親が年齢を重ねると、子供の心配事の一つになるのは親の認知症です。 親の認知症を疑うのは子供にとって心苦しいものですが、認知症の症状に気づくのが遅れると家族の生活は一変します。 この記事では、認知症の疑いのある親を早く受診させるための方法を「もし自分の親が認知症になったら」という視点でステップ毎に紹介します。 認知症の疑いをどのように確認し、どう接するのか、また今後どうするのか対応方法を一緒に考えてみましょう。 本当に認知症なのか? 認知症は脳の病気で、記憶や自己判断力という認知機能の低下という症状があります。 65歳以上の高齢者の方が認知症を発症する可能性が高いといわれていますが、65歳未満の方も発症する若年性認知症も増えています。 まずは、「本当に認知症なのか?」を判断し、治療が必要なのか判断するのが、子供にできる第一歩です。 もの忘れか、認知症か? もの忘れか、認知症か、子供でも判断は容易ではないでしょう。 もの忘れは、高齢者の方でなくても多忙な時や加齢など誰にでも起こる症状ですが、認知症となると話は変わってきます。 もの忘れは一時的なもので、何かヒントがあれば思い出すため、日常生活に支障はありません。 しかし、認知症は忘れたことを本人が自覚できず、ヒントがあっても思い出せないなど日常生活に支障が出る言動をとります。 ただし、注意深くみていないと気がつきにくいため、子供も知らない間に親の認知症が進むこともあるのです。 加齢などによるもの忘れと認知症の違いは、一般的に次のとおりです。確認しておきましょう。 もの忘れ ・忘れたことを本人が自覚している ・記憶の一部を忘れているが、ヒントがあれば思い出す ・判断力はある ・日常生活は支障なくできる 認知症 ・忘れたことを本人が自覚していない ・ヒントがあっても、思い出せない ・判断力が低下している ・日常生活に支障がある もの忘れは、きっかけがあれば思い出しますが、認知症はそもそも記憶力が低下しているため、日常生活に支障がある症状です。 ステップ①親の認知症を疑う前のチェック 認知症の兆候は分かりにくいものですが、早期発見・早期治療につなげるために、子供が親の言動に違和感を持ち、いち早く認知症の兆候に気づく必要があります。 そして親の認知症を疑う前に、子供が簡単にチェックしておくことが大切です。 子供がチェックできる項目 1.家族すべての名前を言えない 2.同じ会話を何度も繰り返す 3.自分の名前や簡単な漢字が書けない 4.家の中にごみが散乱している 5.新聞や郵便物を確認していない 6.期限切れの食品がたくさんある 7.同じ食品や日用品がたくさんある 8.友達や近所の人との交流がなくなった 9.人を疑いやすくなった 10.身だしなみに気を遣わなくなった 11.季節や気温に合わせた服を着ていない 特に別居している子供は、定期的に電話で安否確認するとともに、少しでも会話に違和感があれば自宅に帰り、異変を早めに察知することが大切です。 日常の生活はどうしているのか、困り事がないかなど、自然な会話で質問しながら確認するなどのテクニックが必要になります。いずれも親の異変に気づく手がかりになるでしょう。 ステップ②認知症の疑いがある場合 認知症ではないかと思えば、専門機関での受診につなげていけるよう、まずは相談していくことを考えましょう。 認知症の疑いがある親が自覚していなくても、子供や友達など周りの人の気づきがあれば子供だけで悩みを抱え込まないでください。 早めに専門家に相談、受診させることが最優先の対応です。 主な相談先 かかりつけ医 地域包括支援センター 親にかかりつけ医がいる場合、気がかりなポイントをメモにして、親と一緒に同席して相談しましょう。 かかりつけ医がいない場合、お住まいの地域包括支援センターに相談すれば、色々なアドバイスや情報をもらえます。 早めに治療を開始できれば、適切な医療や介護につなげられます。 受診拒否がある場合 本人が受診しようという気になっていない場合、受診させることはとても難しいです。 認知症ではないかと親本人に伝えても自覚がない分、はぐらかしたり、プライドを傷つけられて怒り出すこともあります。 子供にとっても、早く受診させなければと気持ちが焦り「説得」を試みますが、ここでは「納得」する伝え方が大切です。 ・健康診断として一緒に受診してみる。 ・早めの受診が有効な例を伝えてみる。 例:認知症の疑いで受診したら脳血管障害が見つかった :認知症症状ではなくて老人性うつ症状だった ・信頼おける第三者から声をかけてもらう。 身近な第三者からの声掛けも受診につながるケースが多いです。ケアマネが担当すれば、その点も考慮して受診につなげていく援助が受けられます。 認知症の症状を知っておく 認知症を事前に調べ、知っておくことも大切です。 認知症の原因や症状を事前に調べておかないと、受診した際のショックが大きく、親の治療方針や接し方など大切な情報まで頭が回らなくなります。 ネットや書籍などで専門医が監修する信頼性の高い情報を 事前に知識を得ておくことも必要です。 また認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)についても 事前に情報を得ておくと、早めの認知症予防につながります。 ステップ③親が認知症と分かった場合 親が認知症と分かった場合、子供はさらにショックを受けるでしょう。 これからの治療で症状が改善するか不明な状況で、今後どう対応し生活していくか、不安なことばかりになります。 特に誰が主に親をサポートするのか、介護サービスを利用した介護か、施設に入所してもらうのか早急な対応の決断をしなければなりません。 また場合によっては、介護離職の決断をせまられる可能性もあります。 親の認知症を受け入れるのは、子供にとってはショックな出来事です。 しかし、早急に適切な対応や処置を施さないと、症状は悪化するだけでなく、日常生活にも支障を生じます。 子供といえども選択を誤ると、親と子供にとって不幸な結果を招きかねないため、よく考えて決断しましょう。 症状の進行は意外と早い 症状の進行は意外に早いという家族の体験談をよく見かけます。 子供が気づかない間に症状が進行しているケースも見られるため、受診した時点では日常生活が困難という場合もあるのです。 認知症の種類と特徴をいち早く知り、今後の治療や親の生活を見極める必要があるでしょう。 自宅介護か施設入所か 親のために自宅で介護したいと思う方もいるでしょう。 認知症であっても身体が元気な方は、子供が目を離している間に、徘徊や昼夜逆転生活、暴言を浴びせられるなど症状の悪化します。 それと共に介護者の負担感が大きくなってしまいます。 まずは、相談先のかかりつけ医や地域包括センターに相談し 介護認定を早急に申請することが先決です。 そして可能な限り介護を家族で分担して行う、介護サービスを最大限活用するなど、介護負担を軽減する対策を決めておきましょう。 また自宅介護が困難と判断した時点で、早めに施設入所を決めておくことも大切です。 自宅介護が親にとって最適な対応とは限らないのです。 認知症は初期症状での早めの対応がポイント 認知症に限りませんが、病気や症状は早期発見、早期治療で 完治または症状の緩和や進行を遅らせることができます。 特に認知症の場合、症状が軽い間に今後の治療方針や介護 場合によっては施設の利用や入所など考える時間ができ 早めの対応や行動ができます。 子供は親の言動の変化をいち早く感じ取る立場です。 認知症の疑いが晴れれば、それで良し 認知症であれば、前向きに行動し親や子供にベストな環境をつくる 子供にとって大切な2つの心構えです。 まとめ 親に認知症の疑いがあれば、子供による早めのチェックで 医療機関の受診につなげることが大切です。 ・早めに相談、受診につなげる ・子供は親の診察に付き添う ・認知症の症状を事前に知っておく ・親の介護生活の情報を集めておく。 子供の世話になりたくないという親は多いでしょう。 しかし、本人が気づかない間に認知症の症状は進行します。 親が高齢になるまでに事前に介護の情報を目にしておくことや 定期的に健康や介護など話し合いを持ち、お互いを見守る環境をつくっておくことが大切な時代になりました。
「介護施設の利用を検討しているけど経済的にきびしい」 「介護施設に入所しているけど毎月の支払いがきついな」 そう考えていませんか? 負担限度額認定は一定の条件を満たすことで、経済的にきびしい方の費用負担を軽くする制度です。 この記事では負担限度額認定制度について分かりやすく解説していきます。 負担限度額認定はどんな制度? 負担限度額認定は介護サービスを利用している方の経済的な負担を軽減する制度です。 ただしすべての世帯が対象というわけではなく、所得や預貯金が少ないなど経済的に余裕が無い方を対象としています。 実際に介護施設を利用すると毎月下記の費用が発生します。 介護サービス費(所得に応じて1~3割の自己負担) 日常生活費(理美容代やその他生活に必要な備品代) 居住費(宿泊費) 食費 これらの自己負担額は決して安い金額ではありません。収入の少ない方にとっては非常に大きな負担となってしまいます。 負担限度額認定制度では上記の費用のうち、「居住費」と「食費」を減額することができるため非常にメリットのある制度です。 負担限度額認定を利用するための3つの条件 それでは負担限度額認定証(負担限度額認定制度の対象者に交付される証明書)を交付してもらうためにはどのような条件を満たす必要があるのでしょうか。 ここでは、それぞれの条件について解説していきます。 条件①:本人を含む同一世帯全員が住民税非課税であること 1つ目の条件は「本人を含む世帯全員が住民税非課税である」ことです。 本人に収入がなく住民税非課税でも同居する家族に所得があり、誰かが住民税を支払っている場合は、負担限度額認定証の交付対象にはなりません。 また、本人に配偶者がいる場合、事情により別世帯であっても配偶者が住民税を支払っているのであれば、負担限度額認定証の交付対象にはなりません。 ※配偶者からDVを受けている場合や、配偶者が行方不明の場合は否認要件に該当しません。 条件②:所得が基準額以下であること 負担限度額認定制度は経済的に厳しい方の負担を軽減する制度です。 そのため、所得レベルに応じて減免額に差を設けています。 各レベルは4段階あり、所得の額が上がるにつれて費用の減額は少なくなり、制度から受けられる恩恵も小さくなります。 所得要件は以下のようになります。 各段階 要件 第1段階 生活保護受給者 第2段階 ・世帯の全員が住民税非課税 ・合計所得金額+年金収入=年間80万円以下 第3段階(1) ・世帯の全員が住民税非課税 ・合計所得金額+年金収入=年間80万円を超え120万円以下 第3段階(2) ・世帯の全員が住民税非課税 ・合計所得金額+年金収入=年間120万円超 第4段階(非該当) 負担軽減の対象外:1~3段階の条件に該当しない方 第1段階が制度より受けられる恩恵が最も大きく、段階が上がるにつれて恩恵も小さくなります。 第3段階より所得額が大きくなると負担限度額認定の対象から外れます。 条件③預貯金などの資産が一定額以下であること 負担限度額認定での預貯金の定義は「資産性がある」「換金性が高い」「価格評価が容易である」これらの3つの要因で定義されています。 預貯金に該当するもの 預貯金(普通・定期) 有価証券(株式・国債・地方債・社債など) 金・銀などの貴金属 投資信託 現金 負債(借入金・住宅ローンなど) 生命保険や自動車、貴金属などは預貯金の対象にはなりません。 資産要件は各段階に応じて下記のようになります。 区分 対象 単身 夫婦 第1段階 1,000万円以下 2,000万円以下 第2段階 650万円以下 1,650万円以下 第3段階(1) 550万円以下 1,550万円以下 第3段階(2) 500万円以下 1,500万円以下 負担限度額認定を利用するといくら安くなる? では実際に負担限度額認定制度を利用するとどこまで費用を抑えることができるのでしょうか? 下記の表に各段階に応じた負担額をまとめました(金額は月額換算になります) 表に記してある金額を超える場合、超過分の金額を支払う必要はありません。 例えば第1段階の食費の負担限度額は9,000円になりますが、9,000円を超過した場合の金額は免除されます。 各段階 居住費 食費の負担限度額 ユニット型個室 ユニット型準個室 従来型個室 多床室 特養 老健療養 特養 老健療養 第1段階 24,600円 14,700円 9,600円 14,700円 0円 0円 9,000円 第2段階 24,600円 14,700円 12,600円 14,700円 11,100円 11,100円 11,700円 第3段階(1) 39,300円 39,300円 24,600円 39,300円 11,100円 11,100円 19,500円 第3段階(2) 39,300円 39,300円 24,600円 39,300円 11,100円 11,100円 40,800円 第4段階 (非該当) 60,180円 50,040円 35,130円 50,040円 25,650円 11,310円 43,350円 負担限度額認定を利用した場合の シミュレーション 実際に負担限度額認定を「利用した場合」と「利用しなかった場合」を比較し、どれだけ制度からの恩恵を受けられるかみていきましょう。 