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2023年3月の記事一覧

  • 認知症介護基礎研修って何!?対象者と受講の方法について徹底解説!

    介護に携わる職員は、資格なしでも介護に携われていましたが、今後は無資格では携わる事ができません。 今回は無資格者必須の「認知症介護基礎研修」について説明します。 「認知症介護基礎研修」とは? 厚生労働省による令和3年度の介護報酬改定の取組の一環に「認知症への対応力向上に向けた取組の推進」という事項があります。 これは、介護に関わる全ての者の認知症対応力を向上させていく為、介護に直接携わる職員が認知症介護基礎研修を受講する為の措置を義務付けるとされています。 今までは、訪問系の介護サービス(訪問介護等)や福祉用具貸与(福祉用具レンタル)、居宅介護支援以外の介護サービスの職員は、介護の資格が無くても介護職として関わる事ができていました。 しかし、2024年4月以降において医療や福祉関係の資格が無い職員は認知症介護基礎研修を修了していないと介護に関わる職務が行えなくなります。 なぜ義務化になった? 昭和22年~24年生まれで第一次ベビーブーム時代に誕生した人達、つまり「団塊の世代」と呼ばれる人達が、75歳以上の後期高齢者となる2025年問題が背景にあります。 厚生労働省によると、認知症高齢者数は約10年前の2012年で462万人とされ、令和7年の2025年には約700万人、つまり65歳以上の高齢者の5人に1人とされています。 団塊の世代が後期高齢者になる2025年には、高齢者において認知症は特殊なものでは無く、誰が発症してもおかしくはない身近な病気となっているのです。 認知症発症の高齢者が増えるとされていても、実際に認知症に対する知識や技術について介護に携わるサービス事業所側の職員の全てが対応できるかと問われたならば、正直難しい面があるのも事実でした。 介護に関する資格を取得している者については、認知症ケアに関する知識や技術を学んでいますが、介護サービスによっては無資格で携われるものもあります。 ハイスピードで高齢化が進み、認知症高齢者も追随していく中で、介護に携わる全ての職員が認知症への理解を深め、介護する者を主体とするのではなく当の本人を主体としての介護を行い、認知症の有無に関わらず個の尊厳を保障した上で対応する力を付けるよう、国より義務づけられました。 今まで無資格で介護に直接携わっていた者は、現場で得た経験による知識や技術は当然ながら得ており、今後の職務において大切なものではあります。 しかし、高齢者が増えるこれからにおいて専門的な知識や技術対応力を今までもより一層必要とされる事になるのです。 認知症介護基礎研修の対象者は? 上記にも述べましたが、無資格で介護に直接携わっている介護サービス事業の職員は認知症介護基礎研修の対象者となります。 資格を必要とする訪問入浴を除く訪問系サービスや福祉用具貸与、居宅介護支援は対象外です。 ※訪問入浴介護は看護師(又は准看護師)と介護職員のチームで対応しますが、訪問入浴では介護職員は無資格でも可能である為、無資格者がいる場合は認知症介護基礎研修の対象となります。 ※通所介護で生活相談員を職務としている場合、社会福祉主事任用資格の保持のみであれば研修の対象となります。 2021年4月より義務化が始まりましたが、経過措置として3年間あり、2024年の4月より完全に施行されます。 無資格で介護に直接携わっている全介護サービス事業の対象職員は、完全施行の来年の4月までに早めに研修を修了するようにしましょう。 しかし、現在無資格で、介護職員初任者研修等の福祉資格を取得する為研修中にある方や、介護の養成施設、福祉系の学校で認知症に係る科目を受講している場合は、その資格の研修修了証明や卒業及び履修科目取得を証明できれば現在無資格状態であっても証明を条件として認知症介護基礎研修の対象外として差し支えないとされています。 また、3年の経過措置後に新たに介護サービスの職務に就くも、介護に関する資格を有していない無資格者は。介護サービス事業所に就いて1年間の猶予期間が設けられる期間内に研修を修了するようとされています。 2024年4月以降は、介護に直接携わる職務に就いている全ての者は、医療又は福祉資格を有している又は研修受講を修了している事が必須です。 つまり介護に関わる全ての職員が「何らかの形でも介護を行う全ての職員は認知症に対して知識や技術を得ている」という事になります。 「認知症介護基礎研修」を受講するには? 認知症介護基礎研修はすでに始まっています。 研修内容は講義と演習です。 研修対象者に該当するかどうかをまずは確認し、その上で職務先の介護サービス事業所に受講についての希望を提示し、申込みをしてみましょう。 研修はどんな形で行われる? 各都道府県によって受講の形は違いますが、自治体主体で実施する又は事業を委託して実施する形で行われています。 ・eラーニングでの受講 ・オンライン(Zoom等)を含めた集合型研修での受講 ・集合型半日とeラーニング半日での受講 各介護サービス事業所へ自治体より認知症介護基礎研修の実施の通達がされているので、資格を有さない研修対象者は事業所ごとの取り纏めで申し込む形となります。 研修期間は1日、6時間の受講で研修修了となり、修了証書が発行されます。 そのため、初心者研修よりも手軽に資格を取得できるのも大きな特徴です。 また、現在は全国的にeラーニングで受講できるところが増えているため、在宅で資格を取得できることが多いです。 自治体や委託事業団体によって異なりますが、研修費は1,000円から5,000円程度となっているようです。 また、認知症介護基礎研修は基本的に「介護に直接かかわる仕事についている方」が対象となっており、初任者研修のように誰でも取得できるものではないことを覚えておきましょう。 各自治体により受講条件や日程は異なる為、以下の内容の確認が必要です。 開催日がいつなのか 募集の受付はいつ頃か 受講に関してeラーニングならば機器の準備はできているか 集合型の場合は日程が調整できるか 受講予定している場合は、準備と余裕を持って対応できるようにしておきましょう。 「資格なし」だとどうなる? 上記でも述べましたが、2021年4月から2024年3月までは経過措置の3年にあたり、研修はその期間内に受講すれば修了証書が発行されます。 また無資格でも新規で介護に携わる職種に就いた場合は、1年間の猶予期間内に受講し修了すれば良いとされています。 それでも無資格のまま介護に直接携わる業務に就いていた場合はどうなるのでしょうか? 2024年4月より、新たに介護に直接携わる業務を行う職員が、1年の猶予期間内に研修を修了せずに無資格状態のまま職務にあたる事や、3年の経過措置の間に研修を受けず無資格状態を放置した場合は、人員配置基準において算定される介護職員とした介護サービス事業所は行政指導の対象となってしまいます。 研修の義務化という事は、当然ながら介護サービス事業所は、介護に直接携わる人員の把握・管理を行っていかなければならず、無資格者=義務を怠るとされる又は対象外の職務に就く=介護に直接携われなくなるという事になるのです。 ※介護に直接携わらない職員(施設調理、施設での掃除等の雑務のみ等)や介護の人員配置基準に算定されない職員(事務員等)は対象外ですので、研修を受ける必要はありません。 まとめ 今回は「認知症介護基礎研修」について説明致しました。 ・厚生労働省による令和3年度の介護報酬改定の取組に「認知症への対応力向上に向けた取組の推進」があり、介護に関わる全ての者の認知症対応力を向上させていく為、認知症介護基礎研修の受講を義務付けられた。 ・2024年4月以降は医療又は福祉資格が無い職員は、認知症介護基礎研修を修了していないと介護に直接携わる事ができなくなる。 ・団塊の世代が後期高齢者になる2025年には、高齢者において認知症は特殊なものでは無く 誰が発症してもおかしくはない身近な病気となっており、介護に携わる職員の認知症に対する知識や技術力の向上が求められている。 ・無資格者は認知症介護基礎研修の対象者であるが、資格を必要とする訪問入浴を除く訪問系サービスや福祉用具貸与居宅介護支援は対象外である。 ・研修を修了する為の経過措置は3年間で、経過措置後も新規で介護に直接携わる職員は1年間の猶予期間が設けられている。 ・研修の開催については各自治体が実施するものや、事業委託で実施するものがあり、受講もeラーニング研修や集合型研修等があり、対応は自治体によって異なる為に準備も含めて確認を必要とする。 ・受講を希望する場合は、介護サービス事業所へ希望を提示し、事業所毎の取り纏めで申し込む形となる。 ・研修費は1,000円から5,000円程度。 ・経過措置が終わり、完全施行した後も無資格のまま介護に直接携わる職員として職務に就いていた場合。介護サービス事業所は行政指導の対象となる。 介護に直接携わる職員で資格を有していない職員は、研修受講の措置が義務付けられ、現在は経過措置の期間にあります。 介護業務で忙しい中、1日程度ではありますが調整も要する為に受講には周りの協力も必要となります。 期間に猶予が有る内に、計画的に研修を終了できるように努めましょう。

  • 訪問介護中に緊急事態!同居家族がいる場合の対処方法をご紹介!

