訪問介護中に緊急事態!同居家族がいる場合の対処方法をご紹介!

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narumi

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訪問介護サービスの際に、利用者に同居家族がいたとしても
緊急事態に遭遇してしまう事があります。

今回は同居家族がいる場合に被介護者に緊急事態が起きた場合の事例を踏まえながら対処方法をご紹介します。

訪問介護サービスに入る前の基本と準備


訪問介護中に緊急事態!被介護者1人しかいないときはどうすればよい?
でも紹介しましたが、訪問介護サービスに入る前には、利用者の情報を知る事から始まります。

ヘルパー側は勿論ですが利用者側にも確認をして頂き、情報に洩れや誤りが無いかどうか、双方認識する事が大事です。

・必要書類の確認

・サービス計画についての事前打合せ

※訪問介護サービスが生活援助中心であった場合

・同居家族の状況、状態、問題点

・各関係機関との連携、対応方法の確認

ヘルパーの基本的な心構えと準備(同居家族がいる場合)


社会人として基本的な、世間一般での礼節を弁える事や接遇マナーの遵守は当然です。

その上に利用者本人だけでなく、同居家族との関係性も直に構築していく上において、独居とはまた違う心構えや準備が必要になってきます。

訪問介護サービスに入る前のヘルパーとしていつもの準備にメモ類を準備しておく事は当然ですが、

「なぜ同居家族が居るにも拘らず訪問介護を要するのか?」

その背景・原因・問題点を書類面だけでなく実際に体面して確認する事が利用者の日常生活の維持において必要となります。

ケア会議等で書類打合せで得られる情報と、実際に会ってヘルパー自身が生活動作を確認し得られる情報とには差異があります。

そのため、状況を理解する上で異なる面がある可能性も高いです。

気付いたことや追加される情報等、メモ類に洩らす事が無い様に留めておく事が重要です。

同居家族がいる場合の訪問介護

一般的に同居家族と言われたら、「一緒に住んでいる世帯」と考える人は多いでしょう。

けれども、一口で「同居」や「家族」と言われても様々な形の「同居」や「家族」がいるものです。

訪問介護においての同居や家族の考え方については下記の表を参照して下さい。

〇同居とするもの

・同じ建物に利用者含めた家族が一緒に住み、暮らしている

・生活基盤は別でも、利用者の世帯と子達の世帯が同じ建物に住み、暮らしている

・建物は違うが利用者またはその家族の同一敷地内に住み、暮らしている

 

〇家族とするもの

・左記の同居とするものにある身内、親族、同居人

※但し、義務教育修了までの15歳未満の中学生以下においては、訪問介護の生活援助ができる対象とする「家族」からは対象外

 

※同居とするものにもありますが、2番目の利用者の世帯と子の世帯が住む、いわゆる二世帯住宅は、生活基盤や世帯主が別です。

特に深刻な問題がある訳では無いけれども、互いの生活に踏み込んでいない=援助とは別個として考えるように思う方もいるかもしれません。

しかし、介護保険においては、「一般的に援助を行う事が可能だとされる利用者との近い距離に住んでいる」事を指しているので

別世帯であっても同じ建物、近さにある場合は同居とするものに考えられます。

基本的には身体介護のみ可能

同居家族がいる場合で訪問介護サービスが認められるのは、身体介護に纏わるものです。

厚生労働省  各介護サービスについて「1.訪問介護」より

上記の表にもありますが、身体介護とは

①利用者の身体に直接接触して行う介助サービス

②利用者のADL(日常生活動作)、IADL(手段的日常生活動作)
QOL(生活の質)や意欲の向上の為に利用者と共に行う
自立支援・重度化防止の為のサービス

③その他専門的知識・技術をもって行う利用者の日常生活上
社会生活上の為のサービス

とされています。

身体介護は、同居家族がいても利用者が必要であると認められた場合は、サービスを計画し提供される事が可能です。

生活援助は条件によっては可能

基本的に、訪問介護は同居家族がいる場合では生活援助のサービスは提供できません。

但し、自立支援の観点において条件によっては生活援助が認められるものもあります。

障害、疾病がある場合

①同居家族が身体または精神への障害を持っており、日常生活においての家事等が難しい場合

②同居家族が病気やケガをしており、その為に日常生活においての家事等が難しい場合

その他やむを得ない場合

①同居家族が仕事や学業等の為に日中不在にしており、同居家族が利用者へ日中に必要とする家事等ができないと認められる場合

※同居家族が仕事や学業等の休日に当たる日や、朝夕の在宅が認められる時間においての生活援助は対象外

②同居家族が要支援又は要介護認定を受けており、家事等を行う事が難しい状況の場合

③同居家族と利用者との間に非常に深刻な問題があり、援助が難しい場合

※「非常に深刻な問題」⇒介護放棄、虐待、血縁断絶状態などの状況下にある場合を指す

※厚生労働省  「同居家族等がいる場合における訪問介護サービス等の生活援助の取扱いについて」 参照

上記の様に「障害、疾病がある場合」「その他やむを得ない場合」という条件の下、生活援助が必要であると認められた場合は、サービス可能となる事もあります。

但し、生活援助の対象者はあくまでも利用者本人ですので、同居家族に対して同様のサービスは行えません。

こんな時はどうする? 色々な同居家族がいるんです

1.老々介護…そのサービスは本当に必要ですか?