分かりやすいように事例を想定して考えていきます。 (Aさんの事例) 条件……第2段階で従来型特養の個室を利用していると想定。 第4段階の非該当と比較していきます。 居住費…35,130円(非該当)- 12,600円(第2段階)=22,530円の負担軽減 食費…43,350円(非該当)- 11,700円(第2段階)=31,650円の負担軽減 合計(居住費+食費)=54,180円の負担軽減 このように、制度を活用することで毎月54,180円の負担軽減になります。 年間に換算すると65万円になり、制度から受けられる恩恵はかなり大きいのではないでしょうか。 負担限度額認定制度を活用してない人はぜひ活用しましょう。 負担限度額認定を利用できるサービス 負担限度額認定はすべての介護サービスで利用できるわけではありません。 利用できる施設 特養(特別養護老人ホーム) 老健(介護老人保健施設) 介護医療院 介護療養型医療施設 短期入所生活介護 短期入所療養介護 地域密着型介護老人福祉施設(地域密着型特養) グループホームや有料老人ホーム、サービス付き高齢者賃貸住宅は対象外のため、注意が必要です。 負担限度額認定の注意点 負担限度額認定制度にはいくつかの注意点があるため、あわせて確認しておきましょう。 注意点①:負担限度額認定証には有効期間がある 負担限度額認定証には有効期間があります。 期限を過ぎると勝手に自動更新されるわけではないので注意が必要です。 有効期間は毎年8月1日から翌年7月31日までの1年間であるため、ご自身で更新の手続きをする必要があります。 毎年、更新月が近づくと書類が送付されてくるので、必要事項を記載し、ご自身で更新の手続きを進めておきましょう。 注意点②:毎年同じ額の費用減免が受けられるわけではない 負担限度額は前年の所得や預貯金などの状況に応じて決定されます。 そのため必ずしも前年と同じ金額が減額されるわけではありません。 所得や資産に大きな変化があった場合、状況によっては非該当になる可能性もあるため、注意が必要です。 まとめ ここまで負担限度額認定制度について解説してきました。 最後に復習しておきましょう。 負担限度額認定制度は経済的に余裕がない世帯の負担を軽減する制度である 負担限度額認定制度を活用するには「住民税非課税」「所得要件」 「資産要件」などの条件を満たす必要がある 負担限度額認定制度は所得や資産によって受けられる恩恵に差がある制度である 負担限度額認定制度を活用すれば金銭的負担をかなり軽減できるので活用すべきである 負担限度額認定証は有効期間があるので注意が必要である 負担限度額認定を受けるための申請書類は地域によって異なることがあります。 負担限度額認定を知らないことで損をしないように、不明点はお住まいの市区町村の自治体や、ケアマネージャーなどに問い合わせましょう。 最後までお読みいただきありがとうございました。
「世帯分離で親の介護費用は下がるのかな?」 「世帯分離はだれでもできるのかな?」 「そもそも世帯分離って何だ」 このように世帯分離についてお悩みではないでしょうか? 世帯分離は上手く活用することで介護費用を下げることが可能な制度です。 この記事では世帯分離について分かりやすく解説していきます。 世帯分離とは? では、世帯分離とはどのようなものか詳しく解説していきます。 そもそも世帯とは? 世帯とは住居と生計を共にしている人々の集まりのことです。 一人暮しでも独立して生計を営んでいれば世帯として扱われます。 また、同じ住居で共同で生活していても生計を別にしている場合は、それぞれが別世帯として扱われ、世帯主も複数存在することになります。 世帯分離とは? 世帯分離を簡単に説明すると、同居している家族と住民票を分けることをいいます。 ただし、それぞれの世帯に「独立した生計を営む収入」があることが前提となるため、そもそも収入がなく生計を営むのが困難であれば世帯分離はできません。 また、世帯分離は住民票上での分離になるので、今まで通り一緒に生活することも可能ですし、当然戸籍もそのままになります。 世帯分離の目的は? 「そもそもなんで世帯分離するの?」と疑問に思われる方もいるでしょう。 世帯分離の本来の目的は「所得が少ない人(親など)の住民税を軽減」することです。 住民税の額は世帯ごとに計算されるため、世帯分離により世帯の所得額が減ることで、住民税の軽減が可能となります。 世帯分離の3つのメリット それでは世帯分離をするとどういうメリットがあるのでしょうか。 具体的に見ていきましょう。 メリット1:介護サービスを利用する際の自己負担額を軽減できる 介護サービスは所得に応じて1~3割の自己負担が発生します。 自己負担割合は基本1割ですが、平成27年度の法改正により一定額以上の所得者は2割、現役並みの所得がある人は3割負担になりました。 この自己負担割合は世帯の所得で判断されるため、世帯分離により親の所得だけが算定要因になれば自己負担割合も軽くなる可能性があります。 仮に要介護1の場合、支給限度額は約167,000円です。 3割負担の場合、自己負担が50,100円ですが、所得額が減ることで1割負担になれば16,700円になります。 毎月の差額が33,400円(年間約40万)になるため、世帯分離により受ける恩恵も大きいのです。 ※支給限度額とは、要支援、要介護と認定された方が介護サービスを利用した際に、介護保険から保険給付される限度額です。限度額を超過した分は自己負担になります。 メリット2:高額介護サービス費制度により自己負担額の上限が下がる 介護サービスの自己負担が1~3割とはいえ、サービスを無限に受け続ければ自己負担額はそれに比例して増えていきます。 そこで利用できる制度が「高額介護サービス費制度」です。 高額介護サービス費制度は世帯の所得に応じ、1ヵ月間に支払う自己負担額に上限額が設定されています。 自己負担の上限額を超えた場合、超過した分の費用は申請することで払い戻されるため、サービスをたくさん利用される方にとっては恩恵の大きい制度です。 一般的な所得の方の負担限度額は44,000円ですが、世帯分離を行うことで 住民税が仮に非課税になれば、上限額が24,600円となります。 月額で2万円(年間24万円)の負担軽減になるためメリットも大きいです。 メリット3:負担限度額認定制度により自己負担額を軽減できる 介護サービスを利用すると様々な費用が発生します。 なかでも食費や居住費は全額自己負担となるため、大きな負担となります。 負担限度額認定制度は介護保険施設を利用した際の食費や居住費を軽減できる制度です。 この制度は所得や資産の少ない方が対象となります。 所得や資産状況にもよりますが、ケースによっては食費と居住費を合わせて、月額5万円程度の負担軽減になることもあります。 世帯分離の4つのデメリット 世帯分離は上手く活用すればメリットも大きいですが、デメリットもあるため、注意するようにしましょう。 デメリット1:高額介護サービス費で介護費用を世帯合算ができない 世帯分離する前に一世帯に要介護者が2人以上いた場合、2人の介護費用を合算し、超過分を「高額介護サービス費制度」により払い戻すことができていました。 しかし、世帯分離によって各世帯に要介護者が1人ずつとなった場合には、今までのように介護費用の合算ができなくなります。 そのため申請後の払戻額も少なくなる可能性があることを覚えておきましょう。 ケースによっては、それぞれの介護サービス費では高額介護サービス費を利用できる上限額に達しないことも想定されるため、そもそも制度を利用できなくなることも考えられます。 デメリット2:各世帯で国民健康保険を納める必要がある 国民健康保険制度の保険料の負担は世帯主が行う必要があります。 そのため世帯分離し世帯が別になれば、それぞれの世帯で国民健康保険料を納める必要がでてくるのです。 仮にそれぞれの世帯での納付額は減っていたとしても、2つの世帯の保険料を合算すると、一世帯で支払っていた保険料よりも高くなってしまう可能性もあります。 そのため世帯の保険料の総額を考えて検討することが必要です。 ケースによっては保険料が逆に下がる可能性もあります。 世帯分離による保険料の増減に関しては、完全にケースバイケースといえます。 デメリット3:手続きの手間が増える 世帯分離により行政などの手続きが煩雑になることが考えられます。 役所の手続きは各世帯で行う必要があるため、同一世帯だった場合は1回の手続きで完結します。 しかし、世帯分離をすることで2世帯分の手続きをする必要がでてくるのです。 その他にも親の行政手続きに委任状が都度必要になるなどの手間も生じるので注意が必要です。 例えば、親の住民票が必要な場合があるとします。 その際、親が高齢で役所に行けない場合、代理で窓口に行くことになりますが、その都度親に委任状を書いてもらわなければなりません。 そのため、さまざまな手続きの手間は増えてしまいます。 デメリット4:扶養手当てや家族手当がもらえない 子供や親を扶養している場合、会社から扶養手当や家族手当などが支給されているのではないでしょうか。 その場合、世帯分離により、扶養から外れてしまうため手当がもらえなくなる可能性があります。 世帯分離を行う前に、一度会社の担当部署に確認しておきましょう。 世帯分離をおすすめできるケースとは 世帯分離でメリットが得られる世帯は、介護サービスをたくさん利用する方がいる世帯です。 世帯分離で所得が減ることにより、制度から受けられる恩恵も多くなる傾向にあるといえます。 高額介護サービス費制度では自己負担の上限額が下がることによって戻ってくる額も大きくなるなどのメリットを受けられます。 また介護保険施設に入所している場合、世帯分離することにより、食費や居住費の自己負担を軽減できる負担限度額認定制度を活用することも可能です。 世帯分離を行う際の注意点 世帯分離をするには住民票のある市区町村で手続きをする必要があります。 担当窓口の方から「世帯分離を行う目的は?」と質問された際に、「介護保険料を軽減したいから」と言うと受理されない可能性があるため注意が必要です。 なぜなら「介護保険料の減額」が、世帯分離の本来の趣旨とズレているためです。 世帯分離の本来の趣旨は「所得が少ない人(親など)の住民税を軽減」することにあります。 仮に窓口で理由を聞かれたら「生計を別々にするようになった」、「それぞれの家計が別々のため」と言うのが無難でしょう。 世帯分地は同じ住所でも親子同居でも申請することは可能です。 しかし、世帯分離するためには、独立した家計を営んでいることが条件となっています。 生計が同一の場合は世帯分離が認められにくいので注意してください。 世帯分離の手続き方法 では、実際に世帯分離をする際にどのような手続きが必要なのかを確認してみましょう。 書類をそろえる 世帯分離をするときには、以下の書類が必要になります。 ・本人確認書類 ・世帯変更届 ・国民健康保険証 ・印鑑 また、親の手続きを子供が代理で行う場合は委任状も必要です。 書類に不備があると申請できないので、念のため申請前に役所に確認しておくとよいでしょう。 まとめ ここまで世帯分離について解説してきました。 最後にポイントを整理しておきましょう。 世帯分離をするには、それぞれの世帯に「独立した生計を営む収入」が必要である。 世帯分離の本来の目的は「所得が少ない人(親など)の住民税を軽減」することである。 世帯分離をすることで介護費用を軽減できるというメリットがある 世帯分離をすることで国民健康保険の保険料が増えるというデメリットがある ※保険料に関してはメリットになる可能性もあり、完全にケースバイケースである 世帯分離をすることで会社からの手当が減ることがあるので注意が必要である 世帯分離により行政の手続きが面倒になるので注意が必要である 最後までお読みいただきありがとうございました。
