訪問介護のヘルパーはサービス時でも、医療行為や医療機関との連携を求められる状況が発生する場合もあります。 今回は、そんな状況時での対応の仕方について紹介します。 介護なのに医療行為? 訪問介護でのヘルパーさんのボーダーライン 利用者宅へ訪問し、介護サービスを行うヘルパーですが、利用者の日常生活には些細な形でも医療行為を必要とする様な事態や、簡単な処置対応を求められる事があります。 ・自宅で家具にぶつけてしまい、手に小さな擦り傷ができてしまった。 ・高血圧と診断されており、毎日血圧を測るように主治医から言われている。 ・脊柱管狭窄症の為、屈伸動作が難しくなかなか足の爪が切れない。 ・ドライアイが強く、医師より点眼薬が処方されている。 ・加齢による乾皮症で、ワセリンが処方されている。 ・利用者の手が不自由な為、口腔ケアや義歯洗浄ができない。 サービス開始前のケアマネージャーや訪問介護事業所側のモニタリングやアセスメントで以下の事柄を確認します。 ・利用者のADL(日常生活動作)やIADL(手段的日常生活動作) ・身体的にどういった動作ができて、どういった動作が難しいのか ・日常生活では何ができて何が難しいのか ・傷病歴や生活環境等 基本的には、ケアマネージャーの立てたケアプランに則り、訪問介護計画が立てられサービスを行うのですが、時に身体介護においてこれは医行為ではないのか?とヘルパーが判断に迷う事もあります。 基本的に訪問介護のヘルパーは医療行為を行う事はできませんが、下記の図の様に厚生労働省より「医行為ではないと考えられる」とされる事例があるので参照して下さい。 例えば訪問介護サービスにおいて、食事介助と図の⑤にある様に食後の口腔ケアと義歯洗浄まで訪問介護計画にある場合は、計画通りサービスを行わなければなりません。 私達も普段の生活で、食事の後に歯みがきをしたり、人によっては義歯のケアをする事は何の疑問も持たないでしょう。 利用者も同じで、口腔内外に炎症も病例も特に何も無く、食事を安全に行った後の清潔保持の為に行う口腔ケアや義歯洗浄は、ケアプランに立てられていれば、ヘルパーは口腔ケアの介助や見守り的援助にて対応します。 但し、利用者の口内に歯周病や酷い歯槽膿漏があったり、口腔内潰瘍やヘルペスの症状があり医師による診察や治療が行われている状態での口腔ケアや義歯洗浄となると、話は違ってきます。 明らかに医師の対応が必要となる状態=重篤な状態での口腔ケアを行う時は、必ず医師の指示書や看護師の指導の下にサービスを行う必要があります。 そういった場合では基本的には処置や医療行為を求められる為、軽微な状態とは言えず介護対応はできません。 その際は訪問介護ではなく訪問看護での対応となる場合もあるので、利用者の状態においては安易に自己判断したり利用者の言い分要求を鵜呑みにして言われるまま対応したりせず、ケアマネージャーや訪問介護事業所等に報告した上で正しく利用者に応じる等の注意が必要です。 訪問介護でヘルパーができる医療行為は、利用者の心身状態が安定しており、入院の必要が無く、医療技術や専門的な管理、処置を伴う事が無い状態である場合に軽微で簡易的なもののみ行えるものです。 ヘルパーができる医療行為の例外として、研修を受講した介護福祉士が行える喀痰吸引と経管栄養がありますが、「たん吸引は咽頭の手前まで」や「経管栄養の胃ろうや腸ろうの状態確認は看護師対応」等行為にはできる行為とできない行為があるので注意が必要です。 医療機関で訪問介護? 訪問介護はその名の通り、ヘルパーが利用者宅にて訪問して行われるものですが、利用者宅から出て対応する事が必要とされる場合もあります。 日常生活に必要な動作であれば、訪問介護として認められるものもあり、その認められるものに「医療機関への受診対応」も条件によっては可能です。 「ちょっと風邪ひいたから病院行ってくる。」 「毎月の定期受診だから月末病院に行かないといけない。」 「入れ歯のかみ合わせが悪くてご飯が食べにくい、歯医者に掛からないといけない。」 様々な理由により、生活に医療が関わってくるものですが、基本的に医療機関への受診対応は訪問介護ではできないとされています。 ですが、医療機関への対応が利用者一人では困難な場合や利用者の取り巻く環境や、介護を要する事が明らかに認められる状況によっては、事前対応次第で訪問介護にて対応する事が可能となります。 【院内介助ができる条件】 ①要介護度1~5の認定がある利用者 ②医療関係者の介助が望めないと事前に確認済の場合 ③当日、家族や身内の通院付添いが望めない場合 ④院内で常時見守りや介助が必要とされる場合 介護タクシーを利用される場合、訪問介護の基本として当然ながら病院内の院内介助は医療機関対応の為行えませんが、上記にある①~④全てに該当する場合は対応可能となる事もあります。 ここで注意したいのは、ヘルパーが介助できるのは受診受付、院内での移動や、トイレ介助、病院代支払い、薬の受取りです。 心身不安定で一人で待ち時間を過ごす事が困難な場合は条件により介助可能ですが、検査や処置、診察は医療対応の為、介護保険である訪問介護のヘルパーは対応できません。 では、認知症の傾向があったり、または視聴覚が困難な利用者が訪問介護を利用して受診した場合、どうなるでしょうか? 医師の診察において病状の報告や診断結果を受け対応する事は医療対応の為、訪問介護では対応できない事とされています。 この場合は上記でも述べましたが、事前対応によりヘルパー同席が可能になる事もあります。 全ての自治体が事前対応可能とは限らない為、利用者居住区の自治体に相談が必要です。 対象となる利用者が、どの動作に介助を要するのか、またはどこからが医療対応で介護対応では無くなるのかをよく確認した上で線引きし、対応しなければなりません。 介護側が計画通り対応を行っていても、突如介助や見守りを要する事があったり、医師や看護師の説明を聞いたり、利用者の状態を報告したりと、医療と介護の対応が混乱する事も多々ある為、その場その場に応じた臨機応変な対応が求められます。 医療機関で訪問介護(通院介助、院内介助)を行う為に必要な事は下記の図を参照して下さい。 あくまでも「訪問介護対応」で介助しないと病院に受診する事ができない為に、ヘルパーを介して行われるものが、通院介助または院内介助です。 訪問介護対応という事は、先程にもあった通り事前確認やそれに伴う打合せや会議、計画書の作成、記録または報告書の作成等が必要となるという事です。 要介護度認定があっても看護師の介助があれば一人でも受診できたり、医師とのやり取りが可能な場合は、ヘルパーは立ち入る事はできません。 身内や家族の様に寄り添う気持ちは大切ですが、介護保険を利用している事を忘れずに対応しましょう。 皮膚は人の身体の信号機です 訪問介護では、要介護の利用者でも自身で何等かの形でも動ける利用者と、自身の思うようには動けない利用者がいます。 (ここでは、施設や医療機関に入所せず自宅で家族の援助を受けながら過ごす寝たきりに近い状態を指します。) そういった利用者への介護は、ほぼ身体介護メインである事が多いのですが、「寝たきり」状態である場合、ケアマネージャーのプランを踏まえた上で更に注意すべき点がいくつかあります。 ヘルパーは訪問介護を通じて利用者の状態を確認した上で、「おかしいな?」「あれ?前回より状態悪くなってる!」と感じたら、状況や状態の報告を行い、適切な判断や今後の対応を検討しなければなりません。 図の①や②の場合は、状況によっては医師の診断が必要になりますし、介護ではなく訪問看護対応となる事もあります。 図③の場合、医師の診断やケアマネージャーとの検討、利用者の身体状態によっては訪問リハビリ対応となり、介護との連携を図っていく形になる事もあります。 図④~⑤に関して特に図④の場合、皮膚に状態悪化がみられ、褥瘡が確認された場合は注意が必要です。 褥瘡部への処置は医療行為ですので介護では対応できませんが、排泄により患部周辺が汚染された場合は、清拭対応としてヘルパーが介護を行います。 排泄物で汚染されたまま放置では状態悪化に繋がる為、排泄汚染されている場合は、患部周辺の洗浄、ガーゼやパットの交換、おむつやリハビリパンツの交換はヘルパーが対応します。 褥瘡、床ずれは同じ体勢により同じ個所に体圧が掛かってしまった場合にできる事が多いので、体位を定期的に動かし圧を分散させる必要があります。 それと同じくして、栄養摂取においても食事による栄養が摂取できなくなり、低栄養になってくると褥瘡ができやすく、また発症しても治りにくくなってしまいます。 食事による栄養摂取の為には、嚥下状態も大きく関わってきますし、上下肢の動きも体圧分散に繋がる上に、排泄などの基本的な身体動作に上下肢の動きは必須な為、その動作が維持できるかどうかは褥瘡発症のリスク増減に関わってくるので注意が必要です。 図①~⑤は全て連動しており、訪問介護でヘルパーが対応する介助は一つ一つが全て重要なものであると同時に、目に見えてその状態の良し悪しを教えてくれるのが「利用者の皮膚」であったりします。 ・特に状態に問題なく、その利用者なりの日常生活が送れていたら青信号です。 ・日常生活は送れているけれども、何らかの「あれ?おかしいな?」が みられたら黄信号です。 ・はっきりと異常が確認されたら赤信号で、医療対応が必要です。 介護で対応すべき範囲と医療で対応すべき範囲を理解し、利用者から出される信号を正しく受け取り、日常生活を送るという道路を走る車の一つが介護であると考えられるならば、訪問介護にて ヘルパーがどう対応すれば良いのかが分かってくるでしょう。 まとめ 今回は、訪問介護のヘルパーが、医療行為や医療機関との連携を求められる状況時での対応の仕方について紹介しました。 ・利用者の日常生活には、医療行為を必要とする様な事態や簡単な処置対応を 求められる事があり、基本的には医療行為はできないが、介護で対応可能と 解釈されたヘルパーができる医療行為がある。・ヘルパーができる医療行為でも、医療(医師や看護士等)との連携が求められる。・医療機関への受診対応も訪問介護サービスの一つであり 介助を行うには条件や事前または事後の対応が含まれる。・通院または院内介助を計画されサービスを実施しても 介護で行えるサービスと行えないサービスがある。・訪問介護で寝たきりや思うように自身で動けない利用者へのサービスでは ケアプランの他にも気を付けなければならない点があり、実際サービスに入って 認識や確認できる事が少なくない。・嚥下、栄養、可動域、皮膚、排泄の5点は連動しており 皮膚状態は身体全体の良し悪しを現す信号である。 ・状態の変化の気付きを意識して生活状況の対応をし、状態の異常時は すぐに医療との連携を図る事ができる最前線にいるのがヘルパーであるので 訪問介護時はサービスは繋がっている事を意識して行う。 「医療と介護の連携」と言われると難しく捉えられがちですが、基本的にできる事やできない事をきちんと踏まえた上で、サービスを行えば特に問題はないのです。 訪問介護で身体介護を行う、通院または院内介助を行う、身体介護で利用者の状態をよく確認する、これらは全て利用者の日常生活を安全に送る為の一つで、全ては連動しているのだと考えられたならば介護に対しての理解も深まるでしょう。 不安を持ったままサービスを行えば利用者にも不安が伝わります。 「ヘルパーは介護のプロだ」と自信を持って訪問介護サービスを行いましょう。
できる限り自宅で自立して生活したいと願われるご利用者様の救世主ともいえる定期巡回・随時対応型訪問介護看護とはどんなものなのでしょうか。 ここでは定期巡回や随時対応型訪問介護看護について解説します。 定期巡回・随時対応型訪問介護看護って何? このサービスの名前を聞きなれない方も多いのではないでしょうか。 このサービスは24時間体制で主に在宅介護で介護を受けているご利用者様へできる限り自立した生活を行ってもらう為の支援サービスです。 このサービスは通常の訪問介護と少し違い、定額でサービスが利用できます。 ここまではざっくりとした説明ですが、ここからは細かい点も含めての説明をしていきます。 定期巡回について このサービスは、ご利用者様ごとに作成した訪問介護計画書をもとにして行われます。 内容としては一般的な訪問介護と一緒で、食事介助、入浴介助、排泄介助といった身体介護のサービスがメインです。 サービス内容にもよりますが、筆者が経験したケースでは、短いもので10〜15分程度、長いもので1時間ほどのサービスでした。 このように、数分で終わる安否確認から、1時間かかる排泄介助、食事の提供等長時間に及ぶものなどさまざまなサービスがあります。 随時対応・随時訪問について このサービスはご自宅にナースコールのようなものを設置し、ご利用者様は緊急時にそのコールを鳴らすことでオペレーターと話をすることができます。 オペレーターにどのようなことで困っているのかを伝え、その結果その方の近くで手の空いている職員に依頼をして対応してもらうと言う流れになります。 基本的に夜間も含む24時間対応で、必要に応じてご利用者様のお宅に伺いサービスの提供を致します。 訪問看護サービスについて 訪問看護は、看護師が自宅に訪問しご利用者様ごとの病気や障害に応じて医療的ケアを行ってくれるサービスです。 このサービスは基本的に医師の指示のもと行いますが、病院と同じような医療処置も行うことがあります。 そのため、ご自宅で最後を迎えたいという希望がある場合は、それに沿った看護も行うことも可能です。 具体的なサービス内容は以下の通りです。 健康状態の観察 ・病状悪化の防止・回復 ・療養生活の相談とアドバイス ・リハビリテーション、点滴、注射などの医療処置 ・痛みの軽減や服薬の管理 ・緊急時の対応 ・主治医・ケアマネジャー・薬剤師・歯科医師との連携 自宅で介護を受けたいご利用者様からすれば、訪問看護の仕事は、定期巡回サービスにおいて欠かせないものであると言えます。 訪問回数はどれくらい? 結論からお伝えすると要介護度が上がれば上がるほど、介助する内容も増えるため訪問回数は増えます。 要介護が低いと基本的にご自身でできることは行ってもらい、ご利用者様の負担になることをヘルパーがお手伝いするケースが多い為、時間も短くなります。 介護度が高いと、基本的に全ての動きでヘルパーに委ねられることが多いため、当然介助に時間がかかります。 なので、訪問頻度も増えるご利用者様が多かった記憶があります。 定期巡回・随時対応型訪問介護看護のメリット 定期巡回・随時対応型訪問介護看護のサービスはどのようなメリットがあるのかご説明していきます。 ①24時間対応が可能な唯一の介護サービス 定期巡回・随時対応型訪問介護看護はあらかじめ決められた定期巡回に加えて、緊急のコールの24時間体制サービスが受けられます。 そのため、施設とは違い一人暮らしの方や、家族が遠くてすぐに駆けつけられない方などは安心して在宅生活できるサービスです。 施設入所をすれば、24時間のサービスを受けれるところは多いですが、中には施設入所を拒否されるご利用者様もいらっしゃいます。 経験談として、施設入所をしているご利用者様はご自分の慣れた環境ではないため、不安定になる方が多いです。 その点在宅介護でのご利用者様は、メンタル的な不安定さは感じられず穏やかなご利用者様がほとんどでした。 その点から見ても、このサービスは訪問介護の救世主と言えます。 ②定額制のサービス 通常の訪問介護では介護度が上がると費用も増えて、ご家族の費用負担もサービスの回数ごとに変動します。 定期巡回・随時対応型訪問介護看護のサービスであれば、定額の金額設定なので予算の見通しが立てやすく、経済的にも優しい良いサービスと言えます。 定期巡回・随時対応型訪問介護看護のデメリット 定期巡回・随時対応型訪問介護看護のサービスはメリットばかりではありません。デメリットも併せてよく考えてから利用するようにしましょう。 ①他サービスとの併用禁止 このサービスは他の訪問介護サービスとの併用禁止です。 利用するサービスが限定的になってしまうため、このサービスを利用をしないと言うご利用者様もいると思います。 ②介護職員が変化する 定期巡回のサービスは、特定の介護職員だけが来ることはなくなります。 特に随時訪問になると近くで手が空いている介護職員の対応になるため、その辺りの理解が必要になります。 介護はご利用様との相性も重要なので、契約の際に事業所の職員の雰囲気なども見ておく事をお勧めします。 ③利用頻度によっては通常の訪問介護の方がお得 定額の部分がメリットとして大きいサービスと説明しましたが、このサービスの利用頻度によっては通常の訪問介護サービスの方がお得になることもあります。 要介護度によって、訪問介護一回にかかる費用が違いますが、実際にどれくらい利用してどのようなサービスを受けたいのかをよく見極める必要があります。 その上で、定期巡回サービスか訪問介護かを決めて利用すると良いでしょう。 どんな人が利用しているの? この章では定期巡回・随時対応型訪問介護看護の実際のサービス利用者についてお話ししていきます。 サービスの内容はお伝えしましたが、どのような方が利用しているのかを知ることで、今後の介護の参考にしてみてください。 定期巡回・随時対応型訪問介護看護の利用がおすすめの人とは このサービスは24時間体制で緊急時含めた対応を行なってくれます。 施設ではなく自分の生活してきた環境で介護を受けたい人や、自分の生活してきた環境でサポートを受けながら生活していきたい人などにおすすめです。 特にこのような人にへおすすめします。 ・独居で家族が近くに住んでいないご利用者様 ・一部介助が必要なご利用者様 ・自立しているが安否が心配なご利用者様 ・介護が必要だが、定期的にサービスを受けたいご利用者様 このサービスは定額で、食事・入浴・排泄などを一定の間隔でサービス提供してくれます。 他にもナースコールのようなものが配布され、何かあった際に、随時サービスを提供してくれるのです。 定期的に介護が必要で、安心して自宅で生活したい人に最適なサービスです。 サービスを受けるため条件と対象者とは まず前提条件として、要介護1〜5のご利用者様が対象です。 注意点としては以下の2点に注意しなければいけません。 ①地域密着型サービスなのでご利用者様の住民票が利用したい事業所と同じ地域にある必要があること ②定期巡回・随時対応型訪問介護看護を利用すると他の訪問介護・看護と夜間対応サービスの併用はできないこと この条件を満たした人は、ご自身の地域に定期巡回・随時対応型訪問介護看護のサービスを提供している事業所がないかをケアマネジャーさんに聞いてみて、サービス使用の検討をするのも良いかもしれません。 まとめ 定期巡回・随時対応型訪問介護看護のサービスは以下のような特徴があります。 ・利用頻度が多く特に在宅生活を希望しているご利用者様に適しているサービス ・費用や利用したいサービスの内容がマッチした時は、このサービスのコストパフォーマンスは大きいものになり、ご利用者様と家族の救世主となる。 最後までお読みいただきましてありがとうございます。
介護保険制度では、要介護度によって受けられるサービス料の上限が決まっています。 ケアマネジャーは、決められた上限の範囲におさまるようにサービスを調整しなければなりません。 本記事では、介護保険の上限が決まっていることや、この上限を超過した場合の対策、自己負担を軽くする制度について解説します。 介護保険の上限は区分支給限度基準額で決まっている 介護保険のサービスは、訪問介護やショートステイ等のサービスごとに使用できる単位数が決められています。 そして、要介護度によって1ヶ月間に使用できる単位数の上限が決められており、それを区分支給限度基準額といいます。 区分支給限度基準額とは 区分支給限度基準額とは、要介護度ごとに設定された介護保険サービスの月の上限を単位数として設定しているものです。 介護保険はサービス毎に単位が決められており、ケアマネジャーは区分支給限度基準額を超えない範囲で、サービスを組み合わせて調整します。 利用者の自己負担は、所得によって1〜3割に設定されていますが、在宅介護を続けていくと、加齢やADLの低下にともない必要なサービス量は増えるものです。 サービス量が増えると、自己負担とともに介護保険の公的なお金の利用も増えていきます。 しかし、財源に限りがあるので上限が設けられているため、その範囲内でサービスを調整するよう求められています。 ○在宅サービスの区分支給限度額と自己負担額 区分 支給限度基準額(単位) 利用限度額 (円) 1割負担の時の 自己負担額(円) 要支援1 5,032 50,320 5,032 要支援2 10,531 105,310 10,531 要介護1 16,765 167,650 16,765 要介護2 19,705 197,050 19,705 要介護3 27,048 270,480 27,048 要介護4 30,938 309,380 30,938 要介護5 36,217 362,170 36,217 ※1割負担、1単位=10円の場合 参考:目黒区 区分支給限度額(介護保険から給付される一か月あたりの上限額) 区分支給限度額を超過すると全額自己負担になる 区分支給限度基準額を超過してしまった場合、超過した分の介護保険は利用できないので、全額自己負担で支払うことになります。 例えば、1割負担で要介護5の人が1ヶ月に400,000円分の介護保険サービスを利用したとします。 1割負担の支払額は40,000円ですが、限度額は36,217円なので、40,000−36,217の3,783円分超過してしまいます。 この場合、超過した3,783円は全額自己負担になりますので負担額は10倍の37,830円です。 全ての負担額の1割負担分の36,217円と全額自己負担分の37,830円を足して、74,047円がこの方の自己負担額になります。 急に負担が増えてしまいますので、ケアマネジャーは上限の範囲内でサービス調整する必要があります。 介護保険の上限を超えないようにするための対策の一つは、要介護度の区分変更を申請することです。 介護保険の上限を超えないようにするには区分変更を申請する 介護保険の上限を超えないようにするには区分変更申請が有効です。 要介護度が上がると区分支給限度基準額が上がりますので、利用できるサービスの量を増やせるからです。 例を挙げると以下のようになります。 要介護1の時は車椅子のレンタルができなかったが、要介護3になったらできるようになった。 要介護2では他のサービスとの兼ね合いでショートステイが1週間しか利用できなかったが、要介護4になったことで10日利用できるようになった。 特養入所を考えているが、要介護2の状態では入所できないので要介護3以上にしたい。 