訪問介護のグレーゾーン問題とは?訪問介護のできること・できないことを覚えておこう

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narumi

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ヘルパーが訪問介護サービスを行う際はケアプランに沿ったサービスが基本です。

今回は判断に迷う、あいまいなグレーゾーンと呼ばれる事例とその対応の仕方を解説します。

訪問介護でヘルパーができる事とできない事

訪問介護のヘルパーにはできる仕事内容が決められています。

まずはその基本的なところを確認していきましょう。

訪問介護は3つのサービスに分けられる

訪問介護は訪問介護員(以下「ヘルパー」という)が介護認定を受けた利用者の居宅を訪問し、身体介護や生活援助などを提供するものを言います。

訪問介護に入るヘルパーは、介護福祉士や実務者研修修了者、初任者研修修了者、旧基礎研修修了者、訪問介護員1級又は2級(ヘルパー1級又は2級)のいずれかの資格が無いとサービスに入る事はできません。

(※2018年新設の「生活援助従事者研修修了者」という生活援助限定の資格もあります。)

訪問介護は下記の3つにサービスが分けられます。

身体介護生活援助通院等乗降介助
利用者の身体に直接触れる
必要性のある介助。
身体介護以外の利用者が
日常生活を送る上で
必要な生活支援をする介助。
一般的には介護タクシーが
行う事が多い。
※食事、排泄、入浴、更衣
身体整容、移動・移乗
通院・外出、起床・寝床など
※調理、配膳・後片付け、洗濯
掃除、整理整頓、買い物
ベッドメイクなど
※車への乗降、乗車前
または降車後の移動、受診手続き
薬の受取りなど

訪問介護のヘルパーは利用者のケアマネージャーが立てたケアプランに沿って、利用者本人の為の自立した日常生活に関する身体介護や生活援助サービスを行うものです。

あくまでも訪問介護は介護保険内のサービスですので、ケアプランに含まれていない、ただ利用者がしてほしい事や、その家族、同居者の為のサービスを行う事はできません。

重ねて「医行為」と呼ばれる医師・看護師が行う行為は、ヘルパーが行う事を禁止されています。

*ヘルパーが行える医療行為には、医行為に該当しないものや、一定の研修を受けたヘルパーのみが行える医療行為もあります。

介護サービスをはじめるときには、介護保険内のサービスの有無、できる事できない事の説明をきちんと行い、双方で理解しておくことがとても重要です。

しかし、関わり合いが長くなると「ついでに」「ちょっとだけ」「あの人はしてくれるのに」と
ヘルパーに代行を少しずつ依頼してくる事もあるようです。

介護保険ではできないサービス、ケアプランに無いサービスを相談された時は、一旦訪問介護事業所に持ち帰りましょう。

そして、サービス提供責任者やケアマネージャーに報告した上で、利用者が感じている困った事をどうすれば解決できるのかを考え、対応していく事も必要となるでしょう。

ケアプランの変更や追加、自費サービスでの対応を勧める場合もありますし、断りを入れる場合もあります。

利用者本人が、在宅生活を送る上で困難且つ必要とされる身体・生活動作について、介護保険を利用し、日々自立した生活を過ごす事ができるようにケアプランに沿ったサービスを提供することが訪問介護なのです。

訪問介護でヘルパーが迷うグレーゾーン



訪問介護は利用するのにわかりにくいところも多くあります。

ここではそのようなグレーゾーンの対処法について解説します。

同居者や家族がいる場合

まず訪問介護サービスを行う際、利用者本人が独居状態か、その家族や同居者がどういう状態や状況にあるのかを把握する必要があります。

訪問介護の主なサービスである身体介護や生活援助は、その状態や状況によってはサービスが受けられない事もあるのです。

同居者や家族等がいても、サービスができるかどうかは下記の表の通りです。

        できる         できない
〇身体介護

※見守り的援助も身体介護であるので可。

但し「ただ見守る」「ただ声掛けする」は
見守り的援助とはならない。

×生活援助

※原則的に同居者や家族等がいる場合は不可。

但し「障害や疾病、やむを得ない理由」がある場合は
認められる事もある。

ここでの「障害や疾病がある場合」とは、「同居者や家族等が何らかの障害や疾病がある為に
家事をすることが困難な状態」にある事をいいます。

「やむを得ない場合」は「障害や疾病は無いが家事ができない(する事を見込めない)状態」に
ある事をいいます。

やむを得ない場合とは

①同居者や家族等が高齢であり、それに伴う筋力低下等の身体能力低下の為に家事をする事が困難な場合

②同居者や家族等が全員介護認定を受けている場合

③同居者や家族等に深刻な問題が発生している場合(関係断絶、虐待、介護放棄等)