徘徊は認知症の症状の一つです。 外や家の中をうろうろ歩きまわるため、介護者の介護疲れの要因の一つに挙げられています。 一人暮らしをしている親に認知症がある場合、普段の生活について心配になってしまう方も多いのではないでしょうか。 本記事では、徘徊中に電車にはねられてしまった方の判例を紹介し、徘徊のリスクや原因、対処方法について解説しています。 認知症のある方を介護している家族や介護職におすすめの記事ですので、ぜひ最後までお読みください。 認知症とは [caption id="attachment_2017" align="alignnone" width="512"] Asian caregiver and a senior woman at the room[/caption] 認知症は、一度発達した脳が病気や障害などさまざまな原因により認知機能が低下し、日常生活全般に症状が出てくる状態のことです。 2020年現在、日本国内の65歳以上の人で認知症のある人は約600万人いるとされています。 これはおおよそ6人に1人が認知症になっていることになり、2025年には700万人、5人に1人が認知症になるといわれています。 認知症の症状とは 認知症の症状には、中核症状と周辺症状の大きく2通りに分けられます。 ではどのような症状なのかを確認していきましょう。 中核症状 中核症状は、記憶の障害や、時間や場所がわからなくなる見当識障害や理解力、判断力の低下などがみられる症状です。 脳が萎縮したり脳卒中で損傷を受けたりすることで症状が出現することがあります。 中核症状には以下のような特徴があります。 数分前や数時間前の出来事を忘れている 同じことを何度も言う 同じ物を何度も買ってくる 等 周辺症状 周辺症状は、中核症状を原因として二次的に起こる症状のことです。 記憶や見当識があいまいになることで不安を感じ、心理面や行動面に症状がでてきます。 時間や場所の認識がなく、自分がなぜここにいるのかわからなくなり とりあえず歩き回った結果徘徊に至る 財布をどこに置いたかわからなくなり、身近にいる子や嫁が持っていってしまったと 取り繕うことで物盗られ妄想に至る これまで受けていた介護でも、理解力が低下し何をされるのかわからず 介護者の手を払い除けた結果介護拒否と言われる 認知症のある人の介護でもっとも大変なことの一つは、この周辺症状への対応かもしれません。 徘徊は周辺症状の一つ 徘徊は周辺症状の一つで、目的もなくうろうろ歩き回ることとされています。 介護者からするとただ歩き回っているように見え、何度も繰り返したり、制止が効かなかったりすることがあります。 そのため、介護者にとっては負担を感じやすい症状です。 徘徊に至る要因は、記憶力や見当識が低下することで、その場で起きていることの理解や判断ができない不安から、徘徊という行動をとっていると考えられます。 自分がどこにいるのか、何をしていたのか、周りにいる人が誰だかわからないという状況の中、とても大きな不安を感じている中での行動と言えるでしょう。 安全に歩ける環境であればまだよいですが、認知症により危険に対する認識がなくなってしまうこともあります。 歩道があるのに車道を歩いてしまったり、信号を守れなかったりすることもあるかもしれません。 住み慣れた集合住宅の敷地内を散歩して自宅に戻れなくなる事例も多くあります。 徘徊はなぜ起きる? 徘徊が起こる原因には、いくつか原因が考えられます。 身体的な違和感が原因 徘徊する原因には何かがしたいと思っていたのに、そのことを忘れてしまうため、その違和感により徘徊してしまうのです。 この場合、排泄や飲食をすることで気持ちが落ちつき、徘徊が落ち着くことがあります。 排泄が原因の場合は、主治医に相談をして排泄に関する薬を飲むことで落ち着く場合が考えられます。 日々の排泄など体調管理を行うようにしましょう。 心理的なストレスが原因 夕方や夜になると気持ちが落ち着かなくなり、外に出かけようとする方がいらっしゃいます。 これは認知障害だけでなく、不安や焦燥感などを感じてしまい、その衝動が徘徊になってしまうのです。 ストレスの内容には以下のような事柄があげられます。 ・過去の習慣によるもの ・若い時や数年前の記憶などが蘇ることで誤認してしまう ・判断力や記憶力が低下してしまったため、行きたい場所を忘れてしまう ・不安や不満などによるもの 普段からよく観察し、何がストレスになっているのかを考えたり、ご本人に話を聞いてみてください。 ストレスを軽減することができれば、徘徊の症状を改善することができるかもしれません。 環境によるもの 環境が変わることで居心地悪く感じてしまい、徘徊になることがあります。 ご本人が過ごしやすい環境にし、居心地よくしてあげることで徘徊を抑えることができます。 前頭側頭型認知症 前頭側頭型認知症は人格や社会性をつかさどる前頭葉と、言語や記憶、聴覚をつかさどる側頭葉が萎縮してしまう病気です。 前頭側頭型認知症になると、以下のような症状が現れます。 ・人目を気にしなくなる ・感情が抑制できなくなる ・同じことを繰り返す 前頭側頭型認知症は病気自体が原因で徘徊行動を起こしてしまいます。 徘徊に関する判例(2021年3月28日 京都新聞) 2007年12月7日、愛知県で、妻と二人暮らしをしている高齢男性が電車にはねられ死亡しました。 男性には認知症があり、デイサービスから帰宅後まもなく、妻がうたた寝をした6〜7分の間に外出し、事故に遭っています。 所持金はなかったものの、改札をすり抜けて電車に乗り、一つ先の駅で降りたあと、ホームにおり、フェンスの扉を開けて線路に入った様子でした。 そのため、トイレを探して迷い込んだと見られています。 一審では妻の居眠りが過失にあたり、介護方針を決めていた別居の息子にも監督義務があったとして、2人は約720万円の支払いを命じられました。 二審でも、対象者から息子を外し、支払額を半額の360万円とした判決がでています。 この判例は、認知症のある方の介護をしている介護者から大きな反響があり、社会問題となります。 徘徊のある人に対して24時間見守り続けなければならず、家に鍵をかけて閉じ込めておくしかないのかと、ニュースでも連日報道されていました。 その後の2016年3月、最高裁は請求を棄却し、認知症の人による事故で防ぎきれないものまでは家族が責任を負わない、とするはじめての判決が下されたのです。 徘徊への対処方法 上記判例では逆転勝訴で無罪という判決がでましたが、事故が起きてから判決がでるまで9年かかりました。 この間の家族の不安は想像に絶します。 大きな事故や裁判に至らなくても、徘徊に関するトラブルは後を絶ちません。 そして、徘徊自体をなくすことは自宅や部屋に鍵をかけて閉じ込めてしまう以外には難しいでしょう。 では、認知症により徘徊のある人に対してどう対処していけば良いかを、一つずつ解説していきます。 関わりによる対処方法 徘徊している本人に対し、介護者の見守りや声かけで対応をします。 辻褄の合わないことを行っている時でも、否定はせず本人なりの徘徊の理由を理解しましょう。 なぜ歩いているのか理由を聞くだけでも安心できる場合もあります。 帰宅願望などで「家に帰ります」と言いながら歩いている場合でも、「外は寒いので上着をきましょう」「車を呼んでいるからお茶を飲みながら待ちましょう」などと、気を逸らすことも効果的です。 サービスや福祉用具による対処方法 どんなに上手に介護していても、1人で認知症のある方の介護を続けるには限界があります。 デイサービスやショートステイなどの介護保険サービスをうまく使い、プロに任せられる部分は任せましょう。 少しでも介護から離れる時間を作り、介護者が自由に使える時間を作ることも大切なことです。 また、ベッドや自宅の出入り口などにセンサーを設置することで、徘徊に速やかに気づけます。 認知症のある本人を閉じ込めるのではなく、動きを察知して対処することが可能です。 地域と連携する対処方法 徘徊だけでなく、認知症のある方の介護をしていくには、地域との連携を図ることが大切です。 家族だけで介護していくにはいずれ限界がやってきます。 本人が不安がっていたら声をかけてもらうよう近所の方に話をしておいたり、ゴミの出し方を間違えているようであれば、否定しないように指摘してもらったりすることも効果的です。 家族だけが抱え込むのではなく、うまく地域と連携しその方をケアすることで本人も家族も安心して生活できます。 まとめ いかがでしたでしょうか。 本記事では、認知症による徘徊から電車にはねられ訴訟に至った判例や、徘徊への対処法について解説しました。 認知症の症状には中核症状と周辺症状がある。 徘徊は周辺症状の一つで、介護者にとっては負担感の大きいものである。 周囲から見ると、目的なく歩き回っているように見えるが、認知症による記憶や見当識 理解力や判断力が低下したことで起こる不安から出てくる症状である。 対応としては否定するのではなくその人の不安を取り除く関わりが必要。 介護者だけが抱え込むのではなく、介護保険サービスやセンサーの活用 地域との連携が徘徊への対処方法として大切である。 今後認知症がありながらも地域の中で暮らしていく方は増えていきます。 徘徊で自宅に帰れなくなる場面に出くわすこともあるかもしれません。 地域によっては徘徊と呼ばずに「ひとり歩き」と言う地域もあります。 認知症のある方の不安を取り除けるよう対処し、本人も介護者も安心して生活できるように関わっていくようにしましょう。
高額介護サービス費は、介護保険サービスを利用したときに支払う利用料金の一部が返金される制度す。 いろいろなものが値上がりしている昨今、利用者やその家族は利用料金の負担に不安を感じています。 なかには利用料金に対する不安から必要なサービスの利用を控えている利用者もいるのではないでしょうか。 介護保険の制度の中でも複雑で理解が難しい高額介護サービス費。 本記事を読むと、高額介護サービス費について理解できます。 ぜひ最後までお読みください。 高額介護サービス費とは 高額介護サービス費は、「1ヶ月に支払った利用者負担の合計が所得に応じた負担限度額を超えた時に超えた分が払い戻される」制度です。 介護保険サービスを利用する時、利用者の所得によって、利用料金の1〜3割を利用者が負担しています。 ですが介護を受ける期間が長くなったり、加齢によってサービスを受ける量が増えたりすると、負担する料金がどんどん増えていきます。 利用者の経済的負担を軽減するための制度がこの高額介護サービス費。 利用者の所得によって段階的に基準額が決められています。 たとえば、住民税非課税世帯だと、年金収入やその他の合計所得の合計が年間80万円より高い世帯の上限額は24,600円です。 仮にサービス利用料金が40,000円の場合、差額の15,400円が後から返金されます。 以前は住民税課税世帯の上限額は一律で44,000円でしたが、令和3年8月に制度が改正されて、高所得者世帯の上限が見直されました。 「課税所得380万円未満」「課税所得380万円〜690万円」「課税所得690万円以上」と細分化されています。 高額介護サービス費の基準額は以下を参照してください。 高額介護サービス費の基準額 *2023年2月現在は以下のようになっています。 区分 負担の上限額 (月額) 課税所得690万円(年収1,160万円)以上 140,100円(世帯) 課税所得380万円(年収770万円)〜課税所得690万円(年収1,160万円未満 93,000円(世帯) 市町村民税課税〜課税所得380万円(年収770万円)未満 44,400円(世帯) 世帯全員が市町村民税非課税で、前年の公的年金等収入金額+その他の合計所得金額の合計が80万円を超える方 24,600円(世帯) 世帯全員が市町村民税非課税で、前年の公的年金等収入金額+その他の合計所得金額の合計が80万円以下の方 24,600円(世帯) 15,000円(個人) 生活保護受給者等 15,000円(世帯) 参考:厚生労働省 令和3年8月利用分から高額介護サービス費の負担限度額が見直されます 間違えやすい制度 以下の2つは高額介護サービス費と間違えやすい制度なので分けて考えてください。 区分支給限度基準額…要介護度ごとに設定された一月に利用できる介護保険サービスの上限額を指します。超過した分は介護権を利用できず全額自己負担です。 高額医療・高額介護合算療養費制度…年間の医療保険と介護保険の自己負担額の合計が限度額を超えた時に差額が支払われる制度です。 対象になる時は市区町村から必要書類が送られてくるので、記入して返送します。 高額介護サービス費の対象にならないサービス 高額介護サービス費は、所得などによって決められた基準額を超えた分の 返金を受けられますが、支払った費用の全てが対象になるわけではありません。 対象外になるサービスは以下の通りです。 施設サービスやショートステイの食費や居住費、その他の日常生活費 福祉用具の購入費や住宅改修費 支給限度基準額を超えてサービス利用した自己負担分 施設サービスやショートステイの食費や居住費 その他の日常生活費 高額介護サービス費の対象になるのは、1割から3割の中で負担している介護保険の自己負担分のみです。 そのため、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などの入居施設や、ショートステイを利用したときにかかる食費や居住費は対象にはなりません。 散髪代やその他の日常生活費も対象外です。 もともと介護保険の対象外となっている費用については、対象外になると理解していればよいでしょう。 