    訪問介護サービスの際に、利用者に同居家族がいたとしても 緊急事態に遭遇してしまう事があります。 今回は同居家族がいる場合に被介護者に緊急事態が起きた場合の事例を踏まえながら対処方法をご紹介します。 訪問介護サービスに入る前の基本と準備 訪問介護中に緊急事態!被介護者1人しかいないときはどうすればよい?でも紹介しましたが、訪問介護サービスに入る前には、利用者の情報を知る事から始まります。 ヘルパー側は勿論ですが利用者側にも確認をして頂き、情報に洩れや誤りが無いかどうか、双方認識する事が大事です。 ・必要書類の確認 ・サービス計画についての事前打合せ ※訪問介護サービスが生活援助中心であった場合 ・同居家族の状況、状態、問題点 ・各関係機関との連携、対応方法の確認 ヘルパーの基本的な心構えと準備(同居家族がいる場合) 社会人として基本的な、世間一般での礼節を弁える事や接遇マナーの遵守は当然です。 その上に利用者本人だけでなく、同居家族との関係性も直に構築していく上において、独居とはまた違う心構えや準備が必要になってきます。 訪問介護サービスに入る前のヘルパーとしていつもの準備にメモ類を準備しておく事は当然ですが、 「なぜ同居家族が居るにも拘らず訪問介護を要するのか?」 その背景・原因・問題点を書類面だけでなく実際に体面して確認する事が利用者の日常生活の維持において必要となります。 ケア会議等で書類打合せで得られる情報と、実際に会ってヘルパー自身が生活動作を確認し得られる情報とには差異があります。 そのため、状況を理解する上で異なる面がある可能性も高いです。 気付いたことや追加される情報等、メモ類に洩らす事が無い様に留めておく事が重要です。 同居家族がいる場合の訪問介護 一般的に同居家族と言われたら、「一緒に住んでいる世帯」と考える人は多いでしょう。 けれども、一口で「同居」や「家族」と言われても様々な形の「同居」や「家族」がいるものです。 訪問介護においての同居や家族の考え方については下記の表を参照して下さい。 〇同居とするもの ・同じ建物に利用者含めた家族が一緒に住み、暮らしている ・生活基盤は別でも、利用者の世帯と子達の世帯が同じ建物に住み、暮らしている ・建物は違うが利用者またはその家族の同一敷地内に住み、暮らしている   〇家族とするもの ・左記の同居とするものにある身内、親族、同居人 ※但し、義務教育修了までの15歳未満の中学生以下においては、訪問介護の生活援助ができる対象とする「家族」からは対象外   ※同居とするものにもありますが、2番目の利用者の世帯と子の世帯が住む、いわゆる二世帯住宅は、生活基盤や世帯主が別です。 特に深刻な問題がある訳では無いけれども、互いの生活に踏み込んでいない=援助とは別個として考えるように思う方もいるかもしれません。 しかし、介護保険においては、「一般的に援助を行う事が可能だとされる利用者との近い距離に住んでいる」事を指しているので 別世帯であっても同じ建物、近さにある場合は同居とするものに考えられます。 基本的には身体介護のみ可能 同居家族がいる場合で訪問介護サービスが認められるのは、身体介護に纏わるものです。 厚生労働省  各介護サービスについて「1.訪問介護」より 上記の表にもありますが、身体介護とは ①利用者の身体に直接接触して行う介助サービス ②利用者のADL(日常生活動作)、IADL(手段的日常生活動作) QOL(生活の質)や意欲の向上の為に利用者と共に行う 自立支援・重度化防止の為のサービス ③その他専門的知識・技術をもって行う利用者の日常生活上 社会生活上の為のサービス とされています。 身体介護は、同居家族がいても利用者が必要であると認められた場合は、サービスを計画し提供される事が可能です。 生活援助は条件によっては可能 基本的に、訪問介護は同居家族がいる場合では生活援助のサービスは提供できません。 但し、自立支援の観点において条件によっては生活援助が認められるものもあります。 障害、疾病がある場合 ①同居家族が身体または精神への障害を持っており、日常生活においての家事等が難しい場合 ②同居家族が病気やケガをしており、その為に日常生活においての家事等が難しい場合 その他やむを得ない場合 ①同居家族が仕事や学業等の為に日中不在にしており、同居家族が利用者へ日中に必要とする家事等ができないと認められる場合 ※同居家族が仕事や学業等の休日に当たる日や、朝夕の在宅が認められる時間においての生活援助は対象外 ②同居家族が要支援又は要介護認定を受けており、家事等を行う事が難しい状況の場合 ③同居家族と利用者との間に非常に深刻な問題があり、援助が難しい場合 ※「非常に深刻な問題」⇒介護放棄、虐待、血縁断絶状態などの状況下にある場合を指す ※厚生労働省  「同居家族等がいる場合における訪問介護サービス等の生活援助の取扱いについて」 参照 上記の様に「障害、疾病がある場合」「その他やむを得ない場合」という条件の下、生活援助が必要であると認められた場合は、サービス可能となる事もあります。 但し、生活援助の対象者はあくまでも利用者本人ですので、同居家族に対して同様のサービスは行えません。 こんな時はどうする? 色々な同居家族がいるんです 1.老々介護…そのサービスは本当に必要ですか? 緊急事態とまで言えるものではありませんが、夫婦それぞれ別のケアマネージャーが作成したケアプランによる訪問介護サービスが変更になったケースです。 実際、最初の生活援助にあった調理に関しては、長時間の立位が難しい為に訪問介護を利用するという事には問題はありませんでした。 掃除や片付けその後の室内での洗濯干しは今まで妻がしていた生活動作でもあった為、継続の意向が強くプランに組まれました。 ケアマネージャー側とサービス事業所側が、利用者側のニーズをきちんと確認し、本当に継続で良いのか、必要なものが他にあるかどうかを見定め、プランに反映しサービスを行う事で初めて連携が取れたと言えます。 隠されたニーズ・本質を見極めできなければ、万が一緊急事態に陥った時に対応が遅れる恐れがあるので注意しなければなりません。 2.ご家族も多忙ですが…日中独居が本当の独居になる 始めは同居家族が日中不在による日中独居でした。 1年後には月の半分以上家を空けていたり、家を出た状態でもあったりしたにも関わらず、同居家族による連絡が事業所側にはありませんでした。 利用者本人は「大丈夫大丈夫、できるできる。」が口癖で、近隣の方との会話やケアマネージャーによる月末のモニタリングでも、相談が無かった為に状況がスルーされていました。 