルパーが利用者の状態に気付いて自立支援に向けたサービスを行うには、ヘルパー単独の意思決定で勝手にサービスを変える事はできません。 きちんとサービスの内容変更の手順を踏まえた上で提供すれば、「生活援助で夕食の下ごしらえをヘルパーが行うというプラン」は「できる範囲での下ごしらえを共に行いながら調理する見守り的援助の身体介護」となります。 サービス単価は若干上がりますが、利用者の今後動ける可動域は広がりその人なりの自立した日常生活を過ごす事ができる未来へと繋がる可能性があります。 事前のモニタリングやアセスメントだけでは分からないことは多々あり、ヘルパーがサービスに入って初めて気付く事も少なくはありません。 テンプレート通りに介護サービスは行えませんし、また利用者其々に応じた自立の形があります。 訪問介護はその時の状況や状態によって日々変化していき、自立の形も並行して良くも悪くも変化していくという事を忘れないようにしましょう。 まとめ 今回は訪問介護における自立支援型のサービスについて紹介しました。 ・高齢者の現状と2025年に迎える問題は、介護を求める人と介護を行う人とのバランスが崩れて共倒れの危険性がある。 ・高齢者であっても自分でできる事が増えれば、これまで通り在宅での生活を維持でき、懸念される介護の担い手不足による共倒れを回避できるきっかけとなる。 ・介護保険は2000年4月にスタートし、高齢者を社会全体で支え合う仕組みとして始まった。 ・現在は、高齢者も自立して日常生活を送れる様に地域と共存して暮らしていく形を目指しており、訪問介護もお世話型から自立支援型へ移行している。 ・お年寄りを大切にするという考えは大切だが、 何でも全てお世話をしてしまうのではなく、日常生活でできない事を支えて援助しできる事はそのままできるように維持を図る事が自立支援型の訪問介護サービスである。 ・訪問介護は在宅での日常生活を維持していく為の介護保険サービスであり、利用者の変化に気付いたヘルパーはケアマネージャーやサービス提供責任者、利用者、その家族等とよく確認し話し合い、利用者の状態や状況に応じた訪問介護を計画に則り提供していく必要がある。 訪問介護を利用する側もサービスを提供するヘルパーも、長年携わってくるとその利用者の状況や状態がよく分かってくるものです。 情が沸く事もあるかもしれませんが、その介護は本当にその人の為になるのか?ケアプランに沿ったサービスなのか?あの人はああしてくれた、こうしてくれたの言葉に揺らいでお世話型のサービスを提供してはいないか?等ヘルパーの判断が試される事もあります。 最初にも述べましたが、2025年問題はもうすぐそこにまで迫っています。 75歳以上の後期高齢者が爆発的に増えるまであと数年です。 高齢者であっても、特別な事をせずに、その人がその人なりに日々の生活を普段通りに送れる事が幸せであると考え、訪問介護サービスが行われる事を願います。  

  • 介護保険外のサービスとは?メリット・デメリットやサービス内容を解説!

    介護保険サービスは、要介護度によって利用できるサービス内容や量が決まっています。 ですが、保険内のサービスだけでは充分とはいえません。 そこで使えるのが介護保険外サービスです。 保険外のサービスを上手に組み込むことで介護保険ではまかないきれない部分に手が届き、介護負担を軽減できます。 厚生労働省も、地域包括ケアの一環として介護保険のサービスと介護保険外のサービスを併用することを推奨しています。 本記事では、介護保険外サービスのメリットやデメリット運営者やその内容について解説しています。 ぜひ最後までお読みください。 介護保険外サービスとは 介護保険外サービスとは、介護保険制度の対象外のサービスで、介護保険では補えないサービスを原則自己負担で受けられるサービスです。 厚生労働省の地域包括ケアシステムの構築と「保険外サービス活用ガイドブック」についての中に記載があり、国が推進する地域包括ケアの一部に組み込まれています。 介護保険では受けられないサービスもあるので、介護を受ける方だけではなく、介護している家族の生活も充実させられます。 介護保険外サービスを利用するメリットとデメリット 介護保険外のサービスを上手に活用するためには、メリットとデメリットをよく理解しておく必要があります。 介護保険外サービスを利用するメリット 介護保険外サービスを利用するメリットには以下のものがあります。 介護負担が軽減する サービスの提供時間を長くすることができる 家族に対する支援もある 自由なサービス選択ができる では、一つずつ解説します。 介護負担が軽減する 介護保険外サービスを利用する一番の目的は介護負担を軽減させることです。 保険でまかなえないサービスを受けられるので、介護者の負担が減り、高齢者本人も安心して生活を送ることに繋がります。 サービスの提供時間を長くすることができる サービス提供者と合意できれば長時間のサービスを受けられます。 介護保険を使って訪問介護などのサービスを受ける場合は、1回30分などと時間が決められています。 介護保険外で、サービスの時間を長めに設定することでサービスの不足感を軽減することが可能です。 家族に対する支援もある 介護保険外のサービスでは、介護する家族もサービスを受けられます。 例えば、高齢者夫婦の2人暮らしで、夫が要介護、妻は介護保険の対象外だった場合、介護保険では夫に対するサービスしか受けられません。 妻の洗濯や妻のための買物、布団干しなどは原則として対象外になります。 この場合、妻が介護保険外サービスを利用できれば、妻の負担を大きく減らすことができます。 自由なサービス選択ができる 介護保険外のサービスは、サービス内容や量、同居家族などのサービスを受ける対象者を自由に選択できます。 その分料金はかかりますが、上手に活用することで、介護を受ける本人や介護する家族のそれぞれが望む生活に一歩近づきます。 介護保険外サービスを利用するデメリット 介護保険外サービスを利用する上での一番のデメリットは費用がかさむことです。 介護保険のサービスは利用料金の7〜9割を保険でまかない、利用者は残りの1〜3割を負担します。 ですが、介護保険外サービスは保険が使えないので全額負担しなければなりません。 運営者やサービス内容などによって金額にばらつきがあるので、利用前に具体的な料金体系について確認しておきましょう。 介護保険外サービスの運営者と内容 介護保険外サービスを受けたい時はどこに相談すればよいのでしょうか。 運営者やサービス内容もさまざまですので、代表的なものを説明します。 市区町村による独自サービス 市区町村が独自に行っているサービスで、基本は介護者がそれぞれの利用者の自宅に訪問してサービスを提供する形になります。 主なものは、 おむつの配送 訪問理美容 配食サービス 緊急時の連絡システム 受診や外出時の移送サービスなど 各自治体が独自に行っているサービスなので、全ての市区町村で提供されているわけではありません。 ホームページや広報誌で確認したり、地域包括支援センターに相談したりしてみるとよいでしょう。 市区町村が中心になって実施する「介護予防・日常生活支援総合事業」 2017年にスタートした地域支援事業の一つで、市区町村が中心となって地域の実情に合わせたサービスを提供するものです。 住民が主体となり、要支援者に対し効果的で効率的な支援を目指しています。 内容は、以下の通りです。 訪問介護事業所やNPOなどの住民ボランティアが行う訪問による生活援助 主に食事用意や掃除などの家事援助や外出の支援 デイサービスや高齢者会館で提供する通所による活動援助サービス 主に運動やレクリエーション、口腔機能改善など 住民の交流の場にもなっている サービスを利用するには地域包括支援センターによるケアマネジメントが必要なので、まずは相談してみましょう。 介護サービス事業所 普段介護保険サービスを提供している事業所が、通常のサービスの延長で提供している保険外のサービスです。 サービス内容は 訪問介護ではできない手間のかかる掃除や洗濯 入院中の衣類の引き取りや洗濯などの世話 お泊まりデイサービスなど 介護保険で対応できない部分を補うためのサービスとなりますが、通常のサービスとは別枠の料金で、すべて自己負担になるので料金の確認が必要です。 社会福祉協議会の高齢者支援サービス、シルバー人材センターの家事・福祉支援サービス 全国の社会福祉協議会や、高齢者の雇用促進を目的とするシルバー人材センターによる有償ボランティアです。 介護保険では対応できない調理や洗濯、買物、掃除など 入院中の世話 冠婚葬祭の付き添い 認知症の方の見守り支援サービスなど 市区町村による総合事業として提供されていることもあるので、地域包括支援センターで受けられるサービスを相談してみるのも一つです。 民間企業の介護サービスや高齢者支援サービス 介護分野ではない企業が間接的に介護保険サービスを提供していることもあります。 コンビニエンスストアや生協などによる配食サービス タクシー会社による介護タクシーや通院介助 フィットネスクラブによるスポーツプログラムなど 市区町村によるサービスより費用は高めですが、サービスの種類が豊富で介護保険では足りない部分をサポートできます。 まとめ いかがでしたでしょうか。 本記事では、介護保険外サービスのメリットやデメリット、運営者やその内容について解説しました。   介護保険外サービスは介護保険制度の対象外のサービスで、介護保険では補えないサービスを原則自己負担で受けられるサービス 地域包括ケアの一環として厚生労働省も推奨している 介護保険外サービスを利用するメリットは、介護負担が軽減する、サービスの提供時間を長くすることができる、家族に対する支援もある、自由なサービス選択ができる 等 デメリットは、保険内のサービスに比べ費用がかかる 運営者やその内容は、市区町村による独自サービス、市区町村が中心となって実施する「介護予防・日常生活支援総合事業」、介護サービス事業所、社会福祉協議会やシルバー人材センターによる有償ボランティア、民間企業の介護サービスや高齢者支援サービス 等 介護保険外のサービスを上手に活用することで、利用者本人だけでなく介護している家族の生活も豊かになります。 介護が必要にあっても、住み慣れた地域での生活を続けるために、制度やサービスを充分に活用できるように家族で話し合ってみましょう。

  • やりがい満載!ヘルパーが利用者に行う一対一の支援の良いところとは?

