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介護従事者向け情報

  • 訪問介護も新しいカタチへ。時代に合わせた変化への対応と結果をご紹介!

    訪問介護利用者の日常生活を取り巻く環境は、日々変化しています。 今回は、在宅生活に対応したデジタル化やAIは、訪問介護にどう取り入れられるのかを紹介します。 多種多様化、ヘルパーさんも随時対応中 訪問介護には色々な「サービス行為ごとの区分」があります。 利用者の身体に纏わる介助を行う身体介護や、日常生活に纏わる援助を行う生活援助、病院受診等の対応に纏わる介助を行う通院等乗降介助などです。 訪問介護の名の通り、ヘルパーが利用者宅へ訪問し介護や援助を行うことですが、ここ最近では日々の生活にデジタル化やAI化したものは普通に浸透しており、介護保険を利用する利用者も例外ではありません。 訪問介護では、サービスの基準となる「老計第10号」という法令があり、身体介護や生活援助のサービスの基本例が記載されています。 訪問介護に関わるヘルパーや職員には、必ず目にするサービスの教科書の様なものとイメージしたら良いでしょう。 大まかに言えば、介護の基本中の基本であるサービス事例が記されているのですが、ここ数年でサービス対応について幾分内容が変わってきたものがあります。 買い物対応、色々な「カタチ」 訪問介護サービスの一つ生活援助には、買い物・薬の受け取りというものがあり、老計第10号にもサービスの内容例が記されています。 2-6 買い物・薬の受け取り 〇日常品等の買い物(内容の確認、品物・釣り銭の確認を含む) 〇薬の受け取り  利用者の日常品の買い物に対する介助をこの例を元に計画するのですが、通常は食料品や生活雑貨品を購入する為に利用者と同行するパターンと、代行するパターンがあります。 <利用者同行パターン> ・買い物の為の移動手段の確認 ・利用店舗の確認 ・店舗へ移動 ・買い物、レジにて支払い、釣銭預かり、購入品収納 ・自宅へ移動 ・商品の確認、購入金額と釣銭の確認、商品収納 <ヘルパー代行パターン> ・購入品リスト、金額の確認 ・利用店舗の確認 ・ヘルパーによる買い物代行 (レジ支払い、釣銭預かり、購入品収納) ・利用者宅にて商品の確認、購入金額と釣銭の確認、商品収納 今までは、同行や代行においても利用者とお金の確認をし、店舗でレジにて支払いをし、お釣りがあれば受け取り、最後は利用者と商品や購入金額、釣銭を確認していました。 現在もその形で行っているケースもありますが、近年買い物の形が変わりつつあり、新たなパターンでの対応を求められる事もあります。 実際に訪問介護サービスの生活援助の計画に「買い物援助」がありますが、ここ最近ではこんな事例もあります。 ①宅配ネット注文やネットスーパーで購入 県外に住む長女より「久しぶりに帰省して利用者(母)に会った際に前みたいに歩けない、買い物にも行けなくなった」と言われました。 「これまでは調理と掃除片付けをお願いしていたけど、ヘルパーさんに買い物もお願いしたい。」 との相談があり、始まった買い物援助です。 パソコンの操作方法は、図で分かる様にした物を印刷し、それをコルクボードに貼り付け、ヘルパーが訪問した日に見守りの下で、手順通りに入力し商品を選んで注文しています。 ②スーパーやドラッグストアでセルフレジ対応 独居生活の利用者の週2回ある生活援助の内の一つが買い物同行と整理整頓です。 昨年まで利用店舗は有人レジでしたが、店舗改装後にレジの半分がセルフレジに変更となってしまいました。 買い物援助の際に人対応の方のレジへ並ぶも時間が掛かり、生活援助サービスの時間が押してしまう事もあった為、 「セルフレジで買い物ができるようになる(バーコード読み取り、マイバックに詰める 支払いをする、ショッピングカートに入れて持って帰る)」 という見守り的援助プランに変更しました。 現在も見守りの下で買い物をされています。 ③支払いは電子マネー決済(キャッシュレスで買い物、現金不所持) 長男とは同居も、日中は仕事で出張も多く留守がちで独居状態に近く、利用者が財布類を持つと置いた場所が分からなくなるので、 「母のスマホにダウンロードした電子マネーでの決済」 を希望をされました。 合わせて、できるだけお金を持たせたくないと強く言われます。 利用者も置いたはずのお金がどこにいったか分からなくなる事があるので、長男が準備してくれた金額を使う事を了承済みです。 ケアマネジャーや自治体と相談・検討の結果、 ①利用者のスマートフォンをヘルパーが持ち出すのは、緊急事態時に連絡や対応ができなくなる事 ②紛失した場合に損失が大きい上に日常生活に支障を来す との判断で、買い物代行時の金銭取り扱いは流通系の電子マネー(カード型)対応に変更してもらい、様子をみる形を取りました。 結果としては、現金を取り扱わない事で、利用者宅のあちこちに小銭が見つかる事や財布類が見つからない事も少なくなります。 重ねて台帳管理も上手くいっている為、買い物代行は継続中です。 前述にもありましたが、訪問介護サービスでの買い物援助は人の手を介して現金を取り扱う事が通常だった為に、現代の流れに沿った対応に若干違和感を感じられる事もあるかもしれません。 介護認定を受けた利用者も私たちも同じ日常を過ごしているのだから、時代の流れに沿って介護サービスのカタチを変えていくのは必然の流れです。 中には新しい流れを嫌がる利用者もいますが、少しずつ『現在の暮らしの普通のカタチ』を取り入れ、地域に暮らす日常に慣れていく事も「尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう(介護保険法第1条)」になるのではないでしょうか。 お掃除ロボ、発進! 一般的という程ではありませんが、最近は自宅にロボット掃除機を導入している所もちらほらあるようです。 訪問介護を受ける利用者宅で導入される事もここ数年、僅かながらもみられるようになりました。 まだ圧倒的に生活援助で掃除のプランが立てられている場合は、掃除機やフローリングワイパー等の掃除用具で行う事が主立っています。 しかし、中には家族が購入したロボット掃除機が活動されている所もあるのです。 訪問介護において、同居家族がいる場合の生活援助は基本的に受ける事ができません。 (但し、同居家族にやむを得ない場合や状況によっては生活援助のサービス利用が可能になる場合もあります。) ロボット掃除機も同様で、独居状態にある利用者へ離れて住む家族や身内から贈られた物、あるいは利用者自身で購入した物であれば、生活環境が利用者中心である為、使用については特に問題はありません。 それに応じたプラン変更は求められますが、日常生活を送る上での一部という事で対応していきます。 同居家族にやむを得ない場合や状況が有り、生活援助サービスを認められた場合では注意が必要です。 ケアマネージャーによる居宅プラン、それに沿って立てられた訪問介護計画書に則りサービスは行いますが、同居家族がいる場合の生活援助は、利用者のみが利用する場所においてサービスが行われ、同居家族が利用する共用場所へのサービスは認められません。 あくまでも訪問介護計画書に記されたサービスしか行えない為、プランが利用者の寝室や寝室周辺(利用者しか利用しない事を前提)の掃除や整理整頓であった場合、ロボット掃除機がリビングにあり、居室指定の設定をせずに利用者の寝室へ辿り着くまでの間の共用部分の掃除をしてしまう事が認められないのです。 「細かすぎる!少し位は良いじゃないか!」と思われるかもしれませんが、訪問介護は介護保険を利用した介護認定を受けた利用者の為のサービスなのです。(各自治体によっては、許容認可の範囲が違う場合もあるので確認が必要です。) どんなに便利な機器や器具が導入されても、介護保険を利用している訪問介護の基本を踏まえた上で プランに沿ったサービスを行う事を忘れてはいけません。 もはや、もう一人のヘルパーさん 最近では日常生活においてAI機器の導入が色々みられるようになりました。 前述にもありましたロボット掃除機もそうですが、スマートスピーカーも導入され日常生活に反映されているようです。 同居している家族が導入したので利用者も使用するという例もあり、ヘルパーやケアマネージャーも最新の流れをインプットやアウトプットしていく事が求められる様になります。 まず始めに利用者が「これ、どうやって使うんだろう?」と思うように、ヘルパーやケアマネージャーも「これ、どうやって使うんだろう?」「サービスにどう取り入れていけばいいんだろう?」と頭を悩ませるでしょう。 知識を得る為にスマートスピーカーについて学び(インプット)、「こうやって使うんだ!こんな機能があるなら支援や援助に取り入れていこう。」とプランに取り入れてサービスを行う事で実行に移す(アウトプット)形となるのです。 日々の生活が進化していく事に比例して、利用者の生活も進化し、サービスを行う介護事業所全体も進化し追従していかないといけません。 スマートスピーカーでできる事につきましては、下記の図を参照して下さい。 利用者がスマートスピーカーへ「今日の予定は何?」と聞けば、「〇日〇時から訪問介護です。」や「〇時に〇〇病院に受診です。」等のスケジュールを答えてくれます。 また、、「電気点けて、消して。」「エアコン点けて、消して。」「テレビ点けて、消して。」等の家電や機器の操作も音声で対応でき、「今、何時?」にも、時刻を音声で伝え、日用品が切れた時に 「(日用品名)を注文して」と頼めば、ネット注文で買い物もできてしまうのです。 こうなると、もう一人の家族であり、万能ヘルパーでもあります。 とは言っても、流石にできない作業や動作もあります。 そこはアセスメントやモニタリングによって必要となった介護プランに沿ったサービスを行い、AIを上手く活用していく事ができれば日常生活がよりよいものとなるでしょう。 まとめ 今回は、在宅生活に対応したデジタル化やAI化は訪問介護にどう取り入れられるのかを幾つか例を挙げて紹介しました。 ・訪問介護は老計第10号の法令の基本に沿って対応も、最新のデジタル化やAI化によって サービス内容が変化しつつある。・生活援助における買い物同行や代行においても、「宅配ネット注文」 「ネットスーパーの利用」や、店舗にて購入も「セルフレジ」対応、 支払いは「電子マネー決済」対応等、今までの買い物のカタチが変わり 利用者もヘルパーも対応していかなければならない。・生活援助における掃除においては、「ロボット掃除機」が導入されている所もあり 利用については同居家族がいる場合において注意を要する。・「スマートスピーカー」という、AIが搭載された多機能なスピーカーを 導入されている所も少なからずあり、日常生活に反映される対応が可能になっている。 ・「スマートスピーカー」のできる事は ①音楽の再生②家電や機器との連携操作③検索や情報収集やネット対応が可能 ④メールやデータの送受信や音声読み上げ⑤スケジュール管理などがある。 ・デジタル化やAI化が進んでも、日常生活ではできない動作や作業があるので 上手く活用しながら対応していく事が求められる。 デジタル化やAI化の波に乗って訪問介護もカタチを変えつつあります。 しかし未だそういった進化の波とは無縁の環境で日常生活を過ごす利用者がいるのも事実です。 其々の生活環境や状況に応じた対応を求められますが、一朝一夕には対応できません。 介護保険に関する法令遵守や法改正に伴うサービスの変更等に加え、最新のデジタルAI関連にも目を向けないといけない状況はとても大変です。 新旧共々に対応していけるヘルパー力を身に付けていきましょう。

  • 介護を「作業」としてこなす人。「ケア」として向き合う人の違いについて解説

    この記事では、介護を「作業」としてこなす人と、「ケア」として向き合う人の違いについて紹介します。 またお互い協力して仕事ができる方法についてもお伝えします。 介護を「作業」としてこなす人の特徴 1,「速さ」「効率」を重視している 介護を「作業」としてこなしている人は、何よりも「速さ」「効率」を重視しています。 その為、想定外のことが起こったり、声かけに拒否があっても、無理矢理にでも連れて行こうとし、業務時間内に介助を終わらせようとします。 この考え方は、在宅よりも施設、特に多床室のような従来型特養で働いている人に多いです。 従来型特養は、何十人ものケアを時間内で終わらせなければなりません。 その為「速く終わらせること」を求められた結果、「速く、効率的に終わらせることが最優先」という思考回路になってしまうのです。 2,ケアの理由について考えていない 施設内で行う介護(ケア)は、ケアプランに基づいて行われています。 それは、「なぜそのケアがその人にとって必要なのか」という、根拠あり、それを基にケアを行う必要があるからです。 しかし介護を「作業」としてこなしている人の場合、根拠についてあまり考えていません。 「そう決まっているから」と、疑問を持ったり改善しようとせず、自分の業務をこなすことを最優先事項としているのです。 介護を「ケア」として向き合う人の特徴 1,入居者や利用者の気持ちを重視している 介護を「ケア」として向き合っている人は、入居者や利用者の気持ちを重視し 1人1人丁寧に向き合っています。 例えば入浴の声かけをして嫌がったとき、「今は無理に行ってもダメだから、時間を置いて声をかけてみよう」と考え方を変えることができます。 また入居者や利用者の気持ちに向き合って対応しているので、不穏な人でもその人が対応すると、落ち着くことが多いです。 2,ケアを行う根拠を把握している ケアとして向き合っている人は、ケアプランの内容を把握し、「なぜこのケアを行うのか」という根拠を明確に説明することができる人が多いです。 根拠を知っていることで、新人職員などに教えるときに分かりやすく説明することができます。 また「ケア」として向き合っている人は、入居者や利用者の状態は日々変化しているということを知っています。 なので「ケアプランではこのようなケアを行うとあるけれど、今のこの人には、適応しているのか」と疑問を持ち、改善点を他職種に提案することができるのです。 どちらが正しいとは言えない 上記にて介護を「作業」としてこなす人と、「ケア」として向き合っている人の特徴についてお伝えしてきました。 ここまでだと「仕事としては、ケアとして向き合っている人の方が良いのではないか?」と思いがちです。 しかし実際は、「どちらが正しい」とは、一概には言えないのです。 というのも、介護業務というのは、限られた時間内と人数で業務を回さなければなりません。 その中で、入居者や利用者1人1人に丁寧に向き合っていたら、業務時間内に仕事が終わらなくなってしまいます。 それは、他の職員に迷惑がかかってしまうことになります。 そのため、ある程度「作業」としてこなすことも、必要なことなのです。 両者が協力するために ここでは、介護を「作業」としてこなす人と、「ケア」として向き合う人が、お互い協力する為に、何をすると良いのかお伝えしていきます。 ①お互いを知る 両者が協力するためにまず必要なことは、「お互いを知る」ことです。 具体的には ・日々どのように介護業務を行っているか ・どのような価値観や考え方を持って行っているのか ・他の職員の業務に支障が出ていないか ということが挙げられます。 特に最後の「他の職員の業務に支障が出ていないか」という点を忘れないでおきましょう。 支障が出ていなければ、お互い考え方や価値観を変えず、現状維持するという方法もあります。 人の価値観というのは、簡単に変えることができません。 なので、無理に考え方を変えようとすると、かえって関係性が悪化してしまい、施設全体が悪くなってしまう可能性があります。 ②問題について共有する お互いについて知ることができたら、次は「今施設の中で問題になっていることは何か」を、共有しましょう。 例えば「ナースコールで頻回に呼ぶ利用者がいて、業務が進まない」という問題が挙げられたとします。 介護を「作業」としてこなす人であれば、 「頻回に呼ばれて、業務が進まない」 という点に着目します。 しかし「ケア」として向き合っている人の場合、 「なぜ呼ぶのだろうか」 「寂しいからなのか、何か訴えがあるからなのか」 と、疑問を持ちます。 このように同じ問題でも、着目点が異なるのです。 ③お互いの価値観を用いて、意見を聴く 上記のような問題が発生した場合、お互いの価値観を用いて意見を提案しましょう。 介護を「作業」としてこなす人であれば 「業務が進まないから、ナースコールは無視する」 「何回も呼ばないで欲しい」と、注意する という意見が出てきがちです。 一見すると「介護職としてどうなのか」と思いがちです。 しかし利用者の中には、用もないのに何回も呼ぶ人もいます。 なので時には、注意するということも必要なのです。 一方「ケア」として向き合う人の場合 「日中居室に籠もりがちですることがないので、呼ぶのではないか」 「何か役割を持たせると良いのではないか」 と、疑問や改善点を思い浮かべます。 重要なのは「お互い、相手の意見に最初から否定しない」ことです。 自分にとって意にそぐわない意見だとしても、その人にとっては 「明確な理由があって」話をしています。 「そういう考え方もありますね」と、相手に伝えることで、相手もこちら側の意見を受け入れやすくなります。 ④試行錯誤してみる お互いの立場で意見が出てきたら、実際にやってみましょう。 上記の「ナースコールが頻回な人の対応」については ・役割を持たせて、不安な気持ちを軽減させる ・夜ナースコールが頻回な場合は、日中活動の時間を増やす ・看護師や相談員、ご家族様にも相談し、精神科に受診し、薬を処方してもらう ・それでも頻回な場合は、理由を伝えて「何回も呼ばないで欲しい」と言う といった方法を実践してみましょう。 しかし、1回で成功するとは限りません。 何回も行い、どれがその人にとって1番良い方法なのか、実践してみましょう。 試行錯誤していく中で、「作業」としてこなす人、「ケア」として向き合う人それぞれの価値観が共有されるようになり、結束し、協調して仕事に取り組めるようになります。 試行錯誤した結果、ナースコールが減れば、介護職員の負担が軽減されるだけでなく、利用者本人も不安が減り、施設での生活を快適に送れるようになります。 介護の仕事は、試行錯誤 介護業務、特に施設内のケアというのは、日々同じことの繰り返しに見えるので、単純労働でルーチンの業務だと思いがちです。 しかし上記でも挙げましたが、入居者や利用者の状態は日々変化していくので、臨機応変な対応が求められます。 また医療のように「治癒」という明確なゴールが設定しづらいので、介護職だけでなく、ケアを受ける本人や、他の職種と一緒に、ケアを考え続ける必要があります。 これからのケアは、お互いの価値観ややり方を理解し、「どうすればより良くなれるか」を考え続けることが、求められるのです。   まとめ ここまで介護を作業としてこなす人、「ケア」として向き合う人の違いについて解説してきました。 介護を「作業」としてこなす人の特徴は、「速さ」「効率」を重視している ・「ケア」として向き合う人の特徴は、ケアを行う根拠を理解しながら 入居者や利用者に対応している ・限られた時間と人数で業務を回さなければいけない以上 どちらが正しいとは一概には言えない ・両者が協力するためには、お互いの価値観ややり方を理解した上で 問題を改善するための意見を提案し合い、試行錯誤しながら お互いの価値観を共有していくことが重要である 最後までお読みいただきましてありがとうございます。  