そのままの状態であれば、本人のADLやIADLも低下しかねない事態です。 サービスを行う中で、利用者の状態や状況が本当に安定傾向なのか、在宅で日常生活が維持できるのかをきちんと確認することが重要です。 各事業所で保管する書類表面上だけの連携ではなく、各事業所が責任を持って対応する真の連携を図らなければなりません。 3.「良い親子関係だな」と思っていました。 家族関係が良いと思われていましたが、身内の入院をきっかけに誤った方向へ進んでしまい、日常生活が脅かされる事態になっていた件です。 利用者との関係は、踏み込む線引きが難しい面もあります。こういった緊急事態では解決に向けて専門的な要素も必要になりますので早い段階で関係各所への協力を要します。 プライバシー侵害になるのか、虐待防止へとなるのかは俯瞰して物事を見る力と慣れによる惰性の回避、日頃からの情報収集の蓄積が物を言います。 厳しい事を言いますが、もし何か問題に気付いたとして、担当しているヘルパー自身だけで何とかしよう解決しようとしてもできる事は何一つ無いのが現実なのです。 何等かの違和感を感じたり、異変を少しでも確認したりした際は、すぐに報告・連絡・相談して、関係各所専門担当者と連携の上。早く解決や改善される方向へ進んでいく事が何よりも大切です。 まとめ 今回は同居家族がいる場合に被介護者に緊急事態が起きた場合の事例を踏まえながら紹介しました。 ・訪問介護サービスへ入る前は同居家族がいる場合でも、基本や準備は同じである。 ・同居とするものとは「同じ建物に利用者含めた家族が一緒に住み、暮らしている」 「生活基盤は別でも、利用者の世帯と子達の世帯が同じ建物に住み、暮らしている」 「建物は違うが利用者またはその家族の同一敷地内に住み、暮らしている」を指している。 ・家族とするものとは「同居とするものにある身内、親族、同居人」の事をいう。 ・但し、義務教育修了までの15歳未満の中学生以下においては 訪問介護の生活援助ができる対象とする「家族」からは対象外とされる。 ・同居家族がいる場合で訪問介護サービスが認められるのは身体介護であるが、生活援助は障害や疾病がある場合とその他やむを得ない場合という条件があれば可能である。 ・同居家族がいる場合の訪問介護で様々な形の緊急事態のケースが発生するが、サービス事業所側やケアマネージャー側のみの連携では解決できないケースも多い。 地域との連携や医療機関との連携、地域包括支援センターや社会福祉協議会との連携自治体との連携が必要となる。 ・緊急事態を未然に防ぐ場合や緊急事態が起こってしまった場合は、何よりも「報告・連絡・相談」が現状改善や問題解決の一歩であり大切である。   家族という形は本来、協力し合うものという概念がありますが、何かと多忙だったり時代に応じた様々な生活スタイルによって、変貌しているのが現状です。 介護に関する法律や制度、方針が追加されたり変更されたりするのも、介護を必要とする利用者の生活や取り巻く環境が同じように変貌しているからです。 介護の基本理念は変わりませんが、家族という関係においても 不変のものと変化するものをきちんと見極めて対応できるようにしましょう。

  • 訪問介護中に緊急事態!被介護者1人しかいないときはどうすればよい?

    訪問介護で訪問した際に、ヘルパーなら一度は思わぬ緊急事態に遭遇してしまう経験をした事があるのではないでしょうか。 今回はそんな「独居利用者の場合、緊急事態時にどう対応する?」を事例を踏まえながら紹介します。 訪問介護サービスに入る前の基本 訪問介護サービスに入る場合、まずは利用者の情報を知る事から始まります。 それは独居、同居者家族がいる場合どちらのケースでも同じです。 ごく当たり前の事ですが、意外ときちんと押さえられていない事が多かったりします。 訪問介護サービス前に必要な情報を確認する書類は下記の図を参照して下さい。 基本的な礼節、メモ類の準備と押えるべき点 基本中の基本ではありますが、訪問介護サービスに入るという事は他人様のお宅に訪問する事なので世間一般での礼節は弁える事を忘れてはいけません。 あまりにも型苦しい、余所余所しい言動は今後、訪問介護で関係を築いていくには少々壁の様に感じるかもしれません。 しかし、あくまでも訪問介護サービスのヘルパーとして入る訳ですから、身内の様な気持ちで接する事は有っても馴れ馴れしい言動を表立って行うのは失礼に当たります。 また、訪問介護サービスに入る際にメモ類を準備しておく事で、今後の訪問介護においての注意事項や計画書又はアセスメント等の書類だけでは見えてこなかった利用者の情報をメモする事で洩らさず拾う事ができます。 個人情報であるが為に、踏み込んで良いラインと踏み止まるラインの線引きが難しい所ではあります。 しかし、これが緊急事態時や困難事例になりうる際に、その情報が対利用者の大事な引き出しとなり適切に対応できるものへと繋がるのです。 これは新規だけではなく、サービスの回数を経て数か月~数年と対応している熟練のヘルパーでも同じ事が言えるのですが、経験を積めば積む程なかなか拾わなくなってしまうのが現実だったりします。 礼節を弁えるのは勿論の事、書類を踏まえた上での利用者の状況や状態気付きをメモする=現場のヘルパーでしかできない事です。 何よりも俯瞰で物事を見る・気付く・対応する事が今後への最適な対応策であり、いざという時に揺らぐ事の無いヘルパー自身の力となります。 訪問介護、いざ実際は? 上記でも述べた通りですが、書類の確認や事前打合せやサービスに入ったら礼節を弁えた接遇マナーの遵守、利用者の状況や状態に応じての ほう・れん・そう(報告・連絡・相談)が重要です。 訪問介護では、利用者に応じてケアプランが立てられ、そのケアプランに沿った訪問介護計画書が作成されます。 そもそも訪問介護サービスは、40歳以上の人達が支払っている保険料を財源とする介護保険を使用して、介護が必要と認定された人達の在宅時に訪問し行われるものです。 言い換えれば、国の税金と利用者の一部負担で賄われている為、介護保険制度を遵守しなければなりませんし、介護の基本を根底にした上で臨機応変な対応が求められます。 基本に忠実にサービスを行う事ができたならば、思わぬ事態や状況に面しても対応できる力が備わっていると言えるでしょう。 独居であるが故に 訪問介護サービスの利用者には、独居の利用者も当然ながら居られるのですが、独居にも様々なタイプの方がいらっしゃいます。 ①長年一人で過ごされている身内のいない独居の方  ②理由が有って近年新しく独居になられた方  ③身内はいるけれども日中は一時的に独居となる方  ④遠方に身内がいる、年に数回は面会のある独居の方 独居とはその名の通り、一人で生活されている方なのですが 一人であるが故の強みと弱みが混在されています。 ①の長年一人で生活されていた方は、生活サイクルが確立されている為に訪問介護を利用する事に抵抗を感じる方もいらっしゃるようです。 利用者自身は自分で何もかもできていると思って生活していますので、第三者から見た場合と自身の実感とでは感覚のズレを生じる事もあります。 「自分でやろう」とする意欲を損なう事無く、本当にできない部分や生活面で困難となる部分が計画書には練られて作成されていますので、サービスを行いながら、実際の状況や状態はどうであるかきちんと確認をする方が良いでしょう。 ②と③はその方のケースにもよりますが、何等かの形でも近しく共に生活されていた(又はされている)形跡がある為、訪問介護利用に関しては理解頂ける事も多いようです。 ヘルパーが訪問介護サービスに入る際には声掛け確認を行いますが、話すというコミュニケーション方法に対して、割合友好的に捉えて貰えることが多いです。 そのため、利用者の困っている事の相談を受けたり、ちょっとした愚痴を聞いたりする等の手法が、距離を早めに縮める有効な方法である事も有ります。 しかしその反面、距離が縮まりすぎる事でチームを組んでサービスを行った時に、 「〇〇さんはこうしてくれた、ああしてくれたのに」と利用者から指摘される事になり易かったりする副作用があるのも忘れないようにしましょう。 ヘルパーも人ですから、介護保険で関われる限界点や枠がある事は理解していても、情というものに動かされてしまう気持ちは分かります。 しかし踏み込むラインと踏み込まないラインはしっかり守らなければなりません。 ④の場合、面会の回数や身内の住む距離の近さにもよるのですが、休みの度に顔を見せに来る身内がいらっしゃる場合は、比較的心身共に安定されている場合が多いようです。 春と秋のお彼岸時期や夏の盆休み冬の正月といった各季節に1回ずつの場合や、夏休みや正月の年2回といった本当に年数回片手に数えられる程の場合は、①~③がミックスされたような対応をする場合があります。 (「自身でできるから必要ない」と言われるも時間の経過と共に依存心を見せてくる等) いずれのケースにおいても、まずは基本を踏まえ、計画書にあるサービスを行い、その中で見つかる注意事項や新たな情報を洩らす事の無いように、何等かの形=メモ等に留め、介護サービス全体のチームで情報を共有して反映していく事が大切です。 こんな時はどうする?訪問したら〇〇だった! 1.訪問したら家にいない ※この日は「訪問介護の日である」事を伝えておいても利用者がどうしても買い物へ行きたいとの希望が強かったり、またお隣さんが一緒に付いて行って貰える上に一緒にお茶をしたいと希望が一致した為、事業所やケアマネに再々度連絡し状況を報告した所、今回はサービスを中止する形となりました。 2.訪問したら返事がない ※緊急連絡表には、①医療機関への連絡②家族・身内への連絡の順である上に、利用者の状態から本人の生命を最優先し、医療機関=主治医の指示に従って即行動をとった形です。 (医療機関へ搬送した後、②の家族・身内への連絡を行っています。) 事業所やケアマネへも連絡し、その後の対応については医療機関対応となるので、ヘルパーが介護で対応するのはそこまでとなりました。 ※利用者は誤嚥性肺炎と脱水を併発しており、病院に搬送した時には、高血圧であった利用者の血圧が急激に下がっている危険な状態であったとの事でした。 正しい治療をした結果、退院して現在も訪問介護を利用しながら在宅生活を続けられています。 3.予期せぬ天災と人災 ※訪問介護計画書にある通りにヘルパーは訪問しますが、今回の場合はヘルパーにも訪問中に土砂崩れに巻き込まれたり 河川氾濫による事故に遭遇する危険性が高い事と状況が明確である為、大雨による生活被害を確認する意味でも民生委員の協力を仰ぐ事となりました。 臨機応変力と地域連携力 独居利用者の訪問介護サービスで起こった緊急事態での遭遇事例の一部を挙げました。 いずれにおいても基本的な緊急連絡先の確認やアセスメントの理解、訪問介護計画書の備考欄に記載されていた注意事項をヘルパーがしっかり落とし込んでいたので対応できたとも言えます。 しかし、前触れもなく突然やってくる緊急事態に動揺はつきものです。 ヘルパーも人間ですので、慌てますし、不安を感じたり無理だと思ってしまう事も当然です。 ここで『訪問介護のヘルパーだから絶対こうしなくてはいけない、自分が何とかしないといけない』と思い込んでしまうのは良くありません。 窮地に立った時程、周りを見る、積み重ねていた経験と知恵を使う、チームや地域を頼る、分からなければ素直に尋ねるを行えば、結果はどうであれ解決策を得られるのです。 基本の確認、礼節を弁えた上での関係構築、メモによる状況状態の情報取得、得た情報の共有が緊急事態時を含めた介護力の維持向上に繋がるでしょう。 まとめ 今回は「緊急事態時にどう対応する?独居利用者の場合」を 事例を踏まえながら紹介しました。 ・訪問介護サービスに入る前には、必要書類(緊急連絡先、アセスメント、担当者会議録 ケアプラン、訪問介護計画書等)の確認や事前にサービスについての打合せから始める。 ・サービスにおいて基本的な礼節を弁えた対応は勿論の事、サービス前後やサービス中に 気付いた事項や利用者の言動についてメモ等する事で今後サービスを行う上での 貴重な情報を得る事ができ、チームで共有する事で連携やヘルパーの介護力の向上が図れる。 ・介護サービスは期間が長くなればなる程慣れが生じるが、どんな時でも基本に忠実にを 忘れず対応する。 ・訪問介護サービスの利用者には多くの独居利用者がおり、事情も様々で その対応も異なってくる。 ・訪問したら家にいない、訪問したら返事が無い、状況状態が急変している 天災や人災があった場合等、訪問介護において様々な緊急事態のケースがある。 ・どの緊急事態の場合でも、臨機応変力と地域連携力を養い積み重ねていれば 解決策が得られ対応できる。 信念を持って対応するのは良い事ですが 一歩対応を間違うとフォローの利かない状況に陥ってしまいます。 慌てるな、動揺するな、不安になるなとは言いませんが そういった状況になっても基本を忘れず 常日頃からのチェックを忘れずにいれば対応できるんだと 自信を持って訪問介護サービスを行いましょう。

  • 認知症介護基礎研修って何!?対象者と受講の方法について徹底解説!