緊急事態とまで言えるものではありませんが、夫婦それぞれ別のケアマネージャーが作成したケアプランによる訪問介護サービスが変更になったケースです。

実際、最初の生活援助にあった調理に関しては、長時間の立位が難しい為に訪問介護を利用するという事には問題はありませんでした。

掃除や片付けその後の室内での洗濯干しは今まで妻がしていた生活動作でもあった為、継続の意向が強くプランに組まれました。

ケアマネージャー側とサービス事業所側が、利用者側のニーズをきちんと確認し、本当に継続で良いのか、必要なものが他にあるかどうかを見定め、プランに反映しサービスを行う事で初めて連携が取れたと言えます。

隠されたニーズ・本質を見極めできなければ、万が一緊急事態に陥った時に対応が遅れる恐れがあるので注意しなければなりません。

2.ご家族も多忙ですが…日中独居が本当の独居になる

始めは同居家族が日中不在による日中独居でした。

1年後には月の半分以上家を空けていたり、家を出た状態でもあったりしたにも関わらず、同居家族による連絡が事業所側にはありませんでした。

利用者本人は「大丈夫大丈夫、できるできる。」が口癖で、近隣の方との会話やケアマネージャーによる月末のモニタリングでも、相談が無かった為に状況がスルーされていました。

そのままの状態であれば、本人のADLやIADLも低下しかねない事態です。

サービスを行う中で、利用者の状態や状況が本当に安定傾向なのか、在宅で日常生活が維持できるのかをきちんと確認することが重要です。

各事業所で保管する書類表面上だけの連携ではなく、各事業所が責任を持って対応する真の連携を図らなければなりません。

3.「良い親子関係だな」と思っていました。

家族関係が良いと思われていましたが、身内の入院をきっかけに誤った方向へ進んでしまい、日常生活が脅かされる事態になっていた件です。

利用者との関係は、踏み込む線引きが難しい面もあります。こういった緊急事態では解決に向けて専門的な要素も必要になりますので早い段階で関係各所への協力を要します。

プライバシー侵害になるのか、虐待防止へとなるのかは俯瞰して物事を見る力と慣れによる惰性の回避、日頃からの情報収集の蓄積が物を言います。

厳しい事を言いますが、もし何か問題に気付いたとして、担当しているヘルパー自身だけで何とかしよう解決しようとしてもできる事は何一つ無いのが現実なのです。

何等かの違和感を感じたり、異変を少しでも確認したりした際は、すぐに報告・連絡・相談して、関係各所専門担当者と連携の上。早く解決や改善される方向へ進んでいく事が何よりも大切です。

まとめ

今回は同居家族がいる場合に被介護者に緊急事態が起きた場合の事例を踏まえながら紹介しました。

・訪問介護サービスへ入る前は同居家族がいる場合でも、基本や準備は同じである。

・同居とするものとは「同じ建物に利用者含めた家族が一緒に住み、暮らしている」
「生活基盤は別でも、利用者の世帯と子達の世帯が同じ建物に住み、暮らしている」
「建物は違うが利用者またはその家族の同一敷地内に住み、暮らしている」を指している。

・家族とするものとは「同居とするものにある身内、親族、同居人」の事をいう。

・但し、義務教育修了までの15歳未満の中学生以下においては
訪問介護の生活援助ができる対象とする「家族」からは対象外とされる。

・同居家族がいる場合で訪問介護サービスが認められるのは身体介護であるが、生活援助は障害や疾病がある場合とその他やむを得ない場合という条件があれば可能である。

・同居家族がいる場合の訪問介護で様々な形の緊急事態のケースが発生するが、サービス事業所側やケアマネージャー側のみの連携では解決できないケースも多い。
地域との連携や医療機関との連携、地域包括支援センターや社会福祉協議会との連携自治体との連携が必要となる。

・緊急事態を未然に防ぐ場合や緊急事態が起こってしまった場合は、何よりも「報告・連絡・相談」が現状改善や問題解決の一歩であり大切である。

 

家族という形は本来、協力し合うものという概念がありますが、何かと多忙だったり時代に応じた様々な生活スタイルによって、変貌しているのが現状です。

介護に関する法律や制度、方針が追加されたり変更されたりするのも、介護を必要とする利用者の生活や取り巻く環境が同じように変貌しているからです。

介護の基本理念は変わりませんが、家族という関係においても
不変のものと変化するものをきちんと見極めて対応できるようにしましょう。