介護に携わる職員は、資格なしでも介護に携われていましたが、今後は無資格では携わる事ができません。
今回は無資格者必須の「認知症介護基礎研修」について説明します。
「認知症介護基礎研修」とは?
厚生労働省による令和3年度の介護報酬改定の取組の一環に「認知症への対応力向上に向けた取組の推進」という事項があります。
これは、介護に関わる全ての者の認知症対応力を向上させていく為、介護に直接携わる職員が認知症介護基礎研修を受講する為の措置を義務付けるとされています。
今までは、訪問系の介護サービス(訪問介護等)や福祉用具貸与(福祉用具レンタル)、居宅介護支援以外の介護サービスの職員は、介護の資格が無くても介護職として関わる事ができていました。
しかし、2024年4月以降において医療や福祉関係の資格が無い職員は認知症介護基礎研修を修了していないと介護に関わる職務が行えなくなります。
なぜ義務化になった?
昭和22年~24年生まれで第一次ベビーブーム時代に誕生した人達、つまり「団塊の世代」と呼ばれる人達が、75歳以上の後期高齢者となる2025年問題が背景にあります。
厚生労働省によると、認知症高齢者数は約10年前の2012年で462万人とされ、令和7年の2025年には約700万人、つまり65歳以上の高齢者の5人に1人とされています。
団塊の世代が後期高齢者になる2025年には、高齢者において認知症は特殊なものでは無く、誰が発症してもおかしくはない身近な病気となっているのです。
認知症発症の高齢者が増えるとされていても、実際に認知症に対する知識や技術について介護に携わるサービス事業所側の職員の全てが対応できるかと問われたならば、正直難しい面があるのも事実でした。
介護に関する資格を取得している者については、認知症ケアに関する知識や技術を学んでいますが、介護サービスによっては無資格で携われるものもあります。
ハイスピードで高齢化が進み、認知症高齢者も追随していく中で、介護に携わる全ての職員が認知症への理解を深め、介護する者を主体とするのではなく当の本人を主体としての介護を行い、認知症の有無に関わらず個の尊厳を保障した上で対応する力を付けるよう、国より義務づけられました。
今まで無資格で介護に直接携わっていた者は、現場で得た経験による知識や技術は当然ながら得ており、今後の職務において大切なものではあります。
しかし、高齢者が増えるこれからにおいて専門的な知識や技術対応力を今までもより一層必要とされる事になるのです。
認知症介護基礎研修の対象者は?
上記にも述べましたが、無資格で介護に直接携わっている介護サービス事業の職員は認知症介護基礎研修の対象者となります。
資格を必要とする訪問入浴を除く訪問系サービスや福祉用具貸与、居宅介護支援は対象外です。
※訪問入浴介護は看護師(又は准看護師)と介護職員のチームで対応しますが、訪問入浴では介護職員は無資格でも可能である為、無資格者がいる場合は認知症介護基礎研修の対象となります。
※通所介護で生活相談員を職務としている場合、社会福祉主事任用資格の保持のみであれば研修の対象となります。
2021年4月より義務化が始まりましたが、経過措置として3年間あり、2024年の4月より完全に施行されます。
無資格で介護に直接携わっている全介護サービス事業の対象職員は、完全施行の来年の4月までに早めに研修を修了するようにしましょう。
しかし、現在無資格で、介護職員初任者研修等の福祉資格を取得する為研修中にある方や、介護の養成施設、福祉系の学校で認知症に係る科目を受講している場合は、その資格の研修修了証明や卒業及び履修科目取得を証明できれば現在無資格状態であっても証明を条件として認知症介護基礎研修の対象外として差し支えないとされています。
また、3年の経過措置後に新たに介護サービスの職務に就くも、介護に関する資格を有していない無資格者は。介護サービス事業所に就いて1年間の猶予期間が設けられる期間内に研修を修了するようとされています。
2024年4月以降は、介護に直接携わる職務に就いている全ての者は、医療又は福祉資格を有している又は研修受講を修了している事が必須です。
つまり介護に関わる全ての職員が「何らかの形でも介護を行う全ての職員は認知症に対して知識や技術を得ている」という事になります。
「認知症介護基礎研修」を受講するには?
認知症介護基礎研修はすでに始まっています。
研修内容は講義と演習です。
研修対象者に該当するかどうかをまずは確認し、その上で職務先の介護サービス事業所に受講についての希望を提示し、申込みをしてみましょう。
研修はどんな形で行われる?
