「支援困難事例」の定義とは?ケアマネとして解決する方法をご紹介!

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narumi

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在宅介護を受けながら暮らす高齢者が増えている中、支援困難な事例も比例して増加しています。

ケアマネとしては腕の見せどころでもありますが、解決の糸口が見つからないというケースも散見されるようです。

今回の記事では支援困難事例にぶつかったときにどのような解決方法があるのか見ていきましょう。 

支援困難事例とは何か

そもそも「支援困難事例」とは、どういうものなのでしょうか。

実は具体的な定義はありません。

対応に苦慮する事象や問題の特徴はさまざまですし、複数の要因が重複していることもあり得ます。

そして、問題に取り組むケアマネによって、感じ方・受け止め方が違います。

経験のあるケアマネなら対応できるケースでも、新人ケアマネが対応したときには戸惑う場合もあるでしょう。

言い換えれば、ケアマネとして経験を重ねることで、支援困難だと感じる事例が減ってくるといえます。 

ほとんどのケアマネが支援困難事例を経験している

今から約10年前、大阪の社会福祉協議会がケアマネに行ったアンケート結果では、約90%のケアマネが「支援について困った経験がある」と答えています。

この結果から「10人中9人のケアマネが困難事例を担当したことがある」ということがわかります。 

経験を積めば困難事例と感じなくなるケースも

どんな職業であっても、すべてにおいて最初からうまくできることはありません。

経験を積んでいくことで、成長していきます。

ケアマネも同様で、いろいろなケースに対応していくことで、選択肢の引き出しも増え、心の余裕も生まれてくるものです。

特に対人援助については経験値が上がることで、より良い対応につながるケースは多いといえます。 

困難事例を解決する方法

では実際に、自分一人の経験だけでは対処しきれないような困難事例に遭遇したとき、どのようにすればよいでしょうか。

対応の仕方にはいくつかのパターンがありますので、そちらをご紹介します。 

似たような困難事例がなかったか事業所内で確認する

まずは自分が所属している事業所内で、他のケアマネに相談してみましょう。

実際に、各ケアマネが支援に困っている例を相談する会議を定期的に設けているところもあります。

朝礼や夕礼の場で行う事業所もあるようです。

他のケアマネに相談することで、良い対応方法を教えてもらえたり、似たような事例に対応した経験を持つケアマネもいるかも知れません。 

地域包括支援センターや基幹包括支援センターに相談する

地域包括支援センターや基幹包括支援センターは居宅ケアマネが対応に苦慮しているケースの相談に乗ってくれます。

他の事業所からの相談も受けていますので、過去に似たような相談が持ち込まれており、解決のきっかけを与えてくれることがあります。

場合によっては、相談にのってくれるだけでなく、解決に向けて一緒に動いてくれることもあり、とても心強い存在です。 

問題解決にはケアマネ個人ではなく、チームで取り組む

自分一人で解決できない事例は、事業所内のケアマネや包括支援センターに相談することが重要ですが、ケアに取り組むチームで情報を共有することも大切です。

たとえば、訪問介護事業所のサービス提供責任者や、福祉用具担当者、デイサービスの責任者などが挙げられます。

対応に苦慮していることを共有し、多くの人から知恵を出してもらうことで、問題が解決に向かうこともあります。 

ただし、デリケートな情報を必要以上の人数で共有することはやめましょう。

契約時に個人情報使用の許可を得ていても、必要最低限の人数にとどめるべきです。 

相談が解決に結びついた実例4例

それでは、実際にチームケアや包括支援センターに相談することで、解決に向かった実例をご紹介します。 

サービス担当者会議をきっかけに解決した例

Aさんはケアマネになってまだ2ヵ月です。

担当する利用者Bさんは認知症が進行してきました。

特に入浴を嫌がり、デイサービスには行くものの入浴は拒否が強く、体臭がするようになってきてしまいました。

他の利用者からも「Bさんが臭う」と苦情が出るようになってしまいました。

ケアマネやヘルパーが入浴するように何度説得しても、耳を貸してくれません。

このままではデイサービスも利用できなくなってしまいます。

どうすべきか、担当者会議を開催したところサービス提供責任者より、「昔、近所のCさんとよく銭湯に行っていたと話していたことがあります。Cさんに相談してみてはどうでしょう」と意見が出ました。