上記のように、区分支給限度基準額を超えてしまいそうな時は区分変更申請が有効です。 ケアマネジャーとして、利用者本人や家族の生活状況を見ながら提案してみるのもよいでしょう。 しかし、ご利用者様のご家族から「要介護度が上がると自己負担が増えてしまうので困る」という声が聞こえてくることもあるかもしれません。 次は自己負担を軽減させる制度について解説していきます。 介護保険の自己負担を軽くする制度 在宅介護を続ける上で、費用負担を軽くすることも大きなポイントです。 ここでは、自己負担を軽くする制度である「高額介護サービス費」「介護保険負担限度額認定」や、「介護保険料を滞納すると自己負担が増える」ことについて説明します。 高額介護サービス費 参考:厚生労働省 令和3年8月利用分から高額介護サービス費の負担限度額が見直されます 高額介護サービス費は、「1ヶ月に支払った利用者負担の合計が所得に応じた負担限度額を超えた時に、超えた分が払い戻される」制度です。 例えば、市町村民税が課税されていて課税所得が380万円未満の人は、上限額44,400円になっているので、1か月の費用が50,000円かかった場合後から6,000円が返還されます。 介護保険の給付対象外の食費や、全額自己負担分は対象にはなりません。 該当する時に、市町村から申請書が届きますので、必要事項を記載して役所へ提出します。 次回以降は自動で振り込まれますが、はじめに申請をしないともらえないので注意が必要です。 介護保険負担限度額認定 介護保険負担限度額認定は、ショートステイや特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院などの介護保険施設を利用する際の負担軽減対策です。 これらの施設の利用料金は、介護保険の自己負担分(1〜3割負担)と食費、居住費が主なものになります。 このうち、食費と居住費が住民税の課税状況や年金額、預貯金などによって段階的に減額されます。 施設入所の場合は通常15〜16万円かかる利用料金が半額程度になる場合もあります。 要件が複雑ですので、役所の介護保険窓口で対象になるのかどうか確認してみてはいかがでしょうか。 介護保険料の滞納 こちらは自己負担を軽くするというよりは、負担を重くしないようにするための注意点です。 40歳から納付義務のある介護保険料は、健康保険料とあわせて納付します。 年金を受給するようになると、特別徴収といって年金から天引きされるのが基本です。 ただし、年金額が年間18万円未満だったり年度途中で65歳になったり、引っ越したりすると普通徴収になり、納付書や口座振替で支払うことになります。 介護保険料を滞納すると、期間によって以下のようなペナルティが課せられるので、注意しましょう。 滞納期間 対応 内容 1年以上 介護保険給付の支払い方法の変更(償還払い化) 通常1〜3割負担のところ、一旦10割支払い、その後申請をして7〜9割分の払い戻しを受ける。 1年6か月以上 介護保険給付の一時差し止め 一旦10割支払った後、7〜9割の払い戻しが差し止められる。介護保険料を支払えば払い戻されるが、支払わないと差し止め分から差し引かれる場合がある。 2年以上 介護保険給付の減額 時効により介護保険料が納付できなくなる。 また、通常1〜3割の自己負担が3〜4割負担になり、高額介護サービス費の対象外になる。 介護保険料を滞納すると上記のようなペナルティが課され、自己負担が重くなります。 滞納すると市町村から督促状や催告書が送られてきますので、速やかに納付しましょう。 まとめ いかがでしたでしょうか。 本記事では、介護保険の上限や、上限を超過した場合の対策と、自己負担を軽くする制度について解説しました。 介護保険の上限は区分支給限度基準額で決まっている 区分支給限度基準額を超過すると、超過した分は全額自己負担になる 区分支給限度基準額を超えないようにするには要介護度の区分変更申請が有効 介護保険の自己負担を軽減させるには、高額介護サービス費や介護保険負担限度額認定などの制度を活用する 介護保険料を滞納すると自己負担が重くなる場合がある 介護保険の制度は複雑で、利用者やその家族が自ら理解して制度を活用することは現実的ではありません。 ケアマネジャーには利用者やその家族が安心してサービスを受けられるよう、制度をうまく活用し導く役割が求められています。 最後までお読みいただきありがとうございました。
今まで元気だった家族が突然倒れ、介護が必要な状況になったら、あなたはどうしますか? 病院に任せきりになっても、いつかは、自宅または転院、施設の入所などを決断する時はやってきます。 この記事は、突然の介護に慌てないための事前準備について紹介します。 家族が、いざという時の基本的な知識として持っていて欲しい内容です。 介護は突然始まるもの 家族介護は、何の前触れもなく、突然、始まることが多く、不十分な準備のもとで介護に臨めば、困ることが多々あります。 特に仕事を持つ社会人にとっては、今後の対応が予想困難で仕事と介護の両立ができずに離職する可能性もあるのです。 今は親も家族も健康だからといって、介護の基本的な知識がないと突然の介護でパニックに陥ることも考えられます。 今は大丈夫だからではなく、これから起こるかもしれない現実から目をそらさない行動が、介護で困らない第一歩です。 突然の介護に困らないようにするには 病気や怪我で倒れた家族の介護は、準備を怠れば不十分な状態で不安を抱えながら、始まります。 突然の介護に困らないようにするには、事前の心構えや準備が大切です。 家族でよく話し合う 家族で介護についてよく話し合うことは大切ですが、ベストなタイミングは、介護を必要としない親や家族が元気な時です。 このタイミングを逃すと、突然の介護に対応できる時間の余裕がなくなります。 家族のライフスタイルは、年齢や生活環境によって変わりますが、話し合いだけでもしておけば、突然の介護でも動揺する気持ちを最小限に抑えられます。 以下のポイントについて家族で話し合っておきましょう。 在宅介護ができるか、家族の意見を聞く 介護の中心者を決める 介護の協力者を決める 親の経済状況を確認しておく 経済状況に不安があれば、家族の介護費用の負担割合を決めておく 厚生労働省ツールを活用する 厚生労働省のホームページに「介護への事前の備え」といったツールが用意されています。 このツールは、親や配偶者など家族の個人情報をはじめ、介護に関する必要な情報を網羅できるシートです。 家族の話し合いに活用でき、家族の状況に応じてシートを増やすことで、介護に直面した時に役立ちます。 介護情報が豊富な本を見ておく 介護に関する本は数多くありますが、中でも介護情報が豊富な本を事前に見ておくことも大切です。 特に在宅介護に特化し、介護保険制度など最新の情報を記載した本は必ず役に立ちます。 介護が始まるまでには、最低1~2冊購入し、知識を増やしておけばいざという時に活用できます。 Webサイトで最新の介護情報を確認しておく 本と共に、ネット上にあるWebサイトでも最新情報が確認できます。 自分が必要とする情報だけでも有効活用すれば、事前の準備に役立てられるのです。 特に医療・介護従事者が作成した記事がある介護情報サイトは、信頼性の高い情報が得られるため、おススメです。 在宅介護をスムーズに行うためには 在宅介護をスムーズに行うためには、介護者が自覚を持つことは大切ですが、準備すべきことは沢山あります。 しかし、介護をスタートダッシュすれば、必ず、介護疲れを早めに感じてしまいます。 介護はマラソンです。 決して短距離走で息切れしない対策も考えておきましょう。 症状や薬の情報を知っておく 被介護者の症状や薬の情報を知っておくことはとても大事です。 介護が始まると、日々の介護に追われて、処方された薬の情報まで詳しく知る時間がありません。 しかし、薬の作用、副作用を介護者が知っておかないと、訪問診療の際に問題が起こることも考えられます。 担当医に薬の情報を確認しておけば、訪問医療や訪問看護でも要介護者の正確な情報を伝えられます。 また、過去の既往歴や服用していた薬は、かかりつけ医やお薬手帳で確認しておくことも大切です。 入院先で治療にあたる医師や看護師の情報になり、在宅での診療にも役立ちます。 入院中から行動しておく 病気や怪我によって入院した場合、退院までの期間が症状や状況により変わることがありますす。 退院後の介護を視野に入れるには、入院中から行動しておくことが大切です。 病院のソーシャルワーカーに相談し、退院に向けた道筋をはっきり決めておけば、在宅介護をスムーズに行えます。 介護力を上げておく 家族の介護力を上げておくことも大切なポイントです。 介護に自信がない状況で介護生活を迎えると、最悪、介護放棄につながりかねません。 入院期間中に、病院の看護師やヘルパーに介護方法について学び、可能であれば、実際におむつ交換や体位変換、痰の吸引などを経験しておけば、安心し、介護を始められます。 ただし、コロナ禍で直接介護ができない場合は、自治体などが行っている介護教室を利用するのもおススメです。 ケアマネを探しておく 介護サービスを利用し、在宅ケアにつなげるためにはケアマネの存在が不可欠です。 特に入院中の場合は、病院の医療相談員やソーシャルワーカーなどに相談してケアマネを紹介してもらえば、介護サービスの手続きや福祉用具相談員とも連携でき、在宅介護の不安が減ります。 自宅の環境を整備する 在宅介護は、現在の自宅の環境で問題がないかプロの目で確認してもらわないと、転倒などの思わぬ事故につながる可能性があります。 要介護者や介護家族のストレスの軽減、福祉用具の準備のためにもプロのアドバイスは必須といえるでしょう。 しかし、居住している家によっては、在宅介護が不可能と判断されることも考えられます。 自宅の環境整備を早めに行えば、万が一の場合も次の対応をとる時間もできます。 自治体に相談しておく 介護サービス以外で介護に役に立つのがお住いの市町村の介護福祉課や地域包括支援センターです。 介護費用に補填できる補助金などの支援があり、知っておいても損はありません。 介護が必要な主な病気や原因 突然の介護は、どのような病気や原因で始まるのでしょうか。 2019年国民生活基礎調査の概況では、介護が必要になる病気や原因ははっきりと示されています。 介護が必要になる病気であれば、退院までに介護支援を確認、調整しておくことが大切です。 介護が必要になる主な病気 介護が必要になる主な病気は、認知症、脳血管疾患、高齢による衰弱が主となっており、脳疾患による介護が全体の4割を占めています。 また、事故や転倒などによる骨折で、車椅子生活になり、在宅介護になるケースも増えています。 特に長期間の入院生活で認知症になり、家族介護の大変さから在宅から施設入所を決断する家族も増えているのです。 健康で高齢になる前に、介護に直面した時の備えが必要なことは明らかでしょう。 退院支援は病気によって変わる 退院支援は病気によって変わります。 入院中の健康状態や障害によって介護方法は変わるため、病院や施設との連携が大切です。 入院中の対応が遅れると、家族の心構えを初めとする在宅介護にスムーズにつながりません。 退院支援の体制を整えておくには次の点に注意しておきましょう。 病院と話し合っておく 医師や看護師、ソーシャルワーカーなど、病院と話し合い、退院後の治療方針などを確認して決めておくことが大切です。 入院時と退院時では健康状態や障害の状況など変わっていることが多いため、退院前には医師に聞いておきたいことを挙げてみます。 病気はこれからどうなるのか 病気は治る見込みはあるのか 食事などで気をつける点は何か 在宅で気をつける点は何か 症状の悪化や緊急時の連絡体制はどうなるのか 訪問診療や訪問看護の頻度は 介護施設の利用はどうするのか 介護が始まるまでに家族で考えておこう 介護が始まるまでに家族で考え、話し合いを重ねることは重要です。 退院時の症状によっては、在宅介護か施設の利用かの検討が必要になることもあるでしょう。 しかし、基本は患者本人の希望です。 自宅に帰りたいという意向が強いのであれば、在宅介護に向けた家族の対応や医療・介護支援が必要であるという認識を持つことが大切なのです。 まとめ この記事のポイントは次のとおりです。 突然の介護は事前の備えが大切 元気な間に、家族との話し合いや各種ツール、本、ネットから情報を得ておく 在宅介護をスムーズに迎えるためには、入院直後から動き出す 退院支援を病院やソーシャルワーカーに確認し、悩みを解決しておく 高齢になると、些細な病気や怪我でも、介護が必要になる可能性が高くなります。 親や配偶者が元気な間に、突然の介護に困らないように、在宅か施設かを考えておくことが大切です。
「認知症の症状を改善したい」 「認知症にならないように予防したい」 そう考えることはないでしょうか。 認知症の症状は正しいケアをすることで改善できます。 また生活習慣を整えることによって認知症は予防することが可能です。 この記事では認知症の症状の改善や認知症の予防について解説していきます。 認知症の予防にはカレーがおすすめ みんな大好きなカレー、もはや国民食と言っても良いでしょう。 そんなカレーですが、実は認知症の予防に効果があると言われてます。 カレーを食べれば認知症予防になる!カレーの3つの効果 ではカレーはどのような理由から認知症予防に効果があると言われているのでしょうか。 詳しく解説していきます。 【効果①】カレーに含まれるスパイスの一種クルクミンに秘密がある カレーに含まれる代表的なスパイスにターメリックがあります。 そのターメリックにはポリフェノールの一種であるクルクミンが含まれていますが、そのクルクミンに認知症の原因となる「アミロイドβ」の生成を防ぎ、分解する作用があると言われています。 実際にシンガポールに住む60歳から93歳の1,000人を調査した結果によると、カレーを一ヶ月に一回食べる人は、まったく食べない人と比較して認知症の発症率が50%も低かったという調査もあります。 【効果②】カレーはバランスの良い優秀な食べ物。 カレーは肉や野菜など様々な具材が入っているバランスの良い食事です。 バランスの良い食事は低栄養状態を防ぎ、筋肉量の低下を防ぐことにも繋がります。 筋肉量の低下を防げれば転倒防止になり、寝たきりリスクを減らすこが可能です。 寝たきり状態は認知症リスクを高めるため、いかに転倒しないよう注意するかが大切です。 筋肉量を維持するためにもバランスの良い食事を心がけましょう。 【効果③】料理をすること自体が認知症予防になる カレーだけでなく料理全般に言えることですが、料理は脳と身体を使います。 同時に脳と身体を使うことにより認知症の予防になると言われています。 料理は「献立を考える」「具材の買出し」「料理の段取りを考える」「実際に料理をする」「味を整える」「盛り付ける」など複数の工程から成り立ちます。 複数のことを同時に進めるには、脳の司令塔である「前頭葉」を使うため、脳に良い刺激となるため、認知症予防になると言われています。 また、作った料理を誰かに食べてもらう喜びも、感情的に脳に良い刺激になるでしょう。 認知症の予防には適度な運動が最適 運動が健康に良いと良く言われていますが、これは本当のことです。 では認知症の予防に対してどこまで効果があるのでしょうか。 なぜ運動が認知症予防になるのか?4つの理由 運動すればすぐに認知症予防になるわけではなく、継続的に運動を続けていく必要があります。 その理由について以下で解説していきます。 ①運動することで脳への血流が改善し、栄養や酸素が行き渡りやすくなる 高齢者やアルツハイマー型認知症の方は、若い人と比較して脳への血流低下が見られます。 そのため脳に必要な栄養や酸素が行き届かなくなり、脳機能に影響を及ぼすと言われています。 しかし、定期的に運動すれば身体の血流が改善され、脳に必要な栄養や酸素が行き届くようになります。 また歩くことで脳の血流を良くするアセチルコリンの分泌が増えるとも言われています。 ②運動することで物理的に脳が成長する 運動をすると脳の神経を成長させるBDNFという物質が海馬で分泌されます。 BDNFには 代表的な効果に「脳細胞の新生を促す」「脳細胞の老化を遅らせる」「脳細胞が傷つかないように保護する」などがあります。 運動することでBDNFを分泌させ、海馬の機能維持や成長に効果を得るのです。 海馬は記憶を司る機能があるため、海馬の機能維持や成長を促すことは認知症予防に大きな効果があります。 ③運動によって認知症の危険因子である高血圧、肥満、糖尿病のリスクを減らせる 肥満、高血圧、糖尿病は認知症の危険因子とも言われています。 実際に成人後期のBMI(体格指数)が「肥満」と判定された人は、「正常」な範囲内にある人と比較して、認知症を発症するリスクが3割も増加するというデータがあるほどです。 認知症を予防するためにはこれらの危険因子を改善する必要があります。 定期的な運動は肥満の解消になり、ひいては高血圧や糖尿病リスクも軽減させることが可能です。 当然ですが運動をしても暴飲暴食をしては意味がないので、あわせて食生活も整えていきましょう。 ④運動により認知症の原因物質が取り除かれる。 認知症を予防するためには、「アミロイドβ」や「タウたんぱく」という毒素を脳内から取り除く必要があります。 なぜなら、認知症は「アミロイドβ」や「タウたんぱく」といった毒素が脳内に溜まることで発症すると言われているからです。 「運動習慣のない人」の脳内には「アミロイドβ」や「タウたんぱく」が排出されないことが判明しています。 その詳しいメカニズムは解明されていませんが、運動により脳内の血流が改善し、結果として老廃物と一緒に原因物質が排出されるのではないかと言われています。 認知症予防にはどんな運動が効果的? では実際に認知症予防に効果的な運動はどういったものか解説していきます。 認知症の予防では決して激しい運動をする必要はありません。 逆に無理のない範囲で行える有酸素運動が効果的であると言われています。 ①ウォーキング 「歩く」ことは認知症の予防に効果的です。 血圧があまり上がらない程度の無理のない歩行を行うと、海馬でのアセチルコリン(脳の血流を良くする物質)の分泌量が増え、海馬の血流が良くなります。 1日3.2㎞歩くと、認知症発生率は42%低下するというデータもあります。 歩行する際の目安は1日30分以上、週3回を目安に取り組みましょう。 ②コグニサイズ コグニサイズは英語のcognition (認知) とexercise (運動)を組み合わせた造語で、国立長寿医療研究センターが開発した「ながら運動」になります。 コグニサイズ(ながら運動)は、身体運動と同時に認知課題に取り組むことによって、認知症予防を目的としたエクササイズになります。 具体的には、①身体運動(歩行や足踏み運動など)と②認知課題(足し算引き算などの計算)を同時に、30秒で1セットを目安に行います。 国立長寿医療研究センターが愛知県で行った調査によると、軽度認知症と診断された高齢者のうち、コグニサイズを行ったグループは記憶テストの成績が改善し、脳萎縮の進行も抑えられたというデータもあります。 水分を飲むことで認知症の周辺症状が改善する 脱水により引き起こされる症状には認知症の周辺症状によく似た症状があるため、認知症と間違われてしまうことがよくあります。 ただ、しっかりと水分を摂取し脱水を防ぐことにより症状は治まります。 脱水による症状にはどういうものがある? まずは認知症の周辺症状によく似た脱水の症状には「せん妄」があります。 せん妄は一種の意識精神障害で、高齢者に多く見られる症状です。 せん妄の症状は「見当識障害(時間や場所を上手く認識できなくなる)」「思考力の低下」「注意力の低下」「感情の変動」など認知症の症状と非常によく似ています。 せん妄は脱水のほかに身体疾患や薬の影響などでも症状が現れることがあります。 また、以下のような症状が起きることもあるので。注意が必要です。 傾眠脱水…意識が朦朧としてウトウトとする状態 便秘…水分摂取が少なくなることで、便が硬くなり排便することが困難になる。 脱水にならないためには? 脱水にならないためには1日に2,500㎖の水分摂取が必要と言われています。 「そんなにたくさん飲めない」と感じるのではないでしょうか。 しかし、水分は飲むだけでなく、食事からも摂取できます。 例えば、味噌汁、果物、野菜などが挙げられます。 一般的に普段の食事から1,000㎖は摂取しているので、純粋な水分からの必要摂取量は1,500㎖ほどで大丈夫です。 効率的に水分を取って頂くために 高齢者や認知症のかたに一日1,500㎖の水分を摂取して頂くのは難しいものです。 以下のような方法で水分摂取を促してみましょう。 お茶の時間を定期的に設ける ゼリーや寒天を上手に使う 本人の好みに応じた水分を提供する スポーツ飲料などの吸収率の良いものを活用する 体操やレクリエーションの後に飲んでもらう 散歩時に外で水分を飲んでもらう まとめ ここまで認知症の周辺症状に効果のあることや、認知症予防に効果のあることを解説してきました。 認知症予防にはカレーがおすすめである ・クルクミンが認知症に効果的 ・バランスの良い食事が認知症予防になる ・料理をすることで認知症予防である 認知症予防には軽い運動がおすすめである ・30分程度のウォーキングを週に3回程度行う ・頭と身体を使ったコグニサイズを取り入れる 脱水を防げば認知症の周辺症状を改善できる ・1日1,500㎖の水分摂取を目標にする ・寒天やゼリー、本人の好みを意識して水分を飲んでもらう 最後までお読みいただきありがとうございました。
