「ユマニチュードで介護拒否が少なくなったと聞くけど本当?」
「そもそもユマニチュードって何?」
今回の記事ではこのようなユマニチュードの疑問について解説していきます。
ユマニチュードとは
ユマニチュードはフランスの体育学の専門家であるイヴ・ジネストとロゼット・マレスコッティが開発したケアの技法になります。
言葉の意味は「人間らしさを取り戻す」という意味を持つフランス語の造語です。
ユマニチュードの基本理念は相手との信頼関係を構築して「絆」を深めることにあります。
代表的な4つの技術である「見る」「話す」「触れる」「立つ」を駆使して相手との「絆」を深めることを目指しているものです。
相手との信頼関係を構築するために嫌がること(強制ケア)をしないのも大切なポイントになります。
なぜ介護の現場でユマニチュードが必要なのか?
ユマニチュードは相手との信頼関係を構築し「絆」を深める技法です。
介護の仕事は人を相手にする仕事であるため、相手との信頼関係を深めることは非常に重要です。
そのような理由からも介護の仕事ではユマニチュードは必要ではないでしょうか。
ユマニチュードの具体的な技術4選
人は「周囲からのまなざし」や「声をかけられること」「触れられること」が希薄になると周囲との絆が弱まり、「人間として扱われているという感覚」を失ってしまいます。
ユマニチュードではより良い絆を結ぶための具体的な技術として、「見る」「話す」「触れる」「立つ」という4つの柱を定めてます。
ここでは各項目に沿ってそれぞれ説明していきます。
①ユマニチュードの「見る」技術
相手を見るという行為は、あなたは存在していると伝えることです。
最悪な状態は「相手を見ない」ということです。
なぜなら「相手を見ない」ということは、「あなたは存在しない」というメッセージを発していることに他ならないからです。
では「見る」とは実際にどのようにすればいいのでしょうか。
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逆にやってはいけないのが、以下の行動です。
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相手を見るというのは非常に重要な技術になります。
ぜひ試してみましょう
②ユマニチュードの「話す」技術
進行した認知症のかたは、話しかけても適切な反応が得られないことがあります。
時には無反応なこともあるでしょう。
私たちは相手が反応を示さないと、だんだんと話しかけなくなってしまいます。
それは、ある意味仕方の無いことではあります。
しかし、私たちはケアのプロフェッショナルです。
相手が無反応だからと言って無視してもいい理由にはなりません。
相手に話しかけることは「あなたはここにいる」と相手に伝える重要なメッセージにもなります。
しかし、実際に反応のない認知症の利用者様に対してどう接すればよいか悩むのではないでしょうか。
そこでユマニチュードでは、自分が行なっているケアの動きを「オートフィードバック」という手法で実況中継します。
実際の入浴時のシーンで「今から頭を洗いますよ」と声をかけたり、背中を洗う際は「背中を流していきますね」と、実際に行っているケアの内容を声に出しながら行っていきます。
メッセージを伝える際は「気持ちいいですよ」「肌が綺麗ですね」とポジティブな表現を使うことが大切です。
「相手が応答してくれないから、こちらも反応しなくてもいい」という罠に陥らないよう注意しましょう。
③ユマニチュードの「触れる」技術
介助で相手に優しく触れることは、ケアを受ける相手に優しさを伝える技術になります。
ユマニチュードでは広い面積で、ゆっくりと、優しく触れます。
同じ力でも面積が広くなれば、相手に与える圧力も小さくなり、逆に面積が小さくなれば与える圧力も強くなり相手に不快感を与えることになります。
ケアを行う人が「必要な行為」と考えて行う触れ方が受け手にとっては「攻撃的な触れ方」になっていることもあるため注意が必要です。
ユマニチュードの「立つ」技術
人間の尊厳は立つことによってもたらされる側面が強く、これは死の直前まで尊重されなければいけません。
また立つことは下記に示すように身体的によい影響を及ぼします。
立つことによる身体に与える効果は以下の通りです。
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立つことは「人間らしさ」の表現のひとつでもあります。
