皆さんは、記憶が失われていくアルツハイマー型認知症の症状改善に対する新たな試みが「NHK BS」の放送で紹介されたのをご存知ですか。 これまでは、薬による症状の進行を遅らせることが主な治療であった認知症が、生活習慣を徹底的に見直すことで症状を緩和するという新たな試みがクローズアップされて紹介されました。 認知症の症状や対策、改善事例を知ることで、認知症に対処できる明るい未来も見えてきているのです。 この記事では、認知症に苦しむ患者や家族にアメリカの脳科学者が提案した新たな治療法の模索など、最新の認知症に関する情報について紹介します。 未だ課題はありますが、認知症に苦しむ方やご家族の方は ぜひご一読ください。 認知症の症状改善に新たな試み 認知症は、今まで、改善する治療法はなく、唯一、薬で症状の進行を抑えるだけの対処法しかない症状でした。 しかし、現在では症状を改善させようとする新たな試みが注目されています。 その方法とは、食事や運動という生活習慣の改善により、症状を改善させる試みです。 ここでは、生活習慣を改善することで、認知症の症状を改善させる新しい方法について紹介します。 生活習慣改善は新たな認知症対策 認知症の患者数は、アメリカで約600万人、日本では約400万人といわれています。 認知症に苦しむ患者や家族は、社会でさまざまな制約を受けてしまいます。 認知症で日常生活まで支障を生じている現状を改善するために、主に薬による治療を受けているのが現状です。 しかし、近年、アメリカの脳研究者であり、アルツハイマー病の権威である医学博士デール・ブレデセン氏の30年間の研究の成果が世界で脚光を浴びています。 薬に頼らない認知症予防 デール・ブレデセン氏によると、認知症は薬だけの治療は症状の進行を抑えるだけで、根本的な治療ではないため、新たな治療法が必要だと説いていました。 その新しい治療法とは、生活習慣の改善(リコード法)です。 この方法は、薬に頼らず、生活の中心となる5つの習慣を見直すことで認知症を改善しようとする試みです。 生活習慣の基本5か条(リコード法) 生活習慣の基本5か条とは、次の5つの習慣を見直せば、認知症に効果があるとされ、リコード法と呼ばれています。 食事・・・・糖質を野菜中心の食生活に変える(ブロッコリーは特に効果的) 運動・・・・毎日30分以上の有酸素運動を行う 睡眠・・・・8時間の睡眠が必要 プチ断食・・夕食は寝る前の3時間までに摂る、夕食から朝食まで12時間は空ける ストレス軽減・・めい想する その他の環境・・毒性物質(カビ、大気汚染など)も影響する ヘルスコーチとの二人三脚 ヘルスコーチとは、医師の診断結果に基づき、生活習慣や環境を指導する役割を担います。 医師は病気の専門家ですが、食事などの生活習慣に対する具体的な改善方法までは提示しません。 特に認知症の症状改善には、生活習慣の改善が効果的であるため、ヘルスコーチによる生活改善が主体の治療が必要になります。 ヘルスコーチと患者や家族との二人三脚が大切なのです。 ある脳研究者の挑戦 アメリカの脳科学者でアルツハイマー病の権威であるデール・ブレデセン博士は、カリフォルニア大学で30年、認知症の研究を行ってきました。 その研究の中で、脳には1,000億個の神経細胞があり、アルツハイマー型認知症は神経細胞の先端のシナプスが死滅するメカニズムで発症することを突きとめたのです。 しかし、認知症の症状はさまざまで、現状は薬で症状の進行を抑える治療に留まっています。 デール・ブレデセン博士は、生活習慣の改善により認知症は改善するという信念のもとに、アルツハイマー病協会(アメリカ・シカゴ)に協力を求めています。 認知症の現状 認知症の現状として、人によって症状はさまざまです。。 しかし、医師の処方や診察、ヘルスコーチの指導による生活習慣を改善することで、認知症の進行は抑えられている症例を紹介します。 【日本人男性の例】 父親の介護中に物忘れが多くなった自分に気づき、病院で診察を受けた結果、認知症の発症を告げられました。 彼は薬を処方されたことにショックを受けます。 当時は保険会社勤めをしていましたが、ますます物忘れが進行していきます。 彼は、このまま仕事を続けると会社にも迷惑がかかると考え、退職しました。 現在は農業を営んでいます。 彼は、デール・ブレデセン博士のセミナーで感銘を受け、生活習慣の改善に努めるようになりました。 現在は進行の症状は少しずつではありますが抑えられています。 【アメリカ人女性の例】 親しい知人でも名前と顔を思い出せないほど認知症の症状が進行していました。 自分が認知機能が低下していると考えると日々怖く感じてしまい、日常生活に不安を感じていました。 生活習慣を改善した結果、認知症の進行が少しずつ抑えられ、4か月が経過した頃から効果を感じ始めるようになりました。 認知症の薬は症状の進行を抑えるだけ アミロイドβという物質は、早ければ40代から脳内に蓄積し始めます。 アミロイドβは、アルツハイマー病に重大な影響を与えるといわれています。 そのため、現在の新薬はアミロイドβ仮説に基づき開発されたものが患者に処方されています。 しかし、新薬でも認知機能の低下を完全に抑えることはできないのが実態です。 認知症に至るメカニズム 認知症に深く関わっているアミロイドβは、アミロイド前駆体タンパク質(APP)が大きく関与しているのです。 APPは脳細胞の運命を決めるともいわれる物質で、神経細胞に密集した斑点を形成します。 APPが蓄積すると脳は徐々に本来の機能を失い。認知症を発症します。 人によって認知症の症状はさまざま 「もの忘れ」と「認知症」の大きな違いは、体験の一部のみ忘れるか、過去の経験や体験を忘れるかです。 