    介護に携わる職員は、資格なしでも介護に携われていましたが、今後は無資格では携わる事ができません。 今回は無資格者必須の「認知症介護基礎研修」について説明します。 「認知症介護基礎研修」とは? 厚生労働省による令和3年度の介護報酬改定の取組の一環に「認知症への対応力向上に向けた取組の推進」という事項があります。 これは、介護に関わる全ての者の認知症対応力を向上させていく為、介護に直接携わる職員が認知症介護基礎研修を受講する為の措置を義務付けるとされています。 今までは、訪問系の介護サービス(訪問介護等)や福祉用具貸与(福祉用具レンタル)、居宅介護支援以外の介護サービスの職員は、介護の資格が無くても介護職として関わる事ができていました。 しかし、2024年4月以降において医療や福祉関係の資格が無い職員は認知症介護基礎研修を修了していないと介護に関わる職務が行えなくなります。 なぜ義務化になった? 昭和22年~24年生まれで第一次ベビーブーム時代に誕生した人達、つまり「団塊の世代」と呼ばれる人達が、75歳以上の後期高齢者となる2025年問題が背景にあります。 厚生労働省によると、認知症高齢者数は約10年前の2012年で462万人とされ、令和7年の2025年には約700万人、つまり65歳以上の高齢者の5人に1人とされています。 団塊の世代が後期高齢者になる2025年には、高齢者において認知症は特殊なものでは無く、誰が発症してもおかしくはない身近な病気となっているのです。 認知症発症の高齢者が増えるとされていても、実際に認知症に対する知識や技術について介護に携わるサービス事業所側の職員の全てが対応できるかと問われたならば、正直難しい面があるのも事実でした。 介護に関する資格を取得している者については、認知症ケアに関する知識や技術を学んでいますが、介護サービスによっては無資格で携われるものもあります。 ハイスピードで高齢化が進み、認知症高齢者も追随していく中で、介護に携わる全ての職員が認知症への理解を深め、介護する者を主体とするのではなく当の本人を主体としての介護を行い、認知症の有無に関わらず個の尊厳を保障した上で対応する力を付けるよう、国より義務づけられました。 今まで無資格で介護に直接携わっていた者は、現場で得た経験による知識や技術は当然ながら得ており、今後の職務において大切なものではあります。 しかし、高齢者が増えるこれからにおいて専門的な知識や技術対応力を今までもより一層必要とされる事になるのです。 認知症介護基礎研修の対象者は? 上記にも述べましたが、無資格で介護に直接携わっている介護サービス事業の職員は認知症介護基礎研修の対象者となります。 資格を必要とする訪問入浴を除く訪問系サービスや福祉用具貸与、居宅介護支援は対象外です。 ※訪問入浴介護は看護師(又は准看護師)と介護職員のチームで対応しますが、訪問入浴では介護職員は無資格でも可能である為、無資格者がいる場合は認知症介護基礎研修の対象となります。 ※通所介護で生活相談員を職務としている場合、社会福祉主事任用資格の保持のみであれば研修の対象となります。 2021年4月より義務化が始まりましたが、経過措置として3年間あり、2024年の4月より完全に施行されます。 無資格で介護に直接携わっている全介護サービス事業の対象職員は、完全施行の来年の4月までに早めに研修を修了するようにしましょう。 しかし、現在無資格で、介護職員初任者研修等の福祉資格を取得する為研修中にある方や、介護の養成施設、福祉系の学校で認知症に係る科目を受講している場合は、その資格の研修修了証明や卒業及び履修科目取得を証明できれば現在無資格状態であっても証明を条件として認知症介護基礎研修の対象外として差し支えないとされています。 また、3年の経過措置後に新たに介護サービスの職務に就くも、介護に関する資格を有していない無資格者は。介護サービス事業所に就いて1年間の猶予期間が設けられる期間内に研修を修了するようとされています。 2024年4月以降は、介護に直接携わる職務に就いている全ての者は、医療又は福祉資格を有している又は研修受講を修了している事が必須です。 つまり介護に関わる全ての職員が「何らかの形でも介護を行う全ての職員は認知症に対して知識や技術を得ている」という事になります。 「認知症介護基礎研修」を受講するには? 認知症介護基礎研修はすでに始まっています。 研修内容は講義と演習です。 研修対象者に該当するかどうかをまずは確認し、その上で職務先の介護サービス事業所に受講についての希望を提示し、申込みをしてみましょう。 研修はどんな形で行われる? 各都道府県によって受講の形は違いますが、自治体主体で実施する又は事業を委託して実施する形で行われています。 ・eラーニングでの受講 ・オンライン(Zoom等)を含めた集合型研修での受講 ・集合型半日とeラーニング半日での受講 各介護サービス事業所へ自治体より認知症介護基礎研修の実施の通達がされているので、資格を有さない研修対象者は事業所ごとの取り纏めで申し込む形となります。 研修期間は1日、6時間の受講で研修修了となり、修了証書が発行されます。 そのため、初心者研修よりも手軽に資格を取得できるのも大きな特徴です。 また、現在は全国的にeラーニングで受講できるところが増えているため、在宅で資格を取得できることが多いです。 自治体や委託事業団体によって異なりますが、研修費は1,000円から5,000円程度となっているようです。 また、認知症介護基礎研修は基本的に「介護に直接かかわる仕事についている方」が対象となっており、初任者研修のように誰でも取得できるものではないことを覚えておきましょう。 各自治体により受講条件や日程は異なる為、以下の内容の確認が必要です。 開催日がいつなのか 募集の受付はいつ頃か 受講に関してeラーニングならば機器の準備はできているか 集合型の場合は日程が調整できるか 受講予定している場合は、準備と余裕を持って対応できるようにしておきましょう。 「資格なし」だとどうなる? 上記でも述べましたが、2021年4月から2024年3月までは経過措置の3年にあたり、研修はその期間内に受講すれば修了証書が発行されます。 また無資格でも新規で介護に携わる職種に就いた場合は、1年間の猶予期間内に受講し修了すれば良いとされています。 それでも無資格のまま介護に直接携わる業務に就いていた場合はどうなるのでしょうか? 2024年4月より、新たに介護に直接携わる業務を行う職員が、1年の猶予期間内に研修を修了せずに無資格状態のまま職務にあたる事や、3年の経過措置の間に研修を受けず無資格状態を放置した場合は、人員配置基準において算定される介護職員とした介護サービス事業所は行政指導の対象となってしまいます。 研修の義務化という事は、当然ながら介護サービス事業所は、介護に直接携わる人員の把握・管理を行っていかなければならず、無資格者=義務を怠るとされる又は対象外の職務に就く=介護に直接携われなくなるという事になるのです。 ※介護に直接携わらない職員(施設調理、施設での掃除等の雑務のみ等)や介護の人員配置基準に算定されない職員(事務員等)は対象外ですので、研修を受ける必要はありません。 まとめ 今回は「認知症介護基礎研修」について説明致しました。 ・厚生労働省による令和3年度の介護報酬改定の取組に「認知症への対応力向上に向けた取組の推進」があり、介護に関わる全ての者の認知症対応力を向上させていく為、認知症介護基礎研修の受講を義務付けられた。 ・2024年4月以降は医療又は福祉資格が無い職員は、認知症介護基礎研修を修了していないと介護に直接携わる事ができなくなる。 ・団塊の世代が後期高齢者になる2025年には、高齢者において認知症は特殊なものでは無く 誰が発症してもおかしくはない身近な病気となっており、介護に携わる職員の認知症に対する知識や技術力の向上が求められている。 ・無資格者は認知症介護基礎研修の対象者であるが、資格を必要とする訪問入浴を除く訪問系サービスや福祉用具貸与居宅介護支援は対象外である。 ・研修を修了する為の経過措置は3年間で、経過措置後も新規で介護に直接携わる職員は1年間の猶予期間が設けられている。 ・研修の開催については各自治体が実施するものや、事業委託で実施するものがあり、受講もeラーニング研修や集合型研修等があり、対応は自治体によって異なる為に準備も含めて確認を必要とする。 ・受講を希望する場合は、介護サービス事業所へ希望を提示し、事業所毎の取り纏めで申し込む形となる。 ・研修費は1,000円から5,000円程度。 ・経過措置が終わり、完全施行した後も無資格のまま介護に直接携わる職員として職務に就いていた場合。介護サービス事業所は行政指導の対象となる。 介護に直接携わる職員で資格を有していない職員は、研修受講の措置が義務付けられ、現在は経過措置の期間にあります。 介護業務で忙しい中、1日程度ではありますが調整も要する為に受講には周りの協力も必要となります。 期間に猶予が有る内に、計画的に研修を終了できるように努めましょう。

  • 訪問介護中に緊急事態!同居家族がいる場合の対処方法をご紹介!

