訪問介護の仕事は、施設型の介護とは違った特殊な技術を必要とします。 介護スキル以外の能力で必要なこともあれば、施設とはまた違った環境下での介護スキルなど、同じ介護でも大きな違いがあります。 今回は、そんな訪問介護で必要な介護技術を、経験者がお伝えします。 訪問介護に特化した技術って何? 今回の記事では、訪問介護に特化した技術で、筆者自身が経験して必要と感じた技術やスキルをお伝えしていこうと思います。 実際の現場での体験談をもとに書いていきますので、今訪問介護をやっている方や、これからやろうと思う方の参考になれればと思います。 土地勘は必ず身に付けよう 当たり前の話ですが、訪問介護は施設介護と違い、広大な土地を介護のために移動しています。 本当であれば介護技術を例にあげるのですが、私は最初に訪問介護ならではの「土地勘」の大切さをお伝えしたいと思います。 訪問介護は基本的に自転車で行う方が多いと思います。 他にも場所によっては車で訪問したり、徒歩で向かう時もあるかもしれません。 どちらにせよ、この時大切になってくるのが土地勘です。 私自身、最初は慣れない土地で複雑な道や、訪問先の場所などは事前に調べて向かっていました。 私が訪問介護をやっていた時は、スマホなどの便利な機器もなく、地図に頼っての訪問でした。 地図だと行き先を見つけるのが一苦労で、スマホが出来てからは非常に助かったのを覚えています。 訪問介護は、訪問件数によっては土地勘がないことで大きくタイムロスを起こす可能性があります。 そうすると、一つ一つのケアが疎かになり、いいサービスが提供できなくなってしまうのです。 そのため、訪問先の道を覚えて土地勘をつけることは、スムーズな仕事にも役立ちますし、サービスの質の向上にも繋がります。 大切なことですので、しっかり土地勘を身につけてください。 安全運転を心がけよう 介護をするために一軒一軒のお宅に自転車や車で移動するので、訪問介護は常に事故と隣り合わせです。 なぜここまで当たり前のことを言うのか、それには大きな理由があります。 これは私が前いた職場であった事です。 訪問を終えてステーションに戻ると、管理者だけ急遽本社に来るように連絡が入ったのです。 今までになかった事ですから、みんな何が起こったのかとソワソワしていたのを覚えています。 結論から言うと、他のステーションの訪問介護員が、移動中に大きなトラックに撥ねられて還らぬ人となったのです。 しかもその事故が起こった事故現場は、私自身よく通る場所でした。 その事故現場の近さを聞いて、私自身ゾッとしたのを今でも覚えています。 一歩間違えたら私自身も、同じ運命を辿っていたかもしれないからです。 なぜ事故にあったのか? 色々な調べで分かったことは、事故に遭った職員は以下の3点から事故に遭ったとみられています。 ①次の仕事先に急いで向かっていた ②車の位置や安全確認を怠っていた ③車通りの多い道路を走ろうとしていた 当時の事故の様子だと、その職員は車と車の間から道路に飛び出して、自転車を漕ごうとしていた時に事故にあったようなのです。 これは訪問介護ならではの事故です。 施設型の介護だと、基本的にこんなことにはなりません。 しかし、訪問介護はケアの時間が長引いたり、訪問件数が多かったりすると、どうしても移動を急いでしまいがちです。 もちろん無理なシフトを回らせる職場も悪いです。 危ないと感じたら慌てずに行動し、明らかに無理なシフトを渡された時は、正直にシフト作成者に伝えてみてください。 大切なことなので念押ししますが、命は一度失ったら2度と戻りません。 なので無理をせず無事故を心がけて、訪問先の移動を行ってください。 介護技術で必要と感じたもの 前回の章では、技術の中でも自身の身を守るための技術をお伝えしました。 この章では、実際の介護技術を経験談も交えてお伝えしていきます。 何かしらのお役に立てれば、幸いです。 ご利用者様・家族と仲良くなる技術 訪問介護は施設型と違い、被介護者以外に家族とも会話をする時があります。 このような時、しっかりと挨拶や一般的な社会人らしい振る舞いを心がけてください。 家族は介護サービスだけしてもらえればいいと言うわけではありません。 個人差はもちろんありますが、実は訪問介護員の所作を一つ一つ、細かく見ていたりします。 その行動次第では、「この人に任せて平気かしら?」と思われるかもしれません。 そのため、挨拶や言動、清潔感や服装など家族と関わる上で気をつける点はたくさんあります。 訪問介護の大切な点として、訪問したらまずはご利用者様と家族、どちらとも仲良くなる必要があります。 大切なのでお伝えしておきます。 基本的に1人で対応する技術 訪問介護は1人で仕事をするため、1人で仕事をしていたい人にとってはいい環境です。 ただそれは、裏を返せば1人で全ての業務をこなし、問題に対処していかねばならないと言うことです。 実はこの技術と経験は、施設型の介護をする時にもいろいろな面で役に立ちます。 役に立つポイントとしては以下の点です。 ①トラブルなどがあっても動じなくなる ②頼る人のいない環境下での判断経験値がつく ③1人で状況を打開する技術力が身に付く 今回は訪問介護をする上で必要な技術の話ですが、この1人で状況を打開できるスキルを身につければ、訪問介護以外の業態で仕事をする時も役立ちます。 さらに一言付け加えると、どの職場に行っても応用の効く人として重宝される強みもあります。 ぜひ意識して身につけてください。 1人で状況判断する技術 訪問介護をしていると、突然のトラブルに巻き込まれることが時々あります。 これは場合によっては不可避なことも多いです。 例えば訪問時にご利用者様が突然の熱発で倒れていたり、食事介助中に嘔吐したりなどがあります。 これらは職員に咄嗟の判断を必要と迫るものが多く、すぐにその場で対処することが必要です。 基本的には電話などを使い、管理者に状況を説明して打開策を聞くのも良いです。 そちらの方が何かあったときに、介護士自身の身を守ることにもつながるからです。 しかし突発的で、今すぐの対処が必要なときは致し方ありません。 ご自身の経験則ですぐに対処する必要があります。 ここからは実際に私が体験した内容を1つ紹介して、どのように対応したのかも記載しようと思います。 訪問したら床が汚物まみれで、ご利用者様が転倒されていた その方は身体機能が落ちている男性のご利用者様で、その方には居室清掃のサービスを提供しています。 訪問すると玄関から異臭がしていて、その臭いの原因を確認するべくトイレの近くを見ると、トイレの前に失敗した形跡がありました。 臭いの原因はその失敗した汚物が原因だったようで、さらにご利用者様はその汚物で足を滑らせたのか転倒されていたのです。 衛生的にも悪く、そのままの状況を管理者に伝えて判断を仰ごうとしましたが繋がりません。 そのままにしておくわけにもいかないので、まずはご利用者様の様子を確認しました。 頭を打った形跡もなく、意識もはっきりしていることを確認できたため、ゆっくりと一部介助をしながら起こします。 その後、着ていた服が汚れていたので、急いで着替えをし、床の汚物を処理や、着ていた洋服を洗ってその後洗濯機にかけました。 居室の換気もして空気の入れ替えもし、なんとか環境も落ち着いてくると、ご利用者様も安堵の表情です。 その後経過報告を行うと、判断を特に咎められることもなくご利用者様に至っては経過観察になりました。 このように、突然の出来事に対してご利用者様に適切な対処をすることがとても大事です。 まとめ 訪問介護の職員にとって必要な技術を一言でまとめるなら、「個で解決出来る力」ではないでしょうか。 それは介護技術だけの話ではなく、自身の安全を守ることも必要となってきます。 訪問介護は介護技術を基礎としてまずは移動中の安全を確保することが最優先だと感じました。 今後も違う視点からの発信をしていきたいです。
訪問介護の仕事は楽しいこともあるけども、辛い事もあります。 今回の記事では、実際に訪問介護を経験した筆者が、その体験を基に辛かったことをお伝えします。 訪問介護の辛いところ 介護の仕事は人に感謝されるいい仕事です。 介護以外の仕事も経験してよりわかった介護の仕事の魅力は、他者からの感謝を本当の意味で受け取れるところに魅力があります。 そんな中「きつい、しんどい、きたない」と言われるこの仕事を、喜んでしたいと言う人が少ないのも現実です。 個人的には魅力的だと思える介護の仕事ですが、今回は筆者が体験した訪問介護での辛かった体験をお伝えし、その対応策も付け加えようと思います。 それでは始めていきます。 自転車移動が辛かった これはシンプルに訪問するための自転車移動が辛かったです。 都市部での訪問介護の仕事は、自転車移動が基本になります。 地方の移動距離が長い事業所なんかだと、車で移動するところもあるようですが、都心部での基本は自転車です。 自転車移動での足腰への負担は、1件1件の移動を毎日積み重なると大きく、なかなか辛い経験でした。 電動自転車になってからはかなり楽になりましたが、それ以前はまるで足腰を鍛える修行をしているような物でした。 また事業所によっては、1日の訪問件数が多いところもあります。 筆者は、割と短めのケアを複数訪問していたため、1日の訪問件数は平均して15件前後でした。 この数字は、訪問介護業界の方でないとピンとこないかもしれません。 参考までに、筆者が聞いた他事業所の訪問件数は、1日平均5件ぐらいが基本でした。 若い訪問介護員でも多くて10件程度だそうです。 私は毎日3倍走っていたことになります。 訪問介護はご自宅同士の距離が遠いこともあるため、件数が短くても距離が遠かったりしてその移動で疲れるという事もあります。体力に自信のある方や身体を鍛えたい方などにはよいかもしれませんが、そうでない場合は電動自転車をおすすめします。 ご利用者様との人間関係 これも筆者の訪問先にいたあるご利用者様ですが、そのお宅はお風呂とトイレが共同の家でした。 部屋は6畳1間で、家賃も1ヶ月1万円程度のお宅でした。 そこのご利用者様は、服薬確認と安否確認だけのサービスでしたが訪問するや否や罵詈雑言の嵐でした。 さらに提供したいサービスを受けてくれないものですから終わりたくても終われない事もしばしばでした。 最終的に何もせずに帰らざる終えない時もありましたが、このようなご利用者様もいました。 ただ全ての人がこのような人ばかりと言うわけではありません。 あくまで一部のご利用者様だけなので、今紹介したような方はごく稀です。 他にも訪問先でご利用者様の家族に手を握られたり、セクハラのようなことをされた時もあります。 そういう事があった時は、訪問介護が辛いなと思ったりもしました。 ゴミ屋敷への訪問 表現が難しいのですが、いわゆる衛生環境が極端に良くないお宅は一定数あり、その割合は少なくありません。 筆者が経験した訪問先で、訪問するたびにスリッパを使用して入室する訪問先がありました。 そのお宅はマンションのとある一室でしたが、廊下にいるだけで異臭が立ち込めてきて、部屋の中はゴミでいっぱいでした。 訪問介護サービスを利用すると言うこともあって、入り口や洗面台、トイレや浴室などの介護で使用する場所は多少掃除されていました。 しかし衛生的とは言えませんでした。 私たちもプロですので、その環境下で介護をしました。 他にも、訪問先のお宅の中を土足で入ることになっているお宅もありました。 このお宅は、訪問入浴のサービスがありお風呂だけはすごく綺麗だったのを覚えています。 しかしそれ以外は足の踏み場もないぐらいゴミ袋の山でした。 必ずしもそのようなお宅ばかりではないですが、そのような環境を見たことが無い筆者にとっては、なかなか衝撃的で辛い経験だったのを覚えています。 1人で仕事していること 元も子もない話ですが、1人で仕事をしていることが辛い時もありました。 訪問介護は、基本的に1人で介護をして1人で完結して訪問先を退出します。 ほとんどの場合、家族はおらずご利用者様1人の時が多いです。 例えばご利用者様にトラブルがあったり、その他のアクシデントなどは1人で対応しなければいけません。 また介護保険以外のサービスの要求をしてくるご利用者様や、そのご家族がいたこともあります。 そのようなときに全て1人で対応するという面が、施設型の介護と違う大変さでした。 他にも、筆者が1人の訪問で辛いと感じたのは、1日の中であまり会話がない時でした。 自立度が高いご利用者様だと会話を多く交わして退出できるのですが、自立度の低いご利用者様だと、失語症などの理由で会話をできずにサービスを終えてしまうことが多かったです。 職員にもよりますが訪問介護の場合、他の職員との会話もあまりないため、ご利用者様とその家族と会話をしない限り、会話をする機会がありませんでした。 そのため、仕事はしているけれど淡々と目の前の仕事をこなし続けていることを、辛いと思う時期が何度かありました。 もちろん職員全員に当てはまることではありませんが、少なくとも筆者はそのように感じる場面がいくつかありました。 訪問介護が辛いと思った時の対処法 訪問介護が辛いと思ったときは現状を変えるためにも以下のような方法をとると良いでしょう。 管理者に相談 例えば、訪問先のご利用者様からセクハラや、モラハラを受けている時はまず上司に話しましょう。 筆者は実際にそのようなお宅があったときに、当時の管理者に相談しています。 訪問介護員も人間ですので、辛いときは無理をしてはいけません。 筆者の場合正直にそのときの現状を伝えた結果、訪問先を変更してくれました。 他にも、自転車移動の距離が長く移動が辛いことも話しました。 改めて訪問先の見直しをしてくれて、結果的に移動がかなり楽になり体への負担が減りました。 介護は体を使う仕事ですので、他の負担は極力減らした方がいいですね。 困った時は、管理者に相談してください。 最初の課題解決の動きだしは、まずそこからかもしれません。 環境を変える 環境を変えるのも1つの手です。 筆者は異動や、転職は行いませんでしたが、他の職員で異動をして仕事環境が変わり、前よりイキイキと仕事をしている職員がいました。 会社の規模にもよりますが、社内で異動が叶うのであれば事業所を変えてみるといいです。 その行動だけで、世界が大きく変わってきます。 もし事業所を移動できなかったり、異動しても環境が変わらず辛い時は、転職も選択肢に入れてください。 訪問介護の事業所は、探せば多くあります。 できればご自身が働いたことが無い地域がいいかもしれません。 事業所の環境や、雇用条件など見るところは多くありますが、転職をして今以上に良い環境で働いている職員もいたため、1つの選択肢としておすすめです。 まとめ 今回、実際に働いた体験談をもとに、訪問介護で辛かったことをお伝えしました。 しかし、訪問介護は何も辛いことばかりではありません。 仕事をしていて楽しいことももちろんあります。 辛いと言う点も個人差があり、上に挙げたもの以外にも辛いと思うポイントはあるのではないでしょうか。 大切なのは、その環境下で自分自身がどうしたいかです。 それを考えられる記事になっていれば嬉しいです。
介護の仕事にはいろいろな働き方があります。 施設や病院など大勢の介護士の中で働く仕事や、1人で介護する仕事などさまざまです。 訪問介護は介護士が1人で介護をする仕事です。 ここでは訪問介護に向いている人とはどんな人なのか、元訪問介護士が解説します。 訪問介護とはどんな仕事? まずは訪問介護とはどのような仕事なのか、その概要についてご紹介します。 訪問介護とは、要介護に認定されたご利用者様の自宅に訪問し、介護サービスを提供する仕事です。 サービスの提供内容はさまざまありますが、大きく分けて3つに分けることができます。 身体介護 身体介護とは、食事、排泄、入浴などの介助をするために、利用者さんの体に触れて介護サポートをすることです。 これは通所型や入所型の施設でも同様の介護サポートが行われますが、訪問介護ではより生活に踏み込んだ介助を行います。 生活援助 生活援助とは、利用者さんの生活をサポートするために行われるものです。 主に以下のような内容があります。 料理 洗濯 買い物 掃除 等 どのようなサポートをするのかは利用者さんの希望によります。 また、生活援助には食事介助などの身体介護は含まれません。 通院介助 通院介助は病院までの送迎をサポートするもので、以下のようなものがあります。 車の乗降介助や車椅子の積み下ろし 受診手続き 薬の受け取り ただし、病院内の付き添いは医療保険の対象となり、介護保険が適用できないことがあります。 そのため、介護の必要がある場合のみになることが多いです。 訪問介護に必要な資格とは 訪問介護で働くには介護職員初任者研修以上の資格が必要です。 中には無資格であっても働きながら資格を取得するのであれば就業できるところもあるので、施設に確認をしてみてください。 介護職員初任者研修は介護職の基本ともいえる資格で、通信教育などで取得することが可能です。 教育機関にもよりますが、最短1か月程度で取得することができます。 介護職には介護福祉士実務者研修や認知症介護実務者研修などさまざまな資格があります。 スキルアップするためにも、仕事をしながら介護に関する資格取得を目指してみるのもおすすめです。 訪問介護に向いている人とは? では、訪問介護に向いているのはどんな人なのか、元訪問介護士が経験を織り交ぜて解説していきます。 1人で仕事したい人 訪問介護の仕事は、1人で仕事したい人に向いています。施設型の介護施設と違い、訪問介護は自宅が介護をする場所になります。 施設で働く場合、閉鎖的な空間で常に職員や他のご利用者様がいて、そういう環境が苦手な職員もいます。 その点、訪問介護は基本的には1人です。 訪問先に行くのも、次の訪問先に行く時も1人なので周りの職員を気にする事なく自分のペースで仕事ができます。もちろん決まった時間に訪問しなければいけないのは大前提です。 しかし仕事によっては、あらかじめ決められた時間よりも早く終わることもあります。なので、少し早目に訪問先を出ることも可能だったりと、自分のペースで仕事ができます。 休憩を好きな時に取りたい人 施設で働くと、休憩時間はシフトによって前後します。例えば、早番の場合朝は大体7時前後から仕事に出てきて、昼休憩は11時〜12時の間になります。 日勤の場合、8時30分ごろが出勤時間のため12時〜13時頃が休憩時間です。このように施設だと、ほぼ確実に休憩は取れるものの時間が決められてしまうことが多いです。 自分自身が休憩したい時に休憩ができないため、人によっては辛い人も出てくるのではないでしょうか。その点、訪問介護だと休憩は空いている時間に好きなタイミングで取得できます。 もちろん、勤務状況によっては好きな時間に取得できない時もあります。 しかし、その日のシフトを見てあらかじめこの時間に取得しようということを決めて仕事に臨むと、仕事が楽しく感じます。 なので、自分のペースで休憩を調整したい人は数ある介護の仕事の中でも、訪問介護が向いています。 場所に縛られたくない人 施設で介護の仕事をすると、基本的に1つの場所で仕事をし続けることになります。 例えば異動などの勤務場所の変更がない限りは、1つの場所で仕事を続けることになります。仕事をする上で、1つの場所に縛られたくない人にはこのような働き方は辛いところがあります。 その点、訪問介護の仕事は場所に縛られることはありません。 勤め先のステーションにもよりますが、訪問介護の仕事は時と場合により訪問先が変わることもあり、仕事先は一定では無いのです。 なので、仕事先がずっと一緒なのが嫌だという方には、訪問介護の仕事は向いていると言えます。 気分転換したい人 訪問介護の仕事はシフトにもよりますが、外で仕事することがほとんどです。そのため、気分転換したい時などがあれば、空き時間に外で気分転換したりします。 私自身の実体験ですが次の訪問先の時間まで時間があり、ステーションに戻る時間がない時がありました。そういう時間を利用して、公園のベンチで桜を見たりして気分転換したのを覚えています。 施設で仕事をしていると、休憩中やレクリエーション、買い出しの時ぐらいしか外に出ることがありません。 定期的に気分転換したい人には訪問介護はおすすめの仕事です。 夜勤をしたくない人 訪問介護は、基本的に夜勤がありません。一般的な訪問介護に限定されますが、夜勤勤務がないところは訪問介護の魅力といえます。 施設型の介護の仕事は、24時間体制でご利用者様の介護やお世話をする必要があるので、シフトに夜勤の勤務があります。 訪問介護の場合は、主に日中での介護業務がほとんどで、夜勤のシフトはない所が多いです。 ただし、定期巡回型の訪問介護をしているところは別です。 定期巡回型の場合、雇用条件によりますが夜勤のシフトを求められる事もあります。 もし希望する勤め先が定期巡回型の訪問介護事業所であれば、夜勤の勤務があるかどうかを事前に確認するようにしましょう。 夜勤がある場合は、夜勤のシフトに入らない旨を伝えたほうがいいです。 夜勤勤務を希望しないのであれば、違う職場を選ぶことをおすすめします。 ご利用者様と1対1で仕事したい人 訪問介護は基本的に1対1で仕事するものです。つまり自分1人に対して、ご利用者様は1人であることがほとんどです。 訪問介護ならではですが、ご利用者様が1人だとその方だけを見守っていれば良い為、事故の危険性も減ります。 特に特別養護老人ホームなどの大きい施設で仕事をすると、1人で10人の見守りをする場合もあります。 どちらも体験談ですが、1人で見守りを行う上で見守りできる人数には限りがあります。 10人を1人で見守るとして、全員が歩行不安定で立ち上がり頻回だとします。 被介護者が歩くことができる場合、転倒する可能性が非常に高いといえます。この時点で1人で10人を見守りを行うのは不可能です。 