    ヘルパーの仕事の醍醐味はなんと言ってもご利用者様との一対一の支援です! やりがい満載!ヘルパーとご利用者様の一対一の支援について、その魅力をお伝えしていきます。 介護は一対一の支援が1番 介護の仕事をする上で、ご利用者様にとっても職員にとっても1番ベストなのは一対一の支援です。 何がどのように良いのかを、実際の介護の現場を経験してきた体験も交えつつご説明していきます。 基本的に同じ人のケアを受けられる 訪問介護のヘルパー援助において一対一の支援の魅力は、ご利用者様にとって「基本的にいつも同じ人のケアを受けられる」と言う点です。 もちろんシフト制のため毎日同じと言うわけではありませんが、施設系の現場に比べると訪問介護の方が、ヘルパーが固定されていることが多いです。 例えば施設で行う介護ですと、ある一定の職員がシフト制で多数のご利用者様のケアにあたります。 これはご利用者様目線で言うと、いつも入浴や排泄介助の職員が変わるため、ご利用者様によっては落ち着かない人も出てくるのです。 特に、施設入所されている方でもご自身でしっかりと意思を伝える方もいらっしゃいます。 そのようなご利用者様ですと、特定の職員に対してケアされたくないとおっしゃる方もいらっしゃいます。 しかし施設型の介護環境ですと、そのような要望が人員的に困難なため、仕方なくケアを受けるご利用者様を多く見てきました。 なので、施設介護も訪問介護も経験した者から言えるのは、訪問介護のヘルパーの方がご利用者が安心してケアを受けれてもらえます。 しかも、訪問介護は基本的に一対一の支援がメインになります。 コミュニケーションを取るのも、ケアを行うのも目の前のご利用者様一名のみです。 ご利用者様にとって訪問介護の一対一の支援は、メンタル的にも安心できる環境なのです。 ご利用者様に丁寧なケアを提供できる 介護の仕事を長くやっていると、ご利用者様との関わりが多くなり、職員のご利用者様への対応が大雑把になってくる職員が出てきます。 この差は個人差はあるものの、多くの職員に見られる傾向です。 特に訪問介護と違い、特別養護老人ホームや、有料老人ホームなどの施設系の介護現場だと、特にこの傾向が強く見てとれます。 訪問介護の一対一の支援と違い、介護施設だと一対多数の所がほとんどなのです。 ケアにあたるその瞬間は一対一なのですが、排泄介助や入浴介助を行う際は制限時間内に順番のケアを行うため、あまり丁寧にケアを行えない時もあります。 これは介護施設の大きな問題で、人員不足により生じてしまう問題でもあります。 その点訪問介護の良いところとして挙げられるのが、ケアが一対一の支援であるということです。 一対一の支援だと、目の前のご利用者様に集中できます。 1人に対するケアのためサービス内容が決まっていて、そのサービスに集中できるからです。 施設介護だと一対多数の環境ですので、他のご利用者の見守りを行いながらケアをします。 そのため丁寧にケアできない環境も生まれてきてしまいます。 このようなことから訪問介護において一対一の支援ほど、ご利用者様と職員にとって良い環境はないのです。 ご利用者様のストレス軽減 訪問介護による一対一の支援は、ご利用者様にとってストレス軽減の効果もあります。 それは、限りなくご自身が安心する環境下でサービスを受けることができるからです。 詳しい内容を以下でご説明いたします。 一体一の支援はヘルパーにとっても良い 一対一の支援に特化した訪問介護の良いところは、ご利用者様の住みたい環境下でサービスを提供することができると言うところです。 介護業界で働いていると分かるのですが、施設で入居しているご利用者様より、訪問介護を活用し在宅介護で過ごされているご利用者様の方が、落ち着いていらっしゃる傾向があります。 不穏な様子を見せる人が少なく、全体に落ち着いている印象を私は持っています。 施設で仕事をしていると、「自分の家に帰りたい」と帰宅願望を訴える方を多く見てきました。 例えば夜中に居室から出てきて、「もう帰らなきゃ、帰って朝ごはん作らなきゃいけない」と訴えるご利用者様などがいらっしゃいます。 その方は認知症で、半年前に入居されていたのですが半年経った今でも夜中に同じ訴えを言い、落ち着かない夜を過ごされています。 職員としても、施設外へ出てしまう恐れもあるので見守りが欠かせません。 ご利用者様も、やりたいことを止められてストレスになりますし、職員としても他のご利用者様の対応などもあるので大変ではあります。 ご利用者様、職員ともに良い環境とは言えないのです。 その点、一対一の支援ができる訪問介護はご利用者様と職員双方のストレスを軽減できます。 いきなり知らないところに入居して、見慣れない景色や環境の中、生活しなければならないことを考えると誰でも不安になります。 なのでヘルパーの視点から言っても、環境をあまり変えずに一対一の支援を受けられる訪問介護はご利用者様と職員にとって良いことづくしであると言えます。 一対一の支援はヘルパーの実力アップ シンプルに、一対一の支援はヘルパーとしてのスキル全体の実力アップにつながります。 どう言う実力がつくのかと言う点についてご説明していきます。 臨機応変力がつく 一対一の支援がメインになる訪問介護では、基本的に職員1人に対してご利用者様1人です。 訪問介護は、特別養護老人ホームや有料老人ホームなどの施設介護との大きく異なり、なんでも1人で対応していかなくてはいけません。 実際に訪問介護の現場では、1人での介護が厳しいと感じるご利用者様は多くいました。 私の経験の中で1つ上げると、ある男性利用者が体が180㎝くらいある大きい方でした。 その方は体重が重い上に半身麻痺の症状をお持ちだった為、1人で介護をするには困難を伴いました。 もう1人いれば簡単に介助できるのですが、もちろん現場では自分1人です。 そのため、私は自身で様々な工夫をして介助を試み、そのご利用者様にも満足頂くことができました。 その時の経験により、その後大きな体格のご利用者様の介護でも、腰を痛めることもなく1人で介助できる技術を身につける事ができました。 訪問介護の一対一の支援で、介護現場での臨機応変さを学ぶ事ができ、それは大きなメリットと言えます。 訪問介護の現場では、ヘルパーとして得られることは非常に多いです。 いろいろな介護度の人から学べる 一対一の支援がメインである訪問介護は、多種多様なご利用者様と関わります。 認知症を発症しているご利用者様や、半身麻痺のご利用者様など、症状も様々に在宅で過ごされています。 その介護度は要支援1から要介護5まで幅広く、中には安否確認だけを必要とする要支援1の方もいれば、全介助で要介護5の寝たきりの一人暮らしの方もいました。 グループホームなどは別ですが、費用の安い特別養護老人ホームは要介護3以上でないと入所できません。 在宅では症状が幅広く様々な介護度のご利用者様を知ることができます。   まとめ ここでは、ヘルパーが利用者に行う一対一の支援の良いところについて、ご紹介してきました。 ①基本的に同じ人の支援(介助)を受けられる ②ご利用者様に丁寧なケアを提供できる ③ご利用者様のストレス軽減が可能 ④一対一の支援でヘルパーもストレス軽減になる ⑤ヘルパー介護力の臨機応変力がつく ⑥いろんな介護度のご利用者様を知ることができる 一対一の支援に特化した訪問介護の良いところは、限りなくご利用者様の住みたい環境下でサービスを提供することができると言うところです。 最後までお読みいただきましてありがとうございます。

