訪問介護も新しいカタチへ。時代に合わせた変化への対応と結果をご紹介!

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narumi

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訪問介護利用者の日常生活を取り巻く環境は、日々変化しています。

今回は、在宅生活に対応したデジタル化やAIは、訪問介護にどう取り入れられるのかを紹介します。

多種多様化、ヘルパーさんも随時対応中

訪問介護には色々な「サービス行為ごとの区分」があります。


利用者の身体に纏わる介助を行う
身体介護や、日常生活に纏わる援助を行う生活援助、病院受診等の対応に纏わる介助を行う通院等乗降介助などです。

訪問介護の名の通り、ヘルパーが利用者宅へ訪問し介護や援助を行うことですが、ここ最近では日々の生活にデジタル化やAI化したものは普通に浸透しており、介護保険を利用する利用者も例外ではありません。

訪問介護では、サービスの基準となる「老計第10号」という法令があり、身体介護や生活援助のサービスの基本例が記載されています。

訪問介護に関わるヘルパーや職員には、必ず目にするサービスの教科書の様なものとイメージしたら良いでしょう。

大まかに言えば、介護の基本中の基本であるサービス事例が記されているのですが、ここ数年でサービス対応について幾分内容が変わってきたものがあります。

買い物対応、色々な「カタチ」

訪問介護サービスの一つ生活援助には、買い物・薬の受け取りというものがあり、老計第10号にもサービスの内容例が記されています。

2-6 買い物・薬の受け取り

〇日常品等の買い物(内容の確認、品物・釣り銭の確認を含む)

〇薬の受け取り 

利用者の日常品の買い物に対する介助をこの例を元に計画するのですが、通常は食料品や生活雑貨品を購入する為に利用者と同行するパターンと、代行するパターンがあります。

<利用者同行パターン>

・買い物の為の移動手段の確認

・利用店舗の確認

・店舗へ移動

・買い物、レジにて支払い、釣銭預かり、購入品収納

・自宅へ移動

・商品の確認、購入金額と釣銭の確認、商品収納

<ヘルパー代行パターン>

・購入品リスト、金額の確認

・利用店舗の確認

・ヘルパーによる買い物代行

(レジ支払い、釣銭預かり、購入品収納)

・利用者宅にて商品の確認、購入金額と釣銭の確認、商品収納

今までは、同行や代行においても利用者とお金の確認をし、店舗でレジにて支払いをし、お釣りがあれば受け取り、最後は利用者と商品や購入金額、釣銭を確認していました。

現在もその形で行っているケースもありますが、近年買い物の形が変わりつつあり、新たなパターンでの対応を求められる事もあります。

実際に訪問介護サービスの生活援助の計画に「買い物援助」がありますが、ここ最近ではこんな事例もあります。

①宅配ネット注文やネットスーパーで購入

県外に住む長女より「久しぶりに帰省して利用者(母)に会った際に前みたいに歩けない、買い物にも行けなくなった」と言われました。

「これまでは調理と掃除片付けをお願いしていたけど、ヘルパーさんに買い物もお願いしたい。」
の相談があり、始まった買い物援助です。

パソコンの操作方法は、図で分かる様にした物を印刷し、それをコルクボードに貼り付け、ヘルパーが訪問した日に見守りの下で、手順通りに入力し商品を選んで注文しています。

②スーパーやドラッグストアでセルフレジ対応

独居生活の利用者の週2回ある生活援助の内の一つが買い物同行と整理整頓です。

昨年まで利用店舗は有人レジでしたが、店舗改装後にレジの半分がセルフレジに変更となってしまいました。

買い物援助の際に人対応の方のレジへ並ぶも時間が掛かり、生活援助サービスの時間が押してしまう事もあった為、

「セルフレジで買い物ができるようになる(バーコード読み取り、マイバックに詰める
支払いをする、ショッピングカートに入れて持って帰る)」

という見守り的援助プランに変更しました。

現在も見守りの下で買い物をされています。

③支払いは電子マネー決済(キャッシュレスで買い物、現金不所持)

長男とは同居も、日中は仕事で出張も多く留守がちで独居状態に近く、利用者が財布類を持つと置いた場所が分からなくなるので、

「母のスマホにダウンロードした電子マネーでの決済」

を希望をされました。

合わせて、できるだけお金を持たせたくないと強く言われます。

利用者も置いたはずのお金がどこにいったか分からなくなる事があるので、長男が準備してくれた金額を使う事を了承済みです。

ケアマネジャーや自治体と相談・検討の結果、

①利用者のスマートフォンをヘルパーが持ち出すのは、緊急事態時に連絡や対応ができなくなる事
②紛失した場合に損失が大きい上に日常生活に支障を来す

との判断で、買い物代行時の金銭取り扱いは流通系の電子マネー(カード型)対応に変更してもらい、様子をみる形を取りました。

結果としては、現金を取り扱わない事で、利用者宅のあちこちに小銭が見つかる事や財布類が見つからない事も少なくなります。

重ねて台帳管理も上手くいっている為、買い物代行は継続中です。

前述にもありましたが、訪問介護サービスでの買い物援助は人の手を介して現金を取り扱う事が通常だった為に、現代の流れに沿った対応に若干違和感を感じられる事もあるかもしれません。

介護認定を受けた利用者も私たちも同じ日常を過ごしているのだから、時代の流れに沿って介護サービスのカタチを変えていくのは必然の流れです。

中には新しい流れを嫌がる利用者もいますが、少しずつ『現在の暮らしの普通のカタチ』を取り入れ、地域に暮らす日常に慣れていく事も「尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう(介護保険法第1条)」になるのではないでしょうか。

お掃除ロボ、発進!