そのような大型の施設はそういった点も考慮した上で、環境を構築しています。 ここまで訪問介護は1対1の介護と記載してきましたが、時々2人のご利用者様の対応をすることがあります。それはご利用者様が夫婦でサービスを利用している場合です。 このような場合、大体のご利用者様が寝たきりか認知症になっている状況が多く、むしろ介護する上で困難なことは少なかったです。 訪問介護先の状況や対応方法を、訪問前に事前に先輩社員によく確認しておくようにしましょう。 移動が楽しい人 訪問介護の移動は基本自転車での移動が主流です。 土地が広くて、1軒1軒の距離が遠い場合は車を使用することもありますが、住宅街が密集しているところでは自転車移動が多いです。 施設の介護と訪問介護の違いは、ご利用者様の住んでいる家まで行くという距離が挙げられます。 訪問介護の場合、この距離を自転車や車でカバーして介護を行います。 施設だと、居室は歩いていける距離なため時間も節約されて、残りの時間は介護に充てることが可能です。 訪問介護だと、シフトによっては数十分の時間をかけて訪問して、介護サービスを提供します。 この移動が楽しめる人は、訪問介護に向いていると言えます。 訪問介護のヘルパーとして働くメリットとは? 訪問介護の仕事にはどのようなメリットがあるのか、経験を踏まえてご紹介します。 長期的に働きやすい 介護が必要な人が全て施設に入るわけではありません。 自宅で暮らしたい人、施設待ちをしている人など、家で生活している人は多くいらっしゃいます。 そのため、訪問介護には施設型や入所型よりも需要が高い傾向があります。 もし何らかの事情により介護の仕事から離れたとしても、再就職しやすいです。 キャリアアップができる 訪問介護の仕事に就くために年齢は関係ありません。 いくつであっても、経験を積むことでキャリアアップすることができます。 また、利用者さんは一人ひとり生活習慣や必要なケアが異なります。 そのため、さまざまな利用者さんに適応できるスキルを身に付けられます。 訪問介護のヘルパーとして働くデメリットとは? 訪問介護の仕事には、メリットだけでなくデメリットもあります。 ここでは訪問介護のデメリットについてご紹介します。 責任が大きい 先にも記載しましたが、訪問介護は1人でケアを行う仕事です。 そのため施設など大勢の介護職員の中で働くよりも、利用者さんに対して大きな責任を置くことになります。 特に、訪問介護の経験の浅い方には大きなストレスになってしまいがちです。 訪問介護は最初から1人で仕事をするわけではありません。 最初のうちは先輩スタッフが同行します。 また、何かあった場合は事業所の責任者に相談することもできます。 少しずつ仕事に慣れて経験を積んでいくことが重要です。 天候によって移動が大変になる 訪問介護は介護職員が利用者の家に出向く必要があります。 そのため、天候の悪い場合は移動が困難になることがあります。 天候が悪くても利用者さんの介護は必要です。 着替えを用意したり、移動方法を考えるなどの工夫が重要です。 まとめ 訪問介護は外で仕事ができる分、仕事への切り替えや、気分転換がやりやすい仕事です。 1つの場所に囚われるのが嫌な介護士には、仕事環境が毎度違うのは新鮮で、マンネリ化を防げます。 この利点をよく理解して、自身に合っていると思う人はぜひ訪問介護の仕事にチャレンジしてみてください。
介護に携わる職員は、資格なしでも介護に携われていましたが、今後は無資格では携わる事ができません。 今回は無資格者必須の「認知症介護基礎研修」について説明します。 「認知症介護基礎研修」とは? 厚生労働省による令和3年度の介護報酬改定の取組の一環に「認知症への対応力向上に向けた取組の推進」という事項があります。 これは、介護に関わる全ての者の認知症対応力を向上させていく為、介護に直接携わる職員が認知症介護基礎研修を受講する為の措置を義務付けるとされています。 今までは、訪問系の介護サービス(訪問介護等)や福祉用具貸与(福祉用具レンタル)、居宅介護支援以外の介護サービスの職員は、介護の資格が無くても介護職として関わる事ができていました。 しかし、2024年4月以降において医療や福祉関係の資格が無い職員は認知症介護基礎研修を修了していないと介護に関わる職務が行えなくなります。 なぜ義務化になった? 昭和22年~24年生まれで第一次ベビーブーム時代に誕生した人達、つまり「団塊の世代」と呼ばれる人達が、75歳以上の後期高齢者となる2025年問題が背景にあります。 厚生労働省によると、認知症高齢者数は約10年前の2012年で462万人とされ、令和7年の2025年には約700万人、つまり65歳以上の高齢者の5人に1人とされています。 団塊の世代が後期高齢者になる2025年には、高齢者において認知症は特殊なものでは無く、誰が発症してもおかしくはない身近な病気となっているのです。 認知症発症の高齢者が増えるとされていても、実際に認知症に対する知識や技術について介護に携わるサービス事業所側の職員の全てが対応できるかと問われたならば、正直難しい面があるのも事実でした。 介護に関する資格を取得している者については、認知症ケアに関する知識や技術を学んでいますが、介護サービスによっては無資格で携われるものもあります。 ハイスピードで高齢化が進み、認知症高齢者も追随していく中で、介護に携わる全ての職員が認知症への理解を深め、介護する者を主体とするのではなく当の本人を主体としての介護を行い、認知症の有無に関わらず個の尊厳を保障した上で対応する力を付けるよう、国より義務づけられました。 今まで無資格で介護に直接携わっていた者は、現場で得た経験による知識や技術は当然ながら得ており、今後の職務において大切なものではあります。 しかし、高齢者が増えるこれからにおいて専門的な知識や技術対応力を今までもより一層必要とされる事になるのです。 認知症介護基礎研修の対象者は? 上記にも述べましたが、無資格で介護に直接携わっている介護サービス事業の職員は認知症介護基礎研修の対象者となります。 資格を必要とする訪問入浴を除く訪問系サービスや福祉用具貸与、居宅介護支援は対象外です。 ※訪問入浴介護は看護師(又は准看護師)と介護職員のチームで対応しますが、訪問入浴では介護職員は無資格でも可能である為、無資格者がいる場合は認知症介護基礎研修の対象となります。 ※通所介護で生活相談員を職務としている場合、社会福祉主事任用資格の保持のみであれば研修の対象となります。 2021年4月より義務化が始まりましたが、経過措置として3年間あり、2024年の4月より完全に施行されます。 無資格で介護に直接携わっている全介護サービス事業の対象職員は、完全施行の来年の4月までに早めに研修を修了するようにしましょう。 しかし、現在無資格で、介護職員初任者研修等の福祉資格を取得する為研修中にある方や、介護の養成施設、福祉系の学校で認知症に係る科目を受講している場合は、その資格の研修修了証明や卒業及び履修科目取得を証明できれば現在無資格状態であっても証明を条件として認知症介護基礎研修の対象外として差し支えないとされています。 また、3年の経過措置後に新たに介護サービスの職務に就くも、介護に関する資格を有していない無資格者は。介護サービス事業所に就いて1年間の猶予期間が設けられる期間内に研修を修了するようとされています。 2024年4月以降は、介護に直接携わる職務に就いている全ての者は、医療又は福祉資格を有している又は研修受講を修了している事が必須です。 つまり介護に関わる全ての職員が「何らかの形でも介護を行う全ての職員は認知症に対して知識や技術を得ている」という事になります。 「認知症介護基礎研修」を受講するには? 認知症介護基礎研修はすでに始まっています。 研修内容は講義と演習です。 研修対象者に該当するかどうかをまずは確認し、その上で職務先の介護サービス事業所に受講についての希望を提示し、申込みをしてみましょう。 研修はどんな形で行われる? 各都道府県によって受講の形は違いますが、自治体主体で実施する又は事業を委託して実施する形で行われています。 ・eラーニングでの受講 ・オンライン(Zoom等)を含めた集合型研修での受講 ・集合型半日とeラーニング半日での受講 各介護サービス事業所へ自治体より認知症介護基礎研修の実施の通達がされているので、資格を有さない研修対象者は事業所ごとの取り纏めで申し込む形となります。 研修期間は1日、6時間の受講で研修修了となり、修了証書が発行されます。 そのため、初心者研修よりも手軽に資格を取得できるのも大きな特徴です。 また、現在は全国的にeラーニングで受講できるところが増えているため、在宅で資格を取得できることが多いです。 自治体や委託事業団体によって異なりますが、研修費は1,000円から5,000円程度となっているようです。 また、認知症介護基礎研修は基本的に「介護に直接かかわる仕事についている方」が対象となっており、初任者研修のように誰でも取得できるものではないことを覚えておきましょう。 各自治体により受講条件や日程は異なる為、以下の内容の確認が必要です。 開催日がいつなのか 募集の受付はいつ頃か 受講に関してeラーニングならば機器の準備はできているか 集合型の場合は日程が調整できるか 受講予定している場合は、準備と余裕を持って対応できるようにしておきましょう。 「資格なし」だとどうなる? 上記でも述べましたが、2021年4月から2024年3月までは経過措置の3年にあたり、研修はその期間内に受講すれば修了証書が発行されます。 また無資格でも新規で介護に携わる職種に就いた場合は、1年間の猶予期間内に受講し修了すれば良いとされています。 それでも無資格のまま介護に直接携わる業務に就いていた場合はどうなるのでしょうか? 2024年4月より、新たに介護に直接携わる業務を行う職員が、1年の猶予期間内に研修を修了せずに無資格状態のまま職務にあたる事や、3年の経過措置の間に研修を受けず無資格状態を放置した場合は、人員配置基準において算定される介護職員とした介護サービス事業所は行政指導の対象となってしまいます。 研修の義務化という事は、当然ながら介護サービス事業所は、介護に直接携わる人員の把握・管理を行っていかなければならず、無資格者=義務を怠るとされる又は対象外の職務に就く=介護に直接携われなくなるという事になるのです。 ※介護に直接携わらない職員(施設調理、施設での掃除等の雑務のみ等)や介護の人員配置基準に算定されない職員(事務員等)は対象外ですので、研修を受ける必要はありません。 まとめ 今回は「認知症介護基礎研修」について説明致しました。 ・厚生労働省による令和3年度の介護報酬改定の取組に「認知症への対応力向上に向けた取組の推進」があり、介護に関わる全ての者の認知症対応力を向上させていく為、認知症介護基礎研修の受講を義務付けられた。 ・2024年4月以降は医療又は福祉資格が無い職員は、認知症介護基礎研修を修了していないと介護に直接携わる事ができなくなる。 ・団塊の世代が後期高齢者になる2025年には、高齢者において認知症は特殊なものでは無く 誰が発症してもおかしくはない身近な病気となっており、介護に携わる職員の認知症に対する知識や技術力の向上が求められている。 ・無資格者は認知症介護基礎研修の対象者であるが、資格を必要とする訪問入浴を除く訪問系サービスや福祉用具貸与居宅介護支援は対象外である。 ・研修を修了する為の経過措置は3年間で、経過措置後も新規で介護に直接携わる職員は1年間の猶予期間が設けられている。 ・研修の開催については各自治体が実施するものや、事業委託で実施するものがあり、受講もeラーニング研修や集合型研修等があり、対応は自治体によって異なる為に準備も含めて確認を必要とする。 ・受講を希望する場合は、介護サービス事業所へ希望を提示し、事業所毎の取り纏めで申し込む形となる。 ・研修費は1,000円から5,000円程度。 ・経過措置が終わり、完全施行した後も無資格のまま介護に直接携わる職員として職務に就いていた場合。介護サービス事業所は行政指導の対象となる。 介護に直接携わる職員で資格を有していない職員は、研修受講の措置が義務付けられ、現在は経過措置の期間にあります。 介護業務で忙しい中、1日程度ではありますが調整も要する為に受講には周りの協力も必要となります。 期間に猶予が有る内に、計画的に研修を終了できるように努めましょう。
徘徊は認知症の症状の一つです。 外や家の中をうろうろ歩きまわるため、介護者の介護疲れの要因の一つに挙げられています。 一人暮らしをしている親に認知症がある場合、普段の生活について心配になってしまう方も多いのではないでしょうか。 本記事では、徘徊中に電車にはねられてしまった方の判例を紹介し、徘徊のリスクや原因、対処方法について解説しています。 認知症のある方を介護している家族や介護職におすすめの記事ですので、ぜひ最後までお読みください。 認知症とは [caption id="attachment_2017" align="alignnone" width="512"] Asian caregiver and a senior woman at the room[/caption] 認知症は、一度発達した脳が病気や障害などさまざまな原因により認知機能が低下し、日常生活全般に症状が出てくる状態のことです。 2020年現在、日本国内の65歳以上の人で認知症のある人は約600万人いるとされています。 これはおおよそ6人に1人が認知症になっていることになり、2025年には700万人、5人に1人が認知症になるといわれています。 認知症の症状とは 認知症の症状には、中核症状と周辺症状の大きく2通りに分けられます。 ではどのような症状なのかを確認していきましょう。 中核症状 中核症状は、記憶の障害や、時間や場所がわからなくなる見当識障害や理解力、判断力の低下などがみられる症状です。 脳が萎縮したり脳卒中で損傷を受けたりすることで症状が出現することがあります。 中核症状には以下のような特徴があります。 数分前や数時間前の出来事を忘れている 同じことを何度も言う 同じ物を何度も買ってくる 等 周辺症状 周辺症状は、中核症状を原因として二次的に起こる症状のことです。 記憶や見当識があいまいになることで不安を感じ、心理面や行動面に症状がでてきます。 時間や場所の認識がなく、自分がなぜここにいるのかわからなくなり とりあえず歩き回った結果徘徊に至る 財布をどこに置いたかわからなくなり、身近にいる子や嫁が持っていってしまったと 取り繕うことで物盗られ妄想に至る これまで受けていた介護でも、理解力が低下し何をされるのかわからず 介護者の手を払い除けた結果介護拒否と言われる 認知症のある人の介護でもっとも大変なことの一つは、この周辺症状への対応かもしれません。 徘徊は周辺症状の一つ 徘徊は周辺症状の一つで、目的もなくうろうろ歩き回ることとされています。 介護者からするとただ歩き回っているように見え、何度も繰り返したり、制止が効かなかったりすることがあります。 そのため、介護者にとっては負担を感じやすい症状です。 徘徊に至る要因は、記憶力や見当識が低下することで、その場で起きていることの理解や判断ができない不安から、徘徊という行動をとっていると考えられます。 自分がどこにいるのか、何をしていたのか、周りにいる人が誰だかわからないという状況の中、とても大きな不安を感じている中での行動と言えるでしょう。 安全に歩ける環境であればまだよいですが、認知症により危険に対する認識がなくなってしまうこともあります。 歩道があるのに車道を歩いてしまったり、信号を守れなかったりすることもあるかもしれません。 住み慣れた集合住宅の敷地内を散歩して自宅に戻れなくなる事例も多くあります。 徘徊はなぜ起きる? 徘徊が起こる原因には、いくつか原因が考えられます。 身体的な違和感が原因 徘徊する原因には何かがしたいと思っていたのに、そのことを忘れてしまうため、その違和感により徘徊してしまうのです。 この場合、排泄や飲食をすることで気持ちが落ちつき、徘徊が落ち着くことがあります。 排泄が原因の場合は、主治医に相談をして排泄に関する薬を飲むことで落ち着く場合が考えられます。 日々の排泄など体調管理を行うようにしましょう。 心理的なストレスが原因 夕方や夜になると気持ちが落ち着かなくなり、外に出かけようとする方がいらっしゃいます。 これは認知障害だけでなく、不安や焦燥感などを感じてしまい、その衝動が徘徊になってしまうのです。 ストレスの内容には以下のような事柄があげられます。 ・過去の習慣によるもの ・若い時や数年前の記憶などが蘇ることで誤認してしまう ・判断力や記憶力が低下してしまったため、行きたい場所を忘れてしまう ・不安や不満などによるもの 普段からよく観察し、何がストレスになっているのかを考えたり、ご本人に話を聞いてみてください。 ストレスを軽減することができれば、徘徊の症状を改善することができるかもしれません。 環境によるもの 環境が変わることで居心地悪く感じてしまい、徘徊になることがあります。 ご本人が過ごしやすい環境にし、居心地よくしてあげることで徘徊を抑えることができます。 前頭側頭型認知症 前頭側頭型認知症は人格や社会性をつかさどる前頭葉と、言語や記憶、聴覚をつかさどる側頭葉が萎縮してしまう病気です。 前頭側頭型認知症になると、以下のような症状が現れます。 ・人目を気にしなくなる ・感情が抑制できなくなる ・同じことを繰り返す 前頭側頭型認知症は病気自体が原因で徘徊行動を起こしてしまいます。 徘徊に関する判例(2021年3月28日 京都新聞) 2007年12月7日、愛知県で、妻と二人暮らしをしている高齢男性が電車にはねられ死亡しました。 男性には認知症があり、デイサービスから帰宅後まもなく、妻がうたた寝をした6〜7分の間に外出し、事故に遭っています。 所持金はなかったものの、改札をすり抜けて電車に乗り、一つ先の駅で降りたあと、ホームにおり、フェンスの扉を開けて線路に入った様子でした。 そのため、トイレを探して迷い込んだと見られています。 一審では妻の居眠りが過失にあたり、介護方針を決めていた別居の息子にも監督義務があったとして、2人は約720万円の支払いを命じられました。 二審でも、対象者から息子を外し、支払額を半額の360万円とした判決がでています。 この判例は、認知症のある方の介護をしている介護者から大きな反響があり、社会問題となります。 徘徊のある人に対して24時間見守り続けなければならず、家に鍵をかけて閉じ込めておくしかないのかと、ニュースでも連日報道されていました。 その後の2016年3月、最高裁は請求を棄却し、認知症の人による事故で防ぎきれないものまでは家族が責任を負わない、とするはじめての判決が下されたのです。 徘徊への対処方法 上記判例では逆転勝訴で無罪という判決がでましたが、事故が起きてから判決がでるまで9年かかりました。 この間の家族の不安は想像に絶します。 大きな事故や裁判に至らなくても、徘徊に関するトラブルは後を絶ちません。 そして、徘徊自体をなくすことは自宅や部屋に鍵をかけて閉じ込めてしまう以外には難しいでしょう。 では、認知症により徘徊のある人に対してどう対処していけば良いかを、一つずつ解説していきます。 関わりによる対処方法 徘徊している本人に対し、介護者の見守りや声かけで対応をします。 辻褄の合わないことを行っている時でも、否定はせず本人なりの徘徊の理由を理解しましょう。 なぜ歩いているのか理由を聞くだけでも安心できる場合もあります。 帰宅願望などで「家に帰ります」と言いながら歩いている場合でも、「外は寒いので上着をきましょう」「車を呼んでいるからお茶を飲みながら待ちましょう」などと、気を逸らすことも効果的です。 サービスや福祉用具による対処方法 どんなに上手に介護していても、1人で認知症のある方の介護を続けるには限界があります。 デイサービスやショートステイなどの介護保険サービスをうまく使い、プロに任せられる部分は任せましょう。 少しでも介護から離れる時間を作り、介護者が自由に使える時間を作ることも大切なことです。 また、ベッドや自宅の出入り口などにセンサーを設置することで、徘徊に速やかに気づけます。 認知症のある本人を閉じ込めるのではなく、動きを察知して対処することが可能です。 地域と連携する対処方法 徘徊だけでなく、認知症のある方の介護をしていくには、地域との連携を図ることが大切です。 家族だけで介護していくにはいずれ限界がやってきます。 本人が不安がっていたら声をかけてもらうよう近所の方に話をしておいたり、ゴミの出し方を間違えているようであれば、否定しないように指摘してもらったりすることも効果的です。 家族だけが抱え込むのではなく、うまく地域と連携しその方をケアすることで本人も家族も安心して生活できます。 まとめ いかがでしたでしょうか。 本記事では、認知症による徘徊から電車にはねられ訴訟に至った判例や、徘徊への対処法について解説しました。 認知症の症状には中核症状と周辺症状がある。 徘徊は周辺症状の一つで、介護者にとっては負担感の大きいものである。 周囲から見ると、目的なく歩き回っているように見えるが、認知症による記憶や見当識 理解力や判断力が低下したことで起こる不安から出てくる症状である。 対応としては否定するのではなくその人の不安を取り除く関わりが必要。 介護者だけが抱え込むのではなく、介護保険サービスやセンサーの活用 地域との連携が徘徊への対処方法として大切である。 今後認知症がありながらも地域の中で暮らしていく方は増えていきます。 徘徊で自宅に帰れなくなる場面に出くわすこともあるかもしれません。 地域によっては徘徊と呼ばずに「ひとり歩き」と言う地域もあります。 認知症のある方の不安を取り除けるよう対処し、本人も介護者も安心して生活できるように関わっていくようにしましょう。