認知機能の低下には、次の6段階に分かれます。 非常に軽度 若干のもの忘れはあるが、日常生活に支障がない段階です。 軽度 家族や友人が変化に気づく段階です。 中等度 明らかな症状が見られる段階です。 やや重度 記憶障害や認知障害があり、サポートが必要な段階です。 重度 さらに記憶障害の進行が顕著になり、人格が変わる、大幅なサポートが必要な段階です。 非常に重度 アルツハイマー病の最終段階といわれ、環境への反応や会話が成立しない 異常な反射対応、筋肉の硬直なども見られるようになります。 生活習慣改善は認知症を予防する 認知症は病名ではなく、脳の認知機能の低下による症状です。 認知症を引き起こす疾患はさまざまですが、その中でも、次の4つの疾患が多数を占めています。 1.アルツハイマー型認知症 2.脳疾患性認知症 3.レビー小体型認知症 4.前頭側頭型認知症 この4つの疾患の内、脳疾患性認知症だけは脳血管に障害を受けて発症したものですが、その他3つの認知症は、脳の神経変性により発症します。 脳の神経変性は、主に糖分の摂りすぎによるインスリンの増加や、ビタミン・ホルモン不足などが引き金だと指摘されています。 生活習慣を見直し健康状態を保つことが、脳の神経変性を抑える効果があるのです。 生活習慣を改善したことで認知症への効果は? 2014年にデール・ブレデセン博士が論文で発表して以降、さまざまな症例の患者にリコード法を試みており、改善効果は次のとおりです。 軽度の認知障害・・・・・改善効果は50%程度 早期アルツハイマー病・・改善効果は30%程度 重度アルツハイマー病・・改善は困難 リコード法による症状の改善は、軽度から早期のアルツハイマー病に効果があると見られます。 今後の課題 リコード法はアルツハイマー病の新しい治療法ですが、すべてが確立された治療ではありません。 未だ、残された課題があります。 高額な検査費用 日本では、リコード法を活用した医療が進んでおらず、一部の医療機関しか対応していないのが現状です。 また、日本国内ではすべての検査ができず、海外に検査依頼しているため、高額な検査費用(約40万円)がかかります。 ヘルスコーチの絶対数の少なさ ヘルスコーチの絶対的な少なさも、リコード法の妨げになっています。 継続的な生活改善を続けるためには、ヘルスコーチによる指導や医師の治療が必要です。 ヘルスコーチの育成も課題の1つです。 まとめ この記事をまとめると次のとおりです。 ・認知症で処方される薬は、症状の進行を抑えるだけである ・生活習慣の見直しで症状を改善する可能性がある ・生活の基本5か条(リコード法)を知る ・早期の発見、対応に効果がある ・ヘルスコーチの協力が不可欠である 認知症が進行すると、日常生活でさまざまな問題が生じます。 また、患者や家族は悩み、苦しみ、場合によっては生命の危険を及ぼす行動をとるなど、社会的な問題を抱えています。 しかし、処方される薬に頼ることなく、患者本人や家族の努力の積み重ねでも症状が改善できる治療法もあることを覚えておいてください。 認知症は進行する前の早期発見、対応がポイントです。
介護が始まればさまざまな介護サービスを利用することになります。 サービスの数が多くあるため、当初はケアプラン中心の介護になるでしょう。 この記事は、ケアプランをベースに介護の中心となる家族に向けて、負担感の少ない介護になるように、必要なサービスや特徴、メリットを紹介します。 基本的な内容を知れば、家族の希望を盛り込んだケアプラン見直しの提案、調整ができます。 ぜひ参考にしてください。 介護のベースはケアプラン 介護のベースはケアマネジャーが作成するケアプランになるため、ケアマネジャーとの連携は欠かせません。 介護保険サービスを詳しく知らない場合、ケアマネジャーが中心で介護が進みます。 しかし、介護経験を積みスキルが向上した介護者になれば、ケアプランの見直しをケアマネジャーに提案することが必要になる時が来るでしょう。 家族の要望を盛り込んだケアプランも重要 ケアプランは利用者のための計画書ですが、家族の希望を盛り込んだケアプランも重要です。 なぜなら、利用者と家族にとって、より良いケアプランが、介護を続ける秘訣の1つだからです。 ここでは、家族の希望を踏まえたケアプランにするための4つのポイントを紹介します。 ①家族の要望を整理する 利用者だけでなく、家族の希望を整理する必要があります。 家族の健康状態や家庭の経済状況、介護者の経験年数、生活環境の変化等を考慮しながら、これからの介護に関する希望を整理しておけば、ケアプランに反映しやすくなります。 ②サービス内容・限度基準額を確認する 利用しているサービス内容と利用限度基準額を確認しておきましょう。 サービス内容や利用する頻度やレンタル福祉用具等をチェックし、現在の利用限度基準額と実際の自己負担額を確認しておくことは大切です。 ③介護保険サービスを知る 介護保険サービスを知ることも大切なポイントの1つです。 介護保険サービスは数が多く、さらに細分化されています。 利用しているサービスに目を通し、要介護状態区分やケアプランの目標に合ったサービスなのか確認しておくことも大切です。 特に定期的な介護認定による要介護度の見直しによってケアプランも変わるため、注意しておきましょう。 ④経済状況の変化に見合ったケアプランの見直し 家庭の経済状況の変化に見合ったケアプランの見直しも、時には必要です。 介護にかかる費用は、福祉用具や介護用品など、意外に出費がかさみます。 経済的に苦しい状況が続くと、家族の精神的、経済的負担が大きくなります。 少しでも経済状況に不安がある場合は、早めにケアマネジャーにケアプランの見直しを依頼しましょう。 