高齢者が発症しやすい病気としてよく聞く「認知症」。
しかし、認知症にもさまざまな種類があり、症状によっては改善したり進行を遅らせたりする方法があることをご存知でしょうか。
今回は、認知症の種類や改善例について紹介します。
認知症の種類と原因・症状
では認知症とはどのような症状がでるのか、種類や認知症の原因について解説します。
認知症とは?
認知症とは、脳の病気や障害などが原因で認知機能が低下する病気です。
認知症は高齢になるほど発症リスクが高まると言われ、2020年時点で日本の65歳以上の患者数は約600万人です。
認知症の代表的な症状として、以下の6種類があります。
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認知症は、一時的に思い出せない、一部分を忘れてしまうなどの加齢による物忘れとは異なります。
自分の環境や状況を正しく理解できない、今までできていたことができなくなるなど日常生活に支障をきたすようになります。
また、認知症には主に以下の4種類があります。
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4種類の認知症は、それぞれ発症する原因と症状が異なります。
それぞれの認知症の原因・症状
次に、4種類の認知症について紹介します。
アルツハイマー型認知症
「アルツハイマー型認知症」は、日本で最も多いと言われている認知症で、認知症患者全体の約63%を占めます。
脳の神経細胞にタンパク質であるアミロイドベータが溜まり、神経細胞が破壊され脳が萎縮することで起こります。
原因は、加齢や遺伝が影響する可能性が高いとされていますが、近年では、糖尿病や高血圧の人が発症しやすいと明らかになりました。
アルツハイマー型認知症の初期症状は、物忘れから始まり、食事をしたことを忘れるなど行動そのものを忘れる記憶障害が現れます。
症状の進行は緩やかですが、徐々に脳の萎縮が進行します。
血管性認知症
「血管性認知症」は、認知症患者全体の約20%を占め、2番目に多いとされる認知症です。
脳梗塞や脳出血、くも膜下出血などの脳血管障害によって脳の血流が阻害され、脳の一部が壊死することで起こります。
原因は、脳梗塞などを引き起こす高血圧や脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病です。
血管性認知症の症状は、障害が起きた脳の部位によって異なります。
主な症状には、歩行障害や手足のしびれ、排尿障害、言葉が出にくくなる言語障害、感情のコントロールができないなどの精神障害があります。
また、脳梗塞や脳出血などの血管障害の発作を繰り返すと症状も重くなっていきます。
レビー小体型認知症
「レビー小体型認知症」は、神経細胞にできる特殊なタンパク質である「レビー小体」が脳に溜まり、神経細胞を破壊することで起こります。
しかし、レビー小体が脳に溜まる原因は、いまだ明らかになっていません。
レビー小体型認知症の症状には、手足の震えや体がこわばるなどの身体障害が挙げられ、徐々に進行し、転びやすくなります。
他にも、実際には存在しないものや人物が見える幻覚、うつ症状も現れます。
調子の良し悪しで、気分や行動が異なり、症状の変化が大きいことが特徴です。
前頭側頭型認知症
「前頭側頭型認知症」は、脳の前頭葉や側頭葉が萎縮することで起こります。
65歳未満で発症することが多い認知症であり、10年以上かけて症状が進行していく場合がほとんどとなります。
原因は、脳に、異常構造物である「ピック球」が溜まることによるものと、タンパク質である「TDP-43」が溜まるものと言われています。
しかし、ピック球とTDP-43が溜まる原因は、いまだ明らかになっていません。
前頭側頭型認知症の症状には、性格が極端に変わることが多くなり、万引きや悪ふざけなどの反社会的行動が増える、衛生面の管理ができないなどが挙げられます。
また、同じ行動を繰り返す、身勝手な行動をとる、時間通りに行動しないと気がすまないなどの症状が特徴です。
症状が進行すると、言葉の意味がわからなくなる、言葉が出なくなる症状も現れます。
認知症は改善するの?
脳の神経障害によって起こる認知症には、現在根本的な治療法はないと言われています。
また、認知症は完治するものではありませんが、ケアによって症状の改善が見込まれる場合もあります。
次は、実際に体験した認知症の改善方法について紹介します。
認知症の改善例①食事を自己摂取されない高齢者Aさん
認知症の症状には、自分で食事をとる、洋服を着るなど、今までできていた行動ができなくなる「失効」があります。
認知症の進行により、食事を自己摂取できなくなった高齢者Aさんに自分で食べてもらうよう促しますが、何度スプーンを渡してもテーブルに戻してしまいます。
しつこく介助をすると、怒ることもありました。
実施したケア
Aさんの座席の前に、よく喋りよく食べる高齢者Bさんに座っていただき、Bさんが食事する様子を見てもらいながら、最初は介助にて食事を取ってもらいます。
そして、お皿を持ってもらう、おかずをのせたスプーンを持ってもらうなど促すと、真似をして少しずつ自己摂取するようになりました。
また、Bさんが話しかけてくれることで笑顔や発語する様子も見られるようになりました。
認知症の改善例②介護スタッフが抱えて移乗していた高齢者Cさん
Cさんは、認知症の症状によって意思の疎通が難しく、脚の力はありますが、ベッドから立ち上がってくれません。
また、ベッドから車いすに移る際に怖がってしまい、ベッド柵を握るなど力を入れてしまいます。
ベッド柵を握っていては安全に移乗ができないため、介護スタッフの肩に手を回してもらい、全介助にて移乗を行っていました。
実施したケア
ベッドから立ち上がる、車いすに座るという行為を繰り返し行うことで、移乗の行為を覚えてもらうよう努めました。
その際、毎回車いすを見せて示すことで、「ここ(車いす)に座る」という認識をしてもらいやすくなります。
また、日常的に声掛けをすることで気持ちも穏やかになり、介護スタッフに対する不安などがなくなり、力むこともなくなりました。
最終的には、Cさんは見守りをするだけで車いすに移乗できるようになります。
ここで紹介したAさんとCさんは、一時的に認知症の改善が見られましたが、認知症が進行すると元の状態に戻ることも考えられます。
また、すべての認知症を持つ患者さんに当てはまるものでもありません。
しかし、声のかけ方や何度も繰り返し促すことで、理解できるようになる場合もあるため、一人ひとりに合ったケアが重要です。
まとめ
今回は、認知症の内容、改善例についてお伝えしました。
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最後までご覧いただきありがとうございます。