「将来、自分が認知症になったらどうなるんだろう?」 「詐欺や悪徳商法に遭うんじゃないか?」 そんな不安を抱えていませんか? 成年後見制度は、そんな不安を抱えているあなたにぴったりの制度です。 この記事では成年後見制度について分かりやすく解説していきます。 成年後見制度とは? 成年後見制度は「認知症」や「障害のある方」でも、地域社会で安心した生活が送れるように制定された制度で、介護保険制度と共に平成12年にスタートしました。 自己決定の尊重を理念におき、財産と権利を守ることを主な目的としています。 成年後見制度には2種類ある 成年後見制度には「任意後見制度」と「法定後見制度」の2種類があります。 ①任意後見制度 任意後見制度は自分の「判断力がはっきりしている時」に、「支援してくれる人(後見人)」と「支援してほしい内容」を自分の意思で決める制度です。 将来の不安に備えて、あらかじめ助けてくれる人(後見人)を決めておく制度になります。 ②法定後見制度 法定後見制度は家庭裁判所に後見人を選任してもらう制度です。 認知症などにより本人の判断能力が低下した際に、「この人には助け(後見人)が必要だ」と判断した人が家庭裁判所に申し立てを行います。 すでに判断能力が低下しているため「後見人の選定」や「支援内容」について本人の意思を介在させることは困難になるでしょう。 法定後見制度は本人の判断力に応じて3つの種類に分けられます。 補助…判断能力がある程度低下した人に適用される。3つの中では最も軽い類型 保佐…判断能力が相当程度低下した人に適用される。3つの中で中間に位置する類型 後見…判断能力がほとんどなくなった人に適用される。3つの中でで最も重い類型 任意後見制度も法定後見制度も支援内容にほとんど違いはありません。 あらかじめ信頼できる人に後見人を頼みたいのであれば、元気なうちに任意後見制度の手続きを進めておきましょう。 そもそも誰が成年後見人になれるの? 実は成年後見人になるために必要な資格や規定は設けられていません。 欠格事由(成年後見人になることができない要件)に該当してなければ、誰でも成年後見人になることは可能です。 では欠格事由にはどのようなものがあるのでしょうか。 未成年 過去に後見人を含む法定代理人を解任されたことがある人 破産者 被後見人に訴訟を起こした人とその配偶者 行方不明者 その他不正な行為を行うなど後見人に適さない経歴がある人 これらの欠格事由に該当しなければ、基本的にだれでも成年後見人になれます。 成年後見人の役割は?何をするの? 成年後見人の役割は「判断能力が不十分になった人のサポート」です。 より詳しく説明すると「財産管理」「身上監護」「職務内容の報告」の3つに分けられます。 ①財産管理とは? 財産管理とは成年後見人が本人の財産を適切に管理をすることです。 具体的には下記のようなものがあります。 現金や預貯金の管理 不動産や資産などの管理 税金の申告と納税 年金の申請や受取 契約の締結および取り消し ②身上監護とは? 身上監護とは本人の生活や安全、健康を守るために必要な役割を果たすことです。 具体的には下記のようなものがあります。 病院での手続きや支払い 医療や福祉サービスの契約や手続き 住居の契約や支払い 介護保険の認定申請 郵便物の管理 ③職務内容の報告とは? 成年後見人は「財産管理」と「身上監護」を適切におこなっていることを明らかにするために、家庭裁判所に対して報告する役割も担います。 報告は自主的におこなう必要があり、「後見等事務報告書」「財産目録」「預貯金通帳のコピー」「本人収支表」の4つの資料を提出しなければなりません。 成年後見制度メリット3選 ここでは成年後見制度のメリットについて見ていきましょう。 ①成年後見制度の開始後に行った不当な手続きを取り消すことができる 判断力の低下した人を狙った詐欺は世の中に横行しています。 リフォーム詐欺や健康食品の大量購入など、様々な詐欺のニュースを見聞きしたことがある人もいるのではないでしょうか。 成年後見制度では、後見人を通さずに本人が行った不当な契約などを取消したり、代金の返還を求めたりすることが可能になります。 ②財産を守ってくれる 家族や親族の中には本人の財産を勝手に使ってしまうケースがあることも否定できません。 成年後見制度では後見人が銀行に対して、成年後見人になった旨を届け出ることで、成年後見人以外の人が預貯金を引き出すことができなくなります。 ③後見人の監視機能がある 事案にもよりますが家庭裁判所は「成年後見監督人」を選任することができます。 成年後見監督人は、後見人が不正な行為をしてないか確認する役割があります。 また、家庭裁判所は成年後見人が著しく不正な行為を行った場合、諸手続を通じて、成年後見人を解任することができます。 成年後見制度デメリット3選 成年後見制度にはデメリットもあるため、しっかりと確認しておきましょう。 ①自分の財産が自由に使えない 成年後見制度は本人の財産を管理し維持する制度です。 そのため自分で財産を使う行為は制限されてしまいます。 ②後見人へ報酬を支払う必要がある 成年後見人は判断能力の低下した人の代理となり、様々な手続きをこなさなければなりません。 当然ですがそこには報酬が発生します。 成年後見人に一般の人を選任する場合は3万円以下で報酬が設定されることが多いですが、弁護士や司法書士などの士業に依頼する場合3~6万円くらいが相場になります。 毎月のコストになるため慎重に検討することが重要です。 ③後見人を簡単に変えられない 家庭裁判所で後見人が指定された場合、基本的に本人が亡くなるまで後見人を務めることになります。 報酬を支払いたくないからといって、途中で利用をやめることはできません。 ただし後見人が著しく不適格な場合、家庭裁判所は成年後見人を解任することは可能です。 下記に民法の条文を記載します。 民法第846条「後見人に不正な行為、著しい不行跡その他後見の任務に適しない事由があるときは、家庭裁判所は、後見監督人、被後見人若しくはその親族若しくは検察官の請求により又は職権で、これを解任することができる」 まとめ ここまで成年後見制度について解説してきました。 「まだ若いから大丈夫」「自分には関係ない」と考えている人もいるのではないでしょうか。 しかし人間は誰でも年齢を重ねていきます。 年齢を重ねるにつれて判断能力が衰えるのも避けられない事実です。 最後にポイントを整理しておきましょう。 今だからこそ将来の不安に備えておくことをおすすめします。 成年後見制度には2種類ある 「任意後見制度」…元気なうちに自分で後見人を決めておくことができる 「法定後見制度」…判断能力がすでに低下した時に家庭裁判所が後見人を選定 成年後見制度は詐欺や悪徳商法から大切な財産を守ってくれる制度である 成年後見制度は自分の身を守るために必要な「医療」や「福祉」の架け橋になってくれる制度である 成年後見制度は「自分の財産が自由に使えない」というデメリットもあるため、注意が必要である 成年後見制度は「後見人への報酬」というランニングコストが必要になるので、事前に確認しておく必要がある 判断能力が低下してから困るのではなく、事前に任意後見制度を活用して将来に備えるのも1つの手である 最後までお読みいただきありがとうございました。
訪問介護のヘルパーはサービス時でも、医療行為や医療機関との連携を求められる状況が発生する場合もあります。 今回は、そんな状況時での対応の仕方について紹介します。 介護なのに医療行為? 訪問介護でのヘルパーさんのボーダーライン 利用者宅へ訪問し、介護サービスを行うヘルパーですが、利用者の日常生活には些細な形でも医療行為を必要とする様な事態や、簡単な処置対応を求められる事があります。 ・自宅で家具にぶつけてしまい、手に小さな擦り傷ができてしまった。 ・高血圧と診断されており、毎日血圧を測るように主治医から言われている。 ・脊柱管狭窄症の為、屈伸動作が難しくなかなか足の爪が切れない。 ・ドライアイが強く、医師より点眼薬が処方されている。 ・加齢による乾皮症で、ワセリンが処方されている。 ・利用者の手が不自由な為、口腔ケアや義歯洗浄ができない。 サービス開始前のケアマネージャーや訪問介護事業所側のモニタリングやアセスメントで以下の事柄を確認します。 ・利用者のADL(日常生活動作)やIADL(手段的日常生活動作) ・身体的にどういった動作ができて、どういった動作が難しいのか ・日常生活では何ができて何が難しいのか ・傷病歴や生活環境等 基本的には、ケアマネージャーの立てたケアプランに則り、訪問介護計画が立てられサービスを行うのですが、時に身体介護においてこれは医行為ではないのか?とヘルパーが判断に迷う事もあります。 基本的に訪問介護のヘルパーは医療行為を行う事はできませんが、下記の図の様に厚生労働省より「医行為ではないと考えられる」とされる事例があるので参照して下さい。 例えば訪問介護サービスにおいて、食事介助と図の⑤にある様に食後の口腔ケアと義歯洗浄まで訪問介護計画にある場合は、計画通りサービスを行わなければなりません。 私達も普段の生活で、食事の後に歯みがきをしたり、人によっては義歯のケアをする事は何の疑問も持たないでしょう。 利用者も同じで、口腔内外に炎症も病例も特に何も無く、食事を安全に行った後の清潔保持の為に行う口腔ケアや義歯洗浄は、ケアプランに立てられていれば、ヘルパーは口腔ケアの介助や見守り的援助にて対応します。 但し、利用者の口内に歯周病や酷い歯槽膿漏があったり、口腔内潰瘍やヘルペスの症状があり医師による診察や治療が行われている状態での口腔ケアや義歯洗浄となると、話は違ってきます。 明らかに医師の対応が必要となる状態=重篤な状態での口腔ケアを行う時は、必ず医師の指示書や看護師の指導の下にサービスを行う必要があります。 そういった場合では基本的には処置や医療行為を求められる為、軽微な状態とは言えず介護対応はできません。 その際は訪問介護ではなく訪問看護での対応となる場合もあるので、利用者の状態においては安易に自己判断したり利用者の言い分要求を鵜呑みにして言われるまま対応したりせず、ケアマネージャーや訪問介護事業所等に報告した上で正しく利用者に応じる等の注意が必要です。 訪問介護でヘルパーができる医療行為は、利用者の心身状態が安定しており、入院の必要が無く、医療技術や専門的な管理、処置を伴う事が無い状態である場合に軽微で簡易的なもののみ行えるものです。 ヘルパーができる医療行為の例外として、研修を受講した介護福祉士が行える喀痰吸引と経管栄養がありますが、「たん吸引は咽頭の手前まで」や「経管栄養の胃ろうや腸ろうの状態確認は看護師対応」等行為にはできる行為とできない行為があるので注意が必要です。 医療機関で訪問介護? 訪問介護はその名の通り、ヘルパーが利用者宅にて訪問して行われるものですが、利用者宅から出て対応する事が必要とされる場合もあります。 日常生活に必要な動作であれば、訪問介護として認められるものもあり、その認められるものに「医療機関への受診対応」も条件によっては可能です。 「ちょっと風邪ひいたから病院行ってくる。」 「毎月の定期受診だから月末病院に行かないといけない。」 「入れ歯のかみ合わせが悪くてご飯が食べにくい、歯医者に掛からないといけない。」 様々な理由により、生活に医療が関わってくるものですが、基本的に医療機関への受診対応は訪問介護ではできないとされています。 ですが、医療機関への対応が利用者一人では困難な場合や利用者の取り巻く環境や、介護を要する事が明らかに認められる状況によっては、事前対応次第で訪問介護にて対応する事が可能となります。 【院内介助ができる条件】 ①要介護度1~5の認定がある利用者 ②医療関係者の介助が望めないと事前に確認済の場合 ③当日、家族や身内の通院付添いが望めない場合 ④院内で常時見守りや介助が必要とされる場合 介護タクシーを利用される場合、訪問介護の基本として当然ながら病院内の院内介助は医療機関対応の為行えませんが、上記にある①~④全てに該当する場合は対応可能となる事もあります。 ここで注意したいのは、ヘルパーが介助できるのは受診受付、院内での移動や、トイレ介助、病院代支払い、薬の受取りです。 心身不安定で一人で待ち時間を過ごす事が困難な場合は条件により介助可能ですが、検査や処置、診察は医療対応の為、介護保険である訪問介護のヘルパーは対応できません。 では、認知症の傾向があったり、または視聴覚が困難な利用者が訪問介護を利用して受診した場合、どうなるでしょうか? 医師の診察において病状の報告や診断結果を受け対応する事は医療対応の為、訪問介護では対応できない事とされています。 この場合は上記でも述べましたが、事前対応によりヘルパー同席が可能になる事もあります。 全ての自治体が事前対応可能とは限らない為、利用者居住区の自治体に相談が必要です。 対象となる利用者が、どの動作に介助を要するのか、またはどこからが医療対応で介護対応では無くなるのかをよく確認した上で線引きし、対応しなければなりません。 介護側が計画通り対応を行っていても、突如介助や見守りを要する事があったり、医師や看護師の説明を聞いたり、利用者の状態を報告したりと、医療と介護の対応が混乱する事も多々ある為、その場その場に応じた臨機応変な対応が求められます。 医療機関で訪問介護(通院介助、院内介助)を行う為に必要な事は下記の図を参照して下さい。 あくまでも「訪問介護対応」で介助しないと病院に受診する事ができない為に、ヘルパーを介して行われるものが、通院介助または院内介助です。 訪問介護対応という事は、先程にもあった通り事前確認やそれに伴う打合せや会議、計画書の作成、記録または報告書の作成等が必要となるという事です。 要介護度認定があっても看護師の介助があれば一人でも受診できたり、医師とのやり取りが可能な場合は、ヘルパーは立ち入る事はできません。 身内や家族の様に寄り添う気持ちは大切ですが、介護保険を利用している事を忘れずに対応しましょう。 皮膚は人の身体の信号機です 訪問介護では、要介護の利用者でも自身で何等かの形でも動ける利用者と、自身の思うようには動けない利用者がいます。 (ここでは、施設や医療機関に入所せず自宅で家族の援助を受けながら過ごす寝たきりに近い状態を指します。) そういった利用者への介護は、ほぼ身体介護メインである事が多いのですが、「寝たきり」状態である場合、ケアマネージャーのプランを踏まえた上で更に注意すべき点がいくつかあります。 ヘルパーは訪問介護を通じて利用者の状態を確認した上で、「おかしいな?」「あれ?前回より状態悪くなってる!」と感じたら、状況や状態の報告を行い、適切な判断や今後の対応を検討しなければなりません。 図の①や②の場合は、状況によっては医師の診断が必要になりますし、介護ではなく訪問看護対応となる事もあります。 図③の場合、医師の診断やケアマネージャーとの検討、利用者の身体状態によっては訪問リハビリ対応となり、介護との連携を図っていく形になる事もあります。 図④~⑤に関して特に図④の場合、皮膚に状態悪化がみられ、褥瘡が確認された場合は注意が必要です。 褥瘡部への処置は医療行為ですので介護では対応できませんが、排泄により患部周辺が汚染された場合は、清拭対応としてヘルパーが介護を行います。 排泄物で汚染されたまま放置では状態悪化に繋がる為、排泄汚染されている場合は、患部周辺の洗浄、ガーゼやパットの交換、おむつやリハビリパンツの交換はヘルパーが対応します。 褥瘡、床ずれは同じ体勢により同じ個所に体圧が掛かってしまった場合にできる事が多いので、体位を定期的に動かし圧を分散させる必要があります。 それと同じくして、栄養摂取においても食事による栄養が摂取できなくなり、低栄養になってくると褥瘡ができやすく、また発症しても治りにくくなってしまいます。 食事による栄養摂取の為には、嚥下状態も大きく関わってきますし、上下肢の動きも体圧分散に繋がる上に、排泄などの基本的な身体動作に上下肢の動きは必須な為、その動作が維持できるかどうかは褥瘡発症のリスク増減に関わってくるので注意が必要です。 図①~⑤は全て連動しており、訪問介護でヘルパーが対応する介助は一つ一つが全て重要なものであると同時に、目に見えてその状態の良し悪しを教えてくれるのが「利用者の皮膚」であったりします。 ・特に状態に問題なく、その利用者なりの日常生活が送れていたら青信号です。 ・日常生活は送れているけれども、何らかの「あれ?おかしいな?」が みられたら黄信号です。 ・はっきりと異常が確認されたら赤信号で、医療対応が必要です。 介護で対応すべき範囲と医療で対応すべき範囲を理解し、利用者から出される信号を正しく受け取り、日常生活を送るという道路を走る車の一つが介護であると考えられるならば、訪問介護にて ヘルパーがどう対応すれば良いのかが分かってくるでしょう。 まとめ 今回は、訪問介護のヘルパーが、医療行為や医療機関との連携を求められる状況時での対応の仕方について紹介しました。 ・利用者の日常生活には、医療行為を必要とする様な事態や簡単な処置対応を 求められる事があり、基本的には医療行為はできないが、介護で対応可能と 解釈されたヘルパーができる医療行為がある。・ヘルパーができる医療行為でも、医療(医師や看護士等)との連携が求められる。・医療機関への受診対応も訪問介護サービスの一つであり 介助を行うには条件や事前または事後の対応が含まれる。・通院または院内介助を計画されサービスを実施しても 介護で行えるサービスと行えないサービスがある。・訪問介護で寝たきりや思うように自身で動けない利用者へのサービスでは ケアプランの他にも気を付けなければならない点があり、実際サービスに入って 認識や確認できる事が少なくない。・嚥下、栄養、可動域、皮膚、排泄の5点は連動しており 皮膚状態は身体全体の良し悪しを現す信号である。 ・状態の変化の気付きを意識して生活状況の対応をし、状態の異常時は すぐに医療との連携を図る事ができる最前線にいるのがヘルパーであるので 訪問介護時はサービスは繋がっている事を意識して行う。 「医療と介護の連携」と言われると難しく捉えられがちですが、基本的にできる事やできない事をきちんと踏まえた上で、サービスを行えば特に問題はないのです。 訪問介護で身体介護を行う、通院または院内介助を行う、身体介護で利用者の状態をよく確認する、これらは全て利用者の日常生活を安全に送る為の一つで、全ては連動しているのだと考えられたならば介護に対しての理解も深まるでしょう。 不安を持ったままサービスを行えば利用者にも不安が伝わります。 「ヘルパーは介護のプロだ」と自信を持って訪問介護サービスを行いましょう。