福祉用具の購入費や住宅改修費 手すりの取り付けやスロープの造設、ポータブルトイレの購入等にかかった費用も対象外です。 額としては大きくまとまった費用がかかりますが、一時的なもので継続的にかかる費用ではありませんので、対象外になります。 支給限度基準額を超えてサービス利用した自己負担分 サービスを多く利用し、支給限度基準額を超えてしまったときの超過分についても、高額介護サービス費の対象からは外れてしまいます。 超過分は介護保険の給付対象ではなく全額自己負担になるからです。 たとえば、サービスを50,000円分利用し、支給限度基準額が30,000円 高額介護サービス費の負担の上限額が15,000円だったと仮定します。 サービスを利用しているのが50,000円で、負担の上限額が15,000円なので 35,000円の返金と考えてしまいますが、これは間違いです。 支給限度基準額が30,000円なので、20,000円は全額自己負担になります。 そのため、高額介護サービス費は30,000円から上限額の15,000円を引いた差額の15,000円です。 計算自体はそれぞれの市区町村が行いますが、仕組みを理解しておくと 返金分を考慮したサービス調整ができるようになります。 高額介護サービス費の申請方法 実際に高額介護サービス費の支給を受けるための手続きは簡単です。 対象になると、市区町村から住民票のある住所地に申請書が送られてきます。 送られてきた書類に基本情報や口座情報などの必要事項を記入し、市区町村に提出するだけです。 郵送でも手続きできるので、わざわざ役所へ行く必要はありません。 受理されて1〜2ヶ月後、申請時に指定した口座に振り込まれます。 一度登録が済むと、その後手続きは自動です。 2回目以降は支給決定通知書や領収書が送られてくるので大切に保管しておきましょう。 確定申告をする場合に必要になります。 申請はいつでもできますが、サービスの利用から2年が経過してしまうと時効になるので早めに手続きしたほうがよいでしょう。 高額介護サービス費は経済的な面でとても助かる制度ですが、申請しなければ返金されることはありません。 申請書が届いたら忘れずに申請しましょう。 まとめ いかがでしたでしょうか。 本記事では、高額介護サービス費の制度について、基準額・対象にならないもの・申請方法について説明しました。 高額介護サービス費は、1ヶ月に支払った利用者負担の合計が 所得に応じた負担限度額を超えた時に、超えた分が払い戻される制度。 課税所得や住民税の課税状況によって負担の上限額が決まっている。 高額介護サービス費の対象にならないものもある。 申請は市区町村から送られてくる申請書に必要事項を記入し返送する。 サービスの調整や自己負担額の説明をする際に、それぞれのサービスの料金表に載っている費用だけを伝えると、利用者や家族は負担感を感じることもあります。 後から返ってくる費用もあると知ることで、サービス利用にをする際の経済的不安を減らせるのではないでしょうか。 最後までお読みいただきありがとうございました。
介護医療院とは要介護高齢者の長期療養・生活のための施設です。 2018年に法制化されたばかりの新しい種類の施設なので、実際どんなところなのか、自分の親が入所できるのかなどわからないこともあるのではないでしょうか。 本記事では、介護医療院の概要や入所のメリットとデメリット、利用料金や入所する方法を解説します。 ぜひ最後までお読みください。 介護医療院ってどんなところ? [caption id="attachment_1970" align="alignnone" width="512"] Woman in a white coat[/caption] 介護医療院は介護保険制度を利用した介護施設ですが、医療的なケアも受けられて長期間利用できる施設です。 介護保険制度が始まる2000年以前は、治療がなくても病院へ入院している社会的入院が問題となっていました。 退院できるけど生活する場がない人の受け皿として介護療養型医療施設が創設されましたが、医療の必要性の低い利用者も多く入院している状況は変わりませんでした。 医療費の圧迫や人手不足の問題もあることから、2023年度末で介護療養型医療施設は廃止されることになり、介護医療院が新設されることになりました。 サービスの内容 介護医療院で受けられるサービスには、介護サービスと医療サービスがあります。 介護サービス 介護医療院は同じ介護保険施設の枠組みにある特別養護老人ホームや、介護老人保健施設(老健)と同じように、食事や排泄、入浴など、その人に必要な介護を受けられます。 担当のケアマネジャーを中心に作成する施設サービス計画をもとに、日常生活上必要な介護やレクリエーション、機能訓練などが提供されています。 医療サービス 介護医療院では、たんの吸引や胃ろう、点滴、在宅酸素、褥瘡のケアなど 医療的なケアの対応ができる他、看取り介護も行われています。 入院して治療するほどではないが医療的な観察が必要な場合、特別養護老人ホームなどでは受け入れができない場合があるので、介護医療院が選択肢になるでしょう。 2つのタイプ 介護医療院にはⅠ型とⅡ型の2つのタイプがあります。 Ⅰ型は重篤な身体疾患のある方や身体合併症がある認知症高齢者が対象で 病院色の強いタイプ。 Ⅱ型はより安定している高齢者が対象で、老健のようにリハビリをして 家庭復帰をサポートしています。 Ⅰ型とⅡ型では、施設の人員や設備、運営基準に違いがあります。 (引用:厚生労働省「介護医療院の概要」) 対象者 入所の対象になるのは、要介護1〜要介護5の認定を受けた65歳以上の方と 40歳から64歳で特定疾病による要介護1〜要介護5の認定を受けている方。 要支援の方は対象外のため入所できません。 その人の状態によってⅠ型かⅡ型かが決まります。 介護医療院は、医療的なケアを提供する場なので、実際の入所者は医療依存度の高い高齢者が多い傾向です。 介護医療院に入所するメリットとデメリット 医療的なケアを受けながら長期療養できる介護医療院ですが、メリットだけではありません。 入所者本人にとってよい選択ができるようメリット、デメリットともに把握することが大切です。 メリット 介護医療院に入所するメリットは以下の3点です。 医療的なケアを受けられる 長期療養が可能で看取り介護も対応できる 生活の場なのでレクリエーションルームや談話コーナーがある デメリット デメリットは以下の3点です。 多床室は家具とカーテンで仕切られているだけでプライバシーの確保が不安 長期になると費用が高額になる まだ数が少なく、地域によっては選択肢が絞られる 施設によって特徴に違いがありますので、資料請求や見学をして情報収集することが大切です。 介護医療院の費用 介護医療院の費用は月額の利用料金のみで、入居金などの初期費用はかかりません。 医療的ケアを受けられることで、特別養護老人ホームに比べると高く設定されているので、入所前によく確認しましょう。 月額利用料金の内訳 介護医療院でかかる月額利用料金の内訳は以下のとおりです。 施設サービス費・介護加算 施設サービス費は要介護度ごとに設定されていて、他にも介護保険の負担割合や施設の形態によって金額が異なります。 表はⅠ型、Ⅱ型それぞれ1割負担の場合の金額です。( 記事執筆23年2月) Ⅰ型介護医療院サービス費(Ⅰ) 1割負担の場合の日額 要介護度 従来型個室 多床室 ユニット型個室 ユニット型個室的多床室 要介護1 694円 803円 820円 要介護2 802円 911円 928円 要介護3 1,035円 1,144円 1,161円 要介護4 1,134円 1,243円 1,260円 要介護5 1,223円 1,332円 1,349円 (参考:厚生労働省「どんなサービスがあるの? − 介護医療院」) Ⅱ型介護医療院サービス費(Ⅰ) 1割負担の場合の日額 要介護度 従来型個室 多床室 ユニット型個室 ユニット型個室的多床室 要介護1 649円 758円 819円 要介護2 743円 852円 919円 要介護3 947円 1,056円 1,135円 要介護4 1,034円 1,143円 1,227円 要介護5 1,112円 1,221円 1,310円 (参考:厚生労働省「どんなサービスがあるの? − 介護医療院」) 他にも施設の体制にかかる加算項目がありますので、説明を聞く際に確認が必要です。 居住費・食費 室料や光熱費にあたる居住費や、食材料費や調理費にあたる食費は各施設ごとに決められています。 厚生労働省が基準費用額を定めているので、以下をご確認ください。 基準費用額 居住費 多床室 377円 従来型個室 1,668円 ユニット型個室 2,006円 ユニット型個室的多床室 1,668円 食費 1,445円 (参考:全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議資料(令和3年3月9日)) 日常生活費 日常生活費は歯ブラシやティッシュペーパー、理美容や入れ歯の洗浄剤など、生活の中で必要になる費用です。 保険の適用にはならず実費負担となり、施設によって金額が異なるので 入所前に確認する項目の一つです。 月額利用料の目安 上記を参考に月額の目安を計算すると以下のようになります。 Ⅰ型 1割負担 要介護4 ユニット型個室の場合 →140,340円 + 日常生活費 Ⅱ型 1割負担 要介護3 多床室の場合 → 86,340円 + 日常生活費 介護保険の負担割合や要介護度、居室のタイプによって利用料金が大きくかわるので、負担が大きくなってしまう可能性もあります。 少しでも負担を抑えるために、次から介護医療院で使える減免制度について説明します。 介護医療院の減免制度 介護医療院の費用に関する減免制度は主に3つです。 支払いに不安のある場合は以下の制度を活用することで、自己負担額を低くすることができます。 介護保険負担限度額認定 介護医療院の費用のうち、食費と居住費が住民税の課税状況や年金額、預貯金などによって、段階的に減額されます。 段階によっては居住費と食費が半額程度になる場合もあります。 要件が複雑ですので、保険者となっている市区町村の介護保険窓口で対象になるのかどうか、確認してみるとよいでしょう。 高額介護サービス費 高額介護サービス費は、1カ月に支払った施設サービス費が所得に応じた負担限度額を超えた時に、超えた分が払い戻される制度です。 居住費や食費、日常生活費は対象にはなりません。 該当する時に市区町村から申請書が届きますので、必要事項を記載して提出します。 次回以降は自動で振り込まれますが、はじめに申請をしないともらえないので注意が必要です。 高額医療・高額介護合算制度 高額医療・高額介護合算制度は、1年間に支払った医療保険と介護保険の自己負担の合計額が、所得によって決められた限度額を超えた時に、超えた分が払い戻されます。 高額介護サービス費と同じように、対象者には申請用紙が届きますのでそれぞれの役所へ提出します。 介護医療院に入所する方法 [caption id="attachment_1968" align="alignnone" width="512"] A room in a nursing facility[/caption] 介護医療院に入所する流れは以下のようになります。 要介護認定を受ける 入院・入所中の病院や施設の相談員へ相談し介護医療院を探す 資料請求や見学をして施設へ直接申し込む 診療情報提供書や血液検査などのデータを元に介護医療院が入所判定を行う 入所前面談を行い、施設での生活や療養方針について確認する 入所 まとめ いかがでしたでしょうか。 本記事では介護医療院の概要やサービス内容、入所のメリットとデメリット、費用や入所する方法を解説しました。 介護医療院は医療的なケアを受けられて、長期療養できる介護保険施設 利用者の状態によってⅠ型とⅡ型に分けられる 対象になるのは65歳以上、もしくは40歳から64歳で特定疾病による 要介護1〜要介護5の認定を受けている方 介護医療院に入所するメリットは「医療的なケアを受けられる」 「長期療養が可能で看取り介護も対応できる」 「生活の場なのでレクリエーションルームや談話コーナーがある」 デメリットは「多床室は家具とカーテンで仕切られているだけで プライバシーの確保が不安」「長期になると費用が高額になる」 「まだ数が少なく、地域によっては選択肢が絞られる」 1カ月の費用の主な内訳は、施設サービス費+居住費+食費+日常生活費 利用料金の減免制度として介護保険負担限度額認定、高額介護サービス費 高額医療・高額介護合算制度などがある 介護医療院は医療的ケアも介護サービスも受けられます。 家族内、ケアマネジャー、入院・入所している病院や施設の相談員などとよく相談し、より良い選択をするようにしましょう。 最後までお読みいただきましてありがとうございます。