  • 介護保険の上限を超過したときはどうすればよい?対処方法や自己負担を軽減する方法について解説

    介護保険制度では、要介護度によって受けられるサービス料の上限が決まっています。 ケアマネジャーは、決められた上限の範囲におさまるようにサービスを調整しなければなりません。 本記事では、介護保険の上限が決まっていることや、この上限を超過した場合の対策、自己負担を軽くする制度について解説します。 介護保険の上限は区分支給限度基準額で決まっている 介護保険のサービスは、訪問介護やショートステイ等のサービスごとに使用できる単位数が決められています。 そして、要介護度によって1ヶ月間に使用できる単位数の上限が決められており、それを区分支給限度基準額といいます。 区分支給限度基準額とは 区分支給限度基準額とは、要介護度ごとに設定された介護保険サービスの月の上限を単位数として設定しているものです。 介護保険はサービス毎に単位が決められており、ケアマネジャーは区分支給限度基準額を超えない範囲で、サービスを組み合わせて調整します。 利用者の自己負担は、所得によって1〜3割に設定されていますが、在宅介護を続けていくと、加齢やADLの低下にともない必要なサービス量は増えるものです。 サービス量が増えると、自己負担とともに介護保険の公的なお金の利用も増えていきます。 しかし、財源に限りがあるので上限が設けられているため、その範囲内でサービスを調整するよう求められています。 ○在宅サービスの区分支給限度額と自己負担額 区分 支給限度基準額(単位) 利用限度額 (円) 1割負担の時の 自己負担額(円) 要支援1 5,032 50,320 5,032 要支援2 10,531 105,310 10,531 要介護1 16,765 167,650 16,765 要介護2 19,705 197,050 19,705 要介護3 27,048 270,480 27,048 要介護4 30,938 309,380 30,938 要介護5 36,217 362,170 36,217 ※1割負担、1単位=10円の場合 参考:目黒区 区分支給限度額(介護保険から給付される一か月あたりの上限額) 区分支給限度額を超過すると全額自己負担になる 区分支給限度基準額を超過してしまった場合、超過した分の介護保険は利用できないので、全額自己負担で支払うことになります。 例えば、1割負担で要介護5の人が1ヶ月に400,000円分の介護保険サービスを利用したとします。 1割負担の支払額は40,000円ですが、限度額は36,217円なので、40,000−36,217の3,783円分超過してしまいます。 この場合、超過した3,783円は全額自己負担になりますので負担額は10倍の37,830円です。 全ての負担額の1割負担分の36,217円と全額自己負担分の37,830円を足して、74,047円がこの方の自己負担額になります。 急に負担が増えてしまいますので、ケアマネジャーは上限の範囲内でサービス調整する必要があります。 介護保険の上限を超えないようにするための対策の一つは、要介護度の区分変更を申請することです。 介護保険の上限を超えないようにするには区分変更を申請する 介護保険の上限を超えないようにするには区分変更申請が有効です。 要介護度が上がると区分支給限度基準額が上がりますので、利用できるサービスの量を増やせるからです。 例を挙げると以下のようになります。 要介護1の時は車椅子のレンタルができなかったが、要介護3になったらできるようになった。 要介護2では他のサービスとの兼ね合いでショートステイが1週間しか利用できなかったが、要介護4になったことで10日利用できるようになった。 特養入所を考えているが、要介護2の状態では入所できないので要介護3以上にしたい。 上記のように、区分支給限度基準額を超えてしまいそうな時は区分変更申請が有効です。 ケアマネジャーとして、利用者本人や家族の生活状況を見ながら提案してみるのもよいでしょう。 しかし、ご利用者様のご家族から「要介護度が上がると自己負担が増えてしまうので困る」という声が聞こえてくることもあるかもしれません。 次は自己負担を軽減させる制度について解説していきます。 介護保険の自己負担を軽くする制度 在宅介護を続ける上で、費用負担を軽くすることも大きなポイントです。 ここでは、自己負担を軽くする制度である「高額介護サービス費」「介護保険負担限度額認定」や、「介護保険料を滞納すると自己負担が増える」ことについて説明します。 高額介護サービス費 参考:厚生労働省 令和3年8月利用分から高額介護サービス費の負担限度額が見直されます 高額介護サービス費は、「1ヶ月に支払った利用者負担の合計が所得に応じた負担限度額を超えた時に、超えた分が払い戻される」制度です。 例えば、市町村民税が課税されていて課税所得が380万円未満の人は、上限額44,400円になっているので、1か月の費用が50,000円かかった場合後から6,000円が返還されます。 介護保険の給付対象外の食費や、全額自己負担分は対象にはなりません。 該当する時に、市町村から申請書が届きますので、必要事項を記載して役所へ提出します。 次回以降は自動で振り込まれますが、はじめに申請をしないともらえないので注意が必要です。 介護保険負担限度額認定 介護保険負担限度額認定は、ショートステイや特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院などの介護保険施設を利用する際の負担軽減対策です。 これらの施設の利用料金は、介護保険の自己負担分(1〜3割負担)と食費、居住費が主なものになります。 このうち、食費と居住費が住民税の課税状況や年金額、預貯金などによって段階的に減額されます。 施設入所の場合は通常15〜16万円かかる利用料金が半額程度になる場合もあります。 要件が複雑ですので、役所の介護保険窓口で対象になるのかどうか確認してみてはいかがでしょうか。 介護保険料の滞納 こちらは自己負担を軽くするというよりは、負担を重くしないようにするための注意点です。 40歳から納付義務のある介護保険料は、健康保険料とあわせて納付します。 年金を受給するようになると、特別徴収といって年金から天引きされるのが基本です。 ただし、年金額が年間18万円未満だったり年度途中で65歳になったり、引っ越したりすると普通徴収になり、納付書や口座振替で支払うことになります。 介護保険料を滞納すると、期間によって以下のようなペナルティが課せられるので、注意しましょう。 滞納期間 対応 内容 1年以上 介護保険給付の支払い方法の変更(償還払い化) 通常1〜3割負担のところ、一旦10割支払い、その後申請をして7〜9割分の払い戻しを受ける。 1年6か月以上 介護保険給付の一時差し止め 一旦10割支払った後、7〜9割の払い戻しが差し止められる。介護保険料を支払えば払い戻されるが、支払わないと差し止め分から差し引かれる場合がある。 2年以上 介護保険給付の減額 時効により介護保険料が納付できなくなる。 また、通常1〜3割の自己負担が3〜4割負担になり、高額介護サービス費の対象外になる。 介護保険料を滞納すると上記のようなペナルティが課され、自己負担が重くなります。 滞納すると市町村から督促状や催告書が送られてきますので、速やかに納付しましょう。 まとめ いかがでしたでしょうか。 本記事では、介護保険の上限や、上限を超過した場合の対策と、自己負担を軽くする制度について解説しました。 介護保険の上限は区分支給限度基準額で決まっている 区分支給限度基準額を超過すると、超過した分は全額自己負担になる 区分支給限度基準額を超えないようにするには要介護度の区分変更申請が有効 介護保険の自己負担を軽減させるには、高額介護サービス費や介護保険負担限度額認定などの制度を活用する 介護保険料を滞納すると自己負担が重くなる場合がある 介護保険の制度は複雑で、利用者やその家族が自ら理解して制度を活用することは現実的ではありません。 ケアマネジャーには利用者やその家族が安心してサービスを受けられるよう、制度をうまく活用し導く役割が求められています。 最後までお読みいただきありがとうございました。