介護保険を使った訪問介護。 実は生活援助と身体介護には違いがあります。 今回はその点をご説明します。 生活援助って何? 介護の業界を知らない人に「生活援助と聞いて何を連想しますか?」と聞いたことがあります。 その方は「高齢者の出来ない買い物とか、掃除とかですか?」と答えていました。 それも生活援助の一つですが、細かく言うと他にもたくさんの生活援助の内容があるのです。 この章では生活援助の中身をご説明していきます。 生活援助でやってはいけないこと 生活援助とは身体介護以外のサービスで、ご利用者様が日常生活で行う活動内容を、代わりに訪問介護ヘルパーが行う支援のことを指します。 ここで注意点があります。 生活援助はあくまで「ご利用者様本人の生活」に必要なサービスに限定されるのが基本です。 そのため、生活援助で行っては行けないことがあります。 以下のようなサービスは生活援助のサービス外です。 ・ご利用者様が飼っているペットのゲージの掃除や散歩などの世話 ・ご利用者様以外の食事を作る(ご利用者様の家族など) ・ご利用者様本人が使わない部屋や、庭の掃除 ・イベント時に特別な料理を作る ・ご利用者様の家族の買い物 ・家電や家具などの移動や修理 ・車の運転代行 ・ご利用者様の家にある車の清掃 ・預貯金の引き出し代行、お金を扱うこと ・家にある植木や、草花の手入れ ・酒やタバコなど嗜好品の購入代行 ・室内の電球取り替え ・ご利用者様が家にいない状態での留守番サービス 訪問介護を実際に行うと正直なぜ行ってはダメなのか分からない内容もあります。 例えば電球の交換などは行なってもいいように感じます。 しかし、実際は禁止されているのです。 このように、生活援助と言ってもやっていいこと、やってはいけないことがあることを事前に利用者にお伝えしておかなくてはいけません。 その上で生活援助の内容をご説明していきます。 生活援助でやっていいこと 基本的な決まりとして、生活援助は「ご利用者様本人の生活」に必要なサービスに限定されるとお伝えしました。 この決まりを踏まえて今から生活援助の具体的な内容をお伝えしていきます。 買い物代行 このサービスはご利用者様が生活する上で必要な食材や日用品などをメインに、生活に必要なものだけをヘルパーが代わりに買い物代行するサービスになります。 掃除代行 このサービスは、ご利用者様の住環境の清潔な環境を整えるためのサービスです。 ご利用者様によっては、右半身麻痺だけど自分で歩ける人もいたりします。 そのような方は、掃除を自分で行えないことがあるので、ヘルパーが代わりにゴミを集めたり、床の掃除を行なったりします。 実際、1時間ほどでトイレ、居室、お風呂の掃除のみのサービスなどもあります。 洗濯代行 ご利用者様が使用した衣服や、生活の中で汚れたものなどを洗濯するサービスです。 過去に干したものを回収し、洗濯したものを干すまでがサービスの一つです。 場合によっては、訪問した時に汚れたシーツや身の回りのものがあれば、それも洗濯することもあります。 ベッドメイキング 訪問介護の仕事をしていると、訪問先のベッドメイキングの仕事もあります。 このサービスは、経験上あまり行なったことはありませんが、ごく稀にサービスとして行うことがあるので、覚えておいて損をすることはないと思います。 伺うお宅によって使う布団やシーツの種類なども違うので、臨機応変にサービスの行い方を学ぶことができます。 衣類の整理、被服の補修 ご利用者様の生活を守る上で、衣服の整理や被服の補修は重要になってきます。 認知症のご利用者様などは暑い真夏の季節でも厚手のダウンを着ようとする方もいます。 そのような方がいることもあるので、季節に合った衣服の準備や整理整頓、被服の補修はご利用者様の生活を守る上で重要になってきます。 薬の受け取り代行 ご利用者様の生活の中で重要になる薬の受け取り代行も生活援助の一つとして行います。 訪問介護をしていると、ほとんどのご利用者様が薬の内服をおこなっているので、ご利用者様によっては薬の受け取りを行うサービスを必要としている人もいます。 重要なので覚えておきましょう。 身体介護って何? この章では身体介護についてお伝えしていきます。 結論からお伝えすると、身体介護はご利用者様の体に触れてサービスを提供するものです。 具体的は以下の内容になります。 ・ご利用者様の体に直接触れて行う介助サービス ・ご利用者様の自立支援・重度化防止のためのサービス ・その他の専門的知識・技術を要する生活上のサービス (出典‘厚生労働省「「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」」の一部改正について」) ではさらに細かく分解するとどのようなサービスなのかをご説明していきます。 身体介護の種類と内容 では、身体介護はどのような種類と内容があるのか、詳しく解説していきます。 食事介助 身体介護の中でも代表的な食事介助ですが、主に食事をご自身で食べることが難しいご利用者様を対象に行う介助です。 食事介助は、見守りで大丈夫な場合と一部を誘導やお手伝いすれば大丈夫なもの、また全ての介助をしなければならないものと3パターンに分かれます。 他に食事形態の面でも違いがあり、ヘルパーはご利用者様がどの職形態で食べれるかも把握して、介助を行う必要があります。 介助方法もご利用者様によって違い、食具も変わります。 食事介助は、多岐に渡り注意しながら行う必要のある介助です。 排泄介助 排泄介助は、何パターンかに環境が分かれています。 ①トイレで排泄する場合 ご利用者様の身体状況で大きく変わりますが 職員1人で介助可能な方もいれば、職員2名で対応する必要のある方もいらっしゃいます。 ②ベッドなどで排泄介助をする場合 主にトイレで排泄介助困難なご利用者様が、この状態にあたります。 この場合職員1人で行うときと、2人で行うときがあります。 理由としては、ご利用者様の身体状況などで大きく変化するためです。 ベット上での排泄介助は必ず体位変換が必要となるのですが、その体位変換が職員1人で行えない時などは職員2名体制で行います。 更衣介助 主に起床した時と寝る前に行うことが多いです。 その他にもイベントの時や、入浴の前後などにも行います。 更衣介助は基本的には職員1人で対応できるご利用者様が多く、更衣の時は「脱健着患」を守り介助を行います。 「脱健着患」とは 健康な手や足から服を脱ぎ、患側(体の一部が麻痺してて動かない等)から服を着る事で ご利用者様の負担を少なくする基本となる介助ルールです。 入浴介助 もう一つ代表的な介助が入浴介助です。 これは全身浴と部分浴に分かれます。 全身浴とは、全身を洗い湯船に入浴していただく一般的な入浴介助で、部分浴は足のみ、もしくは手や頭のみを洗浄するといった、部分的な入浴のことを言います。 身体状況と目的別でこの全身浴と部分欲は分かれますが、この介助も技術力が必要な介助なのでしっかりと学び行う必要があります。 まとめ 今回は介護保険適応時の生活援助と身体介護の違いについてご紹介しました。 ・生活援助はご利用者様の体に触れることなく ご利用者様の身の回りの生活のお世話を生活援助という。・身体介護は、ご利用者様の体に触れて介助を行う。 この2つの違いは、ご利用者様の体に触れてサービスを提供するかどうかが、大きく違うものになってきます。 最後までお読み頂きましてありがとうございます。
介護保険制度では、要介護度によって受けられるサービス料の上限が決まっています。 ケアマネジャーは、決められた上限の範囲におさまるようにサービスを調整しなければなりません。 本記事では、介護保険の上限が決まっていることや、この上限を超過した場合の対策、自己負担を軽くする制度について解説します。 介護保険の上限は区分支給限度基準額で決まっている 介護保険のサービスは、訪問介護やショートステイ等のサービスごとに使用できる単位数が決められています。 そして、要介護度によって1ヶ月間に使用できる単位数の上限が決められており、それを区分支給限度基準額といいます。 区分支給限度基準額とは 区分支給限度基準額とは、要介護度ごとに設定された介護保険サービスの月の上限を単位数として設定しているものです。 介護保険はサービス毎に単位が決められており、ケアマネジャーは区分支給限度基準額を超えない範囲で、サービスを組み合わせて調整します。 利用者の自己負担は、所得によって1〜3割に設定されていますが、在宅介護を続けていくと、加齢やADLの低下にともない必要なサービス量は増えるものです。 サービス量が増えると、自己負担とともに介護保険の公的なお金の利用も増えていきます。 しかし、財源に限りがあるので上限が設けられているため、その範囲内でサービスを調整するよう求められています。 ○在宅サービスの区分支給限度額と自己負担額 区分 支給限度基準額(単位) 利用限度額 (円) 1割負担の時の 自己負担額(円) 要支援1 5,032 50,320 5,032 要支援2 10,531 105,310 10,531 要介護1 16,765 167,650 16,765 要介護2 19,705 197,050 19,705 要介護3 27,048 270,480 27,048 要介護4 30,938 309,380 30,938 要介護5 36,217 362,170 36,217 ※1割負担、1単位=10円の場合 参考:目黒区 区分支給限度額(介護保険から給付される一か月あたりの上限額) 区分支給限度額を超過すると全額自己負担になる 区分支給限度基準額を超過してしまった場合、超過した分の介護保険は利用できないので、全額自己負担で支払うことになります。 例えば、1割負担で要介護5の人が1ヶ月に400,000円分の介護保険サービスを利用したとします。 1割負担の支払額は40,000円ですが、限度額は36,217円なので、40,000−36,217の3,783円分超過してしまいます。 この場合、超過した3,783円は全額自己負担になりますので負担額は10倍の37,830円です。 全ての負担額の1割負担分の36,217円と全額自己負担分の37,830円を足して、74,047円がこの方の自己負担額になります。 急に負担が増えてしまいますので、ケアマネジャーは上限の範囲内でサービス調整する必要があります。 介護保険の上限を超えないようにするための対策の一つは、要介護度の区分変更を申請することです。 介護保険の上限を超えないようにするには区分変更を申請する 介護保険の上限を超えないようにするには区分変更申請が有効です。 要介護度が上がると区分支給限度基準額が上がりますので、利用できるサービスの量を増やせるからです。 例を挙げると以下のようになります。 要介護1の時は車椅子のレンタルができなかったが、要介護3になったらできるようになった。 要介護2では他のサービスとの兼ね合いでショートステイが1週間しか利用できなかったが、要介護4になったことで10日利用できるようになった。 特養入所を考えているが、要介護2の状態では入所できないので要介護3以上にしたい。 上記のように、区分支給限度基準額を超えてしまいそうな時は区分変更申請が有効です。 ケアマネジャーとして、利用者本人や家族の生活状況を見ながら提案してみるのもよいでしょう。 しかし、ご利用者様のご家族から「要介護度が上がると自己負担が増えてしまうので困る」という声が聞こえてくることもあるかもしれません。 次は自己負担を軽減させる制度について解説していきます。 介護保険の自己負担を軽くする制度 在宅介護を続ける上で、費用負担を軽くすることも大きなポイントです。 ここでは、自己負担を軽くする制度である「高額介護サービス費」「介護保険負担限度額認定」や、「介護保険料を滞納すると自己負担が増える」ことについて説明します。 高額介護サービス費 参考:厚生労働省 令和3年8月利用分から高額介護サービス費の負担限度額が見直されます 高額介護サービス費は、「1ヶ月に支払った利用者負担の合計が所得に応じた負担限度額を超えた時に、超えた分が払い戻される」制度です。 例えば、市町村民税が課税されていて課税所得が380万円未満の人は、上限額44,400円になっているので、1か月の費用が50,000円かかった場合後から6,000円が返還されます。 介護保険の給付対象外の食費や、全額自己負担分は対象にはなりません。 該当する時に、市町村から申請書が届きますので、必要事項を記載して役所へ提出します。 次回以降は自動で振り込まれますが、はじめに申請をしないともらえないので注意が必要です。 介護保険負担限度額認定 介護保険負担限度額認定は、ショートステイや特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院などの介護保険施設を利用する際の負担軽減対策です。 これらの施設の利用料金は、介護保険の自己負担分(1〜3割負担)と食費、居住費が主なものになります。 このうち、食費と居住費が住民税の課税状況や年金額、預貯金などによって段階的に減額されます。 施設入所の場合は通常15〜16万円かかる利用料金が半額程度になる場合もあります。 要件が複雑ですので、役所の介護保険窓口で対象になるのかどうか確認してみてはいかがでしょうか。 介護保険料の滞納 こちらは自己負担を軽くするというよりは、負担を重くしないようにするための注意点です。 40歳から納付義務のある介護保険料は、健康保険料とあわせて納付します。 年金を受給するようになると、特別徴収といって年金から天引きされるのが基本です。 ただし、年金額が年間18万円未満だったり年度途中で65歳になったり、引っ越したりすると普通徴収になり、納付書や口座振替で支払うことになります。 介護保険料を滞納すると、期間によって以下のようなペナルティが課せられるので、注意しましょう。 滞納期間 対応 内容 1年以上 介護保険給付の支払い方法の変更(償還払い化) 通常1〜3割負担のところ、一旦10割支払い、その後申請をして7〜9割分の払い戻しを受ける。 1年6か月以上 介護保険給付の一時差し止め 一旦10割支払った後、7〜9割の払い戻しが差し止められる。介護保険料を支払えば払い戻されるが、支払わないと差し止め分から差し引かれる場合がある。 2年以上 介護保険給付の減額 時効により介護保険料が納付できなくなる。 また、通常1〜3割の自己負担が3〜4割負担になり、高額介護サービス費の対象外になる。 介護保険料を滞納すると上記のようなペナルティが課され、自己負担が重くなります。 滞納すると市町村から督促状や催告書が送られてきますので、速やかに納付しましょう。 まとめ いかがでしたでしょうか。 本記事では、介護保険の上限や、上限を超過した場合の対策と、自己負担を軽くする制度について解説しました。 介護保険の上限は区分支給限度基準額で決まっている 区分支給限度基準額を超過すると、超過した分は全額自己負担になる 区分支給限度基準額を超えないようにするには要介護度の区分変更申請が有効 介護保険の自己負担を軽減させるには、高額介護サービス費や介護保険負担限度額認定などの制度を活用する 介護保険料を滞納すると自己負担が重くなる場合がある 介護保険の制度は複雑で、利用者やその家族が自ら理解して制度を活用することは現実的ではありません。 ケアマネジャーには利用者やその家族が安心してサービスを受けられるよう、制度をうまく活用し導く役割が求められています。 最後までお読みいただきありがとうございました。
介護認定結果の通知を受け、いざサービスを利用・継続しようと思ったものの、 「希望するサービスが受けられない」 「介護の手間は増えているのに介護度が低くなり、今まで受けていたサービスが受けられなくなった」 ということが起きることがあります。 状態に適した認定結果をもらうために、介護認定調査時のポイントについて説明します。 介護認定申請とは 介護保険によるサービスを利用・継続するには、要介護認定の申請を行う必要があり、介護保険申請書が必要となります。 40~64歳までの第2号被保険者が申請を行う場合には、要介護状態等の原因である身体上及び精神上の障害が特定疾病によることが要件とされています。 認定調査とは 介護認定には、認定調査員が行う「認定調査」と主治医が作成する「主治医の意見書」の2つの書類が必要になります。 認定調査は新規申請を除き、介護認定有効期間の満了の日の60日前から満了の日までに市町村へ提出します。 申請後は、市区町村の職員または委託を受けた介護支援専門員が自宅や施設などを訪問し、心身の状況に関する調査を行います。 主治医意見書の作成については市区町村が主治医に依頼をしますが、主治医がいない場合は、市区町村の指定医の診察が必要です。 認定調査員とは 令和2年4月 1日 より指定市町村事務受託法人における認定調査は介護支援専門員が行うことを基本とはしています。 しかしm介護支援専門員その他の保健、医療または福祉に関する専門的知識を有する者が行うこともできるようになりました。 厚生労働省「要介護認定等の実施について」の一部改正について.pdf 認定調査内容とは 認定調査は74項目の基本調査と特記事項からなり、認定調査の74項目は大きく次の5つの群と3軸の判定から成り立ちます。 認定調査の5つの群 ・1群 身体機能・起居動作 ・2群 生活機能 ・3群 認知機能 ・4群 精神・行動障害 ・5群 社会生活への適応 判定基準の3軸 ・能力を確認して判定する ・介助の方法(生活を営む上で他者からどのような介助が提供されているか) ・障がいや現象(行動)の有無 これらの5つの群を3軸の内容を組み合わせて調査することにより、タイムスタディに基づく樹形モデルから、申請者にかかる介護の手間としての「要介護認定等基準時間」が算出されます。 介護度が決定する仕組み 介護認定は一次判定結果をもとに二次判定で審査され決定します。 一次判定とは、調査結果および主治医意見書の5項目をコンピューターに入力し、全国一律の判定方法により要介護度が判定されます。 一次判定の結果と主治医意見書に基づき、介護認定審査会による要介護度の判定が行われることを二次判定といいます。 そのため、一次判定結果の内容で例え要介護状態であっても、審査会で要支援状態になることがあります。 認定審査会に伝わる特記を書いてもらうには 判定基準の能力判定および介助の方法については、原則として実際に出来るか、出来ないか、介助が行われている、いないかで選択します。 認定調査時に普段は行えていない動作を無理に行うことや、出来ていない事も自分で行っていると答えてしまう可能性があります。 本人の返答が事実と違う場合も想定されるため、調査員に伝えやすいよう本人の死角になる位置で本人の言った言葉に対し、首を横に振るなどジェスチャーで違うことを気付いて貰うとよいでしょう。 本人の前で事実を説明することで、調査後に本人と家族がトラブルになる事もあるので、調査後に電話で再確認して貰うようメモを調査員に渡す事も効果的です。 実際に試行した結果と日頃の状況が異なる場合は、一定期間(調査日よりおおむね過去1週間)の状況において、より頻回な状況に基づき選択されます。 家族が同席し日頃の動作について調査員に説明することが望ましいでしょう。 認定審査会で検討されるケースとは 調査時に行えている行為が適切でない場合や、介助項目における「見守り等」や「一部介助」「全介助」といった選択肢は、介助の量を意味していません。 具体的な介助の量については、その内容が具体的に特記事項に記載されていることが必要です。 例えば、麻痺や疼痛などがある独居高齢者の更衣動作の場合、介助をする人がおらずベッド上で1時間程度かけている、認知症高齢者の場合では着衣動作自体は可能ではあるが、同じ衣類や汚れた衣類を何日も実際には着ている、下着が後ろ前や裏返しで着用しているなどの場合もあります。 また、有無の項目(BPSD関連)は、その有無だけで介護の手間が発生しているかどうかは必ずしも判断できません。 介護の手間を二次判定で適切に評価するためには、特記事項に記載されている介護の手間を、頻度もあわせて検討する必要があります。 介護者による介助がBPSDを引き起こしている場合などもあり、介助方法が、不適切であると認定調査員が判断する場合は、特記事項にその理由と適切な介助について記載し、介護認定審査会の判断を仰ぎます。 BPSD(行動心理症状)とは、記憶障害や見当識障害といった認知症の中核症状に伴ってみられる二次的な症状を指します。 不安や混乱が続くことに適応しようと模索して、強い不安・混乱・自尊心の低下等から徘徊や興奮、暴力行為といった様々な問題が起こってしまうのです。 実際に行われている介助が不適切と考える状況 ・独居や日中独居などによる介護者不在のために適切な介助が提供されていない場合 ・介護放棄、介護抵抗のために適切な介助が提供されていない場合 ・介護者の心身の状態から介助が提供できない場合 ・介護者による介助がむしろ本人の自立を阻害しているような場合 介護の手間の判断は、一部介助であるか全介助であるかといった選択だけで行われるものではありません。 介助をするほうが本人にとって適切な介助であったり、介助者にとっても介護の手間がかからないものの、本人のこだわりや介護拒否から見守りや声掛けなどをしながら本人の意向に配慮して変更するなどの対応が求められる場合もあります。 このような細かい内容を認定調査員に説明することが必要です。 介護認定審査会とは 介護認定審査会とは、市町村の附属機関として設置され、要介護者などの保健、医療、福祉に関する学識経験者によって構成される合議体です。 介護認定審査会複数の市町村が共同で設置することも可能になっています。 認定審査委員会のメンバーは、医師や歯科医師・薬剤師・看護師・保健師・歯科衛生士・介護福祉士・社会福祉士・介護支援専門員などの有識者が市町村長から任命されます。 認定審査会では認定調査員が作成した調査書からコンピューターによる一次判定結果を元に、主治医に意見書をもとに介護度を決定することとなります。 そのため、実際に申請者から直接、審査に必要な情報を記載する認定調査員と主治医は重要な立場と言えるでしょう。 介護度の違いによるサービスへの影響 要支援2と要介護1、要介護1と要介護2では使えるサービスに大きな違いが出てきます。 例えば、要支援2と要介護1では訪問介護や通所介護の利用回数が大きく異なるので注意が必要です。 要支援状態になると訪問介護では通院乗降等介助や通院介助といった受診に伴うサービスや、 看護小規模多機能型居宅介護の利用が出来なくなります。 また、施設系サービスでは老人保健施設への入所も出来なくなります。 また、要介護1と要介護2では車椅子や特殊寝台などの福祉用具貸与など、生活環境に与える影響が大きいため、注意が必要です。 要支援状態から介護状態に切り替わるポイント ・認知症の有無 ・状態の安定性 運動機能だけでなく思考力や理解力の低下がみられるなど、認知症の疑いが高いと判断された場合、一次判定で要支援2であっても要介護1と判定されることや、主治医の意見書などの調査により 半年以内に状態が大きく変わる可能性があると判断された場合、要介護1と判定されることがあります。 認定審査会の簡素化及び有効期間の延長について 平成30年4月1日以降、一定の要件を満たす場合、認定審査会の簡素化が可能となりました。 簡素化の要件は以下の6つです。 簡素化の要件 ・第1号被保険者であること ・要介護更新申請であること ・一次判定における要介護度が、前回認定結果の要介護度と同一であること ・現在の認定有効期間が12か月以上であること ・一次判定における要介護度が「要支援2」又は「要介護1」であり、状態の安定性判定ロジックの判定結果が「不安定」でないこと ・一次判定における要介護認定等基準時間が、一段階高い要介護度から3分以内でないこと 簡素化により審査会の審議が迅速に対応できるので、多くの件数の認定結果を出せる事となります。 しかし、認定調査の特記事項などの詳細な審査が行われなくなるため、申請者の不利益・不公平につながる可能性があるとの見解もあります。 認定結果や身体状態変化に併せ都度、区分変更なども検討する事が望ましいでしょう。 まとめ 介護保険では、要介護度に応じて受けられるサービスが決まっているため、適切な介護認定結果を受けられるよう認定調査時には家族が同席して普段の生活について確実に調査員に説明しましょう。 介護認定審査会における一次判定からの判定の変化には、認定調査の69項目と併せ主治医意見書による5項目が認知症の有無や病状の安定性が反映されます。 介護認定結果への反映の為には明確な根拠と具体的な「介護の手間」と「頻度」を特記事項に記載し、認定調査員が適切と考える介助の方法と実際に行われている介助の方法との判断の違いを、介護認定審査会で検討して貰えるよう、その理由や事実を特記事項に記載して貰う事が重要です。 最後までお読みいただきましてありがとうございます。