  • これは介護と医療どちらですか?介護と医療が連携する場合の対処方法を解説

    訪問介護のヘルパーはサービス時でも、医療行為や医療機関との連携を求められる状況が発生する場合もあります。 今回は、そんな状況時での対応の仕方について紹介します。 介護なのに医療行為? 訪問介護でのヘルパーさんのボーダーライン 利用者宅へ訪問し、介護サービスを行うヘルパーですが、利用者の日常生活には些細な形でも医療行為を必要とする様な事態や、簡単な処置対応を求められる事があります。 ・自宅で家具にぶつけてしまい、手に小さな擦り傷ができてしまった。 ・高血圧と診断されており、毎日血圧を測るように主治医から言われている。 ・脊柱管狭窄症の為、屈伸動作が難しくなかなか足の爪が切れない。 ・ドライアイが強く、医師より点眼薬が処方されている。 ・加齢による乾皮症で、ワセリンが処方されている。 ・利用者の手が不自由な為、口腔ケアや義歯洗浄ができない。 サービス開始前のケアマネージャーや訪問介護事業所側のモニタリングやアセスメントで以下の事柄を確認します。 ・利用者のADL(日常生活動作)やIADL(手段的日常生活動作) ・身体的にどういった動作ができて、どういった動作が難しいのか ・日常生活では何ができて何が難しいのか ・傷病歴や生活環境等 基本的には、ケアマネージャーの立てたケアプランに則り、訪問介護計画が立てられサービスを行うのですが、時に身体介護においてこれは医行為ではないのか?とヘルパーが判断に迷う事もあります。 基本的に訪問介護のヘルパーは医療行為を行う事はできませんが、下記の図の様に厚生労働省より「医行為ではないと考えられる」とされる事例があるので参照して下さい。 例えば訪問介護サービスにおいて、食事介助と図の⑤にある様に食後の口腔ケアと義歯洗浄まで訪問介護計画にある場合は、計画通りサービスを行わなければなりません。 私達も普段の生活で、食事の後に歯みがきをしたり、人によっては義歯のケアをする事は何の疑問も持たないでしょう。 利用者も同じで、口腔内外に炎症も病例も特に何も無く、食事を安全に行った後の清潔保持の為に行う口腔ケアや義歯洗浄は、ケアプランに立てられていれば、ヘルパーは口腔ケアの介助や見守り的援助にて対応します。 但し、利用者の口内に歯周病や酷い歯槽膿漏があったり、口腔内潰瘍やヘルペスの症状があり医師による診察や治療が行われている状態での口腔ケアや義歯洗浄となると、話は違ってきます。 明らかに医師の対応が必要となる状態=重篤な状態での口腔ケアを行う時は、必ず医師の指示書や看護師の指導の下にサービスを行う必要があります。 そういった場合では基本的には処置や医療行為を求められる為、軽微な状態とは言えず介護対応はできません。 その際は訪問介護ではなく訪問看護での対応となる場合もあるので、利用者の状態においては安易に自己判断したり利用者の言い分要求を鵜呑みにして言われるまま対応したりせず、ケアマネージャーや訪問介護事業所等に報告した上で正しく利用者に応じる等の注意が必要です。 訪問介護でヘルパーができる医療行為は、利用者の心身状態が安定しており、入院の必要が無く、医療技術や専門的な管理、処置を伴う事が無い状態である場合に軽微で簡易的なもののみ行えるものです。 ヘルパーができる医療行為の例外として、研修を受講した介護福祉士が行える喀痰吸引と経管栄養がありますが、「たん吸引は咽頭の手前まで」や「経管栄養の胃ろうや腸ろうの状態確認は看護師対応」等行為にはできる行為とできない行為があるので注意が必要です。 医療機関で訪問介護? 訪問介護はその名の通り、ヘルパーが利用者宅にて訪問して行われるものですが、利用者宅から出て対応する事が必要とされる場合もあります。 日常生活に必要な動作であれば、訪問介護として認められるものもあり、その認められるものに「医療機関への受診対応」も条件によっては可能です。 「ちょっと風邪ひいたから病院行ってくる。」 「毎月の定期受診だから月末病院に行かないといけない。」 「入れ歯のかみ合わせが悪くてご飯が食べにくい、歯医者に掛からないといけない。」 様々な理由により、生活に医療が関わってくるものですが、基本的に医療機関への受診対応は訪問介護ではできないとされています。 ですが、医療機関への対応が利用者一人では困難な場合や利用者の取り巻く環境や、介護を要する事が明らかに認められる状況によっては、事前対応次第で訪問介護にて対応する事が可能となります。 【院内介助ができる条件】 ①要介護度1~5の認定がある利用者 ②医療関係者の介助が望めないと事前に確認済の場合 ③当日、家族や身内の通院付添いが望めない場合 ④院内で常時見守りや介助が必要とされる場合 介護タクシーを利用される場合、訪問介護の基本として当然ながら病院内の院内介助は医療機関対応の為行えませんが、上記にある①~④全てに該当する場合は対応可能となる事もあります。 ここで注意したいのは、ヘルパーが介助できるのは受診受付、院内での移動や、トイレ介助、病院代支払い、薬の受取りです。 心身不安定で一人で待ち時間を過ごす事が困難な場合は条件により介助可能ですが、検査や処置、診察は医療対応の為、介護保険である訪問介護のヘルパーは対応できません。 では、認知症の傾向があったり、または視聴覚が困難な利用者が訪問介護を利用して受診した場合、どうなるでしょうか? 医師の診察において病状の報告や診断結果を受け対応する事は医療対応の為、訪問介護では対応できない事とされています。 この場合は上記でも述べましたが、事前対応によりヘルパー同席が可能になる事もあります。 全ての自治体が事前対応可能とは限らない為、利用者居住区の自治体に相談が必要です。 対象となる利用者が、どの動作に介助を要するのか、またはどこからが医療対応で介護対応では無くなるのかをよく確認した上で線引きし、対応しなければなりません。 介護側が計画通り対応を行っていても、突如介助や見守りを要する事があったり、医師や看護師の説明を聞いたり、利用者の状態を報告したりと、医療と介護の対応が混乱する事も多々ある為、その場その場に応じた臨機応変な対応が求められます。 医療機関で訪問介護(通院介助、院内介助)を行う為に必要な事は下記の図を参照して下さい。 あくまでも「訪問介護対応」で介助しないと病院に受診する事ができない為に、ヘルパーを介して行われるものが、通院介助または院内介助です。 訪問介護対応という事は、先程にもあった通り事前確認やそれに伴う打合せや会議、計画書の作成、記録または報告書の作成等が必要となるという事です。 要介護度認定があっても看護師の介助があれば一人でも受診できたり、医師とのやり取りが可能な場合は、ヘルパーは立ち入る事はできません。 身内や家族の様に寄り添う気持ちは大切ですが、介護保険を利用している事を忘れずに対応しましょう。 皮膚は人の身体の信号機です 訪問介護では、要介護の利用者でも自身で何等かの形でも動ける利用者と、自身の思うようには動けない利用者がいます。 (ここでは、施設や医療機関に入所せず自宅で家族の援助を受けながら過ごす寝たきりに近い状態を指します。) そういった利用者への介護は、ほぼ身体介護メインである事が多いのですが、「寝たきり」状態である場合、ケアマネージャーのプランを踏まえた上で更に注意すべき点がいくつかあります。 ヘルパーは訪問介護を通じて利用者の状態を確認した上で、「おかしいな?」「あれ?前回より状態悪くなってる!」と感じたら、状況や状態の報告を行い、適切な判断や今後の対応を検討しなければなりません。 図の①や②の場合は、状況によっては医師の診断が必要になりますし、介護ではなく訪問看護対応となる事もあります。 図③の場合、医師の診断やケアマネージャーとの検討、利用者の身体状態によっては訪問リハビリ対応となり、介護との連携を図っていく形になる事もあります。 図④~⑤に関して特に図④の場合、皮膚に状態悪化がみられ、褥瘡が確認された場合は注意が必要です。 褥瘡部への処置は医療行為ですので介護では対応できませんが、排泄により患部周辺が汚染された場合は、清拭対応としてヘルパーが介護を行います。 排泄物で汚染されたまま放置では状態悪化に繋がる為、排泄汚染されている場合は、患部周辺の洗浄、ガーゼやパットの交換、おむつやリハビリパンツの交換はヘルパーが対応します。 褥瘡、床ずれは同じ体勢により同じ個所に体圧が掛かってしまった場合にできる事が多いので、体位を定期的に動かし圧を分散させる必要があります。 それと同じくして、栄養摂取においても食事による栄養が摂取できなくなり、低栄養になってくると褥瘡ができやすく、また発症しても治りにくくなってしまいます。 食事による栄養摂取の為には、嚥下状態も大きく関わってきますし、上下肢の動きも体圧分散に繋がる上に、排泄などの基本的な身体動作に上下肢の動きは必須な為、その動作が維持できるかどうかは褥瘡発症のリスク増減に関わってくるので注意が必要です。 図①~⑤は全て連動しており、訪問介護でヘルパーが対応する介助は一つ一つが全て重要なものであると同時に、目に見えてその状態の良し悪しを教えてくれるのが「利用者の皮膚」であったりします。 ・特に状態に問題なく、その利用者なりの日常生活が送れていたら青信号です。 ・日常生活は送れているけれども、何らかの「あれ?おかしいな?」が みられたら黄信号です。 ・はっきりと異常が確認されたら赤信号で、医療対応が必要です。 介護で対応すべき範囲と医療で対応すべき範囲を理解し、利用者から出される信号を正しく受け取り、日常生活を送るという道路を走る車の一つが介護であると考えられるならば、訪問介護にて ヘルパーがどう対応すれば良いのかが分かってくるでしょう。 まとめ 今回は、訪問介護のヘルパーが、医療行為や医療機関との連携を求められる状況時での対応の仕方について紹介しました。 ・利用者の日常生活には、医療行為を必要とする様な事態や簡単な処置対応を 求められる事があり、基本的には医療行為はできないが、介護で対応可能と 解釈されたヘルパーができる医療行為がある。・ヘルパーができる医療行為でも、医療(医師や看護士等)との連携が求められる。・医療機関への受診対応も訪問介護サービスの一つであり 介助を行うには条件や事前または事後の対応が含まれる。・通院または院内介助を計画されサービスを実施しても 介護で行えるサービスと行えないサービスがある。・訪問介護で寝たきりや思うように自身で動けない利用者へのサービスでは ケアプランの他にも気を付けなければならない点があり、実際サービスに入って 認識や確認できる事が少なくない。・嚥下、栄養、可動域、皮膚、排泄の5点は連動しており 皮膚状態は身体全体の良し悪しを現す信号である。 ・状態の変化の気付きを意識して生活状況の対応をし、状態の異常時は すぐに医療との連携を図る事ができる最前線にいるのがヘルパーであるので 訪問介護時はサービスは繋がっている事を意識して行う。 「医療と介護の連携」と言われると難しく捉えられがちですが、基本的にできる事やできない事をきちんと踏まえた上で、サービスを行えば特に問題はないのです。 訪問介護で身体介護を行う、通院または院内介助を行う、身体介護で利用者の状態をよく確認する、これらは全て利用者の日常生活を安全に送る為の一つで、全ては連動しているのだと考えられたならば介護に対しての理解も深まるでしょう。 不安を持ったままサービスを行えば利用者にも不安が伝わります。 「ヘルパーは介護のプロだ」と自信を持って訪問介護サービスを行いましょう。

  • 有効求人倍率15倍!? ヘルパーが働き続けたくなる環境とはどんな職場?

    介護の職場は有効求人倍率15倍と言われています。 人材難の介護業界でヘルパーが働き続けるには何が必要なのでしょうか。 ここでは介護の人材難に向き合う課題についてご紹介していきます。 ヘルパーが働きやすい職場が少ない 介護業界はどこも人材が圧倒的に足りていません。 同じ職場に定着する人の割合が他の業界に比べて少ないことが人手不足の要因にあげられています。 例えば、新卒からずっと同じ職場で働いていると言う職員を筆者はあまり見たことがありません。 ではヘルパーが介護業界で定着しやすい職場はどんなところなのでしょうか。 まずはヘルパーの離職の原因から確認していきます。   ヘルパー離職の原因 職場の人間関係 介護ヘルパーが同じ職場で働き続けたくなくなる理由の1つ目は、職場の人間関係です。 この理由は他職種でもあるかもしれませんが、介護の現場においては特に重要なものになります。 介護の仕事は、夜勤、日勤、遅番などのシフト制がほとんどで、ご利用者様の状態や業務の引き継ぎが必要になります。 それは職員とのやりとりが多くあるということです。 他にも日中の業務で連携をとりながら仕事をする必要もあります。 その際のちょっとした言葉の行き違いなどから不快感を感じ、その積み重ねで徐々に険悪になる職員を多く見てきました。 人は皆違う人生と価値観で生きています。 ちょっとした事から関係性が悪くなり退職する人は多いようです。 そんな事例からも、職場の人間関係が安定している事業所は働きやすく、結果として離職率が低いと言えます。 慢性的な人手不足 ヘルパー離職の理由の2つ目は、慢性的な人手不足です。 介護の仕事は基本的にマンパワーが必要になってきます。 例えば24時間対応の施設系の職場であれば、早番、日勤、遅番、夜勤と最低でも1日のシフトで4人の職員が必要です。 この環境で職員が1人辞めると、3人で現場を回す必要があります。 これは体験しなければわからないことですが、場合によっては休憩が出来ないこともあります。 最悪の場合、時間外で残業をしなければ現場が回らないこともあります。 これが1日だけであればまだ続けようと思えますが、職員の補充があるまでずっと続くところもあります。 職員の補充を求めたとしても、すぐに入ってくるとは限りません。 例え入職してくれる人がいたとしても、そのまま長く続けてくれるとは限りません。 余談ですが、ある時入職した翌日に家族の急病を理由に休んだ新入職員がいました。 そしてそのまま音信不通になり、復職することはありませんでした。 このような事からも、介護業界での定着率は低い傾向がわかります。 給料や待遇面 離職率の高い理由3番目は、介護のヘルパーの給料や待遇は仕事の大変さのわりに低い点です。 さらに昨今、一般企業のサラリーマンやOLとの差は更に開いてきていると感じます。 筆者は社会福祉法人の施設に勤務するまで、ボーナスをもらったことがありませんでした。 それぐらい、介護業界の給料は低い設定になっていて、介護職の定着に大きな影響を与えています。 健康の不安が原因 離職率の高い理由4番目は、健康の悪化です。 特に介護ヘルパーの仕事をしていると痛めるのが腰です。 腰は日常生活でも大切な部分ですが、その腰を酷使する仕事でもあるため、介護の仕事をしてから腰が悪くなったと言う人は多いです。 介護現場では、腰にコルセットを巻かないと仕事ができない人が多くいて、その大半が女性でした。 高齢者は体重の重い人から軽い人まで色々な人がいます。 介助の仕方、技術次第で腰を痛めないも方法もありますが、逆に介助方法を間違えて痛めてしまうこともあります。 なので、介護ヘルパーの健康不安要因1番は腰の痛みです。 その他では、感染症に感染することがあります。 高齢者は免疫力が低下していることもあり、感染症にかかりやすい可能性が高いです。 そのため介護ヘルパーもそこからの2次感染の確率は高く、その点においても健康を害するリスクは高いです。 高齢者の健全な生活を守るヘルパーは、健康面においても離職しやすい環境であると言えます。   ヘルパーが働きたくなる職場とは 先の紹介で介護ヘルパーが、仕事を続けたくなくなる環境のご説明をしてきました。 ではヘルパーが働き続けたくなる職場とはどのような環境なのでしょうか。 将来を描きやすい職場づくり ヘルパーの仕事は、営業などのタスク達成型の仕事と違い、1日の仕事がルーティンワークに近いため、マンネリ化しやすく目標が見えにくい仕事です。 そのため、この仕事を続けても将来が見えないという理由で、他の業界に転職する人も多くいます。 福祉という特徴から、目標にコミットしてそれを達成するという環境づくりが難しい面もあるのです。 なので入職した職員が、この職場でどうなっていけるのかなど将来性を提示できる環境があれば職員の定着率も上がり、求人への応募も増えるのではないでしょうか。 介護現場ではヘルパー自身が未来を描きやすい環境整備が最も重要です。 この職場で働きたいと思える職場づくり 介護ヘルパーが、この職場で働きたいと思える職場作りも、応募してもらうために必要なことです。 全ての環境を他の職場よりベストにできればいいのですが、そう簡単にはいきません。 なので、ご自分の職場でここなら改善できて、うちの職場の魅力としてアピールできるであろうと思うところを見つけて宣伝しましょう。 最初の方でお伝えした、給料、福利厚生、職場の人間関係、研修環境、労働環境など、入職する人によって職場を選ぶ基準は様々です。 ご自身の事業所や職場で改善できる点を取り上げて求人倍率の向上に繋げるようにしましょう。 悩みを抱え込ませない職場づくり 退職で多い理由の人間関係の問題など、各職員が抱えている悩みを出来る限り抱え込ませない環境を作りましょう。 実際に働いてみて感じますが、職員間の対人関係の悩みは尽きません。 それぞれ違う人生を生きてきているわけですから、価値観の違いですれ違いや喧嘩をすることもあります。 個々人の問題であると言えばそれまでですが、その問題はできる限り目を瞑らずに環境改善に取り組むべきです。 例えば、上司の面談をある一定の期間で設定するとか、ストレスチェックシートを書いてもらうなどの対応もいいでしょう。 他にも、上司と職員間での日々のコミュニケーションも大事です。 何か問題などがあれば言いやすい環境づくりは、役職者の責務とも言えます。 悩みを抱え込ませないためにも、コミュニケーションによる運営者側の努力が必要になります。 仕事のオンとオフができる職場づくり 介護ヘルパーの仕事でよくあるのが、仕事のオンとオフが難しい環境であることがあります。 特に中間管理職の職員に多いですが、休みの日にも仕事の電話が鳴り止まず、なかなか休めない人もいます。 一般職員でも、休みの日に引き継ぎの件で確認の電話があったり、人員不足で夜勤明けからの日勤業務で昼まで働くなど過酷な環境があります。 ひどい時だと、日勤をしてから夜勤をするなどの勤務もあります。 一言で言えば過重労働なのです。 このような仕事の切り替えがしづらい環境を変えるために、職員が定着したくなる環境を作り運営していく必要があります。 まとめ 結論として求人倍率15倍の環境を作るためには、シンプルにこの職場にいたいと思える場所を作るのが最短です。 そのためには、給料、福利厚生、職場の人間関係、研修環境、労働環境これらの環境改善を行い、求人票状でも魅力的な職場を作る必要があります。 また、実際にヘルパー同士のコミュニケーションをしっかりと図り、働きやすい環境づくりが必要です。 簡単ではありませんが、1番の近道はコツコツ積み上げて作り上げていくことが大切です。 最後までお読みいただきましてありがとうございます。

  • 介護保険適応時の生活援助と身体介護の違いとは?やっていいことと悪いことを解説

    介護保険を使った訪問介護。 実は生活援助と身体介護には違いがあります。 今回はその点をご説明します。 生活援助って何? 介護の業界を知らない人に「生活援助と聞いて何を連想しますか?」と聞いたことがあります。 その方は「高齢者の出来ない買い物とか、掃除とかですか?」と答えていました。 それも生活援助の一つですが、細かく言うと他にもたくさんの生活援助の内容があるのです。 この章では生活援助の中身をご説明していきます。 生活援助でやってはいけないこと 生活援助とは身体介護以外のサービスで、ご利用者様が日常生活で行う活動内容を、代わりに訪問介護ヘルパーが行う支援のことを指します。 ここで注意点があります。 生活援助はあくまで「ご利用者様本人の生活」に必要なサービスに限定されるのが基本です。 そのため、生活援助で行っては行けないことがあります。 以下のようなサービスは生活援助のサービス外です。 ・ご利用者様が飼っているペットのゲージの掃除や散歩などの世話 ・ご利用者様以外の食事を作る(ご利用者様の家族など) ・ご利用者様本人が使わない部屋や、庭の掃除 ・イベント時に特別な料理を作る ・ご利用者様の家族の買い物 ・家電や家具などの移動や修理 ・車の運転代行 ・ご利用者様の家にある車の清掃 ・預貯金の引き出し代行、お金を扱うこと ・家にある植木や、草花の手入れ ・酒やタバコなど嗜好品の購入代行 ・室内の電球取り替え ・ご利用者様が家にいない状態での留守番サービス 訪問介護を実際に行うと正直なぜ行ってはダメなのか分からない内容もあります。 例えば電球の交換などは行なってもいいように感じます。 しかし、実際は禁止されているのです。 このように、生活援助と言ってもやっていいこと、やってはいけないことがあることを事前に利用者にお伝えしておかなくてはいけません。 その上で生活援助の内容をご説明していきます。 生活援助でやっていいこと 基本的な決まりとして、生活援助は「ご利用者様本人の生活」に必要なサービスに限定されるとお伝えしました。 この決まりを踏まえて今から生活援助の具体的な内容をお伝えしていきます。 買い物代行 このサービスはご利用者様が生活する上で必要な食材や日用品などをメインに、生活に必要なものだけをヘルパーが代わりに買い物代行するサービスになります。 掃除代行 このサービスは、ご利用者様の住環境の清潔な環境を整えるためのサービスです。 ご利用者様によっては、右半身麻痺だけど自分で歩ける人もいたりします。 そのような方は、掃除を自分で行えないことがあるので、ヘルパーが代わりにゴミを集めたり、床の掃除を行なったりします。 実際、1時間ほどでトイレ、居室、お風呂の掃除のみのサービスなどもあります。 洗濯代行 ご利用者様が使用した衣服や、生活の中で汚れたものなどを洗濯するサービスです。 過去に干したものを回収し、洗濯したものを干すまでがサービスの一つです。 場合によっては、訪問した時に汚れたシーツや身の回りのものがあれば、それも洗濯することもあります。 ベッドメイキング 訪問介護の仕事をしていると、訪問先のベッドメイキングの仕事もあります。 このサービスは、経験上あまり行なったことはありませんが、ごく稀にサービスとして行うことがあるので、覚えておいて損をすることはないと思います。 伺うお宅によって使う布団やシーツの種類なども違うので、臨機応変にサービスの行い方を学ぶことができます。 衣類の整理、被服の補修 ご利用者様の生活を守る上で、衣服の整理や被服の補修は重要になってきます。 認知症のご利用者様などは暑い真夏の季節でも厚手のダウンを着ようとする方もいます。 そのような方がいることもあるので、季節に合った衣服の準備や整理整頓、被服の補修はご利用者様の生活を守る上で重要になってきます。 薬の受け取り代行 ご利用者様の生活の中で重要になる薬の受け取り代行も生活援助の一つとして行います。 訪問介護をしていると、ほとんどのご利用者様が薬の内服をおこなっているので、ご利用者様によっては薬の受け取りを行うサービスを必要としている人もいます。 重要なので覚えておきましょう。 身体介護って何? この章では身体介護についてお伝えしていきます。 結論からお伝えすると、身体介護はご利用者様の体に触れてサービスを提供するものです。 具体的は以下の内容になります。 ・ご利用者様の体に直接触れて行う介助サービス ・ご利用者様の自立支援・重度化防止のためのサービス ・その他の専門的知識・技術を要する生活上のサービス (出典‘厚生労働省「「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」」の一部改正について」) ではさらに細かく分解するとどのようなサービスなのかをご説明していきます。 身体介護の種類と内容 では、身体介護はどのような種類と内容があるのか、詳しく解説していきます。 食事介助 身体介護の中でも代表的な食事介助ですが、主に食事をご自身で食べることが難しいご利用者様を対象に行う介助です。 食事介助は、見守りで大丈夫な場合と一部を誘導やお手伝いすれば大丈夫なもの、また全ての介助をしなければならないものと3パターンに分かれます。 他に食事形態の面でも違いがあり、ヘルパーはご利用者様がどの職形態で食べれるかも把握して、介助を行う必要があります。 介助方法もご利用者様によって違い、食具も変わります。 食事介助は、多岐に渡り注意しながら行う必要のある介助です。 排泄介助 排泄介助は、何パターンかに環境が分かれています。 ①トイレで排泄する場合 ご利用者様の身体状況で大きく変わりますが 職員1人で介助可能な方もいれば、職員2名で対応する必要のある方もいらっしゃいます。 ②ベッドなどで排泄介助をする場合 主にトイレで排泄介助困難なご利用者様が、この状態にあたります。 この場合職員1人で行うときと、2人で行うときがあります。 理由としては、ご利用者様の身体状況などで大きく変化するためです。 ベット上での排泄介助は必ず体位変換が必要となるのですが、その体位変換が職員1人で行えない時などは職員2名体制で行います。 更衣介助 主に起床した時と寝る前に行うことが多いです。 その他にもイベントの時や、入浴の前後などにも行います。 更衣介助は基本的には職員1人で対応できるご利用者様が多く、更衣の時は「脱健着患」を守り介助を行います。 「脱健着患」とは 健康な手や足から服を脱ぎ、患側(体の一部が麻痺してて動かない等)から服を着る事で ご利用者様の負担を少なくする基本となる介助ルールです。 入浴介助 もう一つ代表的な介助が入浴介助です。 これは全身浴と部分浴に分かれます。 全身浴とは、全身を洗い湯船に入浴していただく一般的な入浴介助で、部分浴は足のみ、もしくは手や頭のみを洗浄するといった、部分的な入浴のことを言います。 身体状況と目的別でこの全身浴と部分欲は分かれますが、この介助も技術力が必要な介助なのでしっかりと学び行う必要があります。 まとめ 今回は介護保険適応時の生活援助と身体介護の違いについてご紹介しました。 ・生活援助はご利用者様の体に触れることなく ご利用者様の身の回りの生活のお世話を生活援助という。・身体介護は、ご利用者様の体に触れて介助を行う。 この2つの違いは、ご利用者様の体に触れてサービスを提供するかどうかが、大きく違うものになってきます。 最後までお読み頂きましてありがとうございます。

  • やりがい満載!ヘルパーが利用者に行う一対一の支援の良いところとは?