    訪問介護サービスの際に、利用者に同居家族がいたとしても 緊急事態に遭遇してしまう事があります。 今回は同居家族がいる場合に被介護者に緊急事態が起きた場合の事例を踏まえながら対処方法をご紹介します。 訪問介護サービスに入る前の基本と準備 訪問介護中に緊急事態!被介護者1人しかいないときはどうすればよい?でも紹介しましたが、訪問介護サービスに入る前には、利用者の情報を知る事から始まります。 ヘルパー側は勿論ですが利用者側にも確認をして頂き、情報に洩れや誤りが無いかどうか、双方認識する事が大事です。 ・必要書類の確認 ・サービス計画についての事前打合せ ※訪問介護サービスが生活援助中心であった場合 ・同居家族の状況、状態、問題点 ・各関係機関との連携、対応方法の確認 ヘルパーの基本的な心構えと準備(同居家族がいる場合) 社会人として基本的な、世間一般での礼節を弁える事や接遇マナーの遵守は当然です。 その上に利用者本人だけでなく、同居家族との関係性も直に構築していく上において、独居とはまた違う心構えや準備が必要になってきます。 訪問介護サービスに入る前のヘルパーとしていつもの準備にメモ類を準備しておく事は当然ですが、 「なぜ同居家族が居るにも拘らず訪問介護を要するのか?」 その背景・原因・問題点を書類面だけでなく実際に体面して確認する事が利用者の日常生活の維持において必要となります。 ケア会議等で書類打合せで得られる情報と、実際に会ってヘルパー自身が生活動作を確認し得られる情報とには差異があります。 そのため、状況を理解する上で異なる面がある可能性も高いです。 気付いたことや追加される情報等、メモ類に洩らす事が無い様に留めておく事が重要です。 同居家族がいる場合の訪問介護 一般的に同居家族と言われたら、「一緒に住んでいる世帯」と考える人は多いでしょう。 けれども、一口で「同居」や「家族」と言われても様々な形の「同居」や「家族」がいるものです。 訪問介護においての同居や家族の考え方については下記の表を参照して下さい。 〇同居とするもの ・同じ建物に利用者含めた家族が一緒に住み、暮らしている ・生活基盤は別でも、利用者の世帯と子達の世帯が同じ建物に住み、暮らしている ・建物は違うが利用者またはその家族の同一敷地内に住み、暮らしている   〇家族とするもの ・左記の同居とするものにある身内、親族、同居人 ※但し、義務教育修了までの15歳未満の中学生以下においては、訪問介護の生活援助ができる対象とする「家族」からは対象外   ※同居とするものにもありますが、2番目の利用者の世帯と子の世帯が住む、いわゆる二世帯住宅は、生活基盤や世帯主が別です。 特に深刻な問題がある訳では無いけれども、互いの生活に踏み込んでいない=援助とは別個として考えるように思う方もいるかもしれません。 しかし、介護保険においては、「一般的に援助を行う事が可能だとされる利用者との近い距離に住んでいる」事を指しているので 別世帯であっても同じ建物、近さにある場合は同居とするものに考えられます。 基本的には身体介護のみ可能 同居家族がいる場合で訪問介護サービスが認められるのは、身体介護に纏わるものです。 厚生労働省  各介護サービスについて「1.訪問介護」より 上記の表にもありますが、身体介護とは ①利用者の身体に直接接触して行う介助サービス ②利用者のADL(日常生活動作)、IADL(手段的日常生活動作) QOL(生活の質)や意欲の向上の為に利用者と共に行う 自立支援・重度化防止の為のサービス ③その他専門的知識・技術をもって行う利用者の日常生活上 社会生活上の為のサービス とされています。 身体介護は、同居家族がいても利用者が必要であると認められた場合は、サービスを計画し提供される事が可能です。 生活援助は条件によっては可能 基本的に、訪問介護は同居家族がいる場合では生活援助のサービスは提供できません。 但し、自立支援の観点において条件によっては生活援助が認められるものもあります。 障害、疾病がある場合 ①同居家族が身体または精神への障害を持っており、日常生活においての家事等が難しい場合 ②同居家族が病気やケガをしており、その為に日常生活においての家事等が難しい場合 その他やむを得ない場合 ①同居家族が仕事や学業等の為に日中不在にしており、同居家族が利用者へ日中に必要とする家事等ができないと認められる場合 ※同居家族が仕事や学業等の休日に当たる日や、朝夕の在宅が認められる時間においての生活援助は対象外 ②同居家族が要支援又は要介護認定を受けており、家事等を行う事が難しい状況の場合 ③同居家族と利用者との間に非常に深刻な問題があり、援助が難しい場合 ※「非常に深刻な問題」⇒介護放棄、虐待、血縁断絶状態などの状況下にある場合を指す ※厚生労働省  「同居家族等がいる場合における訪問介護サービス等の生活援助の取扱いについて」 参照 上記の様に「障害、疾病がある場合」「その他やむを得ない場合」という条件の下、生活援助が必要であると認められた場合は、サービス可能となる事もあります。 但し、生活援助の対象者はあくまでも利用者本人ですので、同居家族に対して同様のサービスは行えません。 こんな時はどうする? 色々な同居家族がいるんです 1.老々介護…そのサービスは本当に必要ですか? 緊急事態とまで言えるものではありませんが、夫婦それぞれ別のケアマネージャーが作成したケアプランによる訪問介護サービスが変更になったケースです。 実際、最初の生活援助にあった調理に関しては、長時間の立位が難しい為に訪問介護を利用するという事には問題はありませんでした。 掃除や片付けその後の室内での洗濯干しは今まで妻がしていた生活動作でもあった為、継続の意向が強くプランに組まれました。 ケアマネージャー側とサービス事業所側が、利用者側のニーズをきちんと確認し、本当に継続で良いのか、必要なものが他にあるかどうかを見定め、プランに反映しサービスを行う事で初めて連携が取れたと言えます。 隠されたニーズ・本質を見極めできなければ、万が一緊急事態に陥った時に対応が遅れる恐れがあるので注意しなければなりません。 2.ご家族も多忙ですが…日中独居が本当の独居になる 始めは同居家族が日中不在による日中独居でした。 1年後には月の半分以上家を空けていたり、家を出た状態でもあったりしたにも関わらず、同居家族による連絡が事業所側にはありませんでした。 利用者本人は「大丈夫大丈夫、できるできる。」が口癖で、近隣の方との会話やケアマネージャーによる月末のモニタリングでも、相談が無かった為に状況がスルーされていました。 