訪問介護とは、要介護度の利用者が日常生活の上で困難とする動作や作業をヘルパーが訪問し介護を行うサービスです。 今回は、訪問介護の「自立支援型」について紹介します。 訪問介護のあり方 訪問介護はなぜ存在しているのか、その理由についてご紹介します。 なぜ訪問してまで介護をするの? 昨今、団塊の世代が75歳(後期高齢者)を迎える「2025年問題」がすぐそこまで迫ってきています。 まだまだ元気で若々しい高齢者も増えている反面、介護を必要とする高齢者も増加してきているのが現状です。 「子供達に迷惑をかけない」「事前に調べてサービスに興味を持った」等、様々な理由で施設入所を希望される方もいます。 しかし、多くの人は「できるだけ長く住み慣れた自宅で過ごしたい」という思いが強いようです。 家族のいる高齢者は、一日も長く一緒に家で過ごす事を、独居となった高齢者は思い出が詰まった家でゆっくり過ごしたいと其々の理由はある様です。 しかし、在宅生活に支障を来す様になってはそんな思いも叶えられません。 また、最初にも述べましたが「2025年問題」は少子高齢化が進み、国民の4人に1人が75歳以上となる事で様々な影響を及ぼすと言われています。 支えて欲しい人が増える一方、反比例する様に支える人が居なくなるという事は、日常生活に困難があっても支えてくれる人が少ない利用者側と、支えたくても人数も支援も負担も賄い切れない介護側とのパワーバランスが崩れて共倒れに成りかねないことを意味しているのです。 要介護認定を受けたとしても、住み慣れた自宅で日常生活上必要な動作や行為が少しでも自身で行える様になれたら、それは身体的にも日常生活を送る上でも生活の質を維持向上する上でも意義のあるものであり差し迫った問題に対し解答の糸口へと繋がります。 介護が必要になった方たちの生活の質を維持しながら、在宅で過ごせるようにするために訪問介護があるのです。 昔は「お世話型」今は? 介護保険制度が始まったのは2000年(平成12年)4月からです。 介護保険制度は「高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組み=介護保険」という形でスタートしています。 現在の介護保険も、「高齢者が尊厳を保ちながら暮らし続けることができる社会の実現を目指す」とされていて、高齢者も皆と同じ様に其々が地域で元気に自立し暮らしていく事ができる共存社会を目指しています。 基本的に介護保険は「高齢者の自立支援」を始めから謳っているのですが、昔から ・お年寄りは大切に ・お年寄りの面倒は若い者が看るもの ・子が親の老後を看るのは当たり前 という思考や伝承の傾向が根強くあります。 そのためか、訪問介護サービスもどちらかと言えば「お世話型」と呼ばれるサービスを行いがちでした。 事実介護認定を受けて訪問介護サービスを受ける事になった利用者は、生活を送る上でできない事をヘルパーにしてもらう=日常生活が送れる様になるというプランでヘルパーによるサービスを受けていた所が多かったのではないでしょうか? 上記の図の様に、要介護1も要介護5も同じようにできない事をしてもらっているばかりでは、どんどんできない事が増えていくだけです。 そして、介護度が増すに連れてサービスの内容も日数も増えていくという緩やかな悪循環に陥ります。 家族の形は変わっていきます。 大家族から核家族へ、子供も兄弟姉妹から一人っ子へ、結婚して家庭に入っても夫婦共働きが増え、隣近所が誰か分からないというようにご近所同士の繋がりも薄くなりました。 そのため、近年では孤立化が目立つようになっています。 そんな現実の中、上記にも述べた様な高齢者に対する昔からの思考・伝承が特に介護では反映されている事態が多い為、 「お年寄りにあれこれさせてはいけない=お世話する、面倒を看るのが介護だ」 という認識を世間一般では当然とされているのが現状です。 介護サービスも例に洩れず、「お世話型」という形で行われていたのも少なくはありません。 ここで間違えないで頂きたいのは、決してこの思考・伝承が悪いという事ではないということです。 古来より守り継がれてきた先駆者、功労者を大切にするという考えは大切であり、素晴らしい事です。 しかし、何でも大切にした結果「まだできる」事を「できない」事に変えてはいけないという事がとても重要です。 腰痛により重い物があまり持てず、歩行もやや不安定な利用者が訪問介護で生活援助を利用したとします。 お世話型のサービスでは、ヘルパーによる掃除機での掃除や洗濯物の取り込み整理整頓が行われた場合は利用者はただそのサービスをしてもらうのみです。 この場合、ヘルパーによって「清潔が維持できる」「安全に過ごす事ができる」「生活環境が保たれる」のみの授受一択となってしまいます。 例えば、利用者が軽い物が持てた場合は、柄の長い箒を使用して掃くことをお願います。 洗濯物の取り込みはヘルパーが行い、利用者はヘルパー見守りの下テーブルで洗濯物を畳む 整理整頓はヘルパーと共に行ってもらいます。 このように利用者も出来得る範囲で行動し今後に繋がる形にすれば、 「共に行う事で清潔が維持できる」 「共に行い確認する事で安全に過ごす事ができる」 「共に行う事で生活環境が保たれる」 という自立支援に向けたサービスの提供となります。 利用者の中には、何でもしてもらいたい人もいるかもしれません。 訪問介護サービスを契約して利用しているのだから、ヘルパーにはできない事を何でもしてもらいたいという気持ちは分かります。 しかし、ヘルパーは家政婦ではありません。 この先地域で暮らしていく上で、本当に困った事を地域社会全体で支え合い、日常生活を維持していく為の介護保険である事を今一度見直す必要があるのではないでしょうか。 その人なりの自立した生活を 訪問介護サービスのケアプランに謳われる「残存機能の維持」は、身体介護にも生活援助にも該当し、自立した生活を送る為に最低限必要とされる能力です。 介護度も人様々であり、生活環境や身体状況や経済状況、現症歴によって、できる事とできない事には差があります。 ケアプランに沿った訪問介護サービスを提供する事は当然ですが、ヘルパーは誰よりも利用者の近くで対応する為、利用者の心身の変化に気付きやすいものです。 現在の介護保険は自立支援型であり、 「その人が生活する上で行える動作をどうすれば継続していけるか?」 「プランでは共に行う作業であっても今の身体状況ではちょっと無理なのでは?」 「この部分はヘルパーが対応する形だけれど、一緒に行う能力があるのでは?」 等、訪問介護に入ったヘルパーからの報告でプランが見直され変わっていく事も珍しくはありません。 例えば、生活援助で夕食の下ごしらえをヘルパーが行うというプランがあるとします。 ケアプランに沿った訪問介護計画が立てられ、ヘルパーは計画通りに訪問介護に入ります。 長時間の立位が困難で台所に立つ事が難しいけれど、最後の味付けは自分でしたいという希望があれば、下ごしらえはヘルパーが行います。 しかし、実はイスに座って玉ねぎの皮を剥くやピューラーで根菜の側を剥くといった作業ができると 気付いた場合にヘルパーの取るべき対応はどうすべきなのでしょうか? ①ケアプラン通りに、そのまま調理の下ごしらえをヘルパーが行い、最後の味付けは利用者にしてもらう。 ②サービスの度にその場に応じて利用者ができる調理の下ごしらえ(イスに座っての野菜の皮剥き等)をしてもらい、調理を完成させる。 一応両方とも「形式上」は自立支援型の訪問介護サービスではあります。 不正解ではないのですが、①はほぼ「生活援助の調理」です。 ケアプラン通り、訪問介護計画書通りにサービスを遂行しているだけであり、別に悪い訳ではありません。 しかし、最後の味付け以外にも利用者のできる作業があると気付いていても、プランは下ごしらえがヘルパー対応となっています。 ヘルパーがプラン通りに料理を作ってしまうのは、自立を促すという自分でできる事を少しずつでも広げて利用者のできる能力を維持するのには弱いかもしれません。 ②は自立支援型の訪問介護に見えますが、一点注意すべき所があります。 「サービスの度にその場に応じて利用者ができる調理の下ごしらえ」がきちんとサービス提供責任者やケアマネージャー、本人や家族に伝えられているはずです。 それに応じて担当者会議が行われケアプランの変更が為され了承されています。 ヘルパーが利用者の状態に気付いて自立支援に向けたサービスを行うには、ヘルパー単独の意思決定で勝手にサービスを変える事はできません。 きちんとサービスの内容変更の手順を踏まえた上で提供すれば、「生活援助で夕食の下ごしらえをヘルパーが行うというプラン」は「できる範囲での下ごしらえを共に行いながら調理する見守り的援助の身体介護」となります。 サービス単価は若干上がりますが、利用者の今後動ける可動域は広がりその人なりの自立した日常生活を過ごす事ができる未来へと繋がる可能性があります。 事前のモニタリングやアセスメントだけでは分からないことは多々あり、ヘルパーがサービスに入って初めて気付く事も少なくはありません。 テンプレート通りに介護サービスは行えませんし、また利用者其々に応じた自立の形があります。 訪問介護はその時の状況や状態によって日々変化していき、自立の形も並行して良くも悪くも変化していくという事を忘れないようにしましょう。 まとめ 今回は訪問介護における自立支援型のサービスについて紹介しました。 ・高齢者の現状と2025年に迎える問題は、介護を求める人と介護を行う人とのバランスが崩れて共倒れの危険性がある。 ・高齢者であっても自分でできる事が増えれば、これまで通り在宅での生活を維持でき、懸念される介護の担い手不足による共倒れを回避できるきっかけとなる。 ・介護保険は2000年4月にスタートし、高齢者を社会全体で支え合う仕組みとして始まった。 ・現在は、高齢者も自立して日常生活を送れる様に地域と共存して暮らしていく形を目指しており、訪問介護もお世話型から自立支援型へ移行している。 ・お年寄りを大切にするという考えは大切だが、 何でも全てお世話をしてしまうのではなく、日常生活でできない事を支えて援助しできる事はそのままできるように維持を図る事が自立支援型の訪問介護サービスである。 ・訪問介護は在宅での日常生活を維持していく為の介護保険サービスであり、利用者の変化に気付いたヘルパーはケアマネージャーやサービス提供責任者、利用者、その家族等とよく確認し話し合い、利用者の状態や状況に応じた訪問介護を計画に則り提供していく必要がある。 訪問介護を利用する側もサービスを提供するヘルパーも、長年携わってくるとその利用者の状況や状態がよく分かってくるものです。 情が沸く事もあるかもしれませんが、その介護は本当にその人の為になるのか?ケアプランに沿ったサービスなのか?あの人はああしてくれた、こうしてくれたの言葉に揺らいでお世話型のサービスを提供してはいないか?等ヘルパーの判断が試される事もあります。 最初にも述べましたが、2025年問題はもうすぐそこにまで迫っています。 75歳以上の後期高齢者が爆発的に増えるまであと数年です。 高齢者であっても、特別な事をせずに、その人がその人なりに日々の生活を普段通りに送れる事が幸せであると考え、訪問介護サービスが行われる事を願います。
介護保険サービスは、要介護度によって利用できるサービス内容や量が決まっています。 ですが、保険内のサービスだけでは充分とはいえません。 そこで使えるのが介護保険外サービスです。 保険外のサービスを上手に組み込むことで介護保険ではまかないきれない部分に手が届き、介護負担を軽減できます。 厚生労働省も、地域包括ケアの一環として介護保険のサービスと介護保険外のサービスを併用することを推奨しています。 本記事では、介護保険外サービスのメリットやデメリット運営者やその内容について解説しています。 ぜひ最後までお読みください。 介護保険外サービスとは 介護保険外サービスとは、介護保険制度の対象外のサービスで、介護保険では補えないサービスを原則自己負担で受けられるサービスです。 厚生労働省の地域包括ケアシステムの構築と「保険外サービス活用ガイドブック」についての中に記載があり、国が推進する地域包括ケアの一部に組み込まれています。 介護保険では受けられないサービスもあるので、介護を受ける方だけではなく、介護している家族の生活も充実させられます。 介護保険外サービスを利用するメリットとデメリット 介護保険外のサービスを上手に活用するためには、メリットとデメリットをよく理解しておく必要があります。 介護保険外サービスを利用するメリット 介護保険外サービスを利用するメリットには以下のものがあります。 介護負担が軽減する サービスの提供時間を長くすることができる 家族に対する支援もある 自由なサービス選択ができる では、一つずつ解説します。 介護負担が軽減する 介護保険外サービスを利用する一番の目的は介護負担を軽減させることです。 保険でまかなえないサービスを受けられるので、介護者の負担が減り、高齢者本人も安心して生活を送ることに繋がります。 サービスの提供時間を長くすることができる サービス提供者と合意できれば長時間のサービスを受けられます。 介護保険を使って訪問介護などのサービスを受ける場合は、1回30分などと時間が決められています。 介護保険外で、サービスの時間を長めに設定することでサービスの不足感を軽減することが可能です。 家族に対する支援もある 介護保険外のサービスでは、介護する家族もサービスを受けられます。 例えば、高齢者夫婦の2人暮らしで、夫が要介護、妻は介護保険の対象外だった場合、介護保険では夫に対するサービスしか受けられません。 妻の洗濯や妻のための買物、布団干しなどは原則として対象外になります。 この場合、妻が介護保険外サービスを利用できれば、妻の負担を大きく減らすことができます。 自由なサービス選択ができる 介護保険外のサービスは、サービス内容や量、同居家族などのサービスを受ける対象者を自由に選択できます。 その分料金はかかりますが、上手に活用することで、介護を受ける本人や介護する家族のそれぞれが望む生活に一歩近づきます。 介護保険外サービスを利用するデメリット 介護保険外サービスを利用する上での一番のデメリットは費用がかさむことです。 介護保険のサービスは利用料金の7〜9割を保険でまかない、利用者は残りの1〜3割を負担します。 ですが、介護保険外サービスは保険が使えないので全額負担しなければなりません。 運営者やサービス内容などによって金額にばらつきがあるので、利用前に具体的な料金体系について確認しておきましょう。 介護保険外サービスの運営者と内容 介護保険外サービスを受けたい時はどこに相談すればよいのでしょうか。 運営者やサービス内容もさまざまですので、代表的なものを説明します。 市区町村による独自サービス 市区町村が独自に行っているサービスで、基本は介護者がそれぞれの利用者の自宅に訪問してサービスを提供する形になります。 主なものは、 おむつの配送 訪問理美容 配食サービス 緊急時の連絡システム 受診や外出時の移送サービスなど 各自治体が独自に行っているサービスなので、全ての市区町村で提供されているわけではありません。 ホームページや広報誌で確認したり、地域包括支援センターに相談したりしてみるとよいでしょう。 市区町村が中心になって実施する「介護予防・日常生活支援総合事業」 2017年にスタートした地域支援事業の一つで、市区町村が中心となって地域の実情に合わせたサービスを提供するものです。 住民が主体となり、要支援者に対し効果的で効率的な支援を目指しています。 内容は、以下の通りです。 訪問介護事業所やNPOなどの住民ボランティアが行う訪問による生活援助 主に食事用意や掃除などの家事援助や外出の支援 デイサービスや高齢者会館で提供する通所による活動援助サービス 主に運動やレクリエーション、口腔機能改善など 住民の交流の場にもなっている サービスを利用するには地域包括支援センターによるケアマネジメントが必要なので、まずは相談してみましょう。 介護サービス事業所 普段介護保険サービスを提供している事業所が、通常のサービスの延長で提供している保険外のサービスです。 サービス内容は 訪問介護ではできない手間のかかる掃除や洗濯 入院中の衣類の引き取りや洗濯などの世話 お泊まりデイサービスなど 介護保険で対応できない部分を補うためのサービスとなりますが、通常のサービスとは別枠の料金で、すべて自己負担になるので料金の確認が必要です。 社会福祉協議会の高齢者支援サービス、シルバー人材センターの家事・福祉支援サービス 全国の社会福祉協議会や、高齢者の雇用促進を目的とするシルバー人材センターによる有償ボランティアです。 介護保険では対応できない調理や洗濯、買物、掃除など 入院中の世話 冠婚葬祭の付き添い 認知症の方の見守り支援サービスなど 市区町村による総合事業として提供されていることもあるので、地域包括支援センターで受けられるサービスを相談してみるのも一つです。 民間企業の介護サービスや高齢者支援サービス 介護分野ではない企業が間接的に介護保険サービスを提供していることもあります。 コンビニエンスストアや生協などによる配食サービス タクシー会社による介護タクシーや通院介助 フィットネスクラブによるスポーツプログラムなど 市区町村によるサービスより費用は高めですが、サービスの種類が豊富で介護保険では足りない部分をサポートできます。 まとめ いかがでしたでしょうか。 本記事では、介護保険外サービスのメリットやデメリット、運営者やその内容について解説しました。 介護保険外サービスは介護保険制度の対象外のサービスで、介護保険では補えないサービスを原則自己負担で受けられるサービス 地域包括ケアの一環として厚生労働省も推奨している 介護保険外サービスを利用するメリットは、介護負担が軽減する、サービスの提供時間を長くすることができる、家族に対する支援もある、自由なサービス選択ができる 等 デメリットは、保険内のサービスに比べ費用がかかる 運営者やその内容は、市区町村による独自サービス、市区町村が中心となって実施する「介護予防・日常生活支援総合事業」、介護サービス事業所、社会福祉協議会やシルバー人材センターによる有償ボランティア、民間企業の介護サービスや高齢者支援サービス 等 介護保険外のサービスを上手に活用することで、利用者本人だけでなく介護している家族の生活も豊かになります。 介護が必要にあっても、住み慣れた地域での生活を続けるために、制度やサービスを充分に活用できるように家族で話し合ってみましょう。
2000年に介護保険制度が創設され、20年以上が経過しました。 全国に多くの介護施設が作られてきた中、残念ながら入居や利用に注意すべき問題のある介護施設も見受けられます。 ここでは、ご家族の方が介護施設を見分ける確認ポイントをお伝えしていきます。 確認したい4つのポイント 1,「見学お断り」の施設は要注意 施設の利用を検討する前に、見学ができるかどうか施設側に確認してみましょう。 見学のお願いをした段階で、「うちの施設では、見学は無理です」と言われたら、その施設は要注意です。 施設側としては「入居者のプライバシーを守るため」と断りをいれてくることが多いです。 しかし介護保険などの公的資金を使っている施設であれば、国民には見る権利があります。 入居者のプライバシーを守りながら施設を見学できる方法を考えていない施設というのは、その時点で問題です。 見学を拒否する背景として ・劣悪なケアをしている ・身体拘束など、入居者や利用者が自由に生活できない といったことが挙げられます。 しかし、最近は新型コロナの影響で、見学を制限する施設もあるため、「見学できないから、悪い施設だ」とは一概には言えません。 ですが良い施設は、以下のような制限を設けることで、見学者への対応を可能な限り行っています。 ・予め見学可能な日時を伝える ・見学者には検温と消毒、マスクやディスポグローブを着用してもらう ・入浴場など、入居者や利用者がいない場所だけでも案内する 逆に、なんの工夫も交渉もなく見学を一切お断りする施設は要注意です。 その様な施設は候補から外しましょう。 2,私物の持ち込めない介護施設は、認知症の対応ができていない 施設内の見学ができないのであれば、私物を持ち込めるかどうか確認してみましょう。 なぜなら、私物は認知症の人にとって「自分を保つための必需品」だからです。 住み慣れた家から突然、無機質な部屋にベッドだけの空間に移動されたら誰だって不安になりますよね。 そんなとき、私物があることで、心の不安が軽減されるのです。 「私物が多いと、他の入居者とトラブルになったりしないの?」 と、不安に思う人もいますよね。 確かに認知症の中には「私の物だ」と考え、勝手に他人の物を取ることがあります。 しかしそのトラブルを防ぐのは、介護職員など施設側の役割です。 知識があり経験豊富なスタッフであれば、私物を持ってくる人に対しては、 ・物を取られないよう、私物は部屋から出さないように依頼をする ・食堂など皆が集まる場所で使う場合は、必ず名前を書いてもらうようお願いする と、事前に説明をします。 また物を取りやすい入居者や利用者がいる場合は、その人と距離を取ったり、私物を持ってきている人には状況を説明して、なるべく私物を共用スペースへ持ってこないように伝えます。 良い介護施設であれば、職員は自然とこの対応を取ることができます。 「私物を持ってこられると、困ります」と断る施設は、スキルがない職員が多いと考えた方が良いです。 3,機械浴を自慢する介護施設は要注意 介護施設を見学するとき、特にチェックしてもらいたいのが「お風呂場」です。 介護施設の中には、ストレッチャー浴やリフト浴などの機械浴(特殊浴槽)を自慢そうに見せているところもあります。 しかしこういう施設は、考え方が古いです。 ストレッチャーに乗せられた入浴は、怖いし恥ずかしいものなのです。 中には「こんな身体になってしまった」と情けなくなり、ますます閉じこもりがちになってしまう方もいらっしゃいます。 また一般浴に対しても、プールのように広い埋め込み式の浴槽を使っている施設は、古い考え方が残っていることが多いです。 埋め込み式の浴槽は、バリアフリーという言葉を誤解し、段差をまたがないですむようにと作られたものです。 浴槽が広いと掴まる場所がないので溺れそうになります。 また階段の昇降ができる人というのは、施設の入所者では滅多にいません。 そのため「自分の家ではお風呂に入れていたのに、施設に入所したら入れなくなった」という事態が起こりうるのです。 最近の一般浴は、家庭と同じような浴槽に、浴槽と同じ高さの洗い台を設置して入ることが多いです。 浴槽を跨がず片足ずつ浴槽に入れれば、立てない人や歩けない人でも、家庭と同じように入ることができます。 4,施設の運営状態を公表していない事業所は、要注意 介護施設を「終の棲家」と考えている場合、運営している事業所の財務状況や運営状態をチェックしておきましょう。 経営状態の良くない事業所が運営している施設に入居した場合、運営事業者が変わってサービスの質が低下したり、最悪の場合倒産によって退去を求められる場合があるからです。 最近の事業所は、ホームページで決算書などを公表していることが多いです。 視点を変えれば、運営状態を入居希望者に公表しない事業所は、情報公開に前向きでないとも取れるので、注意しましょう。 更に確認したい3つの情報とは!? 事業所が公表している情報で着目してほしい情報は、下記の3つです。 1,入居率 施設のオープンから数年経っているのに入居率が極端に低い場合、施設に何らかの問題がある可能性があります。 2,退去者数 入院や死亡以外に退去者数が多い施設は、トラブルや劣悪な環境など、様々な原因が潜んでいる可能性があります。 3,職員の離職率 職員の離職率が高い施設は、労働環境が良くなかったり、サービスの質が低いことが考えられます。 もしトラブルが起こったら、どうすれば良い? ここまで、注意すべき介護施設のポイントをお伝えしてきました。 しかし、どんなに吟味して選んだ介護施設でも、トラブルは発生するものです。 場合によっては、退去を求められる可能性もあります。 せっかく時間や手間をかけて選んだ施設を、離れたくないという人もいますよね。 そこで、ここではトラブルが起こったときにどうすれば良いか、お伝えしていきます。 1,施設に相談する 利用している中で気になる点や些細なことがあれば、現場スタッフなどの施設に相談しましょう。 現場レベルで解決できれば、大きなトラブルへの発展を防ぐことができます。 状況が改善されない場合は、施設や運営会社へ訴えましょう。 2,第三者へ相談する 施設や運営会社に相談しても解決されない場合や、苦情が言いにくい場合もあります。 そんなときは、第三者へ相談するという方法をとりましょう。 気軽に相談できる電話相談もありますし、市区町村の苦情相談窓口もあります。 連絡先は、施設の契約書や重要事項説明書に「苦情相談窓口」と明記されていることが多いので、予め確認しておくとよいでしょう。 3,国保連へ申し立てる 最終手段として「国保連(国民健康保険団体連合会)」へ申し立てましょう。 国保連は、都道府県と市町村、国民健康保険連合組合が運営している法人です。 国保連では介護相談窓口を設置しており、介護保険サービスについての苦情を受け付けています。 市区町村には介護保険施設の指定を取り消す権限があり、国保連は介護サービス事業者に対して調査や指導、助言を行う権限があります。 トラブルの内容や改善状況によっては、住み替えの検討が最善策となる可能性もあるということも、考えておくと良いです。 まとめ ・施設見学お断りの介護施設は、劣悪な環境など他人に見せられない部分があるのかも知れない ・私物を持ち込めない介護施設は、認知症の対応が上手くできない施設であることが多い ・機械浴を自慢する介護施設は、昔ながらの介護のやり方をしている ・施設の運営状態を公表していない施設は、情報公開に消極的であったり、運営状態が悪いことが多い ・トラブルが起こったら、施設に相談する。 ・施設に言いにくい場合は、市区町村の苦情相談窓口や国保連の介護相談窓口へ相談する。 最後までご覧いただきましてありがとうございます。