家族のニーズを積極的に伝え、ケアマネジャー任せの介護になっていないか確認することも大切です。 要介護認定でサービスが決まる 要介護度認定で、利用できるサービスが決まります。 要介護認定とは、介護サービスの利用希望者に対し介護の必要性を判断するためのもので、「要支援」「要介護」で判定、区分けされます。 要支援認定 介護の必要性はないが、自立した生活のための見守りや手助けなど、介護予防が必要な状態を指します。 要支援1,2の2段階あり、介護保険を利用した介護予防サービスが使えます。 要介護認定 すでに介護が必要な状態を指します。 要介護度は5段階あり、介護保険サービスのすべてが使えます。 介護保険サービスとは 介護保険サービスとは、介護保険を利用して受けられるサービスです。 要支援は、地域総括支援センターで作成するケアプランに基づき、居宅または地域密着型サービスを利用できます。 一方、要介護はすべての介護サービスを利用できますが、ケアプランによって利用できるサービスが増減します。 また、介護サービスには、保険適用の「介護保険サービス」と保険適用外の「介護保険外サービス」があるため、利用する際は注意が必要です。 介護保険サービスの自己負担割合 介護保険を利用するサービスで、自己負担割合は、原則、支給限度額までは1割負担です。 ただし、一定の所得がある人は、所得額によって、2割または3割負担になります。 要支援で利用できるサービス 要介護を防ぐために、次のような介護予防サービスが受けられます。 自宅訪問 施設通所 施設短期宿泊 要介護で利用できるサービス 要介護で利用できるサービスは、次のとおりです。 自宅訪問 通所介護 通所リハビリ 短期入所 特定施設型 介護保険外サービス 介護保険外サービスは、全額、自己負担になります。 しかし、日常生活をサポートするサービスのため生活環境に合わせた利用ができます。 一例として、次のようなサービスがあります。 家事代行 配食(宅食) 訪問理容 洗濯代行 送迎 要介護度で自己負担額が変わるサービスもある 要介護度が増すと介護保険からの支給限度額が増えるため、多くのサービスが利用でき、お得と思われる人もいるでしょう。 しかし、サービスによっては自己負担額が一定の場合と変わる場合があり、利用状況によっては、自己負担額が増えることも考えられます。 特にサービスを追加する場合は、ケアマネジャーに自己負担額の確認などが必要です。 自己負担額が一定のサービス 要介護度に関係なく、自己負担額が一定のサービスは次のとおりです。 訪問看護 訪問リハビリ 訪問入浴 訪問介護 居宅療養管理 福祉用具レンタル 利用状況により負担額が変わるサービス 要介護度や健康状態の変化などで、利用状況により負担額が変わるサービスは、次のとおりです。 通所介護 通所リハビリ 短期入所介護 小規模多機能型居宅介護 特定施設介護 知っておきたい介護保険サービスの種類や特徴、メリット 介護する環境や生活スタイルの変化に応じ、各種サービスの組み替えが必要な時もあります。 ここでは、家族として、知っておきたい介護保険サービスの種類や特徴、利用者側のメリットを簡単に紹介します。 介護保険サービスの種類や特徴、メリット 介護保険サービスの種類は、居宅や施設、地域密着型サービスの3種類あります。 それぞれの特徴や利用者側のメリットは次のとおりです。 居宅サービスの特徴とメリット 居宅サービスとは、家で介護サービスを受けられるものです。 特徴 通所サービスや短期入所サービスなどを併用して利用でき、介護者のニーズに合わせられます。 メリット 在宅で生活でき、必要時または希望に応じた介護保険サービスが受けられます。 施設サービスの特徴とメリット 施設サービスとは施設への通所や入居することで受けられるサービスです。 特徴 介護老人福祉施設や介護老人保健施設で介護を受けられるため、容態の急変などに迅速に対応できます。 メリット 専門的な知識、経験を持つ職員によるケアを受けられるため、利用者の心身の負担が減らせます。 地域密着型サービスとメリット 地域密着型サービスとは住み慣れた地域で生活できるように、市町村指定の事業者が行っているサービスです。 特徴 住み慣れた地域で介護や医療が受けられます メリット 小規模多機能型居宅介護を利用すれば1つの事業所で通所や短期入所ができるなど、自宅と施設の両方でサービスを受けられます。 家族の希望を反映したケアプランにする 家族の希望を反映したケアプランにすれば、介護者の負担感は減ります。 介護負担を減らすことは、自宅で介護を続けるための優先課題です。 施設に任せた介護は、ケアマネジャーや事業所の介護士とトラブルに発展する可能性もあります。 介護にかかる費用を減らせば家族に介護負担がかかり、介護サービスの回数を増やせば介護負担は減りますが、介護費用が重くのしかかります。 家族は積極的に介護にかかわり、介護保険サービスや介護保険外サービスを上手に利用することが、支出のバランスを取り、負担感の少ない介護になるのです。 まとめ この記事のポイントは以下の5つです。 ・ケアプランには積極的に家族の希望も考慮することが大切 ・家族からも意見提起すれば、より良い介護になる ・家族が積極的にかかわらない介護は、ケアマネジャーや介護士とのトラブルの種になる ・利用する介護サービスの情報を知っておく ・利用者と家族で考えを共有しておく ただし、利用者が判断できない場合、介護者が責任を担う 介護サービスの基本となるケアプランは、時には家族の精神的、肉体的、経済的な課題に沿った内容へ見直すことも必要です。 しかし、介護サービスの種類は多く、利用する種類や回数によって、負担額も変わります。 介護の中心は家族です。 家族は、ライフスタイルの変化も留意したケアプランへの見直しを積極的にケアマネジャーに提案してもいいのではないでしょうか。