④同居者や家族等に介護疲れが目立ち、共倒れの危険性があると判断される場合

⑤同居者や家族等が就労等で不在とする時間が長く、利用者の安全・健康・衛生上に援助を必要とする事が高く求められる場合

生活援助は、「家事や生活動作を手伝ってくれないと毎日の生活が成り立たない」為に介護保険を利用してその成り立たない部分を援助するサービスです。

同居者や家族、利用者本人のその時の感情や根拠の無い憶測、個人的な要望だけでは行う事はできません。

例えば、妻が利用者で夫は要支援、同居する息子夫婦は共に仕事の為、日中は不在とします。

同居者や家族が複数人いる場合、「必要な部分を同居者や家族が分担すれば日常生活は可能」と
判断された場合は「やむを得ない」状態や状況とは考えられずにサービスを外される事もあります。

また生活援助では、居宅においての共有部分での掃除はできません。

<共有部分とは>

居間、寝室、玄関、台所、浴室、トイレ等の居住する人が共有して利用する場所

<注意事項>

・原則として生活援助の掃除は不可。

(利用者だけでなく同居者や家族等も使用する場所で、日中の不在時でなくても
在宅時や時間のある時に掃除ができると考えられる為)

やむを得ない場合とはの5例に該当する理由がある場合
生活をする上での安全性、自立性、衛生面、健康維持の全ての必要性が
認められた場合は生活援助サービスの提供が可能。

単に「日中は仕事で誰もいないし、利用者の夫は要支援で掃除機を持ったり移動する事が難しいので、利用者も一人で掃除するのは危ないから生活援助(寝室や居室等の掃除)に入ってほしい。」
という同居者や家族の希望だけではサービスは行えないという事です。

寝室の掃除や整理整頓に際しては、夫と利用者の共有スペースにあたります。

そのため、共に要介護と要支援という事で、夫側の要支援である総合事業の訪問型サービスを利用するという方法や、利用者の見守り的援助(身体介護)として寝室の掃除や整理整頓を行うといった方法もあります。

見守り的援助の場合

見守り的援助とは、要介護である利用者が自立した生活を送る為の支援です。

毎日の身体動作や生活動作、日々過ごす生活の質が落ちないように、維持・向上するという観点から利用者の安全を確保しつつ、何かあった場合はすぐに介助できる状態で行う見守り等の事をいいます。

同居者がいる例にもありました「見守り的援助」は身体介護となりますが、あくまでも「自立した生活をする為の支援」でありただ見守るだけ、ただ声を掛けるだけでは見守り的援助とはなりません。

また生活動作に対してあいまいな解釈で対応すると生活援助と判断されて身体介護としてサービスが行えなくなる場合もあります。

例えば、独居で要介護1の利用者が洗濯物を取入れて衣類をたたみ収納するといった一連の動作を行う身体介護のプランがあるとします。

ヘルパーは利用者が動作上どうしても難しい所、援助が必要な所は一緒に行うといった手助けをする事で利用者が未だ持っている自立した動作ができる機能の維持を促します。

動作時にふらつきや転倒といった事故が発生しないように、また体調の不具合や疲労感の有無を確認する為に見守りや声掛けを行う事は、見守り的援助であり身体介護サービスとなります。

また、ヘルパーが洗濯物の取入れをし、その間利用者は別の動作をしていた場合、(居間を片付けていた等)は、ヘルパーと利用者が一緒に行っていない為、洗濯物の取入れは生活援助となり、見守り的援助には適用せず身体介護から外れる事になります。