各都道府県によって受講の形は違いますが、自治体主体で実施する又は事業を委託して実施する形で行われています。
・eラーニングでの受講
・オンライン(Zoom等)を含めた集合型研修での受講
・集合型半日とeラーニング半日での受講
各介護サービス事業所へ自治体より認知症介護基礎研修の実施の通達がされているので、資格を有さない研修対象者は事業所ごとの取り纏めで申し込む形となります。
研修期間は1日、6時間の受講で研修修了となり、修了証書が発行されます。
そのため、初心者研修よりも手軽に資格を取得できるのも大きな特徴です。
また、現在は全国的にeラーニングで受講できるところが増えているため、在宅で資格を取得できることが多いです。
自治体や委託事業団体によって異なりますが、研修費は1,000円から5,000円程度となっているようです。
また、認知症介護基礎研修は基本的に「介護に直接かかわる仕事についている方」が対象となっており、初任者研修のように誰でも取得できるものではないことを覚えておきましょう。
各自治体により受講条件や日程は異なる為、以下の内容の確認が必要です。
募集の受付はいつ頃か
受講に関してeラーニングならば機器の準備はできているか
集合型の場合は日程が調整できるか
受講予定している場合は、準備と余裕を持って対応できるようにしておきましょう。
「資格なし」だとどうなる?
上記でも述べましたが、2021年4月から2024年3月までは経過措置の3年にあたり、研修はその期間内に受講すれば修了証書が発行されます。
また無資格でも新規で介護に携わる職種に就いた場合は、1年間の猶予期間内に受講し修了すれば良いとされています。
それでも無資格のまま介護に直接携わる業務に就いていた場合はどうなるのでしょうか?
2024年4月より、新たに介護に直接携わる業務を行う職員が、1年の猶予期間内に研修を修了せずに無資格状態のまま職務にあたる事や、3年の経過措置の間に研修を受けず無資格状態を放置した場合は、人員配置基準において算定される介護職員とした介護サービス事業所は行政指導の対象となってしまいます。
研修の義務化という事は、当然ながら介護サービス事業所は、介護に直接携わる人員の把握・管理を行っていかなければならず、無資格者=義務を怠るとされる又は対象外の職務に就く=介護に直接携われなくなるという事になるのです。
※介護に直接携わらない職員(施設調理、施設での掃除等の雑務のみ等)や介護の人員配置基準に算定されない職員(事務員等)は対象外ですので、研修を受ける必要はありません。
まとめ
今回は「認知症介護基礎研修」について説明致しました。
・厚生労働省による令和3年度の介護報酬改定の取組に「認知症への対応力向上に向けた取組の推進」があり、介護に関わる全ての者の認知症対応力を向上させていく為、認知症介護基礎研修の受講を義務付けられた。
・2024年4月以降は医療又は福祉資格が無い職員は、認知症介護基礎研修を修了していないと介護に直接携わる事ができなくなる。
・団塊の世代が後期高齢者になる2025年には、高齢者において認知症は特殊なものでは無く
誰が発症してもおかしくはない身近な病気となっており、介護に携わる職員の認知症に対する知識や技術力の向上が求められている。
・無資格者は認知症介護基礎研修の対象者であるが、資格を必要とする訪問入浴を除く訪問系サービスや福祉用具貸与居宅介護支援は対象外である。
・研修を修了する為の経過措置は3年間で、経過措置後も新規で介護に直接携わる職員は1年間の猶予期間が設けられている。
・研修の開催については各自治体が実施するものや、事業委託で実施するものがあり、受講もeラーニング研修や集合型研修等があり、対応は自治体によって異なる為に準備も含めて確認を必要とする。
・受講を希望する場合は、介護サービス事業所へ希望を提示し、事業所毎の取り纏めで申し込む形となる。
・研修費は1,000円から5,000円程度。
・経過措置が終わり、完全施行した後も無資格のまま介護に直接携わる職員として職務に就いていた場合。介護サービス事業所は行政指導の対象となる。
介護に直接携わる職員で資格を有していない職員は、研修受講の措置が義務付けられ、現在は経過措置の期間にあります。
介護業務で忙しい中、1日程度ではありますが調整も要する為に受講には周りの協力も必要となります。
期間に猶予が有る内に、計画的に研修を終了できるように努めましょう。