親が年齢を重ねると、子供の心配事の一つになるのは親の認知症です。 親の認知症を疑うのは子供にとって心苦しいものですが、認知症の症状に気づくのが遅れると家族の生活は一変します。 この記事では、認知症の疑いのある親を早く受診させるための方法を「もし自分の親が認知症になったら」という視点でステップ毎に紹介します。 認知症の疑いをどのように確認し、どう接するのか、また今後どうするのか対応方法を一緒に考えてみましょう。 本当に認知症なのか? 認知症は脳の病気で、記憶や自己判断力という認知機能の低下という症状があります。 65歳以上の高齢者の方が認知症を発症する可能性が高いといわれていますが、65歳未満の方も発症する若年性認知症も増えています。 まずは、「本当に認知症なのか?」を判断し、治療が必要なのか判断するのが、子供にできる第一歩です。 もの忘れか、認知症か? もの忘れか、認知症か、子供でも判断は容易ではないでしょう。 もの忘れは、高齢者の方でなくても多忙な時や加齢など誰にでも起こる症状ですが、認知症となると話は変わってきます。 もの忘れは一時的なもので、何かヒントがあれば思い出すため、日常生活に支障はありません。 しかし、認知症は忘れたことを本人が自覚できず、ヒントがあっても思い出せないなど日常生活に支障が出る言動をとります。 ただし、注意深くみていないと気がつきにくいため、子供も知らない間に親の認知症が進むこともあるのです。 加齢などによるもの忘れと認知症の違いは、一般的に次のとおりです。確認しておきましょう。 もの忘れ ・忘れたことを本人が自覚している ・記憶の一部を忘れているが、ヒントがあれば思い出す ・判断力はある ・日常生活は支障なくできる 認知症 ・忘れたことを本人が自覚していない ・ヒントがあっても、思い出せない ・判断力が低下している ・日常生活に支障がある もの忘れは、きっかけがあれば思い出しますが、認知症はそもそも記憶力が低下しているため、日常生活に支障がある症状です。 ステップ①親の認知症を疑う前のチェック 認知症の兆候は分かりにくいものですが、早期発見・早期治療につなげるために、子供が親の言動に違和感を持ち、いち早く認知症の兆候に気づく必要があります。 そして親の認知症を疑う前に、子供が簡単にチェックしておくことが大切です。 子供がチェックできる項目 1.家族すべての名前を言えない 2.同じ会話を何度も繰り返す 3.自分の名前や簡単な漢字が書けない 4.家の中にごみが散乱している 5.新聞や郵便物を確認していない 6.期限切れの食品がたくさんある 7.同じ食品や日用品がたくさんある 8.友達や近所の人との交流がなくなった 9.人を疑いやすくなった 10.身だしなみに気を遣わなくなった 11.季節や気温に合わせた服を着ていない 特に別居している子供は、定期的に電話で安否確認するとともに、少しでも会話に違和感があれば自宅に帰り、異変を早めに察知することが大切です。 日常の生活はどうしているのか、困り事がないかなど、自然な会話で質問しながら確認するなどのテクニックが必要になります。いずれも親の異変に気づく手がかりになるでしょう。 ステップ②認知症の疑いがある場合 認知症ではないかと思えば、専門機関での受診につなげていけるよう、まずは相談していくことを考えましょう。 認知症の疑いがある親が自覚していなくても、子供や友達など周りの人の気づきがあれば子供だけで悩みを抱え込まないでください。 早めに専門家に相談、受診させることが最優先の対応です。 主な相談先 かかりつけ医 地域包括支援センター 親にかかりつけ医がいる場合、気がかりなポイントをメモにして、親と一緒に同席して相談しましょう。 かかりつけ医がいない場合、お住まいの地域包括支援センターに相談すれば、色々なアドバイスや情報をもらえます。 早めに治療を開始できれば、適切な医療や介護につなげられます。 受診拒否がある場合 本人が受診しようという気になっていない場合、受診させることはとても難しいです。 認知症ではないかと親本人に伝えても自覚がない分、はぐらかしたり、プライドを傷つけられて怒り出すこともあります。 子供にとっても、早く受診させなければと気持ちが焦り「説得」を試みますが、ここでは「納得」する伝え方が大切です。 ・健康診断として一緒に受診してみる。 ・早めの受診が有効な例を伝えてみる。 例:認知症の疑いで受診したら脳血管障害が見つかった :認知症症状ではなくて老人性うつ症状だった ・信頼おける第三者から声をかけてもらう。 身近な第三者からの声掛けも受診につながるケースが多いです。ケアマネが担当すれば、その点も考慮して受診につなげていく援助が受けられます。 認知症の症状を知っておく 認知症を事前に調べ、知っておくことも大切です。 認知症の原因や症状を事前に調べておかないと、受診した際のショックが大きく、親の治療方針や接し方など大切な情報まで頭が回らなくなります。 ネットや書籍などで専門医が監修する信頼性の高い情報を 事前に知識を得ておくことも必要です。 また認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)についても 事前に情報を得ておくと、早めの認知症予防につながります。 ステップ③親が認知症と分かった場合 親が認知症と分かった場合、子供はさらにショックを受けるでしょう。 これからの治療で症状が改善するか不明な状況で、今後どう対応し生活していくか、不安なことばかりになります。 特に誰が主に親をサポートするのか、介護サービスを利用した介護か、施設に入所してもらうのか早急な対応の決断をしなければなりません。 また場合によっては、介護離職の決断をせまられる可能性もあります。 親の認知症を受け入れるのは、子供にとってはショックな出来事です。 しかし、早急に適切な対応や処置を施さないと、症状は悪化するだけでなく、日常生活にも支障を生じます。 子供といえども選択を誤ると、親と子供にとって不幸な結果を招きかねないため、よく考えて決断しましょう。 症状の進行は意外と早い 症状の進行は意外に早いという家族の体験談をよく見かけます。 子供が気づかない間に症状が進行しているケースも見られるため、受診した時点では日常生活が困難という場合もあるのです。 認知症の種類と特徴をいち早く知り、今後の治療や親の生活を見極める必要があるでしょう。 自宅介護か施設入所か 親のために自宅で介護したいと思う方もいるでしょう。 認知症であっても身体が元気な方は、子供が目を離している間に、徘徊や昼夜逆転生活、暴言を浴びせられるなど症状の悪化します。 それと共に介護者の負担感が大きくなってしまいます。 まずは、相談先のかかりつけ医や地域包括センターに相談し 介護認定を早急に申請することが先決です。 そして可能な限り介護を家族で分担して行う、介護サービスを最大限活用するなど、介護負担を軽減する対策を決めておきましょう。 また自宅介護が困難と判断した時点で、早めに施設入所を決めておくことも大切です。 自宅介護が親にとって最適な対応とは限らないのです。 認知症は初期症状での早めの対応がポイント 認知症に限りませんが、病気や症状は早期発見、早期治療で 完治または症状の緩和や進行を遅らせることができます。 特に認知症の場合、症状が軽い間に今後の治療方針や介護 場合によっては施設の利用や入所など考える時間ができ 早めの対応や行動ができます。 子供は親の言動の変化をいち早く感じ取る立場です。 認知症の疑いが晴れれば、それで良し 認知症であれば、前向きに行動し親や子供にベストな環境をつくる 子供にとって大切な2つの心構えです。 まとめ 親に認知症の疑いがあれば、子供による早めのチェックで 医療機関の受診につなげることが大切です。 ・早めに相談、受診につなげる ・子供は親の診察に付き添う ・認知症の症状を事前に知っておく ・親の介護生活の情報を集めておく。 子供の世話になりたくないという親は多いでしょう。 しかし、本人が気づかない間に認知症の症状は進行します。 親が高齢になるまでに事前に介護の情報を目にしておくことや 定期的に健康や介護など話し合いを持ち、お互いを見守る環境をつくっておくことが大切な時代になりました。
「介護施設の利用を検討しているけど経済的にきびしい」 「介護施設に入所しているけど毎月の支払いがきついな」 そう考えていませんか? 負担限度額認定は一定の条件を満たすことで、経済的にきびしい方の費用負担を軽くする制度です。 この記事では負担限度額認定制度について分かりやすく解説していきます。 負担限度額認定はどんな制度? 負担限度額認定は介護サービスを利用している方の経済的な負担を軽減する制度です。 ただしすべての世帯が対象というわけではなく、所得や預貯金が少ないなど経済的に余裕が無い方を対象としています。 実際に介護施設を利用すると毎月下記の費用が発生します。 介護サービス費(所得に応じて1~3割の自己負担) 日常生活費(理美容代やその他生活に必要な備品代) 居住費(宿泊費) 食費 これらの自己負担額は決して安い金額ではありません。収入の少ない方にとっては非常に大きな負担となってしまいます。 負担限度額認定制度では上記の費用のうち、「居住費」と「食費」を減額することができるため非常にメリットのある制度です。 負担限度額認定を利用するための3つの条件 それでは負担限度額認定証(負担限度額認定制度の対象者に交付される証明書)を交付してもらうためにはどのような条件を満たす必要があるのでしょうか。 ここでは、それぞれの条件について解説していきます。 条件①:本人を含む同一世帯全員が住民税非課税であること 1つ目の条件は「本人を含む世帯全員が住民税非課税である」ことです。 本人に収入がなく住民税非課税でも同居する家族に所得があり、誰かが住民税を支払っている場合は、負担限度額認定証の交付対象にはなりません。 また、本人に配偶者がいる場合、事情により別世帯であっても配偶者が住民税を支払っているのであれば、負担限度額認定証の交付対象にはなりません。 ※配偶者からDVを受けている場合や、配偶者が行方不明の場合は否認要件に該当しません。 条件②:所得が基準額以下であること 負担限度額認定制度は経済的に厳しい方の負担を軽減する制度です。 そのため、所得レベルに応じて減免額に差を設けています。 各レベルは4段階あり、所得の額が上がるにつれて費用の減額は少なくなり、制度から受けられる恩恵も小さくなります。 所得要件は以下のようになります。 各段階 要件 第1段階 生活保護受給者 第2段階 ・世帯の全員が住民税非課税 ・合計所得金額+年金収入=年間80万円以下 第3段階(1) ・世帯の全員が住民税非課税 ・合計所得金額+年金収入=年間80万円を超え120万円以下 第3段階(2) ・世帯の全員が住民税非課税 ・合計所得金額+年金収入=年間120万円超 第4段階(非該当) 負担軽減の対象外:1~3段階の条件に該当しない方 第1段階が制度より受けられる恩恵が最も大きく、段階が上がるにつれて恩恵も小さくなります。 第3段階より所得額が大きくなると負担限度額認定の対象から外れます。 条件③預貯金などの資産が一定額以下であること 負担限度額認定での預貯金の定義は「資産性がある」「換金性が高い」「価格評価が容易である」これらの3つの要因で定義されています。 預貯金に該当するもの 預貯金(普通・定期) 有価証券(株式・国債・地方債・社債など) 金・銀などの貴金属 投資信託 現金 負債(借入金・住宅ローンなど) 生命保険や自動車、貴金属などは預貯金の対象にはなりません。 資産要件は各段階に応じて下記のようになります。 区分 対象 単身 夫婦 第1段階 1,000万円以下 2,000万円以下 第2段階 650万円以下 1,650万円以下 第3段階(1) 550万円以下 1,550万円以下 第3段階(2) 500万円以下 1,500万円以下 負担限度額認定を利用するといくら安くなる? では実際に負担限度額認定制度を利用するとどこまで費用を抑えることができるのでしょうか? 下記の表に各段階に応じた負担額をまとめました(金額は月額換算になります) 表に記してある金額を超える場合、超過分の金額を支払う必要はありません。 例えば第1段階の食費の負担限度額は9,000円になりますが、9,000円を超過した場合の金額は免除されます。 各段階 居住費 食費の負担限度額 ユニット型個室 ユニット型準個室 従来型個室 多床室 特養 老健療養 特養 老健療養 第1段階 24,600円 14,700円 9,600円 14,700円 0円 0円 9,000円 第2段階 24,600円 14,700円 12,600円 14,700円 11,100円 11,100円 11,700円 第3段階(1) 39,300円 39,300円 24,600円 39,300円 11,100円 11,100円 19,500円 第3段階(2) 39,300円 39,300円 24,600円 39,300円 11,100円 11,100円 40,800円 第4段階 (非該当) 60,180円 50,040円 35,130円 50,040円 25,650円 11,310円 43,350円 負担限度額認定を利用した場合の シミュレーション 実際に負担限度額認定を「利用した場合」と「利用しなかった場合」を比較し、どれだけ制度からの恩恵を受けられるかみていきましょう。 