成年後見制度にかかる費用とは?制度の種類や費用のシュミレーションを解説!

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narumi

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「将来に備えて任意後見制度を利用しようと考えてるけど費用はいくらかかるの?」

「認知症になった親のために法定後見制度を利用したいけど
いくらかかるんだろう?」

そんな不安や疑問を抱えていませんか?

この記事では成年後見制度にかかる費用について、分かりやすく解説していきます。

そもそも成年後見制度ってなに?

成年後見制度とは「認知症」や「障害」などにより判断能力が不十分になった人を守る制度になります。

大切な財産を詐欺などから守ることはもちろんですが、病院の受診や介護施設の契約時など、1人で判断することが難しい時に後見人がサポートしてくれる制度です。

そんな成年後見制度ですが「任意後見制度」と「法定後見制度」の2種類に分かれます。

任意後見制度とは?

任意後見制度とは本人の判断能力十分なうちに「後見人(助けてくれる人)」と「支援して欲しい内容」を決めておく制度になります。

制度を利用する人が元気なうちに将来に備える仕組みです。

法定後見制度とは?

法定後見制度とは認知症などにより既に判断能力が不十分になった人に対して、家庭裁判所が後見人を選任する制度です。

既に判断能力が不十分になっているため、本人の意向を汲み取ることは困難になります。

また、法定後見制度は本人の判断能力に応じて「補助」「保佐」「後見」の3種類の類型に分類されます。

法定後見制度にかかる費用は?

法定後見制度にかかる費用には、最初の手続き時のみ発生する「初期費用」と、後見人への報酬など「継続的に発生する費用」の2つに分かれます。

法定後見制度の手続きに発生する初期費用

法定後見制度では本人の判断能力が衰えた時に「この人には助け(後見人)が必要だ」と判断した人が、家庭裁判所に申立を行います。

その家庭裁判所への申立の際に費用が発生します。

【家庭裁判所への申立てにかかる費用】

項目金額備考
申立て手数料800~2,400円・類型が補助の場合、補助人への代理権と同意権を付与する申立てが必要なため追加で1,600円(各800円)が必要になります。
・保佐の場合も必要に応じて代理権と同意権が必要になる場合があります
戸籍謄本450円
住民票300円
登記されていないことの証明書300円本人が既に成年後見制度を利用してないことを確認するための証明書
医師の診断書5,000~10,000円
不動産登記簿謄本600円本人が不動産を所有する場合に必要
固定資産評価証明書400円本人が不動産を所有する場合に必要
郵便切手代4,000~5,000円
登記費用手数料2,600円後見・保佐・補助いずれの類型でも同額
鑑定費用5万~10万裁判所が必要と判断した場合。発生するのは希
司法書士などに手続きを依頼した場合10万~20万手続きを自分で行うことは可能ですが、弁護士や司法書士などへ依頼することも可能です

以上の項目を合計すると約2万円前後の費用です。

※別途手続きを司法書士などへ依頼した場合は追加で10万〜20万の費用が発生します。

法定後見制度の継続的に発生する費用

後見人の業務が開始すると、後見人に対して報酬を支払う義務が発生します。

毎月発生する報酬には2種類あります。

  1. 基本報酬:後見人への報酬
  2. 成年後見監督人への報酬:成年後見監督人が選任されている場合に発生

※成年後見監督人は後見人がきちんと業務をしているか監督する立場にあります。

それでは2つの報酬の相場を確認していきましょう。

①基本報酬(後見人への報酬)の相場

基本報酬は本人の管理してる財産額により決められるのが一般的になります。

また管轄の家庭裁判所により報酬額にバラツキがあるため確認しておきましょう。

管理財産の額月額の報酬額
1,000万円未満月額2万円
1,000万円~5,000万円月額3~4万円
5,000万円以上月額5~6万円

③成年後見監督人に対する報酬

成年後見人への報酬と同様に管理している財産額によって相場が変わるのが一般的です。

管理財産の額月額の報酬額
5,000万円未満月額1~2万円
5,000万円以上月額2.5~3万円

法定後見制度の費用シュミレーション

実際に法定後見制度を利用した際にいくら費用が必要か見ていきましょう。

イメージしやすいようにモデルケースを設定します。

【Aさん80歳】……類型が補助の場合

財産1,000万未満 / 申立て手続きを司法書士に依頼 / 成年後見監督人を選任

Aさんをモデルに初期費用と継続的に発生する費用を確認していきましょう。

①初期費用(家庭裁判所への申立て費用)

  • 家庭裁判所への申立てにかかる費用 ➡ 約2万円前後

※鑑定費用は発生しないと想定しました。
理由…鑑定が行われるのは希で、発生する割合は例年1割未満のため。

  • 作成などの手続きを司法書士に依頼 ➡ 150,000円

上記の費用を合算すると、およそ17万円が初期の費用として発生する計算になります。

②継続的に発生する費用

  • 成年後見人への報酬 ➡ 月額2万円程度
  • 成年後見監督人への報酬 ➡ 月額2万円程度

上記の費用を合算すると毎月4万円程度の支払いが発生する計算になります。

年間にすると48万円の支出になり、決して安い金額とは言えません。

仮に亡くなるまでの期間を20年と想定した場合、960万円の支払が必要になる計算です。

任意後見制度にかかる費用は?