現在病院や介護施設で寝たきりになっている人も、「レベルに応じた適切なケア」を受けていれば今でも立つことができたかもしれません。
少なくとも1日合計20分立つ時間を作れば立つ能力は保たれ、寝たきりになることを防げるでしょう。
実際にケアに入る前の5つのステップ
実際にケアに入る前には、ケアを受ける相手に私たちのことを受け入れてもらう必要があります。
認知症が進行し相手が分からないだろうと考えて、相手の了解も得ずにケアに入っては相手との信頼関係は築けません。
認知機能が低下した人だからこそ、普段常識的におこなっている関わり方が大切になってきます。
ここから実際にケアに入る前の5つのステップを紹介します。
①出会いの準備
最初のステップでは自分の来訪を相手に伝えケアの予告をする段階になります。
ケアの予告をすることは非常に重要です。
なぜなら相手がケアに同意してないのに突然布団をめくってしまうと、相手は驚きケアに対して拒否反応を示す可能性にも繋がるためです。
まず自分の来訪を告げ、相手の領域に入りケアの説明をしましょう。
②ケアの準備
2つめのステップでは、相手からこれから行うケアに対して合意を得ることです。
ここで大切なことは、3分以内に合意が得られなければ「ケアをあきらめる」ことです。
長い時間相手を説得しても、相手は不信感ばかりが強くなり信頼関係の構築はできません。
あまりにも拒否が強い場合は、午前に声かけをしたら次の声かけは午後にするなどしましょう。
合意のないままケアを行うことは「強制ケア」になってしまいます。
例え必要なケアであったとしても、相手は暴力を振るわれたと思い込みます。
これでは「この人は悪い人」という印象を与え、顔を見ただけで拒否されるようになってしまうでしょう。
③知覚の連結
知覚の連結とは実際にケアに入った際に使う手法になります。
「視覚」「聴覚」「触覚」の3つの感覚に対して、ポジティブな感情を与えることにより、ケアを受ける人が心地よい状態になることを目指します。
実際にケアを行う際に「笑顔」で「穏やかな声」で、そして「優しく触れる」ことです。
知覚の連結を意識したケアを実践することで相手の緊張感がやわらぎます。
「見る」「話す」「触れる」の技術を包括的に行うことが必要になります。
④感情の固定
感情の固定とはケアが終わった後に、「気持ちよかった」「楽しかった」と利用者様にポジティブな感情をしっかりと残すことです。
そうすることで次のケアにつなげることができます。
シャワー後の声かけを例に説明します
「シャワー気持ちよかったですね」
「○○さん、シャワーをして綺麗になりましたよ」 「○○さん、たくさん協力して下さいましたね」
「わたしもとっても楽しかったですよ」 「お話しできて嬉しかったです」 |
このようにケアの後にポジティブな声かけをすることで、「この人は嫌なことをしない人だ」と記憶してもらうのです。
認知症になっても「楽しい」「嬉しい」という感情は維持されます。
やや大げさにポジティブな声かけをすることがオススメです。
そうすることで相手との「絆」もより深まるでしょう。
⑤再会の約束
最後のステップは、ケアが終わり相手のそばを離れる前に「再会の約束」をします。
相手が約束した内容を忘れたとしても心地よかった記憶や感情が残っていれば、次にそのスタッフの顔を見たときに笑顔で迎えてくれるでしょう
ユマニチュードの実際の効果は?
ユマニチュードによるケアを実施することで、認知症患者の態度が柔らかくなったり、攻撃的な言動や行動が減ったりするという効果があります。
これは介護者と認知症患者で信頼関係が結べていることが大きな理由ではないでしょうか。
実際にユマニチュードを取り入れた病院での報告を取り上げてみました。
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一番の効果は、介護者が抱きがちな「罪悪感」から解放されることではないでしょうか。
実際に介護現場で働いていると介護する側もされる側も「申し訳ない」という気持ちを感じる場面が多いのも事実です。
信頼関係を高め「絆」を深めることにより一緒に笑い、充実感に包まれることが、ユマニチュードの一番の効果ではないでしょうか。
まとめ
ここまでユマニチュードの技術について説明してきました。
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最後までお読みいただきありがとうございます。