「地域包括ケアシステム」と言われても、どんな内容のシステムなのかイメージがしにくいかもしれません。
少子高齢化の日本は介護保険制度のみだと高齢者を支えるのが難しい状態です。
ここでは地域で支える取り組みである「地域包括ケアシステム」について紹介します。
地域包括ケアシステムとは
「地域包括ケアシステム」とは、高齢や介護が必要な状態になっても地域全体で支えようというものです。
住みなれたところで最期まで自分らしく生活するには地域で支える必要があるからです。
これまでは介護保険制度のみで高齢者を支えてきましたが、高齢化とともに難しくなってきています。
このため、介護保険制度と医療保険制度から地域全体を支えていく必要があるのです。
ちなみに、「地域」とは、自宅から30分以内でサービスが提供される範囲です。
わかりやすくいうと、中学校校区が目安になります。
「地域包括ケアシステム」は、自治体である都道府県や市町村がその地域の特性に応じてサービスを作っていきます。
主体となって「地域包括ケアシステム」を実行するのは「地域包括支援センター」です。
なぜ地域包括ケアシステムが推進されているの?
現在、「地域包括ケアシステム」が推進されています。
これまでの介護サービスだけでは高齢者を支えることができなくなってきているからです。
日本は高齢社会となっており、2022年9月15日時点での65歳以上の人口は、3,627万人です。
2042年には、約3,900万人になることが予測されています。
団塊の世代が75歳以上となる2025年以降は、医療や介護の需要が増加することが予想されています。
このため、2025年をめどに地域の力を活用する「地域包括ケアシステム」が推進されているのです。
また、介護施設が全国的に不足しており国はケアの場を施設から在宅へと計画しています。
厚生労働省は、2025年には地域の包括的な支援やサービスを提供できるように、取り組みを推進しています。
地域包括ケアシステムの歴史
「地域包括ケアシステム」は1980年代に広島県の御調町の取り組みによって生まれたものです。
医療と福祉行政が連携して「高齢者の寝たきりゼロ」を目指した取り組みが、実施されました。
これが、「地域包括ケアシステム」と呼ばれるようになります。
2000年には介護保険制度が始まりました。
高齢者を支えるためには、これまでの医療と介護の連携だけでなく、生活支援サービスも必要であることがわかってきました。
医療サービスと介護サービスに生活支援サービスが連携された「地域包括ケアシステム」が、注目されるようになったのです。
そして、2014年には「医療介護総合確保推進法」が施行されます。
これにより、「地域包括ケアシステム」の構築が全国的に進められるようになりました。
地域包括ケアシステムの中身
Microsoft PowerPoint – 介護予防・日常生活支援総合事業の基本的な考え方(基礎資料・HP用) (mhlw.go.jp)より
では、「地域包括ケアシステム」の中身は、どんなものでしょうか。
「地域包括ケアシステム」は、5つの要素で作られています。
住まい |
高齢者が暮らす家など(サービス付き高齢者向け住宅なども含む) |
医療 |
かかりつけ医など医療サービス全般 |
介護 |
介護が必要になった時に受けれるサービス(居宅・施設サービスを状況に合わせて使う) |
生活支援 |
高齢者の自立した暮らしを支えるためのサービス(配食サービス、家事援助、見守りサービスなど) |
介護予防 |
高齢者が元気に過ごすためのサービス(カフェ、サロンなど) |
「地域包括ケアシステム」は、これらを一体的に提供することを目指しています。
そのためには、自治体である市町村や都道府県が地域の特性に応じてサービスを作ることが必要です。
Microsoft PowerPoint – 介護予防・日常生活支援総合事業の基本的な考え方(基礎資料・HP用) (mhlw.go.jp)より
5つの要素は、「植木鉢」に例えられています。
平成28年版厚生労働白書 -人口高齢化を乗り越える社会モデルを考える-|厚生労働省 (mhlw.go.jp)より
5つの構成要素が、互いに結びついて「地域包括ケアシステム」を形作っているからです。
① すまいとすまい方:植木鉢 ② 介護予防・生活支援:土 ③ 医療・看護:葉 ④ 介護・リハビリテーション:葉 ⑤ 保健・福祉:葉 本人の選択と本人・家族の心構え:皿 |