  • 介護業務を楽にする!チームで取り組むIT連携の重要さを解説

    厚生労働省は、介護現場のIT化を進め、根拠を基にした科学的介護を推奨しています。 介護保険施設で働くスタッフの中にも、チームでIT連携に取り組み、業務を効率化したいと感じている人は多いのではないでしょうか。 業務が効率化できれば人手不足や残業が減少し、直接利用者に関わる時間が増えることにより、ケアの質の向上につながります。 本記事では、介護業務が楽になる、チームで取り組むIT連携について説明します。 介護業務とIT連携の現状 ITとは、「情報技術」のことで、コンピューターやデータ通信に関する技術の総称です。 介護保険施設の管轄である厚生労働省は、科学的介護を推奨し、介護現場におけるIT化を進めています。 ITを活用し業務を効率化することで、本来の介護業務に集中できるよう働きかけており、その為の補助金もだしています。 また、ITを活用しビッグデータを収集することで、根拠に基づく介護サービスを提供できる環境作りを目指しています。 とはいえ業界全体のIT化はなかなか進んでいないのが現状です。 記録や行政への提出書類、契約関係の書類等、介護業界はとにかく紙ベースの仕事が多くなっています。 新しくITを導入しようにも、コストがかかりますし、従来のやり方に慣れているスタッフの抵抗感もあります。 ITに詳しいスタッフや、指導できるスタッフがいる施設とそうでない施設で差が大きくなっているのが現状です。 しかし、ITを活用できれば大きな業務改善につながります。 情報共有をスムーズにするために介護業務×IT連携が効率的 介護業務とITは非常に相性がよいとされています。 厚生労働省が行った令和2年度 ICT導入支援事業 導入効果報告まとめ によると、ITを導入によって間接業務が見直されたり、業務管理が効率化されたと感じている事業所が約70%あることが分かりました。 引用:令和2年度 ICT導入支援事業 導入効果報告まとめ | 厚生労働省 介護業務にITを導入すると情報共有がスムーズになり、以下のような効果があります。 ・間接業務の時間が削減される ・業務管理が効率化される ・単純ミスが減る ・研修等の動画コンテンツを活用しやすくなる ・人手不足の解消につながる 一つずつ説明していきます。 間接業務の時間が削減される 前述の厚生労働省の調査によると、約70%の事業所がITを活用することで、間接業務の削減につながったと感じています。 利用者に対する直接的なケアにかかる労力を削減するのは難しいものです。 しかし、利用者の安全で安楽な生活を守る上でも直接的なケアには時間をかけるべきです。 ITを活用することで、記録にかける時間の削減や内容を充実なものにし、ムダな文書をなくしたり、前回作成したデータを活用することができます。 すると、時間を削減することができるため、直接利用者に関わらない部分の業務スピードを上げることが可能です。 業務管理が効率化される 事業所内外との情報共有が円滑にする、シフト管理を効率化できる、重複する記録を廃止したりする等して、職員一人当たり一日30分から1時間削減することが可能です。 一日3人勤務していたら、1.5時間から3時間が確保できることになります。 これだけ時間が確保できたら、直接利用者に関わる時間も自然と増えていきます。 単純ミスが減る 業務のIT化が進むと、紙に書いていた記録をスマホやタブレット等を使って行うことになるため、文字を書くことなく記録業務が完了します。 記録時間を削減するとともに清書や転記作業がなくなり、同時に他部署との情報共有も可能です。 ・紙に書く ・PCで入力 ・他部署へ報告 これらの工程が端末への入力のみになるので、この間に起こるヒューマンエラーはなくなります。 うまくITを活用できれば、業務が簡略化されると同時に単純なミスが減ります。 研修等の動画コンテンツを活用しやすくなる 介護現場はシフト制のことが多く、スタッフが一つの場所に集まって行う研修は、時間設定が難しい場合があります。 今は新型コロナウィルス対策で集合研修を控えている事業所も多いのではないでしょうか。 最近ではYou Tubeで動画研修を行ったり、Zoom等を活用してオンラインで講義を行う方法が広まっています。 現場で行うOJT以外にも、動画コンテンツを活用した研修を取り入れることで、法定研修や職員育成につなげることができます。 人手不足の解消につながる IT化が進むと時間が生まれます。 それまで2時間かかっていたことが半分の1時間でできるようになります。 そうすることで、フロアに一人多く配置できる時間帯もできるでしょう。 普段できない後回しにしていた業務に手が届くようになります。 また、業務にITを取り入れていることをうまく発信できれば、就職や転職活動をしている人に良いアピールが可能です。 結果的にスタッフが集まりやすい事業所になっていきます。 このように、介護業務とITの相性はとても良く、情報共有がスムーズになることで、業務の効率化がすすみ、時間が生まれ、ケアの質を向上することに繋がります。 ただし、個人情報を取り扱うことになるので、人まちがいなどの入力ミスや業務用携帯電話、USBメモリなどの紛失による情報漏洩には十分注意しましょう。 介護業務×IT連携の導入例 実際に介護現場に導入されているIT機器にはどのようなものがあるのでしょうか。 代表的なものには以下のものがあります。 ・インカム ・見守り支援システム ・ケア記録システム ・SNSを活用した一括メッセージ送信 ・共有フォルダの活用 それぞれ一つずつ説明していきます。 インカム インカムは、マイク付きのイヤホンやヘッドセットを装着し、相互に通信できる無線機のことです。 複数のスタッフ間で一斉に情報伝達できるのが特徴です。 業務連絡やセンサー作動時に誰が対応するか等、他の業務をしながら相談や指示出しができます。 コストや衛生面、介助中に機器が邪魔になる、自分が望んでいない情報も聴こえてしまう等のデメリットはありますが、補助金の対象になることもあり、介護現場での導入が進んでいます。 見守り支援システム 慢性的な人手不足の介護現場で、見守り支援システムは利用者の状態を察知し、スタッフをサポートしてくれます。 利用者の居室やベッドにカメラやセンサーを設置し、呼吸数や心拍数、眠りの深さや体の動きを可視化することが可能です。 異常や状態に変化のある場合はナースコールやアラームが作動しスタッフに知らせてくれます。 巡回の頻度を減らすことができるのでスタッフの心身の負担軽減にも繋がります。 利用者の動きをリアルタイムで確認できるので事故の防止にも繋がるでしょう。 システムを導入していることが施設の売りの一つとなり、スタッフや利用者の募集に繋がる可能性もあります。 ですが、過度にシステムに頼りすぎると「監視」という形で利用者のプライバシーを侵害することにもなりかねません。 見守り支援システムができるのはあくまで利用者の動きを察知するところまでです。 システムから得た情報を使うのは人間であることに変わりはありません。 転倒リスクのある利用者の動きをセンサーが察知したら、そこに駆けつけるのは人間のスタッフです。 機械を過信しすぎず、上手に活用することが大切です。 ケア記録システム 昔は日々の記録を紙に書いて綴っていましたが、現在ではPC入力が主流です。 さらに近年はスマホと連動し、ケアをしたその場でケア記録を入力することができます。。 利用者の様子やバイタルの測定等の記録をスマホやタブレットから入力すれば、記録時間が短縮され、多職種との情報共有をその場で完結します。 紙へのプリントも不要です。 機器によっては音声入力も可能なため、さらに入力時間が短縮されます。 外出先からも入力できるので訪問先から事業所に戻って記録をすることもなくなります。 検索機能を活用すれば過去の記録を探す時間も大幅削減できるでしょう。 上記のように介護業務を効率化するIT機器には多くのものがありますが、前提としてWi-Fi環境の整備は必須です。 機器の購入やスマホやタブレット等の端末、専用ソフトの整備も必要なので、うまく補助金を活用し負担がかかりすぎないよう工夫しながら導入できるとよいでしょう。 SNSを活用した一括メッセージ送信 スタッフや利用者家族へ一斉に連絡事項を伝えたい時にSNSを活用すると、一括でメッセージを送信することができます。 以前は1件1件電話をしたり、手紙を送ったり、スタッフには連絡網を活用したりと、手間と時間がかかる対応をしていました。 事前に登録しておけば、LINEでメッセージを全体発信することが可能で、公式アカウントを活用すれば家族の個人アカウントが他者へ漏れることもありません。 家族懇談会や施設の会議にZOOMを活用するのもメッセージの発信になります。 内部研修にYoutubeを活用するのも良いでしょう。 導入時に勉強する必要はありますが、効果は絶大なので、検討してみるのはいかがでしょうか。 共有フォルダの活用 他部署で同じ書式を使用するときは、共有フォルダを活用すると効果があります。 例えば委員会の議事録や事故報告書などです。 共有フォルダに保管しておけば、他部署が作成した議事録や報告書もパソコン上で確認することができるようになるので、確認したい時にすぐに確認できるようになります。 各フロアや医務、栄養士とそれぞれの部署のパソコンのデスクトップに保管していると、書式が変わったのに反映されていないなんてことが起きてしまいます。 施設のサーバーに保管され、データを失うリスクも少なくなるので、共有フォルダを活用することも効率化の一つとなります。 まとめ いかがでしたでしょうか。 介護業務とITが連携することで業務が効率化できることを説明してきました。 介護業務×IT連携が効率的な理由は 情報共有がスムーズになる ・間接業務の時間が削減される ・業務管理が効率化される ・単純ミスが減る ・研修等の動画コンテンツを活用しやすくなる ・人手不足の解消につながる 介護業務×IT連携の導入例として ・インカム ・見守り支援システム ・ケア記録システムなど ・SNSを活用した一括メッセージ送信 ・共有フォルダの活用 について説明しました。 IT機器を導入する目的は情報共有をスムーズに行い業務を効率化することで時間を生み、ケアの質を向上させることです。 個人情報の取り扱いとのバランスに留意し、それぞれの事業所にあったIT機器を導入するとよいでしょう。 最後までお読みいただきありがとうございました。

  • 監視カメラを介護現場で活用する目的とは?問題点と活用方法等を解説!

    最近、介護現場での犯罪や暴力行為等が報道されることが増えています。 客観的な証拠を残すという目的で、監視カメラを導入している施設も多くなってきています。 監視カメラの設置を希望しているのは、施設運営する事業者と大切な家族を施設へ預けている利用者家族の双方です。 監視カメラを活用すると、防犯や虐待に対する抑止力、事故の検証等の面で、速やかかつ明確な事実確認ができ、スタッフや利用者を守ることにもつながります。 ですが、常に監視されているスタッフや利用者の心理的な負担は大きいものです。 本記事では、介護現場で上手に監視カメラを活用する方法と、今後の監視カメラの使用目的について解説します。 介護現場に監視カメラを導入する目的 Wikipediaによると、監視カメラとは「何らかの目的で何らかの対象を監視するためのビデオカメラである」とのことです。 起きた出来事を映像として記録する監視カメラですが、介護現場に設置する目的は以下のようになります。 ・防犯 ・虐待等、スタッフの言動に対する抑止力 ・事故発生時の検証 以下で一つずつ説明していきます。 防犯 主に施設の正面玄関やスタッフ専用の出入り口等、外部から施設内への入口部分に設置します。 外部からの予期せぬ侵入者の証拠が残るため、障害者施設で起きた外部侵入者による殺傷事件以降、需要が高まっています。 他には、利用者の家族が帰った時刻を確認したり、近隣で事件が起きた時に警察からデータ提供を求められたりする場合もあります。 虐待等、スタッフの言動に対する抑止力 スタッフの不適切な言動や金品の紛失について報道されるケースがあります。 起きてはならないことですが、今後も起きてしまう可能性はゼロではありません。 事業所としても、まさか自施設で起こるとは思いたくありませんが、リスク管理としてカメラを設置する選択肢は有効です。 食堂や廊下、場合によっては居室にカメラを設置し普段から映像を録画しておくことで、何か起きた際に確認できる環境を作ります。 カメラがあるというだけで抑止力になりますし、業務改善としてスタッフの動き方を考える上でも有効活用できます。 事故発生時の検証 転倒等の事故が起きた時、転倒した瞬間を見ていないケースが多く、日ごろの利用者の行動や発見時の状況から「おそらくこのように転んでしまったのだろう」と原因を推測します。 食堂や廊下にカメラが設置してあれば、事故が起きた時の映像がそのまま残ります。 何かにぶつかったのか、体の向きを変えたときにバランスを崩したのか、頭を打っていないか等の原因や状況が誰が見ても明らかです。 初期対応の応急処置や受診が必要かどうかの判断がスムーズになり、受診先でも医師への正確な情報提供が可能になります。 再発防止策を検討する際も、映像を見ながら検討することでより現実的な対策を出せるでしょう。 監視カメラを設置する目的は以上のようなものがありますが、導入するには主に心理面の障壁もありますので、次の項目で説明していきます。 介護現場に監視カメラを導入する時の問題点 介護現場への監視カメラの導入を進めるにあたり、一番問題となるのはプライバシーの侵害にあたることです。 施設とは言え利用者にとっては生活の場です。 生活の場を監視して管理するというイメージがあり、道徳的にいかがなものかと考える方も多いのではないでしょうか。 生活する利用者からみてもカメラに監視されて生活するのは息苦しいものです。 まじめに働いているスタッフも、自分の些細な言動が逐一チェックされるのは働きにくいでしょう。 「信頼されていない」と感じるスタッフがでてくる可能性もあります。 導入すれば活躍の場面が多い監視カメラですが、心理面の障壁はモチベーションが低下する一因になることもあります。 スタッフや利用者、利用者の家族に向けて導入の目的を明確にし、根気よく説明することが求められます。 次は監視カメラを上手に活用する方法について説明していきます。 介護現場で監視カメラを活用する方法 介護現場で監視カメラを活用するために押さえておきたいポイントが5つあります。 ・目的を明確にする ・ルールを作る ・設置場所を検討する ・家族や利用者への説明 ・スタッフへの説明 以下で一つずつ説明していきます。 目的を明確にする 施設としてなぜ監視カメラを設置するのか、どのように活用するのかを明確にしましょう。 前述の防犯、虐待予防、事故検証が主なものになります。 自身の施設にとっての目的を明確にし、利用者やその家族、スタッフの理解を得られるようにしておきます。 傷害事件や虐待について大きく報道される機会もあるので、監視カメラを設置することが自分たちを守ることにつながることを、本人、ご家族、スタッフに説明し相互理解を得る努力をすることが大切です。 ルールを作る 次のポイントは「録画した映像をどのように活用するか」です。 録画した映像は個人情報の為、開示の仕方を決めておく必要があります。 監視カメラを設置した後は基本的には常に録画されている状況です。 家族から「普段の生活の場面を見たい」と映像の開示を求められても安易に見せるものではありません。 行政や警察からの依頼、事故発生時の検証、その他トラブル発生時の確認等、映像を使用する場面をあらかじめ決めておき、文書化しておく必要があります。 設置場所を検討する 設置場所を検討し決めることも必要です。 食堂、廊下、玄関等の共有部分への設置にさほど悩むことはないでしょう。 一番悩ましいのは居室をどうするかです。 居室はスタッフと利用者が密室で1対1になる場なので虐待や不適切なケアが起きやすい環境でもあります。 転倒リスクの高い利用者には行動の把握のためにできれば設置したいところではありますが、プライバシーの侵害になることが心配です。 居室に設置する場合はよく話し合い、どのような目的でどのように設置するのか検討することが大切です。 家族や利用者への説明 安全を守る為に使用する監視カメラですが、一人の人の行動を常に見られる状況であることは間違いありません。 入所する際に、施設の方針として監視カメラを設置していることや、設置している場所や録画している映像の活用方法について説明しましょう。 スタッフへの説明 監視カメラを設置する際は、スタッフへの説明も必要です。 監視することが目的ではなく、事故発生時の検証や虐待を防止することで、自分たちを守ることにつながることを理解してもらう必要があるからです。 施設に過失のない転倒事故が起きた時に、家族から「施設の対応が悪い」等の事実でないクレームを言われてしまっては、関わったスタッフはショックを受けてしまいます。 映像が残っていれば施設は毅然と対応することができます。 監視カメラを設置する目的を利用者や家族だけではなく、スタッフにもしっかり説明することが大切です。 今後の監視カメラの使用目的は「監視」から「記録」へ これまでの監視カメラは、文字通り「監視」が目的でした。 施設にどんな人が出入りしたか、スタッフの振る舞いは適切だったかなどを確認するために監視カメラを導入していたのです。 しかし、権利者意識の強い利用者や家族が増えている昨今、理不尽な要求を強いられたり、事故に対して施設に責任を押し付けられるような場面も想定しなければなりません。 今は一つの転倒事故が裁判にまで発展する時代です。 もちろん、施設側に過失のある事故については相応の対応をする必要があります。 ですが、転倒した場面が記録されていることで、訴訟リスクを回避できる場合もあるでしょう。 「監視」だけでなく「記録」のためにカメラを使用していくことを考える時期がやってきています。 まとめ いかがでしたでしょうか。 介護現場に監視カメラを導入する目的や心理的な障壁、活用する方法について解説しました。 監視カメラを導入する目的は、 ・防犯 ・虐待等、スタッフの言動に対する抑止力 ・事故発生時の検証 等 監視カメラの活用方法については、 ・目的を明確にする ・ルールを作る ・設置場所を検討する ・家族や利用者への説明 ・スタッフへの説明 監視カメラの今後について、 ・使用目的が「監視」から「記録」へ変わっていく ・転倒事故などの映像が適切に保管されると訴訟などのリスクを軽減させられる場合もある 現在は車にもドライブレコーダーがついている時代です。 プライバシーやスタッフの心理的な負担には最大限の配慮をしつつ、上手に監視カメラを活用することで、利用者の安心できる生活や、スタッフの働く環境を整備することができます。 最後までお読みいただきありがとうございます。

