世間ではさまざまな分野でIT化が進んでいます。
では、介護現場ではどのようになっているのでしょうか?
ここでは介護現場のIT化の現状や介護現場のIT化を進めるにはどうすれば良いかについて、現役介護職の立場からお伝えしていきます。
これからITを導入したいという方の、お力になれれば幸いです。
介護のIT化は遅れている!!
介護現場のIT化について結論から言うと、他の業種に比べて非常に遅れています。
例を挙げると、以下のような内容です。
・記録や議事録が手書き ・事業所間の書類のやり取りが、メールではなくFAX |
これには、下記の理由があります。
・パソコンに慣れていない職員が多い ・「アナログなやり方が美徳」という考えを持つ職員が多い ・情報漏洩防止の為 |
しかし、世の中ではIT化の進んでいる業種が数多く存在しています。
なぜ介護のIT化は遅れているのか、その理由についてお伝えしていきます。
介護のIT化が遅れている理由
では、介護現場でIT化が進んでいない理由について、詳しく確認してみましょう。
1,パソコンに慣れていない職員が多い
介護現場のIT化が遅れている理由の1つとして、パソコン操作に慣れていないということが挙げられます。
自宅にパソコンがなく、触る機会がない ・WordやExcel等の使い方が分からない |
という理由から、パソコンに慣れておらず、記録や議事録作成に時間を取られてしまうのです。
例えば記録であれば、同一の文章であればコピー&ペーストすれば作業時間を短縮することができます。
また議事録を手書きで作成するとなると、膨大な時間がかかりますし、途中で間違えたら訂正印を押せば可能であっても、何回も訂正印を押してしまうと、見づらくなってしまいます。
パソコンで議事録を作れば、間違っても簡単に修正できますし、早い人であればその日の内に議事録を作成することが可能です。
しかし手書きの場合、数時間かかる人もおり、それでは効率が悪いといえます。
2,「アナログなやり方が美徳」という考えを持つ職員が多い
ではなぜ、膨大な時間がかかってもアナログなやり方を行うのでしょうか。
それは「昔ながらのやり方が、良い」という古い考えを持つ職員が多いからです。
というのも、介護施設の上層部は、50代から60代の年配職員が多いからです。
その職員は書類作成等の事務仕事をほとんど行ってこなかったので、パソコン操作ができないのです。
でも、新しいやり方を覚えるのが苦手なので「今までこうしてきたから、良いんだ」という考えから離れられず、結果的に時間がかかってもアナログなやり方を続けているのです。
3,情報漏洩防止の為
例えば病院から施設に入居する時、病院は施設側に患者の情報をFAXで送ります。
「メールで送った方が効率的ではないの?」と思いますよね。
しかし病院や介護施設等で使われているパソコンやデバイスは、基本的にインターネットが繋がらないシステムになっているのです。
これは個人情報の漏洩防止という点もありますが、もう1つ理由があります。
それは「双方が受け取ったかどうかを確認できる」という点です。
FAXであれば、送受信履歴が残るので、お互い受け取ったかどうか分かります。
しかしメールの場合、アドレスによっては迷惑メールのフォルダに入ってしまう可能性があるので、確認できないのです。
なので、事業者間のやり取りは、FAXが主流になっているのです。
IT化を進めるにはどうすれば良いか
上記で、介護のIT化がなぜ遅れているのかについてお伝えしてきました。
ここからは、介護のIT化を進めるにはどうすれば良いか、その方法について紹介していきます。
やり方としては以下の通りになります。
・介護業務の中で、時間がかかっているものは何か。 それをIT化で改善できないか分析する ・IT化を進めると、介護職員にとってどのようなメリットがあるのか理解してもらう ・誰でもパソコンやデバイスを使えるようにする、やり方や環境設定を行う |
では、それぞれの項目について詳しくお伝えしていきます。
1,介護業務の中で時間がかかっているものをIT化で改善できないか分析する
介護現場でIT化を進めようと考えたら、まず「今の介護業務」に着目しましょう。
介護職員が、何に時間がかかっているのかを把握します。
例を挙げると
・記録や議事録作成 ・巡視 ・入居者の情報収集 |
等があります。
多くの介護施設で時間がかかると感じているのは「記録や議事録作成」ですよね。
おすすめなのが「ほのぼの」というソフトウェアです。
ほのぼのは、介護記録や介護保険だけでなく、障がい福祉や財務、給与計算など幅広く活用できます。
またタイピングが苦手という人でも音声入力に対応しているので扱いやすいです。
2,IT化を進めることのメリットについて理解してもらう
いくらパソコンを用意してソフトを入れたとしても、介護職員が使わなければ意味がありません。
介護現場のIT化を進める前に、現場で働く介護職員にメリットを伝えましょう。
・パソコンで記録や議事録を作成することで、時間短縮にもなる。 ・数十人いる入居者や利用者の情報の中から、見たい情報だけを選んで確認することができる |
等、具体的な例を交えて説明することで、納得する確率が高くなります。
3.誰でもパソコンやデバイスを使えるようにやり方や環境設定を行う
メリットを伝えて介護職員がやる気になっても、やり方が分からなかったり、パソコンを使える環境が整っていないと、使いづらくなってしまいます。
また年配の職員の中には、「パソコン触らないから分からない」と使うのに消極的な人もいます。
そのような方でも使えるように以下の対応が必要です。
・タイピングだけでなく、音声入力もできるよう設定する ・パソコンはステーションなど、誰でも使えるところに設置する (事務所だと、職員によっては入りづらいと感じる人がいるので) |
IT化によって業務の負担が軽減した例を紹介
ここからは、IT化で作業時間の短縮や離職者が減った例について紹介していきます。
山形県酒田市にある「イデアルファーロ」という事業所では、情報共有が難しく、指示がいき渡りにくいという課題がありました。
事業所には訪問介護に従事する職員もいるのですが、利用者の情報を得るには本部まで行かなければならず、それが効率化を阻んでいました。
また以下のような事態が起こり、離職者も多いくなってしまったのです。
・情報が次々に継ぎ足され、特定部署の人しか情報が分からない ・若手の職員が情報を把握しきれない |
そこで2017年に社内対話用にスマホから入力できるチャットツールを導入しました。
また書類や利用者の情報を本部のサーバーではなく、インターネット経由でいつでもどこでも閲覧できるクラウド上で共有できるようにしました。
これにより介護職員の移動時間が短縮されただけでなく、外出先でも書類を確認・作成できるようになった為、印刷費用も10分の1になったのです。
さらに業務上のストレスも少なくなったことで離職者が減り、人手不足も軽減されたそうです。
このように、IT化を進めることで人手不足も解消される例も数多く存在しています。
まとめ
いかがでしょうか。
この記事では、以下のことについてお伝えしてきました。
・介護現場のIT化は他業種に比べて非常に遅れている。 ・理由として「パソコンに慣れていない職員が多い」「アナログなやり方が美徳な考え方がある」「情報漏洩防止の為、メールではなくFAXを使わざるをえない」 IT化を進める方法 ・介護業務の中で何に一番時間がかかっているのか分析し、ITで改善できないか考える ・介護職員に、IT導入によるメリットを具体的に伝える ・介護職員が、パソコンやデバイスを使えるよう、使用方法を工夫したり、いつでも使える場所に配置する |
最後までお読みいただきましてありがとうございます。