ヘルパーが訪問介護サービスを行う際はケアプランに沿ったサービスが基本です。 今回は判断に迷う、あいまいなグレーゾーンと呼ばれる事例とその対応の仕方を解説します。 訪問介護でヘルパーができる事とできない事 訪問介護のヘルパーにはできる仕事内容が決められています。 まずはその基本的なところを確認していきましょう。 訪問介護は3つのサービスに分けられる 訪問介護は訪問介護員(以下「ヘルパー」という)が介護認定を受けた利用者の居宅を訪問し、身体介護や生活援助などを提供するものを言います。 訪問介護に入るヘルパーは、介護福祉士や実務者研修修了者、初任者研修修了者、旧基礎研修修了者、訪問介護員1級又は2級(ヘルパー1級又は2級)のいずれかの資格が無いとサービスに入る事はできません。 (※2018年新設の「生活援助従事者研修修了者」という生活援助限定の資格もあります。) 訪問介護は下記の3つにサービスが分けられます。 身体介護 生活援助 通院等乗降介助 利用者の身体に直接触れる 必要性のある介助。 身体介護以外の利用者が 日常生活を送る上で 必要な生活支援をする介助。 一般的には介護タクシーが 行う事が多い。 ※食事、排泄、入浴、更衣 身体整容、移動・移乗 通院・外出、起床・寝床など ※調理、配膳・後片付け、洗濯 掃除、整理整頓、買い物 ベッドメイクなど ※車への乗降、乗車前 または降車後の移動、受診手続き 薬の受取りなど 訪問介護のヘルパーは利用者のケアマネージャーが立てたケアプランに沿って、利用者本人の為の自立した日常生活に関する身体介護や生活援助サービスを行うものです。 あくまでも訪問介護は介護保険内のサービスですので、ケアプランに含まれていない、ただ利用者がしてほしい事や、その家族、同居者の為のサービスを行う事はできません。 重ねて「医行為」と呼ばれる医師・看護師が行う行為は、ヘルパーが行う事を禁止されています。 *ヘルパーが行える医療行為には、医行為に該当しないものや、一定の研修を受けたヘルパーのみが行える医療行為もあります。 介護サービスをはじめるときには、介護保険内のサービスの有無、できる事できない事の説明をきちんと行い、双方で理解しておくことがとても重要です。 しかし、関わり合いが長くなると「ついでに」「ちょっとだけ」「あの人はしてくれるのに」と ヘルパーに代行を少しずつ依頼してくる事もあるようです。 介護保険ではできないサービス、ケアプランに無いサービスを相談された時は、一旦訪問介護事業所に持ち帰りましょう。 そして、サービス提供責任者やケアマネージャーに報告した上で、利用者が感じている困った事をどうすれば解決できるのかを考え、対応していく事も必要となるでしょう。 ケアプランの変更や追加、自費サービスでの対応を勧める場合もありますし、断りを入れる場合もあります。 利用者本人が、在宅生活を送る上で困難且つ必要とされる身体・生活動作について、介護保険を利用し、日々自立した生活を過ごす事ができるようにケアプランに沿ったサービスを提供することが訪問介護なのです。 訪問介護でヘルパーが迷うグレーゾーン 訪問介護は利用するのにわかりにくいところも多くあります。 ここではそのようなグレーゾーンの対処法について解説します。 同居者や家族がいる場合 まず訪問介護サービスを行う際、利用者本人が独居状態か、その家族や同居者がどういう状態や状況にあるのかを把握する必要があります。 訪問介護の主なサービスである身体介護や生活援助は、その状態や状況によってはサービスが受けられない事もあるのです。 同居者や家族等がいても、サービスができるかどうかは下記の表の通りです。 できる できない 〇身体介護 ※見守り的援助も身体介護であるので可。 但し「ただ見守る」「ただ声掛けする」は 見守り的援助とはならない。 ×生活援助 ※原則的に同居者や家族等がいる場合は不可。 但し「障害や疾病、やむを得ない理由」がある場合は 認められる事もある。 ここでの「障害や疾病がある場合」とは、「同居者や家族等が何らかの障害や疾病がある為に 家事をすることが困難な状態」にある事をいいます。 「やむを得ない場合」は「障害や疾病は無いが家事ができない(する事を見込めない)状態」に ある事をいいます。 やむを得ない場合とは ①同居者や家族等が高齢であり、それに伴う筋力低下等の身体能力低下の為に家事をする事が困難な場合 ②同居者や家族等が全員介護認定を受けている場合 ③同居者や家族等に深刻な問題が発生している場合(関係断絶、虐待、介護放棄等) ④同居者や家族等に介護疲れが目立ち、共倒れの危険性があると判断される場合 ⑤同居者や家族等が就労等で不在とする時間が長く、利用者の安全・健康・衛生上に援助を必要とする事が高く求められる場合 生活援助は、「家事や生活動作を手伝ってくれないと毎日の生活が成り立たない」為に介護保険を利用してその成り立たない部分を援助するサービスです。 同居者や家族、利用者本人のその時の感情や根拠の無い憶測、個人的な要望だけでは行う事はできません。 例えば、妻が利用者で夫は要支援、同居する息子夫婦は共に仕事の為、日中は不在とします。 同居者や家族が複数人いる場合、「必要な部分を同居者や家族が分担すれば日常生活は可能」と 判断された場合は「やむを得ない」状態や状況とは考えられずにサービスを外される事もあります。 また生活援助では、居宅においての共有部分での掃除はできません。 <共有部分とは> 居間、寝室、玄関、台所、浴室、トイレ等の居住する人が共有して利用する場所 <注意事項> ・原則として生活援助の掃除は不可。 (利用者だけでなく同居者や家族等も使用する場所で、日中の不在時でなくても 在宅時や時間のある時に掃除ができると考えられる為) ・やむを得ない場合とはの5例に該当する理由がある場合 生活をする上での安全性、自立性、衛生面、健康維持の全ての必要性が 認められた場合は生活援助サービスの提供が可能。 単に「日中は仕事で誰もいないし、利用者の夫は要支援で掃除機を持ったり移動する事が難しいので、利用者も一人で掃除するのは危ないから生活援助(寝室や居室等の掃除)に入ってほしい。」 という同居者や家族の希望だけではサービスは行えないという事です。 寝室の掃除や整理整頓に際しては、夫と利用者の共有スペースにあたります。 そのため、共に要介護と要支援という事で、夫側の要支援である総合事業の訪問型サービスを利用するという方法や、利用者の見守り的援助(身体介護)として寝室の掃除や整理整頓を行うといった方法もあります。 見守り的援助の場合 見守り的援助とは、要介護である利用者が自立した生活を送る為の支援です。 毎日の身体動作や生活動作、日々過ごす生活の質が落ちないように、維持・向上するという観点から利用者の安全を確保しつつ、何かあった場合はすぐに介助できる状態で行う見守り等の事をいいます。 同居者がいる例にもありました「見守り的援助」は身体介護となりますが、あくまでも「自立した生活をする為の支援」でありただ見守るだけ、ただ声を掛けるだけでは見守り的援助とはなりません。 また生活動作に対してあいまいな解釈で対応すると生活援助と判断されて身体介護としてサービスが行えなくなる場合もあります。 例えば、独居で要介護1の利用者が洗濯物を取入れて衣類をたたみ収納するといった一連の動作を行う身体介護のプランがあるとします。 ヘルパーは利用者が動作上どうしても難しい所、援助が必要な所は一緒に行うといった手助けをする事で利用者が未だ持っている自立した動作ができる機能の維持を促します。 動作時にふらつきや転倒といった事故が発生しないように、また体調の不具合や疲労感の有無を確認する為に見守りや声掛けを行う事は、見守り的援助であり身体介護サービスとなります。 また、ヘルパーが洗濯物の取入れをし、その間利用者は別の動作をしていた場合、(居間を片付けていた等)は、ヘルパーと利用者が一緒に行っていない為、洗濯物の取入れは生活援助となり、見守り的援助には適用せず身体介護から外れる事になります。 院内介助の場合 訪問介護はその名の通り利用者宅へ訪問しヘルパーが利用者の為に行うサービスです。 そのため、院内介助の場合は居宅では無い場所でのサービスの為、本来は介護保険のサービスとは言えません。 また病院は医療機関であり、病院内での介助は本来は病院のスタッフが対応するものとされ、介護保険ではなく医療保険が適用されます。 但し理由によっては、介護保険としてサービスができる場合(通院等乗降介助、訪問介護で身体介護・見守り的援助対応)もあります。 訪問介護でヘルパーが対応する場合は下表の通りの流れとなります。 <訪問介護にてヘルパーが院内介助を行うまでの流れ> 訪問介護で院内介助サービスが可能となる理由(必要性) ①受診する病院のスタッフによる対応ができない、または困難である場合。 ②利用者に家族や同居者がいるが、介助を要するにも関わらず付き添いができない場合。 ③利用者が院内の移動に介助を必要とする場合。 ④認知症や精神的不安定な症状があり、常に見守りを必要とする場合。 ⑤トイレ等の排泄介助を必要とする場合。 ⑥視覚、聴覚に不自由がある場合。 ↓ ケアマネージャーによる病院への事前確認(電話確認可) ↙ ↘ 病院側の受診時の院内介助対応が可能 ・介護保険サービス不可 (医療での対応) 病院側の受診時の院内介助対応が不可 ・支援経過記録(ケアマネージャー) ①事前に病院側への介助依頼した内容の記録 ②病院スタッフが介助できない理由 ③利用者が受診時に必要とされるサービス ↓ ・サービス担当者会議の開催 (訪問介護側、利用者側の参加) ↓ ・サービス計画書に記載し、説明、配布 ↓ ・訪問介護計画書に追加、説明、配布 ↓ ヘルパーによる院内介助が可能。 例えば、下記のような状態・状況があるとします。 認知症外来、神経内科、血液検査の受診予定がある利用者 認知症レベルは重度で日常生活自立度がⅢa 家族は今回付き添えません。院内では徘徊行動する可能性が高く、見守りが必要とされています。 排泄もいつ排泄意が来るか不明な上に、トイレ介助が必要な状態です。 院内の移動もどこへ向かっているのかが分からず移動時は声掛けや見守りが必要な状態です。 この場合、明らかに介助を必要とされる状態にあるのですが、病院側が院内介助の体制が整わないとの理由で医療での院内介助は見込めなくなりました。 注意すべき点は、訪問介護で院内介助と認められるのは、「受診手続き、病院内の移動・移乗介助や見守り的援助、トイレでの排泄介助、清潔動作、医療費の支払い、薬の受取り」となります。 待ち時間や診察や検査の立ち合いは、訪問介護としては認められません。 但し、例にあるように利用者の認知症レベルが重度のⅢaである事から、検査や診察等の医療行為以外は院内介助として認められる事になりました。 この場合は「自立生活支援の為の見守り的援助」として介助の内容や掛かった時間、利用者の状態をサービス実施記録や計画書に記載し、ケアマネに実施報告を行っています。 繰り返し言いますが、院内介助は病院側のスタッフが対応とするのが原則です。 本来は医療で対応するものであり、介護で対応する時は何等かの理由がある場合であり、単なる家族の付き添いの代わりではないのです。 まとめ 今回は訪問介護において、訪問介護の基本と3つのあいまいなグレーゾーンについての解説や事例、対応方法をお話しました。 ・訪問介護は、身体介護・生活援助・通院等乗降介助の3つに分けられる。 ・訪問介護はケアマネージャーのプランに則ったサービスを行う。 ・同居者や家族がいる場合は、本来は身体介護以外は入れない。 ・生活援助は「障害や疾病、やむを得ない理由」がある場合のみ、同居者や家族がいてもサービス可能である。 ・見守り的援助とは身体介護の区分で、利用者と共に行いつつ、何かあればすぐに介助できる状態で見守りや声掛けをしながら動作、作業を行う援助である。 ・院内介助は原則として医療の管轄であるが、利用者の状態や状況により介護の必要性が認められた場合はヘルパーによる院内介助が可能となる。 最後まで読んで下さりありがとうございました。