訪問介護サービスの一つに、利用者の病院受診の一連を介助する「通院介助」があります。 今回は通院介助一連に纏わるトラブルや対応について、事例を交えながら紹介します。 通院介助とはどんな介助? ここでは通院介護がどのようなサービスなのかを解説します。 病院受診する為に利用者の移動支援を行う介護サービスです。 訪問介護サービスには、大きく分けて「身体介護」「生活援助」「通院等乗降介助」の3つに分かれます。 通院介助は下記の図の通り①~⑤の対応の仕方があり、其々の介助に分けられています。 ①と②に代表されるのは介護タクシーで、介護資格のある運転手が病院への行き帰りの対応を行うものです。 一般的に通院等乗降介助と呼ばれるもので、病院受診前の準備や外出する為の身体介護(移動・移乗・整容・更衣・排泄等)も含まれます。 ③は病院へ受診する為の外出介助で、帰宅まで訪問介護のためヘルパーが対応しますが、院内は基本病院側の対応となる為、介護保険適用外となります。 例外として、病院側が対応できない、院内での家族付き添い対応ができない、利用者の心身不安定による見守りや介助を要する等、理由によってはケアマネージャーが事前確認の上で訪問介護にて院内介助が行える場合もあります。 ④の様に介護度が4~5と重度で相当時間数の身体介護を必要とする場合は、病院受診前の準備や外出する為の身体介護(移動・移乗・整容・更衣・排泄等)も、通院等乗降介助の乗車前や降車後介助の一環とならずに身体介護中心型という形になります。 ⑤は要介護認定(介護度1~5)の利用者が病院受診をする前と後に、受診に関連する介助ではない別の身体介護中心の介護を30分~1時間程度以上のサービスを行う場合が対象となります。 ①~⑤に関して、要介護度認定を受けた利用者が病院受診前後の介助を訪問介護サービス(介護保険)で対応し。病院内の対応は医療機関である病院側(医療保険)が対応する事が前提です。 但し③でも述べましたが、例外として院内介助も介護サービスとして対応できるケースもあります。 要支援の人はどうするの? 基本的に通院介助は要介護認定を受けた利用者でケアマネージャーがケアプランに通院介助が必要であると記載され、訪問介護を計画された場合のみです。 要支援1~2の認定を受けた利用者は、通院等乗降介助は介護保険サービスとして算定できません。 要支援は簡単に言うと「基本的に日常生活を送る能力は持っているが、支援を必要する部分もある」という事を示しいます。 そのため、要支援者の介助は、 「自分でできる事は自分で行う」 「できない事のみ支援する」 「できない事が少しでもできる様になる」 という利用者が自立を維持しながら日々を過ごせる為の支援であると考えると分かりやすいかもしれません。 要支援者と認定された場合、「移動」という動作・行動が自身でできる状態にある事が多く、通院に関してもヘルパーが介助する必要性は無いと判断される傾向にあります。 また要支援は、日常生活支援総合事業の訪問型サービス(旧:介護予防訪問介護)という形でヘルパーがサービスに入る事もありますが、週に1~3回程度で月に4~13回程度入るといった回数が決まっています。 月に回数が定められている中で、病院受診が毎週あるとは考えづらい点や、病院までの移動にヘルパーの介助の必要性を問われる点からも、要支援の認定を受けた利用者がヘルパーによる通院介助を受けづらいとされるのです。 要支援であっても病院受診をするのに不安な面がある場合等、理由によっては支援を受ける事ができる例もあります。 (例1)要支援認定であるが、現病歴による後遺症があり、身体の動きが悪く、躓いたり転倒する危険性があり、日常生活において支障がある場合。 (例2)入院していた要支援の利用者が退院し、退院後の日々の生活において身体状態の不安定がみられ、支援を必要とする場合。 他にも色々なケースがありますが、いずれもヘルパーによる支援が必要とされる場合は、ケアマネージャーや包括支援センター、市町村等の自治体と相談や協議を行い、その上でケアプランに必要性を謳う事で可能となる事もあります。 但し要介護の利用者の様な通院介助ではなく、外出支援(移動支援)という形での対応です。 そのため、介護タクシー(介護保険適用)は利用できない代わりに福祉タクシー(介護保険の適用無し)で対応する等の対応になります。 あくまでも「支援」であり「介助」では無い事と、基本的に要支援対象者は通院介助は介護保険では認められない傾向にあると考えた方が良いでしょう。 利用者の思惑、ヘルパーの困惑 通院介助を行う上でサービスの内容を確認するのは当然です。 例えば、訪問介護側と利用者側で「通院介助にかかる費用」や、「どこまで介助が可能なのか」「病院受診後ついでに、と急な依頼への対応」など、色々と確認しなければいけない事があります。 ケアマネージャーからも通院介助をケアプランに追加する際は事前に説明等を行いますが、介護を行う側と受ける側双方が認識を共有しておかなければなりません。 <下記の図にある、様々なトラブルに繋がってしまう言動事例も参照下さい。> 移動手段もいろいろ、意外とお金もかかる? 「病院受診は訪問介護でヘルパーが対応するから大丈夫だ。」と、受診に関する一連の行動や必要とされる介護のみにクローズアップされがちです。 しかし、介護保険とは別にお金がかかる場合もある事を忘れてはいけません。 勿論、ヘルパーも通院介助においてできる事・できない事の認識をしておく事は絶対です。 例えば、利用者側からすれば「訪問介護サービスでの介護利用だから1割負担(又は2割負担)で済む」との認識をされている場合もあります。 間違いでは無いのですが、通院等乗降介助では「利用者宅から車両で病院へ移動し、受診手続きや薬の受取り等対応しまた利用者宅へ移動する介助」に該当する介護サービスのみ、介護単価で行われます。 当然、車両運賃は介護サービスには含まれません。 介護タクシーでは、通院等乗降介助の介護サービス費とタクシーとしての運賃との合算で請求されます。 介護タクシーを利用しない場合でも、ヘルパーの介助を伴いながら各交通機関を利用した際は 利用者本人の交通機関の運賃と共にヘルパーの運賃も発生します。 一般タクシーを利用する場合は乗合となる為に、1人でも2人でも料金は同じです。 しかし、バスや電車を利用する場合は2人分の運賃が発生し、それは利用者負担となるのです。 また院内介助を行う際に、介護保険対応とならない場合は自費サービスを利用される事があります。 自費サービスは介護保険の様に1割負担(又は2割負担)ではなく、全額負担であったり、介護事業所による金額設定が為されています。 そのため、介護サービス費用の感覚でいくと割高に感じるかもしれません。 重ねて院内での時間が長くなれば、自費サービスの時間も長くなります。 また、通院介助の総額が高額になる場合もあるので、ヘルパーに介助を依頼したいけれど金銭面での負担が苦となることがあります。 利用者側のストレスが、更にトラブルへと発展しかねない状況を生み出す原因とも成り得るのです。 予め、利用者へのモニタリングで病院への経路や受診に掛かる時間を確認しておき、費用を概算し、事前に書面化してお知らせしておく事が出来たらお互い安心かもしれません。 いざ病院へ!と行ったはいいけれど。 何度も言いますが、基本的に病院内での対応は医療管轄である病院側であり、介護保険での利用はできません。 でも実際は、病院受診で受付を済ませて、診察又は検査で待つ間や呼ばれて対応する際に病院側の介助は無く、ヘルパーが対応する事態になる事も少なくはありません。 病院側も人手不足であったり、ヘルパーの付添があるならばそちらで対応したらいいと言う様な言動を取られた事もヘルパーを経験した者ならばあるでしょう。 そんな病院内での対応に関するトラブルの例です。 何れも、通院介助を行う訪問介護側と病院側との連携・確認不足による不手際がトラブルに繋がってしまったケースです。 事前にケアマネージャーと病院側との確認はなされており、その通りに進むべきではあるのですが まれにこういった予想しなかった事態になってしまう事も起こり得るのです。 事前確認し、ケアプランに追加された後、訪問介護側でも通院介助時の訪問介護計画や予定の再確認 予測外の事態に備えての対応策を講じておく等、訪問介護側もヘルパーと再度情報を共有して介助を行う様にしていく事が重要になってきます。 また、自費サービスが発生する場合は、利用者側にも了解を得る形をしっかり取って双方できる限り負担の掛からないようにしなければなりません。 利用者側と訪問介護側で金銭面以外でもこんなトラブルが発生する事もあります。 ①~③の例を上げましたが、通院介助を行う前はきちんと説明をして了承を得ていても、いざ病院に行く=外出するとなると「ああしたい、こうしたい」の欲求が出てくる事もあるようです。 ①の様に「ちょっとだけ良いだろう」という考えでヘルパーに依頼してくる事もあります。 これは訪問介護で対応可能なのか?ケアプランにその介助内容は含まれているか?をよく考えて対応し、分からない場合は訪問介護事業所の責任者に報告・連絡・相談が必要です。 ②のケースは、たまたまその利用者の訪問介護計画に買い物や整理整頓の見守り的支援があった為に 可能となったサービスです。 これが「美容室に寄って帰りたい」や「娘家族のお土産買って帰りたい」等であった場合は対応不可となります。 ③に関して滅多に無いとは思われますが、利用者やその家族からの「訪問介護の契約をしているから、ヘルパーに何でも頼んでおけば良い」という考えの下に出た発言です。 訪問介護のヘルパーによくある「何でも屋」扱いですが、ここでは利用者からきちんと断ってくれた為、トラブルとはなりませんでした。 ヘルパーは第三者からの突然の言動にも落ち着いて対応できないといけません。 他にも色々とトラブルへ繋がる様な事態が発生する事もあります。 基本はケアマネージャーと病院側で確認した上で計画された訪問介護(通院介助)の計画をよく確認し、当日どう対応するのかをヘルパー含めたチームで理解し対応する事が求められます。 また、ヘルパー自身が対応に困る事態が起きた場合は、すぐに訪問介護事業所へ連絡することが重要です。 サービス提供責任者や、場合によってはケアマネージャーに対応を依頼する事も必要となります。 ヘルパー自身の曖昧な判断で対応したり、良かれと思って対応した結果、後に難しいトラブルへと発展してしまう事にも繋がりかねません。 病院という在宅外での介護の為、臨機応変な対応が求められる場合もありますが、あくまでも訪問介護サービスである事を踏まえた上での対応にヘルパーは従事しましょう。 まとめ 今回は通院介助についてや介助時のトラブル、対応等を紹介しました。 ・通院介助とは、要介護度認定を受けた利用者が病院受診をする為に行われる訪問介護であり、通院等乗降介助や身体介護中心型といった形がある。 ・基本的に病院内は医療機関の対応となるが、事前確認によっては訪問介護で対応する事もある。 ・要支援は通院介助の対象外であるが、場合によっては外出支援として対応できる事もある。 ・通院介助では利用者の負担が介護保険以外にも発生する事があるので、双方の確認が必要である。 ・訪問介護で院内の介助を行う場合は、病院側と訪問介護側との連携や確認が再度必要であり、利用者との間にも自費サービスが発生する場合の確認を行っておく必要がある。 ・利用者と訪問介護側の間でも、通院介助をする際にできる事やできない事の確認を行い、双方が理解しておく必要がある。 通院介助は各自治体によっての解釈が異なる場合があります。 利用者の居住する自治体が、どこまで通院に対し、介護対応を許容するのかをよく確認した上で、病院側、利用者側、訪問介護側との連携を踏まえてサービスする事も大切です。 訪問介護でヘルパーが通院介助を行う為の情報の一つとしてお役立て下さい。
認知症はだれもがなりうる病気で、家族や身近な人が認知症になることなどを含め、多くの人にとって身近なものです。 認知症が進行すると興奮や幻覚、徘徊など、介護者に多くの負担がかかる場合があります。 その負担が蓄積してくると在宅での介護に限界が生じて共倒れとなる恐れが出てきます。 在宅での介護が辛くなってきたとき、もう限界となる前に、施設への入所、特に認知症グループホームという選択肢があるという知識を持っていることが大切です。 今回は認知症グル-プホームがお薦めな理由についてご紹介させていただきます。 グループホームとは 認知症対応型共同生活介護は、認知症グループホーム(以下グループホームと表記)とも呼ばれています。 認知症の方が住み慣れた地域で可能な限り自立した日常生活を送ることができるよう、家庭的な 環境の中で食事や入浴などの日常生活上の支援が受けられるサービスです。 それでは、入所についての条件やメリットを説明していきます。 グループホームの入居条件 グループホームに入所するためには以下の条件がそろっていることが必要です。 ➀専門医から認知症の診断を受けている。 ②施設の所在地と同一市区町村に住民票を持っている。 ③要介護認定で要支援2以上の認定が必要。 グループホームのメリット それでは、グループホームには、どんなメリットがあるでしょうか? ➀少人数でのユニット制 5~9人で一つのユニットとなっており、少人数のグループのなかで家庭的でゆったりとした、気心知れた環境で暮らすことが出来ます。 ②認知症の対応を知り尽くした職員が対応 入所当初は、周囲の雰囲気に馴染めず居心地が悪くなったり、徘徊につながる場合があります。 しかし、認知症の対応に熟知しているスタッフは、適切な声掛けや寄り添いながら支援することで、利用者と信頼関係を構築しているのです。 そのため、利用者の問題行動が落ち着き、穏やかに暮らしていける支援を受けられます。 ③利用者と介護従事者が共同で行い、日常生活を維持できる。 グループホームの特徴として、利用者の食事その他の家事等は原則として利用者と介護従事者が共同で行うよう努めるものと運営基準上で示されています。 「台所」を設けることも基準化されており、これまで在宅で出来ていた生活を維持する為の支援を目的としています。 ④役割・生きがい、楽しみの創出 認知症の人の中では、役割がなく生き甲斐が失われて寂しい思いを持たれている方も多いのです。 以前好きだった趣味活動、料理が得意だったことなど、そんな情報を基にしながら職員と入居者が一緒にコミュニケーションを取っていきます。 そうしていくことで、出来なかったことを出来るように変えていく働きかけが刺激となって、認知機能の低下や予防が図れます。 グループホームでの仕事は高齢者の失われかけた能力を最大限に引き出しながら活かすことが出来る仕事です。 そんなところにやりがいを感じると言われる職員さんの言葉はとても素敵ですね。 グループホームのデメリット グループホームはメリットだけではありません。 以下のようなデメリットもあります。 ➀他入居者とトラブルになる可能性がある 少人数という環境は入居者同士の相性がとても重要となります。 集団生活に支障をきたす恐れのある方や、他の入居者と相性が合わないために居心地の悪さを感じてしまう方もでてしまいます。 その場合は、調整が難しく、退所も検討しなければならなくなります。 ②グループホーム自体が少ない グループホームは元々数が多くありません。 そのため、人気のあるグループホームは満床になりやすく、すぐに入居することは難しいです。 なかには予約待ちを入れて空きが出るまで有料老人ホームに入っている方もいらっしゃいます。 ③医療的なケア対応に限界がある グループホームは、看護師の配置の義務がないため、医療ケア対応に限界があります。 他施設との違いについて 老人ホームにはさまざまな種類があります。 介護付き有料老人ホーム、サービス付き高齢者住宅などの民間施設であり、公的施設としては特別養護老人ホームと介護老人保健施設、介護医療院などがあります。 簡単にそれぞれの特長をお伝えします。 特別養護老人ホーム 特別養護老人ホームは、「要介護3以上」の認定を受けている方が対象の施設です。 車椅子や寝たきりの利用者が多く、入所にかかる費用は他の施設より一番安いので、希望者も多いことがあります。 そのため、入所できるまで時間を要する事が可能性が高いです。 また、要介護度1〜2の入居には自治体による特例入所が必要となります。 介護老人保健施設 介護老人保健施設は、骨折や脳梗塞などで退院後すぐに在宅生活ができない高齢者が、在宅復帰を目指す施設です。 そのため大抵は3か月という一定期間の間で退去することが前提の施設です。 特別養護老人ホームと比較すると入居しやすい状況ではありますが、終(つい)の棲家にはできません。 介護医療院とは 介護医療院とは、胃ろう等の経管栄養や喀痰吸引等、日常生活上に医療処置が必要な方が入所できる施設となります 。 グループホームのおすすめポイント それでは、グループホームのおすすめポイントを見ていきましょう。 ➀人員配置基準が手厚い グループホームは以下のような人員配置がされています。 ・日中の体制 グループホームでは入居者3名に対し常勤換算で職員1名以上の配置が必要と定められています。 従来型特養は「定員あたりの人員配置」に対しての基準です。 グループホームは「1日あたりの人員配置」が基準となっています。 ・夜勤体制 グループホームでの夜間は入居者9名に対し常勤換算で職員1名以上の配置が必要と定められています。 サービス付き高齢者住宅とか有料老人ホームの場合は住宅のため基準がありませんが、一般的には30人〜70人に一人の夜勤の配置となっているようです。 人員配置基準上、最も人手がある配置基準となっているのがグループホームであると言えます。 ②費用面について 公的施設と比べると高額となりますが、他の民間施設より大体5万円程度安い月額費用で入居できるようです。 ただし、入所一時金がかかるところもあるので、良く調べておく必要があります ③計画作成担当者は、ユニットごとに1名以上配置 グループホームでは適切な介護サービスを提供するために、利用者に合わせたケアプランを作成するための計画作成担当者の配置基準があります。 計画作成担当者のうち、1名以上は介護支援専門員の資格を有していることが人員配置基準の1つです。 また、グループホームの運営基準は、最大3ユニットまでですので、27名までの計画作成となります。 これは、居宅介護支援事業所の介護支援専門員の担当件数である35件よりも、担当件数が少なく、認知症の方の支援に併せたプランが期待されている背景とも汲み取れるでしょう。 施設選びの要は介護者自身 今までデイサービスやヘルパーの手配をしてくれていたケアマネですが、ケアマネは在宅支援のコーディネーターという役割です。 施設への入所を検討をする場合には、役割外となります。 そのため、施設の情報が入った資料の提供をしますが、各施設の詳しい情報を持ち合わせていません。 施設選びを率先して行うのは、介護者自身となるというところを心得ておきましょう。 最初は有料老人ホームに入所しておきながら、グループホームの空き待ちを予約しておくことが重要です。 空いたのちに、認知症の知識を持ったスタッフの元で残存能力を生かし、生活支援を受けながら入居者も介護者も笑顔が戻ったという話もあります。 グループホームへの入所も選択肢の一つとして検討してみてはいかがでしょうか。 まとめ 認知症の人は、理解力や記憶力などの中核症状と併せ徘徊や興奮などの周辺症状の増悪を伴う場合があり、長期の介護負担は介護者の生活を脅かす危険性があります。 特に認知症を有する高齢者は入所後、精神的に不安定になりやすい事もあります。 できれば少人数で自宅のような環境や人員配置の多いグループホームでの生活が望ましいでしょう。 在宅生活の限界を感じ施設入所を検討する場合、認知症グループホームは入所の条件として施設と同一の市町村に住民票が必要なので注意が必要です。 しかし、グループホームは小規模な施設であるため馴染みの環境を作りやすいです。 また、介護の知識や認知症の対応を知り尽くした職員が対応をするため、認知症の方でも安心して暮らすことが出来ます。 是非、介護の限界になるまえに事前に情報を得ておいて検討してみてはいかがでしょうか? 最後までお読みいただきましてありがとうございます。