  • 家族に突然介護が必要になった!慌てずに準備するために覚えておくこととは?

    今まで元気だった家族が突然倒れ、介護が必要な状況になったら、あなたはどうしますか? 病院に任せきりになっても、いつかは、自宅または転院、施設の入所などを決断する時はやってきます。 この記事は、突然の介護に慌てないための事前準備について紹介します。 家族が、いざという時の基本的な知識として持っていて欲しい内容です。 介護は突然始まるもの 家族介護は、何の前触れもなく、突然、始まることが多く、不十分な準備のもとで介護に臨めば、困ることが多々あります。 特に仕事を持つ社会人にとっては、今後の対応が予想困難で仕事と介護の両立ができずに離職する可能性もあるのです。 今は親も家族も健康だからといって、介護の基本的な知識がないと突然の介護でパニックに陥ることも考えられます。 今は大丈夫だからではなく、これから起こるかもしれない現実から目をそらさない行動が、介護で困らない第一歩です。 突然の介護に困らないようにするには 病気や怪我で倒れた家族の介護は、準備を怠れば不十分な状態で不安を抱えながら、始まります。 突然の介護に困らないようにするには、事前の心構えや準備が大切です。 家族でよく話し合う 家族で介護についてよく話し合うことは大切ですが、ベストなタイミングは、介護を必要としない親や家族が元気な時です。 このタイミングを逃すと、突然の介護に対応できる時間の余裕がなくなります。 家族のライフスタイルは、年齢や生活環境によって変わりますが、話し合いだけでもしておけば、突然の介護でも動揺する気持ちを最小限に抑えられます。 以下のポイントについて家族で話し合っておきましょう。 在宅介護ができるか、家族の意見を聞く 介護の中心者を決める 介護の協力者を決める 親の経済状況を確認しておく 経済状況に不安があれば、家族の介護費用の負担割合を決めておく 厚生労働省ツールを活用する 厚生労働省のホームページに「介護への事前の備え」といったツールが用意されています。 このツールは、親や配偶者など家族の個人情報をはじめ、介護に関する必要な情報を網羅できるシートです。 家族の話し合いに活用でき、家族の状況に応じてシートを増やすことで、介護に直面した時に役立ちます。 介護情報が豊富な本を見ておく 介護に関する本は数多くありますが、中でも介護情報が豊富な本を事前に見ておくことも大切です。 特に在宅介護に特化し、介護保険制度など最新の情報を記載した本は必ず役に立ちます。 介護が始まるまでには、最低1~2冊購入し、知識を増やしておけばいざという時に活用できます。 Webサイトで最新の介護情報を確認しておく 本と共に、ネット上にあるWebサイトでも最新情報が確認できます。 自分が必要とする情報だけでも有効活用すれば、事前の準備に役立てられるのです。 特に医療・介護従事者が作成した記事がある介護情報サイトは、信頼性の高い情報が得られるため、おススメです。 在宅介護をスムーズに行うためには 在宅介護をスムーズに行うためには、介護者が自覚を持つことは大切ですが、準備すべきことは沢山あります。 しかし、介護をスタートダッシュすれば、必ず、介護疲れを早めに感じてしまいます。 介護はマラソンです。 決して短距離走で息切れしない対策も考えておきましょう。 症状や薬の情報を知っておく 被介護者の症状や薬の情報を知っておくことはとても大事です。 介護が始まると、日々の介護に追われて、処方された薬の情報まで詳しく知る時間がありません。 しかし、薬の作用、副作用を介護者が知っておかないと、訪問診療の際に問題が起こることも考えられます。 担当医に薬の情報を確認しておけば、訪問医療や訪問看護でも要介護者の正確な情報を伝えられます。 また、過去の既往歴や服用していた薬は、かかりつけ医やお薬手帳で確認しておくことも大切です。 入院先で治療にあたる医師や看護師の情報になり、在宅での診療にも役立ちます。 入院中から行動しておく 病気や怪我によって入院した場合、退院までの期間が症状や状況により変わることがありますす。 退院後の介護を視野に入れるには、入院中から行動しておくことが大切です。 病院のソーシャルワーカーに相談し、退院に向けた道筋をはっきり決めておけば、在宅介護をスムーズに行えます。 介護力を上げておく 家族の介護力を上げておくことも大切なポイントです。 介護に自信がない状況で介護生活を迎えると、最悪、介護放棄につながりかねません。 入院期間中に、病院の看護師やヘルパーに介護方法について学び、可能であれば、実際におむつ交換や体位変換、痰の吸引などを経験しておけば、安心し、介護を始められます。 ただし、コロナ禍で直接介護ができない場合は、自治体などが行っている介護教室を利用するのもおススメです。 ケアマネを探しておく 介護サービスを利用し、在宅ケアにつなげるためにはケアマネの存在が不可欠です。 特に入院中の場合は、病院の医療相談員やソーシャルワーカーなどに相談してケアマネを紹介してもらえば、介護サービスの手続きや福祉用具相談員とも連携でき、在宅介護の不安が減ります。 自宅の環境を整備する 在宅介護は、現在の自宅の環境で問題がないかプロの目で確認してもらわないと、転倒などの思わぬ事故につながる可能性があります。 要介護者や介護家族のストレスの軽減、福祉用具の準備のためにもプロのアドバイスは必須といえるでしょう。 しかし、居住している家によっては、在宅介護が不可能と判断されることも考えられます。 自宅の環境整備を早めに行えば、万が一の場合も次の対応をとる時間もできます。 自治体に相談しておく 介護サービス以外で介護に役に立つのがお住いの市町村の介護福祉課や地域包括支援センターです。 介護費用に補填できる補助金などの支援があり、知っておいても損はありません。 介護が必要な主な病気や原因 突然の介護は、どのような病気や原因で始まるのでしょうか。 2019年国民生活基礎調査の概況では、介護が必要になる病気や原因ははっきりと示されています。 介護が必要になる病気であれば、退院までに介護支援を確認、調整しておくことが大切です。 介護が必要になる主な病気 介護が必要になる主な病気は、認知症、脳血管疾患、高齢による衰弱が主となっており、脳疾患による介護が全体の4割を占めています。 また、事故や転倒などによる骨折で、車椅子生活になり、在宅介護になるケースも増えています。 特に長期間の入院生活で認知症になり、家族介護の大変さから在宅から施設入所を決断する家族も増えているのです。 健康で高齢になる前に、介護に直面した時の備えが必要なことは明らかでしょう。 退院支援は病気によって変わる 退院支援は病気によって変わります。 入院中の健康状態や障害によって介護方法は変わるため、病院や施設との連携が大切です。 入院中の対応が遅れると、家族の心構えを初めとする在宅介護にスムーズにつながりません。 退院支援の体制を整えておくには次の点に注意しておきましょう。 病院と話し合っておく 医師や看護師、ソーシャルワーカーなど、病院と話し合い、退院後の治療方針などを確認して決めておくことが大切です。 入院時と退院時では健康状態や障害の状況など変わっていることが多いため、退院前には医師に聞いておきたいことを挙げてみます。 病気はこれからどうなるのか 病気は治る見込みはあるのか 食事などで気をつける点は何か 在宅で気をつける点は何か 症状の悪化や緊急時の連絡体制はどうなるのか 訪問診療や訪問看護の頻度は 介護施設の利用はどうするのか 介護が始まるまでに家族で考えておこう 介護が始まるまでに家族で考え、話し合いを重ねることは重要です。 退院時の症状によっては、在宅介護か施設の利用かの検討が必要になることもあるでしょう。 しかし、基本は患者本人の希望です。 自宅に帰りたいという意向が強いのであれば、在宅介護に向けた家族の対応や医療・介護支援が必要であるという認識を持つことが大切なのです。 まとめ この記事のポイントは次のとおりです。 突然の介護は事前の備えが大切 元気な間に、家族との話し合いや各種ツール、本、ネットから情報を得ておく 在宅介護をスムーズに迎えるためには、入院直後から動き出す 退院支援を病院やソーシャルワーカーに確認し、悩みを解決しておく 高齢になると、些細な病気や怪我でも、介護が必要になる可能性が高くなります。 親や配偶者が元気な間に、突然の介護に困らないように、在宅か施設かを考えておくことが大切です。