    ヘルパーの仕事の醍醐味はなんと言ってもご利用者様との一対一の支援です! やりがい満載!ヘルパーとご利用者様の一対一の支援について、その魅力をお伝えしていきます。 介護は一対一の支援が1番 介護の仕事をする上で、ご利用者様にとっても職員にとっても1番ベストなのは一対一の支援です。 何がどのように良いのかを、実際の介護の現場を経験してきた体験も交えつつご説明していきます。 基本的に同じ人のケアを受けられる 訪問介護のヘルパー援助において一対一の支援の魅力は、ご利用者様にとって「基本的にいつも同じ人のケアを受けられる」と言う点です。 もちろんシフト制のため毎日同じと言うわけではありませんが、施設系の現場に比べると訪問介護の方が、ヘルパーが固定されていることが多いです。 例えば施設で行う介護ですと、ある一定の職員がシフト制で多数のご利用者様のケアにあたります。 これはご利用者様目線で言うと、いつも入浴や排泄介助の職員が変わるため、ご利用者様によっては落ち着かない人も出てくるのです。 特に、施設入所されている方でもご自身でしっかりと意思を伝える方もいらっしゃいます。 そのようなご利用者様ですと、特定の職員に対してケアされたくないとおっしゃる方もいらっしゃいます。 しかし施設型の介護環境ですと、そのような要望が人員的に困難なため、仕方なくケアを受けるご利用者様を多く見てきました。 なので、施設介護も訪問介護も経験した者から言えるのは、訪問介護のヘルパーの方がご利用者が安心してケアを受けれてもらえます。 しかも、訪問介護は基本的に一対一の支援がメインになります。 コミュニケーションを取るのも、ケアを行うのも目の前のご利用者様一名のみです。 ご利用者様にとって訪問介護の一対一の支援は、メンタル的にも安心できる環境なのです。 ご利用者様に丁寧なケアを提供できる 介護の仕事を長くやっていると、ご利用者様との関わりが多くなり、職員のご利用者様への対応が大雑把になってくる職員が出てきます。 この差は個人差はあるものの、多くの職員に見られる傾向です。 特に訪問介護と違い、特別養護老人ホームや、有料老人ホームなどの施設系の介護現場だと、特にこの傾向が強く見てとれます。 訪問介護の一対一の支援と違い、介護施設だと一対多数の所がほとんどなのです。 ケアにあたるその瞬間は一対一なのですが、排泄介助や入浴介助を行う際は制限時間内に順番のケアを行うため、あまり丁寧にケアを行えない時もあります。 これは介護施設の大きな問題で、人員不足により生じてしまう問題でもあります。 その点訪問介護の良いところとして挙げられるのが、ケアが一対一の支援であるということです。 一対一の支援だと、目の前のご利用者様に集中できます。 1人に対するケアのためサービス内容が決まっていて、そのサービスに集中できるからです。 施設介護だと一対多数の環境ですので、他のご利用者の見守りを行いながらケアをします。 そのため丁寧にケアできない環境も生まれてきてしまいます。 このようなことから訪問介護において一対一の支援ほど、ご利用者様と職員にとって良い環境はないのです。 ご利用者様のストレス軽減 訪問介護による一対一の支援は、ご利用者様にとってストレス軽減の効果もあります。 それは、限りなくご自身が安心する環境下でサービスを受けることができるからです。 詳しい内容を以下でご説明いたします。 一体一の支援はヘルパーにとっても良い 一対一の支援に特化した訪問介護の良いところは、ご利用者様の住みたい環境下でサービスを提供することができると言うところです。 介護業界で働いていると分かるのですが、施設で入居しているご利用者様より、訪問介護を活用し在宅介護で過ごされているご利用者様の方が、落ち着いていらっしゃる傾向があります。 不穏な様子を見せる人が少なく、全体に落ち着いている印象を私は持っています。 施設で仕事をしていると、「自分の家に帰りたい」と帰宅願望を訴える方を多く見てきました。 例えば夜中に居室から出てきて、「もう帰らなきゃ、帰って朝ごはん作らなきゃいけない」と訴えるご利用者様などがいらっしゃいます。 その方は認知症で、半年前に入居されていたのですが半年経った今でも夜中に同じ訴えを言い、落ち着かない夜を過ごされています。 職員としても、施設外へ出てしまう恐れもあるので見守りが欠かせません。 ご利用者様も、やりたいことを止められてストレスになりますし、職員としても他のご利用者様の対応などもあるので大変ではあります。 ご利用者様、職員ともに良い環境とは言えないのです。 その点、一対一の支援ができる訪問介護はご利用者様と職員双方のストレスを軽減できます。 いきなり知らないところに入居して、見慣れない景色や環境の中、生活しなければならないことを考えると誰でも不安になります。 なのでヘルパーの視点から言っても、環境をあまり変えずに一対一の支援を受けられる訪問介護はご利用者様と職員にとって良いことづくしであると言えます。 一対一の支援はヘルパーの実力アップ シンプルに、一対一の支援はヘルパーとしてのスキル全体の実力アップにつながります。 どう言う実力がつくのかと言う点についてご説明していきます。 臨機応変力がつく 一対一の支援がメインになる訪問介護では、基本的に職員1人に対してご利用者様1人です。 訪問介護は、特別養護老人ホームや有料老人ホームなどの施設介護との大きく異なり、なんでも1人で対応していかなくてはいけません。 実際に訪問介護の現場では、1人での介護が厳しいと感じるご利用者様は多くいました。 私の経験の中で1つ上げると、ある男性利用者が体が180㎝くらいある大きい方でした。 その方は体重が重い上に半身麻痺の症状をお持ちだった為、1人で介護をするには困難を伴いました。 もう1人いれば簡単に介助できるのですが、もちろん現場では自分1人です。 そのため、私は自身で様々な工夫をして介助を試み、そのご利用者様にも満足頂くことができました。 その時の経験により、その後大きな体格のご利用者様の介護でも、腰を痛めることもなく1人で介助できる技術を身につける事ができました。 訪問介護の一対一の支援で、介護現場での臨機応変さを学ぶ事ができ、それは大きなメリットと言えます。 訪問介護の現場では、ヘルパーとして得られることは非常に多いです。 いろいろな介護度の人から学べる 一対一の支援がメインである訪問介護は、多種多様なご利用者様と関わります。 認知症を発症しているご利用者様や、半身麻痺のご利用者様など、症状も様々に在宅で過ごされています。 その介護度は要支援1から要介護5まで幅広く、中には安否確認だけを必要とする要支援1の方もいれば、全介助で要介護5の寝たきりの一人暮らしの方もいました。 グループホームなどは別ですが、費用の安い特別養護老人ホームは要介護3以上でないと入所できません。 在宅では症状が幅広く様々な介護度のご利用者様を知ることができます。   まとめ ここでは、ヘルパーが利用者に行う一対一の支援の良いところについて、ご紹介してきました。 ①基本的に同じ人の支援(介助)を受けられる ②ご利用者様に丁寧なケアを提供できる ③ご利用者様のストレス軽減が可能 ④一対一の支援でヘルパーもストレス軽減になる ⑤ヘルパー介護力の臨機応変力がつく ⑥いろんな介護度のご利用者様を知ることができる 一対一の支援に特化した訪問介護の良いところは、限りなくご利用者様の住みたい環境下でサービスを提供することができると言うところです。 最後までお読みいただきましてありがとうございます。

  • 介護保険の上限を超過したときはどうすればよい?対処方法や自己負担を軽減する方法について解説

    介護保険制度では、要介護度によって受けられるサービス料の上限が決まっています。 ケアマネジャーは、決められた上限の範囲におさまるようにサービスを調整しなければなりません。 本記事では、介護保険の上限が決まっていることや、この上限を超過した場合の対策、自己負担を軽くする制度について解説します。 介護保険の上限は区分支給限度基準額で決まっている 介護保険のサービスは、訪問介護やショートステイ等のサービスごとに使用できる単位数が決められています。 そして、要介護度によって1ヶ月間に使用できる単位数の上限が決められており、それを区分支給限度基準額といいます。 区分支給限度基準額とは 区分支給限度基準額とは、要介護度ごとに設定された介護保険サービスの月の上限を単位数として設定しているものです。 介護保険はサービス毎に単位が決められており、ケアマネジャーは区分支給限度基準額を超えない範囲で、サービスを組み合わせて調整します。 利用者の自己負担は、所得によって1〜3割に設定されていますが、在宅介護を続けていくと、加齢やADLの低下にともない必要なサービス量は増えるものです。 サービス量が増えると、自己負担とともに介護保険の公的なお金の利用も増えていきます。 しかし、財源に限りがあるので上限が設けられているため、その範囲内でサービスを調整するよう求められています。 ○在宅サービスの区分支給限度額と自己負担額 区分 支給限度基準額(単位) 利用限度額 (円) 1割負担の時の 自己負担額(円) 要支援1 5,032 50,320 5,032 要支援2 10,531 105,310 10,531 要介護1 16,765 167,650 16,765 要介護2 19,705 197,050 19,705 要介護3 27,048 270,480 27,048 要介護4 30,938 309,380 30,938 要介護5 36,217 362,170 36,217 ※1割負担、1単位=10円の場合 参考:目黒区 区分支給限度額(介護保険から給付される一か月あたりの上限額) 区分支給限度額を超過すると全額自己負担になる 区分支給限度基準額を超過してしまった場合、超過した分の介護保険は利用できないので、全額自己負担で支払うことになります。 例えば、1割負担で要介護5の人が1ヶ月に400,000円分の介護保険サービスを利用したとします。 1割負担の支払額は40,000円ですが、限度額は36,217円なので、40,000−36,217の3,783円分超過してしまいます。 この場合、超過した3,783円は全額自己負担になりますので負担額は10倍の37,830円です。 全ての負担額の1割負担分の36,217円と全額自己負担分の37,830円を足して、74,047円がこの方の自己負担額になります。 急に負担が増えてしまいますので、ケアマネジャーは上限の範囲内でサービス調整する必要があります。 介護保険の上限を超えないようにするための対策の一つは、要介護度の区分変更を申請することです。 介護保険の上限を超えないようにするには区分変更を申請する 介護保険の上限を超えないようにするには区分変更申請が有効です。 要介護度が上がると区分支給限度基準額が上がりますので、利用できるサービスの量を増やせるからです。 例を挙げると以下のようになります。 要介護1の時は車椅子のレンタルができなかったが、要介護3になったらできるようになった。 要介護2では他のサービスとの兼ね合いでショートステイが1週間しか利用できなかったが、要介護4になったことで10日利用できるようになった。 特養入所を考えているが、要介護2の状態では入所できないので要介護3以上にしたい。 上記のように、区分支給限度基準額を超えてしまいそうな時は区分変更申請が有効です。 ケアマネジャーとして、利用者本人や家族の生活状況を見ながら提案してみるのもよいでしょう。 しかし、ご利用者様のご家族から「要介護度が上がると自己負担が増えてしまうので困る」という声が聞こえてくることもあるかもしれません。 次は自己負担を軽減させる制度について解説していきます。 介護保険の自己負担を軽くする制度 在宅介護を続ける上で、費用負担を軽くすることも大きなポイントです。 ここでは、自己負担を軽くする制度である「高額介護サービス費」「介護保険負担限度額認定」や、「介護保険料を滞納すると自己負担が増える」ことについて説明します。 高額介護サービス費 参考:厚生労働省 令和3年8月利用分から高額介護サービス費の負担限度額が見直されます 高額介護サービス費は、「1ヶ月に支払った利用者負担の合計が所得に応じた負担限度額を超えた時に、超えた分が払い戻される」制度です。 例えば、市町村民税が課税されていて課税所得が380万円未満の人は、上限額44,400円になっているので、1か月の費用が50,000円かかった場合後から6,000円が返還されます。 介護保険の給付対象外の食費や、全額自己負担分は対象にはなりません。 該当する時に、市町村から申請書が届きますので、必要事項を記載して役所へ提出します。 次回以降は自動で振り込まれますが、はじめに申請をしないともらえないので注意が必要です。 介護保険負担限度額認定 介護保険負担限度額認定は、ショートステイや特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院などの介護保険施設を利用する際の負担軽減対策です。 これらの施設の利用料金は、介護保険の自己負担分(1〜3割負担)と食費、居住費が主なものになります。 このうち、食費と居住費が住民税の課税状況や年金額、預貯金などによって段階的に減額されます。 施設入所の場合は通常15〜16万円かかる利用料金が半額程度になる場合もあります。 要件が複雑ですので、役所の介護保険窓口で対象になるのかどうか確認してみてはいかがでしょうか。 介護保険料の滞納 こちらは自己負担を軽くするというよりは、負担を重くしないようにするための注意点です。 40歳から納付義務のある介護保険料は、健康保険料とあわせて納付します。 年金を受給するようになると、特別徴収といって年金から天引きされるのが基本です。 ただし、年金額が年間18万円未満だったり年度途中で65歳になったり、引っ越したりすると普通徴収になり、納付書や口座振替で支払うことになります。 介護保険料を滞納すると、期間によって以下のようなペナルティが課せられるので、注意しましょう。 滞納期間 対応 内容 1年以上 介護保険給付の支払い方法の変更(償還払い化) 通常1〜3割負担のところ、一旦10割支払い、その後申請をして7〜9割分の払い戻しを受ける。 1年6か月以上 介護保険給付の一時差し止め 一旦10割支払った後、7〜9割の払い戻しが差し止められる。介護保険料を支払えば払い戻されるが、支払わないと差し止め分から差し引かれる場合がある。 2年以上 介護保険給付の減額 時効により介護保険料が納付できなくなる。 また、通常1〜3割の自己負担が3〜4割負担になり、高額介護サービス費の対象外になる。 介護保険料を滞納すると上記のようなペナルティが課され、自己負担が重くなります。 滞納すると市町村から督促状や催告書が送られてきますので、速やかに納付しましょう。 まとめ いかがでしたでしょうか。 本記事では、介護保険の上限や、上限を超過した場合の対策と、自己負担を軽くする制度について解説しました。 介護保険の上限は区分支給限度基準額で決まっている 区分支給限度基準額を超過すると、超過した分は全額自己負担になる 区分支給限度基準額を超えないようにするには要介護度の区分変更申請が有効 介護保険の自己負担を軽減させるには、高額介護サービス費や介護保険負担限度額認定などの制度を活用する 介護保険料を滞納すると自己負担が重くなる場合がある 介護保険の制度は複雑で、利用者やその家族が自ら理解して制度を活用することは現実的ではありません。 ケアマネジャーには利用者やその家族が安心してサービスを受けられるよう、制度をうまく活用し導く役割が求められています。 最後までお読みいただきありがとうございました。

  • 介護業務を楽にする!チームで取り組むIT連携の重要さを解説

    厚生労働省は、介護現場のIT化を進め、根拠を基にした科学的介護を推奨しています。 介護保険施設で働くスタッフの中にも、チームでIT連携に取り組み、業務を効率化したいと感じている人は多いのではないでしょうか。 業務が効率化できれば人手不足や残業が減少し、直接利用者に関わる時間が増えることにより、ケアの質の向上につながります。 本記事では、介護業務が楽になる、チームで取り組むIT連携について説明します。 介護業務とIT連携の現状 ITとは、「情報技術」のことで、コンピューターやデータ通信に関する技術の総称です。 介護保険施設の管轄である厚生労働省は、科学的介護を推奨し、介護現場におけるIT化を進めています。 ITを活用し業務を効率化することで、本来の介護業務に集中できるよう働きかけており、その為の補助金もだしています。 また、ITを活用しビッグデータを収集することで、根拠に基づく介護サービスを提供できる環境作りを目指しています。 とはいえ業界全体のIT化はなかなか進んでいないのが現状です。 記録や行政への提出書類、契約関係の書類等、介護業界はとにかく紙ベースの仕事が多くなっています。 新しくITを導入しようにも、コストがかかりますし、従来のやり方に慣れているスタッフの抵抗感もあります。 ITに詳しいスタッフや、指導できるスタッフがいる施設とそうでない施設で差が大きくなっているのが現状です。 しかし、ITを活用できれば大きな業務改善につながります。 情報共有をスムーズにするために介護業務×IT連携が効率的 介護業務とITは非常に相性がよいとされています。 厚生労働省が行った令和2年度 ICT導入支援事業 導入効果報告まとめ によると、ITを導入によって間接業務が見直されたり、業務管理が効率化されたと感じている事業所が約70%あることが分かりました。 引用:令和2年度 ICT導入支援事業 導入効果報告まとめ | 厚生労働省 介護業務にITを導入すると情報共有がスムーズになり、以下のような効果があります。 ・間接業務の時間が削減される ・業務管理が効率化される ・単純ミスが減る ・研修等の動画コンテンツを活用しやすくなる ・人手不足の解消につながる 一つずつ説明していきます。 間接業務の時間が削減される 前述の厚生労働省の調査によると、約70%の事業所がITを活用することで、間接業務の削減につながったと感じています。 利用者に対する直接的なケアにかかる労力を削減するのは難しいものです。 しかし、利用者の安全で安楽な生活を守る上でも直接的なケアには時間をかけるべきです。 ITを活用することで、記録にかける時間の削減や内容を充実なものにし、ムダな文書をなくしたり、前回作成したデータを活用することができます。 すると、時間を削減することができるため、直接利用者に関わらない部分の業務スピードを上げることが可能です。 業務管理が効率化される 事業所内外との情報共有が円滑にする、シフト管理を効率化できる、重複する記録を廃止したりする等して、職員一人当たり一日30分から1時間削減することが可能です。 一日3人勤務していたら、1.5時間から3時間が確保できることになります。 これだけ時間が確保できたら、直接利用者に関わる時間も自然と増えていきます。 単純ミスが減る 業務のIT化が進むと、紙に書いていた記録をスマホやタブレット等を使って行うことになるため、文字を書くことなく記録業務が完了します。 記録時間を削減するとともに清書や転記作業がなくなり、同時に他部署との情報共有も可能です。 ・紙に書く ・PCで入力 ・他部署へ報告 これらの工程が端末への入力のみになるので、この間に起こるヒューマンエラーはなくなります。 うまくITを活用できれば、業務が簡略化されると同時に単純なミスが減ります。 研修等の動画コンテンツを活用しやすくなる 介護現場はシフト制のことが多く、スタッフが一つの場所に集まって行う研修は、時間設定が難しい場合があります。 今は新型コロナウィルス対策で集合研修を控えている事業所も多いのではないでしょうか。 最近ではYou Tubeで動画研修を行ったり、Zoom等を活用してオンラインで講義を行う方法が広まっています。 現場で行うOJT以外にも、動画コンテンツを活用した研修を取り入れることで、法定研修や職員育成につなげることができます。 人手不足の解消につながる IT化が進むと時間が生まれます。 それまで2時間かかっていたことが半分の1時間でできるようになります。 そうすることで、フロアに一人多く配置できる時間帯もできるでしょう。 普段できない後回しにしていた業務に手が届くようになります。 また、業務にITを取り入れていることをうまく発信できれば、就職や転職活動をしている人に良いアピールが可能です。 結果的にスタッフが集まりやすい事業所になっていきます。 このように、介護業務とITの相性はとても良く、情報共有がスムーズになることで、業務の効率化がすすみ、時間が生まれ、ケアの質を向上することに繋がります。 ただし、個人情報を取り扱うことになるので、人まちがいなどの入力ミスや業務用携帯電話、USBメモリなどの紛失による情報漏洩には十分注意しましょう。 介護業務×IT連携の導入例 実際に介護現場に導入されているIT機器にはどのようなものがあるのでしょうか。 代表的なものには以下のものがあります。 ・インカム ・見守り支援システム ・ケア記録システム ・SNSを活用した一括メッセージ送信 ・共有フォルダの活用 それぞれ一つずつ説明していきます。 インカム インカムは、マイク付きのイヤホンやヘッドセットを装着し、相互に通信できる無線機のことです。 複数のスタッフ間で一斉に情報伝達できるのが特徴です。 業務連絡やセンサー作動時に誰が対応するか等、他の業務をしながら相談や指示出しができます。 コストや衛生面、介助中に機器が邪魔になる、自分が望んでいない情報も聴こえてしまう等のデメリットはありますが、補助金の対象になることもあり、介護現場での導入が進んでいます。 見守り支援システム 慢性的な人手不足の介護現場で、見守り支援システムは利用者の状態を察知し、スタッフをサポートしてくれます。 利用者の居室やベッドにカメラやセンサーを設置し、呼吸数や心拍数、眠りの深さや体の動きを可視化することが可能です。 異常や状態に変化のある場合はナースコールやアラームが作動しスタッフに知らせてくれます。 巡回の頻度を減らすことができるのでスタッフの心身の負担軽減にも繋がります。 利用者の動きをリアルタイムで確認できるので事故の防止にも繋がるでしょう。 システムを導入していることが施設の売りの一つとなり、スタッフや利用者の募集に繋がる可能性もあります。 ですが、過度にシステムに頼りすぎると「監視」という形で利用者のプライバシーを侵害することにもなりかねません。 見守り支援システムができるのはあくまで利用者の動きを察知するところまでです。 システムから得た情報を使うのは人間であることに変わりはありません。 転倒リスクのある利用者の動きをセンサーが察知したら、そこに駆けつけるのは人間のスタッフです。 機械を過信しすぎず、上手に活用することが大切です。 ケア記録システム 昔は日々の記録を紙に書いて綴っていましたが、現在ではPC入力が主流です。 さらに近年はスマホと連動し、ケアをしたその場でケア記録を入力することができます。。 利用者の様子やバイタルの測定等の記録をスマホやタブレットから入力すれば、記録時間が短縮され、多職種との情報共有をその場で完結します。 紙へのプリントも不要です。 機器によっては音声入力も可能なため、さらに入力時間が短縮されます。 外出先からも入力できるので訪問先から事業所に戻って記録をすることもなくなります。 検索機能を活用すれば過去の記録を探す時間も大幅削減できるでしょう。 上記のように介護業務を効率化するIT機器には多くのものがありますが、前提としてWi-Fi環境の整備は必須です。 機器の購入やスマホやタブレット等の端末、専用ソフトの整備も必要なので、うまく補助金を活用し負担がかかりすぎないよう工夫しながら導入できるとよいでしょう。 SNSを活用した一括メッセージ送信 スタッフや利用者家族へ一斉に連絡事項を伝えたい時にSNSを活用すると、一括でメッセージを送信することができます。 以前は1件1件電話をしたり、手紙を送ったり、スタッフには連絡網を活用したりと、手間と時間がかかる対応をしていました。 事前に登録しておけば、LINEでメッセージを全体発信することが可能で、公式アカウントを活用すれば家族の個人アカウントが他者へ漏れることもありません。 家族懇談会や施設の会議にZOOMを活用するのもメッセージの発信になります。 内部研修にYoutubeを活用するのも良いでしょう。 導入時に勉強する必要はありますが、効果は絶大なので、検討してみるのはいかがでしょうか。 共有フォルダの活用 他部署で同じ書式を使用するときは、共有フォルダを活用すると効果があります。 例えば委員会の議事録や事故報告書などです。 共有フォルダに保管しておけば、他部署が作成した議事録や報告書もパソコン上で確認することができるようになるので、確認したい時にすぐに確認できるようになります。 各フロアや医務、栄養士とそれぞれの部署のパソコンのデスクトップに保管していると、書式が変わったのに反映されていないなんてことが起きてしまいます。 施設のサーバーに保管され、データを失うリスクも少なくなるので、共有フォルダを活用することも効率化の一つとなります。 まとめ いかがでしたでしょうか。 介護業務とITが連携することで業務が効率化できることを説明してきました。 介護業務×IT連携が効率的な理由は 情報共有がスムーズになる ・間接業務の時間が削減される ・業務管理が効率化される ・単純ミスが減る ・研修等の動画コンテンツを活用しやすくなる ・人手不足の解消につながる 介護業務×IT連携の導入例として ・インカム ・見守り支援システム ・ケア記録システムなど ・SNSを活用した一括メッセージ送信 ・共有フォルダの活用 について説明しました。 IT機器を導入する目的は情報共有をスムーズに行い業務を効率化することで時間を生み、ケアの質を向上させることです。 個人情報の取り扱いとのバランスに留意し、それぞれの事業所にあったIT機器を導入するとよいでしょう。 最後までお読みいただきありがとうございました。

  • 監視カメラを介護現場で活用する目的とは?問題点と活用方法等を解説!