訪問介護のヘルパーはサービス時でも、医療行為や医療機関との連携を求められる状況が発生する場合もあります。 今回は、そんな状況時での対応の仕方について紹介します。 介護なのに医療行為? 訪問介護でのヘルパーさんのボーダーライン 利用者宅へ訪問し、介護サービスを行うヘルパーですが、利用者の日常生活には些細な形でも医療行為を必要とする様な事態や、簡単な処置対応を求められる事があります。 ・自宅で家具にぶつけてしまい、手に小さな擦り傷ができてしまった。 ・高血圧と診断されており、毎日血圧を測るように主治医から言われている。 ・脊柱管狭窄症の為、屈伸動作が難しくなかなか足の爪が切れない。 ・ドライアイが強く、医師より点眼薬が処方されている。 ・加齢による乾皮症で、ワセリンが処方されている。 ・利用者の手が不自由な為、口腔ケアや義歯洗浄ができない。 サービス開始前のケアマネージャーや訪問介護事業所側のモニタリングやアセスメントで以下の事柄を確認します。 ・利用者のADL(日常生活動作)やIADL(手段的日常生活動作) ・身体的にどういった動作ができて、どういった動作が難しいのか ・日常生活では何ができて何が難しいのか ・傷病歴や生活環境等 基本的には、ケアマネージャーの立てたケアプランに則り、訪問介護計画が立てられサービスを行うのですが、時に身体介護においてこれは医行為ではないのか?とヘルパーが判断に迷う事もあります。 基本的に訪問介護のヘルパーは医療行為を行う事はできませんが、下記の図の様に厚生労働省より「医行為ではないと考えられる」とされる事例があるので参照して下さい。 例えば訪問介護サービスにおいて、食事介助と図の⑤にある様に食後の口腔ケアと義歯洗浄まで訪問介護計画にある場合は、計画通りサービスを行わなければなりません。 私達も普段の生活で、食事の後に歯みがきをしたり、人によっては義歯のケアをする事は何の疑問も持たないでしょう。 利用者も同じで、口腔内外に炎症も病例も特に何も無く、食事を安全に行った後の清潔保持の為に行う口腔ケアや義歯洗浄は、ケアプランに立てられていれば、ヘルパーは口腔ケアの介助や見守り的援助にて対応します。 但し、利用者の口内に歯周病や酷い歯槽膿漏があったり、口腔内潰瘍やヘルペスの症状があり医師による診察や治療が行われている状態での口腔ケアや義歯洗浄となると、話は違ってきます。 明らかに医師の対応が必要となる状態=重篤な状態での口腔ケアを行う時は、必ず医師の指示書や看護師の指導の下にサービスを行う必要があります。 そういった場合では基本的には処置や医療行為を求められる為、軽微な状態とは言えず介護対応はできません。 その際は訪問介護ではなく訪問看護での対応となる場合もあるので、利用者の状態においては安易に自己判断したり利用者の言い分要求を鵜呑みにして言われるまま対応したりせず、ケアマネージャーや訪問介護事業所等に報告した上で正しく利用者に応じる等の注意が必要です。 訪問介護でヘルパーができる医療行為は、利用者の心身状態が安定しており、入院の必要が無く、医療技術や専門的な管理、処置を伴う事が無い状態である場合に軽微で簡易的なもののみ行えるものです。 ヘルパーができる医療行為の例外として、研修を受講した介護福祉士が行える喀痰吸引と経管栄養がありますが、「たん吸引は咽頭の手前まで」や「経管栄養の胃ろうや腸ろうの状態確認は看護師対応」等行為にはできる行為とできない行為があるので注意が必要です。 医療機関で訪問介護? 訪問介護はその名の通り、ヘルパーが利用者宅にて訪問して行われるものですが、利用者宅から出て対応する事が必要とされる場合もあります。 日常生活に必要な動作であれば、訪問介護として認められるものもあり、その認められるものに「医療機関への受診対応」も条件によっては可能です。 「ちょっと風邪ひいたから病院行ってくる。」 「毎月の定期受診だから月末病院に行かないといけない。」 「入れ歯のかみ合わせが悪くてご飯が食べにくい、歯医者に掛からないといけない。」 様々な理由により、生活に医療が関わってくるものですが、基本的に医療機関への受診対応は訪問介護ではできないとされています。 ですが、医療機関への対応が利用者一人では困難な場合や利用者の取り巻く環境や、介護を要する事が明らかに認められる状況によっては、事前対応次第で訪問介護にて対応する事が可能となります。 【院内介助ができる条件】 ①要介護度1~5の認定がある利用者 ②医療関係者の介助が望めないと事前に確認済の場合 ③当日、家族や身内の通院付添いが望めない場合 ④院内で常時見守りや介助が必要とされる場合 介護タクシーを利用される場合、訪問介護の基本として当然ながら病院内の院内介助は医療機関対応の為行えませんが、上記にある①~④全てに該当する場合は対応可能となる事もあります。 ここで注意したいのは、ヘルパーが介助できるのは受診受付、院内での移動や、トイレ介助、病院代支払い、薬の受取りです。 心身不安定で一人で待ち時間を過ごす事が困難な場合は条件により介助可能ですが、検査や処置、診察は医療対応の為、介護保険である訪問介護のヘルパーは対応できません。 では、認知症の傾向があったり、または視聴覚が困難な利用者が訪問介護を利用して受診した場合、どうなるでしょうか? 医師の診察において病状の報告や診断結果を受け対応する事は医療対応の為、訪問介護では対応できない事とされています。 この場合は上記でも述べましたが、事前対応によりヘルパー同席が可能になる事もあります。 全ての自治体が事前対応可能とは限らない為、利用者居住区の自治体に相談が必要です。 対象となる利用者が、どの動作に介助を要するのか、またはどこからが医療対応で介護対応では無くなるのかをよく確認した上で線引きし、対応しなければなりません。 介護側が計画通り対応を行っていても、突如介助や見守りを要する事があったり、医師や看護師の説明を聞いたり、利用者の状態を報告したりと、医療と介護の対応が混乱する事も多々ある為、その場その場に応じた臨機応変な対応が求められます。 医療機関で訪問介護(通院介助、院内介助)を行う為に必要な事は下記の図を参照して下さい。 あくまでも「訪問介護対応」で介助しないと病院に受診する事ができない為に、ヘルパーを介して行われるものが、通院介助または院内介助です。 訪問介護対応という事は、先程にもあった通り事前確認やそれに伴う打合せや会議、計画書の作成、記録または報告書の作成等が必要となるという事です。 要介護度認定があっても看護師の介助があれば一人でも受診できたり、医師とのやり取りが可能な場合は、ヘルパーは立ち入る事はできません。 身内や家族の様に寄り添う気持ちは大切ですが、介護保険を利用している事を忘れずに対応しましょう。 皮膚は人の身体の信号機です 訪問介護では、要介護の利用者でも自身で何等かの形でも動ける利用者と、自身の思うようには動けない利用者がいます。 (ここでは、施設や医療機関に入所せず自宅で家族の援助を受けながら過ごす寝たきりに近い状態を指します。) そういった利用者への介護は、ほぼ身体介護メインである事が多いのですが、「寝たきり」状態である場合、ケアマネージャーのプランを踏まえた上で更に注意すべき点がいくつかあります。 ヘルパーは訪問介護を通じて利用者の状態を確認した上で、「おかしいな?」「あれ?前回より状態悪くなってる!」と感じたら、状況や状態の報告を行い、適切な判断や今後の対応を検討しなければなりません。 図の①や②の場合は、状況によっては医師の診断が必要になりますし、介護ではなく訪問看護対応となる事もあります。 図③の場合、医師の診断やケアマネージャーとの検討、利用者の身体状態によっては訪問リハビリ対応となり、介護との連携を図っていく形になる事もあります。 図④~⑤に関して特に図④の場合、皮膚に状態悪化がみられ、褥瘡が確認された場合は注意が必要です。 褥瘡部への処置は医療行為ですので介護では対応できませんが、排泄により患部周辺が汚染された場合は、清拭対応としてヘルパーが介護を行います。 排泄物で汚染されたまま放置では状態悪化に繋がる為、排泄汚染されている場合は、患部周辺の洗浄、ガーゼやパットの交換、おむつやリハビリパンツの交換はヘルパーが対応します。 褥瘡、床ずれは同じ体勢により同じ個所に体圧が掛かってしまった場合にできる事が多いので、体位を定期的に動かし圧を分散させる必要があります。 それと同じくして、栄養摂取においても食事による栄養が摂取できなくなり、低栄養になってくると褥瘡ができやすく、また発症しても治りにくくなってしまいます。 食事による栄養摂取の為には、嚥下状態も大きく関わってきますし、上下肢の動きも体圧分散に繋がる上に、排泄などの基本的な身体動作に上下肢の動きは必須な為、その動作が維持できるかどうかは褥瘡発症のリスク増減に関わってくるので注意が必要です。 図①~⑤は全て連動しており、訪問介護でヘルパーが対応する介助は一つ一つが全て重要なものであると同時に、目に見えてその状態の良し悪しを教えてくれるのが「利用者の皮膚」であったりします。 ・特に状態に問題なく、その利用者なりの日常生活が送れていたら青信号です。 ・日常生活は送れているけれども、何らかの「あれ?おかしいな?」が みられたら黄信号です。 ・はっきりと異常が確認されたら赤信号で、医療対応が必要です。 介護で対応すべき範囲と医療で対応すべき範囲を理解し、利用者から出される信号を正しく受け取り、日常生活を送るという道路を走る車の一つが介護であると考えられるならば、訪問介護にて ヘルパーがどう対応すれば良いのかが分かってくるでしょう。 まとめ 今回は、訪問介護のヘルパーが、医療行為や医療機関との連携を求められる状況時での対応の仕方について紹介しました。 ・利用者の日常生活には、医療行為を必要とする様な事態や簡単な処置対応を 求められる事があり、基本的には医療行為はできないが、介護で対応可能と 解釈されたヘルパーができる医療行為がある。・ヘルパーができる医療行為でも、医療(医師や看護士等)との連携が求められる。・医療機関への受診対応も訪問介護サービスの一つであり 介助を行うには条件や事前または事後の対応が含まれる。・通院または院内介助を計画されサービスを実施しても 介護で行えるサービスと行えないサービスがある。・訪問介護で寝たきりや思うように自身で動けない利用者へのサービスでは ケアプランの他にも気を付けなければならない点があり、実際サービスに入って 認識や確認できる事が少なくない。・嚥下、栄養、可動域、皮膚、排泄の5点は連動しており 皮膚状態は身体全体の良し悪しを現す信号である。 ・状態の変化の気付きを意識して生活状況の対応をし、状態の異常時は すぐに医療との連携を図る事ができる最前線にいるのがヘルパーであるので 訪問介護時はサービスは繋がっている事を意識して行う。 「医療と介護の連携」と言われると難しく捉えられがちですが、基本的にできる事やできない事をきちんと踏まえた上で、サービスを行えば特に問題はないのです。 訪問介護で身体介護を行う、通院または院内介助を行う、身体介護で利用者の状態をよく確認する、これらは全て利用者の日常生活を安全に送る為の一つで、全ては連動しているのだと考えられたならば介護に対しての理解も深まるでしょう。 不安を持ったままサービスを行えば利用者にも不安が伝わります。 「ヘルパーは介護のプロだ」と自信を持って訪問介護サービスを行いましょう。
できる限り自宅で自立して生活したいと願われるご利用者様の救世主ともいえる定期巡回・随時対応型訪問介護看護とはどんなものなのでしょうか。 ここでは定期巡回や随時対応型訪問介護看護について解説します。 定期巡回・随時対応型訪問介護看護って何? このサービスの名前を聞きなれない方も多いのではないでしょうか。 このサービスは24時間体制で主に在宅介護で介護を受けているご利用者様へできる限り自立した生活を行ってもらう為の支援サービスです。 このサービスは通常の訪問介護と少し違い、定額でサービスが利用できます。 ここまではざっくりとした説明ですが、ここからは細かい点も含めての説明をしていきます。 定期巡回について このサービスは、ご利用者様ごとに作成した訪問介護計画書をもとにして行われます。 内容としては一般的な訪問介護と一緒で、食事介助、入浴介助、排泄介助といった身体介護のサービスがメインです。 サービス内容にもよりますが、筆者が経験したケースでは、短いもので10〜15分程度、長いもので1時間ほどのサービスでした。 このように、数分で終わる安否確認から、1時間かかる排泄介助、食事の提供等長時間に及ぶものなどさまざまなサービスがあります。 随時対応・随時訪問について このサービスはご自宅にナースコールのようなものを設置し、ご利用者様は緊急時にそのコールを鳴らすことでオペレーターと話をすることができます。 オペレーターにどのようなことで困っているのかを伝え、その結果その方の近くで手の空いている職員に依頼をして対応してもらうと言う流れになります。 基本的に夜間も含む24時間対応で、必要に応じてご利用者様のお宅に伺いサービスの提供を致します。 訪問看護サービスについて 訪問看護は、看護師が自宅に訪問しご利用者様ごとの病気や障害に応じて医療的ケアを行ってくれるサービスです。 このサービスは基本的に医師の指示のもと行いますが、病院と同じような医療処置も行うことがあります。 そのため、ご自宅で最後を迎えたいという希望がある場合は、それに沿った看護も行うことも可能です。 具体的なサービス内容は以下の通りです。 健康状態の観察 ・病状悪化の防止・回復 ・療養生活の相談とアドバイス ・リハビリテーション、点滴、注射などの医療処置 ・痛みの軽減や服薬の管理 ・緊急時の対応 ・主治医・ケアマネジャー・薬剤師・歯科医師との連携 自宅で介護を受けたいご利用者様からすれば、訪問看護の仕事は、定期巡回サービスにおいて欠かせないものであると言えます。 訪問回数はどれくらい? 結論からお伝えすると要介護度が上がれば上がるほど、介助する内容も増えるため訪問回数は増えます。 要介護が低いと基本的にご自身でできることは行ってもらい、ご利用者様の負担になることをヘルパーがお手伝いするケースが多い為、時間も短くなります。 介護度が高いと、基本的に全ての動きでヘルパーに委ねられることが多いため、当然介助に時間がかかります。 なので、訪問頻度も増えるご利用者様が多かった記憶があります。 定期巡回・随時対応型訪問介護看護のメリット 定期巡回・随時対応型訪問介護看護のサービスはどのようなメリットがあるのかご説明していきます。 ①24時間対応が可能な唯一の介護サービス 定期巡回・随時対応型訪問介護看護はあらかじめ決められた定期巡回に加えて、緊急のコールの24時間体制サービスが受けられます。 そのため、施設とは違い一人暮らしの方や、家族が遠くてすぐに駆けつけられない方などは安心して在宅生活できるサービスです。 施設入所をすれば、24時間のサービスを受けれるところは多いですが、中には施設入所を拒否されるご利用者様もいらっしゃいます。 経験談として、施設入所をしているご利用者様はご自分の慣れた環境ではないため、不安定になる方が多いです。 その点在宅介護でのご利用者様は、メンタル的な不安定さは感じられず穏やかなご利用者様がほとんどでした。 その点から見ても、このサービスは訪問介護の救世主と言えます。 ②定額制のサービス 通常の訪問介護では介護度が上がると費用も増えて、ご家族の費用負担もサービスの回数ごとに変動します。 定期巡回・随時対応型訪問介護看護のサービスであれば、定額の金額設定なので予算の見通しが立てやすく、経済的にも優しい良いサービスと言えます。 定期巡回・随時対応型訪問介護看護のデメリット 定期巡回・随時対応型訪問介護看護のサービスはメリットばかりではありません。デメリットも併せてよく考えてから利用するようにしましょう。 ①他サービスとの併用禁止 このサービスは他の訪問介護サービスとの併用禁止です。 利用するサービスが限定的になってしまうため、このサービスを利用をしないと言うご利用者様もいると思います。 ②介護職員が変化する 定期巡回のサービスは、特定の介護職員だけが来ることはなくなります。 特に随時訪問になると近くで手が空いている介護職員の対応になるため、その辺りの理解が必要になります。 介護はご利用様との相性も重要なので、契約の際に事業所の職員の雰囲気なども見ておく事をお勧めします。 ③利用頻度によっては通常の訪問介護の方がお得 定額の部分がメリットとして大きいサービスと説明しましたが、このサービスの利用頻度によっては通常の訪問介護サービスの方がお得になることもあります。 要介護度によって、訪問介護一回にかかる費用が違いますが、実際にどれくらい利用してどのようなサービスを受けたいのかをよく見極める必要があります。 その上で、定期巡回サービスか訪問介護かを決めて利用すると良いでしょう。 どんな人が利用しているの? この章では定期巡回・随時対応型訪問介護看護の実際のサービス利用者についてお話ししていきます。 サービスの内容はお伝えしましたが、どのような方が利用しているのかを知ることで、今後の介護の参考にしてみてください。 定期巡回・随時対応型訪問介護看護の利用がおすすめの人とは このサービスは24時間体制で緊急時含めた対応を行なってくれます。 施設ではなく自分の生活してきた環境で介護を受けたい人や、自分の生活してきた環境でサポートを受けながら生活していきたい人などにおすすめです。 特にこのような人にへおすすめします。 ・独居で家族が近くに住んでいないご利用者様 ・一部介助が必要なご利用者様 ・自立しているが安否が心配なご利用者様 ・介護が必要だが、定期的にサービスを受けたいご利用者様 このサービスは定額で、食事・入浴・排泄などを一定の間隔でサービス提供してくれます。 他にもナースコールのようなものが配布され、何かあった際に、随時サービスを提供してくれるのです。 定期的に介護が必要で、安心して自宅で生活したい人に最適なサービスです。 サービスを受けるため条件と対象者とは まず前提条件として、要介護1〜5のご利用者様が対象です。 注意点としては以下の2点に注意しなければいけません。 ①地域密着型サービスなのでご利用者様の住民票が利用したい事業所と同じ地域にある必要があること ②定期巡回・随時対応型訪問介護看護を利用すると他の訪問介護・看護と夜間対応サービスの併用はできないこと この条件を満たした人は、ご自身の地域に定期巡回・随時対応型訪問介護看護のサービスを提供している事業所がないかをケアマネジャーさんに聞いてみて、サービス使用の検討をするのも良いかもしれません。 まとめ 定期巡回・随時対応型訪問介護看護のサービスは以下のような特徴があります。 ・利用頻度が多く特に在宅生活を希望しているご利用者様に適しているサービス ・費用や利用したいサービスの内容がマッチした時は、このサービスのコストパフォーマンスは大きいものになり、ご利用者様と家族の救世主となる。 最後までお読みいただきましてありがとうございます。
介護保険制度では、要介護度によって受けられるサービス料の上限が決まっています。 ケアマネジャーは、決められた上限の範囲におさまるようにサービスを調整しなければなりません。 本記事では、介護保険の上限が決まっていることや、この上限を超過した場合の対策、自己負担を軽くする制度について解説します。 介護保険の上限は区分支給限度基準額で決まっている 介護保険のサービスは、訪問介護やショートステイ等のサービスごとに使用できる単位数が決められています。 そして、要介護度によって1ヶ月間に使用できる単位数の上限が決められており、それを区分支給限度基準額といいます。 区分支給限度基準額とは 区分支給限度基準額とは、要介護度ごとに設定された介護保険サービスの月の上限を単位数として設定しているものです。 介護保険はサービス毎に単位が決められており、ケアマネジャーは区分支給限度基準額を超えない範囲で、サービスを組み合わせて調整します。 利用者の自己負担は、所得によって1〜3割に設定されていますが、在宅介護を続けていくと、加齢やADLの低下にともない必要なサービス量は増えるものです。 サービス量が増えると、自己負担とともに介護保険の公的なお金の利用も増えていきます。 しかし、財源に限りがあるので上限が設けられているため、その範囲内でサービスを調整するよう求められています。 ○在宅サービスの区分支給限度額と自己負担額 区分 支給限度基準額(単位) 利用限度額 (円) 1割負担の時の 自己負担額(円) 要支援1 5,032 50,320 5,032 要支援2 10,531 105,310 10,531 要介護1 16,765 167,650 16,765 要介護2 19,705 197,050 19,705 要介護3 27,048 270,480 27,048 要介護4 30,938 309,380 30,938 要介護5 36,217 362,170 36,217 ※1割負担、1単位=10円の場合 参考:目黒区 区分支給限度額(介護保険から給付される一か月あたりの上限額) 区分支給限度額を超過すると全額自己負担になる 区分支給限度基準額を超過してしまった場合、超過した分の介護保険は利用できないので、全額自己負担で支払うことになります。 例えば、1割負担で要介護5の人が1ヶ月に400,000円分の介護保険サービスを利用したとします。 1割負担の支払額は40,000円ですが、限度額は36,217円なので、40,000−36,217の3,783円分超過してしまいます。 この場合、超過した3,783円は全額自己負担になりますので負担額は10倍の37,830円です。 全ての負担額の1割負担分の36,217円と全額自己負担分の37,830円を足して、74,047円がこの方の自己負担額になります。 急に負担が増えてしまいますので、ケアマネジャーは上限の範囲内でサービス調整する必要があります。 介護保険の上限を超えないようにするための対策の一つは、要介護度の区分変更を申請することです。 介護保険の上限を超えないようにするには区分変更を申請する 介護保険の上限を超えないようにするには区分変更申請が有効です。 要介護度が上がると区分支給限度基準額が上がりますので、利用できるサービスの量を増やせるからです。 例を挙げると以下のようになります。 要介護1の時は車椅子のレンタルができなかったが、要介護3になったらできるようになった。 要介護2では他のサービスとの兼ね合いでショートステイが1週間しか利用できなかったが、要介護4になったことで10日利用できるようになった。 特養入所を考えているが、要介護2の状態では入所できないので要介護3以上にしたい。 