ここからは任意後見制度にかかわる費用について見ていきます。

任意後見制度の初期費用

任意後見制度の初期費用には判断能力が十分なうちに発生する
「任意後見契約書の作成費用」と、判断能力が衰えたときに発生する「家庭裁判所への申立て費用」の2つからなります。

時間をおいて2段階で費用が発生するイメージです。

①任意後見契約書の作成費用

任意後見制度では判断能力が十分なうち、任意後見人を定める任意後見契約を結ぶ必要があります。

【任意後見契約書の作成費用】

項目金額備考
公正証書作成基本手数料11,000円・公証役場への手数料

・4枚を超える場合は1枚ごとに250円追加

印鑑登録証明書300円
戸籍謄本450円
住民票300円
正本等の作成手数料250円1枚あたり250円
登記嘱託手数料1,400円
郵便切手代540円
登記手数料2,600円法務局へ納める印紙代
司法書士に依頼した場合5~10万手続きを司法書士に依頼した場合に発生します

以上の項目を合計すると約1.7万円前後の費用になります。

※別途手続きを司法書士などへ依頼した場合は追加で5万〜10万の費用が発生します。

②家庭裁判所への申立てにかかる費用

実際に本人の判断能力が低下し後見人が必要になったら、任意後見人が家庭裁判所に対して
任意後見監督人選任の申立を行う必要があります。

任意後見制度では任意後見監督人(後見人の監督役)を選任する必要があります。

【家庭裁判所への申立てにかかる費用】

項目金額備考
任意後見監督人選任申立て手数料800円
後見登記手数料1,400円
戸籍謄本450円
住民票300円
後見登記事項証明書550円オンライン請求の場合380円
医師の診断書5,000~10,000円
不動産登記簿謄本600円本人が不動産を所有する場合
固定資産評価証明書400円本人が不動産を所有する場合
郵便切手代4,000~5,000円
鑑定費用10万~10万裁判所が必要と判断した場合。発生するのは希
司法書士に依頼した場合10万~20万手続きを司法書士に依頼した場合に発生します

以上の項目を合計すると約2万円前後の費用になります。

※別途手続きを司法書士などへ依頼した場合は追加で10万〜20万の費用が発生します。

任意後見制度の継続的に発生する費用

任意後見制度の継続的に発生する費用には基本報酬(後見人への報酬)と
後見監督人への報酬があります。

①基本報酬(後見人への報酬)

任意後見人への報酬は本人と後見人候補者で事前に取り決めた金額になります。

一般の人が後見人になる場合、2万円程度が報酬の相場です。

家族に後見人を依頼するのであれば、0円(無料)になる場合もあります。

弁護士や司法書士などに依頼する場合、管理財産額により報酬が変動するのが一般的です。

【後見人に司法書士などの士業を選任した場合】

管理財産の額月額の報酬額
1,000万円未満月額2万円
1,000万円~5,000万円月額3~4万円
5,000万円以上月額5~6万円

②任意後見監督人への報酬

任意後見監督人への報酬も本人の管理財産額により報酬が変動します。

管理財産の額月額の報酬額
5,000万円未満月額1~2万円
5,000万円以上月額2.5~3万円

 任意後見制度の費用シュミレーション

では実際に任意後見制度を利用した際にいくら費用が必要か見ていきましょう。

イメージしやすいようにモデルケースを設定します。

【Bさん80歳】……任意後見人を家族に依頼

財産1,000万未満 / 任意後見人を家族に依頼 / 成年後見監督人を選任

※成年後見契約書作成を司法書士に依頼……10万円

※家庭裁判所への申立を司法書士に依頼……15万円

①初期費用

  • 任意後見契約書の作成時:1.7万円+10万円(司法書士への報酬)➡ 約12万円
  • 家庭裁判所への申立て時:2万円+15万円(司法書士への報酬)➡ 17万円

上記の費用を合算すると、およそ29万円が初期の費用として発生する計算になります。

任意後見契約書を作成してから、実際に認知症などにより判断能力が低下するまでには数年から数十年かかることが想定されます。

そのため、一気に27万円の支払いが発生するわけではありません。

②継続的に発生する費用

  • 任意後見人(家族)への報酬 ➡無料 ※家族のため無料と想定
  • 任意後見監督人への報酬 ➡月額2万円程度

上記の費用を合算すると毎月2万円の支払いが発生する計算になります。

年間では24万の支出です。

※任意後見人を家族に依頼した場合、必ずしも報酬が無料になるわけではありません。

まとめ

ここまで成年後見制度にかかる費用について見てきました。

最後にポイントを復習しておきましょう。

  • 成年後見制度には「法定後見制度」と「任意後見制度」2種類ある
  • 成年後見制度の費用には、申立て費用などの「初期費用」と後見開始後に発生する
    「継続的な費用」の2つがある
  • 法定後見制度の「初期費用(家庭裁判所への申立て)」は17万円前後である

※司法書士に手続きを依頼したと想定

  • 法定後見制度の「継続的な費用(後見人などへの報酬)」は月額2~9万である

※後見人への報酬額は管理財産額により変動する

  • 任意後見制度の初期費用は「任意後見契約書の作成費用」と
    「家庭裁判所への申立て費用」の2つからなる。

初期費用の合計はおよそ29万円前後である

  • 任意後見制度の「継続的な費用(後見人などへの報酬)」2~9万円前後である
  • 任意後見制度の後見人を家族に依頼する場合報酬が無料の場合もある

最後までお読みいただきありがとうございました。