「将来、自分が認知症になったらどうなるんだろう?」
「詐欺や悪徳商法に遭うんじゃないか?」
そんな不安を抱えていませんか?
成年後見制度は、そんな不安を抱えているあなたにぴったりの制度です。
この記事では成年後見制度について分かりやすく解説していきます。
成年後見制度とは?
成年後見制度は「認知症」や「障害のある方」でも、地域社会で安心した生活が送れるように制定された制度で、介護保険制度と共に平成12年にスタートしました。
自己決定の尊重を理念におき、財産と権利を守ることを主な目的としています。
成年後見制度には2種類ある
成年後見制度には「任意後見制度」と「法定後見制度」の2種類があります。
①任意後見制度
任意後見制度は自分の「判断力がはっきりしている時」に、「支援してくれる人(後見人)」と「支援してほしい内容」を自分の意思で決める制度です。
将来の不安に備えて、あらかじめ助けてくれる人(後見人)を決めておく制度になります。
②法定後見制度
法定後見制度は家庭裁判所に後見人を選任してもらう制度です。
認知症などにより本人の判断能力が低下した際に、「この人には助け(後見人)が必要だ」と判断した人が家庭裁判所に申し立てを行います。
すでに判断能力が低下しているため「後見人の選定」や「支援内容」について本人の意思を介在させることは困難になるでしょう。
法定後見制度は本人の判断力に応じて3つの種類に分けられます。
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任意後見制度も法定後見制度も支援内容にほとんど違いはありません。
あらかじめ信頼できる人に後見人を頼みたいのであれば、元気なうちに任意後見制度の手続きを進めておきましょう。
そもそも誰が成年後見人になれるの?
実は成年後見人になるために必要な資格や規定は設けられていません。
欠格事由(成年後見人になることができない要件)に該当してなければ、誰でも成年後見人になることは可能です。
では欠格事由にはどのようなものがあるのでしょうか。
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これらの欠格事由に該当しなければ、基本的にだれでも成年後見人になれます。
成年後見人の役割は?何をするの?
成年後見人の役割は「判断能力が不十分になった人のサポート」です。
より詳しく説明すると「財産管理」「身上監護」「職務内容の報告」の3つに分けられます。
①財産管理とは?
財産管理とは成年後見人が本人の財産を適切に管理をすることです。
具体的には下記のようなものがあります。
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②身上監護とは?
身上監護とは本人の生活や安全、健康を守るために必要な役割を果たすことです。
具体的には下記のようなものがあります。
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③職務内容の報告とは?
成年後見人は「財産管理」と「身上監護」を適切におこなっていることを明らかにするために、家庭裁判所に対して報告する役割も担います。
報告は自主的におこなう必要があり、「後見等事務報告書」「財産目録」「預貯金通帳のコピー」「本人収支表」の4つの資料を提出しなければなりません。
成年後見制度メリット3選
ここでは成年後見制度のメリットについて見ていきましょう。
①成年後見制度の開始後に行った不当な手続きを取り消すことができる
判断力の低下した人を狙った詐欺は世の中に横行しています。
リフォーム詐欺や健康食品の大量購入など、様々な詐欺のニュースを見聞きしたことがある人もいるのではないでしょうか。
成年後見制度では、後見人を通さずに本人が行った不当な契約などを取消したり、代金の返還を求めたりすることが可能になります。
②財産を守ってくれる
家族や親族の中には本人の財産を勝手に使ってしまうケースがあることも否定できません。
成年後見制度では後見人が銀行に対して、成年後見人になった旨を届け出ることで、成年後見人以外の人が預貯金を引き出すことができなくなります。
③後見人の監視機能がある
事案にもよりますが家庭裁判所は「成年後見監督人」を選任することができます。
成年後見監督人は、後見人が不正な行為をしてないか確認する役割があります。
また、家庭裁判所は成年後見人が著しく不正な行為を行った場合、諸手続を通じて、成年後見人を解任することができます。
成年後見制度デメリット3選
成年後見制度にはデメリットもあるため、しっかりと確認しておきましょう。
①自分の財産が自由に使えない
成年後見制度は本人の財産を管理し維持する制度です。
そのため自分で財産を使う行為は制限されてしまいます。
②後見人へ報酬を支払う必要がある
成年後見人は判断能力の低下した人の代理となり、様々な手続きをこなさなければなりません。
当然ですがそこには報酬が発生します。
成年後見人に一般の人を選任する場合は3万円以下で報酬が設定されることが多いですが、弁護士や司法書士などの士業に依頼する場合3~6万円くらいが相場になります。
毎月のコストになるため慎重に検討することが重要です。
③後見人を簡単に変えられない
家庭裁判所で後見人が指定された場合、基本的に本人が亡くなるまで後見人を務めることになります。
報酬を支払いたくないからといって、途中で利用をやめることはできません。
ただし後見人が著しく不適格な場合、家庭裁判所は成年後見人を解任することは可能です。
下記に民法の条文を記載します。
民法第846条「後見人に不正な行為、著しい不行跡その他後見の任務に適しない事由があるときは、家庭裁判所は、後見監督人、被後見人若しくはその親族若しくは検察官の請求により又は職権で、これを解任することができる」 |
まとめ
ここまで成年後見制度について解説してきました。
「まだ若いから大丈夫」「自分には関係ない」と考えている人もいるのではないでしょうか。
しかし人間は誰でも年齢を重ねていきます。
年齢を重ねるにつれて判断能力が衰えるのも避けられない事実です。
最後にポイントを整理しておきましょう。
今だからこそ将来の不安に備えておくことをおすすめします。
「任意後見制度」…元気なうちに自分で後見人を決めておくことができる 「法定後見制度」…判断能力がすでに低下した時に家庭裁判所が後見人を選定
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最後までお読みいただきありがとうございました。