  • 認知症を改善・予防する3つの方法とは?食べ物や運動の効果について解説

    「認知症の症状を改善したい」 「認知症にならないように予防したい」 そう考えることはないでしょうか。 認知症の症状は正しいケアをすることで改善できます。 また生活習慣を整えることによって認知症は予防することが可能です。 この記事では認知症の症状の改善や認知症の予防について解説していきます。 認知症の予防にはカレーがおすすめ みんな大好きなカレー、もはや国民食と言っても良いでしょう。 そんなカレーですが、実は認知症の予防に効果があると言われてます。 カレーを食べれば認知症予防になる!カレーの3つの効果 ではカレーはどのような理由から認知症予防に効果があると言われているのでしょうか。 詳しく解説していきます。 【効果①】カレーに含まれるスパイスの一種クルクミンに秘密がある カレーに含まれる代表的なスパイスにターメリックがあります。 そのターメリックにはポリフェノールの一種であるクルクミンが含まれていますが、そのクルクミンに認知症の原因となる「アミロイドβ」の生成を防ぎ、分解する作用があると言われています。 実際にシンガポールに住む60歳から93歳の1,000人を調査した結果によると、カレーを一ヶ月に一回食べる人は、まったく食べない人と比較して認知症の発症率が50%も低かったという調査もあります。 【効果②】カレーはバランスの良い優秀な食べ物。 カレーは肉や野菜など様々な具材が入っているバランスの良い食事です。 バランスの良い食事は低栄養状態を防ぎ、筋肉量の低下を防ぐことにも繋がります。 筋肉量の低下を防げれば転倒防止になり、寝たきりリスクを減らすこが可能です。 寝たきり状態は認知症リスクを高めるため、いかに転倒しないよう注意するかが大切です。 筋肉量を維持するためにもバランスの良い食事を心がけましょう。 【効果③】料理をすること自体が認知症予防になる カレーだけでなく料理全般に言えることですが、料理は脳と身体を使います。 同時に脳と身体を使うことにより認知症の予防になると言われています。 料理は「献立を考える」「具材の買出し」「料理の段取りを考える」「実際に料理をする」「味を整える」「盛り付ける」など複数の工程から成り立ちます。 複数のことを同時に進めるには、脳の司令塔である「前頭葉」を使うため、脳に良い刺激となるため、認知症予防になると言われています。 また、作った料理を誰かに食べてもらう喜びも、感情的に脳に良い刺激になるでしょう。 認知症の予防には適度な運動が最適 運動が健康に良いと良く言われていますが、これは本当のことです。 では認知症の予防に対してどこまで効果があるのでしょうか。 なぜ運動が認知症予防になるのか?4つの理由 運動すればすぐに認知症予防になるわけではなく、継続的に運動を続けていく必要があります。 その理由について以下で解説していきます。 ①運動することで脳への血流が改善し、栄養や酸素が行き渡りやすくなる 高齢者やアルツハイマー型認知症の方は、若い人と比較して脳への血流低下が見られます。 そのため脳に必要な栄養や酸素が行き届かなくなり、脳機能に影響を及ぼすと言われています。 しかし、定期的に運動すれば身体の血流が改善され、脳に必要な栄養や酸素が行き届くようになります。 また歩くことで脳の血流を良くするアセチルコリンの分泌が増えるとも言われています。 ②運動することで物理的に脳が成長する 運動をすると脳の神経を成長させるBDNFという物質が海馬で分泌されます。 BDNFには 代表的な効果に「脳細胞の新生を促す」「脳細胞の老化を遅らせる」「脳細胞が傷つかないように保護する」などがあります。 運動することでBDNFを分泌させ、海馬の機能維持や成長に効果を得るのです。 海馬は記憶を司る機能があるため、海馬の機能維持や成長を促すことは認知症予防に大きな効果があります。 ③運動によって認知症の危険因子である高血圧、肥満、糖尿病のリスクを減らせる 肥満、高血圧、糖尿病は認知症の危険因子とも言われています。 実際に成人後期のBMI(体格指数)が「肥満」と判定された人は、「正常」な範囲内にある人と比較して、認知症を発症するリスクが3割も増加するというデータがあるほどです。 認知症を予防するためにはこれらの危険因子を改善する必要があります。 定期的な運動は肥満の解消になり、ひいては高血圧や糖尿病リスクも軽減させることが可能です。 当然ですが運動をしても暴飲暴食をしては意味がないので、あわせて食生活も整えていきましょう。 ④運動により認知症の原因物質が取り除かれる。 認知症を予防するためには、「アミロイドβ」や「タウたんぱく」という毒素を脳内から取り除く必要があります。 なぜなら、認知症は「アミロイドβ」や「タウたんぱく」といった毒素が脳内に溜まることで発症すると言われているからです。 「運動習慣のない人」の脳内には「アミロイドβ」や「タウたんぱく」が排出されないことが判明しています。 その詳しいメカニズムは解明されていませんが、運動により脳内の血流が改善し、結果として老廃物と一緒に原因物質が排出されるのではないかと言われています。 認知症予防にはどんな運動が効果的? では実際に認知症予防に効果的な運動はどういったものか解説していきます。 認知症の予防では決して激しい運動をする必要はありません。 逆に無理のない範囲で行える有酸素運動が効果的であると言われています。 ①ウォーキング 「歩く」ことは認知症の予防に効果的です。 血圧があまり上がらない程度の無理のない歩行を行うと、海馬でのアセチルコリン(脳の血流を良くする物質)の分泌量が増え、海馬の血流が良くなります。 1日3.2㎞歩くと、認知症発生率は42%低下するというデータもあります。 歩行する際の目安は1日30分以上、週3回を目安に取り組みましょう。 ②コグニサイズ コグニサイズは英語のcognition (認知) とexercise (運動)を組み合わせた造語で、国立長寿医療研究センターが開発した「ながら運動」になります。 コグニサイズ(ながら運動)は、身体運動と同時に認知課題に取り組むことによって、認知症予防を目的としたエクササイズになります。 具体的には、①身体運動(歩行や足踏み運動など)と②認知課題(足し算引き算などの計算)を同時に、30秒で1セットを目安に行います。 国立長寿医療研究センターが愛知県で行った調査によると、軽度認知症と診断された高齢者のうち、コグニサイズを行ったグループは記憶テストの成績が改善し、脳萎縮の進行も抑えられたというデータもあります。 水分を飲むことで認知症の周辺症状が改善する 脱水により引き起こされる症状には認知症の周辺症状によく似た症状があるため、認知症と間違われてしまうことがよくあります。 ただ、しっかりと水分を摂取し脱水を防ぐことにより症状は治まります。 脱水による症状にはどういうものがある? まずは認知症の周辺症状によく似た脱水の症状には「せん妄」があります。 せん妄は一種の意識精神障害で、高齢者に多く見られる症状です。 せん妄の症状は「見当識障害(時間や場所を上手く認識できなくなる)」「思考力の低下」「注意力の低下」「感情の変動」など認知症の症状と非常によく似ています。 せん妄は脱水のほかに身体疾患や薬の影響などでも症状が現れることがあります。 また、以下のような症状が起きることもあるので。注意が必要です。 傾眠脱水…意識が朦朧としてウトウトとする状態 便秘…水分摂取が少なくなることで、便が硬くなり排便することが困難になる。 脱水にならないためには? 脱水にならないためには1日に2,500㎖の水分摂取が必要と言われています。 「そんなにたくさん飲めない」と感じるのではないでしょうか。 しかし、水分は飲むだけでなく、食事からも摂取できます。 例えば、味噌汁、果物、野菜などが挙げられます。 一般的に普段の食事から1,000㎖は摂取しているので、純粋な水分からの必要摂取量は1,500㎖ほどで大丈夫です。 効率的に水分を取って頂くために 高齢者や認知症のかたに一日1,500㎖の水分を摂取して頂くのは難しいものです。 以下のような方法で水分摂取を促してみましょう。 お茶の時間を定期的に設ける ゼリーや寒天を上手に使う 本人の好みに応じた水分を提供する スポーツ飲料などの吸収率の良いものを活用する 体操やレクリエーションの後に飲んでもらう 散歩時に外で水分を飲んでもらう まとめ ここまで認知症の周辺症状に効果のあることや、認知症予防に効果のあることを解説してきました。 認知症予防にはカレーがおすすめである   ・クルクミンが認知症に効果的   ・バランスの良い食事が認知症予防になる   ・料理をすることで認知症予防である 認知症予防には軽い運動がおすすめである   ・30分程度のウォーキングを週に3回程度行う   ・頭と身体を使ったコグニサイズを取り入れる 脱水を防げば認知症の周辺症状を改善できる   ・1日1,500㎖の水分摂取を目標にする   ・寒天やゼリー、本人の好みを意識して水分を飲んでもらう 最後までお読みいただきありがとうございました。  