訪問介護の仕事は、施設型の介護とは違った特殊な技術を必要とします。 介護スキル以外の能力で必要なこともあれば、施設とはまた違った環境下での介護スキルなど、同じ介護でも大きな違いがあります。 今回は、そんな訪問介護で必要な介護技術を、経験者がお伝えします。 訪問介護に特化した技術って何? 今回の記事では、訪問介護に特化した技術で、筆者自身が経験して必要と感じた技術やスキルをお伝えしていこうと思います。 実際の現場での体験談をもとに書いていきますので、今訪問介護をやっている方や、これからやろうと思う方の参考になれればと思います。 土地勘は必ず身に付けよう 当たり前の話ですが、訪問介護は施設介護と違い、広大な土地を介護のために移動しています。 本当であれば介護技術を例にあげるのですが、私は最初に訪問介護ならではの「土地勘」の大切さをお伝えしたいと思います。 訪問介護は基本的に自転車で行う方が多いと思います。 他にも場所によっては車で訪問したり、徒歩で向かう時もあるかもしれません。 どちらにせよ、この時大切になってくるのが土地勘です。 私自身、最初は慣れない土地で複雑な道や、訪問先の場所などは事前に調べて向かっていました。 私が訪問介護をやっていた時は、スマホなどの便利な機器もなく、地図に頼っての訪問でした。 地図だと行き先を見つけるのが一苦労で、スマホが出来てからは非常に助かったのを覚えています。 訪問介護は、訪問件数によっては土地勘がないことで大きくタイムロスを起こす可能性があります。 そうすると、一つ一つのケアが疎かになり、いいサービスが提供できなくなってしまうのです。 そのため、訪問先の道を覚えて土地勘をつけることは、スムーズな仕事にも役立ちますし、サービスの質の向上にも繋がります。 大切なことですので、しっかり土地勘を身につけてください。 安全運転を心がけよう 介護をするために一軒一軒のお宅に自転車や車で移動するので、訪問介護は常に事故と隣り合わせです。 なぜここまで当たり前のことを言うのか、それには大きな理由があります。 これは私が前いた職場であった事です。 訪問を終えてステーションに戻ると、管理者だけ急遽本社に来るように連絡が入ったのです。 今までになかった事ですから、みんな何が起こったのかとソワソワしていたのを覚えています。 結論から言うと、他のステーションの訪問介護員が、移動中に大きなトラックに撥ねられて還らぬ人となったのです。 しかもその事故が起こった事故現場は、私自身よく通る場所でした。 その事故現場の近さを聞いて、私自身ゾッとしたのを今でも覚えています。 一歩間違えたら私自身も、同じ運命を辿っていたかもしれないからです。 なぜ事故にあったのか? 色々な調べで分かったことは、事故に遭った職員は以下の3点から事故に遭ったとみられています。 ①次の仕事先に急いで向かっていた ②車の位置や安全確認を怠っていた ③車通りの多い道路を走ろうとしていた 当時の事故の様子だと、その職員は車と車の間から道路に飛び出して、自転車を漕ごうとしていた時に事故にあったようなのです。 これは訪問介護ならではの事故です。 施設型の介護だと、基本的にこんなことにはなりません。 しかし、訪問介護はケアの時間が長引いたり、訪問件数が多かったりすると、どうしても移動を急いでしまいがちです。 もちろん無理なシフトを回らせる職場も悪いです。 危ないと感じたら慌てずに行動し、明らかに無理なシフトを渡された時は、正直にシフト作成者に伝えてみてください。 大切なことなので念押ししますが、命は一度失ったら2度と戻りません。 なので無理をせず無事故を心がけて、訪問先の移動を行ってください。 介護技術で必要と感じたもの 前回の章では、技術の中でも自身の身を守るための技術をお伝えしました。 この章では、実際の介護技術を経験談も交えてお伝えしていきます。 何かしらのお役に立てれば、幸いです。 ご利用者様・家族と仲良くなる技術 訪問介護は施設型と違い、被介護者以外に家族とも会話をする時があります。 このような時、しっかりと挨拶や一般的な社会人らしい振る舞いを心がけてください。 家族は介護サービスだけしてもらえればいいと言うわけではありません。 個人差はもちろんありますが、実は訪問介護員の所作を一つ一つ、細かく見ていたりします。 その行動次第では、「この人に任せて平気かしら?」と思われるかもしれません。 そのため、挨拶や言動、清潔感や服装など家族と関わる上で気をつける点はたくさんあります。 訪問介護の大切な点として、訪問したらまずはご利用者様と家族、どちらとも仲良くなる必要があります。 大切なのでお伝えしておきます。 基本的に1人で対応する技術 訪問介護は1人で仕事をするため、1人で仕事をしていたい人にとってはいい環境です。 ただそれは、裏を返せば1人で全ての業務をこなし、問題に対処していかねばならないと言うことです。 実はこの技術と経験は、施設型の介護をする時にもいろいろな面で役に立ちます。 役に立つポイントとしては以下の点です。 ①トラブルなどがあっても動じなくなる ②頼る人のいない環境下での判断経験値がつく ③1人で状況を打開する技術力が身に付く 今回は訪問介護をする上で必要な技術の話ですが、この1人で状況を打開できるスキルを身につければ、訪問介護以外の業態で仕事をする時も役立ちます。 さらに一言付け加えると、どの職場に行っても応用の効く人として重宝される強みもあります。 ぜひ意識して身につけてください。 1人で状況判断する技術 訪問介護をしていると、突然のトラブルに巻き込まれることが時々あります。 これは場合によっては不可避なことも多いです。 例えば訪問時にご利用者様が突然の熱発で倒れていたり、食事介助中に嘔吐したりなどがあります。 これらは職員に咄嗟の判断を必要と迫るものが多く、すぐにその場で対処することが必要です。 基本的には電話などを使い、管理者に状況を説明して打開策を聞くのも良いです。 そちらの方が何かあったときに、介護士自身の身を守ることにもつながるからです。 しかし突発的で、今すぐの対処が必要なときは致し方ありません。 ご自身の経験則ですぐに対処する必要があります。 ここからは実際に私が体験した内容を1つ紹介して、どのように対応したのかも記載しようと思います。 訪問したら床が汚物まみれで、ご利用者様が転倒されていた その方は身体機能が落ちている男性のご利用者様で、その方には居室清掃のサービスを提供しています。 訪問すると玄関から異臭がしていて、その臭いの原因を確認するべくトイレの近くを見ると、トイレの前に失敗した形跡がありました。 臭いの原因はその失敗した汚物が原因だったようで、さらにご利用者様はその汚物で足を滑らせたのか転倒されていたのです。 衛生的にも悪く、そのままの状況を管理者に伝えて判断を仰ごうとしましたが繋がりません。 そのままにしておくわけにもいかないので、まずはご利用者様の様子を確認しました。 頭を打った形跡もなく、意識もはっきりしていることを確認できたため、ゆっくりと一部介助をしながら起こします。 その後、着ていた服が汚れていたので、急いで着替えをし、床の汚物を処理や、着ていた洋服を洗ってその後洗濯機にかけました。 居室の換気もして空気の入れ替えもし、なんとか環境も落ち着いてくると、ご利用者様も安堵の表情です。 その後経過報告を行うと、判断を特に咎められることもなくご利用者様に至っては経過観察になりました。 このように、突然の出来事に対してご利用者様に適切な対処をすることがとても大事です。 まとめ 訪問介護の職員にとって必要な技術を一言でまとめるなら、「個で解決出来る力」ではないでしょうか。 それは介護技術だけの話ではなく、自身の安全を守ることも必要となってきます。 訪問介護は介護技術を基礎としてまずは移動中の安全を確保することが最優先だと感じました。 今後も違う視点からの発信をしていきたいです。
訪問介護の仕事は楽しいこともあるけども、辛い事もあります。 今回の記事では、実際に訪問介護を経験した筆者が、その体験を基に辛かったことをお伝えします。 訪問介護の辛いところ 介護の仕事は人に感謝されるいい仕事です。 介護以外の仕事も経験してよりわかった介護の仕事の魅力は、他者からの感謝を本当の意味で受け取れるところに魅力があります。 そんな中「きつい、しんどい、きたない」と言われるこの仕事を、喜んでしたいと言う人が少ないのも現実です。 個人的には魅力的だと思える介護の仕事ですが、今回は筆者が体験した訪問介護での辛かった体験をお伝えし、その対応策も付け加えようと思います。 それでは始めていきます。 自転車移動が辛かった これはシンプルに訪問するための自転車移動が辛かったです。 都市部での訪問介護の仕事は、自転車移動が基本になります。 地方の移動距離が長い事業所なんかだと、車で移動するところもあるようですが、都心部での基本は自転車です。 自転車移動での足腰への負担は、1件1件の移動を毎日積み重なると大きく、なかなか辛い経験でした。 電動自転車になってからはかなり楽になりましたが、それ以前はまるで足腰を鍛える修行をしているような物でした。 また事業所によっては、1日の訪問件数が多いところもあります。 筆者は、割と短めのケアを複数訪問していたため、1日の訪問件数は平均して15件前後でした。 この数字は、訪問介護業界の方でないとピンとこないかもしれません。 参考までに、筆者が聞いた他事業所の訪問件数は、1日平均5件ぐらいが基本でした。 若い訪問介護員でも多くて10件程度だそうです。 私は毎日3倍走っていたことになります。 訪問介護はご自宅同士の距離が遠いこともあるため、件数が短くても距離が遠かったりしてその移動で疲れるという事もあります。体力に自信のある方や身体を鍛えたい方などにはよいかもしれませんが、そうでない場合は電動自転車をおすすめします。 ご利用者様との人間関係 これも筆者の訪問先にいたあるご利用者様ですが、そのお宅はお風呂とトイレが共同の家でした。 部屋は6畳1間で、家賃も1ヶ月1万円程度のお宅でした。 そこのご利用者様は、服薬確認と安否確認だけのサービスでしたが訪問するや否や罵詈雑言の嵐でした。 さらに提供したいサービスを受けてくれないものですから終わりたくても終われない事もしばしばでした。 最終的に何もせずに帰らざる終えない時もありましたが、このようなご利用者様もいました。 ただ全ての人がこのような人ばかりと言うわけではありません。 あくまで一部のご利用者様だけなので、今紹介したような方はごく稀です。 他にも訪問先でご利用者様の家族に手を握られたり、セクハラのようなことをされた時もあります。 そういう事があった時は、訪問介護が辛いなと思ったりもしました。 ゴミ屋敷への訪問 表現が難しいのですが、いわゆる衛生環境が極端に良くないお宅は一定数あり、その割合は少なくありません。 筆者が経験した訪問先で、訪問するたびにスリッパを使用して入室する訪問先がありました。 そのお宅はマンションのとある一室でしたが、廊下にいるだけで異臭が立ち込めてきて、部屋の中はゴミでいっぱいでした。 訪問介護サービスを利用すると言うこともあって、入り口や洗面台、トイレや浴室などの介護で使用する場所は多少掃除されていました。 しかし衛生的とは言えませんでした。 私たちもプロですので、その環境下で介護をしました。 他にも、訪問先のお宅の中を土足で入ることになっているお宅もありました。 このお宅は、訪問入浴のサービスがありお風呂だけはすごく綺麗だったのを覚えています。 しかしそれ以外は足の踏み場もないぐらいゴミ袋の山でした。 必ずしもそのようなお宅ばかりではないですが、そのような環境を見たことが無い筆者にとっては、なかなか衝撃的で辛い経験だったのを覚えています。 1人で仕事していること 元も子もない話ですが、1人で仕事をしていることが辛い時もありました。 訪問介護は、基本的に1人で介護をして1人で完結して訪問先を退出します。 ほとんどの場合、家族はおらずご利用者様1人の時が多いです。 例えばご利用者様にトラブルがあったり、その他のアクシデントなどは1人で対応しなければいけません。 また介護保険以外のサービスの要求をしてくるご利用者様や、そのご家族がいたこともあります。 そのようなときに全て1人で対応するという面が、施設型の介護と違う大変さでした。 他にも、筆者が1人の訪問で辛いと感じたのは、1日の中であまり会話がない時でした。 自立度が高いご利用者様だと会話を多く交わして退出できるのですが、自立度の低いご利用者様だと、失語症などの理由で会話をできずにサービスを終えてしまうことが多かったです。 職員にもよりますが訪問介護の場合、他の職員との会話もあまりないため、ご利用者様とその家族と会話をしない限り、会話をする機会がありませんでした。 そのため、仕事はしているけれど淡々と目の前の仕事をこなし続けていることを、辛いと思う時期が何度かありました。 もちろん職員全員に当てはまることではありませんが、少なくとも筆者はそのように感じる場面がいくつかありました。 訪問介護が辛いと思った時の対処法 訪問介護が辛いと思ったときは現状を変えるためにも以下のような方法をとると良いでしょう。 管理者に相談 例えば、訪問先のご利用者様からセクハラや、モラハラを受けている時はまず上司に話しましょう。 筆者は実際にそのようなお宅があったときに、当時の管理者に相談しています。 訪問介護員も人間ですので、辛いときは無理をしてはいけません。 筆者の場合正直にそのときの現状を伝えた結果、訪問先を変更してくれました。 他にも、自転車移動の距離が長く移動が辛いことも話しました。 改めて訪問先の見直しをしてくれて、結果的に移動がかなり楽になり体への負担が減りました。 介護は体を使う仕事ですので、他の負担は極力減らした方がいいですね。 困った時は、管理者に相談してください。 最初の課題解決の動きだしは、まずそこからかもしれません。 環境を変える 環境を変えるのも1つの手です。 筆者は異動や、転職は行いませんでしたが、他の職員で異動をして仕事環境が変わり、前よりイキイキと仕事をしている職員がいました。 会社の規模にもよりますが、社内で異動が叶うのであれば事業所を変えてみるといいです。 その行動だけで、世界が大きく変わってきます。 もし事業所を移動できなかったり、異動しても環境が変わらず辛い時は、転職も選択肢に入れてください。 訪問介護の事業所は、探せば多くあります。 できればご自身が働いたことが無い地域がいいかもしれません。 事業所の環境や、雇用条件など見るところは多くありますが、転職をして今以上に良い環境で働いている職員もいたため、1つの選択肢としておすすめです。 まとめ 今回、実際に働いた体験談をもとに、訪問介護で辛かったことをお伝えしました。 しかし、訪問介護は何も辛いことばかりではありません。 仕事をしていて楽しいことももちろんあります。 辛いと言う点も個人差があり、上に挙げたもの以外にも辛いと思うポイントはあるのではないでしょうか。 大切なのは、その環境下で自分自身がどうしたいかです。 それを考えられる記事になっていれば嬉しいです。
介護の仕事にはいろいろな働き方があります。 施設や病院など大勢の介護士の中で働く仕事や、1人で介護する仕事などさまざまです。 訪問介護は介護士が1人で介護をする仕事です。 ここでは訪問介護に向いている人とはどんな人なのか、元訪問介護士が解説します。 訪問介護とはどんな仕事? まずは訪問介護とはどのような仕事なのか、その概要についてご紹介します。 訪問介護とは、要介護に認定されたご利用者様の自宅に訪問し、介護サービスを提供する仕事です。 サービスの提供内容はさまざまありますが、大きく分けて3つに分けることができます。 身体介護 身体介護とは、食事、排泄、入浴などの介助をするために、利用者さんの体に触れて介護サポートをすることです。 これは通所型や入所型の施設でも同様の介護サポートが行われますが、訪問介護ではより生活に踏み込んだ介助を行います。 生活援助 生活援助とは、利用者さんの生活をサポートするために行われるものです。 主に以下のような内容があります。 料理 洗濯 買い物 掃除 等 どのようなサポートをするのかは利用者さんの希望によります。 また、生活援助には食事介助などの身体介護は含まれません。 通院介助 通院介助は病院までの送迎をサポートするもので、以下のようなものがあります。 車の乗降介助や車椅子の積み下ろし 受診手続き 薬の受け取り ただし、病院内の付き添いは医療保険の対象となり、介護保険が適用できないことがあります。 そのため、介護の必要がある場合のみになることが多いです。 訪問介護に必要な資格とは 訪問介護で働くには介護職員初任者研修以上の資格が必要です。 中には無資格であっても働きながら資格を取得するのであれば就業できるところもあるので、施設に確認をしてみてください。 介護職員初任者研修は介護職の基本ともいえる資格で、通信教育などで取得することが可能です。 教育機関にもよりますが、最短1か月程度で取得することができます。 介護職には介護福祉士実務者研修や認知症介護実務者研修などさまざまな資格があります。 スキルアップするためにも、仕事をしながら介護に関する資格取得を目指してみるのもおすすめです。 訪問介護に向いている人とは? では、訪問介護に向いているのはどんな人なのか、元訪問介護士が経験を織り交ぜて解説していきます。 1人で仕事したい人 訪問介護の仕事は、1人で仕事したい人に向いています。施設型の介護施設と違い、訪問介護は自宅が介護をする場所になります。 施設で働く場合、閉鎖的な空間で常に職員や他のご利用者様がいて、そういう環境が苦手な職員もいます。 その点、訪問介護は基本的には1人です。 訪問先に行くのも、次の訪問先に行く時も1人なので周りの職員を気にする事なく自分のペースで仕事ができます。もちろん決まった時間に訪問しなければいけないのは大前提です。 しかし仕事によっては、あらかじめ決められた時間よりも早く終わることもあります。なので、少し早目に訪問先を出ることも可能だったりと、自分のペースで仕事ができます。 休憩を好きな時に取りたい人 施設で働くと、休憩時間はシフトによって前後します。例えば、早番の場合朝は大体7時前後から仕事に出てきて、昼休憩は11時〜12時の間になります。 日勤の場合、8時30分ごろが出勤時間のため12時〜13時頃が休憩時間です。このように施設だと、ほぼ確実に休憩は取れるものの時間が決められてしまうことが多いです。 自分自身が休憩したい時に休憩ができないため、人によっては辛い人も出てくるのではないでしょうか。その点、訪問介護だと休憩は空いている時間に好きなタイミングで取得できます。 もちろん、勤務状況によっては好きな時間に取得できない時もあります。 しかし、その日のシフトを見てあらかじめこの時間に取得しようということを決めて仕事に臨むと、仕事が楽しく感じます。 なので、自分のペースで休憩を調整したい人は数ある介護の仕事の中でも、訪問介護が向いています。 場所に縛られたくない人 施設で介護の仕事をすると、基本的に1つの場所で仕事をし続けることになります。 例えば異動などの勤務場所の変更がない限りは、1つの場所で仕事を続けることになります。仕事をする上で、1つの場所に縛られたくない人にはこのような働き方は辛いところがあります。 その点、訪問介護の仕事は場所に縛られることはありません。 勤め先のステーションにもよりますが、訪問介護の仕事は時と場合により訪問先が変わることもあり、仕事先は一定では無いのです。 なので、仕事先がずっと一緒なのが嫌だという方には、訪問介護の仕事は向いていると言えます。 気分転換したい人 訪問介護の仕事はシフトにもよりますが、外で仕事することがほとんどです。そのため、気分転換したい時などがあれば、空き時間に外で気分転換したりします。 私自身の実体験ですが次の訪問先の時間まで時間があり、ステーションに戻る時間がない時がありました。そういう時間を利用して、公園のベンチで桜を見たりして気分転換したのを覚えています。 施設で仕事をしていると、休憩中やレクリエーション、買い出しの時ぐらいしか外に出ることがありません。 定期的に気分転換したい人には訪問介護はおすすめの仕事です。 夜勤をしたくない人 訪問介護は、基本的に夜勤がありません。一般的な訪問介護に限定されますが、夜勤勤務がないところは訪問介護の魅力といえます。 施設型の介護の仕事は、24時間体制でご利用者様の介護やお世話をする必要があるので、シフトに夜勤の勤務があります。 訪問介護の場合は、主に日中での介護業務がほとんどで、夜勤のシフトはない所が多いです。 ただし、定期巡回型の訪問介護をしているところは別です。 定期巡回型の場合、雇用条件によりますが夜勤のシフトを求められる事もあります。 もし希望する勤め先が定期巡回型の訪問介護事業所であれば、夜勤の勤務があるかどうかを事前に確認するようにしましょう。 夜勤がある場合は、夜勤のシフトに入らない旨を伝えたほうがいいです。 夜勤勤務を希望しないのであれば、違う職場を選ぶことをおすすめします。 ご利用者様と1対1で仕事したい人 訪問介護は基本的に1対1で仕事するものです。つまり自分1人に対して、ご利用者様は1人であることがほとんどです。 訪問介護ならではですが、ご利用者様が1人だとその方だけを見守っていれば良い為、事故の危険性も減ります。 特に特別養護老人ホームなどの大きい施設で仕事をすると、1人で10人の見守りをする場合もあります。 どちらも体験談ですが、1人で見守りを行う上で見守りできる人数には限りがあります。 10人を1人で見守るとして、全員が歩行不安定で立ち上がり頻回だとします。 被介護者が歩くことができる場合、転倒する可能性が非常に高いといえます。この時点で1人で10人を見守りを行うのは不可能です。 