そのままの状態であれば、本人のADLやIADLも低下しかねない事態です。 サービスを行う中で、利用者の状態や状況が本当に安定傾向なのか、在宅で日常生活が維持できるのかをきちんと確認することが重要です。 各事業所で保管する書類表面上だけの連携ではなく、各事業所が責任を持って対応する真の連携を図らなければなりません。 3.「良い親子関係だな」と思っていました。 家族関係が良いと思われていましたが、身内の入院をきっかけに誤った方向へ進んでしまい、日常生活が脅かされる事態になっていた件です。 利用者との関係は、踏み込む線引きが難しい面もあります。こういった緊急事態では解決に向けて専門的な要素も必要になりますので早い段階で関係各所への協力を要します。 プライバシー侵害になるのか、虐待防止へとなるのかは俯瞰して物事を見る力と慣れによる惰性の回避、日頃からの情報収集の蓄積が物を言います。 厳しい事を言いますが、もし何か問題に気付いたとして、担当しているヘルパー自身だけで何とかしよう解決しようとしてもできる事は何一つ無いのが現実なのです。 何等かの違和感を感じたり、異変を少しでも確認したりした際は、すぐに報告・連絡・相談して、関係各所専門担当者と連携の上。早く解決や改善される方向へ進んでいく事が何よりも大切です。 まとめ 今回は同居家族がいる場合に被介護者に緊急事態が起きた場合の事例を踏まえながら紹介しました。 ・訪問介護サービスへ入る前は同居家族がいる場合でも、基本や準備は同じである。 ・同居とするものとは「同じ建物に利用者含めた家族が一緒に住み、暮らしている」 「生活基盤は別でも、利用者の世帯と子達の世帯が同じ建物に住み、暮らしている」 「建物は違うが利用者またはその家族の同一敷地内に住み、暮らしている」を指している。 ・家族とするものとは「同居とするものにある身内、親族、同居人」の事をいう。 ・但し、義務教育修了までの15歳未満の中学生以下においては 訪問介護の生活援助ができる対象とする「家族」からは対象外とされる。 ・同居家族がいる場合で訪問介護サービスが認められるのは身体介護であるが、生活援助は障害や疾病がある場合とその他やむを得ない場合という条件があれば可能である。 ・同居家族がいる場合の訪問介護で様々な形の緊急事態のケースが発生するが、サービス事業所側やケアマネージャー側のみの連携では解決できないケースも多い。 地域との連携や医療機関との連携、地域包括支援センターや社会福祉協議会との連携自治体との連携が必要となる。 ・緊急事態を未然に防ぐ場合や緊急事態が起こってしまった場合は、何よりも「報告・連絡・相談」が現状改善や問題解決の一歩であり大切である。   家族という形は本来、協力し合うものという概念がありますが、何かと多忙だったり時代に応じた様々な生活スタイルによって、変貌しているのが現状です。 介護に関する法律や制度、方針が追加されたり変更されたりするのも、介護を必要とする利用者の生活や取り巻く環境が同じように変貌しているからです。 介護の基本理念は変わりませんが、家族という関係においても 不変のものと変化するものをきちんと見極めて対応できるようにしましょう。

  • 訪問介護中に緊急事態!被介護者1人しかいないときはどうすればよい?

    訪問介護で訪問した際に、ヘルパーなら一度は思わぬ緊急事態に遭遇してしまう経験をした事があるのではないでしょうか。 今回はそんな「独居利用者の場合、緊急事態時にどう対応する?」を事例を踏まえながら紹介します。 訪問介護サービスに入る前の基本 訪問介護サービスに入る場合、まずは利用者の情報を知る事から始まります。 それは独居、同居者家族がいる場合どちらのケースでも同じです。 ごく当たり前の事ですが、意外ときちんと押さえられていない事が多かったりします。 訪問介護サービス前に必要な情報を確認する書類は下記の図を参照して下さい。 基本的な礼節、メモ類の準備と押えるべき点 基本中の基本ではありますが、訪問介護サービスに入るという事は他人様のお宅に訪問する事なので世間一般での礼節は弁える事を忘れてはいけません。 あまりにも型苦しい、余所余所しい言動は今後、訪問介護で関係を築いていくには少々壁の様に感じるかもしれません。 しかし、あくまでも訪問介護サービスのヘルパーとして入る訳ですから、身内の様な気持ちで接する事は有っても馴れ馴れしい言動を表立って行うのは失礼に当たります。 また、訪問介護サービスに入る際にメモ類を準備しておく事で、今後の訪問介護においての注意事項や計画書又はアセスメント等の書類だけでは見えてこなかった利用者の情報をメモする事で洩らさず拾う事ができます。 個人情報であるが為に、踏み込んで良いラインと踏み止まるラインの線引きが難しい所ではあります。 しかし、これが緊急事態時や困難事例になりうる際に、その情報が対利用者の大事な引き出しとなり適切に対応できるものへと繋がるのです。 これは新規だけではなく、サービスの回数を経て数か月~数年と対応している熟練のヘルパーでも同じ事が言えるのですが、経験を積めば積む程なかなか拾わなくなってしまうのが現実だったりします。 礼節を弁えるのは勿論の事、書類を踏まえた上での利用者の状況や状態気付きをメモする=現場のヘルパーでしかできない事です。 何よりも俯瞰で物事を見る・気付く・対応する事が今後への最適な対応策であり、いざという時に揺らぐ事の無いヘルパー自身の力となります。 訪問介護、いざ実際は? 上記でも述べた通りですが、書類の確認や事前打合せやサービスに入ったら礼節を弁えた接遇マナーの遵守、利用者の状況や状態に応じての ほう・れん・そう(報告・連絡・相談)が重要です。 訪問介護では、利用者に応じてケアプランが立てられ、そのケアプランに沿った訪問介護計画書が作成されます。 そもそも訪問介護サービスは、40歳以上の人達が支払っている保険料を財源とする介護保険を使用して、介護が必要と認定された人達の在宅時に訪問し行われるものです。 言い換えれば、国の税金と利用者の一部負担で賄われている為、介護保険制度を遵守しなければなりませんし、介護の基本を根底にした上で臨機応変な対応が求められます。 基本に忠実にサービスを行う事ができたならば、思わぬ事態や状況に面しても対応できる力が備わっていると言えるでしょう。 独居であるが故に 訪問介護サービスの利用者には、独居の利用者も当然ながら居られるのですが、独居にも様々なタイプの方がいらっしゃいます。 ①長年一人で過ごされている身内のいない独居の方  ②理由が有って近年新しく独居になられた方  ③身内はいるけれども日中は一時的に独居となる方  ④遠方に身内がいる、年に数回は面会のある独居の方 独居とはその名の通り、一人で生活されている方なのですが 一人であるが故の強みと弱みが混在されています。 ①の長年一人で生活されていた方は、生活サイクルが確立されている為に訪問介護を利用する事に抵抗を感じる方もいらっしゃるようです。 利用者自身は自分で何もかもできていると思って生活していますので、第三者から見た場合と自身の実感とでは感覚のズレを生じる事もあります。 「自分でやろう」とする意欲を損なう事無く、本当にできない部分や生活面で困難となる部分が計画書には練られて作成されていますので、サービスを行いながら、実際の状況や状態はどうであるかきちんと確認をする方が良いでしょう。 ②と③はその方のケースにもよりますが、何等かの形でも近しく共に生活されていた(又はされている)形跡がある為、訪問介護利用に関しては理解頂ける事も多いようです。 ヘルパーが訪問介護サービスに入る際には声掛け確認を行いますが、話すというコミュニケーション方法に対して、割合友好的に捉えて貰えることが多いです。 そのため、利用者の困っている事の相談を受けたり、ちょっとした愚痴を聞いたりする等の手法が、距離を早めに縮める有効な方法である事も有ります。 しかしその反面、距離が縮まりすぎる事でチームを組んでサービスを行った時に、 「〇〇さんはこうしてくれた、ああしてくれたのに」と利用者から指摘される事になり易かったりする副作用があるのも忘れないようにしましょう。 ヘルパーも人ですから、介護保険で関われる限界点や枠がある事は理解していても、情というものに動かされてしまう気持ちは分かります。 しかし踏み込むラインと踏み込まないラインはしっかり守らなければなりません。 ④の場合、面会の回数や身内の住む距離の近さにもよるのですが、休みの度に顔を見せに来る身内がいらっしゃる場合は、比較的心身共に安定されている場合が多いようです。 春と秋のお彼岸時期や夏の盆休み冬の正月といった各季節に1回ずつの場合や、夏休みや正月の年2回といった本当に年数回片手に数えられる程の場合は、①~③がミックスされたような対応をする場合があります。 (「自身でできるから必要ない」と言われるも時間の経過と共に依存心を見せてくる等) いずれのケースにおいても、まずは基本を踏まえ、計画書にあるサービスを行い、その中で見つかる注意事項や新たな情報を洩らす事の無いように、何等かの形=メモ等に留め、介護サービス全体のチームで情報を共有して反映していく事が大切です。 こんな時はどうする?訪問したら〇〇だった! 1.訪問したら家にいない ※この日は「訪問介護の日である」事を伝えておいても利用者がどうしても買い物へ行きたいとの希望が強かったり、またお隣さんが一緒に付いて行って貰える上に一緒にお茶をしたいと希望が一致した為、事業所やケアマネに再々度連絡し状況を報告した所、今回はサービスを中止する形となりました。 2.訪問したら返事がない ※緊急連絡表には、①医療機関への連絡②家族・身内への連絡の順である上に、利用者の状態から本人の生命を最優先し、医療機関=主治医の指示に従って即行動をとった形です。 (医療機関へ搬送した後、②の家族・身内への連絡を行っています。) 事業所やケアマネへも連絡し、その後の対応については医療機関対応となるので、ヘルパーが介護で対応するのはそこまでとなりました。 ※利用者は誤嚥性肺炎と脱水を併発しており、病院に搬送した時には、高血圧であった利用者の血圧が急激に下がっている危険な状態であったとの事でした。 正しい治療をした結果、退院して現在も訪問介護を利用しながら在宅生活を続けられています。 3.予期せぬ天災と人災 ※訪問介護計画書にある通りにヘルパーは訪問しますが、今回の場合はヘルパーにも訪問中に土砂崩れに巻き込まれたり 河川氾濫による事故に遭遇する危険性が高い事と状況が明確である為、大雨による生活被害を確認する意味でも民生委員の協力を仰ぐ事となりました。 臨機応変力と地域連携力 独居利用者の訪問介護サービスで起こった緊急事態での遭遇事例の一部を挙げました。 いずれにおいても基本的な緊急連絡先の確認やアセスメントの理解、訪問介護計画書の備考欄に記載されていた注意事項をヘルパーがしっかり落とし込んでいたので対応できたとも言えます。 しかし、前触れもなく突然やってくる緊急事態に動揺はつきものです。 ヘルパーも人間ですので、慌てますし、不安を感じたり無理だと思ってしまう事も当然です。 ここで『訪問介護のヘルパーだから絶対こうしなくてはいけない、自分が何とかしないといけない』と思い込んでしまうのは良くありません。 窮地に立った時程、周りを見る、積み重ねていた経験と知恵を使う、チームや地域を頼る、分からなければ素直に尋ねるを行えば、結果はどうであれ解決策を得られるのです。 基本の確認、礼節を弁えた上での関係構築、メモによる状況状態の情報取得、得た情報の共有が緊急事態時を含めた介護力の維持向上に繋がるでしょう。 まとめ 今回は「緊急事態時にどう対応する?独居利用者の場合」を 事例を踏まえながら紹介しました。 ・訪問介護サービスに入る前には、必要書類(緊急連絡先、アセスメント、担当者会議録 ケアプラン、訪問介護計画書等)の確認や事前にサービスについての打合せから始める。 ・サービスにおいて基本的な礼節を弁えた対応は勿論の事、サービス前後やサービス中に 気付いた事項や利用者の言動についてメモ等する事で今後サービスを行う上での 貴重な情報を得る事ができ、チームで共有する事で連携やヘルパーの介護力の向上が図れる。 ・介護サービスは期間が長くなればなる程慣れが生じるが、どんな時でも基本に忠実にを 忘れず対応する。 ・訪問介護サービスの利用者には多くの独居利用者がおり、事情も様々で その対応も異なってくる。 ・訪問したら家にいない、訪問したら返事が無い、状況状態が急変している 天災や人災があった場合等、訪問介護において様々な緊急事態のケースがある。 ・どの緊急事態の場合でも、臨機応変力と地域連携力を養い積み重ねていれば 解決策が得られ対応できる。 信念を持って対応するのは良い事ですが 一歩対応を間違うとフォローの利かない状況に陥ってしまいます。 慌てるな、動揺するな、不安になるなとは言いませんが そういった状況になっても基本を忘れず 常日頃からのチェックを忘れずにいれば対応できるんだと 自信を持って訪問介護サービスを行いましょう。