  • 訪問介護のあり方とは?「自立支援型」とはどのようなことを指すのかを解説!

    訪問介護とは、要介護度の利用者が日常生活の上で困難とする動作や作業をヘルパーが訪問し介護を行うサービスです。 今回は、訪問介護の「自立支援型」について紹介します。 訪問介護のあり方 訪問介護はなぜ存在しているのか、その理由についてご紹介します。 なぜ訪問してまで介護をするの? 昨今、団塊の世代が75歳(後期高齢者)を迎える「2025年問題」がすぐそこまで迫ってきています。 まだまだ元気で若々しい高齢者も増えている反面、介護を必要とする高齢者も増加してきているのが現状です。 「子供達に迷惑をかけない」「事前に調べてサービスに興味を持った」等、様々な理由で施設入所を希望される方もいます。 しかし、多くの人は「できるだけ長く住み慣れた自宅で過ごしたい」という思いが強いようです。 家族のいる高齢者は、一日も長く一緒に家で過ごす事を、独居となった高齢者は思い出が詰まった家でゆっくり過ごしたいと其々の理由はある様です。 しかし、在宅生活に支障を来す様になってはそんな思いも叶えられません。 また、最初にも述べましたが「2025年問題」は少子高齢化が進み、国民の4人に1人が75歳以上となる事で様々な影響を及ぼすと言われています。 支えて欲しい人が増える一方、反比例する様に支える人が居なくなるという事は、日常生活に困難があっても支えてくれる人が少ない利用者側と、支えたくても人数も支援も負担も賄い切れない介護側とのパワーバランスが崩れて共倒れに成りかねないことを意味しているのです。 要介護認定を受けたとしても、住み慣れた自宅で日常生活上必要な動作や行為が少しでも自身で行える様になれたら、それは身体的にも日常生活を送る上でも生活の質を維持向上する上でも意義のあるものであり差し迫った問題に対し解答の糸口へと繋がります。 介護が必要になった方たちの生活の質を維持しながら、在宅で過ごせるようにするために訪問介護があるのです。   昔は「お世話型」今は? 介護保険制度が始まったのは2000年(平成12年)4月からです。 介護保険制度は「高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組み=介護保険」という形でスタートしています。 現在の介護保険も、「高齢者が尊厳を保ちながら暮らし続けることができる社会の実現を目指す」とされていて、高齢者も皆と同じ様に其々が地域で元気に自立し暮らしていく事ができる共存社会を目指しています。 基本的に介護保険は「高齢者の自立支援」を始めから謳っているのですが、昔から ・お年寄りは大切に ・お年寄りの面倒は若い者が看るもの ・子が親の老後を看るのは当たり前 という思考や伝承の傾向が根強くあります。 そのためか、訪問介護サービスもどちらかと言えば「お世話型」と呼ばれるサービスを行いがちでした。 事実介護認定を受けて訪問介護サービスを受ける事になった利用者は、生活を送る上でできない事をヘルパーにしてもらう=日常生活が送れる様になるというプランでヘルパーによるサービスを受けていた所が多かったのではないでしょうか? 上記の図の様に、要介護1も要介護5も同じようにできない事をしてもらっているばかりでは、どんどんできない事が増えていくだけです。 そして、介護度が増すに連れてサービスの内容も日数も増えていくという緩やかな悪循環に陥ります。 家族の形は変わっていきます。 大家族から核家族へ、子供も兄弟姉妹から一人っ子へ、結婚して家庭に入っても夫婦共働きが増え、隣近所が誰か分からないというようにご近所同士の繋がりも薄くなりました。 そのため、近年では孤立化が目立つようになっています。 そんな現実の中、上記にも述べた様な高齢者に対する昔からの思考・伝承が特に介護では反映されている事態が多い為、 「お年寄りにあれこれさせてはいけない=お世話する、面倒を看るのが介護だ」 という認識を世間一般では当然とされているのが現状です。 介護サービスも例に洩れず、「お世話型」という形で行われていたのも少なくはありません。 ここで間違えないで頂きたいのは、決してこの思考・伝承が悪いという事ではないということです。 古来より守り継がれてきた先駆者、功労者を大切にするという考えは大切であり、素晴らしい事です。 しかし、何でも大切にした結果「まだできる」事を「できない」事に変えてはいけないという事がとても重要です。 腰痛により重い物があまり持てず、歩行もやや不安定な利用者が訪問介護で生活援助を利用したとします。 お世話型のサービスでは、ヘルパーによる掃除機での掃除や洗濯物の取り込み整理整頓が行われた場合は利用者はただそのサービスをしてもらうのみです。 この場合、ヘルパーによって「清潔が維持できる」「安全に過ごす事ができる」「生活環境が保たれる」のみの授受一択となってしまいます。 例えば、利用者が軽い物が持てた場合は、柄の長い箒を使用して掃くことをお願います。 洗濯物の取り込みはヘルパーが行い、利用者はヘルパー見守りの下テーブルで洗濯物を畳む 整理整頓はヘルパーと共に行ってもらいます。 このように利用者も出来得る範囲で行動し今後に繋がる形にすれば、 「共に行う事で清潔が維持できる」 「共に行い確認する事で安全に過ごす事ができる」 「共に行う事で生活環境が保たれる」 という自立支援に向けたサービスの提供となります。 利用者の中には、何でもしてもらいたい人もいるかもしれません。 訪問介護サービスを契約して利用しているのだから、ヘルパーにはできない事を何でもしてもらいたいという気持ちは分かります。 しかし、ヘルパーは家政婦ではありません。 この先地域で暮らしていく上で、本当に困った事を地域社会全体で支え合い、日常生活を維持していく為の介護保険である事を今一度見直す必要があるのではないでしょうか。 その人なりの自立した生活を 訪問介護サービスのケアプランに謳われる「残存機能の維持」は、身体介護にも生活援助にも該当し、自立した生活を送る為に最低限必要とされる能力です。 介護度も人様々であり、生活環境や身体状況や経済状況、現症歴によって、できる事とできない事には差があります。 ケアプランに沿った訪問介護サービスを提供する事は当然ですが、ヘルパーは誰よりも利用者の近くで対応する為、利用者の心身の変化に気付きやすいものです。 現在の介護保険は自立支援型であり、 「その人が生活する上で行える動作をどうすれば継続していけるか?」 「プランでは共に行う作業であっても今の身体状況ではちょっと無理なのでは?」 「この部分はヘルパーが対応する形だけれど、一緒に行う能力があるのでは?」 等、訪問介護に入ったヘルパーからの報告でプランが見直され変わっていく事も珍しくはありません。 例えば、生活援助で夕食の下ごしらえをヘルパーが行うというプランがあるとします。 ケアプランに沿った訪問介護計画が立てられ、ヘルパーは計画通りに訪問介護に入ります。 長時間の立位が困難で台所に立つ事が難しいけれど、最後の味付けは自分でしたいという希望があれば、下ごしらえはヘルパーが行います。 しかし、実はイスに座って玉ねぎの皮を剥くやピューラーで根菜の側を剥くといった作業ができると 気付いた場合にヘルパーの取るべき対応はどうすべきなのでしょうか? ①ケアプラン通りに、そのまま調理の下ごしらえをヘルパーが行い、最後の味付けは利用者にしてもらう。 ②サービスの度にその場に応じて利用者ができる調理の下ごしらえ(イスに座っての野菜の皮剥き等)をしてもらい、調理を完成させる。 一応両方とも「形式上」は自立支援型の訪問介護サービスではあります。 不正解ではないのですが、①はほぼ「生活援助の調理」です。 ケアプラン通り、訪問介護計画書通りにサービスを遂行しているだけであり、別に悪い訳ではありません。 しかし、最後の味付け以外にも利用者のできる作業があると気付いていても、プランは下ごしらえがヘルパー対応となっています。 ヘルパーがプラン通りに料理を作ってしまうのは、自立を促すという自分でできる事を少しずつでも広げて利用者のできる能力を維持するのには弱いかもしれません。 ②は自立支援型の訪問介護に見えますが、一点注意すべき所があります。 「サービスの度にその場に応じて利用者ができる調理の下ごしらえ」がきちんとサービス提供責任者やケアマネージャー、本人や家族に伝えられているはずです。 それに応じて担当者会議が行われケアプランの変更が為され了承されています。 ヘルパーが利用者の状態に気付いて自立支援に向けたサービスを行うには、ヘルパー単独の意思決定で勝手にサービスを変える事はできません。 きちんとサービスの内容変更の手順を踏まえた上で提供すれば、「生活援助で夕食の下ごしらえをヘルパーが行うというプラン」は「できる範囲での下ごしらえを共に行いながら調理する見守り的援助の身体介護」となります。 サービス単価は若干上がりますが、利用者の今後動ける可動域は広がりその人なりの自立した日常生活を過ごす事ができる未来へと繋がる可能性があります。 事前のモニタリングやアセスメントだけでは分からないことは多々あり、ヘルパーがサービスに入って初めて気付く事も少なくはありません。 テンプレート通りに介護サービスは行えませんし、また利用者其々に応じた自立の形があります。 訪問介護はその時の状況や状態によって日々変化していき、自立の形も並行して良くも悪くも変化していくという事を忘れないようにしましょう。 まとめ 今回は訪問介護における自立支援型のサービスについて紹介しました。 ・高齢者の現状と2025年に迎える問題は、介護を求める人と介護を行う人とのバランスが崩れて共倒れの危険性がある。 ・高齢者であっても自分でできる事が増えれば、これまで通り在宅での生活を維持でき、懸念される介護の担い手不足による共倒れを回避できるきっかけとなる。 ・介護保険は2000年4月にスタートし、高齢者を社会全体で支え合う仕組みとして始まった。 ・現在は、高齢者も自立して日常生活を送れる様に地域と共存して暮らしていく形を目指しており、訪問介護もお世話型から自立支援型へ移行している。 ・お年寄りを大切にするという考えは大切だが、 何でも全てお世話をしてしまうのではなく、日常生活でできない事を支えて援助しできる事はそのままできるように維持を図る事が自立支援型の訪問介護サービスである。 ・訪問介護は在宅での日常生活を維持していく為の介護保険サービスであり、利用者の変化に気付いたヘルパーはケアマネージャーやサービス提供責任者、利用者、その家族等とよく確認し話し合い、利用者の状態や状況に応じた訪問介護を計画に則り提供していく必要がある。 訪問介護を利用する側もサービスを提供するヘルパーも、長年携わってくるとその利用者の状況や状態がよく分かってくるものです。 情が沸く事もあるかもしれませんが、その介護は本当にその人の為になるのか?ケアプランに沿ったサービスなのか?あの人はああしてくれた、こうしてくれたの言葉に揺らいでお世話型のサービスを提供してはいないか?等ヘルパーの判断が試される事もあります。 最初にも述べましたが、2025年問題はもうすぐそこにまで迫っています。 75歳以上の後期高齢者が爆発的に増えるまであと数年です。 高齢者であっても、特別な事をせずに、その人がその人なりに日々の生活を普段通りに送れる事が幸せであると考え、訪問介護サービスが行われる事を願います。  