さっそくCさんに相談してみたところ、快く了承いてくれました。

Bさんに「これからはCさんと一緒に銭湯に行きませんか」と話したところ、思いのほか喜んでくれ、週に2回、一緒に銭湯に行ってくれることになりました。 

包括支援センターに相談して解決した例

Dさんはケアマネージャーとして長年、介護施設で働いてきました。

担当している利用者Eさんの娘さんは、毎日のように電話をしてきます。

その電話の内容というのが、「なぜ母の部屋しか掃除してくれないのか。洗濯にしてもそう、一緒に住んでいる家族の分までやるのが当然じゃないか」というもので、いくら説明しても介護保険制度を理解してくれません。

困ったDさんは包括支援センターに相談し、括の職員からEさんの娘さんに介護保険制度について
改めて説明してもらうことにしました。

そうしたところ、介護保険制度について理解してくれたようで、その後電話がなることはなくなりました。

問題解決後も、包括支援センターの職員はDケアマネのことを気にかけてくれ、それからというもの、Dさんも相談がしやすくなりました。

事業所内で相談し、解決に向かった例

Eさんについて、近隣より「異臭がする」との情報が寄せられました。

室内は物が散乱している状況で、着衣には汚れが目立ち、尿臭もします。

Fケアマネは訪問介護を提案していますが、Eさんは他者の入室を拒みます。

身寄りはなく、30年以上お一人で暮らしている方です。 

事業所内で話し合った結果、「入室を拒む」ということから、プラン立案の段階ではなく、まずはこまめに訪問し、信頼関係を築くことが必要と判断しました。

長年の独居生活から、「ご自分のペースがある」と判断、性急な生活改善はあえて避けました。

その間もちろん、近隣への配慮の連絡も欠かさないようにします。

支援が必要だと本人が判断した段階で、サービスを導入することができました。 

弟妹とケースワーカーに協力を仰いだ例

Gさんは認知症が進行してきていました。

また、生活保護を受給されています。

会話をしている限りでは一見問題ないように思えますが、病識がなく、生活全般に困難が生じてきています。

特に食事や水分をきちんと摂れていないようです。

幻覚症状も出現し、気分に波があり、物忘れも多くなってきました。

通帳を紛失したり、身に覚えのない訪問販売の契約書もあります。

親族は高齢で疾病を抱えている弟妹がいます。

Gさんは不安な気持ちが大きくなると、弟妹や訪問介護事業所に電話をするそうです。

 ケアマネは成年後見制度の必要性が高いと判断しました。

ただ、日常生活が成り立たないわけではなく、その進め方にも悩みます。

本人の不安な気持ちを解消するためにも、成年後見制度の活用を本人と弟妹に説明し、理解を求めました。

また、ケースワーカーからも話しをしてもらったところ、Gさんも納得され、後見制度の利用に結びつきました。

介護保険以外の他機関を活用も検討を

支援を困難にする要素の1つに、「介護保険サービスしか利用していない」という可能性があります。

その場合は、介護保険外サービスを利用することも検討すると幅が広がります。

ケアマネ研修でも「インフォーマルサービスの活用を」と何度も言われました。

インフォーマルサービスを活用することで、困難事例が解決に向かうことがあります。

行政機関はインフォーマルサービスの活用に長けていますので、相談することが重要なのです。

「ご利用者の経済状態と相談しながら」という条件が付きますが、金銭的に介護保険外のサービスが難しくても、無料で行政のサポートなどが受けられるケースもあります。 

まとめ

最後に、今回の記事のまとめです。

  • 約90%のケアマネが困難事例を経験している
  • 困難事例は1人で抱え込まないことが重要。
  • 困難事例の解決策として
  1.  事業所内で相談する
  2.  地域包括支援センターなど、行政機関にも相談・活用する
  3.  チームで解決に向けて動く
  4.  介護保険外のインフォーマルサービスを活用するなど、柔軟に対処する

 支援困難な事例に1人で関わり続けるのは大変なことです。

多くの人に相談し、チームとしてうまく関わることで、解決の糸口が見つかることがあります。

最後までお読みいただきありがとうござます。