    最近、介護現場での犯罪や暴力行為等が報道されることが増えています。 客観的な証拠を残すという目的で、監視カメラを導入している施設も多くなってきています。 監視カメラの設置を希望しているのは、施設運営する事業者と大切な家族を施設へ預けている利用者家族の双方です。 監視カメラを活用すると、防犯や虐待に対する抑止力、事故の検証等の面で、速やかかつ明確な事実確認ができ、スタッフや利用者を守ることにもつながります。 ですが、常に監視されているスタッフや利用者の心理的な負担は大きいものです。 本記事では、介護現場で上手に監視カメラを活用する方法と、今後の監視カメラの使用目的について解説します。 介護現場に監視カメラを導入する目的 Wikipediaによると、監視カメラとは「何らかの目的で何らかの対象を監視するためのビデオカメラである」とのことです。 起きた出来事を映像として記録する監視カメラですが、介護現場に設置する目的は以下のようになります。 ・防犯 ・虐待等、スタッフの言動に対する抑止力 ・事故発生時の検証 以下で一つずつ説明していきます。 防犯 主に施設の正面玄関やスタッフ専用の出入り口等、外部から施設内への入口部分に設置します。 外部からの予期せぬ侵入者の証拠が残るため、障害者施設で起きた外部侵入者による殺傷事件以降、需要が高まっています。 他には、利用者の家族が帰った時刻を確認したり、近隣で事件が起きた時に警察からデータ提供を求められたりする場合もあります。 虐待等、スタッフの言動に対する抑止力 スタッフの不適切な言動や金品の紛失について報道されるケースがあります。 起きてはならないことですが、今後も起きてしまう可能性はゼロではありません。 事業所としても、まさか自施設で起こるとは思いたくありませんが、リスク管理としてカメラを設置する選択肢は有効です。 食堂や廊下、場合によっては居室にカメラを設置し普段から映像を録画しておくことで、何か起きた際に確認できる環境を作ります。 カメラがあるというだけで抑止力になりますし、業務改善としてスタッフの動き方を考える上でも有効活用できます。 事故発生時の検証 転倒等の事故が起きた時、転倒した瞬間を見ていないケースが多く、日ごろの利用者の行動や発見時の状況から「おそらくこのように転んでしまったのだろう」と原因を推測します。 食堂や廊下にカメラが設置してあれば、事故が起きた時の映像がそのまま残ります。 何かにぶつかったのか、体の向きを変えたときにバランスを崩したのか、頭を打っていないか等の原因や状況が誰が見ても明らかです。 初期対応の応急処置や受診が必要かどうかの判断がスムーズになり、受診先でも医師への正確な情報提供が可能になります。 再発防止策を検討する際も、映像を見ながら検討することでより現実的な対策を出せるでしょう。 監視カメラを設置する目的は以上のようなものがありますが、導入するには主に心理面の障壁もありますので、次の項目で説明していきます。 介護現場に監視カメラを導入する時の問題点 介護現場への監視カメラの導入を進めるにあたり、一番問題となるのはプライバシーの侵害にあたることです。 施設とは言え利用者にとっては生活の場です。 生活の場を監視して管理するというイメージがあり、道徳的にいかがなものかと考える方も多いのではないでしょうか。 生活する利用者からみてもカメラに監視されて生活するのは息苦しいものです。 まじめに働いているスタッフも、自分の些細な言動が逐一チェックされるのは働きにくいでしょう。 「信頼されていない」と感じるスタッフがでてくる可能性もあります。 導入すれば活躍の場面が多い監視カメラですが、心理面の障壁はモチベーションが低下する一因になることもあります。 スタッフや利用者、利用者の家族に向けて導入の目的を明確にし、根気よく説明することが求められます。 次は監視カメラを上手に活用する方法について説明していきます。 介護現場で監視カメラを活用する方法 介護現場で監視カメラを活用するために押さえておきたいポイントが5つあります。 ・目的を明確にする ・ルールを作る ・設置場所を検討する ・家族や利用者への説明 ・スタッフへの説明 以下で一つずつ説明していきます。 目的を明確にする 施設としてなぜ監視カメラを設置するのか、どのように活用するのかを明確にしましょう。 前述の防犯、虐待予防、事故検証が主なものになります。 自身の施設にとっての目的を明確にし、利用者やその家族、スタッフの理解を得られるようにしておきます。 傷害事件や虐待について大きく報道される機会もあるので、監視カメラを設置することが自分たちを守ることにつながることを、本人、ご家族、スタッフに説明し相互理解を得る努力をすることが大切です。 ルールを作る 次のポイントは「録画した映像をどのように活用するか」です。 録画した映像は個人情報の為、開示の仕方を決めておく必要があります。 監視カメラを設置した後は基本的には常に録画されている状況です。 家族から「普段の生活の場面を見たい」と映像の開示を求められても安易に見せるものではありません。 行政や警察からの依頼、事故発生時の検証、その他トラブル発生時の確認等、映像を使用する場面をあらかじめ決めておき、文書化しておく必要があります。 設置場所を検討する 設置場所を検討し決めることも必要です。 食堂、廊下、玄関等の共有部分への設置にさほど悩むことはないでしょう。 一番悩ましいのは居室をどうするかです。 居室はスタッフと利用者が密室で1対1になる場なので虐待や不適切なケアが起きやすい環境でもあります。 転倒リスクの高い利用者には行動の把握のためにできれば設置したいところではありますが、プライバシーの侵害になることが心配です。 居室に設置する場合はよく話し合い、どのような目的でどのように設置するのか検討することが大切です。 家族や利用者への説明 安全を守る為に使用する監視カメラですが、一人の人の行動を常に見られる状況であることは間違いありません。 入所する際に、施設の方針として監視カメラを設置していることや、設置している場所や録画している映像の活用方法について説明しましょう。 スタッフへの説明 監視カメラを設置する際は、スタッフへの説明も必要です。 監視することが目的ではなく、事故発生時の検証や虐待を防止することで、自分たちを守ることにつながることを理解してもらう必要があるからです。 施設に過失のない転倒事故が起きた時に、家族から「施設の対応が悪い」等の事実でないクレームを言われてしまっては、関わったスタッフはショックを受けてしまいます。 映像が残っていれば施設は毅然と対応することができます。 監視カメラを設置する目的を利用者や家族だけではなく、スタッフにもしっかり説明することが大切です。 今後の監視カメラの使用目的は「監視」から「記録」へ これまでの監視カメラは、文字通り「監視」が目的でした。 施設にどんな人が出入りしたか、スタッフの振る舞いは適切だったかなどを確認するために監視カメラを導入していたのです。 しかし、権利者意識の強い利用者や家族が増えている昨今、理不尽な要求を強いられたり、事故に対して施設に責任を押し付けられるような場面も想定しなければなりません。 今は一つの転倒事故が裁判にまで発展する時代です。 もちろん、施設側に過失のある事故については相応の対応をする必要があります。 ですが、転倒した場面が記録されていることで、訴訟リスクを回避できる場合もあるでしょう。 「監視」だけでなく「記録」のためにカメラを使用していくことを考える時期がやってきています。 まとめ いかがでしたでしょうか。 介護現場に監視カメラを導入する目的や心理的な障壁、活用する方法について解説しました。 監視カメラを導入する目的は、 ・防犯 ・虐待等、スタッフの言動に対する抑止力 ・事故発生時の検証 等 監視カメラの活用方法については、 ・目的を明確にする ・ルールを作る ・設置場所を検討する ・家族や利用者への説明 ・スタッフへの説明 監視カメラの今後について、 ・使用目的が「監視」から「記録」へ変わっていく ・転倒事故などの映像が適切に保管されると訴訟などのリスクを軽減させられる場合もある 現在は車にもドライブレコーダーがついている時代です。 プライバシーやスタッフの心理的な負担には最大限の配慮をしつつ、上手に監視カメラを活用することで、利用者の安心できる生活や、スタッフの働く環境を整備することができます。 最後までお読みいただきありがとうございます。

  • 訪問介護のあり方とは?「自立支援型」とはどのようなことを指すのかを解説!

    訪問介護とは、要介護度の利用者が日常生活の上で困難とする動作や作業をヘルパーが訪問し介護を行うサービスです。 今回は、訪問介護の「自立支援型」について紹介します。 訪問介護のあり方 訪問介護はなぜ存在しているのか、その理由についてご紹介します。 なぜ訪問してまで介護をするの? 昨今、団塊の世代が75歳(後期高齢者)を迎える「2025年問題」がすぐそこまで迫ってきています。 まだまだ元気で若々しい高齢者も増えている反面、介護を必要とする高齢者も増加してきているのが現状です。 「子供達に迷惑をかけない」「事前に調べてサービスに興味を持った」等、様々な理由で施設入所を希望される方もいます。 しかし、多くの人は「できるだけ長く住み慣れた自宅で過ごしたい」という思いが強いようです。 家族のいる高齢者は、一日も長く一緒に家で過ごす事を、独居となった高齢者は思い出が詰まった家でゆっくり過ごしたいと其々の理由はある様です。 しかし、在宅生活に支障を来す様になってはそんな思いも叶えられません。 また、最初にも述べましたが「2025年問題」は少子高齢化が進み、国民の4人に1人が75歳以上となる事で様々な影響を及ぼすと言われています。 支えて欲しい人が増える一方、反比例する様に支える人が居なくなるという事は、日常生活に困難があっても支えてくれる人が少ない利用者側と、支えたくても人数も支援も負担も賄い切れない介護側とのパワーバランスが崩れて共倒れに成りかねないことを意味しているのです。 要介護認定を受けたとしても、住み慣れた自宅で日常生活上必要な動作や行為が少しでも自身で行える様になれたら、それは身体的にも日常生活を送る上でも生活の質を維持向上する上でも意義のあるものであり差し迫った問題に対し解答の糸口へと繋がります。 介護が必要になった方たちの生活の質を維持しながら、在宅で過ごせるようにするために訪問介護があるのです。   昔は「お世話型」今は? 介護保険制度が始まったのは2000年(平成12年)4月からです。 介護保険制度は「高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組み=介護保険」という形でスタートしています。 現在の介護保険も、「高齢者が尊厳を保ちながら暮らし続けることができる社会の実現を目指す」とされていて、高齢者も皆と同じ様に其々が地域で元気に自立し暮らしていく事ができる共存社会を目指しています。 基本的に介護保険は「高齢者の自立支援」を始めから謳っているのですが、昔から ・お年寄りは大切に ・お年寄りの面倒は若い者が看るもの ・子が親の老後を看るのは当たり前 という思考や伝承の傾向が根強くあります。 そのためか、訪問介護サービスもどちらかと言えば「お世話型」と呼ばれるサービスを行いがちでした。 事実介護認定を受けて訪問介護サービスを受ける事になった利用者は、生活を送る上でできない事をヘルパーにしてもらう=日常生活が送れる様になるというプランでヘルパーによるサービスを受けていた所が多かったのではないでしょうか? 上記の図の様に、要介護1も要介護5も同じようにできない事をしてもらっているばかりでは、どんどんできない事が増えていくだけです。 そして、介護度が増すに連れてサービスの内容も日数も増えていくという緩やかな悪循環に陥ります。 家族の形は変わっていきます。 大家族から核家族へ、子供も兄弟姉妹から一人っ子へ、結婚して家庭に入っても夫婦共働きが増え、隣近所が誰か分からないというようにご近所同士の繋がりも薄くなりました。 そのため、近年では孤立化が目立つようになっています。 そんな現実の中、上記にも述べた様な高齢者に対する昔からの思考・伝承が特に介護では反映されている事態が多い為、 「お年寄りにあれこれさせてはいけない=お世話する、面倒を看るのが介護だ」 という認識を世間一般では当然とされているのが現状です。 介護サービスも例に洩れず、「お世話型」という形で行われていたのも少なくはありません。 ここで間違えないで頂きたいのは、決してこの思考・伝承が悪いという事ではないということです。 古来より守り継がれてきた先駆者、功労者を大切にするという考えは大切であり、素晴らしい事です。 しかし、何でも大切にした結果「まだできる」事を「できない」事に変えてはいけないという事がとても重要です。 腰痛により重い物があまり持てず、歩行もやや不安定な利用者が訪問介護で生活援助を利用したとします。 お世話型のサービスでは、ヘルパーによる掃除機での掃除や洗濯物の取り込み整理整頓が行われた場合は利用者はただそのサービスをしてもらうのみです。 この場合、ヘルパーによって「清潔が維持できる」「安全に過ごす事ができる」「生活環境が保たれる」のみの授受一択となってしまいます。 例えば、利用者が軽い物が持てた場合は、柄の長い箒を使用して掃くことをお願います。 洗濯物の取り込みはヘルパーが行い、利用者はヘルパー見守りの下テーブルで洗濯物を畳む 整理整頓はヘルパーと共に行ってもらいます。 このように利用者も出来得る範囲で行動し今後に繋がる形にすれば、 「共に行う事で清潔が維持できる」 「共に行い確認する事で安全に過ごす事ができる」 「共に行う事で生活環境が保たれる」 という自立支援に向けたサービスの提供となります。 利用者の中には、何でもしてもらいたい人もいるかもしれません。 訪問介護サービスを契約して利用しているのだから、ヘルパーにはできない事を何でもしてもらいたいという気持ちは分かります。 しかし、ヘルパーは家政婦ではありません。 この先地域で暮らしていく上で、本当に困った事を地域社会全体で支え合い、日常生活を維持していく為の介護保険である事を今一度見直す必要があるのではないでしょうか。 その人なりの自立した生活を 訪問介護サービスのケアプランに謳われる「残存機能の維持」は、身体介護にも生活援助にも該当し、自立した生活を送る為に最低限必要とされる能力です。 介護度も人様々であり、生活環境や身体状況や経済状況、現症歴によって、できる事とできない事には差があります。 ケアプランに沿った訪問介護サービスを提供する事は当然ですが、ヘルパーは誰よりも利用者の近くで対応する為、利用者の心身の変化に気付きやすいものです。 現在の介護保険は自立支援型であり、 「その人が生活する上で行える動作をどうすれば継続していけるか?」 「プランでは共に行う作業であっても今の身体状況ではちょっと無理なのでは?」 「この部分はヘルパーが対応する形だけれど、一緒に行う能力があるのでは?」 等、訪問介護に入ったヘルパーからの報告でプランが見直され変わっていく事も珍しくはありません。 例えば、生活援助で夕食の下ごしらえをヘルパーが行うというプランがあるとします。 ケアプランに沿った訪問介護計画が立てられ、ヘルパーは計画通りに訪問介護に入ります。 長時間の立位が困難で台所に立つ事が難しいけれど、最後の味付けは自分でしたいという希望があれば、下ごしらえはヘルパーが行います。 しかし、実はイスに座って玉ねぎの皮を剥くやピューラーで根菜の側を剥くといった作業ができると 気付いた場合にヘルパーの取るべき対応はどうすべきなのでしょうか? ①ケアプラン通りに、そのまま調理の下ごしらえをヘルパーが行い、最後の味付けは利用者にしてもらう。 ②サービスの度にその場に応じて利用者ができる調理の下ごしらえ(イスに座っての野菜の皮剥き等)をしてもらい、調理を完成させる。 一応両方とも「形式上」は自立支援型の訪問介護サービスではあります。 不正解ではないのですが、①はほぼ「生活援助の調理」です。 ケアプラン通り、訪問介護計画書通りにサービスを遂行しているだけであり、別に悪い訳ではありません。 しかし、最後の味付け以外にも利用者のできる作業があると気付いていても、プランは下ごしらえがヘルパー対応となっています。 ヘルパーがプラン通りに料理を作ってしまうのは、自立を促すという自分でできる事を少しずつでも広げて利用者のできる能力を維持するのには弱いかもしれません。 ②は自立支援型の訪問介護に見えますが、一点注意すべき所があります。 「サービスの度にその場に応じて利用者ができる調理の下ごしらえ」がきちんとサービス提供責任者やケアマネージャー、本人や家族に伝えられているはずです。 それに応じて担当者会議が行われケアプランの変更が為され了承されています。 ヘルパーが利用者の状態に気付いて自立支援に向けたサービスを行うには、ヘルパー単独の意思決定で勝手にサービスを変える事はできません。 きちんとサービスの内容変更の手順を踏まえた上で提供すれば、「生活援助で夕食の下ごしらえをヘルパーが行うというプラン」は「できる範囲での下ごしらえを共に行いながら調理する見守り的援助の身体介護」となります。 サービス単価は若干上がりますが、利用者の今後動ける可動域は広がりその人なりの自立した日常生活を過ごす事ができる未来へと繋がる可能性があります。 事前のモニタリングやアセスメントだけでは分からないことは多々あり、ヘルパーがサービスに入って初めて気付く事も少なくはありません。 テンプレート通りに介護サービスは行えませんし、また利用者其々に応じた自立の形があります。 訪問介護はその時の状況や状態によって日々変化していき、自立の形も並行して良くも悪くも変化していくという事を忘れないようにしましょう。 まとめ 今回は訪問介護における自立支援型のサービスについて紹介しました。 ・高齢者の現状と2025年に迎える問題は、介護を求める人と介護を行う人とのバランスが崩れて共倒れの危険性がある。 ・高齢者であっても自分でできる事が増えれば、これまで通り在宅での生活を維持でき、懸念される介護の担い手不足による共倒れを回避できるきっかけとなる。 ・介護保険は2000年4月にスタートし、高齢者を社会全体で支え合う仕組みとして始まった。 ・現在は、高齢者も自立して日常生活を送れる様に地域と共存して暮らしていく形を目指しており、訪問介護もお世話型から自立支援型へ移行している。 ・お年寄りを大切にするという考えは大切だが、 何でも全てお世話をしてしまうのではなく、日常生活でできない事を支えて援助しできる事はそのままできるように維持を図る事が自立支援型の訪問介護サービスである。 ・訪問介護は在宅での日常生活を維持していく為の介護保険サービスであり、利用者の変化に気付いたヘルパーはケアマネージャーやサービス提供責任者、利用者、その家族等とよく確認し話し合い、利用者の状態や状況に応じた訪問介護を計画に則り提供していく必要がある。 訪問介護を利用する側もサービスを提供するヘルパーも、長年携わってくるとその利用者の状況や状態がよく分かってくるものです。 情が沸く事もあるかもしれませんが、その介護は本当にその人の為になるのか?ケアプランに沿ったサービスなのか?あの人はああしてくれた、こうしてくれたの言葉に揺らいでお世話型のサービスを提供してはいないか?等ヘルパーの判断が試される事もあります。 最初にも述べましたが、2025年問題はもうすぐそこにまで迫っています。 75歳以上の後期高齢者が爆発的に増えるまであと数年です。 高齢者であっても、特別な事をせずに、その人がその人なりに日々の生活を普段通りに送れる事が幸せであると考え、訪問介護サービスが行われる事を願います。  

  • 訪問介護も新しいカタチへ。時代に合わせた変化への対応と結果をご紹介!