そのような大型の施設はそういった点も考慮した上で、環境を構築しています。 ここまで訪問介護は1対1の介護と記載してきましたが、時々2人のご利用者様の対応をすることがあります。それはご利用者様が夫婦でサービスを利用している場合です。 このような場合、大体のご利用者様が寝たきりか認知症になっている状況が多く、むしろ介護する上で困難なことは少なかったです。 訪問介護先の状況や対応方法を、訪問前に事前に先輩社員によく確認しておくようにしましょう。 移動が楽しい人 訪問介護の移動は基本自転車での移動が主流です。 土地が広くて、1軒1軒の距離が遠い場合は車を使用することもありますが、住宅街が密集しているところでは自転車移動が多いです。 施設の介護と訪問介護の違いは、ご利用者様の住んでいる家まで行くという距離が挙げられます。 訪問介護の場合、この距離を自転車や車でカバーして介護を行います。 施設だと、居室は歩いていける距離なため時間も節約されて、残りの時間は介護に充てることが可能です。 訪問介護だと、シフトによっては数十分の時間をかけて訪問して、介護サービスを提供します。 この移動が楽しめる人は、訪問介護に向いていると言えます。 訪問介護のヘルパーとして働くメリットとは? 訪問介護の仕事にはどのようなメリットがあるのか、経験を踏まえてご紹介します。 長期的に働きやすい 介護が必要な人が全て施設に入るわけではありません。 自宅で暮らしたい人、施設待ちをしている人など、家で生活している人は多くいらっしゃいます。 そのため、訪問介護には施設型や入所型よりも需要が高い傾向があります。 もし何らかの事情により介護の仕事から離れたとしても、再就職しやすいです。 キャリアアップができる 訪問介護の仕事に就くために年齢は関係ありません。 いくつであっても、経験を積むことでキャリアアップすることができます。 また、利用者さんは一人ひとり生活習慣や必要なケアが異なります。 そのため、さまざまな利用者さんに適応できるスキルを身に付けられます。 訪問介護のヘルパーとして働くデメリットとは? 訪問介護の仕事には、メリットだけでなくデメリットもあります。 ここでは訪問介護のデメリットについてご紹介します。 責任が大きい 先にも記載しましたが、訪問介護は1人でケアを行う仕事です。 そのため施設など大勢の介護職員の中で働くよりも、利用者さんに対して大きな責任を置くことになります。 特に、訪問介護の経験の浅い方には大きなストレスになってしまいがちです。 訪問介護は最初から1人で仕事をするわけではありません。 最初のうちは先輩スタッフが同行します。 また、何かあった場合は事業所の責任者に相談することもできます。 少しずつ仕事に慣れて経験を積んでいくことが重要です。 天候によって移動が大変になる 訪問介護は介護職員が利用者の家に出向く必要があります。 そのため、天候の悪い場合は移動が困難になることがあります。 天候が悪くても利用者さんの介護は必要です。 着替えを用意したり、移動方法を考えるなどの工夫が重要です。 まとめ 訪問介護は外で仕事ができる分、仕事への切り替えや、気分転換がやりやすい仕事です。 1つの場所に囚われるのが嫌な介護士には、仕事環境が毎度違うのは新鮮で、マンネリ化を防げます。 この利点をよく理解して、自身に合っていると思う人はぜひ訪問介護の仕事にチャレンジしてみてください。
介護に携わる職員は、資格なしでも介護に携われていましたが、今後は無資格では携わる事ができません。 今回は無資格者必須の「認知症介護基礎研修」について説明します。 「認知症介護基礎研修」とは? 厚生労働省による令和3年度の介護報酬改定の取組の一環に「認知症への対応力向上に向けた取組の推進」という事項があります。 これは、介護に関わる全ての者の認知症対応力を向上させていく為、介護に直接携わる職員が認知症介護基礎研修を受講する為の措置を義務付けるとされています。 今までは、訪問系の介護サービス(訪問介護等)や福祉用具貸与(福祉用具レンタル)、居宅介護支援以外の介護サービスの職員は、介護の資格が無くても介護職として関わる事ができていました。 しかし、2024年4月以降において医療や福祉関係の資格が無い職員は認知症介護基礎研修を修了していないと介護に関わる職務が行えなくなります。 なぜ義務化になった? 昭和22年~24年生まれで第一次ベビーブーム時代に誕生した人達、つまり「団塊の世代」と呼ばれる人達が、75歳以上の後期高齢者となる2025年問題が背景にあります。 厚生労働省によると、認知症高齢者数は約10年前の2012年で462万人とされ、令和7年の2025年には約700万人、つまり65歳以上の高齢者の5人に1人とされています。 団塊の世代が後期高齢者になる2025年には、高齢者において認知症は特殊なものでは無く、誰が発症してもおかしくはない身近な病気となっているのです。 認知症発症の高齢者が増えるとされていても、実際に認知症に対する知識や技術について介護に携わるサービス事業所側の職員の全てが対応できるかと問われたならば、正直難しい面があるのも事実でした。 介護に関する資格を取得している者については、認知症ケアに関する知識や技術を学んでいますが、介護サービスによっては無資格で携われるものもあります。 ハイスピードで高齢化が進み、認知症高齢者も追随していく中で、介護に携わる全ての職員が認知症への理解を深め、介護する者を主体とするのではなく当の本人を主体としての介護を行い、認知症の有無に関わらず個の尊厳を保障した上で対応する力を付けるよう、国より義務づけられました。 今まで無資格で介護に直接携わっていた者は、現場で得た経験による知識や技術は当然ながら得ており、今後の職務において大切なものではあります。 しかし、高齢者が増えるこれからにおいて専門的な知識や技術対応力を今までもより一層必要とされる事になるのです。 認知症介護基礎研修の対象者は? 上記にも述べましたが、無資格で介護に直接携わっている介護サービス事業の職員は認知症介護基礎研修の対象者となります。 資格を必要とする訪問入浴を除く訪問系サービスや福祉用具貸与、居宅介護支援は対象外です。 ※訪問入浴介護は看護師(又は准看護師)と介護職員のチームで対応しますが、訪問入浴では介護職員は無資格でも可能である為、無資格者がいる場合は認知症介護基礎研修の対象となります。 ※通所介護で生活相談員を職務としている場合、社会福祉主事任用資格の保持のみであれば研修の対象となります。 2021年4月より義務化が始まりましたが、経過措置として3年間あり、2024年の4月より完全に施行されます。 無資格で介護に直接携わっている全介護サービス事業の対象職員は、完全施行の来年の4月までに早めに研修を修了するようにしましょう。 しかし、現在無資格で、介護職員初任者研修等の福祉資格を取得する為研修中にある方や、介護の養成施設、福祉系の学校で認知症に係る科目を受講している場合は、その資格の研修修了証明や卒業及び履修科目取得を証明できれば現在無資格状態であっても証明を条件として認知症介護基礎研修の対象外として差し支えないとされています。 また、3年の経過措置後に新たに介護サービスの職務に就くも、介護に関する資格を有していない無資格者は。介護サービス事業所に就いて1年間の猶予期間が設けられる期間内に研修を修了するようとされています。 2024年4月以降は、介護に直接携わる職務に就いている全ての者は、医療又は福祉資格を有している又は研修受講を修了している事が必須です。 つまり介護に関わる全ての職員が「何らかの形でも介護を行う全ての職員は認知症に対して知識や技術を得ている」という事になります。 「認知症介護基礎研修」を受講するには? 認知症介護基礎研修はすでに始まっています。 研修内容は講義と演習です。 研修対象者に該当するかどうかをまずは確認し、その上で職務先の介護サービス事業所に受講についての希望を提示し、申込みをしてみましょう。 研修はどんな形で行われる? 各都道府県によって受講の形は違いますが、自治体主体で実施する又は事業を委託して実施する形で行われています。 ・eラーニングでの受講 ・オンライン(Zoom等)を含めた集合型研修での受講 ・集合型半日とeラーニング半日での受講 各介護サービス事業所へ自治体より認知症介護基礎研修の実施の通達がされているので、資格を有さない研修対象者は事業所ごとの取り纏めで申し込む形となります。 研修期間は1日、6時間の受講で研修修了となり、修了証書が発行されます。 そのため、初心者研修よりも手軽に資格を取得できるのも大きな特徴です。 また、現在は全国的にeラーニングで受講できるところが増えているため、在宅で資格を取得できることが多いです。 自治体や委託事業団体によって異なりますが、研修費は1,000円から5,000円程度となっているようです。 また、認知症介護基礎研修は基本的に「介護に直接かかわる仕事についている方」が対象となっており、初任者研修のように誰でも取得できるものではないことを覚えておきましょう。 各自治体により受講条件や日程は異なる為、以下の内容の確認が必要です。 開催日がいつなのか 募集の受付はいつ頃か 受講に関してeラーニングならば機器の準備はできているか 集合型の場合は日程が調整できるか 受講予定している場合は、準備と余裕を持って対応できるようにしておきましょう。 「資格なし」だとどうなる? 上記でも述べましたが、2021年4月から2024年3月までは経過措置の3年にあたり、研修はその期間内に受講すれば修了証書が発行されます。 また無資格でも新規で介護に携わる職種に就いた場合は、1年間の猶予期間内に受講し修了すれば良いとされています。 それでも無資格のまま介護に直接携わる業務に就いていた場合はどうなるのでしょうか? 2024年4月より、新たに介護に直接携わる業務を行う職員が、1年の猶予期間内に研修を修了せずに無資格状態のまま職務にあたる事や、3年の経過措置の間に研修を受けず無資格状態を放置した場合は、人員配置基準において算定される介護職員とした介護サービス事業所は行政指導の対象となってしまいます。 研修の義務化という事は、当然ながら介護サービス事業所は、介護に直接携わる人員の把握・管理を行っていかなければならず、無資格者=義務を怠るとされる又は対象外の職務に就く=介護に直接携われなくなるという事になるのです。 ※介護に直接携わらない職員(施設調理、施設での掃除等の雑務のみ等)や介護の人員配置基準に算定されない職員(事務員等)は対象外ですので、研修を受ける必要はありません。 まとめ 今回は「認知症介護基礎研修」について説明致しました。 ・厚生労働省による令和3年度の介護報酬改定の取組に「認知症への対応力向上に向けた取組の推進」があり、介護に関わる全ての者の認知症対応力を向上させていく為、認知症介護基礎研修の受講を義務付けられた。 ・2024年4月以降は医療又は福祉資格が無い職員は、認知症介護基礎研修を修了していないと介護に直接携わる事ができなくなる。 ・団塊の世代が後期高齢者になる2025年には、高齢者において認知症は特殊なものでは無く 誰が発症してもおかしくはない身近な病気となっており、介護に携わる職員の認知症に対する知識や技術力の向上が求められている。 ・無資格者は認知症介護基礎研修の対象者であるが、資格を必要とする訪問入浴を除く訪問系サービスや福祉用具貸与居宅介護支援は対象外である。 ・研修を修了する為の経過措置は3年間で、経過措置後も新規で介護に直接携わる職員は1年間の猶予期間が設けられている。 ・研修の開催については各自治体が実施するものや、事業委託で実施するものがあり、受講もeラーニング研修や集合型研修等があり、対応は自治体によって異なる為に準備も含めて確認を必要とする。 ・受講を希望する場合は、介護サービス事業所へ希望を提示し、事業所毎の取り纏めで申し込む形となる。 ・研修費は1,000円から5,000円程度。 ・経過措置が終わり、完全施行した後も無資格のまま介護に直接携わる職員として職務に就いていた場合。介護サービス事業所は行政指導の対象となる。 介護に直接携わる職員で資格を有していない職員は、研修受講の措置が義務付けられ、現在は経過措置の期間にあります。 介護業務で忙しい中、1日程度ではありますが調整も要する為に受講には周りの協力も必要となります。 期間に猶予が有る内に、計画的に研修を終了できるように努めましょう。
徘徊は認知症の症状の一つです。 外や家の中をうろうろ歩きまわるため、介護者の介護疲れの要因の一つに挙げられています。 一人暮らしをしている親に認知症がある場合、普段の生活について心配になってしまう方も多いのではないでしょうか。 本記事では、徘徊中に電車にはねられてしまった方の判例を紹介し、徘徊のリスクや原因、対処方法について解説しています。 認知症のある方を介護している家族や介護職におすすめの記事ですので、ぜひ最後までお読みください。 認知症とは [caption id="attachment_2017" align="alignnone" width="512"] Asian caregiver and a senior woman at the room[/caption] 認知症は、一度発達した脳が病気や障害などさまざまな原因により認知機能が低下し、日常生活全般に症状が出てくる状態のことです。 2020年現在、日本国内の65歳以上の人で認知症のある人は約600万人いるとされています。 これはおおよそ6人に1人が認知症になっていることになり、2025年には700万人、5人に1人が認知症になるといわれています。 認知症の症状とは 認知症の症状には、中核症状と周辺症状の大きく2通りに分けられます。 ではどのような症状なのかを確認していきましょう。 中核症状 中核症状は、記憶の障害や、時間や場所がわからなくなる見当識障害や理解力、判断力の低下などがみられる症状です。 脳が萎縮したり脳卒中で損傷を受けたりすることで症状が出現することがあります。 中核症状には以下のような特徴があります。 数分前や数時間前の出来事を忘れている 同じことを何度も言う 同じ物を何度も買ってくる 等 周辺症状 周辺症状は、中核症状を原因として二次的に起こる症状のことです。 記憶や見当識があいまいになることで不安を感じ、心理面や行動面に症状がでてきます。 時間や場所の認識がなく、自分がなぜここにいるのかわからなくなり とりあえず歩き回った結果徘徊に至る 財布をどこに置いたかわからなくなり、身近にいる子や嫁が持っていってしまったと 取り繕うことで物盗られ妄想に至る これまで受けていた介護でも、理解力が低下し何をされるのかわからず 介護者の手を払い除けた結果介護拒否と言われる 認知症のある人の介護でもっとも大変なことの一つは、この周辺症状への対応かもしれません。 徘徊は周辺症状の一つ 徘徊は周辺症状の一つで、目的もなくうろうろ歩き回ることとされています。 介護者からするとただ歩き回っているように見え、何度も繰り返したり、制止が効かなかったりすることがあります。 そのため、介護者にとっては負担を感じやすい症状です。 徘徊に至る要因は、記憶力や見当識が低下することで、その場で起きていることの理解や判断ができない不安から、徘徊という行動をとっていると考えられます。 自分がどこにいるのか、何をしていたのか、周りにいる人が誰だかわからないという状況の中、とても大きな不安を感じている中での行動と言えるでしょう。 安全に歩ける環境であればまだよいですが、認知症により危険に対する認識がなくなってしまうこともあります。 歩道があるのに車道を歩いてしまったり、信号を守れなかったりすることもあるかもしれません。 住み慣れた集合住宅の敷地内を散歩して自宅に戻れなくなる事例も多くあります。 徘徊はなぜ起きる? 徘徊が起こる原因には、いくつか原因が考えられます。 身体的な違和感が原因 徘徊する原因には何かがしたいと思っていたのに、そのことを忘れてしまうため、その違和感により徘徊してしまうのです。 この場合、排泄や飲食をすることで気持ちが落ちつき、徘徊が落ち着くことがあります。 排泄が原因の場合は、主治医に相談をして排泄に関する薬を飲むことで落ち着く場合が考えられます。 日々の排泄など体調管理を行うようにしましょう。 心理的なストレスが原因 夕方や夜になると気持ちが落ち着かなくなり、外に出かけようとする方がいらっしゃいます。 これは認知障害だけでなく、不安や焦燥感などを感じてしまい、その衝動が徘徊になってしまうのです。 ストレスの内容には以下のような事柄があげられます。 ・過去の習慣によるもの ・若い時や数年前の記憶などが蘇ることで誤認してしまう ・判断力や記憶力が低下してしまったため、行きたい場所を忘れてしまう ・不安や不満などによるもの 普段からよく観察し、何がストレスになっているのかを考えたり、ご本人に話を聞いてみてください。 ストレスを軽減することができれば、徘徊の症状を改善することができるかもしれません。 環境によるもの 環境が変わることで居心地悪く感じてしまい、徘徊になることがあります。 ご本人が過ごしやすい環境にし、居心地よくしてあげることで徘徊を抑えることができます。 前頭側頭型認知症 前頭側頭型認知症は人格や社会性をつかさどる前頭葉と、言語や記憶、聴覚をつかさどる側頭葉が萎縮してしまう病気です。 前頭側頭型認知症になると、以下のような症状が現れます。 ・人目を気にしなくなる ・感情が抑制できなくなる ・同じことを繰り返す 前頭側頭型認知症は病気自体が原因で徘徊行動を起こしてしまいます。 徘徊に関する判例(2021年3月28日 京都新聞) 2007年12月7日、愛知県で、妻と二人暮らしをしている高齢男性が電車にはねられ死亡しました。 男性には認知症があり、デイサービスから帰宅後まもなく、妻がうたた寝をした6〜7分の間に外出し、事故に遭っています。 所持金はなかったものの、改札をすり抜けて電車に乗り、一つ先の駅で降りたあと、ホームにおり、フェンスの扉を開けて線路に入った様子でした。 そのため、トイレを探して迷い込んだと見られています。 一審では妻の居眠りが過失にあたり、介護方針を決めていた別居の息子にも監督義務があったとして、2人は約720万円の支払いを命じられました。 二審でも、対象者から息子を外し、支払額を半額の360万円とした判決がでています。 この判例は、認知症のある方の介護をしている介護者から大きな反響があり、社会問題となります。 徘徊のある人に対して24時間見守り続けなければならず、家に鍵をかけて閉じ込めておくしかないのかと、ニュースでも連日報道されていました。 その後の2016年3月、最高裁は請求を棄却し、認知症の人による事故で防ぎきれないものまでは家族が責任を負わない、とするはじめての判決が下されたのです。 徘徊への対処方法 上記判例では逆転勝訴で無罪という判決がでましたが、事故が起きてから判決がでるまで9年かかりました。 この間の家族の不安は想像に絶します。 大きな事故や裁判に至らなくても、徘徊に関するトラブルは後を絶ちません。 そして、徘徊自体をなくすことは自宅や部屋に鍵をかけて閉じ込めてしまう以外には難しいでしょう。 では、認知症により徘徊のある人に対してどう対処していけば良いかを、一つずつ解説していきます。 関わりによる対処方法 徘徊している本人に対し、介護者の見守りや声かけで対応をします。 辻褄の合わないことを行っている時でも、否定はせず本人なりの徘徊の理由を理解しましょう。 なぜ歩いているのか理由を聞くだけでも安心できる場合もあります。 帰宅願望などで「家に帰ります」と言いながら歩いている場合でも、「外は寒いので上着をきましょう」「車を呼んでいるからお茶を飲みながら待ちましょう」などと、気を逸らすことも効果的です。 サービスや福祉用具による対処方法 どんなに上手に介護していても、1人で認知症のある方の介護を続けるには限界があります。 デイサービスやショートステイなどの介護保険サービスをうまく使い、プロに任せられる部分は任せましょう。 少しでも介護から離れる時間を作り、介護者が自由に使える時間を作ることも大切なことです。 また、ベッドや自宅の出入り口などにセンサーを設置することで、徘徊に速やかに気づけます。 認知症のある本人を閉じ込めるのではなく、動きを察知して対処することが可能です。 地域と連携する対処方法 徘徊だけでなく、認知症のある方の介護をしていくには、地域との連携を図ることが大切です。 家族だけで介護していくにはいずれ限界がやってきます。 本人が不安がっていたら声をかけてもらうよう近所の方に話をしておいたり、ゴミの出し方を間違えているようであれば、否定しないように指摘してもらったりすることも効果的です。 家族だけが抱え込むのではなく、うまく地域と連携しその方をケアすることで本人も家族も安心して生活できます。 まとめ いかがでしたでしょうか。 本記事では、認知症による徘徊から電車にはねられ訴訟に至った判例や、徘徊への対処法について解説しました。 認知症の症状には中核症状と周辺症状がある。 徘徊は周辺症状の一つで、介護者にとっては負担感の大きいものである。 周囲から見ると、目的なく歩き回っているように見えるが、認知症による記憶や見当識 理解力や判断力が低下したことで起こる不安から出てくる症状である。 対応としては否定するのではなくその人の不安を取り除く関わりが必要。 介護者だけが抱え込むのではなく、介護保険サービスやセンサーの活用 地域との連携が徘徊への対処方法として大切である。 今後認知症がありながらも地域の中で暮らしていく方は増えていきます。 徘徊で自宅に帰れなくなる場面に出くわすこともあるかもしれません。 地域によっては徘徊と呼ばずに「ひとり歩き」と言う地域もあります。 認知症のある方の不安を取り除けるよう対処し、本人も介護者も安心して生活できるように関わっていくようにしましょう。