「突然、家族に介護が必要になった」 このような可能性は誰にでもあります。 そうなったときに慌てないようにしたいものですが、いざ自分が直面したときには何から始めればよいのでしょうか。 こんな時に頼りになるのがケアマネージャー(以下ケアマネ)です。 今回の記事では、ケアマネが担っている仕事はどのようなものなのかをご紹介していきます。 ケアマネは介護保険を利用するのに必要な存在 介護保険制度は一般の方々にはわかりづらく、すべてを理解するのはかなり困難でもあります。 介護保険を利用したい場合、その道のプロにお願いするのが一番いい方法です。 介護保険の利用を、その方に一番合った形で提案してくれる存在、それがケアマネージャーです。 ケアマネージャーは居宅(きょたく)介護支援事業所というところに所属しています。 居宅と略されることも多いです。 それではここからケアマネの具体的な仕事を見てみましょう。 ケアプラン作成 実は毎月の保険料を払っているだけでは介護保険サービスを利用することができません。 介護保険サービスを利用するには、必ず「ケアプラン」というものが必要になります。 ケアマネの大きな役割の1つが、ケアプランの作成です。 ケアプランとは ケアプランとは、その方の課題を解決するためにどのようなサービスがどの程度必要なのかを盛り込んだ計画書のことです。 ケアプランに記載されていないサービスを利用しても保険給付は受けられないということに注意が必要です。 インテーク ケアプランを作成するために、利用者の現在の状態を把握する必要があります。 まず、電話や対面などで、本人や家族の悩みや課題、体調や環境などを聞きます。 この行為はインテークと呼ばれます。 アセスメント ケアプランを作成するためには「その利用者がどのような方なのか」「どういった価値観を持ち、現在はどのような生活環境にあるのか」といったことを知る必要があります。 そして「どのような生活を望んでいるのか」「それを実現するための課題や問題点は何か」を明確にしていきます。 このために必要な情報を利用者本人や家族から聞き取りし、解決すべき課題を抽出するその行為をアセスメントといいます。 インテークでは聞き出せなかった深い部分まで聞き出せるよう、細かい点まで質問していきます。 たとえば、脳梗塞で倒れて入院中のAさんが「以前のように自宅に戻って生活したい」という要望を持っていたとします。 ケアマネは以下の各項目について課題がないか、Aさんをチェックしていきます。 ・後遺症はあるのか ・リハビリは必要なのか ・自宅で入浴はできるか ・服薬の管理はできるのか ・リハビリ以外に必要なサービスはないか ・他に困り事はないか 等 なお、インテークもしくはアセスメントで経済状況を聞かれることがあります。 年金の受給額など、ケアマネとして知っておかなければならないことだからです。 それはショートステイの利用や、いざ施設に入所するとなったときに、支払いを抑えることができる給付を受けられるかどうかの判断材料にするためです。 しかし、経済的な事情を尋ねるというのはケアマネにとっても聞きづらいものです。 人間関係がしっかりと構築された後ではますます聞きづらくなってしまいます。 そのため、ケアマネも「経済事情は割り切って早めに聞いてしまおう」と決めている人も多いので、1度目もしくは2度目の面談で経済状況を質問されるケースがあります。 ケアプラン原案作成 アセスメントが終わったら、その方の課題を解決するために、またはその方のニーズに応えるためにケアプランを作成します。 先ほど例に挙げたAさんであれば、 ・リハビリが必要なら「訪問リハビリ」「デイケア」 ・自宅内での手すりの設置や段差解消が必要なら「福祉用具」 ・自宅で一人での入浴が難しければ「訪問介護」「訪問入浴」「デイサービス」 といった選択肢が浮かんできます。 それらを基にケアプランの原案が作成されます。 担当者会議 ケアプラン原案を基に、ケアマネや本人・家族、また利用するサービスを提供する業者や主治医等と担当者会議を行います。 ここで本人や家族、また関係者からプラン内容に問題がないか等の意見を聞き、ケアプランに修正の必要があれば、原案を修正し、利用者や家族に同意を得ます。 そうして出来上がったケアプランが利用者や家族に交付され、利用者、もしくは家族にはサインや押印をしてもらいます。 モニタリング ケアプランに基づいたサービスがきちんと提供されているか、また、提供されているサービスで問題はないか、過不足はないか等を確認するために、ケアマネは月に1回以上利用者宅を訪問します。 モニタリングの結果、ケアプランの再考が必要だと判断された場合には、再度、アセスメントから実施し、ケアプランを再度作成します。 以上がケアプラン作成の流れです。 ここで一つ注意点があります。 ケアマネは何十人も担当していますので、月に1度訪問するのがやっとです。 