①②は生活の基盤で、③④⑤は専門的なサービスになっています。
植木鉢のないところに、植物は育ちません。
同様に、高齢者が「すまい」で毎日を安心して過ごすために、「介護予防・生活支援」があることが、基礎になります。
しっかりした基礎があれば、専門的なサービスである「医療・看護」、「介護・リハビリテーション」、「保健・福祉」が有効に働くのです。
サービスを受けるには、皿である「本人の背択と本人・家族の心構え」が大切になってきます。
4つの助について
「地域包括ケアシステム」をすすめていくには、4つの助が大切と言われています。
・自助 ・公助 ・互助 ・共助 |
これらが結びついて、さまざまな生活課題を解決していくことが必要です。
それぞれについて、詳しく説明します。
自助 |
健康寿命を伸ばすために取り組む、「セルフケア」 定期的な健康診断や介護予防活動などへの参加 |
公助 |
生活保護など、生活保障制度や社会福祉制度のこと |
互助 |
家族、近所の人などの支えなど、公的な制度ではないもの ボランティアやNPOなど含む |
共助 |
医療、年金、介護保険や社会保険など、制度化されたもの |
この中でも基礎になるのは、ひとりひとりの努力が必要な「自助」です。
自分の健康を大切にして、生活を豊かにするものだからです。
たとえば、健康診断を受けたり、介護予防活動への参加があります。
ひとりひとりが健康に気をつかうことが生活を豊かにするため、「自助」が基礎になるのです。
自分ひとりで支えるのには限界があるので、ここで重要になってくるのが「互助」です。
もちろん、「互助」にも限界があり、「互助」を助けるものが「共助」です。
「共助」を活用することで、「互助」の負担を減らすことができます。
「自助」、「互助」、「共助」をつかっても解決が難しい「貧困」や「虐待」などに対して、「共助」が必要になります。
今後の地域包括ケアシステム
今後、「地域包括ケアシステム」を構築するには、3つの流れを踏む必要があります。
・地域の課題の把握と社会資源の発掘 ・会議などの開催と対応策の検討 ・対応策の決定と実行 |
地域の課題の把握と社会資源の発掘
自治体が、地域に暮らす高齢者がどんなことで悩んでいるか調査します。
高齢者がどのような問題を抱え、それに対策する必要があるからです。
そのために地域ケア会議が開催され、課題が分析されます。
同時に地域サービスである「ボランティア」や「NPO」などが、発掘されます。
このため、高齢者がどんな問題に直面しているか調査する必要があるのです。
会議などの開催と対応策の検討
自治体が「地域ケア会議」を開いて、地域の関係者が問題を共有し、解決策を話し合います。
対応策の決定と実行
「地域ケア会議」で解決策が出たら、介護保険事業の中に盛りこんでいきます。
地域にかかわるさまざまな支援メニューが用意され、実現されていくのです。
まとめ
ここまで、「地域包括ケアシステム」について紹介していきました。
・「地域包括ケアシステム」とは、高齢や介護が必要な状態になっても地域で支えようとするもの。 ・「地域包括ケアシステム」は自治体が、地域の特性に応じてサービスを作る。 ・「地域包括ケアシステム」が推進されているのは、介護サービスだけでは高齢者を支えることが難しくなってきているから。 ・高齢者を支えるためには、医療と介護の連携だけでなく、生活支援サービスも必要。 ・「地域包括ケアシステム」は、 「住まい」「医療」「介護」「生活支援」「介護予防」の ・「地域包括ケアシステム」をすすめていくには、 「自助」「公助」「互助」「共助」の「4つの助」が大切。 ・今後、「地域包括ケアシステム」を構築するには、「地域の課題の把握と社会資源の発掘」「会議などの開催と対応策の検討「対応策の決定と実行」の 3つの流れを踏む必要がある。 |
「地域包括ケアシステム」はなじみにくい内容ですが少しでもお分かりいただけたでしょうか?
今後も高齢社会が続くと予想されており、「地域包括ケアシステム」を構築していく必要があります。
高齢者が安心して住みなれた地域で生活できるよう地域全体で高齢者を支えましょう。
少しでも「地域包括ケアシステム」に興味をもっていただけましたら、幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。