上記のように、区分支給限度基準額を超えてしまいそうな時は区分変更申請が有効です。 ケアマネジャーとして、利用者本人や家族の生活状況を見ながら提案してみるのもよいでしょう。 しかし、ご利用者様のご家族から「要介護度が上がると自己負担が増えてしまうので困る」という声が聞こえてくることもあるかもしれません。 次は自己負担を軽減させる制度について解説していきます。 介護保険の自己負担を軽くする制度 在宅介護を続ける上で、費用負担を軽くすることも大きなポイントです。 ここでは、自己負担を軽くする制度である「高額介護サービス費」「介護保険負担限度額認定」や、「介護保険料を滞納すると自己負担が増える」ことについて説明します。 高額介護サービス費 参考:厚生労働省 令和3年8月利用分から高額介護サービス費の負担限度額が見直されます 高額介護サービス費は、「1ヶ月に支払った利用者負担の合計が所得に応じた負担限度額を超えた時に、超えた分が払い戻される」制度です。 例えば、市町村民税が課税されていて課税所得が380万円未満の人は、上限額44,400円になっているので、1か月の費用が50,000円かかった場合後から6,000円が返還されます。 介護保険の給付対象外の食費や、全額自己負担分は対象にはなりません。 該当する時に、市町村から申請書が届きますので、必要事項を記載して役所へ提出します。 次回以降は自動で振り込まれますが、はじめに申請をしないともらえないので注意が必要です。 介護保険負担限度額認定 介護保険負担限度額認定は、ショートステイや特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院などの介護保険施設を利用する際の負担軽減対策です。 これらの施設の利用料金は、介護保険の自己負担分(1〜3割負担)と食費、居住費が主なものになります。 このうち、食費と居住費が住民税の課税状況や年金額、預貯金などによって段階的に減額されます。 施設入所の場合は通常15〜16万円かかる利用料金が半額程度になる場合もあります。 要件が複雑ですので、役所の介護保険窓口で対象になるのかどうか確認してみてはいかがでしょうか。 介護保険料の滞納 こちらは自己負担を軽くするというよりは、負担を重くしないようにするための注意点です。 40歳から納付義務のある介護保険料は、健康保険料とあわせて納付します。 年金を受給するようになると、特別徴収といって年金から天引きされるのが基本です。 ただし、年金額が年間18万円未満だったり年度途中で65歳になったり、引っ越したりすると普通徴収になり、納付書や口座振替で支払うことになります。 介護保険料を滞納すると、期間によって以下のようなペナルティが課せられるので、注意しましょう。 滞納期間 対応 内容 1年以上 介護保険給付の支払い方法の変更(償還払い化) 通常1〜3割負担のところ、一旦10割支払い、その後申請をして7〜9割分の払い戻しを受ける。 1年6か月以上 介護保険給付の一時差し止め 一旦10割支払った後、7〜9割の払い戻しが差し止められる。介護保険料を支払えば払い戻されるが、支払わないと差し止め分から差し引かれる場合がある。 2年以上 介護保険給付の減額 時効により介護保険料が納付できなくなる。 また、通常1〜3割の自己負担が3〜4割負担になり、高額介護サービス費の対象外になる。 介護保険料を滞納すると上記のようなペナルティが課され、自己負担が重くなります。 滞納すると市町村から督促状や催告書が送られてきますので、速やかに納付しましょう。 まとめ いかがでしたでしょうか。 本記事では、介護保険の上限や、上限を超過した場合の対策と、自己負担を軽くする制度について解説しました。 介護保険の上限は区分支給限度基準額で決まっている 区分支給限度基準額を超過すると、超過した分は全額自己負担になる 区分支給限度基準額を超えないようにするには要介護度の区分変更申請が有効 介護保険の自己負担を軽減させるには、高額介護サービス費や介護保険負担限度額認定などの制度を活用する 介護保険料を滞納すると自己負担が重くなる場合がある 介護保険の制度は複雑で、利用者やその家族が自ら理解して制度を活用することは現実的ではありません。 ケアマネジャーには利用者やその家族が安心してサービスを受けられるよう、制度をうまく活用し導く役割が求められています。 最後までお読みいただきありがとうございました。
今まで元気だった家族が突然倒れ、介護が必要な状況になったら、あなたはどうしますか? 病院に任せきりになっても、いつかは、自宅または転院、施設の入所などを決断する時はやってきます。 この記事は、突然の介護に慌てないための事前準備について紹介します。 家族が、いざという時の基本的な知識として持っていて欲しい内容です。 介護は突然始まるもの 家族介護は、何の前触れもなく、突然、始まることが多く、不十分な準備のもとで介護に臨めば、困ることが多々あります。 特に仕事を持つ社会人にとっては、今後の対応が予想困難で仕事と介護の両立ができずに離職する可能性もあるのです。 今は親も家族も健康だからといって、介護の基本的な知識がないと突然の介護でパニックに陥ることも考えられます。 今は大丈夫だからではなく、これから起こるかもしれない現実から目をそらさない行動が、介護で困らない第一歩です。 突然の介護に困らないようにするには 病気や怪我で倒れた家族の介護は、準備を怠れば不十分な状態で不安を抱えながら、始まります。 突然の介護に困らないようにするには、事前の心構えや準備が大切です。 家族でよく話し合う 家族で介護についてよく話し合うことは大切ですが、ベストなタイミングは、介護を必要としない親や家族が元気な時です。 このタイミングを逃すと、突然の介護に対応できる時間の余裕がなくなります。 家族のライフスタイルは、年齢や生活環境によって変わりますが、話し合いだけでもしておけば、突然の介護でも動揺する気持ちを最小限に抑えられます。 以下のポイントについて家族で話し合っておきましょう。 在宅介護ができるか、家族の意見を聞く 介護の中心者を決める 介護の協力者を決める 親の経済状況を確認しておく 経済状況に不安があれば、家族の介護費用の負担割合を決めておく 厚生労働省ツールを活用する 厚生労働省のホームページに「介護への事前の備え」といったツールが用意されています。 このツールは、親や配偶者など家族の個人情報をはじめ、介護に関する必要な情報を網羅できるシートです。 家族の話し合いに活用でき、家族の状況に応じてシートを増やすことで、介護に直面した時に役立ちます。 介護情報が豊富な本を見ておく 介護に関する本は数多くありますが、中でも介護情報が豊富な本を事前に見ておくことも大切です。 特に在宅介護に特化し、介護保険制度など最新の情報を記載した本は必ず役に立ちます。 介護が始まるまでには、最低1~2冊購入し、知識を増やしておけばいざという時に活用できます。 Webサイトで最新の介護情報を確認しておく 本と共に、ネット上にあるWebサイトでも最新情報が確認できます。 自分が必要とする情報だけでも有効活用すれば、事前の準備に役立てられるのです。 特に医療・介護従事者が作成した記事がある介護情報サイトは、信頼性の高い情報が得られるため、おススメです。 在宅介護をスムーズに行うためには 在宅介護をスムーズに行うためには、介護者が自覚を持つことは大切ですが、準備すべきことは沢山あります。 しかし、介護をスタートダッシュすれば、必ず、介護疲れを早めに感じてしまいます。 介護はマラソンです。 決して短距離走で息切れしない対策も考えておきましょう。 症状や薬の情報を知っておく 被介護者の症状や薬の情報を知っておくことはとても大事です。 介護が始まると、日々の介護に追われて、処方された薬の情報まで詳しく知る時間がありません。 しかし、薬の作用、副作用を介護者が知っておかないと、訪問診療の際に問題が起こることも考えられます。 担当医に薬の情報を確認しておけば、訪問医療や訪問看護でも要介護者の正確な情報を伝えられます。 また、過去の既往歴や服用していた薬は、かかりつけ医やお薬手帳で確認しておくことも大切です。 入院先で治療にあたる医師や看護師の情報になり、在宅での診療にも役立ちます。 入院中から行動しておく 病気や怪我によって入院した場合、退院までの期間が症状や状況により変わることがありますす。 退院後の介護を視野に入れるには、入院中から行動しておくことが大切です。 病院のソーシャルワーカーに相談し、退院に向けた道筋をはっきり決めておけば、在宅介護をスムーズに行えます。 介護力を上げておく 家族の介護力を上げておくことも大切なポイントです。 介護に自信がない状況で介護生活を迎えると、最悪、介護放棄につながりかねません。 入院期間中に、病院の看護師やヘルパーに介護方法について学び、可能であれば、実際におむつ交換や体位変換、痰の吸引などを経験しておけば、安心し、介護を始められます。 ただし、コロナ禍で直接介護ができない場合は、自治体などが行っている介護教室を利用するのもおススメです。 ケアマネを探しておく 介護サービスを利用し、在宅ケアにつなげるためにはケアマネの存在が不可欠です。 特に入院中の場合は、病院の医療相談員やソーシャルワーカーなどに相談してケアマネを紹介してもらえば、介護サービスの手続きや福祉用具相談員とも連携でき、在宅介護の不安が減ります。 自宅の環境を整備する 在宅介護は、現在の自宅の環境で問題がないかプロの目で確認してもらわないと、転倒などの思わぬ事故につながる可能性があります。 要介護者や介護家族のストレスの軽減、福祉用具の準備のためにもプロのアドバイスは必須といえるでしょう。 しかし、居住している家によっては、在宅介護が不可能と判断されることも考えられます。 自宅の環境整備を早めに行えば、万が一の場合も次の対応をとる時間もできます。 自治体に相談しておく 介護サービス以外で介護に役に立つのがお住いの市町村の介護福祉課や地域包括支援センターです。 介護費用に補填できる補助金などの支援があり、知っておいても損はありません。 介護が必要な主な病気や原因 突然の介護は、どのような病気や原因で始まるのでしょうか。 2019年国民生活基礎調査の概況では、介護が必要になる病気や原因ははっきりと示されています。 介護が必要になる病気であれば、退院までに介護支援を確認、調整しておくことが大切です。 介護が必要になる主な病気 介護が必要になる主な病気は、認知症、脳血管疾患、高齢による衰弱が主となっており、脳疾患による介護が全体の4割を占めています。 また、事故や転倒などによる骨折で、車椅子生活になり、在宅介護になるケースも増えています。 特に長期間の入院生活で認知症になり、家族介護の大変さから在宅から施設入所を決断する家族も増えているのです。 健康で高齢になる前に、介護に直面した時の備えが必要なことは明らかでしょう。 退院支援は病気によって変わる 退院支援は病気によって変わります。 入院中の健康状態や障害によって介護方法は変わるため、病院や施設との連携が大切です。 入院中の対応が遅れると、家族の心構えを初めとする在宅介護にスムーズにつながりません。 退院支援の体制を整えておくには次の点に注意しておきましょう。 病院と話し合っておく 医師や看護師、ソーシャルワーカーなど、病院と話し合い、退院後の治療方針などを確認して決めておくことが大切です。 入院時と退院時では健康状態や障害の状況など変わっていることが多いため、退院前には医師に聞いておきたいことを挙げてみます。 病気はこれからどうなるのか 病気は治る見込みはあるのか 食事などで気をつける点は何か 在宅で気をつける点は何か 症状の悪化や緊急時の連絡体制はどうなるのか 訪問診療や訪問看護の頻度は 介護施設の利用はどうするのか 介護が始まるまでに家族で考えておこう 介護が始まるまでに家族で考え、話し合いを重ねることは重要です。 退院時の症状によっては、在宅介護か施設の利用かの検討が必要になることもあるでしょう。 しかし、基本は患者本人の希望です。 自宅に帰りたいという意向が強いのであれば、在宅介護に向けた家族の対応や医療・介護支援が必要であるという認識を持つことが大切なのです。 まとめ この記事のポイントは次のとおりです。 突然の介護は事前の備えが大切 元気な間に、家族との話し合いや各種ツール、本、ネットから情報を得ておく 在宅介護をスムーズに迎えるためには、入院直後から動き出す 退院支援を病院やソーシャルワーカーに確認し、悩みを解決しておく 高齢になると、些細な病気や怪我でも、介護が必要になる可能性が高くなります。 親や配偶者が元気な間に、突然の介護に困らないように、在宅か施設かを考えておくことが大切です。
「認知症の症状を改善したい」 「認知症にならないように予防したい」 そう考えることはないでしょうか。 認知症の症状は正しいケアをすることで改善できます。 また生活習慣を整えることによって認知症は予防することが可能です。 この記事では認知症の症状の改善や認知症の予防について解説していきます。 認知症の予防にはカレーがおすすめ みんな大好きなカレー、もはや国民食と言っても良いでしょう。 そんなカレーですが、実は認知症の予防に効果があると言われてます。 カレーを食べれば認知症予防になる!カレーの3つの効果 ではカレーはどのような理由から認知症予防に効果があると言われているのでしょうか。 詳しく解説していきます。 【効果①】カレーに含まれるスパイスの一種クルクミンに秘密がある カレーに含まれる代表的なスパイスにターメリックがあります。 そのターメリックにはポリフェノールの一種であるクルクミンが含まれていますが、そのクルクミンに認知症の原因となる「アミロイドβ」の生成を防ぎ、分解する作用があると言われています。 実際にシンガポールに住む60歳から93歳の1,000人を調査した結果によると、カレーを一ヶ月に一回食べる人は、まったく食べない人と比較して認知症の発症率が50%も低かったという調査もあります。 【効果②】カレーはバランスの良い優秀な食べ物。 カレーは肉や野菜など様々な具材が入っているバランスの良い食事です。 バランスの良い食事は低栄養状態を防ぎ、筋肉量の低下を防ぐことにも繋がります。 筋肉量の低下を防げれば転倒防止になり、寝たきりリスクを減らすこが可能です。 寝たきり状態は認知症リスクを高めるため、いかに転倒しないよう注意するかが大切です。 筋肉量を維持するためにもバランスの良い食事を心がけましょう。 【効果③】料理をすること自体が認知症予防になる カレーだけでなく料理全般に言えることですが、料理は脳と身体を使います。 同時に脳と身体を使うことにより認知症の予防になると言われています。 料理は「献立を考える」「具材の買出し」「料理の段取りを考える」「実際に料理をする」「味を整える」「盛り付ける」など複数の工程から成り立ちます。 複数のことを同時に進めるには、脳の司令塔である「前頭葉」を使うため、脳に良い刺激となるため、認知症予防になると言われています。 また、作った料理を誰かに食べてもらう喜びも、感情的に脳に良い刺激になるでしょう。 認知症の予防には適度な運動が最適 運動が健康に良いと良く言われていますが、これは本当のことです。 では認知症の予防に対してどこまで効果があるのでしょうか。 なぜ運動が認知症予防になるのか?4つの理由 運動すればすぐに認知症予防になるわけではなく、継続的に運動を続けていく必要があります。 その理由について以下で解説していきます。 ①運動することで脳への血流が改善し、栄養や酸素が行き渡りやすくなる 高齢者やアルツハイマー型認知症の方は、若い人と比較して脳への血流低下が見られます。 そのため脳に必要な栄養や酸素が行き届かなくなり、脳機能に影響を及ぼすと言われています。 しかし、定期的に運動すれば身体の血流が改善され、脳に必要な栄養や酸素が行き届くようになります。 また歩くことで脳の血流を良くするアセチルコリンの分泌が増えるとも言われています。 ②運動することで物理的に脳が成長する 運動をすると脳の神経を成長させるBDNFという物質が海馬で分泌されます。 BDNFには 代表的な効果に「脳細胞の新生を促す」「脳細胞の老化を遅らせる」「脳細胞が傷つかないように保護する」などがあります。 運動することでBDNFを分泌させ、海馬の機能維持や成長に効果を得るのです。 海馬は記憶を司る機能があるため、海馬の機能維持や成長を促すことは認知症予防に大きな効果があります。 ③運動によって認知症の危険因子である高血圧、肥満、糖尿病のリスクを減らせる 肥満、高血圧、糖尿病は認知症の危険因子とも言われています。 実際に成人後期のBMI(体格指数)が「肥満」と判定された人は、「正常」な範囲内にある人と比較して、認知症を発症するリスクが3割も増加するというデータがあるほどです。 認知症を予防するためにはこれらの危険因子を改善する必要があります。 定期的な運動は肥満の解消になり、ひいては高血圧や糖尿病リスクも軽減させることが可能です。 当然ですが運動をしても暴飲暴食をしては意味がないので、あわせて食生活も整えていきましょう。 ④運動により認知症の原因物質が取り除かれる。 認知症を予防するためには、「アミロイドβ」や「タウたんぱく」という毒素を脳内から取り除く必要があります。 なぜなら、認知症は「アミロイドβ」や「タウたんぱく」といった毒素が脳内に溜まることで発症すると言われているからです。 「運動習慣のない人」の脳内には「アミロイドβ」や「タウたんぱく」が排出されないことが判明しています。 その詳しいメカニズムは解明されていませんが、運動により脳内の血流が改善し、結果として老廃物と一緒に原因物質が排出されるのではないかと言われています。 認知症予防にはどんな運動が効果的? では実際に認知症予防に効果的な運動はどういったものか解説していきます。 認知症の予防では決して激しい運動をする必要はありません。 逆に無理のない範囲で行える有酸素運動が効果的であると言われています。 ①ウォーキング 「歩く」ことは認知症の予防に効果的です。 血圧があまり上がらない程度の無理のない歩行を行うと、海馬でのアセチルコリン(脳の血流を良くする物質)の分泌量が増え、海馬の血流が良くなります。 1日3.2㎞歩くと、認知症発生率は42%低下するというデータもあります。 歩行する際の目安は1日30分以上、週3回を目安に取り組みましょう。 ②コグニサイズ コグニサイズは英語のcognition (認知) とexercise (運動)を組み合わせた造語で、国立長寿医療研究センターが開発した「ながら運動」になります。 コグニサイズ(ながら運動)は、身体運動と同時に認知課題に取り組むことによって、認知症予防を目的としたエクササイズになります。 具体的には、①身体運動(歩行や足踏み運動など)と②認知課題(足し算引き算などの計算)を同時に、30秒で1セットを目安に行います。 国立長寿医療研究センターが愛知県で行った調査によると、軽度認知症と診断された高齢者のうち、コグニサイズを行ったグループは記憶テストの成績が改善し、脳萎縮の進行も抑えられたというデータもあります。 水分を飲むことで認知症の周辺症状が改善する 脱水により引き起こされる症状には認知症の周辺症状によく似た症状があるため、認知症と間違われてしまうことがよくあります。 ただ、しっかりと水分を摂取し脱水を防ぐことにより症状は治まります。 脱水による症状にはどういうものがある? まずは認知症の周辺症状によく似た脱水の症状には「せん妄」があります。 せん妄は一種の意識精神障害で、高齢者に多く見られる症状です。 せん妄の症状は「見当識障害(時間や場所を上手く認識できなくなる)」「思考力の低下」「注意力の低下」「感情の変動」など認知症の症状と非常によく似ています。 せん妄は脱水のほかに身体疾患や薬の影響などでも症状が現れることがあります。 また、以下のような症状が起きることもあるので。注意が必要です。 傾眠脱水…意識が朦朧としてウトウトとする状態 便秘…水分摂取が少なくなることで、便が硬くなり排便することが困難になる。 脱水にならないためには? 脱水にならないためには1日に2,500㎖の水分摂取が必要と言われています。 「そんなにたくさん飲めない」と感じるのではないでしょうか。 しかし、水分は飲むだけでなく、食事からも摂取できます。 例えば、味噌汁、果物、野菜などが挙げられます。 一般的に普段の食事から1,000㎖は摂取しているので、純粋な水分からの必要摂取量は1,500㎖ほどで大丈夫です。 効率的に水分を取って頂くために 高齢者や認知症のかたに一日1,500㎖の水分を摂取して頂くのは難しいものです。 以下のような方法で水分摂取を促してみましょう。 お茶の時間を定期的に設ける ゼリーや寒天を上手に使う 本人の好みに応じた水分を提供する スポーツ飲料などの吸収率の良いものを活用する 体操やレクリエーションの後に飲んでもらう 散歩時に外で水分を飲んでもらう まとめ ここまで認知症の周辺症状に効果のあることや、認知症予防に効果のあることを解説してきました。 認知症予防にはカレーがおすすめである ・クルクミンが認知症に効果的 ・バランスの良い食事が認知症予防になる ・料理をすることで認知症予防である 認知症予防には軽い運動がおすすめである ・30分程度のウォーキングを週に3回程度行う ・頭と身体を使ったコグニサイズを取り入れる 脱水を防げば認知症の周辺症状を改善できる ・1日1,500㎖の水分摂取を目標にする ・寒天やゼリー、本人の好みを意識して水分を飲んでもらう 最後までお読みいただきありがとうございました。