本当は相談したいことや伝えたいことがあるのに、そこで「特に問題ありません」と答えてしまうと、ケアマネが問題に気付くことができず、来月の訪問まで待たなければなりません。 何かあればモニタリング時に相談するようにしましょう。 もちろんモニタリングの時だけでなく、随時、電話で相談することは可能です。 ケアプランには有効期間がある ケアマネにプランを作成してもらっても、ケアプランには有効期間があります。 高齢者は状態も変わりやすいためです。 有効期間の終了日が近づいてくると、再度アセスメントからケアプラン交付までの流れを繰り返し、新たなプランの交付を受けます。 なお、有効期間はケアマネが管理するものですので、利用者や家族の方が気にしなければならないものではありません。 申請代行 ケアプラン作成以外にもケアマネにお願いする業務があります。 それが申請代行と呼ばれるものです。 申請代行とは、利用者の意思を踏まえて申請書の入手や記入(自署部分は除く)、提出を本人に代わって行うものです。 介護保険を利用するには認定を受けなければなりませんが、その認定を受けるためには申請が必要になります。 利用者本人や家族が役所へ行かなくても、ケアマネが代わりに行ってくれるのが申請代行です。 申請した書類が受理されると調査のために認定調査員がやってきます。 これは申請代行を行ったケアマネ以外の第三者となります。 調査員が生活状態や身体の状況、認知機能など聞き取り、介護度を決定する認定審査会に提出する資料を作成するのです。 調査には通常ですと、30分から1時間程度かかりますが、これはあくまでも目安です。 場合によってはもっと短いケースもありますし、長く時間がかかる場合もあります。 利用者本人だけでは質問の受け答えが難しい場合には、家族の方が同席するようにしてください。 なお、申請を行ってから認定が下りるまでは通常は一か月ほどかかります。 その他の相談にも乗ってくれる 申請を代行するのは介護保険関係だけではありません。 たとえば、生活に困っている方には生活保護の申請を行うこともあります。 行政から届く書類は難解なものも多いので、手続きの相談に乗ってくれます。 また、在宅生活を続けていくのが難しいという方も多くいらっしゃいますが、もちろん施設への入所の相談にも乗ってくれます。 まとめ 最後に、今回の記事の内容をまとめてみます。 ・介護保険サービスを利用するにはケアプランが必要 ・ケアプランを作成するのはケアマネ ・ケアプラン作成のスタンダードな流れは以下のとおり ① インテーク ② アセスメント ③ ケアプラン原案作成 ④ 担当者会議開催 ⑤ モニタリング ・ケアプランは有効期間がある ・ケアマネは介護保険、その他の書類の申請業務を代行してくれる ・施設入所の相談もケアマネに ケアプランは「自分らしく生きるための大切な計画書」です。 作成してもらう際にはしっかりと希望を伝え、納得のいくプランを作成してもらうようにしてください。 最後までお読みいただきましてありがとうございます。
「施設で認知症の方のプライバシーや自由って守られてるの?」「もし自分の母親が認知症になったらどうなるんだろう?」と不安になりませんか。 今回の記事では認知症のかたの尊厳に関して、介護歴10年の介護福祉士が分かりやすく解説します。 介護現場で重度認知症のかたの尊厳は守られているのか? 「重度認知症」と「尊厳」という言葉、介護の世界ではよく聞く言葉です。 まずは言葉の意味を確認していきましょう。 重度認知症とはどういう状態? 重度認知症の方は自分のいる場所や時間、人の顔の判断が難しくなります。 それに、トイレや食事、衣類の更衣、お風呂といった日常生活を営む上で必要な生活動作を一人で行うことが困難になります。 普段の生活を営む上で介護者の助けが常に必要な状態です。 尊厳とは何か? 尊厳とは、その人の自尊心を守り人間を人間として扱うことです。 当たり前のことですが、お互いを尊重し自分がされて嫌なことは相手にもしないことです。 言葉の意味を押さえた上で介護の現場で重度認知症の方の尊厳が守られているか考えてみましょう。 結論としては認知症の方の尊厳は完璧には守られてはいないのが実情になります。 なぜなら「施設のハード面」や「施設のルール」、「介護職員の質」に左右される側面が大きいからです。 尊厳を「守れている施設」もあれば、「守れてない施設」もあり、「尊厳を守れている職員」もいれば、「守れてない職員」もいます。 なぜ重度認知症のかたの尊厳は守られないのか? ①どこかで重度認知症の方を下に見ている?馬鹿にしている? 当たり前のことですが人を馬鹿にするような行為は許されることではありません。 ただ、職員の中には重度認知症の方に対して、見下すような態度をする職員がいることは否定できません。 では、どのような心理が働いて重度認知症の方を見下すのでしょうか。 考えられる主な心理的な理由として、以下の内容が考えられます。 「どうせ言っても分からないから…」 「しゃべれないから別にいいや…」 「どうせすぐに忘れてしまうから…」 等 このような介護職員の心理が原因となり、重度認知症のかたの「羞恥心」や「自尊心」、「自由」を無視したような対応に繋がると考えられます。 ②重度認知症の方は意思表示をすることが困難なので介護士が主導ですべて決めてしまう 私たちは自分で意思表示をして、日常の生活を選択しています。 「いつ起きていつ寝るか」「いつ何を食べるか」「いつお風呂に入るか」など、様々な選択を自分の意思で判断して行っています。 しかし重度認知症のかたは自分の意思を表示することが困難な状態です。 頭では自分の考えがグルグルと巡っているのに肝心の言葉がなかなか出てきません。 本来であれば過去の生活歴や趣味嗜好に配慮したうえで介護職員が認知症の方の選択をサポートするのが理想です。 