    訪問介護利用者の日常生活を取り巻く環境は、日々変化しています。 今回は、在宅生活に対応したデジタル化やAIは、訪問介護にどう取り入れられるのかを紹介します。 多種多様化、ヘルパーさんも随時対応中 訪問介護には色々な「サービス行為ごとの区分」があります。 利用者の身体に纏わる介助を行う身体介護や、日常生活に纏わる援助を行う生活援助、病院受診等の対応に纏わる介助を行う通院等乗降介助などです。 訪問介護の名の通り、ヘルパーが利用者宅へ訪問し介護や援助を行うことですが、ここ最近では日々の生活にデジタル化やAI化したものは普通に浸透しており、介護保険を利用する利用者も例外ではありません。 訪問介護では、サービスの基準となる「老計第10号」という法令があり、身体介護や生活援助のサービスの基本例が記載されています。 訪問介護に関わるヘルパーや職員には、必ず目にするサービスの教科書の様なものとイメージしたら良いでしょう。 大まかに言えば、介護の基本中の基本であるサービス事例が記されているのですが、ここ数年でサービス対応について幾分内容が変わってきたものがあります。 買い物対応、色々な「カタチ」 訪問介護サービスの一つ生活援助には、買い物・薬の受け取りというものがあり、老計第10号にもサービスの内容例が記されています。 2-6 買い物・薬の受け取り 〇日常品等の買い物(内容の確認、品物・釣り銭の確認を含む) 〇薬の受け取り  利用者の日常品の買い物に対する介助をこの例を元に計画するのですが、通常は食料品や生活雑貨品を購入する為に利用者と同行するパターンと、代行するパターンがあります。 <利用者同行パターン> ・買い物の為の移動手段の確認 ・利用店舗の確認 ・店舗へ移動 ・買い物、レジにて支払い、釣銭預かり、購入品収納 ・自宅へ移動 ・商品の確認、購入金額と釣銭の確認、商品収納 <ヘルパー代行パターン> ・購入品リスト、金額の確認 ・利用店舗の確認 ・ヘルパーによる買い物代行 (レジ支払い、釣銭預かり、購入品収納) ・利用者宅にて商品の確認、購入金額と釣銭の確認、商品収納 今までは、同行や代行においても利用者とお金の確認をし、店舗でレジにて支払いをし、お釣りがあれば受け取り、最後は利用者と商品や購入金額、釣銭を確認していました。 現在もその形で行っているケースもありますが、近年買い物の形が変わりつつあり、新たなパターンでの対応を求められる事もあります。 実際に訪問介護サービスの生活援助の計画に「買い物援助」がありますが、ここ最近ではこんな事例もあります。 ①宅配ネット注文やネットスーパーで購入 県外に住む長女より「久しぶりに帰省して利用者(母)に会った際に前みたいに歩けない、買い物にも行けなくなった」と言われました。 「これまでは調理と掃除片付けをお願いしていたけど、ヘルパーさんに買い物もお願いしたい。」 との相談があり、始まった買い物援助です。 パソコンの操作方法は、図で分かる様にした物を印刷し、それをコルクボードに貼り付け、ヘルパーが訪問した日に見守りの下で、手順通りに入力し商品を選んで注文しています。 ②スーパーやドラッグストアでセルフレジ対応 独居生活の利用者の週2回ある生活援助の内の一つが買い物同行と整理整頓です。 昨年まで利用店舗は有人レジでしたが、店舗改装後にレジの半分がセルフレジに変更となってしまいました。 買い物援助の際に人対応の方のレジへ並ぶも時間が掛かり、生活援助サービスの時間が押してしまう事もあった為、 「セルフレジで買い物ができるようになる(バーコード読み取り、マイバックに詰める 支払いをする、ショッピングカートに入れて持って帰る)」 という見守り的援助プランに変更しました。 現在も見守りの下で買い物をされています。 ③支払いは電子マネー決済(キャッシュレスで買い物、現金不所持) 長男とは同居も、日中は仕事で出張も多く留守がちで独居状態に近く、利用者が財布類を持つと置いた場所が分からなくなるので、 「母のスマホにダウンロードした電子マネーでの決済」 を希望をされました。 合わせて、できるだけお金を持たせたくないと強く言われます。 利用者も置いたはずのお金がどこにいったか分からなくなる事があるので、長男が準備してくれた金額を使う事を了承済みです。 ケアマネジャーや自治体と相談・検討の結果、 ①利用者のスマートフォンをヘルパーが持ち出すのは、緊急事態時に連絡や対応ができなくなる事 ②紛失した場合に損失が大きい上に日常生活に支障を来す との判断で、買い物代行時の金銭取り扱いは流通系の電子マネー(カード型)対応に変更してもらい、様子をみる形を取りました。 結果としては、現金を取り扱わない事で、利用者宅のあちこちに小銭が見つかる事や財布類が見つからない事も少なくなります。 重ねて台帳管理も上手くいっている為、買い物代行は継続中です。 前述にもありましたが、訪問介護サービスでの買い物援助は人の手を介して現金を取り扱う事が通常だった為に、現代の流れに沿った対応に若干違和感を感じられる事もあるかもしれません。 介護認定を受けた利用者も私たちも同じ日常を過ごしているのだから、時代の流れに沿って介護サービスのカタチを変えていくのは必然の流れです。 中には新しい流れを嫌がる利用者もいますが、少しずつ『現在の暮らしの普通のカタチ』を取り入れ、地域に暮らす日常に慣れていく事も「尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう(介護保険法第1条)」になるのではないでしょうか。 お掃除ロボ、発進! 一般的という程ではありませんが、最近は自宅にロボット掃除機を導入している所もちらほらあるようです。 訪問介護を受ける利用者宅で導入される事もここ数年、僅かながらもみられるようになりました。 まだ圧倒的に生活援助で掃除のプランが立てられている場合は、掃除機やフローリングワイパー等の掃除用具で行う事が主立っています。 しかし、中には家族が購入したロボット掃除機が活動されている所もあるのです。 訪問介護において、同居家族がいる場合の生活援助は基本的に受ける事ができません。 (但し、同居家族にやむを得ない場合や状況によっては生活援助のサービス利用が可能になる場合もあります。) ロボット掃除機も同様で、独居状態にある利用者へ離れて住む家族や身内から贈られた物、あるいは利用者自身で購入した物であれば、生活環境が利用者中心である為、使用については特に問題はありません。 それに応じたプラン変更は求められますが、日常生活を送る上での一部という事で対応していきます。 同居家族にやむを得ない場合や状況が有り、生活援助サービスを認められた場合では注意が必要です。 ケアマネージャーによる居宅プラン、それに沿って立てられた訪問介護計画書に則りサービスは行いますが、同居家族がいる場合の生活援助は、利用者のみが利用する場所においてサービスが行われ、同居家族が利用する共用場所へのサービスは認められません。 あくまでも訪問介護計画書に記されたサービスしか行えない為、プランが利用者の寝室や寝室周辺(利用者しか利用しない事を前提)の掃除や整理整頓であった場合、ロボット掃除機がリビングにあり、居室指定の設定をせずに利用者の寝室へ辿り着くまでの間の共用部分の掃除をしてしまう事が認められないのです。 「細かすぎる!少し位は良いじゃないか!」と思われるかもしれませんが、訪問介護は介護保険を利用した介護認定を受けた利用者の為のサービスなのです。(各自治体によっては、許容認可の範囲が違う場合もあるので確認が必要です。) どんなに便利な機器や器具が導入されても、介護保険を利用している訪問介護の基本を踏まえた上で プランに沿ったサービスを行う事を忘れてはいけません。 もはや、もう一人のヘルパーさん 最近では日常生活においてAI機器の導入が色々みられるようになりました。 前述にもありましたロボット掃除機もそうですが、スマートスピーカーも導入され日常生活に反映されているようです。 同居している家族が導入したので利用者も使用するという例もあり、ヘルパーやケアマネージャーも最新の流れをインプットやアウトプットしていく事が求められる様になります。 まず始めに利用者が「これ、どうやって使うんだろう?」と思うように、ヘルパーやケアマネージャーも「これ、どうやって使うんだろう?」「サービスにどう取り入れていけばいいんだろう?」と頭を悩ませるでしょう。 知識を得る為にスマートスピーカーについて学び(インプット)、「こうやって使うんだ!こんな機能があるなら支援や援助に取り入れていこう。」とプランに取り入れてサービスを行う事で実行に移す(アウトプット)形となるのです。 日々の生活が進化していく事に比例して、利用者の生活も進化し、サービスを行う介護事業所全体も進化し追従していかないといけません。 スマートスピーカーでできる事につきましては、下記の図を参照して下さい。 利用者がスマートスピーカーへ「今日の予定は何?」と聞けば、「〇日〇時から訪問介護です。」や「〇時に〇〇病院に受診です。」等のスケジュールを答えてくれます。 また、、「電気点けて、消して。」「エアコン点けて、消して。」「テレビ点けて、消して。」等の家電や機器の操作も音声で対応でき、「今、何時?」にも、時刻を音声で伝え、日用品が切れた時に 「(日用品名)を注文して」と頼めば、ネット注文で買い物もできてしまうのです。 こうなると、もう一人の家族であり、万能ヘルパーでもあります。 とは言っても、流石にできない作業や動作もあります。 そこはアセスメントやモニタリングによって必要となった介護プランに沿ったサービスを行い、AIを上手く活用していく事ができれば日常生活がよりよいものとなるでしょう。 まとめ 今回は、在宅生活に対応したデジタル化やAI化は訪問介護にどう取り入れられるのかを幾つか例を挙げて紹介しました。 ・訪問介護は老計第10号の法令の基本に沿って対応も、最新のデジタル化やAI化によって サービス内容が変化しつつある。・生活援助における買い物同行や代行においても、「宅配ネット注文」 「ネットスーパーの利用」や、店舗にて購入も「セルフレジ」対応、 支払いは「電子マネー決済」対応等、今までの買い物のカタチが変わり 利用者もヘルパーも対応していかなければならない。・生活援助における掃除においては、「ロボット掃除機」が導入されている所もあり 利用については同居家族がいる場合において注意を要する。・「スマートスピーカー」という、AIが搭載された多機能なスピーカーを 導入されている所も少なからずあり、日常生活に反映される対応が可能になっている。 ・「スマートスピーカー」のできる事は ①音楽の再生②家電や機器との連携操作③検索や情報収集やネット対応が可能 ④メールやデータの送受信や音声読み上げ⑤スケジュール管理などがある。 ・デジタル化やAI化が進んでも、日常生活ではできない動作や作業があるので 上手く活用しながら対応していく事が求められる。 デジタル化やAI化の波に乗って訪問介護もカタチを変えつつあります。 しかし未だそういった進化の波とは無縁の環境で日常生活を過ごす利用者がいるのも事実です。 其々の生活環境や状況に応じた対応を求められますが、一朝一夕には対応できません。 介護保険に関する法令遵守や法改正に伴うサービスの変更等に加え、最新のデジタルAI関連にも目を向けないといけない状況はとても大変です。 新旧共々に対応していけるヘルパー力を身に付けていきましょう。

  • 介護を「作業」としてこなす人。「ケア」として向き合う人の違いについて解説

    この記事では、介護を「作業」としてこなす人と、「ケア」として向き合う人の違いについて紹介します。 またお互い協力して仕事ができる方法についてもお伝えします。 介護を「作業」としてこなす人の特徴 1,「速さ」「効率」を重視している 介護を「作業」としてこなしている人は、何よりも「速さ」「効率」を重視しています。 その為、想定外のことが起こったり、声かけに拒否があっても、無理矢理にでも連れて行こうとし、業務時間内に介助を終わらせようとします。 この考え方は、在宅よりも施設、特に多床室のような従来型特養で働いている人に多いです。 従来型特養は、何十人ものケアを時間内で終わらせなければなりません。 その為「速く終わらせること」を求められた結果、「速く、効率的に終わらせることが最優先」という思考回路になってしまうのです。 2,ケアの理由について考えていない 施設内で行う介護(ケア)は、ケアプランに基づいて行われています。 それは、「なぜそのケアがその人にとって必要なのか」という、根拠あり、それを基にケアを行う必要があるからです。 しかし介護を「作業」としてこなしている人の場合、根拠についてあまり考えていません。 「そう決まっているから」と、疑問を持ったり改善しようとせず、自分の業務をこなすことを最優先事項としているのです。 介護を「ケア」として向き合う人の特徴 1,入居者や利用者の気持ちを重視している 介護を「ケア」として向き合っている人は、入居者や利用者の気持ちを重視し 1人1人丁寧に向き合っています。 例えば入浴の声かけをして嫌がったとき、「今は無理に行ってもダメだから、時間を置いて声をかけてみよう」と考え方を変えることができます。 また入居者や利用者の気持ちに向き合って対応しているので、不穏な人でもその人が対応すると、落ち着くことが多いです。 2,ケアを行う根拠を把握している ケアとして向き合っている人は、ケアプランの内容を把握し、「なぜこのケアを行うのか」という根拠を明確に説明することができる人が多いです。 根拠を知っていることで、新人職員などに教えるときに分かりやすく説明することができます。 また「ケア」として向き合っている人は、入居者や利用者の状態は日々変化しているということを知っています。 なので「ケアプランではこのようなケアを行うとあるけれど、今のこの人には、適応しているのか」と疑問を持ち、改善点を他職種に提案することができるのです。 どちらが正しいとは言えない 上記にて介護を「作業」としてこなす人と、「ケア」として向き合っている人の特徴についてお伝えしてきました。 ここまでだと「仕事としては、ケアとして向き合っている人の方が良いのではないか?」と思いがちです。 しかし実際は、「どちらが正しい」とは、一概には言えないのです。 というのも、介護業務というのは、限られた時間内と人数で業務を回さなければなりません。 その中で、入居者や利用者1人1人に丁寧に向き合っていたら、業務時間内に仕事が終わらなくなってしまいます。 それは、他の職員に迷惑がかかってしまうことになります。 そのため、ある程度「作業」としてこなすことも、必要なことなのです。 両者が協力するために ここでは、介護を「作業」としてこなす人と、「ケア」として向き合う人が、お互い協力する為に、何をすると良いのかお伝えしていきます。 ①お互いを知る 両者が協力するためにまず必要なことは、「お互いを知る」ことです。 具体的には ・日々どのように介護業務を行っているか ・どのような価値観や考え方を持って行っているのか ・他の職員の業務に支障が出ていないか ということが挙げられます。 特に最後の「他の職員の業務に支障が出ていないか」という点を忘れないでおきましょう。 支障が出ていなければ、お互い考え方や価値観を変えず、現状維持するという方法もあります。 人の価値観というのは、簡単に変えることができません。 なので、無理に考え方を変えようとすると、かえって関係性が悪化してしまい、施設全体が悪くなってしまう可能性があります。 ②問題について共有する お互いについて知ることができたら、次は「今施設の中で問題になっていることは何か」を、共有しましょう。 例えば「ナースコールで頻回に呼ぶ利用者がいて、業務が進まない」という問題が挙げられたとします。 介護を「作業」としてこなす人であれば、 「頻回に呼ばれて、業務が進まない」 という点に着目します。 しかし「ケア」として向き合っている人の場合、 「なぜ呼ぶのだろうか」 「寂しいからなのか、何か訴えがあるからなのか」 と、疑問を持ちます。 このように同じ問題でも、着目点が異なるのです。 ③お互いの価値観を用いて、意見を聴く 上記のような問題が発生した場合、お互いの価値観を用いて意見を提案しましょう。 介護を「作業」としてこなす人であれば 「業務が進まないから、ナースコールは無視する」 「何回も呼ばないで欲しい」と、注意する という意見が出てきがちです。 一見すると「介護職としてどうなのか」と思いがちです。 しかし利用者の中には、用もないのに何回も呼ぶ人もいます。 なので時には、注意するということも必要なのです。 一方「ケア」として向き合う人の場合 「日中居室に籠もりがちですることがないので、呼ぶのではないか」 「何か役割を持たせると良いのではないか」 と、疑問や改善点を思い浮かべます。 重要なのは「お互い、相手の意見に最初から否定しない」ことです。 自分にとって意にそぐわない意見だとしても、その人にとっては 「明確な理由があって」話をしています。 「そういう考え方もありますね」と、相手に伝えることで、相手もこちら側の意見を受け入れやすくなります。 ④試行錯誤してみる お互いの立場で意見が出てきたら、実際にやってみましょう。 上記の「ナースコールが頻回な人の対応」については ・役割を持たせて、不安な気持ちを軽減させる ・夜ナースコールが頻回な場合は、日中活動の時間を増やす ・看護師や相談員、ご家族様にも相談し、精神科に受診し、薬を処方してもらう ・それでも頻回な場合は、理由を伝えて「何回も呼ばないで欲しい」と言う といった方法を実践してみましょう。 しかし、1回で成功するとは限りません。 何回も行い、どれがその人にとって1番良い方法なのか、実践してみましょう。 試行錯誤していく中で、「作業」としてこなす人、「ケア」として向き合う人それぞれの価値観が共有されるようになり、結束し、協調して仕事に取り組めるようになります。 試行錯誤した結果、ナースコールが減れば、介護職員の負担が軽減されるだけでなく、利用者本人も不安が減り、施設での生活を快適に送れるようになります。 介護の仕事は、試行錯誤 介護業務、特に施設内のケアというのは、日々同じことの繰り返しに見えるので、単純労働でルーチンの業務だと思いがちです。 しかし上記でも挙げましたが、入居者や利用者の状態は日々変化していくので、臨機応変な対応が求められます。 また医療のように「治癒」という明確なゴールが設定しづらいので、介護職だけでなく、ケアを受ける本人や、他の職種と一緒に、ケアを考え続ける必要があります。 これからのケアは、お互いの価値観ややり方を理解し、「どうすればより良くなれるか」を考え続けることが、求められるのです。   まとめ ここまで介護を作業としてこなす人、「ケア」として向き合う人の違いについて解説してきました。 介護を「作業」としてこなす人の特徴は、「速さ」「効率」を重視している ・「ケア」として向き合う人の特徴は、ケアを行う根拠を理解しながら 入居者や利用者に対応している ・限られた時間と人数で業務を回さなければいけない以上 どちらが正しいとは一概には言えない ・両者が協力するためには、お互いの価値観ややり方を理解した上で 問題を改善するための意見を提案し合い、試行錯誤しながら お互いの価値観を共有していくことが重要である 最後までお読みいただきましてありがとうございます。  