  • 介護保険外のサービスとは?メリット・デメリットやサービス内容を解説!

    介護保険サービスは、要介護度によって利用できるサービス内容や量が決まっています。 ですが、保険内のサービスだけでは充分とはいえません。 そこで使えるのが介護保険外サービスです。 保険外のサービスを上手に組み込むことで介護保険ではまかないきれない部分に手が届き、介護負担を軽減できます。 厚生労働省も、地域包括ケアの一環として介護保険のサービスと介護保険外のサービスを併用することを推奨しています。 本記事では、介護保険外サービスのメリットやデメリット運営者やその内容について解説しています。 ぜひ最後までお読みください。 介護保険外サービスとは 介護保険外サービスとは、介護保険制度の対象外のサービスで、介護保険では補えないサービスを原則自己負担で受けられるサービスです。 厚生労働省の地域包括ケアシステムの構築と「保険外サービス活用ガイドブック」についての中に記載があり、国が推進する地域包括ケアの一部に組み込まれています。 介護保険では受けられないサービスもあるので、介護を受ける方だけではなく、介護している家族の生活も充実させられます。 介護保険外サービスを利用するメリットとデメリット 介護保険外のサービスを上手に活用するためには、メリットとデメリットをよく理解しておく必要があります。 介護保険外サービスを利用するメリット 介護保険外サービスを利用するメリットには以下のものがあります。 介護負担が軽減する サービスの提供時間を長くすることができる 家族に対する支援もある 自由なサービス選択ができる では、一つずつ解説します。 介護負担が軽減する 介護保険外サービスを利用する一番の目的は介護負担を軽減させることです。 保険でまかなえないサービスを受けられるので、介護者の負担が減り、高齢者本人も安心して生活を送ることに繋がります。 サービスの提供時間を長くすることができる サービス提供者と合意できれば長時間のサービスを受けられます。 介護保険を使って訪問介護などのサービスを受ける場合は、1回30分などと時間が決められています。 介護保険外で、サービスの時間を長めに設定することでサービスの不足感を軽減することが可能です。 家族に対する支援もある 介護保険外のサービスでは、介護する家族もサービスを受けられます。 例えば、高齢者夫婦の2人暮らしで、夫が要介護、妻は介護保険の対象外だった場合、介護保険では夫に対するサービスしか受けられません。 妻の洗濯や妻のための買物、布団干しなどは原則として対象外になります。 この場合、妻が介護保険外サービスを利用できれば、妻の負担を大きく減らすことができます。 自由なサービス選択ができる 介護保険外のサービスは、サービス内容や量、同居家族などのサービスを受ける対象者を自由に選択できます。 その分料金はかかりますが、上手に活用することで、介護を受ける本人や介護する家族のそれぞれが望む生活に一歩近づきます。 介護保険外サービスを利用するデメリット 介護保険外サービスを利用する上での一番のデメリットは費用がかさむことです。 介護保険のサービスは利用料金の7〜9割を保険でまかない、利用者は残りの1〜3割を負担します。 ですが、介護保険外サービスは保険が使えないので全額負担しなければなりません。 運営者やサービス内容などによって金額にばらつきがあるので、利用前に具体的な料金体系について確認しておきましょう。 介護保険外サービスの運営者と内容 介護保険外サービスを受けたい時はどこに相談すればよいのでしょうか。 運営者やサービス内容もさまざまですので、代表的なものを説明します。 市区町村による独自サービス 市区町村が独自に行っているサービスで、基本は介護者がそれぞれの利用者の自宅に訪問してサービスを提供する形になります。 主なものは、 おむつの配送 訪問理美容 配食サービス 緊急時の連絡システム 受診や外出時の移送サービスなど 各自治体が独自に行っているサービスなので、全ての市区町村で提供されているわけではありません。 ホームページや広報誌で確認したり、地域包括支援センターに相談したりしてみるとよいでしょう。 市区町村が中心になって実施する「介護予防・日常生活支援総合事業」 2017年にスタートした地域支援事業の一つで、市区町村が中心となって地域の実情に合わせたサービスを提供するものです。 住民が主体となり、要支援者に対し効果的で効率的な支援を目指しています。 内容は、以下の通りです。 訪問介護事業所やNPOなどの住民ボランティアが行う訪問による生活援助 主に食事用意や掃除などの家事援助や外出の支援 デイサービスや高齢者会館で提供する通所による活動援助サービス 主に運動やレクリエーション、口腔機能改善など 住民の交流の場にもなっている サービスを利用するには地域包括支援センターによるケアマネジメントが必要なので、まずは相談してみましょう。 介護サービス事業所 普段介護保険サービスを提供している事業所が、通常のサービスの延長で提供している保険外のサービスです。 サービス内容は 訪問介護ではできない手間のかかる掃除や洗濯 入院中の衣類の引き取りや洗濯などの世話 お泊まりデイサービスなど 介護保険で対応できない部分を補うためのサービスとなりますが、通常のサービスとは別枠の料金で、すべて自己負担になるので料金の確認が必要です。 社会福祉協議会の高齢者支援サービス、シルバー人材センターの家事・福祉支援サービス 全国の社会福祉協議会や、高齢者の雇用促進を目的とするシルバー人材センターによる有償ボランティアです。 介護保険では対応できない調理や洗濯、買物、掃除など 入院中の世話 冠婚葬祭の付き添い 認知症の方の見守り支援サービスなど 市区町村による総合事業として提供されていることもあるので、地域包括支援センターで受けられるサービスを相談してみるのも一つです。 民間企業の介護サービスや高齢者支援サービス 介護分野ではない企業が間接的に介護保険サービスを提供していることもあります。 コンビニエンスストアや生協などによる配食サービス タクシー会社による介護タクシーや通院介助 フィットネスクラブによるスポーツプログラムなど 市区町村によるサービスより費用は高めですが、サービスの種類が豊富で介護保険では足りない部分をサポートできます。 まとめ いかがでしたでしょうか。 本記事では、介護保険外サービスのメリットやデメリット、運営者やその内容について解説しました。   介護保険外サービスは介護保険制度の対象外のサービスで、介護保険では補えないサービスを原則自己負担で受けられるサービス 地域包括ケアの一環として厚生労働省も推奨している 介護保険外サービスを利用するメリットは、介護負担が軽減する、サービスの提供時間を長くすることができる、家族に対する支援もある、自由なサービス選択ができる 等 デメリットは、保険内のサービスに比べ費用がかかる 運営者やその内容は、市区町村による独自サービス、市区町村が中心となって実施する「介護予防・日常生活支援総合事業」、介護サービス事業所、社会福祉協議会やシルバー人材センターによる有償ボランティア、民間企業の介護サービスや高齢者支援サービス 等 介護保険外のサービスを上手に活用することで、利用者本人だけでなく介護している家族の生活も豊かになります。 介護が必要にあっても、住み慣れた地域での生活を続けるために、制度やサービスを充分に活用できるように家族で話し合ってみましょう。