院内介助の場合

訪問介護はその名の通り利用者宅へ訪問しヘルパーが利用者の為に行うサービスです。

そのため、院内介助の場合は居宅では無い場所でのサービスの為、本来は介護保険のサービスとは言えません。

また病院は医療機関であり、病院内での介助は本来は病院のスタッフが対応するものとされ、介護保険ではなく医療保険が適用されます。

但し理由によっては、介護保険としてサービスができる場合(通院等乗降介助、訪問介護で身体介護・見守り的援助対応)もあります。

訪問介護でヘルパーが対応する場合は下表の通りの流れとなります。

<訪問介護にてヘルパーが院内介助を行うまでの流れ>

訪問介護で院内介助サービスが可能となる理由(必要性)

①受診する病院のスタッフによる対応ができない、または困難である場合。

②利用者に家族や同居者がいるが、介助を要するにも関わらず付き添いができない場合。

③利用者が院内の移動に介助を必要とする場合。

④認知症や精神的不安定な症状があり、常に見守りを必要とする場合。

⑤トイレ等の排泄介助を必要とする場合。

⑥視覚、聴覚に不自由がある場合。

           

ケアマネージャーによる病院への事前確認(電話確認可)

                    

病院側の受診時の院内介助対応が可能

・介護保険サービス不可

(医療での対応)

病院側の受診時の院内介助対応が不可

・支援経過記録(ケアマネージャー)

①事前に病院側への介助依頼した内容の記録

②病院スタッフが介助できない理由

③利用者が受診時に必要とされるサービス

         ↓

・サービス担当者会議の開催

(訪問介護側、利用者側の参加)

         

・サービス計画書に記載し、説明、配布

         

・訪問介護計画書に追加、説明、配布

ヘルパーによる院内介助が可能。

例えば、下記のような状態・状況があるとします。

認知症外来、神経内科、血液検査の受診予定がある利用者


認知症レベルは重度で日常生活自立度がⅢa
家族は今回付き添えません。
院内では徘徊行動する可能性が高く、見守りが必要とされています。
排泄もいつ排泄意が来るか不明な上に、トイレ介助が必要な状態です。
院内の移動もどこへ向かっているのかが分からず移動時は声掛けや見守りが必要な状態です。
この場合、明らかに介助を必要とされる状態にあるのですが、病院側が院内介助の体制が整わないとの理由で医療での院内介助は見込めなくなりました。

注意すべき点は、訪問介護で院内介助と認められるのは、「受診手続き、病院内の移動・移乗介助や見守り的援助、トイレでの排泄介助、清潔動作、医療費の支払い、薬の受取り」となります。

待ち時間や診察や検査の立ち合いは、訪問介護としては認められません。

但し、例にあるように利用者の認知症レベルが重度のⅢaである事から、検査や診察等の医療行為以外は院内介助として認められる事になりました。

この場合は「自立生活支援の為の見守り的援助」として介助の内容や掛かった時間、利用者の状態をサービス実施記録や計画書に記載し、ケアマネに実施報告を行っています。

繰り返し言いますが、院内介助は病院側のスタッフが対応とするのが原則です。

本来は医療で対応するものであり、介護で対応する時は何等かの理由がある場合であり、単なる家族の付き添いの代わりではないのです。

まとめ

今回は訪問介護において、訪問介護の基本と3つのあいまいなグレーゾーンについての解説や事例、対応方法をお話しました。

・訪問介護は、身体介護・生活援助・通院等乗降介助の3つに分けられる。

・訪問介護はケアマネージャーのプランに則ったサービスを行う。

・同居者や家族がいる場合は、本来は身体介護以外は入れない。

・生活援助は「障害や疾病、やむを得ない理由」がある場合のみ、同居者や家族がいてもサービス可能である。

・見守り的援助とは身体介護の区分で、利用者と共に行いつつ、何かあればすぐに介助できる状態で見守りや声掛けをしながら動作、作業を行う援助である。

・院内介助は原則として医療の管轄であるが、利用者の状態や状況により介護の必要性が認められた場合はヘルパーによる院内介助が可能となる。

最後まで読んで下さりありがとうございました。