分かりやすいように事例を想定して考えていきます。 (Aさんの事例) 条件……第2段階で従来型特養の個室を利用していると想定。 第4段階の非該当と比較していきます。 居住費…35,130円(非該当)- 12,600円(第2段階)=22,530円の負担軽減 食費…43,350円(非該当)- 11,700円(第2段階)=31,650円の負担軽減 合計(居住費+食費)=54,180円の負担軽減 このように、制度を活用することで毎月54,180円の負担軽減になります。 年間に換算すると65万円になり、制度から受けられる恩恵はかなり大きいのではないでしょうか。 負担限度額認定制度を活用してない人はぜひ活用しましょう。 負担限度額認定を利用できるサービス 負担限度額認定はすべての介護サービスで利用できるわけではありません。 利用できる施設 特養(特別養護老人ホーム) 老健(介護老人保健施設) 介護医療院 介護療養型医療施設 短期入所生活介護 短期入所療養介護 地域密着型介護老人福祉施設(地域密着型特養) グループホームや有料老人ホーム、サービス付き高齢者賃貸住宅は対象外のため、注意が必要です。 負担限度額認定の注意点 負担限度額認定制度にはいくつかの注意点があるため、あわせて確認しておきましょう。 注意点①:負担限度額認定証には有効期間がある 負担限度額認定証には有効期間があります。 期限を過ぎると勝手に自動更新されるわけではないので注意が必要です。 有効期間は毎年8月1日から翌年7月31日までの1年間であるため、ご自身で更新の手続きをする必要があります。 毎年、更新月が近づくと書類が送付されてくるので、必要事項を記載し、ご自身で更新の手続きを進めておきましょう。 注意点②:毎年同じ額の費用減免が受けられるわけではない 負担限度額は前年の所得や預貯金などの状況に応じて決定されます。 そのため必ずしも前年と同じ金額が減額されるわけではありません。 所得や資産に大きな変化があった場合、状況によっては非該当になる可能性もあるため、注意が必要です。 まとめ ここまで負担限度額認定制度について解説してきました。 最後に復習しておきましょう。 負担限度額認定制度は経済的に余裕がない世帯の負担を軽減する制度である 負担限度額認定制度を活用するには「住民税非課税」「所得要件」 「資産要件」などの条件を満たす必要がある 負担限度額認定制度は所得や資産によって受けられる恩恵に差がある制度である 負担限度額認定制度を活用すれば金銭的負担をかなり軽減できるので活用すべきである 負担限度額認定証は有効期間があるので注意が必要である 負担限度額認定を受けるための申請書類は地域によって異なることがあります。 負担限度額認定を知らないことで損をしないように、不明点はお住まいの市区町村の自治体や、ケアマネージャーなどに問い合わせましょう。 最後までお読みいただきありがとうございました。
「世帯分離で親の介護費用は下がるのかな?」 「世帯分離はだれでもできるのかな?」 「そもそも世帯分離って何だ」 このように世帯分離についてお悩みではないでしょうか? 世帯分離は上手く活用することで介護費用を下げることが可能な制度です。 この記事では世帯分離について分かりやすく解説していきます。 世帯分離とは? では、世帯分離とはどのようなものか詳しく解説していきます。 そもそも世帯とは? 世帯とは住居と生計を共にしている人々の集まりのことです。 一人暮しでも独立して生計を営んでいれば世帯として扱われます。 また、同じ住居で共同で生活していても生計を別にしている場合は、それぞれが別世帯として扱われ、世帯主も複数存在することになります。 世帯分離とは? 世帯分離を簡単に説明すると、同居している家族と住民票を分けることをいいます。 ただし、それぞれの世帯に「独立した生計を営む収入」があることが前提となるため、そもそも収入がなく生計を営むのが困難であれば世帯分離はできません。 また、世帯分離は住民票上での分離になるので、今まで通り一緒に生活することも可能ですし、当然戸籍もそのままになります。 世帯分離の目的は? 「そもそもなんで世帯分離するの?」と疑問に思われる方もいるでしょう。 世帯分離の本来の目的は「所得が少ない人(親など)の住民税を軽減」することです。 住民税の額は世帯ごとに計算されるため、世帯分離により世帯の所得額が減ることで、住民税の軽減が可能となります。 世帯分離の3つのメリット それでは世帯分離をするとどういうメリットがあるのでしょうか。 具体的に見ていきましょう。 メリット1:介護サービスを利用する際の自己負担額を軽減できる 介護サービスは所得に応じて1~3割の自己負担が発生します。 自己負担割合は基本1割ですが、平成27年度の法改正により一定額以上の所得者は2割、現役並みの所得がある人は3割負担になりました。 この自己負担割合は世帯の所得で判断されるため、世帯分離により親の所得だけが算定要因になれば自己負担割合も軽くなる可能性があります。 仮に要介護1の場合、支給限度額は約167,000円です。 3割負担の場合、自己負担が50,100円ですが、所得額が減ることで1割負担になれば16,700円になります。 毎月の差額が33,400円(年間約40万)になるため、世帯分離により受ける恩恵も大きいのです。 ※支給限度額とは、要支援、要介護と認定された方が介護サービスを利用した際に、介護保険から保険給付される限度額です。限度額を超過した分は自己負担になります。 メリット2:高額介護サービス費制度により自己負担額の上限が下がる 介護サービスの自己負担が1~3割とはいえ、サービスを無限に受け続ければ自己負担額はそれに比例して増えていきます。 そこで利用できる制度が「高額介護サービス費制度」です。 高額介護サービス費制度は世帯の所得に応じ、1ヵ月間に支払う自己負担額に上限額が設定されています。 自己負担の上限額を超えた場合、超過した分の費用は申請することで払い戻されるため、サービスをたくさん利用される方にとっては恩恵の大きい制度です。 一般的な所得の方の負担限度額は44,000円ですが、世帯分離を行うことで 住民税が仮に非課税になれば、上限額が24,600円となります。 月額で2万円(年間24万円)の負担軽減になるためメリットも大きいです。 メリット3:負担限度額認定制度により自己負担額を軽減できる 介護サービスを利用すると様々な費用が発生します。 なかでも食費や居住費は全額自己負担となるため、大きな負担となります。 負担限度額認定制度は介護保険施設を利用した際の食費や居住費を軽減できる制度です。 この制度は所得や資産の少ない方が対象となります。 所得や資産状況にもよりますが、ケースによっては食費と居住費を合わせて、月額5万円程度の負担軽減になることもあります。 世帯分離の4つのデメリット 世帯分離は上手く活用すればメリットも大きいですが、デメリットもあるため、注意するようにしましょう。 デメリット1:高額介護サービス費で介護費用を世帯合算ができない 世帯分離する前に一世帯に要介護者が2人以上いた場合、2人の介護費用を合算し、超過分を「高額介護サービス費制度」により払い戻すことができていました。 しかし、世帯分離によって各世帯に要介護者が1人ずつとなった場合には、今までのように介護費用の合算ができなくなります。 そのため申請後の払戻額も少なくなる可能性があることを覚えておきましょう。 ケースによっては、それぞれの介護サービス費では高額介護サービス費を利用できる上限額に達しないことも想定されるため、そもそも制度を利用できなくなることも考えられます。 デメリット2:各世帯で国民健康保険を納める必要がある 国民健康保険制度の保険料の負担は世帯主が行う必要があります。 そのため世帯分離し世帯が別になれば、それぞれの世帯で国民健康保険料を納める必要がでてくるのです。 仮にそれぞれの世帯での納付額は減っていたとしても、2つの世帯の保険料を合算すると、一世帯で支払っていた保険料よりも高くなってしまう可能性もあります。 そのため世帯の保険料の総額を考えて検討することが必要です。 ケースによっては保険料が逆に下がる可能性もあります。 世帯分離による保険料の増減に関しては、完全にケースバイケースといえます。 デメリット3:手続きの手間が増える 世帯分離により行政などの手続きが煩雑になることが考えられます。 役所の手続きは各世帯で行う必要があるため、同一世帯だった場合は1回の手続きで完結します。 しかし、世帯分離をすることで2世帯分の手続きをする必要がでてくるのです。 その他にも親の行政手続きに委任状が都度必要になるなどの手間も生じるので注意が必要です。 例えば、親の住民票が必要な場合があるとします。 その際、親が高齢で役所に行けない場合、代理で窓口に行くことになりますが、その都度親に委任状を書いてもらわなければなりません。 そのため、さまざまな手続きの手間は増えてしまいます。 デメリット4:扶養手当てや家族手当がもらえない 子供や親を扶養している場合、会社から扶養手当や家族手当などが支給されているのではないでしょうか。 その場合、世帯分離により、扶養から外れてしまうため手当がもらえなくなる可能性があります。 世帯分離を行う前に、一度会社の担当部署に確認しておきましょう。 世帯分離をおすすめできるケースとは 世帯分離でメリットが得られる世帯は、介護サービスをたくさん利用する方がいる世帯です。 世帯分離で所得が減ることにより、制度から受けられる恩恵も多くなる傾向にあるといえます。 高額介護サービス費制度では自己負担の上限額が下がることによって戻ってくる額も大きくなるなどのメリットを受けられます。 また介護保険施設に入所している場合、世帯分離することにより、食費や居住費の自己負担を軽減できる負担限度額認定制度を活用することも可能です。 世帯分離を行う際の注意点 世帯分離をするには住民票のある市区町村で手続きをする必要があります。 担当窓口の方から「世帯分離を行う目的は?」と質問された際に、「介護保険料を軽減したいから」と言うと受理されない可能性があるため注意が必要です。 なぜなら「介護保険料の減額」が、世帯分離の本来の趣旨とズレているためです。 世帯分離の本来の趣旨は「所得が少ない人(親など)の住民税を軽減」することにあります。 仮に窓口で理由を聞かれたら「生計を別々にするようになった」、「それぞれの家計が別々のため」と言うのが無難でしょう。 世帯分地は同じ住所でも親子同居でも申請することは可能です。 しかし、世帯分離するためには、独立した家計を営んでいることが条件となっています。 生計が同一の場合は世帯分離が認められにくいので注意してください。 世帯分離の手続き方法 では、実際に世帯分離をする際にどのような手続きが必要なのかを確認してみましょう。 書類をそろえる 世帯分離をするときには、以下の書類が必要になります。 ・本人確認書類 ・世帯変更届 ・国民健康保険証 ・印鑑 また、親の手続きを子供が代理で行う場合は委任状も必要です。 書類に不備があると申請できないので、念のため申請前に役所に確認しておくとよいでしょう。 まとめ ここまで世帯分離について解説してきました。 最後にポイントを整理しておきましょう。 世帯分離をするには、それぞれの世帯に「独立した生計を営む収入」が必要である。 世帯分離の本来の目的は「所得が少ない人(親など)の住民税を軽減」することである。 世帯分離をすることで介護費用を軽減できるというメリットがある 世帯分離をすることで国民健康保険の保険料が増えるというデメリットがある ※保険料に関してはメリットになる可能性もあり、完全にケースバイケースである 世帯分離をすることで会社からの手当が減ることがあるので注意が必要である 世帯分離により行政の手続きが面倒になるので注意が必要である 最後までお読みいただきありがとうございました。