一般的という程ではありませんが、最近は自宅にロボット掃除機を導入している所もちらほらあるようです。

訪問介護を受ける利用者宅で導入される事もここ数年、僅かながらもみられるようになりました。

まだ圧倒的に生活援助で掃除のプランが立てられている場合は、掃除機やフローリングワイパー等の掃除用具で行う事が主立っています。

しかし、中には家族が購入したロボット掃除機が活動されている所もあるのです。

訪問介護において、同居家族がいる場合の生活援助は基本的に受ける事ができません。

(但し、同居家族にやむを得ない場合や状況によっては生活援助のサービス利用が可能になる場合もあります。)

ロボット掃除機も同様で、独居状態にある利用者へ離れて住む家族や身内から贈られた物、あるいは利用者自身で購入した物であれば、生活環境が利用者中心である為、使用については特に問題はありません。

それに応じたプラン変更は求められますが、日常生活を送る上での一部という事で対応していきます。

同居家族にやむを得ない場合や状況が有り、生活援助サービスを認められた場合では注意が必要です。

ケアマネージャーによる居宅プラン、それに沿って立てられた訪問介護計画書に則りサービスは行いますが、同居家族がいる場合の生活援助は、利用者のみが利用する場所においてサービスが行われ、同居家族が利用する共用場所へのサービスは認められません。

あくまでも訪問介護計画書に記されたサービスしか行えない為、プランが利用者の寝室や寝室周辺(利用者しか利用しない事を前提)の掃除や整理整頓であった場合、ロボット掃除機がリビングにあり、居室指定の設定をせずに利用者の寝室へ辿り着くまでの間の共用部分の掃除をしてしまう事が認められないのです。

「細かすぎる!少し位は良いじゃないか!」と思われるかもしれませんが、訪問介護は介護保険を利用した介護認定を受けた利用者の為のサービスなのです。(各自治体によっては、許容認可の範囲が違う場合もあるので確認が必要です。)

どんなに便利な機器や器具が導入されても、介護保険を利用している訪問介護の基本を踏まえた上で
プランに沿ったサービスを行う事を忘れてはいけません。

もはや、もう一人のヘルパーさん

最近では日常生活においてAI機器の導入が色々みられるようになりました。

前述にもありましたロボット掃除機もそうですが、スマートスピーカーも導入され日常生活に反映されているようです。

同居している家族が導入したので利用者も使用するという例もあり、ヘルパーやケアマネージャーも最新の流れをインプットやアウトプットしていく事が求められる様になります。

まず始めに利用者が「これ、どうやって使うんだろう?」と思うように、ヘルパーやケアマネージャーも「これ、どうやって使うんだろう?」「サービスにどう取り入れていけばいいんだろう?」と頭を悩ませるでしょう。

知識を得る為にスマートスピーカーについて学び(インプット)、「こうやって使うんだ!こんな機能があるなら支援や援助に取り入れていこう。」とプランに取り入れてサービスを行う事で実行に移す(アウトプット)形となるのです。

日々の生活が進化していく事に比例して、利用者の生活も進化し、サービスを行う介護事業所全体も進化し追従していかないといけません。

スマートスピーカーでできる事につきましては、下記の図を参照して下さい。

利用者がスマートスピーカーへ「今日の予定は何?」と聞けば、「〇日〇時から訪問介護です。」や「〇時に〇〇病院に受診です。」等のスケジュールを答えてくれます。

また、、「電気点けて、消して。」「エアコン点けて、消して。」「テレビ点けて、消して。」等の家電や機器の操作も音声で対応でき、「今、何時?」にも、時刻を音声で伝え、日用品が切れた時に
「(日用品名)を注文して」と頼めば、ネット注文で買い物もできてしまうのです。

こうなると、もう一人の家族であり、万能ヘルパーでもあります。

とは言っても、流石にできない作業や動作もあります。

そこはアセスメントやモニタリングによって必要となった介護プランに沿ったサービスを行い、AIを上手く活用していく事ができれば日常生活がよりよいものとなるでしょう。

まとめ

今回は、在宅生活に対応したデジタル化やAI化は訪問介護にどう取り入れられるのかを幾つか例を挙げて紹介しました。

・訪問介護は老計第10号の法令の基本に沿って対応も、最新のデジタル化やAI化によって
サービス内容が変化しつつある。
・生活援助における買い物同行や代行においても、「宅配ネット注文」
「ネットスーパーの利用」や、店舗にて購入も「セルフレジ」対応、
支払いは「電子マネー決済」対応等、今までの買い物のカタチが変わり
利用者もヘルパーも対応していかなければならない。
・生活援助における掃除においては、「ロボット掃除機」が導入されている所もあり
利用については同居家族がいる場合において注意を要する。
・「スマートスピーカー」という、AIが搭載された多機能なスピーカーを
導入されている所も少なからずあり、日常生活に反映される対応が可能になっている。

・「スマートスピーカー」のできる事は
①音楽の再生②家電や機器との連携操作③検索や情報収集やネット対応が可能
④メールやデータの送受信や音声読み上げ⑤スケジュール管理などがある。

・デジタル化やAI化が進んでも、日常生活ではできない動作や作業があるので
上手く活用しながら対応していく事が求められる。

デジタル化やAI化の波に乗って訪問介護もカタチを変えつつあります。

しかし未だそういった進化の波とは無縁の環境で日常生活を過ごす利用者がいるのも事実です。

其々の生活環境や状況に応じた対応を求められますが、一朝一夕には対応できません。

介護保険に関する法令遵守や法改正に伴うサービスの変更等に加え、最新のデジタルAI関連にも目を向けないといけない状況はとても大変です。

新旧共々に対応していけるヘルパー力を身に付けていきましょう。