「将来、自分が認知症になったらどうなるんだろう?」 「詐欺や悪徳商法に遭うんじゃないか?」 そんな不安を抱えていませんか? 成年後見制度は、そんな不安を抱えているあなたにぴったりの制度です。 この記事では成年後見制度について分かりやすく解説していきます。 成年後見制度とは? 成年後見制度は「認知症」や「障害のある方」でも、地域社会で安心した生活が送れるように制定された制度で、介護保険制度と共に平成12年にスタートしました。 自己決定の尊重を理念におき、財産と権利を守ることを主な目的としています。 成年後見制度には2種類ある 成年後見制度には「任意後見制度」と「法定後見制度」の2種類があります。 ①任意後見制度 任意後見制度は自分の「判断力がはっきりしている時」に、「支援してくれる人(後見人)」と「支援してほしい内容」を自分の意思で決める制度です。 将来の不安に備えて、あらかじめ助けてくれる人(後見人)を決めておく制度になります。 ②法定後見制度 法定後見制度は家庭裁判所に後見人を選任してもらう制度です。 認知症などにより本人の判断能力が低下した際に、「この人には助け(後見人)が必要だ」と判断した人が家庭裁判所に申し立てを行います。 すでに判断能力が低下しているため「後見人の選定」や「支援内容」について本人の意思を介在させることは困難になるでしょう。 法定後見制度は本人の判断力に応じて3つの種類に分けられます。 補助…判断能力がある程度低下した人に適用される。3つの中では最も軽い類型 保佐…判断能力が相当程度低下した人に適用される。3つの中で中間に位置する類型 後見…判断能力がほとんどなくなった人に適用される。3つの中でで最も重い類型 任意後見制度も法定後見制度も支援内容にほとんど違いはありません。 あらかじめ信頼できる人に後見人を頼みたいのであれば、元気なうちに任意後見制度の手続きを進めておきましょう。 そもそも誰が成年後見人になれるの? 実は成年後見人になるために必要な資格や規定は設けられていません。 欠格事由(成年後見人になることができない要件)に該当してなければ、誰でも成年後見人になることは可能です。 では欠格事由にはどのようなものがあるのでしょうか。 未成年 過去に後見人を含む法定代理人を解任されたことがある人 破産者 被後見人に訴訟を起こした人とその配偶者 行方不明者 その他不正な行為を行うなど後見人に適さない経歴がある人 これらの欠格事由に該当しなければ、基本的にだれでも成年後見人になれます。 成年後見人の役割は?何をするの? 成年後見人の役割は「判断能力が不十分になった人のサポート」です。 より詳しく説明すると「財産管理」「身上監護」「職務内容の報告」の3つに分けられます。 ①財産管理とは? 財産管理とは成年後見人が本人の財産を適切に管理をすることです。 具体的には下記のようなものがあります。 現金や預貯金の管理 不動産や資産などの管理 税金の申告と納税 年金の申請や受取 契約の締結および取り消し ②身上監護とは? 身上監護とは本人の生活や安全、健康を守るために必要な役割を果たすことです。 具体的には下記のようなものがあります。 病院での手続きや支払い 医療や福祉サービスの契約や手続き 住居の契約や支払い 介護保険の認定申請 郵便物の管理 ③職務内容の報告とは? 成年後見人は「財産管理」と「身上監護」を適切におこなっていることを明らかにするために、家庭裁判所に対して報告する役割も担います。 報告は自主的におこなう必要があり、「後見等事務報告書」「財産目録」「預貯金通帳のコピー」「本人収支表」の4つの資料を提出しなければなりません。 成年後見制度メリット3選 ここでは成年後見制度のメリットについて見ていきましょう。 ①成年後見制度の開始後に行った不当な手続きを取り消すことができる 判断力の低下した人を狙った詐欺は世の中に横行しています。 リフォーム詐欺や健康食品の大量購入など、様々な詐欺のニュースを見聞きしたことがある人もいるのではないでしょうか。 成年後見制度では、後見人を通さずに本人が行った不当な契約などを取消したり、代金の返還を求めたりすることが可能になります。 ②財産を守ってくれる 家族や親族の中には本人の財産を勝手に使ってしまうケースがあることも否定できません。 成年後見制度では後見人が銀行に対して、成年後見人になった旨を届け出ることで、成年後見人以外の人が預貯金を引き出すことができなくなります。 ③後見人の監視機能がある 事案にもよりますが家庭裁判所は「成年後見監督人」を選任することができます。 成年後見監督人は、後見人が不正な行為をしてないか確認する役割があります。 また、家庭裁判所は成年後見人が著しく不正な行為を行った場合、諸手続を通じて、成年後見人を解任することができます。 成年後見制度デメリット3選 成年後見制度にはデメリットもあるため、しっかりと確認しておきましょう。 ①自分の財産が自由に使えない 成年後見制度は本人の財産を管理し維持する制度です。 そのため自分で財産を使う行為は制限されてしまいます。 ②後見人へ報酬を支払う必要がある 成年後見人は判断能力の低下した人の代理となり、様々な手続きをこなさなければなりません。 当然ですがそこには報酬が発生します。 成年後見人に一般の人を選任する場合は3万円以下で報酬が設定されることが多いですが、弁護士や司法書士などの士業に依頼する場合3~6万円くらいが相場になります。 毎月のコストになるため慎重に検討することが重要です。 ③後見人を簡単に変えられない 家庭裁判所で後見人が指定された場合、基本的に本人が亡くなるまで後見人を務めることになります。 報酬を支払いたくないからといって、途中で利用をやめることはできません。 ただし後見人が著しく不適格な場合、家庭裁判所は成年後見人を解任することは可能です。 下記に民法の条文を記載します。 民法第846条「後見人に不正な行為、著しい不行跡その他後見の任務に適しない事由があるときは、家庭裁判所は、後見監督人、被後見人若しくはその親族若しくは検察官の請求により又は職権で、これを解任することができる」 まとめ ここまで成年後見制度について解説してきました。 「まだ若いから大丈夫」「自分には関係ない」と考えている人もいるのではないでしょうか。 しかし人間は誰でも年齢を重ねていきます。 年齢を重ねるにつれて判断能力が衰えるのも避けられない事実です。 最後にポイントを整理しておきましょう。 今だからこそ将来の不安に備えておくことをおすすめします。 成年後見制度には2種類ある 「任意後見制度」…元気なうちに自分で後見人を決めておくことができる 「法定後見制度」…判断能力がすでに低下した時に家庭裁判所が後見人を選定 成年後見制度は詐欺や悪徳商法から大切な財産を守ってくれる制度である 成年後見制度は自分の身を守るために必要な「医療」や「福祉」の架け橋になってくれる制度である 成年後見制度は「自分の財産が自由に使えない」というデメリットもあるため、注意が必要である 成年後見制度は「後見人への報酬」というランニングコストが必要になるので、事前に確認しておく必要がある 判断能力が低下してから困るのではなく、事前に任意後見制度を活用して将来に備えるのも1つの手である 最後までお読みいただきありがとうございました。
訪問介護のヘルパーはサービス時でも、医療行為や医療機関との連携を求められる状況が発生する場合もあります。 今回は、そんな状況時での対応の仕方について紹介します。 介護なのに医療行為? 訪問介護でのヘルパーさんのボーダーライン 利用者宅へ訪問し、介護サービスを行うヘルパーですが、利用者の日常生活には些細な形でも医療行為を必要とする様な事態や、簡単な処置対応を求められる事があります。 ・自宅で家具にぶつけてしまい、手に小さな擦り傷ができてしまった。 ・高血圧と診断されており、毎日血圧を測るように主治医から言われている。 ・脊柱管狭窄症の為、屈伸動作が難しくなかなか足の爪が切れない。 ・ドライアイが強く、医師より点眼薬が処方されている。 ・加齢による乾皮症で、ワセリンが処方されている。 ・利用者の手が不自由な為、口腔ケアや義歯洗浄ができない。 サービス開始前のケアマネージャーや訪問介護事業所側のモニタリングやアセスメントで以下の事柄を確認します。 ・利用者のADL(日常生活動作)やIADL(手段的日常生活動作) ・身体的にどういった動作ができて、どういった動作が難しいのか ・日常生活では何ができて何が難しいのか ・傷病歴や生活環境等 基本的には、ケアマネージャーの立てたケアプランに則り、訪問介護計画が立てられサービスを行うのですが、時に身体介護においてこれは医行為ではないのか?とヘルパーが判断に迷う事もあります。 基本的に訪問介護のヘルパーは医療行為を行う事はできませんが、下記の図の様に厚生労働省より「医行為ではないと考えられる」とされる事例があるので参照して下さい。 例えば訪問介護サービスにおいて、食事介助と図の⑤にある様に食後の口腔ケアと義歯洗浄まで訪問介護計画にある場合は、計画通りサービスを行わなければなりません。 私達も普段の生活で、食事の後に歯みがきをしたり、人によっては義歯のケアをする事は何の疑問も持たないでしょう。 利用者も同じで、口腔内外に炎症も病例も特に何も無く、食事を安全に行った後の清潔保持の為に行う口腔ケアや義歯洗浄は、ケアプランに立てられていれば、ヘルパーは口腔ケアの介助や見守り的援助にて対応します。 但し、利用者の口内に歯周病や酷い歯槽膿漏があったり、口腔内潰瘍やヘルペスの症状があり医師による診察や治療が行われている状態での口腔ケアや義歯洗浄となると、話は違ってきます。 明らかに医師の対応が必要となる状態=重篤な状態での口腔ケアを行う時は、必ず医師の指示書や看護師の指導の下にサービスを行う必要があります。 そういった場合では基本的には処置や医療行為を求められる為、軽微な状態とは言えず介護対応はできません。 その際は訪問介護ではなく訪問看護での対応となる場合もあるので、利用者の状態においては安易に自己判断したり利用者の言い分要求を鵜呑みにして言われるまま対応したりせず、ケアマネージャーや訪問介護事業所等に報告した上で正しく利用者に応じる等の注意が必要です。 訪問介護でヘルパーができる医療行為は、利用者の心身状態が安定しており、入院の必要が無く、医療技術や専門的な管理、処置を伴う事が無い状態である場合に軽微で簡易的なもののみ行えるものです。 ヘルパーができる医療行為の例外として、研修を受講した介護福祉士が行える喀痰吸引と経管栄養がありますが、「たん吸引は咽頭の手前まで」や「経管栄養の胃ろうや腸ろうの状態確認は看護師対応」等行為にはできる行為とできない行為があるので注意が必要です。 医療機関で訪問介護? 訪問介護はその名の通り、ヘルパーが利用者宅にて訪問して行われるものですが、利用者宅から出て対応する事が必要とされる場合もあります。 日常生活に必要な動作であれば、訪問介護として認められるものもあり、その認められるものに「医療機関への受診対応」も条件によっては可能です。 「ちょっと風邪ひいたから病院行ってくる。」 「毎月の定期受診だから月末病院に行かないといけない。」 「入れ歯のかみ合わせが悪くてご飯が食べにくい、歯医者に掛からないといけない。」 様々な理由により、生活に医療が関わってくるものですが、基本的に医療機関への受診対応は訪問介護ではできないとされています。 ですが、医療機関への対応が利用者一人では困難な場合や利用者の取り巻く環境や、介護を要する事が明らかに認められる状況によっては、事前対応次第で訪問介護にて対応する事が可能となります。 【院内介助ができる条件】 ①要介護度1~5の認定がある利用者 ②医療関係者の介助が望めないと事前に確認済の場合 ③当日、家族や身内の通院付添いが望めない場合 ④院内で常時見守りや介助が必要とされる場合 介護タクシーを利用される場合、訪問介護の基本として当然ながら病院内の院内介助は医療機関対応の為行えませんが、上記にある①~④全てに該当する場合は対応可能となる事もあります。 ここで注意したいのは、ヘルパーが介助できるのは受診受付、院内での移動や、トイレ介助、病院代支払い、薬の受取りです。 心身不安定で一人で待ち時間を過ごす事が困難な場合は条件により介助可能ですが、検査や処置、診察は医療対応の為、介護保険である訪問介護のヘルパーは対応できません。 では、認知症の傾向があったり、または視聴覚が困難な利用者が訪問介護を利用して受診した場合、どうなるでしょうか? 医師の診察において病状の報告や診断結果を受け対応する事は医療対応の為、訪問介護では対応できない事とされています。 この場合は上記でも述べましたが、事前対応によりヘルパー同席が可能になる事もあります。 全ての自治体が事前対応可能とは限らない為、利用者居住区の自治体に相談が必要です。 対象となる利用者が、どの動作に介助を要するのか、またはどこからが医療対応で介護対応では無くなるのかをよく確認した上で線引きし、対応しなければなりません。 介護側が計画通り対応を行っていても、突如介助や見守りを要する事があったり、医師や看護師の説明を聞いたり、利用者の状態を報告したりと、医療と介護の対応が混乱する事も多々ある為、その場その場に応じた臨機応変な対応が求められます。 医療機関で訪問介護(通院介助、院内介助)を行う為に必要な事は下記の図を参照して下さい。 あくまでも「訪問介護対応」で介助しないと病院に受診する事ができない為に、ヘルパーを介して行われるものが、通院介助または院内介助です。 訪問介護対応という事は、先程にもあった通り事前確認やそれに伴う打合せや会議、計画書の作成、記録または報告書の作成等が必要となるという事です。 要介護度認定があっても看護師の介助があれば一人でも受診できたり、医師とのやり取りが可能な場合は、ヘルパーは立ち入る事はできません。 身内や家族の様に寄り添う気持ちは大切ですが、介護保険を利用している事を忘れずに対応しましょう。 皮膚は人の身体の信号機です 訪問介護では、要介護の利用者でも自身で何等かの形でも動ける利用者と、自身の思うようには動けない利用者がいます。 (ここでは、施設や医療機関に入所せず自宅で家族の援助を受けながら過ごす寝たきりに近い状態を指します。) そういった利用者への介護は、ほぼ身体介護メインである事が多いのですが、「寝たきり」状態である場合、ケアマネージャーのプランを踏まえた上で更に注意すべき点がいくつかあります。 ヘルパーは訪問介護を通じて利用者の状態を確認した上で、「おかしいな?」「あれ?前回より状態悪くなってる!」と感じたら、状況や状態の報告を行い、適切な判断や今後の対応を検討しなければなりません。 図の①や②の場合は、状況によっては医師の診断が必要になりますし、介護ではなく訪問看護対応となる事もあります。 図③の場合、医師の診断やケアマネージャーとの検討、利用者の身体状態によっては訪問リハビリ対応となり、介護との連携を図っていく形になる事もあります。 図④~⑤に関して特に図④の場合、皮膚に状態悪化がみられ、褥瘡が確認された場合は注意が必要です。 褥瘡部への処置は医療行為ですので介護では対応できませんが、排泄により患部周辺が汚染された場合は、清拭対応としてヘルパーが介護を行います。 排泄物で汚染されたまま放置では状態悪化に繋がる為、排泄汚染されている場合は、患部周辺の洗浄、ガーゼやパットの交換、おむつやリハビリパンツの交換はヘルパーが対応します。 褥瘡、床ずれは同じ体勢により同じ個所に体圧が掛かってしまった場合にできる事が多いので、体位を定期的に動かし圧を分散させる必要があります。 それと同じくして、栄養摂取においても食事による栄養が摂取できなくなり、低栄養になってくると褥瘡ができやすく、また発症しても治りにくくなってしまいます。 食事による栄養摂取の為には、嚥下状態も大きく関わってきますし、上下肢の動きも体圧分散に繋がる上に、排泄などの基本的な身体動作に上下肢の動きは必須な為、その動作が維持できるかどうかは褥瘡発症のリスク増減に関わってくるので注意が必要です。 図①~⑤は全て連動しており、訪問介護でヘルパーが対応する介助は一つ一つが全て重要なものであると同時に、目に見えてその状態の良し悪しを教えてくれるのが「利用者の皮膚」であったりします。 ・特に状態に問題なく、その利用者なりの日常生活が送れていたら青信号です。 ・日常生活は送れているけれども、何らかの「あれ?おかしいな?」が みられたら黄信号です。 ・はっきりと異常が確認されたら赤信号で、医療対応が必要です。 介護で対応すべき範囲と医療で対応すべき範囲を理解し、利用者から出される信号を正しく受け取り、日常生活を送るという道路を走る車の一つが介護であると考えられるならば、訪問介護にて ヘルパーがどう対応すれば良いのかが分かってくるでしょう。 まとめ 今回は、訪問介護のヘルパーが、医療行為や医療機関との連携を求められる状況時での対応の仕方について紹介しました。 ・利用者の日常生活には、医療行為を必要とする様な事態や簡単な処置対応を 求められる事があり、基本的には医療行為はできないが、介護で対応可能と 解釈されたヘルパーができる医療行為がある。・ヘルパーができる医療行為でも、医療(医師や看護士等)との連携が求められる。・医療機関への受診対応も訪問介護サービスの一つであり 介助を行うには条件や事前または事後の対応が含まれる。・通院または院内介助を計画されサービスを実施しても 介護で行えるサービスと行えないサービスがある。・訪問介護で寝たきりや思うように自身で動けない利用者へのサービスでは ケアプランの他にも気を付けなければならない点があり、実際サービスに入って 認識や確認できる事が少なくない。・嚥下、栄養、可動域、皮膚、排泄の5点は連動しており 皮膚状態は身体全体の良し悪しを現す信号である。 ・状態の変化の気付きを意識して生活状況の対応をし、状態の異常時は すぐに医療との連携を図る事ができる最前線にいるのがヘルパーであるので 訪問介護時はサービスは繋がっている事を意識して行う。 「医療と介護の連携」と言われると難しく捉えられがちですが、基本的にできる事やできない事をきちんと踏まえた上で、サービスを行えば特に問題はないのです。 訪問介護で身体介護を行う、通院または院内介助を行う、身体介護で利用者の状態をよく確認する、これらは全て利用者の日常生活を安全に送る為の一つで、全ては連動しているのだと考えられたならば介護に対しての理解も深まるでしょう。 不安を持ったままサービスを行えば利用者にも不安が伝わります。 「ヘルパーは介護のプロだ」と自信を持って訪問介護サービスを行いましょう。