徘徊は認知症の症状の一つです。 外や家の中をうろうろ歩きまわるため、介護者の介護疲れの要因の一つに挙げられています。 一人暮らしをしている親に認知症がある場合、普段の生活について心配になってしまう方も多いのではないでしょうか。 本記事では、徘徊中に電車にはねられてしまった方の判例を紹介し、徘徊のリスクや原因、対処方法について解説しています。 認知症のある方を介護している家族や介護職におすすめの記事ですので、ぜひ最後までお読みください。 認知症とは [caption id="attachment_2017" align="alignnone" width="512"] Asian caregiver and a senior woman at the room[/caption] 認知症は、一度発達した脳が病気や障害などさまざまな原因により認知機能が低下し、日常生活全般に症状が出てくる状態のことです。 2020年現在、日本国内の65歳以上の人で認知症のある人は約600万人いるとされています。 これはおおよそ6人に1人が認知症になっていることになり、2025年には700万人、5人に1人が認知症になるといわれています。 認知症の症状とは 認知症の症状には、中核症状と周辺症状の大きく2通りに分けられます。 ではどのような症状なのかを確認していきましょう。 中核症状 中核症状は、記憶の障害や、時間や場所がわからなくなる見当識障害や理解力、判断力の低下などがみられる症状です。 脳が萎縮したり脳卒中で損傷を受けたりすることで症状が出現することがあります。 中核症状には以下のような特徴があります。 数分前や数時間前の出来事を忘れている 同じことを何度も言う 同じ物を何度も買ってくる 等 周辺症状 周辺症状は、中核症状を原因として二次的に起こる症状のことです。 記憶や見当識があいまいになることで不安を感じ、心理面や行動面に症状がでてきます。 時間や場所の認識がなく、自分がなぜここにいるのかわからなくなり とりあえず歩き回った結果徘徊に至る 財布をどこに置いたかわからなくなり、身近にいる子や嫁が持っていってしまったと 取り繕うことで物盗られ妄想に至る これまで受けていた介護でも、理解力が低下し何をされるのかわからず 介護者の手を払い除けた結果介護拒否と言われる 認知症のある人の介護でもっとも大変なことの一つは、この周辺症状への対応かもしれません。 徘徊は周辺症状の一つ 徘徊は周辺症状の一つで、目的もなくうろうろ歩き回ることとされています。 介護者からするとただ歩き回っているように見え、何度も繰り返したり、制止が効かなかったりすることがあります。 そのため、介護者にとっては負担を感じやすい症状です。 徘徊に至る要因は、記憶力や見当識が低下することで、その場で起きていることの理解や判断ができない不安から、徘徊という行動をとっていると考えられます。 自分がどこにいるのか、何をしていたのか、周りにいる人が誰だかわからないという状況の中、とても大きな不安を感じている中での行動と言えるでしょう。 安全に歩ける環境であればまだよいですが、認知症により危険に対する認識がなくなってしまうこともあります。 歩道があるのに車道を歩いてしまったり、信号を守れなかったりすることもあるかもしれません。 住み慣れた集合住宅の敷地内を散歩して自宅に戻れなくなる事例も多くあります。 徘徊はなぜ起きる? 徘徊が起こる原因には、いくつか原因が考えられます。 身体的な違和感が原因 徘徊する原因には何かがしたいと思っていたのに、そのことを忘れてしまうため、その違和感により徘徊してしまうのです。 この場合、排泄や飲食をすることで気持ちが落ちつき、徘徊が落ち着くことがあります。 排泄が原因の場合は、主治医に相談をして排泄に関する薬を飲むことで落ち着く場合が考えられます。 日々の排泄など体調管理を行うようにしましょう。 心理的なストレスが原因 夕方や夜になると気持ちが落ち着かなくなり、外に出かけようとする方がいらっしゃいます。 これは認知障害だけでなく、不安や焦燥感などを感じてしまい、その衝動が徘徊になってしまうのです。 ストレスの内容には以下のような事柄があげられます。 ・過去の習慣によるもの ・若い時や数年前の記憶などが蘇ることで誤認してしまう ・判断力や記憶力が低下してしまったため、行きたい場所を忘れてしまう ・不安や不満などによるもの 普段からよく観察し、何がストレスになっているのかを考えたり、ご本人に話を聞いてみてください。 ストレスを軽減することができれば、徘徊の症状を改善することができるかもしれません。 環境によるもの 環境が変わることで居心地悪く感じてしまい、徘徊になることがあります。 ご本人が過ごしやすい環境にし、居心地よくしてあげることで徘徊を抑えることができます。 前頭側頭型認知症 前頭側頭型認知症は人格や社会性をつかさどる前頭葉と、言語や記憶、聴覚をつかさどる側頭葉が萎縮してしまう病気です。 前頭側頭型認知症になると、以下のような症状が現れます。 ・人目を気にしなくなる ・感情が抑制できなくなる ・同じことを繰り返す 前頭側頭型認知症は病気自体が原因で徘徊行動を起こしてしまいます。 徘徊に関する判例(2021年3月28日 京都新聞) 2007年12月7日、愛知県で、妻と二人暮らしをしている高齢男性が電車にはねられ死亡しました。 男性には認知症があり、デイサービスから帰宅後まもなく、妻がうたた寝をした6〜7分の間に外出し、事故に遭っています。 所持金はなかったものの、改札をすり抜けて電車に乗り、一つ先の駅で降りたあと、ホームにおり、フェンスの扉を開けて線路に入った様子でした。 そのため、トイレを探して迷い込んだと見られています。 一審では妻の居眠りが過失にあたり、介護方針を決めていた別居の息子にも監督義務があったとして、2人は約720万円の支払いを命じられました。 二審でも、対象者から息子を外し、支払額を半額の360万円とした判決がでています。 この判例は、認知症のある方の介護をしている介護者から大きな反響があり、社会問題となります。 徘徊のある人に対して24時間見守り続けなければならず、家に鍵をかけて閉じ込めておくしかないのかと、ニュースでも連日報道されていました。 その後の2016年3月、最高裁は請求を棄却し、認知症の人による事故で防ぎきれないものまでは家族が責任を負わない、とするはじめての判決が下されたのです。 徘徊への対処方法 上記判例では逆転勝訴で無罪という判決がでましたが、事故が起きてから判決がでるまで9年かかりました。 この間の家族の不安は想像に絶します。 大きな事故や裁判に至らなくても、徘徊に関するトラブルは後を絶ちません。 そして、徘徊自体をなくすことは自宅や部屋に鍵をかけて閉じ込めてしまう以外には難しいでしょう。 では、認知症により徘徊のある人に対してどう対処していけば良いかを、一つずつ解説していきます。 関わりによる対処方法 徘徊している本人に対し、介護者の見守りや声かけで対応をします。 辻褄の合わないことを行っている時でも、否定はせず本人なりの徘徊の理由を理解しましょう。 なぜ歩いているのか理由を聞くだけでも安心できる場合もあります。 帰宅願望などで「家に帰ります」と言いながら歩いている場合でも、「外は寒いので上着をきましょう」「車を呼んでいるからお茶を飲みながら待ちましょう」などと、気を逸らすことも効果的です。 サービスや福祉用具による対処方法 どんなに上手に介護していても、1人で認知症のある方の介護を続けるには限界があります。 デイサービスやショートステイなどの介護保険サービスをうまく使い、プロに任せられる部分は任せましょう。 少しでも介護から離れる時間を作り、介護者が自由に使える時間を作ることも大切なことです。 また、ベッドや自宅の出入り口などにセンサーを設置することで、徘徊に速やかに気づけます。 認知症のある本人を閉じ込めるのではなく、動きを察知して対処することが可能です。 地域と連携する対処方法 徘徊だけでなく、認知症のある方の介護をしていくには、地域との連携を図ることが大切です。 家族だけで介護していくにはいずれ限界がやってきます。 本人が不安がっていたら声をかけてもらうよう近所の方に話をしておいたり、ゴミの出し方を間違えているようであれば、否定しないように指摘してもらったりすることも効果的です。 家族だけが抱え込むのではなく、うまく地域と連携しその方をケアすることで本人も家族も安心して生活できます。 まとめ いかがでしたでしょうか。 本記事では、認知症による徘徊から電車にはねられ訴訟に至った判例や、徘徊への対処法について解説しました。 認知症の症状には中核症状と周辺症状がある。 徘徊は周辺症状の一つで、介護者にとっては負担感の大きいものである。 周囲から見ると、目的なく歩き回っているように見えるが、認知症による記憶や見当識 理解力や判断力が低下したことで起こる不安から出てくる症状である。 対応としては否定するのではなくその人の不安を取り除く関わりが必要。 介護者だけが抱え込むのではなく、介護保険サービスやセンサーの活用 地域との連携が徘徊への対処方法として大切である。 今後認知症がありながらも地域の中で暮らしていく方は増えていきます。 徘徊で自宅に帰れなくなる場面に出くわすこともあるかもしれません。 地域によっては徘徊と呼ばずに「ひとり歩き」と言う地域もあります。 認知症のある方の不安を取り除けるよう対処し、本人も介護者も安心して生活できるように関わっていくようにしましょう。
高額介護サービス費は、介護保険サービスを利用したときに支払う利用料金の一部が返金される制度す。 いろいろなものが値上がりしている昨今、利用者やその家族は利用料金の負担に不安を感じています。 なかには利用料金に対する不安から必要なサービスの利用を控えている利用者もいるのではないでしょうか。 介護保険の制度の中でも複雑で理解が難しい高額介護サービス費。 本記事を読むと、高額介護サービス費について理解できます。 ぜひ最後までお読みください。 高額介護サービス費とは 高額介護サービス費は、「1ヶ月に支払った利用者負担の合計が所得に応じた負担限度額を超えた時に超えた分が払い戻される」制度です。 介護保険サービスを利用する時、利用者の所得によって、利用料金の1〜3割を利用者が負担しています。 ですが介護を受ける期間が長くなったり、加齢によってサービスを受ける量が増えたりすると、負担する料金がどんどん増えていきます。 利用者の経済的負担を軽減するための制度がこの高額介護サービス費。 利用者の所得によって段階的に基準額が決められています。 たとえば、住民税非課税世帯だと、年金収入やその他の合計所得の合計が年間80万円より高い世帯の上限額は24,600円です。 仮にサービス利用料金が40,000円の場合、差額の15,400円が後から返金されます。 以前は住民税課税世帯の上限額は一律で44,000円でしたが、令和3年8月に制度が改正されて、高所得者世帯の上限が見直されました。 「課税所得380万円未満」「課税所得380万円〜690万円」「課税所得690万円以上」と細分化されています。 高額介護サービス費の基準額は以下を参照してください。 高額介護サービス費の基準額 *2023年2月現在は以下のようになっています。 区分 負担の上限額 (月額) 課税所得690万円(年収1,160万円)以上 140,100円(世帯) 課税所得380万円(年収770万円)〜課税所得690万円(年収1,160万円未満 93,000円(世帯) 市町村民税課税〜課税所得380万円(年収770万円)未満 44,400円(世帯) 世帯全員が市町村民税非課税で、前年の公的年金等収入金額+その他の合計所得金額の合計が80万円を超える方 24,600円(世帯) 世帯全員が市町村民税非課税で、前年の公的年金等収入金額+その他の合計所得金額の合計が80万円以下の方 24,600円(世帯) 15,000円(個人) 生活保護受給者等 15,000円(世帯) 参考:厚生労働省 令和3年8月利用分から高額介護サービス費の負担限度額が見直されます 間違えやすい制度 以下の2つは高額介護サービス費と間違えやすい制度なので分けて考えてください。 区分支給限度基準額…要介護度ごとに設定された一月に利用できる介護保険サービスの上限額を指します。超過した分は介護権を利用できず全額自己負担です。 高額医療・高額介護合算療養費制度…年間の医療保険と介護保険の自己負担額の合計が限度額を超えた時に差額が支払われる制度です。 対象になる時は市区町村から必要書類が送られてくるので、記入して返送します。 高額介護サービス費の対象にならないサービス 高額介護サービス費は、所得などによって決められた基準額を超えた分の 返金を受けられますが、支払った費用の全てが対象になるわけではありません。 対象外になるサービスは以下の通りです。 施設サービスやショートステイの食費や居住費、その他の日常生活費 福祉用具の購入費や住宅改修費 支給限度基準額を超えてサービス利用した自己負担分 施設サービスやショートステイの食費や居住費 その他の日常生活費 高額介護サービス費の対象になるのは、1割から3割の中で負担している介護保険の自己負担分のみです。 そのため、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などの入居施設や、ショートステイを利用したときにかかる食費や居住費は対象にはなりません。 散髪代やその他の日常生活費も対象外です。 もともと介護保険の対象外となっている費用については、対象外になると理解していればよいでしょう。 