やるべきことが多すぎて本来のケアマネジャーの仕事が出来ない!と思われているケアマネージャーは結構多いものです。
ケアマネジャーは介護保険制度内の他職種と対比した場合、サービス提供時間やサービス内容も明確にされていないのが現状です。
ここでは居宅ケアマネジャーを悩ませる業務について説明します。
介護支援専門員(ケアマネジャー)の本来の仕事内容とは?
ケアマネジャーとは要介護・要支援の状態にある高齢者の心身状況に応じ、適切な介護サービスが利用できるようケアプランを作成し、市町村やサービス事業所や介護保険施設と連絡・調整を行う専門職です。
ケアマネジャーは居宅ケアマネジャー、施設ケアマネジャー、介護予防マネジメントの大きく3つに分別されます。
居宅ケアマネジャー
居宅ケアマネジャーは自宅で介護を受ける人を対象にケアプランを作成します。
サービス利用者の自宅を訪問して状況を確認し、利用者がスムーズにサービスを受けられるよう、関係各所との調整を行います。
施設ケアマネジャー
施設ケアマネジャーは介護老人福祉施設などに勤務し、入所者のケアプランを作成します。
施設ケアマネジャーは入居者の状態変化を把握しやすい反面、担当件数が居宅ケアマネジャーより多く各職種とのチームワークが必要となります。
介護予防ケアマネジメント(総合事業)
介護予防マネジメントとは、要支援の認定を受けた人が、要介護状態にならないようにサポートする取り組みです。
介護予防ケアマネジメントは地域包括支援センターが統括しており、委託を受けた居宅介護支援事業所でも行う事が出来ます。
ケアマネージャーの主な仕事内容
ケアマネージャーの主な仕事内容は、以下の通りです。
・インテーク ・アセスメント(課題分析) ・ケアプランや各種書類の作成 ・月1回のモニタリング訪問 ・介護保険関係の手続き ・各事業所、医療機関とのやり取り ・請求業務(給付管理) |
ケアマネジャーはケアマネジメントを開始するにあたって、初回の顔合わせ(インテーク)を通じて、介護サービスやケアマネジャーの役割を利用者やその家族に伝え、契約を行います。
契約後、利用者や家族の意向を確認し、本人の身体状況や置かれている環境、介護保険外の支援などを分析し(アセスメント)総合的な援助方針を検討します。
ケアマネジャーの仕事には利用者の権利擁護やサービスの公平・中立性のほか、プライバシー保護などの倫理が求められます。
インフォーマルな社会資源の活用などを駆使し、利用者やその家族が自立した日常生活を営むのに必要な援助に関する専門的な知識と技術が必要になります。
ケアマネジャーの主な仕事内容は業務範囲外になりやすい
厚生労働省の「国民生活基礎調査」によると65歳以上の者がいる世帯は、全世帯の約半分で単独世帯や夫婦のみ世帯が全体の過半数と、一人暮らしの高齢者は年々増加しています。
家族情景やケアマネジャーという職種の把握からか、担当ケアマネジャーが家族の役割を担うようになり、本来の業務ではない仕事が際限なく増えています。
主な仕事内容である「ケアマネジャーは月1回のモニタリング訪問をして必要時にケアプランを作成」「各関係機関とのやり取りや請求業務を行う」は、いわばやれて当たり前なのです。
ケアマネジャーの仕事がこれだけで済むのであれば平穏な日々を過ごせます。
ケアマネジャーを悩ませる業務外の仕事とは
ケアマネジャーを悩ませる業務範囲外は突然やってきます。
高齢者は加齢に伴う生理的老化の進行によって臓器機能、自律神経、免疫機能等の低下、病気の併存などの身体的特徴が多く、複数の症状や病気を抱えがちです。
そのため、急変などのサービスの調整や業務範囲外の仕事が発生しやすくなります。
高齢者は退職による「職業や社会的立場の喪失」と併せ、身体面の老化といった心理的、肉体上の喪失体験も重なり精神的機能の低下により頑固になることが多々あります。
また、保守的傾向になる事が多く、町内会や自治会など、域コミュニティから孤立する高齢者も増えてきているのです。
そのため、問題が表面化されず突然、行政から連絡が入ることもあります。
居宅ケアマネジャーを悩ませる業務範囲外の仕事
ケアマネージャーに発生しがちな業務範囲外の仕事は以下のようなものがあります。
救急搬送や受診同行
ケアマネジャーは救急車への同乗や搬送先への同行を求められることがあります。
治療が必要な疾患や症状を放置している高齢者が急変することや、受診を拒むため受診予約にあわせた通院ができず訪問介護の通院介助などのサービス調整が難しい場合等、ケアマネジャー通院時の付き添いをすることは多く見られます。
親族が近くにいない、身寄りがないなどの場合、救急搬送はもちろん、病院の入院手続き入院時の必要物品準備などを医療機関から依頼されることもあり、一日のスケジュールが狂ってしまうこともあります。
近隣住民からの苦情対応
住居から悪臭や異臭を放っていたり、敷地外に大量のゴミや不用品が溢れ、近隣住民からケアマネジャーへ対応を求めてくる場合もあります。
ゴミの分別ができず、指定日にゴミを出さないなどと近隣とトラブルになっていたり、室内がゴミ屋敷で足の踏み場もないなんてこともあるのです。