  • これは介護と医療どちらですか?介護と医療が連携する場合の対処方法を解説

    訪問介護のヘルパーはサービス時でも、医療行為や医療機関との連携を求められる状況が発生する場合もあります。 今回は、そんな状況時での対応の仕方について紹介します。 介護なのに医療行為? 訪問介護でのヘルパーさんのボーダーライン 利用者宅へ訪問し、介護サービスを行うヘルパーですが、利用者の日常生活には些細な形でも医療行為を必要とする様な事態や、簡単な処置対応を求められる事があります。 ・自宅で家具にぶつけてしまい、手に小さな擦り傷ができてしまった。 ・高血圧と診断されており、毎日血圧を測るように主治医から言われている。 ・脊柱管狭窄症の為、屈伸動作が難しくなかなか足の爪が切れない。 ・ドライアイが強く、医師より点眼薬が処方されている。 ・加齢による乾皮症で、ワセリンが処方されている。 ・利用者の手が不自由な為、口腔ケアや義歯洗浄ができない。 サービス開始前のケアマネージャーや訪問介護事業所側のモニタリングやアセスメントで以下の事柄を確認します。 ・利用者のADL(日常生活動作)やIADL(手段的日常生活動作) ・身体的にどういった動作ができて、どういった動作が難しいのか ・日常生活では何ができて何が難しいのか ・傷病歴や生活環境等 基本的には、ケアマネージャーの立てたケアプランに則り、訪問介護計画が立てられサービスを行うのですが、時に身体介護においてこれは医行為ではないのか?とヘルパーが判断に迷う事もあります。 基本的に訪問介護のヘルパーは医療行為を行う事はできませんが、下記の図の様に厚生労働省より「医行為ではないと考えられる」とされる事例があるので参照して下さい。 例えば訪問介護サービスにおいて、食事介助と図の⑤にある様に食後の口腔ケアと義歯洗浄まで訪問介護計画にある場合は、計画通りサービスを行わなければなりません。 私達も普段の生活で、食事の後に歯みがきをしたり、人によっては義歯のケアをする事は何の疑問も持たないでしょう。 利用者も同じで、口腔内外に炎症も病例も特に何も無く、食事を安全に行った後の清潔保持の為に行う口腔ケアや義歯洗浄は、ケアプランに立てられていれば、ヘルパーは口腔ケアの介助や見守り的援助にて対応します。 但し、利用者の口内に歯周病や酷い歯槽膿漏があったり、口腔内潰瘍やヘルペスの症状があり医師による診察や治療が行われている状態での口腔ケアや義歯洗浄となると、話は違ってきます。 明らかに医師の対応が必要となる状態=重篤な状態での口腔ケアを行う時は、必ず医師の指示書や看護師の指導の下にサービスを行う必要があります。 そういった場合では基本的には処置や医療行為を求められる為、軽微な状態とは言えず介護対応はできません。 その際は訪問介護ではなく訪問看護での対応となる場合もあるので、利用者の状態においては安易に自己判断したり利用者の言い分要求を鵜呑みにして言われるまま対応したりせず、ケアマネージャーや訪問介護事業所等に報告した上で正しく利用者に応じる等の注意が必要です。 訪問介護でヘルパーができる医療行為は、利用者の心身状態が安定しており、入院の必要が無く、医療技術や専門的な管理、処置を伴う事が無い状態である場合に軽微で簡易的なもののみ行えるものです。 ヘルパーができる医療行為の例外として、研修を受講した介護福祉士が行える喀痰吸引と経管栄養がありますが、「たん吸引は咽頭の手前まで」や「経管栄養の胃ろうや腸ろうの状態確認は看護師対応」等行為にはできる行為とできない行為があるので注意が必要です。 医療機関で訪問介護? 訪問介護はその名の通り、ヘルパーが利用者宅にて訪問して行われるものですが、利用者宅から出て対応する事が必要とされる場合もあります。 日常生活に必要な動作であれば、訪問介護として認められるものもあり、その認められるものに「医療機関への受診対応」も条件によっては可能です。 「ちょっと風邪ひいたから病院行ってくる。」 「毎月の定期受診だから月末病院に行かないといけない。」 「入れ歯のかみ合わせが悪くてご飯が食べにくい、歯医者に掛からないといけない。」 様々な理由により、生活に医療が関わってくるものですが、基本的に医療機関への受診対応は訪問介護ではできないとされています。 ですが、医療機関への対応が利用者一人では困難な場合や利用者の取り巻く環境や、介護を要する事が明らかに認められる状況によっては、事前対応次第で訪問介護にて対応する事が可能となります。 【院内介助ができる条件】 ①要介護度1~5の認定がある利用者 ②医療関係者の介助が望めないと事前に確認済の場合 ③当日、家族や身内の通院付添いが望めない場合 ④院内で常時見守りや介助が必要とされる場合 介護タクシーを利用される場合、訪問介護の基本として当然ながら病院内の院内介助は医療機関対応の為行えませんが、上記にある①~④全てに該当する場合は対応可能となる事もあります。 ここで注意したいのは、ヘルパーが介助できるのは受診受付、院内での移動や、トイレ介助、病院代支払い、薬の受取りです。 心身不安定で一人で待ち時間を過ごす事が困難な場合は条件により介助可能ですが、検査や処置、診察は医療対応の為、介護保険である訪問介護のヘルパーは対応できません。 では、認知症の傾向があったり、または視聴覚が困難な利用者が訪問介護を利用して受診した場合、どうなるでしょうか? 医師の診察において病状の報告や診断結果を受け対応する事は医療対応の為、訪問介護では対応できない事とされています。 この場合は上記でも述べましたが、事前対応によりヘルパー同席が可能になる事もあります。 全ての自治体が事前対応可能とは限らない為、利用者居住区の自治体に相談が必要です。 対象となる利用者が、どの動作に介助を要するのか、またはどこからが医療対応で介護対応では無くなるのかをよく確認した上で線引きし、対応しなければなりません。 介護側が計画通り対応を行っていても、突如介助や見守りを要する事があったり、医師や看護師の説明を聞いたり、利用者の状態を報告したりと、医療と介護の対応が混乱する事も多々ある為、その場その場に応じた臨機応変な対応が求められます。 医療機関で訪問介護(通院介助、院内介助)を行う為に必要な事は下記の図を参照して下さい。 あくまでも「訪問介護対応」で介助しないと病院に受診する事ができない為に、ヘルパーを介して行われるものが、通院介助または院内介助です。 訪問介護対応という事は、先程にもあった通り事前確認やそれに伴う打合せや会議、計画書の作成、記録または報告書の作成等が必要となるという事です。 要介護度認定があっても看護師の介助があれば一人でも受診できたり、医師とのやり取りが可能な場合は、ヘルパーは立ち入る事はできません。 身内や家族の様に寄り添う気持ちは大切ですが、介護保険を利用している事を忘れずに対応しましょう。 皮膚は人の身体の信号機です 訪問介護では、要介護の利用者でも自身で何等かの形でも動ける利用者と、自身の思うようには動けない利用者がいます。 (ここでは、施設や医療機関に入所せず自宅で家族の援助を受けながら過ごす寝たきりに近い状態を指します。) そういった利用者への介護は、ほぼ身体介護メインである事が多いのですが、「寝たきり」状態である場合、ケアマネージャーのプランを踏まえた上で更に注意すべき点がいくつかあります。 ヘルパーは訪問介護を通じて利用者の状態を確認した上で、「おかしいな?」「あれ?前回より状態悪くなってる!」と感じたら、状況や状態の報告を行い、適切な判断や今後の対応を検討しなければなりません。 図の①や②の場合は、状況によっては医師の診断が必要になりますし、介護ではなく訪問看護対応となる事もあります。 図③の場合、医師の診断やケアマネージャーとの検討、利用者の身体状態によっては訪問リハビリ対応となり、介護との連携を図っていく形になる事もあります。 図④~⑤に関して特に図④の場合、皮膚に状態悪化がみられ、褥瘡が確認された場合は注意が必要です。 褥瘡部への処置は医療行為ですので介護では対応できませんが、排泄により患部周辺が汚染された場合は、清拭対応としてヘルパーが介護を行います。 排泄物で汚染されたまま放置では状態悪化に繋がる為、排泄汚染されている場合は、患部周辺の洗浄、ガーゼやパットの交換、おむつやリハビリパンツの交換はヘルパーが対応します。 褥瘡、床ずれは同じ体勢により同じ個所に体圧が掛かってしまった場合にできる事が多いので、体位を定期的に動かし圧を分散させる必要があります。 それと同じくして、栄養摂取においても食事による栄養が摂取できなくなり、低栄養になってくると褥瘡ができやすく、また発症しても治りにくくなってしまいます。 食事による栄養摂取の為には、嚥下状態も大きく関わってきますし、上下肢の動きも体圧分散に繋がる上に、排泄などの基本的な身体動作に上下肢の動きは必須な為、その動作が維持できるかどうかは褥瘡発症のリスク増減に関わってくるので注意が必要です。 図①~⑤は全て連動しており、訪問介護でヘルパーが対応する介助は一つ一つが全て重要なものであると同時に、目に見えてその状態の良し悪しを教えてくれるのが「利用者の皮膚」であったりします。 ・特に状態に問題なく、その利用者なりの日常生活が送れていたら青信号です。 ・日常生活は送れているけれども、何らかの「あれ?おかしいな?」が みられたら黄信号です。 ・はっきりと異常が確認されたら赤信号で、医療対応が必要です。 介護で対応すべき範囲と医療で対応すべき範囲を理解し、利用者から出される信号を正しく受け取り、日常生活を送るという道路を走る車の一つが介護であると考えられるならば、訪問介護にて ヘルパーがどう対応すれば良いのかが分かってくるでしょう。 まとめ 今回は、訪問介護のヘルパーが、医療行為や医療機関との連携を求められる状況時での対応の仕方について紹介しました。 ・利用者の日常生活には、医療行為を必要とする様な事態や簡単な処置対応を 求められる事があり、基本的には医療行為はできないが、介護で対応可能と 解釈されたヘルパーができる医療行為がある。・ヘルパーができる医療行為でも、医療(医師や看護士等)との連携が求められる。・医療機関への受診対応も訪問介護サービスの一つであり 介助を行うには条件や事前または事後の対応が含まれる。・通院または院内介助を計画されサービスを実施しても 介護で行えるサービスと行えないサービスがある。・訪問介護で寝たきりや思うように自身で動けない利用者へのサービスでは ケアプランの他にも気を付けなければならない点があり、実際サービスに入って 認識や確認できる事が少なくない。・嚥下、栄養、可動域、皮膚、排泄の5点は連動しており 皮膚状態は身体全体の良し悪しを現す信号である。 ・状態の変化の気付きを意識して生活状況の対応をし、状態の異常時は すぐに医療との連携を図る事ができる最前線にいるのがヘルパーであるので 訪問介護時はサービスは繋がっている事を意識して行う。 「医療と介護の連携」と言われると難しく捉えられがちですが、基本的にできる事やできない事をきちんと踏まえた上で、サービスを行えば特に問題はないのです。 訪問介護で身体介護を行う、通院または院内介助を行う、身体介護で利用者の状態をよく確認する、これらは全て利用者の日常生活を安全に送る為の一つで、全ては連動しているのだと考えられたならば介護に対しての理解も深まるでしょう。 不安を持ったままサービスを行えば利用者にも不安が伝わります。 「ヘルパーは介護のプロだ」と自信を持って訪問介護サービスを行いましょう。

  • 有効求人倍率15倍!? ヘルパーが働き続けたくなる環境とはどんな職場?

    介護の職場は有効求人倍率15倍と言われています。 人材難の介護業界でヘルパーが働き続けるには何が必要なのでしょうか。 ここでは介護の人材難に向き合う課題についてご紹介していきます。 ヘルパーが働きやすい職場が少ない 介護業界はどこも人材が圧倒的に足りていません。 同じ職場に定着する人の割合が他の業界に比べて少ないことが人手不足の要因にあげられています。 例えば、新卒からずっと同じ職場で働いていると言う職員を筆者はあまり見たことがありません。 ではヘルパーが介護業界で定着しやすい職場はどんなところなのでしょうか。 まずはヘルパーの離職の原因から確認していきます。   ヘルパー離職の原因 職場の人間関係 介護ヘルパーが同じ職場で働き続けたくなくなる理由の1つ目は、職場の人間関係です。 この理由は他職種でもあるかもしれませんが、介護の現場においては特に重要なものになります。 介護の仕事は、夜勤、日勤、遅番などのシフト制がほとんどで、ご利用者様の状態や業務の引き継ぎが必要になります。 それは職員とのやりとりが多くあるということです。 他にも日中の業務で連携をとりながら仕事をする必要もあります。 その際のちょっとした言葉の行き違いなどから不快感を感じ、その積み重ねで徐々に険悪になる職員を多く見てきました。 人は皆違う人生と価値観で生きています。 ちょっとした事から関係性が悪くなり退職する人は多いようです。 そんな事例からも、職場の人間関係が安定している事業所は働きやすく、結果として離職率が低いと言えます。 慢性的な人手不足 ヘルパー離職の理由の2つ目は、慢性的な人手不足です。 介護の仕事は基本的にマンパワーが必要になってきます。 例えば24時間対応の施設系の職場であれば、早番、日勤、遅番、夜勤と最低でも1日のシフトで4人の職員が必要です。 この環境で職員が1人辞めると、3人で現場を回す必要があります。 これは体験しなければわからないことですが、場合によっては休憩が出来ないこともあります。 最悪の場合、時間外で残業をしなければ現場が回らないこともあります。 これが1日だけであればまだ続けようと思えますが、職員の補充があるまでずっと続くところもあります。 職員の補充を求めたとしても、すぐに入ってくるとは限りません。 例え入職してくれる人がいたとしても、そのまま長く続けてくれるとは限りません。 余談ですが、ある時入職した翌日に家族の急病を理由に休んだ新入職員がいました。 そしてそのまま音信不通になり、復職することはありませんでした。 このような事からも、介護業界での定着率は低い傾向がわかります。 給料や待遇面 離職率の高い理由3番目は、介護のヘルパーの給料や待遇は仕事の大変さのわりに低い点です。 さらに昨今、一般企業のサラリーマンやOLとの差は更に開いてきていると感じます。 筆者は社会福祉法人の施設に勤務するまで、ボーナスをもらったことがありませんでした。 それぐらい、介護業界の給料は低い設定になっていて、介護職の定着に大きな影響を与えています。 健康の不安が原因 離職率の高い理由4番目は、健康の悪化です。 特に介護ヘルパーの仕事をしていると痛めるのが腰です。 腰は日常生活でも大切な部分ですが、その腰を酷使する仕事でもあるため、介護の仕事をしてから腰が悪くなったと言う人は多いです。 介護現場では、腰にコルセットを巻かないと仕事ができない人が多くいて、その大半が女性でした。 高齢者は体重の重い人から軽い人まで色々な人がいます。 介助の仕方、技術次第で腰を痛めないも方法もありますが、逆に介助方法を間違えて痛めてしまうこともあります。 なので、介護ヘルパーの健康不安要因1番は腰の痛みです。 その他では、感染症に感染することがあります。 高齢者は免疫力が低下していることもあり、感染症にかかりやすい可能性が高いです。 そのため介護ヘルパーもそこからの2次感染の確率は高く、その点においても健康を害するリスクは高いです。 高齢者の健全な生活を守るヘルパーは、健康面においても離職しやすい環境であると言えます。   ヘルパーが働きたくなる職場とは 先の紹介で介護ヘルパーが、仕事を続けたくなくなる環境のご説明をしてきました。 ではヘルパーが働き続けたくなる職場とはどのような環境なのでしょうか。 将来を描きやすい職場づくり ヘルパーの仕事は、営業などのタスク達成型の仕事と違い、1日の仕事がルーティンワークに近いため、マンネリ化しやすく目標が見えにくい仕事です。 そのため、この仕事を続けても将来が見えないという理由で、他の業界に転職する人も多くいます。 福祉という特徴から、目標にコミットしてそれを達成するという環境づくりが難しい面もあるのです。 なので入職した職員が、この職場でどうなっていけるのかなど将来性を提示できる環境があれば職員の定着率も上がり、求人への応募も増えるのではないでしょうか。 介護現場ではヘルパー自身が未来を描きやすい環境整備が最も重要です。 この職場で働きたいと思える職場づくり 介護ヘルパーが、この職場で働きたいと思える職場作りも、応募してもらうために必要なことです。 全ての環境を他の職場よりベストにできればいいのですが、そう簡単にはいきません。 なので、ご自分の職場でここなら改善できて、うちの職場の魅力としてアピールできるであろうと思うところを見つけて宣伝しましょう。 最初の方でお伝えした、給料、福利厚生、職場の人間関係、研修環境、労働環境など、入職する人によって職場を選ぶ基準は様々です。 ご自身の事業所や職場で改善できる点を取り上げて求人倍率の向上に繋げるようにしましょう。 悩みを抱え込ませない職場づくり 退職で多い理由の人間関係の問題など、各職員が抱えている悩みを出来る限り抱え込ませない環境を作りましょう。 実際に働いてみて感じますが、職員間の対人関係の悩みは尽きません。 それぞれ違う人生を生きてきているわけですから、価値観の違いですれ違いや喧嘩をすることもあります。 個々人の問題であると言えばそれまでですが、その問題はできる限り目を瞑らずに環境改善に取り組むべきです。 例えば、上司の面談をある一定の期間で設定するとか、ストレスチェックシートを書いてもらうなどの対応もいいでしょう。 他にも、上司と職員間での日々のコミュニケーションも大事です。 何か問題などがあれば言いやすい環境づくりは、役職者の責務とも言えます。 悩みを抱え込ませないためにも、コミュニケーションによる運営者側の努力が必要になります。 仕事のオンとオフができる職場づくり 介護ヘルパーの仕事でよくあるのが、仕事のオンとオフが難しい環境であることがあります。 特に中間管理職の職員に多いですが、休みの日にも仕事の電話が鳴り止まず、なかなか休めない人もいます。 一般職員でも、休みの日に引き継ぎの件で確認の電話があったり、人員不足で夜勤明けからの日勤業務で昼まで働くなど過酷な環境があります。 ひどい時だと、日勤をしてから夜勤をするなどの勤務もあります。 一言で言えば過重労働なのです。 このような仕事の切り替えがしづらい環境を変えるために、職員が定着したくなる環境を作り運営していく必要があります。 まとめ 結論として求人倍率15倍の環境を作るためには、シンプルにこの職場にいたいと思える場所を作るのが最短です。 そのためには、給料、福利厚生、職場の人間関係、研修環境、労働環境これらの環境改善を行い、求人票状でも魅力的な職場を作る必要があります。 また、実際にヘルパー同士のコミュニケーションをしっかりと図り、働きやすい環境づくりが必要です。 簡単ではありませんが、1番の近道はコツコツ積み上げて作り上げていくことが大切です。 最後までお読みいただきましてありがとうございます。

  • 介護保険適応時の生活援助と身体介護の違いとは?やっていいことと悪いことを解説

    介護保険を使った訪問介護。 実は生活援助と身体介護には違いがあります。 今回はその点をご説明します。 生活援助って何? 介護の業界を知らない人に「生活援助と聞いて何を連想しますか?」と聞いたことがあります。 その方は「高齢者の出来ない買い物とか、掃除とかですか?」と答えていました。 それも生活援助の一つですが、細かく言うと他にもたくさんの生活援助の内容があるのです。 この章では生活援助の中身をご説明していきます。 生活援助でやってはいけないこと 生活援助とは身体介護以外のサービスで、ご利用者様が日常生活で行う活動内容を、代わりに訪問介護ヘルパーが行う支援のことを指します。 ここで注意点があります。 生活援助はあくまで「ご利用者様本人の生活」に必要なサービスに限定されるのが基本です。 そのため、生活援助で行っては行けないことがあります。 以下のようなサービスは生活援助のサービス外です。 ・ご利用者様が飼っているペットのゲージの掃除や散歩などの世話 ・ご利用者様以外の食事を作る(ご利用者様の家族など) ・ご利用者様本人が使わない部屋や、庭の掃除 ・イベント時に特別な料理を作る ・ご利用者様の家族の買い物 ・家電や家具などの移動や修理 ・車の運転代行 ・ご利用者様の家にある車の清掃 ・預貯金の引き出し代行、お金を扱うこと ・家にある植木や、草花の手入れ ・酒やタバコなど嗜好品の購入代行 ・室内の電球取り替え ・ご利用者様が家にいない状態での留守番サービス 訪問介護を実際に行うと正直なぜ行ってはダメなのか分からない内容もあります。 例えば電球の交換などは行なってもいいように感じます。 しかし、実際は禁止されているのです。 このように、生活援助と言ってもやっていいこと、やってはいけないことがあることを事前に利用者にお伝えしておかなくてはいけません。 その上で生活援助の内容をご説明していきます。 生活援助でやっていいこと 基本的な決まりとして、生活援助は「ご利用者様本人の生活」に必要なサービスに限定されるとお伝えしました。 この決まりを踏まえて今から生活援助の具体的な内容をお伝えしていきます。 買い物代行 このサービスはご利用者様が生活する上で必要な食材や日用品などをメインに、生活に必要なものだけをヘルパーが代わりに買い物代行するサービスになります。 掃除代行 このサービスは、ご利用者様の住環境の清潔な環境を整えるためのサービスです。 ご利用者様によっては、右半身麻痺だけど自分で歩ける人もいたりします。 そのような方は、掃除を自分で行えないことがあるので、ヘルパーが代わりにゴミを集めたり、床の掃除を行なったりします。 実際、1時間ほどでトイレ、居室、お風呂の掃除のみのサービスなどもあります。 洗濯代行 ご利用者様が使用した衣服や、生活の中で汚れたものなどを洗濯するサービスです。 過去に干したものを回収し、洗濯したものを干すまでがサービスの一つです。 場合によっては、訪問した時に汚れたシーツや身の回りのものがあれば、それも洗濯することもあります。 ベッドメイキング 訪問介護の仕事をしていると、訪問先のベッドメイキングの仕事もあります。 このサービスは、経験上あまり行なったことはありませんが、ごく稀にサービスとして行うことがあるので、覚えておいて損をすることはないと思います。 伺うお宅によって使う布団やシーツの種類なども違うので、臨機応変にサービスの行い方を学ぶことができます。 衣類の整理、被服の補修 ご利用者様の生活を守る上で、衣服の整理や被服の補修は重要になってきます。 認知症のご利用者様などは暑い真夏の季節でも厚手のダウンを着ようとする方もいます。 そのような方がいることもあるので、季節に合った衣服の準備や整理整頓、被服の補修はご利用者様の生活を守る上で重要になってきます。 薬の受け取り代行 ご利用者様の生活の中で重要になる薬の受け取り代行も生活援助の一つとして行います。 訪問介護をしていると、ほとんどのご利用者様が薬の内服をおこなっているので、ご利用者様によっては薬の受け取りを行うサービスを必要としている人もいます。 重要なので覚えておきましょう。 身体介護って何? この章では身体介護についてお伝えしていきます。 結論からお伝えすると、身体介護はご利用者様の体に触れてサービスを提供するものです。 具体的は以下の内容になります。 ・ご利用者様の体に直接触れて行う介助サービス ・ご利用者様の自立支援・重度化防止のためのサービス ・その他の専門的知識・技術を要する生活上のサービス (出典‘厚生労働省「「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」」の一部改正について」) ではさらに細かく分解するとどのようなサービスなのかをご説明していきます。 身体介護の種類と内容 では、身体介護はどのような種類と内容があるのか、詳しく解説していきます。 食事介助 身体介護の中でも代表的な食事介助ですが、主に食事をご自身で食べることが難しいご利用者様を対象に行う介助です。 食事介助は、見守りで大丈夫な場合と一部を誘導やお手伝いすれば大丈夫なもの、また全ての介助をしなければならないものと3パターンに分かれます。 他に食事形態の面でも違いがあり、ヘルパーはご利用者様がどの職形態で食べれるかも把握して、介助を行う必要があります。 介助方法もご利用者様によって違い、食具も変わります。 食事介助は、多岐に渡り注意しながら行う必要のある介助です。 排泄介助 排泄介助は、何パターンかに環境が分かれています。 ①トイレで排泄する場合 ご利用者様の身体状況で大きく変わりますが 職員1人で介助可能な方もいれば、職員2名で対応する必要のある方もいらっしゃいます。 ②ベッドなどで排泄介助をする場合 主にトイレで排泄介助困難なご利用者様が、この状態にあたります。 この場合職員1人で行うときと、2人で行うときがあります。 理由としては、ご利用者様の身体状況などで大きく変化するためです。 ベット上での排泄介助は必ず体位変換が必要となるのですが、その体位変換が職員1人で行えない時などは職員2名体制で行います。 更衣介助 主に起床した時と寝る前に行うことが多いです。 その他にもイベントの時や、入浴の前後などにも行います。 更衣介助は基本的には職員1人で対応できるご利用者様が多く、更衣の時は「脱健着患」を守り介助を行います。 「脱健着患」とは 健康な手や足から服を脱ぎ、患側(体の一部が麻痺してて動かない等)から服を着る事で ご利用者様の負担を少なくする基本となる介助ルールです。 入浴介助 もう一つ代表的な介助が入浴介助です。 これは全身浴と部分浴に分かれます。 全身浴とは、全身を洗い湯船に入浴していただく一般的な入浴介助で、部分浴は足のみ、もしくは手や頭のみを洗浄するといった、部分的な入浴のことを言います。 身体状況と目的別でこの全身浴と部分欲は分かれますが、この介助も技術力が必要な介助なのでしっかりと学び行う必要があります。 まとめ 今回は介護保険適応時の生活援助と身体介護の違いについてご紹介しました。 ・生活援助はご利用者様の体に触れることなく ご利用者様の身の回りの生活のお世話を生活援助という。・身体介護は、ご利用者様の体に触れて介助を行う。 この2つの違いは、ご利用者様の体に触れてサービスを提供するかどうかが、大きく違うものになってきます。 最後までお読み頂きましてありがとうございます。

  • やりがい満載!ヘルパーが利用者に行う一対一の支援の良いところとは?