福祉用具の購入費や住宅改修費 手すりの取り付けやスロープの造設、ポータブルトイレの購入等にかかった費用も対象外です。 額としては大きくまとまった費用がかかりますが、一時的なもので継続的にかかる費用ではありませんので、対象外になります。 支給限度基準額を超えてサービス利用した自己負担分 サービスを多く利用し、支給限度基準額を超えてしまったときの超過分についても、高額介護サービス費の対象からは外れてしまいます。 超過分は介護保険の給付対象ではなく全額自己負担になるからです。 たとえば、サービスを50,000円分利用し、支給限度基準額が30,000円 高額介護サービス費の負担の上限額が15,000円だったと仮定します。 サービスを利用しているのが50,000円で、負担の上限額が15,000円なので 35,000円の返金と考えてしまいますが、これは間違いです。 支給限度基準額が30,000円なので、20,000円は全額自己負担になります。 そのため、高額介護サービス費は30,000円から上限額の15,000円を引いた差額の15,000円です。 計算自体はそれぞれの市区町村が行いますが、仕組みを理解しておくと 返金分を考慮したサービス調整ができるようになります。 高額介護サービス費の申請方法 実際に高額介護サービス費の支給を受けるための手続きは簡単です。 対象になると、市区町村から住民票のある住所地に申請書が送られてきます。 送られてきた書類に基本情報や口座情報などの必要事項を記入し、市区町村に提出するだけです。 郵送でも手続きできるので、わざわざ役所へ行く必要はありません。 受理されて1〜2ヶ月後、申請時に指定した口座に振り込まれます。 一度登録が済むと、その後手続きは自動です。 2回目以降は支給決定通知書や領収書が送られてくるので大切に保管しておきましょう。 確定申告をする場合に必要になります。 申請はいつでもできますが、サービスの利用から2年が経過してしまうと時効になるので早めに手続きしたほうがよいでしょう。 高額介護サービス費は経済的な面でとても助かる制度ですが、申請しなければ返金されることはありません。 申請書が届いたら忘れずに申請しましょう。 まとめ いかがでしたでしょうか。 本記事では、高額介護サービス費の制度について、基準額・対象にならないもの・申請方法について説明しました。 高額介護サービス費は、1ヶ月に支払った利用者負担の合計が 所得に応じた負担限度額を超えた時に、超えた分が払い戻される制度。 課税所得や住民税の課税状況によって負担の上限額が決まっている。 高額介護サービス費の対象にならないものもある。 申請は市区町村から送られてくる申請書に必要事項を記入し返送する。 サービスの調整や自己負担額の説明をする際に、それぞれのサービスの料金表に載っている費用だけを伝えると、利用者や家族は負担感を感じることもあります。 後から返ってくる費用もあると知ることで、サービス利用にをする際の経済的不安を減らせるのではないでしょうか。 最後までお読みいただきありがとうございました。
介護医療院とは要介護高齢者の長期療養・生活のための施設です。 2018年に法制化されたばかりの新しい種類の施設なので、実際どんなところなのか、自分の親が入所できるのかなどわからないこともあるのではないでしょうか。 本記事では、介護医療院の概要や入所のメリットとデメリット、利用料金や入所する方法を解説します。 ぜひ最後までお読みください。 介護医療院ってどんなところ? [caption id="attachment_1970" align="alignnone" width="512"] Woman in a white coat[/caption] 介護医療院は介護保険制度を利用した介護施設ですが、医療的なケアも受けられて長期間利用できる施設です。 介護保険制度が始まる2000年以前は、治療がなくても病院へ入院している社会的入院が問題となっていました。 退院できるけど生活する場がない人の受け皿として介護療養型医療施設が創設されましたが、医療の必要性の低い利用者も多く入院している状況は変わりませんでした。 医療費の圧迫や人手不足の問題もあることから、2023年度末で介護療養型医療施設は廃止されることになり、介護医療院が新設されることになりました。 サービスの内容 介護医療院で受けられるサービスには、介護サービスと医療サービスがあります。 介護サービス 介護医療院は同じ介護保険施設の枠組みにある特別養護老人ホームや、介護老人保健施設(老健)と同じように、食事や排泄、入浴など、その人に必要な介護を受けられます。 担当のケアマネジャーを中心に作成する施設サービス計画をもとに、日常生活上必要な介護やレクリエーション、機能訓練などが提供されています。 医療サービス 介護医療院では、たんの吸引や胃ろう、点滴、在宅酸素、褥瘡のケアなど 医療的なケアの対応ができる他、看取り介護も行われています。 入院して治療するほどではないが医療的な観察が必要な場合、特別養護老人ホームなどでは受け入れができない場合があるので、介護医療院が選択肢になるでしょう。 2つのタイプ 介護医療院にはⅠ型とⅡ型の2つのタイプがあります。 Ⅰ型は重篤な身体疾患のある方や身体合併症がある認知症高齢者が対象で 病院色の強いタイプ。 Ⅱ型はより安定している高齢者が対象で、老健のようにリハビリをして 家庭復帰をサポートしています。 Ⅰ型とⅡ型では、施設の人員や設備、運営基準に違いがあります。 (引用:厚生労働省「介護医療院の概要」) 対象者 入所の対象になるのは、要介護1〜要介護5の認定を受けた65歳以上の方と 40歳から64歳で特定疾病による要介護1〜要介護5の認定を受けている方。 要支援の方は対象外のため入所できません。 その人の状態によってⅠ型かⅡ型かが決まります。 介護医療院は、医療的なケアを提供する場なので、実際の入所者は医療依存度の高い高齢者が多い傾向です。 介護医療院に入所するメリットとデメリット 医療的なケアを受けながら長期療養できる介護医療院ですが、メリットだけではありません。 入所者本人にとってよい選択ができるようメリット、デメリットともに把握することが大切です。 メリット 介護医療院に入所するメリットは以下の3点です。 医療的なケアを受けられる 長期療養が可能で看取り介護も対応できる 生活の場なのでレクリエーションルームや談話コーナーがある デメリット デメリットは以下の3点です。 多床室は家具とカーテンで仕切られているだけでプライバシーの確保が不安 長期になると費用が高額になる まだ数が少なく、地域によっては選択肢が絞られる 施設によって特徴に違いがありますので、資料請求や見学をして情報収集することが大切です。 介護医療院の費用 介護医療院の費用は月額の利用料金のみで、入居金などの初期費用はかかりません。 医療的ケアを受けられることで、特別養護老人ホームに比べると高く設定されているので、入所前によく確認しましょう。 月額利用料金の内訳 介護医療院でかかる月額利用料金の内訳は以下のとおりです。 施設サービス費・介護加算 施設サービス費は要介護度ごとに設定されていて、他にも介護保険の負担割合や施設の形態によって金額が異なります。 表はⅠ型、Ⅱ型それぞれ1割負担の場合の金額です。( 記事執筆23年2月) Ⅰ型介護医療院サービス費(Ⅰ) 1割負担の場合の日額 要介護度 従来型個室 多床室 ユニット型個室 ユニット型個室的多床室 要介護1 694円 803円 820円 要介護2 802円 911円 928円 要介護3 1,035円 1,144円 1,161円 要介護4 1,134円 1,243円 1,260円 要介護5 1,223円 1,332円 1,349円 (参考:厚生労働省「どんなサービスがあるの? − 介護医療院」) Ⅱ型介護医療院サービス費(Ⅰ) 1割負担の場合の日額 要介護度 従来型個室 多床室 ユニット型個室 ユニット型個室的多床室 要介護1 649円 758円 819円 要介護2 743円 852円 919円 要介護3 947円 1,056円 1,135円 要介護4 1,034円 1,143円 1,227円 要介護5 1,112円 1,221円 1,310円 (参考:厚生労働省「どんなサービスがあるの? − 介護医療院」) 他にも施設の体制にかかる加算項目がありますので、説明を聞く際に確認が必要です。 居住費・食費 室料や光熱費にあたる居住費や、食材料費や調理費にあたる食費は各施設ごとに決められています。 厚生労働省が基準費用額を定めているので、以下をご確認ください。 基準費用額 居住費 多床室 377円 従来型個室 1,668円 ユニット型個室 2,006円 ユニット型個室的多床室 1,668円 食費 1,445円 (参考:全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議資料(令和3年3月9日)) 日常生活費 日常生活費は歯ブラシやティッシュペーパー、理美容や入れ歯の洗浄剤など、生活の中で必要になる費用です。 保険の適用にはならず実費負担となり、施設によって金額が異なるので 入所前に確認する項目の一つです。 月額利用料の目安 上記を参考に月額の目安を計算すると以下のようになります。 Ⅰ型 1割負担 要介護4 ユニット型個室の場合 →140,340円 + 日常生活費 Ⅱ型 1割負担 要介護3 多床室の場合 → 86,340円 + 日常生活費 介護保険の負担割合や要介護度、居室のタイプによって利用料金が大きくかわるので、負担が大きくなってしまう可能性もあります。 少しでも負担を抑えるために、次から介護医療院で使える減免制度について説明します。 介護医療院の減免制度 介護医療院の費用に関する減免制度は主に3つです。 支払いに不安のある場合は以下の制度を活用することで、自己負担額を低くすることができます。 介護保険負担限度額認定 介護医療院の費用のうち、食費と居住費が住民税の課税状況や年金額、預貯金などによって、段階的に減額されます。 段階によっては居住費と食費が半額程度になる場合もあります。 要件が複雑ですので、保険者となっている市区町村の介護保険窓口で対象になるのかどうか、確認してみるとよいでしょう。 高額介護サービス費 高額介護サービス費は、1カ月に支払った施設サービス費が所得に応じた負担限度額を超えた時に、超えた分が払い戻される制度です。 居住費や食費、日常生活費は対象にはなりません。 該当する時に市区町村から申請書が届きますので、必要事項を記載して提出します。 次回以降は自動で振り込まれますが、はじめに申請をしないともらえないので注意が必要です。 高額医療・高額介護合算制度 高額医療・高額介護合算制度は、1年間に支払った医療保険と介護保険の自己負担の合計額が、所得によって決められた限度額を超えた時に、超えた分が払い戻されます。 高額介護サービス費と同じように、対象者には申請用紙が届きますのでそれぞれの役所へ提出します。 介護医療院に入所する方法 [caption id="attachment_1968" align="alignnone" width="512"] A room in a nursing facility[/caption] 介護医療院に入所する流れは以下のようになります。 要介護認定を受ける 入院・入所中の病院や施設の相談員へ相談し介護医療院を探す 資料請求や見学をして施設へ直接申し込む 診療情報提供書や血液検査などのデータを元に介護医療院が入所判定を行う 入所前面談を行い、施設での生活や療養方針について確認する 入所 まとめ いかがでしたでしょうか。 本記事では介護医療院の概要やサービス内容、入所のメリットとデメリット、費用や入所する方法を解説しました。 介護医療院は医療的なケアを受けられて、長期療養できる介護保険施設 利用者の状態によってⅠ型とⅡ型に分けられる 対象になるのは65歳以上、もしくは40歳から64歳で特定疾病による 要介護1〜要介護5の認定を受けている方 介護医療院に入所するメリットは「医療的なケアを受けられる」 「長期療養が可能で看取り介護も対応できる」 「生活の場なのでレクリエーションルームや談話コーナーがある」 デメリットは「多床室は家具とカーテンで仕切られているだけで プライバシーの確保が不安」「長期になると費用が高額になる」 「まだ数が少なく、地域によっては選択肢が絞られる」 1カ月の費用の主な内訳は、施設サービス費+居住費+食費+日常生活費 利用料金の減免制度として介護保険負担限度額認定、高額介護サービス費 高額医療・高額介護合算制度などがある 介護医療院は医療的ケアも介護サービスも受けられます。 家族内、ケアマネジャー、入院・入所している病院や施設の相談員などとよく相談し、より良い選択をするようにしましょう。 最後までお読みいただきましてありがとうございます。