訪問介護とは、要介護度の利用者が日常生活の上で困難とする動作や作業をヘルパーが訪問し介護を行うサービスです。 今回は、訪問介護の「自立支援型」について紹介します。 訪問介護のあり方 訪問介護はなぜ存在しているのか、その理由についてご紹介します。 なぜ訪問してまで介護をするの? 昨今、団塊の世代が75歳(後期高齢者)を迎える「2025年問題」がすぐそこまで迫ってきています。 まだまだ元気で若々しい高齢者も増えている反面、介護を必要とする高齢者も増加してきているのが現状です。 「子供達に迷惑をかけない」「事前に調べてサービスに興味を持った」等、様々な理由で施設入所を希望される方もいます。 しかし、多くの人は「できるだけ長く住み慣れた自宅で過ごしたい」という思いが強いようです。 家族のいる高齢者は、一日も長く一緒に家で過ごす事を、独居となった高齢者は思い出が詰まった家でゆっくり過ごしたいと其々の理由はある様です。 しかし、在宅生活に支障を来す様になってはそんな思いも叶えられません。 また、最初にも述べましたが「2025年問題」は少子高齢化が進み、国民の4人に1人が75歳以上となる事で様々な影響を及ぼすと言われています。 支えて欲しい人が増える一方、反比例する様に支える人が居なくなるという事は、日常生活に困難があっても支えてくれる人が少ない利用者側と、支えたくても人数も支援も負担も賄い切れない介護側とのパワーバランスが崩れて共倒れに成りかねないことを意味しているのです。 要介護認定を受けたとしても、住み慣れた自宅で日常生活上必要な動作や行為が少しでも自身で行える様になれたら、それは身体的にも日常生活を送る上でも生活の質を維持向上する上でも意義のあるものであり差し迫った問題に対し解答の糸口へと繋がります。 介護が必要になった方たちの生活の質を維持しながら、在宅で過ごせるようにするために訪問介護があるのです。 昔は「お世話型」今は? 介護保険制度が始まったのは2000年(平成12年)4月からです。 介護保険制度は「高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組み=介護保険」という形でスタートしています。 現在の介護保険も、「高齢者が尊厳を保ちながら暮らし続けることができる社会の実現を目指す」とされていて、高齢者も皆と同じ様に其々が地域で元気に自立し暮らしていく事ができる共存社会を目指しています。 基本的に介護保険は「高齢者の自立支援」を始めから謳っているのですが、昔から ・お年寄りは大切に ・お年寄りの面倒は若い者が看るもの ・子が親の老後を看るのは当たり前 という思考や伝承の傾向が根強くあります。 そのためか、訪問介護サービスもどちらかと言えば「お世話型」と呼ばれるサービスを行いがちでした。 事実介護認定を受けて訪問介護サービスを受ける事になった利用者は、生活を送る上でできない事をヘルパーにしてもらう=日常生活が送れる様になるというプランでヘルパーによるサービスを受けていた所が多かったのではないでしょうか? 上記の図の様に、要介護1も要介護5も同じようにできない事をしてもらっているばかりでは、どんどんできない事が増えていくだけです。 そして、介護度が増すに連れてサービスの内容も日数も増えていくという緩やかな悪循環に陥ります。 家族の形は変わっていきます。 大家族から核家族へ、子供も兄弟姉妹から一人っ子へ、結婚して家庭に入っても夫婦共働きが増え、隣近所が誰か分からないというようにご近所同士の繋がりも薄くなりました。 そのため、近年では孤立化が目立つようになっています。 そんな現実の中、上記にも述べた様な高齢者に対する昔からの思考・伝承が特に介護では反映されている事態が多い為、 「お年寄りにあれこれさせてはいけない=お世話する、面倒を看るのが介護だ」 という認識を世間一般では当然とされているのが現状です。 介護サービスも例に洩れず、「お世話型」という形で行われていたのも少なくはありません。 ここで間違えないで頂きたいのは、決してこの思考・伝承が悪いという事ではないということです。 古来より守り継がれてきた先駆者、功労者を大切にするという考えは大切であり、素晴らしい事です。 しかし、何でも大切にした結果「まだできる」事を「できない」事に変えてはいけないという事がとても重要です。 腰痛により重い物があまり持てず、歩行もやや不安定な利用者が訪問介護で生活援助を利用したとします。 お世話型のサービスでは、ヘルパーによる掃除機での掃除や洗濯物の取り込み整理整頓が行われた場合は利用者はただそのサービスをしてもらうのみです。 この場合、ヘルパーによって「清潔が維持できる」「安全に過ごす事ができる」「生活環境が保たれる」のみの授受一択となってしまいます。 例えば、利用者が軽い物が持てた場合は、柄の長い箒を使用して掃くことをお願います。 洗濯物の取り込みはヘルパーが行い、利用者はヘルパー見守りの下テーブルで洗濯物を畳む 整理整頓はヘルパーと共に行ってもらいます。 このように利用者も出来得る範囲で行動し今後に繋がる形にすれば、 「共に行う事で清潔が維持できる」 「共に行い確認する事で安全に過ごす事ができる」 「共に行う事で生活環境が保たれる」 という自立支援に向けたサービスの提供となります。 利用者の中には、何でもしてもらいたい人もいるかもしれません。 訪問介護サービスを契約して利用しているのだから、ヘルパーにはできない事を何でもしてもらいたいという気持ちは分かります。 しかし、ヘルパーは家政婦ではありません。 この先地域で暮らしていく上で、本当に困った事を地域社会全体で支え合い、日常生活を維持していく為の介護保険である事を今一度見直す必要があるのではないでしょうか。 その人なりの自立した生活を 訪問介護サービスのケアプランに謳われる「残存機能の維持」は、身体介護にも生活援助にも該当し、自立した生活を送る為に最低限必要とされる能力です。 介護度も人様々であり、生活環境や身体状況や経済状況、現症歴によって、できる事とできない事には差があります。 ケアプランに沿った訪問介護サービスを提供する事は当然ですが、ヘルパーは誰よりも利用者の近くで対応する為、利用者の心身の変化に気付きやすいものです。 現在の介護保険は自立支援型であり、 「その人が生活する上で行える動作をどうすれば継続していけるか?」 「プランでは共に行う作業であっても今の身体状況ではちょっと無理なのでは?」 「この部分はヘルパーが対応する形だけれど、一緒に行う能力があるのでは?」 等、訪問介護に入ったヘルパーからの報告でプランが見直され変わっていく事も珍しくはありません。 例えば、生活援助で夕食の下ごしらえをヘルパーが行うというプランがあるとします。 ケアプランに沿った訪問介護計画が立てられ、ヘルパーは計画通りに訪問介護に入ります。 長時間の立位が困難で台所に立つ事が難しいけれど、最後の味付けは自分でしたいという希望があれば、下ごしらえはヘルパーが行います。 しかし、実はイスに座って玉ねぎの皮を剥くやピューラーで根菜の側を剥くといった作業ができると 気付いた場合にヘルパーの取るべき対応はどうすべきなのでしょうか? ①ケアプラン通りに、そのまま調理の下ごしらえをヘルパーが行い、最後の味付けは利用者にしてもらう。 ②サービスの度にその場に応じて利用者ができる調理の下ごしらえ(イスに座っての野菜の皮剥き等)をしてもらい、調理を完成させる。 一応両方とも「形式上」は自立支援型の訪問介護サービスではあります。 不正解ではないのですが、①はほぼ「生活援助の調理」です。 ケアプラン通り、訪問介護計画書通りにサービスを遂行しているだけであり、別に悪い訳ではありません。 しかし、最後の味付け以外にも利用者のできる作業があると気付いていても、プランは下ごしらえがヘルパー対応となっています。 ヘルパーがプラン通りに料理を作ってしまうのは、自立を促すという自分でできる事を少しずつでも広げて利用者のできる能力を維持するのには弱いかもしれません。 ②は自立支援型の訪問介護に見えますが、一点注意すべき所があります。 「サービスの度にその場に応じて利用者ができる調理の下ごしらえ」がきちんとサービス提供責任者やケアマネージャー、本人や家族に伝えられているはずです。 それに応じて担当者会議が行われケアプランの変更が為され了承されています。 ヘルパーが利用者の状態に気付いて自立支援に向けたサービスを行うには、ヘルパー単独の意思決定で勝手にサービスを変える事はできません。 きちんとサービスの内容変更の手順を踏まえた上で提供すれば、「生活援助で夕食の下ごしらえをヘルパーが行うというプラン」は「できる範囲での下ごしらえを共に行いながら調理する見守り的援助の身体介護」となります。 サービス単価は若干上がりますが、利用者の今後動ける可動域は広がりその人なりの自立した日常生活を過ごす事ができる未来へと繋がる可能性があります。 事前のモニタリングやアセスメントだけでは分からないことは多々あり、ヘルパーがサービスに入って初めて気付く事も少なくはありません。 テンプレート通りに介護サービスは行えませんし、また利用者其々に応じた自立の形があります。 訪問介護はその時の状況や状態によって日々変化していき、自立の形も並行して良くも悪くも変化していくという事を忘れないようにしましょう。 まとめ 今回は訪問介護における自立支援型のサービスについて紹介しました。 ・高齢者の現状と2025年に迎える問題は、介護を求める人と介護を行う人とのバランスが崩れて共倒れの危険性がある。 ・高齢者であっても自分でできる事が増えれば、これまで通り在宅での生活を維持でき、懸念される介護の担い手不足による共倒れを回避できるきっかけとなる。 ・介護保険は2000年4月にスタートし、高齢者を社会全体で支え合う仕組みとして始まった。 ・現在は、高齢者も自立して日常生活を送れる様に地域と共存して暮らしていく形を目指しており、訪問介護もお世話型から自立支援型へ移行している。 ・お年寄りを大切にするという考えは大切だが、 何でも全てお世話をしてしまうのではなく、日常生活でできない事を支えて援助しできる事はそのままできるように維持を図る事が自立支援型の訪問介護サービスである。 ・訪問介護は在宅での日常生活を維持していく為の介護保険サービスであり、利用者の変化に気付いたヘルパーはケアマネージャーやサービス提供責任者、利用者、その家族等とよく確認し話し合い、利用者の状態や状況に応じた訪問介護を計画に則り提供していく必要がある。 訪問介護を利用する側もサービスを提供するヘルパーも、長年携わってくるとその利用者の状況や状態がよく分かってくるものです。 情が沸く事もあるかもしれませんが、その介護は本当にその人の為になるのか?ケアプランに沿ったサービスなのか?あの人はああしてくれた、こうしてくれたの言葉に揺らいでお世話型のサービスを提供してはいないか?等ヘルパーの判断が試される事もあります。 最初にも述べましたが、2025年問題はもうすぐそこにまで迫っています。 75歳以上の後期高齢者が爆発的に増えるまであと数年です。 高齢者であっても、特別な事をせずに、その人がその人なりに日々の生活を普段通りに送れる事が幸せであると考え、訪問介護サービスが行われる事を願います。
介護保険サービスは、要介護度によって利用できるサービス内容や量が決まっています。 ですが、保険内のサービスだけでは充分とはいえません。 そこで使えるのが介護保険外サービスです。 保険外のサービスを上手に組み込むことで介護保険ではまかないきれない部分に手が届き、介護負担を軽減できます。 厚生労働省も、地域包括ケアの一環として介護保険のサービスと介護保険外のサービスを併用することを推奨しています。 本記事では、介護保険外サービスのメリットやデメリット運営者やその内容について解説しています。 ぜひ最後までお読みください。 介護保険外サービスとは 介護保険外サービスとは、介護保険制度の対象外のサービスで、介護保険では補えないサービスを原則自己負担で受けられるサービスです。 厚生労働省の地域包括ケアシステムの構築と「保険外サービス活用ガイドブック」についての中に記載があり、国が推進する地域包括ケアの一部に組み込まれています。 介護保険では受けられないサービスもあるので、介護を受ける方だけではなく、介護している家族の生活も充実させられます。 介護保険外サービスを利用するメリットとデメリット 介護保険外のサービスを上手に活用するためには、メリットとデメリットをよく理解しておく必要があります。 介護保険外サービスを利用するメリット 介護保険外サービスを利用するメリットには以下のものがあります。 介護負担が軽減する サービスの提供時間を長くすることができる 家族に対する支援もある 自由なサービス選択ができる では、一つずつ解説します。 介護負担が軽減する 介護保険外サービスを利用する一番の目的は介護負担を軽減させることです。 保険でまかなえないサービスを受けられるので、介護者の負担が減り、高齢者本人も安心して生活を送ることに繋がります。 サービスの提供時間を長くすることができる サービス提供者と合意できれば長時間のサービスを受けられます。 介護保険を使って訪問介護などのサービスを受ける場合は、1回30分などと時間が決められています。 介護保険外で、サービスの時間を長めに設定することでサービスの不足感を軽減することが可能です。 家族に対する支援もある 介護保険外のサービスでは、介護する家族もサービスを受けられます。 例えば、高齢者夫婦の2人暮らしで、夫が要介護、妻は介護保険の対象外だった場合、介護保険では夫に対するサービスしか受けられません。 妻の洗濯や妻のための買物、布団干しなどは原則として対象外になります。 この場合、妻が介護保険外サービスを利用できれば、妻の負担を大きく減らすことができます。 自由なサービス選択ができる 介護保険外のサービスは、サービス内容や量、同居家族などのサービスを受ける対象者を自由に選択できます。 その分料金はかかりますが、上手に活用することで、介護を受ける本人や介護する家族のそれぞれが望む生活に一歩近づきます。 介護保険外サービスを利用するデメリット 介護保険外サービスを利用する上での一番のデメリットは費用がかさむことです。 介護保険のサービスは利用料金の7〜9割を保険でまかない、利用者は残りの1〜3割を負担します。 ですが、介護保険外サービスは保険が使えないので全額負担しなければなりません。 運営者やサービス内容などによって金額にばらつきがあるので、利用前に具体的な料金体系について確認しておきましょう。 介護保険外サービスの運営者と内容 介護保険外サービスを受けたい時はどこに相談すればよいのでしょうか。 運営者やサービス内容もさまざまですので、代表的なものを説明します。 市区町村による独自サービス 市区町村が独自に行っているサービスで、基本は介護者がそれぞれの利用者の自宅に訪問してサービスを提供する形になります。 主なものは、 おむつの配送 訪問理美容 配食サービス 緊急時の連絡システム 受診や外出時の移送サービスなど 各自治体が独自に行っているサービスなので、全ての市区町村で提供されているわけではありません。 ホームページや広報誌で確認したり、地域包括支援センターに相談したりしてみるとよいでしょう。 市区町村が中心になって実施する「介護予防・日常生活支援総合事業」 2017年にスタートした地域支援事業の一つで、市区町村が中心となって地域の実情に合わせたサービスを提供するものです。 住民が主体となり、要支援者に対し効果的で効率的な支援を目指しています。 内容は、以下の通りです。 訪問介護事業所やNPOなどの住民ボランティアが行う訪問による生活援助 主に食事用意や掃除などの家事援助や外出の支援 デイサービスや高齢者会館で提供する通所による活動援助サービス 主に運動やレクリエーション、口腔機能改善など 住民の交流の場にもなっている サービスを利用するには地域包括支援センターによるケアマネジメントが必要なので、まずは相談してみましょう。 介護サービス事業所 普段介護保険サービスを提供している事業所が、通常のサービスの延長で提供している保険外のサービスです。 サービス内容は 訪問介護ではできない手間のかかる掃除や洗濯 入院中の衣類の引き取りや洗濯などの世話 お泊まりデイサービスなど 介護保険で対応できない部分を補うためのサービスとなりますが、通常のサービスとは別枠の料金で、すべて自己負担になるので料金の確認が必要です。 社会福祉協議会の高齢者支援サービス、シルバー人材センターの家事・福祉支援サービス 全国の社会福祉協議会や、高齢者の雇用促進を目的とするシルバー人材センターによる有償ボランティアです。 介護保険では対応できない調理や洗濯、買物、掃除など 入院中の世話 冠婚葬祭の付き添い 認知症の方の見守り支援サービスなど 市区町村による総合事業として提供されていることもあるので、地域包括支援センターで受けられるサービスを相談してみるのも一つです。 民間企業の介護サービスや高齢者支援サービス 介護分野ではない企業が間接的に介護保険サービスを提供していることもあります。 コンビニエンスストアや生協などによる配食サービス タクシー会社による介護タクシーや通院介助 フィットネスクラブによるスポーツプログラムなど 市区町村によるサービスより費用は高めですが、サービスの種類が豊富で介護保険では足りない部分をサポートできます。 まとめ いかがでしたでしょうか。 本記事では、介護保険外サービスのメリットやデメリット、運営者やその内容について解説しました。 介護保険外サービスは介護保険制度の対象外のサービスで、介護保険では補えないサービスを原則自己負担で受けられるサービス 地域包括ケアの一環として厚生労働省も推奨している 介護保険外サービスを利用するメリットは、介護負担が軽減する、サービスの提供時間を長くすることができる、家族に対する支援もある、自由なサービス選択ができる 等 デメリットは、保険内のサービスに比べ費用がかかる 運営者やその内容は、市区町村による独自サービス、市区町村が中心となって実施する「介護予防・日常生活支援総合事業」、介護サービス事業所、社会福祉協議会やシルバー人材センターによる有償ボランティア、民間企業の介護サービスや高齢者支援サービス 等 介護保険外のサービスを上手に活用することで、利用者本人だけでなく介護している家族の生活も豊かになります。 介護が必要にあっても、住み慣れた地域での生活を続けるために、制度やサービスを充分に活用できるように家族で話し合ってみましょう。
2000年に介護保険制度が創設され、20年以上が経過しました。 全国に多くの介護施設が作られてきた中、残念ながら入居や利用に注意すべき問題のある介護施設も見受けられます。 ここでは、ご家族の方が介護施設を見分ける確認ポイントをお伝えしていきます。 確認したい4つのポイント 1,「見学お断り」の施設は要注意 施設の利用を検討する前に、見学ができるかどうか施設側に確認してみましょう。 見学のお願いをした段階で、「うちの施設では、見学は無理です」と言われたら、その施設は要注意です。 施設側としては「入居者のプライバシーを守るため」と断りをいれてくることが多いです。 しかし介護保険などの公的資金を使っている施設であれば、国民には見る権利があります。 入居者のプライバシーを守りながら施設を見学できる方法を考えていない施設というのは、その時点で問題です。 見学を拒否する背景として ・劣悪なケアをしている ・身体拘束など、入居者や利用者が自由に生活できない といったことが挙げられます。 しかし、最近は新型コロナの影響で、見学を制限する施設もあるため、「見学できないから、悪い施設だ」とは一概には言えません。 ですが良い施設は、以下のような制限を設けることで、見学者への対応を可能な限り行っています。 ・予め見学可能な日時を伝える ・見学者には検温と消毒、マスクやディスポグローブを着用してもらう ・入浴場など、入居者や利用者がいない場所だけでも案内する 逆に、なんの工夫も交渉もなく見学を一切お断りする施設は要注意です。 その様な施設は候補から外しましょう。 2,私物の持ち込めない介護施設は、認知症の対応ができていない 施設内の見学ができないのであれば、私物を持ち込めるかどうか確認してみましょう。 なぜなら、私物は認知症の人にとって「自分を保つための必需品」だからです。 住み慣れた家から突然、無機質な部屋にベッドだけの空間に移動されたら誰だって不安になりますよね。 そんなとき、私物があることで、心の不安が軽減されるのです。 「私物が多いと、他の入居者とトラブルになったりしないの?」 と、不安に思う人もいますよね。 確かに認知症の中には「私の物だ」と考え、勝手に他人の物を取ることがあります。 しかしそのトラブルを防ぐのは、介護職員など施設側の役割です。 知識があり経験豊富なスタッフであれば、私物を持ってくる人に対しては、 ・物を取られないよう、私物は部屋から出さないように依頼をする ・食堂など皆が集まる場所で使う場合は、必ず名前を書いてもらうようお願いする と、事前に説明をします。 また物を取りやすい入居者や利用者がいる場合は、その人と距離を取ったり、私物を持ってきている人には状況を説明して、なるべく私物を共用スペースへ持ってこないように伝えます。 良い介護施設であれば、職員は自然とこの対応を取ることができます。 「私物を持ってこられると、困ります」と断る施設は、スキルがない職員が多いと考えた方が良いです。 3,機械浴を自慢する介護施設は要注意 介護施設を見学するとき、特にチェックしてもらいたいのが「お風呂場」です。 介護施設の中には、ストレッチャー浴やリフト浴などの機械浴(特殊浴槽)を自慢そうに見せているところもあります。 しかしこういう施設は、考え方が古いです。 ストレッチャーに乗せられた入浴は、怖いし恥ずかしいものなのです。 中には「こんな身体になってしまった」と情けなくなり、ますます閉じこもりがちになってしまう方もいらっしゃいます。 また一般浴に対しても、プールのように広い埋め込み式の浴槽を使っている施設は、古い考え方が残っていることが多いです。 埋め込み式の浴槽は、バリアフリーという言葉を誤解し、段差をまたがないですむようにと作られたものです。 浴槽が広いと掴まる場所がないので溺れそうになります。 また階段の昇降ができる人というのは、施設の入所者では滅多にいません。 そのため「自分の家ではお風呂に入れていたのに、施設に入所したら入れなくなった」という事態が起こりうるのです。 最近の一般浴は、家庭と同じような浴槽に、浴槽と同じ高さの洗い台を設置して入ることが多いです。 浴槽を跨がず片足ずつ浴槽に入れれば、立てない人や歩けない人でも、家庭と同じように入ることができます。 4,施設の運営状態を公表していない事業所は、要注意 介護施設を「終の棲家」と考えている場合、運営している事業所の財務状況や運営状態をチェックしておきましょう。 経営状態の良くない事業所が運営している施設に入居した場合、運営事業者が変わってサービスの質が低下したり、最悪の場合倒産によって退去を求められる場合があるからです。 最近の事業所は、ホームページで決算書などを公表していることが多いです。 視点を変えれば、運営状態を入居希望者に公表しない事業所は、情報公開に前向きでないとも取れるので、注意しましょう。 更に確認したい3つの情報とは!? 事業所が公表している情報で着目してほしい情報は、下記の3つです。 1,入居率 施設のオープンから数年経っているのに入居率が極端に低い場合、施設に何らかの問題がある可能性があります。 2,退去者数 入院や死亡以外に退去者数が多い施設は、トラブルや劣悪な環境など、様々な原因が潜んでいる可能性があります。 3,職員の離職率 職員の離職率が高い施設は、労働環境が良くなかったり、サービスの質が低いことが考えられます。 もしトラブルが起こったら、どうすれば良い? ここまで、注意すべき介護施設のポイントをお伝えしてきました。 しかし、どんなに吟味して選んだ介護施設でも、トラブルは発生するものです。 場合によっては、退去を求められる可能性もあります。 せっかく時間や手間をかけて選んだ施設を、離れたくないという人もいますよね。 そこで、ここではトラブルが起こったときにどうすれば良いか、お伝えしていきます。 1,施設に相談する 利用している中で気になる点や些細なことがあれば、現場スタッフなどの施設に相談しましょう。 現場レベルで解決できれば、大きなトラブルへの発展を防ぐことができます。 状況が改善されない場合は、施設や運営会社へ訴えましょう。 2,第三者へ相談する 施設や運営会社に相談しても解決されない場合や、苦情が言いにくい場合もあります。 そんなときは、第三者へ相談するという方法をとりましょう。 気軽に相談できる電話相談もありますし、市区町村の苦情相談窓口もあります。 連絡先は、施設の契約書や重要事項説明書に「苦情相談窓口」と明記されていることが多いので、予め確認しておくとよいでしょう。 3,国保連へ申し立てる 最終手段として「国保連(国民健康保険団体連合会)」へ申し立てましょう。 国保連は、都道府県と市町村、国民健康保険連合組合が運営している法人です。 国保連では介護相談窓口を設置しており、介護保険サービスについての苦情を受け付けています。 市区町村には介護保険施設の指定を取り消す権限があり、国保連は介護サービス事業者に対して調査や指導、助言を行う権限があります。 トラブルの内容や改善状況によっては、住み替えの検討が最善策となる可能性もあるということも、考えておくと良いです。 まとめ ・施設見学お断りの介護施設は、劣悪な環境など他人に見せられない部分があるのかも知れない ・私物を持ち込めない介護施設は、認知症の対応が上手くできない施設であることが多い ・機械浴を自慢する介護施設は、昔ながらの介護のやり方をしている ・施設の運営状態を公表していない施設は、情報公開に消極的であったり、運営状態が悪いことが多い ・トラブルが起こったら、施設に相談する。 ・施設に言いにくい場合は、市区町村の苦情相談窓口や国保連の介護相談窓口へ相談する。 最後までご覧いただきましてありがとうございます。