65歳以上の高齢者の住宅火災による死者数は平成27年は611人で、全死者数に占める割合は66.8%と高くなっています。
本人は全く気にはしていなくても「火事になるのでは?」「どうして施設に入所させないんだ」などと近隣住民より不安を煽られることもあります。
地域から疎外され心を閉ざした高齢者の心を解きほぐすにはさらに時間を要し、訪問介護の生活援助も大掃除は出来ないため、介入出来る環境までを作るためにケアマネジャーが関わる場合があります。
金銭・財産管理の欠如
生活費のほとんどをアルコールやギャンブルに散財していたり、家賃や公共料金などが数カ月にわたり滞納している場合があります。
この場合でも、関係業者へケアマネジャーが対応することがあるのです。
生計の理解が乏しくなる反面、必要な支払いをしている家族がお金を盗んだと思い込む事や、必要な公共料金さえも「そんなものは払わなくていい」などと支払いを滞っている場合もあります。
そのため、居宅サービスの依頼をうけ、いざ訪問をしたら電気・ガス・水道などのライフラインが止まりそう、なんてこともよくあることです。
金銭管理ができないことや金銭感覚など、認知面や性格的な部分への介入や後見人制度の手続きを含め、ケアマネジャーが一役をかうことになるでしょう。
認知症への対応
認知症高齢者が行方不明になり家族や警察と認知症高齢者の捜索をしたり、消費者被害の対応をケアマネジャーがすることもあります。
行政からの必要書類が郵送されていても紛失している事があり、必要書類の再発行や郵便物の配達にあわせて訪問したり、仕分け等も必要時に応じて行なうことがあります。
知らないうちに電話勧誘販売や無料キャンペーンなどを強調し、初回以外や一定期間内に解約をしないことで料金が発生する無料商法などの消費者被害にあって多額の借金を背負っていたり、金銭を搾取されている場合があります。
また、ペットの飼育が出来なくなっていたり、野良猫などに餌をあたえ、猫屋敷になったまま放置されているなど、多頭飼育崩壊していることもあります。
ケアマネジャーが業務範囲外の仕事をする理由とは
ケアマネジャーが業務範囲外の仕事をするのはケアマネの業務範囲が明確ではなく、利用者や家族の介護保険への理解、多職種や業種によるケアマネジャー本来の仕事に対して共通認識が出来ていないからです。
境界線を張り「ここまでは自分の仕事」として割り切ることを提言する行政や、上司なども多いですが要支援・要介護の高齢者を地域で支えていく仕組みの中で、ケアマネが足りない部分を補う非常に重要な役割を担っているのも現実です。
ケアマネの業務範囲外の仕事を断る対処法とは
そもそもケアマネが業務範囲外の事を請け負う必要はありません。
利用者さんやその家族が困っているから、と、そのすべてを引き受けていたら、ケアマネが倒れてしまいます。
ケアマネの業務範囲外の事を頼まれたら適切に対応し、本来のケアマネの仕事をきちんとできるようにすることがとても重要です。
では、実際にケアマネの業務範囲外の仕事を頼まれたときにどう対処すればよいか、その方法についてご紹介します。
対応できない理由を利用者や家族に伝える
そもそもケアマネージャーはなんでも屋ではありません。
できない理由を丁寧に伝えしっかりと断るようにしましょう。
そうすることでケアマネとしてやるべき本来の仕事が円滑にできるようになります。
そのくらい対応できる、と引き受けていると、頼まれる内容がどんどん増大になることが考えられます。
1人のケアマネージャーが業務外のことを行ってしまうと、他のケアマネージャーにも迷惑がかかってしまうこともありますので、毅然とした態度でお断りすることが重要です。
行政や管理者に相談する
利用者やその家族に業務範囲外の事を頼まれて困ってしまったら、まずは施設の管理者などに相談するようにしましょう。
もし、ここで対応するように言われたら、そこで働くことを検討することをおすすめします。
何にせよ、誰にも話さずに一人でなんとかしようとしては行けません。
利用者様や家族との信頼関係が壊れる、と悩む方もいるかもしれませんが、まずはケアマネとしての仕事がスムーズにできるようになることが重要です。
なにより、他の利用者様の対応がおろそかになってしまいます。
あまりにも悪質な場合は行政に相談しましょう。
まずは自分をきちんと守ってあげることが重要です。
まとめ
ケアマネジャーは介護保険の基本理念である「利用者本位」を実現するうえで、各関係機関とのサービス調整を行う専門職です。
ケアマネジャーの業務は多岐にわたり、地域共生型社会の実現に向け、高齢者の支援にとどまらず、障害や児童のケアマネジメントにも目を向けて職域を広げる活動をしています。
本人らしい生活を支え、身近で相談しやすい存在であり、ときに人生の最終段階までの伴奏者となる対人援助の専門職であるからこそ、利用者の生活全般に関わる事になります。
そのため、時に制度のはざまにある人への支援として「なんでも屋」にならざる得ないのが現状です。
しかし、それだけ高齢者にとって重要な役割を担った職務であるといえます。