    ヘルパーの仕事の醍醐味はなんと言ってもご利用者様との一対一の支援です! やりがい満載!ヘルパーとご利用者様の一対一の支援について、その魅力をお伝えしていきます。 介護は一対一の支援が1番 介護の仕事をする上で、ご利用者様にとっても職員にとっても1番ベストなのは一対一の支援です。 何がどのように良いのかを、実際の介護の現場を経験してきた体験も交えつつご説明していきます。 基本的に同じ人のケアを受けられる 訪問介護のヘルパー援助において一対一の支援の魅力は、ご利用者様にとって「基本的にいつも同じ人のケアを受けられる」と言う点です。 もちろんシフト制のため毎日同じと言うわけではありませんが、施設系の現場に比べると訪問介護の方が、ヘルパーが固定されていることが多いです。 例えば施設で行う介護ですと、ある一定の職員がシフト制で多数のご利用者様のケアにあたります。 これはご利用者様目線で言うと、いつも入浴や排泄介助の職員が変わるため、ご利用者様によっては落ち着かない人も出てくるのです。 特に、施設入所されている方でもご自身でしっかりと意思を伝える方もいらっしゃいます。 そのようなご利用者様ですと、特定の職員に対してケアされたくないとおっしゃる方もいらっしゃいます。 しかし施設型の介護環境ですと、そのような要望が人員的に困難なため、仕方なくケアを受けるご利用者様を多く見てきました。 なので、施設介護も訪問介護も経験した者から言えるのは、訪問介護のヘルパーの方がご利用者が安心してケアを受けれてもらえます。 しかも、訪問介護は基本的に一対一の支援がメインになります。 コミュニケーションを取るのも、ケアを行うのも目の前のご利用者様一名のみです。 ご利用者様にとって訪問介護の一対一の支援は、メンタル的にも安心できる環境なのです。 ご利用者様に丁寧なケアを提供できる 介護の仕事を長くやっていると、ご利用者様との関わりが多くなり、職員のご利用者様への対応が大雑把になってくる職員が出てきます。 この差は個人差はあるものの、多くの職員に見られる傾向です。 特に訪問介護と違い、特別養護老人ホームや、有料老人ホームなどの施設系の介護現場だと、特にこの傾向が強く見てとれます。 訪問介護の一対一の支援と違い、介護施設だと一対多数の所がほとんどなのです。 ケアにあたるその瞬間は一対一なのですが、排泄介助や入浴介助を行う際は制限時間内に順番のケアを行うため、あまり丁寧にケアを行えない時もあります。 これは介護施設の大きな問題で、人員不足により生じてしまう問題でもあります。 その点訪問介護の良いところとして挙げられるのが、ケアが一対一の支援であるということです。 一対一の支援だと、目の前のご利用者様に集中できます。 1人に対するケアのためサービス内容が決まっていて、そのサービスに集中できるからです。 施設介護だと一対多数の環境ですので、他のご利用者の見守りを行いながらケアをします。 そのため丁寧にケアできない環境も生まれてきてしまいます。 このようなことから訪問介護において一対一の支援ほど、ご利用者様と職員にとって良い環境はないのです。 ご利用者様のストレス軽減 訪問介護による一対一の支援は、ご利用者様にとってストレス軽減の効果もあります。 それは、限りなくご自身が安心する環境下でサービスを受けることができるからです。 詳しい内容を以下でご説明いたします。 一体一の支援はヘルパーにとっても良い 一対一の支援に特化した訪問介護の良いところは、ご利用者様の住みたい環境下でサービスを提供することができると言うところです。 介護業界で働いていると分かるのですが、施設で入居しているご利用者様より、訪問介護を活用し在宅介護で過ごされているご利用者様の方が、落ち着いていらっしゃる傾向があります。 不穏な様子を見せる人が少なく、全体に落ち着いている印象を私は持っています。 施設で仕事をしていると、「自分の家に帰りたい」と帰宅願望を訴える方を多く見てきました。 例えば夜中に居室から出てきて、「もう帰らなきゃ、帰って朝ごはん作らなきゃいけない」と訴えるご利用者様などがいらっしゃいます。 その方は認知症で、半年前に入居されていたのですが半年経った今でも夜中に同じ訴えを言い、落ち着かない夜を過ごされています。 職員としても、施設外へ出てしまう恐れもあるので見守りが欠かせません。 ご利用者様も、やりたいことを止められてストレスになりますし、職員としても他のご利用者様の対応などもあるので大変ではあります。 ご利用者様、職員ともに良い環境とは言えないのです。 その点、一対一の支援ができる訪問介護はご利用者様と職員双方のストレスを軽減できます。 いきなり知らないところに入居して、見慣れない景色や環境の中、生活しなければならないことを考えると誰でも不安になります。 なのでヘルパーの視点から言っても、環境をあまり変えずに一対一の支援を受けられる訪問介護はご利用者様と職員にとって良いことづくしであると言えます。 一対一の支援はヘルパーの実力アップ シンプルに、一対一の支援はヘルパーとしてのスキル全体の実力アップにつながります。 どう言う実力がつくのかと言う点についてご説明していきます。 臨機応変力がつく 一対一の支援がメインになる訪問介護では、基本的に職員1人に対してご利用者様1人です。 訪問介護は、特別養護老人ホームや有料老人ホームなどの施設介護との大きく異なり、なんでも1人で対応していかなくてはいけません。 実際に訪問介護の現場では、1人での介護が厳しいと感じるご利用者様は多くいました。 私の経験の中で1つ上げると、ある男性利用者が体が180㎝くらいある大きい方でした。 その方は体重が重い上に半身麻痺の症状をお持ちだった為、1人で介護をするには困難を伴いました。 もう1人いれば簡単に介助できるのですが、もちろん現場では自分1人です。 そのため、私は自身で様々な工夫をして介助を試み、そのご利用者様にも満足頂くことができました。 その時の経験により、その後大きな体格のご利用者様の介護でも、腰を痛めることもなく1人で介助できる技術を身につける事ができました。 訪問介護の一対一の支援で、介護現場での臨機応変さを学ぶ事ができ、それは大きなメリットと言えます。 訪問介護の現場では、ヘルパーとして得られることは非常に多いです。 いろいろな介護度の人から学べる 一対一の支援がメインである訪問介護は、多種多様なご利用者様と関わります。 認知症を発症しているご利用者様や、半身麻痺のご利用者様など、症状も様々に在宅で過ごされています。 その介護度は要支援1から要介護5まで幅広く、中には安否確認だけを必要とする要支援1の方もいれば、全介助で要介護5の寝たきりの一人暮らしの方もいました。 グループホームなどは別ですが、費用の安い特別養護老人ホームは要介護3以上でないと入所できません。 在宅では症状が幅広く様々な介護度のご利用者様を知ることができます。   まとめ ここでは、ヘルパーが利用者に行う一対一の支援の良いところについて、ご紹介してきました。 ①基本的に同じ人の支援(介助)を受けられる ②ご利用者様に丁寧なケアを提供できる ③ご利用者様のストレス軽減が可能 ④一対一の支援でヘルパーもストレス軽減になる ⑤ヘルパー介護力の臨機応変力がつく ⑥いろんな介護度のご利用者様を知ることができる 一対一の支援に特化した訪問介護の良いところは、限りなくご利用者様の住みたい環境下でサービスを提供することができると言うところです。 最後までお読みいただきましてありがとうございます。

  • 介護保険の上限を超過したときはどうすればよい?対処方法や自己負担を軽減する方法について解説

    介護保険制度では、要介護度によって受けられるサービス料の上限が決まっています。 ケアマネジャーは、決められた上限の範囲におさまるようにサービスを調整しなければなりません。 本記事では、介護保険の上限が決まっていることや、この上限を超過した場合の対策、自己負担を軽くする制度について解説します。 介護保険の上限は区分支給限度基準額で決まっている 介護保険のサービスは、訪問介護やショートステイ等のサービスごとに使用できる単位数が決められています。 そして、要介護度によって1ヶ月間に使用できる単位数の上限が決められており、それを区分支給限度基準額といいます。 区分支給限度基準額とは 区分支給限度基準額とは、要介護度ごとに設定された介護保険サービスの月の上限を単位数として設定しているものです。 介護保険はサービス毎に単位が決められており、ケアマネジャーは区分支給限度基準額を超えない範囲で、サービスを組み合わせて調整します。 利用者の自己負担は、所得によって1〜3割に設定されていますが、在宅介護を続けていくと、加齢やADLの低下にともない必要なサービス量は増えるものです。 サービス量が増えると、自己負担とともに介護保険の公的なお金の利用も増えていきます。 しかし、財源に限りがあるので上限が設けられているため、その範囲内でサービスを調整するよう求められています。 ○在宅サービスの区分支給限度額と自己負担額 区分 支給限度基準額(単位) 利用限度額 (円) 1割負担の時の 自己負担額(円) 要支援1 5,032 50,320 5,032 要支援2 10,531 105,310 10,531 要介護1 16,765 167,650 16,765 要介護2 19,705 197,050 19,705 要介護3 27,048 270,480 27,048 要介護4 30,938 309,380 30,938 要介護5 36,217 362,170 36,217 ※1割負担、1単位=10円の場合 参考:目黒区 区分支給限度額(介護保険から給付される一か月あたりの上限額) 区分支給限度額を超過すると全額自己負担になる 区分支給限度基準額を超過してしまった場合、超過した分の介護保険は利用できないので、全額自己負担で支払うことになります。 例えば、1割負担で要介護5の人が1ヶ月に400,000円分の介護保険サービスを利用したとします。 1割負担の支払額は40,000円ですが、限度額は36,217円なので、40,000−36,217の3,783円分超過してしまいます。 この場合、超過した3,783円は全額自己負担になりますので負担額は10倍の37,830円です。 全ての負担額の1割負担分の36,217円と全額自己負担分の37,830円を足して、74,047円がこの方の自己負担額になります。 急に負担が増えてしまいますので、ケアマネジャーは上限の範囲内でサービス調整する必要があります。 介護保険の上限を超えないようにするための対策の一つは、要介護度の区分変更を申請することです。 介護保険の上限を超えないようにするには区分変更を申請する 介護保険の上限を超えないようにするには区分変更申請が有効です。 要介護度が上がると区分支給限度基準額が上がりますので、利用できるサービスの量を増やせるからです。 例を挙げると以下のようになります。 要介護1の時は車椅子のレンタルができなかったが、要介護3になったらできるようになった。 要介護2では他のサービスとの兼ね合いでショートステイが1週間しか利用できなかったが、要介護4になったことで10日利用できるようになった。 特養入所を考えているが、要介護2の状態では入所できないので要介護3以上にしたい。 上記のように、区分支給限度基準額を超えてしまいそうな時は区分変更申請が有効です。 ケアマネジャーとして、利用者本人や家族の生活状況を見ながら提案してみるのもよいでしょう。 しかし、ご利用者様のご家族から「要介護度が上がると自己負担が増えてしまうので困る」という声が聞こえてくることもあるかもしれません。 次は自己負担を軽減させる制度について解説していきます。 介護保険の自己負担を軽くする制度 在宅介護を続ける上で、費用負担を軽くすることも大きなポイントです。 ここでは、自己負担を軽くする制度である「高額介護サービス費」「介護保険負担限度額認定」や、「介護保険料を滞納すると自己負担が増える」ことについて説明します。 高額介護サービス費 参考:厚生労働省 令和3年8月利用分から高額介護サービス費の負担限度額が見直されます 高額介護サービス費は、「1ヶ月に支払った利用者負担の合計が所得に応じた負担限度額を超えた時に、超えた分が払い戻される」制度です。 例えば、市町村民税が課税されていて課税所得が380万円未満の人は、上限額44,400円になっているので、1か月の費用が50,000円かかった場合後から6,000円が返還されます。 介護保険の給付対象外の食費や、全額自己負担分は対象にはなりません。 該当する時に、市町村から申請書が届きますので、必要事項を記載して役所へ提出します。 次回以降は自動で振り込まれますが、はじめに申請をしないともらえないので注意が必要です。 介護保険負担限度額認定 介護保険負担限度額認定は、ショートステイや特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院などの介護保険施設を利用する際の負担軽減対策です。 これらの施設の利用料金は、介護保険の自己負担分(1〜3割負担)と食費、居住費が主なものになります。 このうち、食費と居住費が住民税の課税状況や年金額、預貯金などによって段階的に減額されます。 施設入所の場合は通常15〜16万円かかる利用料金が半額程度になる場合もあります。 要件が複雑ですので、役所の介護保険窓口で対象になるのかどうか確認してみてはいかがでしょうか。 介護保険料の滞納 こちらは自己負担を軽くするというよりは、負担を重くしないようにするための注意点です。 40歳から納付義務のある介護保険料は、健康保険料とあわせて納付します。 年金を受給するようになると、特別徴収といって年金から天引きされるのが基本です。 ただし、年金額が年間18万円未満だったり年度途中で65歳になったり、引っ越したりすると普通徴収になり、納付書や口座振替で支払うことになります。 介護保険料を滞納すると、期間によって以下のようなペナルティが課せられるので、注意しましょう。 滞納期間 対応 内容 1年以上 介護保険給付の支払い方法の変更(償還払い化) 通常1〜3割負担のところ、一旦10割支払い、その後申請をして7〜9割分の払い戻しを受ける。 1年6か月以上 介護保険給付の一時差し止め 一旦10割支払った後、7〜9割の払い戻しが差し止められる。介護保険料を支払えば払い戻されるが、支払わないと差し止め分から差し引かれる場合がある。 2年以上 介護保険給付の減額 時効により介護保険料が納付できなくなる。 また、通常1〜3割の自己負担が3〜4割負担になり、高額介護サービス費の対象外になる。 介護保険料を滞納すると上記のようなペナルティが課され、自己負担が重くなります。 滞納すると市町村から督促状や催告書が送られてきますので、速やかに納付しましょう。 まとめ いかがでしたでしょうか。 本記事では、介護保険の上限や、上限を超過した場合の対策と、自己負担を軽くする制度について解説しました。 介護保険の上限は区分支給限度基準額で決まっている 区分支給限度基準額を超過すると、超過した分は全額自己負担になる 区分支給限度基準額を超えないようにするには要介護度の区分変更申請が有効 介護保険の自己負担を軽減させるには、高額介護サービス費や介護保険負担限度額認定などの制度を活用する 介護保険料を滞納すると自己負担が重くなる場合がある 介護保険の制度は複雑で、利用者やその家族が自ら理解して制度を活用することは現実的ではありません。 ケアマネジャーには利用者やその家族が安心してサービスを受けられるよう、制度をうまく活用し導く役割が求められています。 最後までお読みいただきありがとうございました。

  • 介護業務を楽にする!チームで取り組むIT連携の重要さを解説

    厚生労働省は、介護現場のIT化を進め、根拠を基にした科学的介護を推奨しています。 介護保険施設で働くスタッフの中にも、チームでIT連携に取り組み、業務を効率化したいと感じている人は多いのではないでしょうか。 業務が効率化できれば人手不足や残業が減少し、直接利用者に関わる時間が増えることにより、ケアの質の向上につながります。 本記事では、介護業務が楽になる、チームで取り組むIT連携について説明します。 介護業務とIT連携の現状 ITとは、「情報技術」のことで、コンピューターやデータ通信に関する技術の総称です。 介護保険施設の管轄である厚生労働省は、科学的介護を推奨し、介護現場におけるIT化を進めています。 ITを活用し業務を効率化することで、本来の介護業務に集中できるよう働きかけており、その為の補助金もだしています。 また、ITを活用しビッグデータを収集することで、根拠に基づく介護サービスを提供できる環境作りを目指しています。 とはいえ業界全体のIT化はなかなか進んでいないのが現状です。 記録や行政への提出書類、契約関係の書類等、介護業界はとにかく紙ベースの仕事が多くなっています。 新しくITを導入しようにも、コストがかかりますし、従来のやり方に慣れているスタッフの抵抗感もあります。 ITに詳しいスタッフや、指導できるスタッフがいる施設とそうでない施設で差が大きくなっているのが現状です。 しかし、ITを活用できれば大きな業務改善につながります。 情報共有をスムーズにするために介護業務×IT連携が効率的 介護業務とITは非常に相性がよいとされています。 厚生労働省が行った令和2年度 ICT導入支援事業 導入効果報告まとめ によると、ITを導入によって間接業務が見直されたり、業務管理が効率化されたと感じている事業所が約70%あることが分かりました。 引用:令和2年度 ICT導入支援事業 導入効果報告まとめ | 厚生労働省 介護業務にITを導入すると情報共有がスムーズになり、以下のような効果があります。 ・間接業務の時間が削減される ・業務管理が効率化される ・単純ミスが減る ・研修等の動画コンテンツを活用しやすくなる ・人手不足の解消につながる 一つずつ説明していきます。 間接業務の時間が削減される 前述の厚生労働省の調査によると、約70%の事業所がITを活用することで、間接業務の削減につながったと感じています。 利用者に対する直接的なケアにかかる労力を削減するのは難しいものです。 しかし、利用者の安全で安楽な生活を守る上でも直接的なケアには時間をかけるべきです。 ITを活用することで、記録にかける時間の削減や内容を充実なものにし、ムダな文書をなくしたり、前回作成したデータを活用することができます。 すると、時間を削減することができるため、直接利用者に関わらない部分の業務スピードを上げることが可能です。 業務管理が効率化される 事業所内外との情報共有が円滑にする、シフト管理を効率化できる、重複する記録を廃止したりする等して、職員一人当たり一日30分から1時間削減することが可能です。 一日3人勤務していたら、1.5時間から3時間が確保できることになります。 これだけ時間が確保できたら、直接利用者に関わる時間も自然と増えていきます。 単純ミスが減る 業務のIT化が進むと、紙に書いていた記録をスマホやタブレット等を使って行うことになるため、文字を書くことなく記録業務が完了します。 記録時間を削減するとともに清書や転記作業がなくなり、同時に他部署との情報共有も可能です。 ・紙に書く ・PCで入力 ・他部署へ報告 これらの工程が端末への入力のみになるので、この間に起こるヒューマンエラーはなくなります。 うまくITを活用できれば、業務が簡略化されると同時に単純なミスが減ります。 研修等の動画コンテンツを活用しやすくなる 介護現場はシフト制のことが多く、スタッフが一つの場所に集まって行う研修は、時間設定が難しい場合があります。 今は新型コロナウィルス対策で集合研修を控えている事業所も多いのではないでしょうか。 最近ではYou Tubeで動画研修を行ったり、Zoom等を活用してオンラインで講義を行う方法が広まっています。 現場で行うOJT以外にも、動画コンテンツを活用した研修を取り入れることで、法定研修や職員育成につなげることができます。 人手不足の解消につながる IT化が進むと時間が生まれます。 それまで2時間かかっていたことが半分の1時間でできるようになります。 そうすることで、フロアに一人多く配置できる時間帯もできるでしょう。 普段できない後回しにしていた業務に手が届くようになります。 また、業務にITを取り入れていることをうまく発信できれば、就職や転職活動をしている人に良いアピールが可能です。 結果的にスタッフが集まりやすい事業所になっていきます。 このように、介護業務とITの相性はとても良く、情報共有がスムーズになることで、業務の効率化がすすみ、時間が生まれ、ケアの質を向上することに繋がります。 ただし、個人情報を取り扱うことになるので、人まちがいなどの入力ミスや業務用携帯電話、USBメモリなどの紛失による情報漏洩には十分注意しましょう。 介護業務×IT連携の導入例 実際に介護現場に導入されているIT機器にはどのようなものがあるのでしょうか。 代表的なものには以下のものがあります。 ・インカム ・見守り支援システム ・ケア記録システム ・SNSを活用した一括メッセージ送信 ・共有フォルダの活用 それぞれ一つずつ説明していきます。 インカム インカムは、マイク付きのイヤホンやヘッドセットを装着し、相互に通信できる無線機のことです。 複数のスタッフ間で一斉に情報伝達できるのが特徴です。 業務連絡やセンサー作動時に誰が対応するか等、他の業務をしながら相談や指示出しができます。 コストや衛生面、介助中に機器が邪魔になる、自分が望んでいない情報も聴こえてしまう等のデメリットはありますが、補助金の対象になることもあり、介護現場での導入が進んでいます。 見守り支援システム 慢性的な人手不足の介護現場で、見守り支援システムは利用者の状態を察知し、スタッフをサポートしてくれます。 利用者の居室やベッドにカメラやセンサーを設置し、呼吸数や心拍数、眠りの深さや体の動きを可視化することが可能です。 異常や状態に変化のある場合はナースコールやアラームが作動しスタッフに知らせてくれます。 巡回の頻度を減らすことができるのでスタッフの心身の負担軽減にも繋がります。 利用者の動きをリアルタイムで確認できるので事故の防止にも繋がるでしょう。 システムを導入していることが施設の売りの一つとなり、スタッフや利用者の募集に繋がる可能性もあります。 ですが、過度にシステムに頼りすぎると「監視」という形で利用者のプライバシーを侵害することにもなりかねません。 見守り支援システムができるのはあくまで利用者の動きを察知するところまでです。 システムから得た情報を使うのは人間であることに変わりはありません。 転倒リスクのある利用者の動きをセンサーが察知したら、そこに駆けつけるのは人間のスタッフです。 機械を過信しすぎず、上手に活用することが大切です。 ケア記録システム 昔は日々の記録を紙に書いて綴っていましたが、現在ではPC入力が主流です。 さらに近年はスマホと連動し、ケアをしたその場でケア記録を入力することができます。。 利用者の様子やバイタルの測定等の記録をスマホやタブレットから入力すれば、記録時間が短縮され、多職種との情報共有をその場で完結します。 紙へのプリントも不要です。 機器によっては音声入力も可能なため、さらに入力時間が短縮されます。 外出先からも入力できるので訪問先から事業所に戻って記録をすることもなくなります。 検索機能を活用すれば過去の記録を探す時間も大幅削減できるでしょう。 上記のように介護業務を効率化するIT機器には多くのものがありますが、前提としてWi-Fi環境の整備は必須です。 機器の購入やスマホやタブレット等の端末、専用ソフトの整備も必要なので、うまく補助金を活用し負担がかかりすぎないよう工夫しながら導入できるとよいでしょう。 SNSを活用した一括メッセージ送信 スタッフや利用者家族へ一斉に連絡事項を伝えたい時にSNSを活用すると、一括でメッセージを送信することができます。 以前は1件1件電話をしたり、手紙を送ったり、スタッフには連絡網を活用したりと、手間と時間がかかる対応をしていました。 事前に登録しておけば、LINEでメッセージを全体発信することが可能で、公式アカウントを活用すれば家族の個人アカウントが他者へ漏れることもありません。 家族懇談会や施設の会議にZOOMを活用するのもメッセージの発信になります。 内部研修にYoutubeを活用するのも良いでしょう。 導入時に勉強する必要はありますが、効果は絶大なので、検討してみるのはいかがでしょうか。 共有フォルダの活用 他部署で同じ書式を使用するときは、共有フォルダを活用すると効果があります。 例えば委員会の議事録や事故報告書などです。 共有フォルダに保管しておけば、他部署が作成した議事録や報告書もパソコン上で確認することができるようになるので、確認したい時にすぐに確認できるようになります。 各フロアや医務、栄養士とそれぞれの部署のパソコンのデスクトップに保管していると、書式が変わったのに反映されていないなんてことが起きてしまいます。 施設のサーバーに保管され、データを失うリスクも少なくなるので、共有フォルダを活用することも効率化の一つとなります。 まとめ いかがでしたでしょうか。 介護業務とITが連携することで業務が効率化できることを説明してきました。 介護業務×IT連携が効率的な理由は 情報共有がスムーズになる ・間接業務の時間が削減される ・業務管理が効率化される ・単純ミスが減る ・研修等の動画コンテンツを活用しやすくなる ・人手不足の解消につながる 介護業務×IT連携の導入例として ・インカム ・見守り支援システム ・ケア記録システムなど ・SNSを活用した一括メッセージ送信 ・共有フォルダの活用 について説明しました。 IT機器を導入する目的は情報共有をスムーズに行い業務を効率化することで時間を生み、ケアの質を向上させることです。 個人情報の取り扱いとのバランスに留意し、それぞれの事業所にあったIT機器を導入するとよいでしょう。 最後までお読みいただきありがとうございました。

  • 監視カメラを介護現場で活用する目的とは?問題点と活用方法等を解説!

