「世帯分離で親の介護費用は下がるのかな?」
「世帯分離はだれでもできるのかな?」
「そもそも世帯分離って何だ」
このように世帯分離についてお悩みではないでしょうか?
世帯分離は上手く活用することで介護費用を下げることが可能な制度です。
この記事では世帯分離について分かりやすく解説していきます。
世帯分離とは?
では、世帯分離とはどのようなものか詳しく解説していきます。
そもそも世帯とは?
世帯とは住居と生計を共にしている人々の集まりのことです。
一人暮しでも独立して生計を営んでいれば世帯として扱われます。
また、同じ住居で共同で生活していても生計を別にしている場合は、それぞれが別世帯として扱われ、世帯主も複数存在することになります。
世帯分離とは?
世帯分離を簡単に説明すると、同居している家族と住民票を分けることをいいます。
ただし、それぞれの世帯に「独立した生計を営む収入」があることが前提となるため、そもそも収入がなく生計を営むのが困難であれば世帯分離はできません。
また、世帯分離は住民票上での分離になるので、今まで通り一緒に生活することも可能ですし、当然戸籍もそのままになります。
世帯分離の目的は?
「そもそもなんで世帯分離するの?」と疑問に思われる方もいるでしょう。
世帯分離の本来の目的は「所得が少ない人(親など)の住民税を軽減」することです。
住民税の額は世帯ごとに計算されるため、世帯分離により世帯の所得額が減ることで、住民税の軽減が可能となります。
世帯分離の3つのメリット
それでは世帯分離をするとどういうメリットがあるのでしょうか。
具体的に見ていきましょう。
メリット1:介護サービスを利用する際の自己負担額を軽減できる
介護サービスは所得に応じて1~3割の自己負担が発生します。
自己負担割合は基本1割ですが、平成27年度の法改正により一定額以上の所得者は2割、現役並みの所得がある人は3割負担になりました。
この自己負担割合は世帯の所得で判断されるため、世帯分離により親の所得だけが算定要因になれば自己負担割合も軽くなる可能性があります。
仮に要介護1の場合、支給限度額は約167,000円です。
3割負担の場合、自己負担が50,100円ですが、所得額が減ることで1割負担になれば16,700円になります。
毎月の差額が33,400円(年間約40万)になるため、世帯分離により受ける恩恵も大きいのです。
※支給限度額とは、要支援、要介護と認定された方が介護サービスを利用した際に、介護保険から保険給付される限度額です。限度額を超過した分は自己負担になります。
メリット2:高額介護サービス費制度により自己負担額の上限が下がる
介護サービスの自己負担が1~3割とはいえ、サービスを無限に受け続ければ自己負担額はそれに比例して増えていきます。
そこで利用できる制度が「高額介護サービス費制度」です。
高額介護サービス費制度は世帯の所得に応じ、1ヵ月間に支払う自己負担額に上限額が設定されています。
自己負担の上限額を超えた場合、超過した分の費用は申請することで払い戻されるため、サービスをたくさん利用される方にとっては恩恵の大きい制度です。
一般的な所得の方の負担限度額は44,000円ですが、世帯分離を行うことで
住民税が仮に非課税になれば、上限額が24,600円となります。
月額で2万円(年間24万円)の負担軽減になるためメリットも大きいです。
メリット3:負担限度額認定制度により自己負担額を軽減できる
介護サービスを利用すると様々な費用が発生します。
なかでも食費や居住費は全額自己負担となるため、大きな負担となります。
負担限度額認定制度は介護保険施設を利用した際の食費や居住費を軽減できる制度です。
この制度は所得や資産の少ない方が対象となります。
所得や資産状況にもよりますが、ケースによっては食費と居住費を合わせて、月額5万円程度の負担軽減になることもあります。
世帯分離の4つのデメリット
世帯分離は上手く活用すればメリットも大きいですが、デメリットもあるため、注意するようにしましょう。
デメリット1:高額介護サービス費で介護費用を世帯合算ができない
世帯分離する前に一世帯に要介護者が2人以上いた場合、2人の介護費用を合算し、超過分を「高額介護サービス費制度」により払い戻すことができていました。
しかし、世帯分離によって各世帯に要介護者が1人ずつとなった場合には、今までのように介護費用の合算ができなくなります。
そのため申請後の払戻額も少なくなる可能性があることを覚えておきましょう。
