質の高いケアを提供する上で、チームの連携は不可欠といえます。
これは介護施設でも在宅介護でも同様です。
チームの連携が取れていれば、利用者にクオリティの高いケアを提供することができます。
逆に、チームとして連携が不十分である場合、提供するケアの質が下がってしまうケースが多々あります。
当然ながら、ケアマネとしては事業所内でスムーズに連携が取れているところに仕事を依頼したくなるものです。
では、ケアマネはどのような時にチームとして連携が取れていると感じているのでしょうか。
連携不足の弊害
連携が取れていないチームの場合、以下のような弊害が生まれてきてしまいます。
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さっそく1つ1つ、具体的に見ていきましょう。
提供するサービスのクオリティを統一できない
一番の弊害は何といっても、提供するサービスを統一できなくなることです。
介護職は利用者に対して、1対1で接するのが基本となります。
また、施設であればシフト制で数日会わない職員もいますし、訪問介護であれば個人で対応することが基本となってきます。
それでも、介護職員によって提供するケアがバラバラであってはなりません。
たとえば、嚥下能力が落ちてきているご利用者に対し、水分100ccにどの程度のトロミ剤を使用するのかということがチーム内で統一されていなければ、職員が個々の考えで勝手に決めてしまいます。
すると、対応する職員によってトロミの固さにバラつきが出てしまいます。
これではご利用者やご家族は安心できませんし、プロフェッショナルの仕事とは言えません。
情報共有ができない(特に他職種)
連携が重要なのは、他の職種に対しても同様です。
「めまいを訴えていたご利用者が、横になったらすぐに落ち着いた」とします。
落ち着いたので、看護チームには伝えなかったということでいいのでしょうか。
もしかしたら、大きな病気の前兆かもしれません。
その日の深夜に同様の訴えが出た場合、どう対処すればよいでしょうか。
些細なことでも、情報があることで先に手を打てる可能性があります。
何よりも、他職種と連携が取れていれば、それだけ幅広い視点でのケアを提供することができるようになり、結局はご利用者に還元することができるのです。
職員同士の仲を深められない
連携が十分に取れていないことを気にかけている職員は、必ずいるはずです。
そういった職員は不満を抱えている可能性があります。
それだけならまだしも、周りの職員に不満を漏らしているケースすらあります。
そうなると職場や上司へ不満を抱く職員も出てきてしまうことでしょう。
負の連鎖が始まる前に、しっかりとコミュニケーションを図る必要があります。
上記のような弊害が生じてくることで、結局、割りを食ってしまうのはご利用者とその家族です。
お金をいただいているプロフェッショナルであるならば、こうした事態は避けたいものです。
連携不足はこうして起こる
うまく連携を取れていない介護チームは、数多くあります。
その事実を、ご利用者やご家族から指摘されるケースもあるようです。
なぜ、こういったことが起こるのでしょうか。
連携不足が起こるのは、以下のような理由があります。
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1つ1つ解説していきます。
報連相の重要性を理解していない
1点目は報告・連絡・相談の重要性を職員が理解していないという点が挙げられます。
こういった職員に対しては、「情報を共有するとケアの質が上がる」ということを指導していく必要があります。
チームケアの重要性を理解していない
2点目として、チームケアの重要性を理解していないということが挙げられます。
「ケア」というものは個人で行うものでなく、チームで行うものです。
介護職だけでなく、医療やリハビリ・福祉用具の専門家、ケアマネや行政も関わってくる場合もあるでしょう。
関わる全員がすべての情報を共有する必要はない場合もあるかもしれません。
しかし、最低限知っておくべきことはきちんと伝えられるようにするべきです。
どのような情報を、いつ共有すればよいのかわからない
職員の中には(特に入社したばかりの職員)は、どんなタイミングで、どんな情報を共有すればいいのかわからないというケースがあるようです。
これについては、マニュアル化しておくのがベストです。
マニュアルがなかったとしても、先輩が具体的に示してあげる必要があります。
連携不足にならないために
それでは、きちんと連携が取れているチームを構築するためにはどのようにしたらよいのでしょうか。
以下の点に気を付けるだけで、格段に連携が取れるようになります。
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リーダー役を明確にする
チームとしてうまく連携を取りあい機能させるには、リーダーが必要になります。
在宅介護であれば、その役割を担うのはケアマネです。
また、1人の利用者に対し複数のヘルパーが介入する訪問介護事業所なら、サービス提供責任者がリーダーとなるでしょう。
それぞれのチームにおいて、リーダー役や中心になる人が必要となります。
連携の重要性を理解する
「連携の重要性を理解していない」という要因に対しては、研修が有効です。
もちろん、入社時に報連相の重要性をきちんと伝える必要はありますし、これはどこの事業所も実践していることでしょう。
しかし、人間は忘れる動物です。
日々の忙しさに流され、基本がおろそかになってしまうという経験は誰しもあるはずです。
そのため、研修で連携の重要性について学びなおすことは、とても価値があります。
チームで目標を共有する
もう1つ重要なのが、チームとして目標を共有することです。
目標が明確であれば、ご利用者に対して「どのようなケアを行ったのか」「その効果はどうだったのか」「次にどのようなケアをしていくべきか」など、情報共有をする目的ができるため、自然と連携を取りやすくなります。
情報を共有するツールを作る
連携の必要性を理解していたとしても、「どのように連携を取りあえばいいのか、わからない」という職員もいます。
そのため、リーダーは連携を取るためのツールを用意してあげましょう。
今は介護記録をスマホで入力し、クラウド上で共有することもできます。
施設であれば、ノートだって構いません。
いずれにしても「重要な情報はここに記載し、業務の前に一読する」などのルールを設定し、研修でその重要性を訴えていきましょう。
信頼は連携から生まれる
連携というのは介護の基本でもあり、かつ最重要事項といっても過言ではありません。
なぜなら、介護というものは1人では成立しないからです。
ケアマネからすると「伝えたはずのことが事業所内できちんと全員に伝わっていない」
ということになれば、次にお仕事を頼むのはやっぱり二の足を踏んでしまいます。
反対に、些細なことでも情報共有ができている事業所にはまたお仕事をお願いしたくなるものです。
まとめ
ケアを提供するにあたり、チームの連携、情報共有は不可欠です。
連携不足だと以下のような弊害が生じます。
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連携不足になる要因には以下のような事柄が考えられます。
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連携不足を解消するためには、以下のような方法をとりましょう。
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連携は介護における最重要事項の1つです。
「いい介護はいい連携から」ということを常に頭においておきましょう。
チームの全員が連携の重要性を理解できるよう働きかけ、いい介護を提供していってください。