    最近、介護現場での犯罪や暴力行為等が報道されることが増えています。 客観的な証拠を残すという目的で、監視カメラを導入している施設も多くなってきています。 監視カメラの設置を希望しているのは、施設運営する事業者と大切な家族を施設へ預けている利用者家族の双方です。 監視カメラを活用すると、防犯や虐待に対する抑止力、事故の検証等の面で、速やかかつ明確な事実確認ができ、スタッフや利用者を守ることにもつながります。 ですが、常に監視されているスタッフや利用者の心理的な負担は大きいものです。 本記事では、介護現場で上手に監視カメラを活用する方法と、今後の監視カメラの使用目的について解説します。 介護現場に監視カメラを導入する目的 Wikipediaによると、監視カメラとは「何らかの目的で何らかの対象を監視するためのビデオカメラである」とのことです。 起きた出来事を映像として記録する監視カメラですが、介護現場に設置する目的は以下のようになります。 ・防犯 ・虐待等、スタッフの言動に対する抑止力 ・事故発生時の検証 以下で一つずつ説明していきます。 防犯 主に施設の正面玄関やスタッフ専用の出入り口等、外部から施設内への入口部分に設置します。 外部からの予期せぬ侵入者の証拠が残るため、障害者施設で起きた外部侵入者による殺傷事件以降、需要が高まっています。 他には、利用者の家族が帰った時刻を確認したり、近隣で事件が起きた時に警察からデータ提供を求められたりする場合もあります。 虐待等、スタッフの言動に対する抑止力 スタッフの不適切な言動や金品の紛失について報道されるケースがあります。 起きてはならないことですが、今後も起きてしまう可能性はゼロではありません。 事業所としても、まさか自施設で起こるとは思いたくありませんが、リスク管理としてカメラを設置する選択肢は有効です。 食堂や廊下、場合によっては居室にカメラを設置し普段から映像を録画しておくことで、何か起きた際に確認できる環境を作ります。 カメラがあるというだけで抑止力になりますし、業務改善としてスタッフの動き方を考える上でも有効活用できます。 事故発生時の検証 転倒等の事故が起きた時、転倒した瞬間を見ていないケースが多く、日ごろの利用者の行動や発見時の状況から「おそらくこのように転んでしまったのだろう」と原因を推測します。 食堂や廊下にカメラが設置してあれば、事故が起きた時の映像がそのまま残ります。 何かにぶつかったのか、体の向きを変えたときにバランスを崩したのか、頭を打っていないか等の原因や状況が誰が見ても明らかです。 初期対応の応急処置や受診が必要かどうかの判断がスムーズになり、受診先でも医師への正確な情報提供が可能になります。 再発防止策を検討する際も、映像を見ながら検討することでより現実的な対策を出せるでしょう。 監視カメラを設置する目的は以上のようなものがありますが、導入するには主に心理面の障壁もありますので、次の項目で説明していきます。 介護現場に監視カメラを導入する時の問題点 介護現場への監視カメラの導入を進めるにあたり、一番問題となるのはプライバシーの侵害にあたることです。 施設とは言え利用者にとっては生活の場です。 生活の場を監視して管理するというイメージがあり、道徳的にいかがなものかと考える方も多いのではないでしょうか。 生活する利用者からみてもカメラに監視されて生活するのは息苦しいものです。 まじめに働いているスタッフも、自分の些細な言動が逐一チェックされるのは働きにくいでしょう。 「信頼されていない」と感じるスタッフがでてくる可能性もあります。 導入すれば活躍の場面が多い監視カメラですが、心理面の障壁はモチベーションが低下する一因になることもあります。 スタッフや利用者、利用者の家族に向けて導入の目的を明確にし、根気よく説明することが求められます。 次は監視カメラを上手に活用する方法について説明していきます。 介護現場で監視カメラを活用する方法 介護現場で監視カメラを活用するために押さえておきたいポイントが5つあります。 ・目的を明確にする ・ルールを作る ・設置場所を検討する ・家族や利用者への説明 ・スタッフへの説明 以下で一つずつ説明していきます。 目的を明確にする 施設としてなぜ監視カメラを設置するのか、どのように活用するのかを明確にしましょう。 前述の防犯、虐待予防、事故検証が主なものになります。 自身の施設にとっての目的を明確にし、利用者やその家族、スタッフの理解を得られるようにしておきます。 傷害事件や虐待について大きく報道される機会もあるので、監視カメラを設置することが自分たちを守ることにつながることを、本人、ご家族、スタッフに説明し相互理解を得る努力をすることが大切です。 ルールを作る 次のポイントは「録画した映像をどのように活用するか」です。 録画した映像は個人情報の為、開示の仕方を決めておく必要があります。 監視カメラを設置した後は基本的には常に録画されている状況です。 家族から「普段の生活の場面を見たい」と映像の開示を求められても安易に見せるものではありません。 行政や警察からの依頼、事故発生時の検証、その他トラブル発生時の確認等、映像を使用する場面をあらかじめ決めておき、文書化しておく必要があります。 設置場所を検討する 設置場所を検討し決めることも必要です。 食堂、廊下、玄関等の共有部分への設置にさほど悩むことはないでしょう。 一番悩ましいのは居室をどうするかです。 居室はスタッフと利用者が密室で1対1になる場なので虐待や不適切なケアが起きやすい環境でもあります。 転倒リスクの高い利用者には行動の把握のためにできれば設置したいところではありますが、プライバシーの侵害になることが心配です。 居室に設置する場合はよく話し合い、どのような目的でどのように設置するのか検討することが大切です。 家族や利用者への説明 安全を守る為に使用する監視カメラですが、一人の人の行動を常に見られる状況であることは間違いありません。 入所する際に、施設の方針として監視カメラを設置していることや、設置している場所や録画している映像の活用方法について説明しましょう。 スタッフへの説明 監視カメラを設置する際は、スタッフへの説明も必要です。 監視することが目的ではなく、事故発生時の検証や虐待を防止することで、自分たちを守ることにつながることを理解してもらう必要があるからです。 施設に過失のない転倒事故が起きた時に、家族から「施設の対応が悪い」等の事実でないクレームを言われてしまっては、関わったスタッフはショックを受けてしまいます。 映像が残っていれば施設は毅然と対応することができます。 監視カメラを設置する目的を利用者や家族だけではなく、スタッフにもしっかり説明することが大切です。 今後の監視カメラの使用目的は「監視」から「記録」へ これまでの監視カメラは、文字通り「監視」が目的でした。 施設にどんな人が出入りしたか、スタッフの振る舞いは適切だったかなどを確認するために監視カメラを導入していたのです。 しかし、権利者意識の強い利用者や家族が増えている昨今、理不尽な要求を強いられたり、事故に対して施設に責任を押し付けられるような場面も想定しなければなりません。 今は一つの転倒事故が裁判にまで発展する時代です。 もちろん、施設側に過失のある事故については相応の対応をする必要があります。 ですが、転倒した場面が記録されていることで、訴訟リスクを回避できる場合もあるでしょう。 「監視」だけでなく「記録」のためにカメラを使用していくことを考える時期がやってきています。 まとめ いかがでしたでしょうか。 介護現場に監視カメラを導入する目的や心理的な障壁、活用する方法について解説しました。 監視カメラを導入する目的は、 ・防犯 ・虐待等、スタッフの言動に対する抑止力 ・事故発生時の検証 等 監視カメラの活用方法については、 ・目的を明確にする ・ルールを作る ・設置場所を検討する ・家族や利用者への説明 ・スタッフへの説明 監視カメラの今後について、 ・使用目的が「監視」から「記録」へ変わっていく ・転倒事故などの映像が適切に保管されると訴訟などのリスクを軽減させられる場合もある 現在は車にもドライブレコーダーがついている時代です。 プライバシーやスタッフの心理的な負担には最大限の配慮をしつつ、上手に監視カメラを活用することで、利用者の安心できる生活や、スタッフの働く環境を整備することができます。 最後までお読みいただきありがとうございます。

  • 訪問介護のあり方とは?「自立支援型」とはどのようなことを指すのかを解説!

    訪問介護とは、要介護度の利用者が日常生活の上で困難とする動作や作業をヘルパーが訪問し介護を行うサービスです。 今回は、訪問介護の「自立支援型」について紹介します。 訪問介護のあり方 訪問介護はなぜ存在しているのか、その理由についてご紹介します。 なぜ訪問してまで介護をするの? 昨今、団塊の世代が75歳(後期高齢者)を迎える「2025年問題」がすぐそこまで迫ってきています。 まだまだ元気で若々しい高齢者も増えている反面、介護を必要とする高齢者も増加してきているのが現状です。 「子供達に迷惑をかけない」「事前に調べてサービスに興味を持った」等、様々な理由で施設入所を希望される方もいます。 しかし、多くの人は「できるだけ長く住み慣れた自宅で過ごしたい」という思いが強いようです。 家族のいる高齢者は、一日も長く一緒に家で過ごす事を、独居となった高齢者は思い出が詰まった家でゆっくり過ごしたいと其々の理由はある様です。 しかし、在宅生活に支障を来す様になってはそんな思いも叶えられません。 また、最初にも述べましたが「2025年問題」は少子高齢化が進み、国民の4人に1人が75歳以上となる事で様々な影響を及ぼすと言われています。 支えて欲しい人が増える一方、反比例する様に支える人が居なくなるという事は、日常生活に困難があっても支えてくれる人が少ない利用者側と、支えたくても人数も支援も負担も賄い切れない介護側とのパワーバランスが崩れて共倒れに成りかねないことを意味しているのです。 要介護認定を受けたとしても、住み慣れた自宅で日常生活上必要な動作や行為が少しでも自身で行える様になれたら、それは身体的にも日常生活を送る上でも生活の質を維持向上する上でも意義のあるものであり差し迫った問題に対し解答の糸口へと繋がります。 介護が必要になった方たちの生活の質を維持しながら、在宅で過ごせるようにするために訪問介護があるのです。   昔は「お世話型」今は? 介護保険制度が始まったのは2000年(平成12年)4月からです。 介護保険制度は「高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組み=介護保険」という形でスタートしています。 現在の介護保険も、「高齢者が尊厳を保ちながら暮らし続けることができる社会の実現を目指す」とされていて、高齢者も皆と同じ様に其々が地域で元気に自立し暮らしていく事ができる共存社会を目指しています。 基本的に介護保険は「高齢者の自立支援」を始めから謳っているのですが、昔から ・お年寄りは大切に ・お年寄りの面倒は若い者が看るもの ・子が親の老後を看るのは当たり前 という思考や伝承の傾向が根強くあります。 そのためか、訪問介護サービスもどちらかと言えば「お世話型」と呼ばれるサービスを行いがちでした。 事実介護認定を受けて訪問介護サービスを受ける事になった利用者は、生活を送る上でできない事をヘルパーにしてもらう=日常生活が送れる様になるというプランでヘルパーによるサービスを受けていた所が多かったのではないでしょうか? 上記の図の様に、要介護1も要介護5も同じようにできない事をしてもらっているばかりでは、どんどんできない事が増えていくだけです。 そして、介護度が増すに連れてサービスの内容も日数も増えていくという緩やかな悪循環に陥ります。 家族の形は変わっていきます。 大家族から核家族へ、子供も兄弟姉妹から一人っ子へ、結婚して家庭に入っても夫婦共働きが増え、隣近所が誰か分からないというようにご近所同士の繋がりも薄くなりました。 そのため、近年では孤立化が目立つようになっています。 そんな現実の中、上記にも述べた様な高齢者に対する昔からの思考・伝承が特に介護では反映されている事態が多い為、 「お年寄りにあれこれさせてはいけない=お世話する、面倒を看るのが介護だ」 という認識を世間一般では当然とされているのが現状です。 介護サービスも例に洩れず、「お世話型」という形で行われていたのも少なくはありません。 ここで間違えないで頂きたいのは、決してこの思考・伝承が悪いという事ではないということです。 古来より守り継がれてきた先駆者、功労者を大切にするという考えは大切であり、素晴らしい事です。 しかし、何でも大切にした結果「まだできる」事を「できない」事に変えてはいけないという事がとても重要です。 腰痛により重い物があまり持てず、歩行もやや不安定な利用者が訪問介護で生活援助を利用したとします。 お世話型のサービスでは、ヘルパーによる掃除機での掃除や洗濯物の取り込み整理整頓が行われた場合は利用者はただそのサービスをしてもらうのみです。 この場合、ヘルパーによって「清潔が維持できる」「安全に過ごす事ができる」「生活環境が保たれる」のみの授受一択となってしまいます。 例えば、利用者が軽い物が持てた場合は、柄の長い箒を使用して掃くことをお願います。 洗濯物の取り込みはヘルパーが行い、利用者はヘルパー見守りの下テーブルで洗濯物を畳む 整理整頓はヘルパーと共に行ってもらいます。 このように利用者も出来得る範囲で行動し今後に繋がる形にすれば、 「共に行う事で清潔が維持できる」 「共に行い確認する事で安全に過ごす事ができる」 「共に行う事で生活環境が保たれる」 という自立支援に向けたサービスの提供となります。 利用者の中には、何でもしてもらいたい人もいるかもしれません。 訪問介護サービスを契約して利用しているのだから、ヘルパーにはできない事を何でもしてもらいたいという気持ちは分かります。 しかし、ヘルパーは家政婦ではありません。 この先地域で暮らしていく上で、本当に困った事を地域社会全体で支え合い、日常生活を維持していく為の介護保険である事を今一度見直す必要があるのではないでしょうか。 その人なりの自立した生活を 訪問介護サービスのケアプランに謳われる「残存機能の維持」は、身体介護にも生活援助にも該当し、自立した生活を送る為に最低限必要とされる能力です。 介護度も人様々であり、生活環境や身体状況や経済状況、現症歴によって、できる事とできない事には差があります。 ケアプランに沿った訪問介護サービスを提供する事は当然ですが、ヘルパーは誰よりも利用者の近くで対応する為、利用者の心身の変化に気付きやすいものです。 現在の介護保険は自立支援型であり、 「その人が生活する上で行える動作をどうすれば継続していけるか?」 「プランでは共に行う作業であっても今の身体状況ではちょっと無理なのでは?」 「この部分はヘルパーが対応する形だけれど、一緒に行う能力があるのでは?」 等、訪問介護に入ったヘルパーからの報告でプランが見直され変わっていく事も珍しくはありません。 例えば、生活援助で夕食の下ごしらえをヘルパーが行うというプランがあるとします。 ケアプランに沿った訪問介護計画が立てられ、ヘルパーは計画通りに訪問介護に入ります。 長時間の立位が困難で台所に立つ事が難しいけれど、最後の味付けは自分でしたいという希望があれば、下ごしらえはヘルパーが行います。 しかし、実はイスに座って玉ねぎの皮を剥くやピューラーで根菜の側を剥くといった作業ができると 気付いた場合にヘルパーの取るべき対応はどうすべきなのでしょうか? ①ケアプラン通りに、そのまま調理の下ごしらえをヘルパーが行い、最後の味付けは利用者にしてもらう。 ②サービスの度にその場に応じて利用者ができる調理の下ごしらえ(イスに座っての野菜の皮剥き等)をしてもらい、調理を完成させる。 一応両方とも「形式上」は自立支援型の訪問介護サービスではあります。 不正解ではないのですが、①はほぼ「生活援助の調理」です。 ケアプラン通り、訪問介護計画書通りにサービスを遂行しているだけであり、別に悪い訳ではありません。 しかし、最後の味付け以外にも利用者のできる作業があると気付いていても、プランは下ごしらえがヘルパー対応となっています。 ヘルパーがプラン通りに料理を作ってしまうのは、自立を促すという自分でできる事を少しずつでも広げて利用者のできる能力を維持するのには弱いかもしれません。 ②は自立支援型の訪問介護に見えますが、一点注意すべき所があります。 「サービスの度にその場に応じて利用者ができる調理の下ごしらえ」がきちんとサービス提供責任者やケアマネージャー、本人や家族に伝えられているはずです。 それに応じて担当者会議が行われケアプランの変更が為され了承されています。 ヘルパーが利用者の状態に気付いて自立支援に向けたサービスを行うには、ヘルパー単独の意思決定で勝手にサービスを変える事はできません。 きちんとサービスの内容変更の手順を踏まえた上で提供すれば、「生活援助で夕食の下ごしらえをヘルパーが行うというプラン」は「できる範囲での下ごしらえを共に行いながら調理する見守り的援助の身体介護」となります。 サービス単価は若干上がりますが、利用者の今後動ける可動域は広がりその人なりの自立した日常生活を過ごす事ができる未来へと繋がる可能性があります。 事前のモニタリングやアセスメントだけでは分からないことは多々あり、ヘルパーがサービスに入って初めて気付く事も少なくはありません。 テンプレート通りに介護サービスは行えませんし、また利用者其々に応じた自立の形があります。 訪問介護はその時の状況や状態によって日々変化していき、自立の形も並行して良くも悪くも変化していくという事を忘れないようにしましょう。 まとめ 今回は訪問介護における自立支援型のサービスについて紹介しました。 ・高齢者の現状と2025年に迎える問題は、介護を求める人と介護を行う人とのバランスが崩れて共倒れの危険性がある。 ・高齢者であっても自分でできる事が増えれば、これまで通り在宅での生活を維持でき、懸念される介護の担い手不足による共倒れを回避できるきっかけとなる。 ・介護保険は2000年4月にスタートし、高齢者を社会全体で支え合う仕組みとして始まった。 ・現在は、高齢者も自立して日常生活を送れる様に地域と共存して暮らしていく形を目指しており、訪問介護もお世話型から自立支援型へ移行している。 ・お年寄りを大切にするという考えは大切だが、 何でも全てお世話をしてしまうのではなく、日常生活でできない事を支えて援助しできる事はそのままできるように維持を図る事が自立支援型の訪問介護サービスである。 ・訪問介護は在宅での日常生活を維持していく為の介護保険サービスであり、利用者の変化に気付いたヘルパーはケアマネージャーやサービス提供責任者、利用者、その家族等とよく確認し話し合い、利用者の状態や状況に応じた訪問介護を計画に則り提供していく必要がある。 訪問介護を利用する側もサービスを提供するヘルパーも、長年携わってくるとその利用者の状況や状態がよく分かってくるものです。 情が沸く事もあるかもしれませんが、その介護は本当にその人の為になるのか?ケアプランに沿ったサービスなのか?あの人はああしてくれた、こうしてくれたの言葉に揺らいでお世話型のサービスを提供してはいないか?等ヘルパーの判断が試される事もあります。 最初にも述べましたが、2025年問題はもうすぐそこにまで迫っています。 75歳以上の後期高齢者が爆発的に増えるまであと数年です。 高齢者であっても、特別な事をせずに、その人がその人なりに日々の生活を普段通りに送れる事が幸せであると考え、訪問介護サービスが行われる事を願います。