ケースによっては、それぞれの介護サービス費では高額介護サービス費を利用できる上限額に達しないことも想定されるため、そもそも制度を利用できなくなることも考えられます。
デメリット2:各世帯で国民健康保険を納める必要がある
国民健康保険制度の保険料の負担は世帯主が行う必要があります。
そのため世帯分離し世帯が別になれば、それぞれの世帯で国民健康保険料を納める必要がでてくるのです。
仮にそれぞれの世帯での納付額は減っていたとしても、2つの世帯の保険料を合算すると、一世帯で支払っていた保険料よりも高くなってしまう可能性もあります。
そのため世帯の保険料の総額を考えて検討することが必要です。
ケースによっては保険料が逆に下がる可能性もあります。
世帯分離による保険料の増減に関しては、完全にケースバイケースといえます。
デメリット3:手続きの手間が増える
世帯分離により行政などの手続きが煩雑になることが考えられます。
役所の手続きは各世帯で行う必要があるため、同一世帯だった場合は1回の手続きで完結します。
しかし、世帯分離をすることで2世帯分の手続きをする必要がでてくるのです。
その他にも親の行政手続きに委任状が都度必要になるなどの手間も生じるので注意が必要です。
例えば、親の住民票が必要な場合があるとします。
その際、親が高齢で役所に行けない場合、代理で窓口に行くことになりますが、その都度親に委任状を書いてもらわなければなりません。
そのため、さまざまな手続きの手間は増えてしまいます。
デメリット4:扶養手当てや家族手当がもらえない
子供や親を扶養している場合、会社から扶養手当や家族手当などが支給されているのではないでしょうか。
その場合、世帯分離により、扶養から外れてしまうため手当がもらえなくなる可能性があります。
世帯分離を行う前に、一度会社の担当部署に確認しておきましょう。
世帯分離をおすすめできるケースとは
世帯分離でメリットが得られる世帯は、介護サービスをたくさん利用する方がいる世帯です。
世帯分離で所得が減ることにより、制度から受けられる恩恵も多くなる傾向にあるといえます。
高額介護サービス費制度では自己負担の上限額が下がることによって戻ってくる額も大きくなるなどのメリットを受けられます。
また介護保険施設に入所している場合、世帯分離することにより、食費や居住費の自己負担を軽減できる負担限度額認定制度を活用することも可能です。
世帯分離を行う際の注意点
世帯分離をするには住民票のある市区町村で手続きをする必要があります。
担当窓口の方から「世帯分離を行う目的は?」と質問された際に、「介護保険料を軽減したいから」と言うと受理されない可能性があるため注意が必要です。
なぜなら「介護保険料の減額」が、世帯分離の本来の趣旨とズレているためです。
世帯分離の本来の趣旨は「所得が少ない人(親など)の住民税を軽減」することにあります。
仮に窓口で理由を聞かれたら「生計を別々にするようになった」、「それぞれの家計が別々のため」と言うのが無難でしょう。
世帯分地は同じ住所でも親子同居でも申請することは可能です。
しかし、世帯分離するためには、独立した家計を営んでいることが条件となっています。
生計が同一の場合は世帯分離が認められにくいので注意してください。
世帯分離の手続き方法
では、実際に世帯分離をする際にどのような手続きが必要なのかを確認してみましょう。
書類をそろえる
世帯分離をするときには、以下の書類が必要になります。
・本人確認書類
・世帯変更届
・国民健康保険証
・印鑑
また、親の手続きを子供が代理で行う場合は委任状も必要です。
書類に不備があると申請できないので、念のため申請前に役所に確認しておくとよいでしょう。
まとめ
ここまで世帯分離について解説してきました。
最後にポイントを整理しておきましょう。
- 世帯分離をするには、それぞれの世帯に「独立した生計を営む収入」が必要である。
- 世帯分離の本来の目的は「所得が少ない人(親など)の住民税を軽減」することである。
- 世帯分離をすることで介護費用を軽減できるというメリットがある
- 世帯分離をすることで国民健康保険の保険料が増えるというデメリットがある
※保険料に関してはメリットになる可能性もあり、完全にケースバイケースである
- 世帯分離をすることで会社からの手当が減ることがあるので注意が必要である
- 世帯分離により行政の手続きが面倒になるので注意が必要である
最後までお読みいただきありがとうございました。