訪問介護サービスの一つに、利用者の病院受診の一連を介助する「通院介助」があります。 今回は通院介助一連に纏わるトラブルや対応について、事例を交えながら紹介します。 通院介助とはどんな介助? ここでは通院介護がどのようなサービスなのかを解説します。 病院受診する為に利用者の移動支援を行う介護サービスです。 訪問介護サービスには、大きく分けて「身体介護」「生活援助」「通院等乗降介助」の3つに分かれます。 通院介助は下記の図の通り①~⑤の対応の仕方があり、其々の介助に分けられています。 ①と②に代表されるのは介護タクシーで、介護資格のある運転手が病院への行き帰りの対応を行うものです。 一般的に通院等乗降介助と呼ばれるもので、病院受診前の準備や外出する為の身体介護(移動・移乗・整容・更衣・排泄等)も含まれます。 ③は病院へ受診する為の外出介助で、帰宅まで訪問介護のためヘルパーが対応しますが、院内は基本病院側の対応となる為、介護保険適用外となります。 例外として、病院側が対応できない、院内での家族付き添い対応ができない、利用者の心身不安定による見守りや介助を要する等、理由によってはケアマネージャーが事前確認の上で訪問介護にて院内介助が行える場合もあります。 ④の様に介護度が4~5と重度で相当時間数の身体介護を必要とする場合は、病院受診前の準備や外出する為の身体介護(移動・移乗・整容・更衣・排泄等)も、通院等乗降介助の乗車前や降車後介助の一環とならずに身体介護中心型という形になります。 ⑤は要介護認定(介護度1~5)の利用者が病院受診をする前と後に、受診に関連する介助ではない別の身体介護中心の介護を30分~1時間程度以上のサービスを行う場合が対象となります。 ①~⑤に関して、要介護度認定を受けた利用者が病院受診前後の介助を訪問介護サービス(介護保険)で対応し。病院内の対応は医療機関である病院側(医療保険)が対応する事が前提です。 但し③でも述べましたが、例外として院内介助も介護サービスとして対応できるケースもあります。 要支援の人はどうするの? 基本的に通院介助は要介護認定を受けた利用者でケアマネージャーがケアプランに通院介助が必要であると記載され、訪問介護を計画された場合のみです。 要支援1~2の認定を受けた利用者は、通院等乗降介助は介護保険サービスとして算定できません。 要支援は簡単に言うと「基本的に日常生活を送る能力は持っているが、支援を必要する部分もある」という事を示しいます。 そのため、要支援者の介助は、 「自分でできる事は自分で行う」 「できない事のみ支援する」 「できない事が少しでもできる様になる」 という利用者が自立を維持しながら日々を過ごせる為の支援であると考えると分かりやすいかもしれません。 要支援者と認定された場合、「移動」という動作・行動が自身でできる状態にある事が多く、通院に関してもヘルパーが介助する必要性は無いと判断される傾向にあります。 また要支援は、日常生活支援総合事業の訪問型サービス(旧:介護予防訪問介護)という形でヘルパーがサービスに入る事もありますが、週に1~3回程度で月に4~13回程度入るといった回数が決まっています。 月に回数が定められている中で、病院受診が毎週あるとは考えづらい点や、病院までの移動にヘルパーの介助の必要性を問われる点からも、要支援の認定を受けた利用者がヘルパーによる通院介助を受けづらいとされるのです。 要支援であっても病院受診をするのに不安な面がある場合等、理由によっては支援を受ける事ができる例もあります。 (例1)要支援認定であるが、現病歴による後遺症があり、身体の動きが悪く、躓いたり転倒する危険性があり、日常生活において支障がある場合。 (例2)入院していた要支援の利用者が退院し、退院後の日々の生活において身体状態の不安定がみられ、支援を必要とする場合。 他にも色々なケースがありますが、いずれもヘルパーによる支援が必要とされる場合は、ケアマネージャーや包括支援センター、市町村等の自治体と相談や協議を行い、その上でケアプランに必要性を謳う事で可能となる事もあります。 但し要介護の利用者の様な通院介助ではなく、外出支援(移動支援)という形での対応です。 そのため、介護タクシー(介護保険適用)は利用できない代わりに福祉タクシー(介護保険の適用無し)で対応する等の対応になります。 あくまでも「支援」であり「介助」では無い事と、基本的に要支援対象者は通院介助は介護保険では認められない傾向にあると考えた方が良いでしょう。 利用者の思惑、ヘルパーの困惑 通院介助を行う上でサービスの内容を確認するのは当然です。 例えば、訪問介護側と利用者側で「通院介助にかかる費用」や、「どこまで介助が可能なのか」「病院受診後ついでに、と急な依頼への対応」など、色々と確認しなければいけない事があります。 ケアマネージャーからも通院介助をケアプランに追加する際は事前に説明等を行いますが、介護を行う側と受ける側双方が認識を共有しておかなければなりません。 <下記の図にある、様々なトラブルに繋がってしまう言動事例も参照下さい。> 移動手段もいろいろ、意外とお金もかかる? 「病院受診は訪問介護でヘルパーが対応するから大丈夫だ。」と、受診に関する一連の行動や必要とされる介護のみにクローズアップされがちです。 しかし、介護保険とは別にお金がかかる場合もある事を忘れてはいけません。 勿論、ヘルパーも通院介助においてできる事・できない事の認識をしておく事は絶対です。 例えば、利用者側からすれば「訪問介護サービスでの介護利用だから1割負担(又は2割負担)で済む」との認識をされている場合もあります。 間違いでは無いのですが、通院等乗降介助では「利用者宅から車両で病院へ移動し、受診手続きや薬の受取り等対応しまた利用者宅へ移動する介助」に該当する介護サービスのみ、介護単価で行われます。 当然、車両運賃は介護サービスには含まれません。 介護タクシーでは、通院等乗降介助の介護サービス費とタクシーとしての運賃との合算で請求されます。 介護タクシーを利用しない場合でも、ヘルパーの介助を伴いながら各交通機関を利用した際は 利用者本人の交通機関の運賃と共にヘルパーの運賃も発生します。 一般タクシーを利用する場合は乗合となる為に、1人でも2人でも料金は同じです。 しかし、バスや電車を利用する場合は2人分の運賃が発生し、それは利用者負担となるのです。 また院内介助を行う際に、介護保険対応とならない場合は自費サービスを利用される事があります。 自費サービスは介護保険の様に1割負担(又は2割負担)ではなく、全額負担であったり、介護事業所による金額設定が為されています。 そのため、介護サービス費用の感覚でいくと割高に感じるかもしれません。 重ねて院内での時間が長くなれば、自費サービスの時間も長くなります。 また、通院介助の総額が高額になる場合もあるので、ヘルパーに介助を依頼したいけれど金銭面での負担が苦となることがあります。 利用者側のストレスが、更にトラブルへと発展しかねない状況を生み出す原因とも成り得るのです。 予め、利用者へのモニタリングで病院への経路や受診に掛かる時間を確認しておき、費用を概算し、事前に書面化してお知らせしておく事が出来たらお互い安心かもしれません。 いざ病院へ!と行ったはいいけれど。 何度も言いますが、基本的に病院内での対応は医療管轄である病院側であり、介護保険での利用はできません。 でも実際は、病院受診で受付を済ませて、診察又は検査で待つ間や呼ばれて対応する際に病院側の介助は無く、ヘルパーが対応する事態になる事も少なくはありません。 病院側も人手不足であったり、ヘルパーの付添があるならばそちらで対応したらいいと言う様な言動を取られた事もヘルパーを経験した者ならばあるでしょう。 そんな病院内での対応に関するトラブルの例です。 何れも、通院介助を行う訪問介護側と病院側との連携・確認不足による不手際がトラブルに繋がってしまったケースです。 事前にケアマネージャーと病院側との確認はなされており、その通りに進むべきではあるのですが まれにこういった予想しなかった事態になってしまう事も起こり得るのです。 事前確認し、ケアプランに追加された後、訪問介護側でも通院介助時の訪問介護計画や予定の再確認 予測外の事態に備えての対応策を講じておく等、訪問介護側もヘルパーと再度情報を共有して介助を行う様にしていく事が重要になってきます。 また、自費サービスが発生する場合は、利用者側にも了解を得る形をしっかり取って双方できる限り負担の掛からないようにしなければなりません。 利用者側と訪問介護側で金銭面以外でもこんなトラブルが発生する事もあります。 ①~③の例を上げましたが、通院介助を行う前はきちんと説明をして了承を得ていても、いざ病院に行く=外出するとなると「ああしたい、こうしたい」の欲求が出てくる事もあるようです。 ①の様に「ちょっとだけ良いだろう」という考えでヘルパーに依頼してくる事もあります。 これは訪問介護で対応可能なのか?ケアプランにその介助内容は含まれているか?をよく考えて対応し、分からない場合は訪問介護事業所の責任者に報告・連絡・相談が必要です。 ②のケースは、たまたまその利用者の訪問介護計画に買い物や整理整頓の見守り的支援があった為に 可能となったサービスです。 これが「美容室に寄って帰りたい」や「娘家族のお土産買って帰りたい」等であった場合は対応不可となります。 ③に関して滅多に無いとは思われますが、利用者やその家族からの「訪問介護の契約をしているから、ヘルパーに何でも頼んでおけば良い」という考えの下に出た発言です。 訪問介護のヘルパーによくある「何でも屋」扱いですが、ここでは利用者からきちんと断ってくれた為、トラブルとはなりませんでした。 ヘルパーは第三者からの突然の言動にも落ち着いて対応できないといけません。 他にも色々とトラブルへ繋がる様な事態が発生する事もあります。 基本はケアマネージャーと病院側で確認した上で計画された訪問介護(通院介助)の計画をよく確認し、当日どう対応するのかをヘルパー含めたチームで理解し対応する事が求められます。 また、ヘルパー自身が対応に困る事態が起きた場合は、すぐに訪問介護事業所へ連絡することが重要です。 サービス提供責任者や、場合によってはケアマネージャーに対応を依頼する事も必要となります。 ヘルパー自身の曖昧な判断で対応したり、良かれと思って対応した結果、後に難しいトラブルへと発展してしまう事にも繋がりかねません。 病院という在宅外での介護の為、臨機応変な対応が求められる場合もありますが、あくまでも訪問介護サービスである事を踏まえた上での対応にヘルパーは従事しましょう。 まとめ 今回は通院介助についてや介助時のトラブル、対応等を紹介しました。 ・通院介助とは、要介護度認定を受けた利用者が病院受診をする為に行われる訪問介護であり、通院等乗降介助や身体介護中心型といった形がある。 ・基本的に病院内は医療機関の対応となるが、事前確認によっては訪問介護で対応する事もある。 ・要支援は通院介助の対象外であるが、場合によっては外出支援として対応できる事もある。 ・通院介助では利用者の負担が介護保険以外にも発生する事があるので、双方の確認が必要である。 ・訪問介護で院内の介助を行う場合は、病院側と訪問介護側との連携や確認が再度必要であり、利用者との間にも自費サービスが発生する場合の確認を行っておく必要がある。 ・利用者と訪問介護側の間でも、通院介助をする際にできる事やできない事の確認を行い、双方が理解しておく必要がある。 通院介助は各自治体によっての解釈が異なる場合があります。 利用者の居住する自治体が、どこまで通院に対し、介護対応を許容するのかをよく確認した上で、病院側、利用者側、訪問介護側との連携を踏まえてサービスする事も大切です。 訪問介護でヘルパーが通院介助を行う為の情報の一つとしてお役立て下さい。
認知症はだれもがなりうる病気で、家族や身近な人が認知症になることなどを含め、多くの人にとって身近なものです。 認知症が進行すると興奮や幻覚、徘徊など、介護者に多くの負担がかかる場合があります。 その負担が蓄積してくると在宅での介護に限界が生じて共倒れとなる恐れが出てきます。 在宅での介護が辛くなってきたとき、もう限界となる前に、施設への入所、特に認知症グループホームという選択肢があるという知識を持っていることが大切です。 今回は認知症グル-プホームがお薦めな理由についてご紹介させていただきます。 グループホームとは 認知症対応型共同生活介護は、認知症グループホーム(以下グループホームと表記)とも呼ばれています。 認知症の方が住み慣れた地域で可能な限り自立した日常生活を送ることができるよう、家庭的な 環境の中で食事や入浴などの日常生活上の支援が受けられるサービスです。 それでは、入所についての条件やメリットを説明していきます。 グループホームの入居条件 グループホームに入所するためには以下の条件がそろっていることが必要です。 ➀専門医から認知症の診断を受けている。 ②施設の所在地と同一市区町村に住民票を持っている。 ③要介護認定で要支援2以上の認定が必要。 グループホームのメリット それでは、グループホームには、どんなメリットがあるでしょうか? ➀少人数でのユニット制 5~9人で一つのユニットとなっており、少人数のグループのなかで家庭的でゆったりとした、気心知れた環境で暮らすことが出来ます。 ②認知症の対応を知り尽くした職員が対応 入所当初は、周囲の雰囲気に馴染めず居心地が悪くなったり、徘徊につながる場合があります。 しかし、認知症の対応に熟知しているスタッフは、適切な声掛けや寄り添いながら支援することで、利用者と信頼関係を構築しているのです。 そのため、利用者の問題行動が落ち着き、穏やかに暮らしていける支援を受けられます。 ③利用者と介護従事者が共同で行い、日常生活を維持できる。 グループホームの特徴として、利用者の食事その他の家事等は原則として利用者と介護従事者が共同で行うよう努めるものと運営基準上で示されています。 「台所」を設けることも基準化されており、これまで在宅で出来ていた生活を維持する為の支援を目的としています。 ④役割・生きがい、楽しみの創出 認知症の人の中では、役割がなく生き甲斐が失われて寂しい思いを持たれている方も多いのです。 以前好きだった趣味活動、料理が得意だったことなど、そんな情報を基にしながら職員と入居者が一緒にコミュニケーションを取っていきます。 そうしていくことで、出来なかったことを出来るように変えていく働きかけが刺激となって、認知機能の低下や予防が図れます。 グループホームでの仕事は高齢者の失われかけた能力を最大限に引き出しながら活かすことが出来る仕事です。 そんなところにやりがいを感じると言われる職員さんの言葉はとても素敵ですね。 グループホームのデメリット グループホームはメリットだけではありません。 以下のようなデメリットもあります。 ➀他入居者とトラブルになる可能性がある 少人数という環境は入居者同士の相性がとても重要となります。 集団生活に支障をきたす恐れのある方や、他の入居者と相性が合わないために居心地の悪さを感じてしまう方もでてしまいます。 その場合は、調整が難しく、退所も検討しなければならなくなります。 ②グループホーム自体が少ない グループホームは元々数が多くありません。 そのため、人気のあるグループホームは満床になりやすく、すぐに入居することは難しいです。 なかには予約待ちを入れて空きが出るまで有料老人ホームに入っている方もいらっしゃいます。 ③医療的なケア対応に限界がある グループホームは、看護師の配置の義務がないため、医療ケア対応に限界があります。 他施設との違いについて 老人ホームにはさまざまな種類があります。 介護付き有料老人ホーム、サービス付き高齢者住宅などの民間施設であり、公的施設としては特別養護老人ホームと介護老人保健施設、介護医療院などがあります。 簡単にそれぞれの特長をお伝えします。 特別養護老人ホーム 特別養護老人ホームは、「要介護3以上」の認定を受けている方が対象の施設です。 車椅子や寝たきりの利用者が多く、入所にかかる費用は他の施設より一番安いので、希望者も多いことがあります。 そのため、入所できるまで時間を要する事が可能性が高いです。 また、要介護度1〜2の入居には自治体による特例入所が必要となります。 介護老人保健施設 介護老人保健施設は、骨折や脳梗塞などで退院後すぐに在宅生活ができない高齢者が、在宅復帰を目指す施設です。 そのため大抵は3か月という一定期間の間で退去することが前提の施設です。 特別養護老人ホームと比較すると入居しやすい状況ではありますが、終(つい)の棲家にはできません。 介護医療院とは 介護医療院とは、胃ろう等の経管栄養や喀痰吸引等、日常生活上に医療処置が必要な方が入所できる施設となります 。 グループホームのおすすめポイント それでは、グループホームのおすすめポイントを見ていきましょう。 ➀人員配置基準が手厚い グループホームは以下のような人員配置がされています。 ・日中の体制 グループホームでは入居者3名に対し常勤換算で職員1名以上の配置が必要と定められています。 従来型特養は「定員あたりの人員配置」に対しての基準です。 グループホームは「1日あたりの人員配置」が基準となっています。 ・夜勤体制 グループホームでの夜間は入居者9名に対し常勤換算で職員1名以上の配置が必要と定められています。 サービス付き高齢者住宅とか有料老人ホームの場合は住宅のため基準がありませんが、一般的には30人〜70人に一人の夜勤の配置となっているようです。 人員配置基準上、最も人手がある配置基準となっているのがグループホームであると言えます。 ②費用面について 公的施設と比べると高額となりますが、他の民間施設より大体5万円程度安い月額費用で入居できるようです。 ただし、入所一時金がかかるところもあるので、良く調べておく必要があります ③計画作成担当者は、ユニットごとに1名以上配置 グループホームでは適切な介護サービスを提供するために、利用者に合わせたケアプランを作成するための計画作成担当者の配置基準があります。 計画作成担当者のうち、1名以上は介護支援専門員の資格を有していることが人員配置基準の1つです。 また、グループホームの運営基準は、最大3ユニットまでですので、27名までの計画作成となります。 これは、居宅介護支援事業所の介護支援専門員の担当件数である35件よりも、担当件数が少なく、認知症の方の支援に併せたプランが期待されている背景とも汲み取れるでしょう。 施設選びの要は介護者自身 今までデイサービスやヘルパーの手配をしてくれていたケアマネですが、ケアマネは在宅支援のコーディネーターという役割です。 施設への入所を検討をする場合には、役割外となります。 そのため、施設の情報が入った資料の提供をしますが、各施設の詳しい情報を持ち合わせていません。 施設選びを率先して行うのは、介護者自身となるというところを心得ておきましょう。 最初は有料老人ホームに入所しておきながら、グループホームの空き待ちを予約しておくことが重要です。 空いたのちに、認知症の知識を持ったスタッフの元で残存能力を生かし、生活支援を受けながら入居者も介護者も笑顔が戻ったという話もあります。 グループホームへの入所も選択肢の一つとして検討してみてはいかがでしょうか。 まとめ 認知症の人は、理解力や記憶力などの中核症状と併せ徘徊や興奮などの周辺症状の増悪を伴う場合があり、長期の介護負担は介護者の生活を脅かす危険性があります。 特に認知症を有する高齢者は入所後、精神的に不安定になりやすい事もあります。 できれば少人数で自宅のような環境や人員配置の多いグループホームでの生活が望ましいでしょう。 在宅生活の限界を感じ施設入所を検討する場合、認知症グループホームは入所の条件として施設と同一の市町村に住民票が必要なので注意が必要です。 しかし、グループホームは小規模な施設であるため馴染みの環境を作りやすいです。 また、介護の知識や認知症の対応を知り尽くした職員が対応をするため、認知症の方でも安心して暮らすことが出来ます。 是非、介護の限界になるまえに事前に情報を得ておいて検討してみてはいかがでしょうか? 最後までお読みいただきましてありがとうございます。