介護保険を使った訪問介護。 実は生活援助と身体介護には違いがあります。 今回はその点をご説明します。 生活援助って何? 介護の業界を知らない人に「生活援助と聞いて何を連想しますか?」と聞いたことがあります。 その方は「高齢者の出来ない買い物とか、掃除とかですか?」と答えていました。 それも生活援助の一つですが、細かく言うと他にもたくさんの生活援助の内容があるのです。 この章では生活援助の中身をご説明していきます。 生活援助でやってはいけないこと 生活援助とは身体介護以外のサービスで、ご利用者様が日常生活で行う活動内容を、代わりに訪問介護ヘルパーが行う支援のことを指します。 ここで注意点があります。 生活援助はあくまで「ご利用者様本人の生活」に必要なサービスに限定されるのが基本です。 そのため、生活援助で行っては行けないことがあります。 以下のようなサービスは生活援助のサービス外です。 ・ご利用者様が飼っているペットのゲージの掃除や散歩などの世話 ・ご利用者様以外の食事を作る(ご利用者様の家族など) ・ご利用者様本人が使わない部屋や、庭の掃除 ・イベント時に特別な料理を作る ・ご利用者様の家族の買い物 ・家電や家具などの移動や修理 ・車の運転代行 ・ご利用者様の家にある車の清掃 ・預貯金の引き出し代行、お金を扱うこと ・家にある植木や、草花の手入れ ・酒やタバコなど嗜好品の購入代行 ・室内の電球取り替え ・ご利用者様が家にいない状態での留守番サービス 訪問介護を実際に行うと正直なぜ行ってはダメなのか分からない内容もあります。 例えば電球の交換などは行なってもいいように感じます。 しかし、実際は禁止されているのです。 このように、生活援助と言ってもやっていいこと、やってはいけないことがあることを事前に利用者にお伝えしておかなくてはいけません。 その上で生活援助の内容をご説明していきます。 生活援助でやっていいこと 基本的な決まりとして、生活援助は「ご利用者様本人の生活」に必要なサービスに限定されるとお伝えしました。 この決まりを踏まえて今から生活援助の具体的な内容をお伝えしていきます。 買い物代行 このサービスはご利用者様が生活する上で必要な食材や日用品などをメインに、生活に必要なものだけをヘルパーが代わりに買い物代行するサービスになります。 掃除代行 このサービスは、ご利用者様の住環境の清潔な環境を整えるためのサービスです。 ご利用者様によっては、右半身麻痺だけど自分で歩ける人もいたりします。 そのような方は、掃除を自分で行えないことがあるので、ヘルパーが代わりにゴミを集めたり、床の掃除を行なったりします。 実際、1時間ほどでトイレ、居室、お風呂の掃除のみのサービスなどもあります。 洗濯代行 ご利用者様が使用した衣服や、生活の中で汚れたものなどを洗濯するサービスです。 過去に干したものを回収し、洗濯したものを干すまでがサービスの一つです。 場合によっては、訪問した時に汚れたシーツや身の回りのものがあれば、それも洗濯することもあります。 ベッドメイキング 訪問介護の仕事をしていると、訪問先のベッドメイキングの仕事もあります。 このサービスは、経験上あまり行なったことはありませんが、ごく稀にサービスとして行うことがあるので、覚えておいて損をすることはないと思います。 伺うお宅によって使う布団やシーツの種類なども違うので、臨機応変にサービスの行い方を学ぶことができます。 衣類の整理、被服の補修 ご利用者様の生活を守る上で、衣服の整理や被服の補修は重要になってきます。 認知症のご利用者様などは暑い真夏の季節でも厚手のダウンを着ようとする方もいます。 そのような方がいることもあるので、季節に合った衣服の準備や整理整頓、被服の補修はご利用者様の生活を守る上で重要になってきます。 薬の受け取り代行 ご利用者様の生活の中で重要になる薬の受け取り代行も生活援助の一つとして行います。 訪問介護をしていると、ほとんどのご利用者様が薬の内服をおこなっているので、ご利用者様によっては薬の受け取りを行うサービスを必要としている人もいます。 重要なので覚えておきましょう。 身体介護って何? この章では身体介護についてお伝えしていきます。 結論からお伝えすると、身体介護はご利用者様の体に触れてサービスを提供するものです。 具体的は以下の内容になります。 ・ご利用者様の体に直接触れて行う介助サービス ・ご利用者様の自立支援・重度化防止のためのサービス ・その他の専門的知識・技術を要する生活上のサービス (出典‘厚生労働省「「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」」の一部改正について」) ではさらに細かく分解するとどのようなサービスなのかをご説明していきます。 身体介護の種類と内容 では、身体介護はどのような種類と内容があるのか、詳しく解説していきます。 食事介助 身体介護の中でも代表的な食事介助ですが、主に食事をご自身で食べることが難しいご利用者様を対象に行う介助です。 食事介助は、見守りで大丈夫な場合と一部を誘導やお手伝いすれば大丈夫なもの、また全ての介助をしなければならないものと3パターンに分かれます。 他に食事形態の面でも違いがあり、ヘルパーはご利用者様がどの職形態で食べれるかも把握して、介助を行う必要があります。 介助方法もご利用者様によって違い、食具も変わります。 食事介助は、多岐に渡り注意しながら行う必要のある介助です。 排泄介助 排泄介助は、何パターンかに環境が分かれています。 ①トイレで排泄する場合 ご利用者様の身体状況で大きく変わりますが 職員1人で介助可能な方もいれば、職員2名で対応する必要のある方もいらっしゃいます。 ②ベッドなどで排泄介助をする場合 主にトイレで排泄介助困難なご利用者様が、この状態にあたります。 この場合職員1人で行うときと、2人で行うときがあります。 理由としては、ご利用者様の身体状況などで大きく変化するためです。 ベット上での排泄介助は必ず体位変換が必要となるのですが、その体位変換が職員1人で行えない時などは職員2名体制で行います。 更衣介助 主に起床した時と寝る前に行うことが多いです。 その他にもイベントの時や、入浴の前後などにも行います。 更衣介助は基本的には職員1人で対応できるご利用者様が多く、更衣の時は「脱健着患」を守り介助を行います。 「脱健着患」とは 健康な手や足から服を脱ぎ、患側(体の一部が麻痺してて動かない等)から服を着る事で ご利用者様の負担を少なくする基本となる介助ルールです。 入浴介助 もう一つ代表的な介助が入浴介助です。 これは全身浴と部分浴に分かれます。 全身浴とは、全身を洗い湯船に入浴していただく一般的な入浴介助で、部分浴は足のみ、もしくは手や頭のみを洗浄するといった、部分的な入浴のことを言います。 身体状況と目的別でこの全身浴と部分欲は分かれますが、この介助も技術力が必要な介助なのでしっかりと学び行う必要があります。 まとめ 今回は介護保険適応時の生活援助と身体介護の違いについてご紹介しました。 ・生活援助はご利用者様の体に触れることなく ご利用者様の身の回りの生活のお世話を生活援助という。・身体介護は、ご利用者様の体に触れて介助を行う。 この2つの違いは、ご利用者様の体に触れてサービスを提供するかどうかが、大きく違うものになってきます。 最後までお読み頂きましてありがとうございます。
介護保険制度では、要介護度によって受けられるサービス料の上限が決まっています。 ケアマネジャーは、決められた上限の範囲におさまるようにサービスを調整しなければなりません。 本記事では、介護保険の上限が決まっていることや、この上限を超過した場合の対策、自己負担を軽くする制度について解説します。 介護保険の上限は区分支給限度基準額で決まっている 介護保険のサービスは、訪問介護やショートステイ等のサービスごとに使用できる単位数が決められています。 そして、要介護度によって1ヶ月間に使用できる単位数の上限が決められており、それを区分支給限度基準額といいます。 区分支給限度基準額とは 区分支給限度基準額とは、要介護度ごとに設定された介護保険サービスの月の上限を単位数として設定しているものです。 介護保険はサービス毎に単位が決められており、ケアマネジャーは区分支給限度基準額を超えない範囲で、サービスを組み合わせて調整します。 利用者の自己負担は、所得によって1〜3割に設定されていますが、在宅介護を続けていくと、加齢やADLの低下にともない必要なサービス量は増えるものです。 サービス量が増えると、自己負担とともに介護保険の公的なお金の利用も増えていきます。 しかし、財源に限りがあるので上限が設けられているため、その範囲内でサービスを調整するよう求められています。 ○在宅サービスの区分支給限度額と自己負担額 区分 支給限度基準額(単位) 利用限度額 (円) 1割負担の時の 自己負担額(円) 要支援1 5,032 50,320 5,032 要支援2 10,531 105,310 10,531 要介護1 16,765 167,650 16,765 要介護2 19,705 197,050 19,705 要介護3 27,048 270,480 27,048 要介護4 30,938 309,380 30,938 要介護5 36,217 362,170 36,217 ※1割負担、1単位=10円の場合 参考:目黒区 区分支給限度額(介護保険から給付される一か月あたりの上限額) 区分支給限度額を超過すると全額自己負担になる 区分支給限度基準額を超過してしまった場合、超過した分の介護保険は利用できないので、全額自己負担で支払うことになります。 例えば、1割負担で要介護5の人が1ヶ月に400,000円分の介護保険サービスを利用したとします。 1割負担の支払額は40,000円ですが、限度額は36,217円なので、40,000−36,217の3,783円分超過してしまいます。 この場合、超過した3,783円は全額自己負担になりますので負担額は10倍の37,830円です。 全ての負担額の1割負担分の36,217円と全額自己負担分の37,830円を足して、74,047円がこの方の自己負担額になります。 急に負担が増えてしまいますので、ケアマネジャーは上限の範囲内でサービス調整する必要があります。 介護保険の上限を超えないようにするための対策の一つは、要介護度の区分変更を申請することです。 介護保険の上限を超えないようにするには区分変更を申請する 介護保険の上限を超えないようにするには区分変更申請が有効です。 要介護度が上がると区分支給限度基準額が上がりますので、利用できるサービスの量を増やせるからです。 例を挙げると以下のようになります。 要介護1の時は車椅子のレンタルができなかったが、要介護3になったらできるようになった。 要介護2では他のサービスとの兼ね合いでショートステイが1週間しか利用できなかったが、要介護4になったことで10日利用できるようになった。 特養入所を考えているが、要介護2の状態では入所できないので要介護3以上にしたい。 上記のように、区分支給限度基準額を超えてしまいそうな時は区分変更申請が有効です。 ケアマネジャーとして、利用者本人や家族の生活状況を見ながら提案してみるのもよいでしょう。 しかし、ご利用者様のご家族から「要介護度が上がると自己負担が増えてしまうので困る」という声が聞こえてくることもあるかもしれません。 次は自己負担を軽減させる制度について解説していきます。 介護保険の自己負担を軽くする制度 在宅介護を続ける上で、費用負担を軽くすることも大きなポイントです。 ここでは、自己負担を軽くする制度である「高額介護サービス費」「介護保険負担限度額認定」や、「介護保険料を滞納すると自己負担が増える」ことについて説明します。 高額介護サービス費 参考:厚生労働省 令和3年8月利用分から高額介護サービス費の負担限度額が見直されます 高額介護サービス費は、「1ヶ月に支払った利用者負担の合計が所得に応じた負担限度額を超えた時に、超えた分が払い戻される」制度です。 例えば、市町村民税が課税されていて課税所得が380万円未満の人は、上限額44,400円になっているので、1か月の費用が50,000円かかった場合後から6,000円が返還されます。 介護保険の給付対象外の食費や、全額自己負担分は対象にはなりません。 該当する時に、市町村から申請書が届きますので、必要事項を記載して役所へ提出します。 次回以降は自動で振り込まれますが、はじめに申請をしないともらえないので注意が必要です。 介護保険負担限度額認定 介護保険負担限度額認定は、ショートステイや特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院などの介護保険施設を利用する際の負担軽減対策です。 これらの施設の利用料金は、介護保険の自己負担分(1〜3割負担)と食費、居住費が主なものになります。 このうち、食費と居住費が住民税の課税状況や年金額、預貯金などによって段階的に減額されます。 施設入所の場合は通常15〜16万円かかる利用料金が半額程度になる場合もあります。 要件が複雑ですので、役所の介護保険窓口で対象になるのかどうか確認してみてはいかがでしょうか。 介護保険料の滞納 こちらは自己負担を軽くするというよりは、負担を重くしないようにするための注意点です。 40歳から納付義務のある介護保険料は、健康保険料とあわせて納付します。 年金を受給するようになると、特別徴収といって年金から天引きされるのが基本です。 ただし、年金額が年間18万円未満だったり年度途中で65歳になったり、引っ越したりすると普通徴収になり、納付書や口座振替で支払うことになります。 介護保険料を滞納すると、期間によって以下のようなペナルティが課せられるので、注意しましょう。 滞納期間 対応 内容 1年以上 介護保険給付の支払い方法の変更(償還払い化) 通常1〜3割負担のところ、一旦10割支払い、その後申請をして7〜9割分の払い戻しを受ける。 1年6か月以上 介護保険給付の一時差し止め 一旦10割支払った後、7〜9割の払い戻しが差し止められる。介護保険料を支払えば払い戻されるが、支払わないと差し止め分から差し引かれる場合がある。 2年以上 介護保険給付の減額 時効により介護保険料が納付できなくなる。 また、通常1〜3割の自己負担が3〜4割負担になり、高額介護サービス費の対象外になる。 介護保険料を滞納すると上記のようなペナルティが課され、自己負担が重くなります。 滞納すると市町村から督促状や催告書が送られてきますので、速やかに納付しましょう。 まとめ いかがでしたでしょうか。 本記事では、介護保険の上限や、上限を超過した場合の対策と、自己負担を軽くする制度について解説しました。 介護保険の上限は区分支給限度基準額で決まっている 区分支給限度基準額を超過すると、超過した分は全額自己負担になる 区分支給限度基準額を超えないようにするには要介護度の区分変更申請が有効 介護保険の自己負担を軽減させるには、高額介護サービス費や介護保険負担限度額認定などの制度を活用する 介護保険料を滞納すると自己負担が重くなる場合がある 介護保険の制度は複雑で、利用者やその家族が自ら理解して制度を活用することは現実的ではありません。 ケアマネジャーには利用者やその家族が安心してサービスを受けられるよう、制度をうまく活用し導く役割が求められています。 最後までお読みいただきありがとうございました。
介護認定結果の通知を受け、いざサービスを利用・継続しようと思ったものの、 「希望するサービスが受けられない」 「介護の手間は増えているのに介護度が低くなり、今まで受けていたサービスが受けられなくなった」 ということが起きることがあります。 状態に適した認定結果をもらうために、介護認定調査時のポイントについて説明します。 介護認定申請とは 介護保険によるサービスを利用・継続するには、要介護認定の申請を行う必要があり、介護保険申請書が必要となります。 40~64歳までの第2号被保険者が申請を行う場合には、要介護状態等の原因である身体上及び精神上の障害が特定疾病によることが要件とされています。 認定調査とは 介護認定には、認定調査員が行う「認定調査」と主治医が作成する「主治医の意見書」の2つの書類が必要になります。 認定調査は新規申請を除き、介護認定有効期間の満了の日の60日前から満了の日までに市町村へ提出します。 申請後は、市区町村の職員または委託を受けた介護支援専門員が自宅や施設などを訪問し、心身の状況に関する調査を行います。 主治医意見書の作成については市区町村が主治医に依頼をしますが、主治医がいない場合は、市区町村の指定医の診察が必要です。 認定調査員とは 令和2年4月 1日 より指定市町村事務受託法人における認定調査は介護支援専門員が行うことを基本とはしています。 しかしm介護支援専門員その他の保健、医療または福祉に関する専門的知識を有する者が行うこともできるようになりました。 厚生労働省「要介護認定等の実施について」の一部改正について.pdf 認定調査内容とは 認定調査は74項目の基本調査と特記事項からなり、認定調査の74項目は大きく次の5つの群と3軸の判定から成り立ちます。 認定調査の5つの群 ・1群 身体機能・起居動作 ・2群 生活機能 ・3群 認知機能 ・4群 精神・行動障害 ・5群 社会生活への適応 判定基準の3軸 ・能力を確認して判定する ・介助の方法(生活を営む上で他者からどのような介助が提供されているか) ・障がいや現象(行動)の有無 これらの5つの群を3軸の内容を組み合わせて調査することにより、タイムスタディに基づく樹形モデルから、申請者にかかる介護の手間としての「要介護認定等基準時間」が算出されます。 介護度が決定する仕組み 介護認定は一次判定結果をもとに二次判定で審査され決定します。 一次判定とは、調査結果および主治医意見書の5項目をコンピューターに入力し、全国一律の判定方法により要介護度が判定されます。 一次判定の結果と主治医意見書に基づき、介護認定審査会による要介護度の判定が行われることを二次判定といいます。 そのため、一次判定結果の内容で例え要介護状態であっても、審査会で要支援状態になることがあります。 認定審査会に伝わる特記を書いてもらうには 判定基準の能力判定および介助の方法については、原則として実際に出来るか、出来ないか、介助が行われている、いないかで選択します。 認定調査時に普段は行えていない動作を無理に行うことや、出来ていない事も自分で行っていると答えてしまう可能性があります。 本人の返答が事実と違う場合も想定されるため、調査員に伝えやすいよう本人の死角になる位置で本人の言った言葉に対し、首を横に振るなどジェスチャーで違うことを気付いて貰うとよいでしょう。 本人の前で事実を説明することで、調査後に本人と家族がトラブルになる事もあるので、調査後に電話で再確認して貰うようメモを調査員に渡す事も効果的です。 実際に試行した結果と日頃の状況が異なる場合は、一定期間(調査日よりおおむね過去1週間)の状況において、より頻回な状況に基づき選択されます。 家族が同席し日頃の動作について調査員に説明することが望ましいでしょう。 認定審査会で検討されるケースとは 調査時に行えている行為が適切でない場合や、介助項目における「見守り等」や「一部介助」「全介助」といった選択肢は、介助の量を意味していません。 具体的な介助の量については、その内容が具体的に特記事項に記載されていることが必要です。 例えば、麻痺や疼痛などがある独居高齢者の更衣動作の場合、介助をする人がおらずベッド上で1時間程度かけている、認知症高齢者の場合では着衣動作自体は可能ではあるが、同じ衣類や汚れた衣類を何日も実際には着ている、下着が後ろ前や裏返しで着用しているなどの場合もあります。 また、有無の項目(BPSD関連)は、その有無だけで介護の手間が発生しているかどうかは必ずしも判断できません。 介護の手間を二次判定で適切に評価するためには、特記事項に記載されている介護の手間を、頻度もあわせて検討する必要があります。 介護者による介助がBPSDを引き起こしている場合などもあり、介助方法が、不適切であると認定調査員が判断する場合は、特記事項にその理由と適切な介助について記載し、介護認定審査会の判断を仰ぎます。 BPSD(行動心理症状)とは、記憶障害や見当識障害といった認知症の中核症状に伴ってみられる二次的な症状を指します。 不安や混乱が続くことに適応しようと模索して、強い不安・混乱・自尊心の低下等から徘徊や興奮、暴力行為といった様々な問題が起こってしまうのです。 実際に行われている介助が不適切と考える状況 ・独居や日中独居などによる介護者不在のために適切な介助が提供されていない場合 ・介護放棄、介護抵抗のために適切な介助が提供されていない場合 ・介護者の心身の状態から介助が提供できない場合 ・介護者による介助がむしろ本人の自立を阻害しているような場合 介護の手間の判断は、一部介助であるか全介助であるかといった選択だけで行われるものではありません。 介助をするほうが本人にとって適切な介助であったり、介助者にとっても介護の手間がかからないものの、本人のこだわりや介護拒否から見守りや声掛けなどをしながら本人の意向に配慮して変更するなどの対応が求められる場合もあります。 このような細かい内容を認定調査員に説明することが必要です。 介護認定審査会とは 介護認定審査会とは、市町村の附属機関として設置され、要介護者などの保健、医療、福祉に関する学識経験者によって構成される合議体です。 介護認定審査会複数の市町村が共同で設置することも可能になっています。 認定審査委員会のメンバーは、医師や歯科医師・薬剤師・看護師・保健師・歯科衛生士・介護福祉士・社会福祉士・介護支援専門員などの有識者が市町村長から任命されます。 認定審査会では認定調査員が作成した調査書からコンピューターによる一次判定結果を元に、主治医に意見書をもとに介護度を決定することとなります。 そのため、実際に申請者から直接、審査に必要な情報を記載する認定調査員と主治医は重要な立場と言えるでしょう。 介護度の違いによるサービスへの影響 要支援2と要介護1、要介護1と要介護2では使えるサービスに大きな違いが出てきます。 例えば、要支援2と要介護1では訪問介護や通所介護の利用回数が大きく異なるので注意が必要です。 要支援状態になると訪問介護では通院乗降等介助や通院介助といった受診に伴うサービスや、 看護小規模多機能型居宅介護の利用が出来なくなります。 また、施設系サービスでは老人保健施設への入所も出来なくなります。 また、要介護1と要介護2では車椅子や特殊寝台などの福祉用具貸与など、生活環境に与える影響が大きいため、注意が必要です。 要支援状態から介護状態に切り替わるポイント ・認知症の有無 ・状態の安定性 運動機能だけでなく思考力や理解力の低下がみられるなど、認知症の疑いが高いと判断された場合、一次判定で要支援2であっても要介護1と判定されることや、主治医の意見書などの調査により 半年以内に状態が大きく変わる可能性があると判断された場合、要介護1と判定されることがあります。 認定審査会の簡素化及び有効期間の延長について 平成30年4月1日以降、一定の要件を満たす場合、認定審査会の簡素化が可能となりました。 簡素化の要件は以下の6つです。 簡素化の要件 ・第1号被保険者であること ・要介護更新申請であること ・一次判定における要介護度が、前回認定結果の要介護度と同一であること ・現在の認定有効期間が12か月以上であること ・一次判定における要介護度が「要支援2」又は「要介護1」であり、状態の安定性判定ロジックの判定結果が「不安定」でないこと ・一次判定における要介護認定等基準時間が、一段階高い要介護度から3分以内でないこと 簡素化により審査会の審議が迅速に対応できるので、多くの件数の認定結果を出せる事となります。 しかし、認定調査の特記事項などの詳細な審査が行われなくなるため、申請者の不利益・不公平につながる可能性があるとの見解もあります。 認定結果や身体状態変化に併せ都度、区分変更なども検討する事が望ましいでしょう。 まとめ 介護保険では、要介護度に応じて受けられるサービスが決まっているため、適切な介護認定結果を受けられるよう認定調査時には家族が同席して普段の生活について確実に調査員に説明しましょう。 介護認定審査会における一次判定からの判定の変化には、認定調査の69項目と併せ主治医意見書による5項目が認知症の有無や病状の安定性が反映されます。 介護認定結果への反映の為には明確な根拠と具体的な「介護の手間」と「頻度」を特記事項に記載し、認定調査員が適切と考える介助の方法と実際に行われている介助の方法との判断の違いを、介護認定審査会で検討して貰えるよう、その理由や事実を特記事項に記載して貰う事が重要です。 最後までお読みいただきましてありがとうございます。