ただ、現状では介護職員が独断で判断している部分が多いのではないでしょうか。 ③施設のルールやハード面で尊厳の保持が難しい場合もある 介護施設では施設の種類により、入居者様の人数が多い施設もあれば少ない施設もあります。 ただ、基本的にどの施設でも集団での生活になります。 このような状況の中で、一人一人の趣味嗜好や要望に応えるのは困難な状況です。 重度認知症の方の尊厳が守られてないってどういう状況? では実際に尊厳の保持が守られてないってどういう状況なのか具体例を交えて解説していきます。 トイレ 排泄はズボンを下げ下半身を露出させるため、羞恥心に配慮すべき行為であります。 ただ、重度の認知症の方になると自分でズボンを下ろすことも困難な状態です。 それに便器という認識もできない方もいます。 そのため、介護職員がトイレへ付き添い介助するケースがほとんどです。 他人が隣にいる状態で用を足すことは誰でも嫌なものです。 お風呂 お風呂に入ることも羞恥心に配慮すべき行為で、誰しもが他者に裸を見られたくないでしょう。 ただ、前述したトイレと同様に認知症のかたは一人でお風呂に入ることが困難な状態です。 そのため、介護者に身体を洗ってもらうことになります。 大きい特別養護老人ホームなどでは、大浴場に複数の利用者様を入れる所もあります。 とても入居者様の羞恥心に配慮しているとは言えない状況です。 不適切な声かけ 認知症の方に対して不適切な声かけをする職員がいることも否定できません。 例えば、食事の時に「あーん」と赤ちゃん言葉を使ったり、トイレに誘導するときに「しっこ行こうか」など、羞恥心や自尊心を傷つける発言をする職員がいます。 逆の立場になったら馬鹿にされているようで嫌な気分になるのではないでしょうか。 相手の自尊心を傷つけないためにも言葉遣いには細心の注意を払うべきです。 本人の選択の自由が制限されている 介護施設では集団での生活になるため、施設のルールやタイムスケジュールで運用されていることが多いです。 例えば以下のような内容があります。 起床時間や就寝時間 食事の時間やメニュー 入浴の曜日や時間 外出の制限……等 私たちのような健常者から見ればいかにも窮屈な生活です。 言葉や向精神薬での抑制 認知症の方には様々な症状があります。 同じ言動を繰り返したり、帰宅願望だったりと様々です。 なかには徘徊する認知症の方が歩き回り他者の居室に入ったり、他者の私物を盗ったりすることもあります。 介護職員が徘徊などを制止するために「動かないでください」「立ったら危ないですよ」と制止する事もあります。 夜間帯など介護職員の人数に限りがある場合は、向精神薬で行動を抑制することもあります。 どうすれば重度認知症の方の尊厳は守られる? ではどのようにすれば重度認知症の方の尊厳を守れるのでしょうか? 「学校からイジメをなくそう」と同じようになかなか難しい問題ではあります。 ここでは尊厳を守るための3つのポイントをご紹介します。 ①職員の教育 接遇やプライバシーに関する研修を繰り返し行うことによって、他者の尊厳や自尊心を守ることの大切さを潜在意識まで刷り込むことが大切です。 研修を定期的に行うことが難しい施設もあると思います。 そういった場合には、朝礼などで遵守すべき行動規範を読み合わせるのも良いでしょう。 事業所のビジョンや目指すべき介護を繰り返し伝えることは重要です。 あと、不適切な職員は採用しないに尽きます。 ②職員間でお互いを相互評価する まず「相互評価で何を評価するのか?」が重要です。 「利用者様を制止する言動はないか」「利用者様を馬鹿にした言動をしてないか」「羞恥心に配慮した介助ができているか」など…。 こういった項目を職員間で無記名で評価することにより、不適切な言動の抑止力になるのではないでしょうか。 もちろん賞与の査定基準にすることも検討して良いでしょう。 ③職員一人一人が心の余裕を持つために無駄な業務は減らす 人間誰でも忙しくて時間に追われると、心の余裕が無くなりイライラするものです。 そういう時に入居者様に対して不適切な言動をすることがあるのではないでしょうか。 「ちょっと待ってください」「座ってください」と行動を制限する発言をしたり、利用者様の意思も確認せずに勝手にトイレに連れて行ったりと様々あるかもしれません。 忙しいことで一番重要な入居者様の「尊厳」や「自尊心」「羞恥心」を守れないのであれば本末転倒です。 思い切って利用者様にとって不必要な業務を排除してみるのも重要です。 「委員会」や「無駄な会議」、「書き物」「昔からの慣習で行っている業務」など削れる業務は削りましょう。 削って不都合があれば、また再開すれば良いのです。 まとめ ここまで重度認知症の方の尊厳の保持に関して解説してきました。 現状では尊厳を保持することは難しい側面があります。 ただ、取り組み次第では防げることもあります。最後に復習していきましょう。 重度認知症の方の尊厳の保持は守られてないのが現状である 重度認知症の方の尊厳を守るために職員の研修をすべきである 重度認知症の方の尊厳を守るために不適切な職員の採用は見送るべきである 重度認知症の方の尊厳を守るために職員間の相互評価を取り入れるべきである 重度認知症の方の尊厳を守るために職員の業務量を減らし余裕を持たせるべきである 最後までお読み頂きありがとうございました。
あなたは、アンガーマネジメントという言葉を知っていますか? 介護者や介護現場で働く介護士は、怒りやストレスでメンタルが保てないこともあります。 この記事では、そのようなときに役立つアンガーマネジメントを紹介します。 このマネジメントを知り、実践すれば、安全で安心な介護につながるため 介護に携わる方は、ぜひご一読ください。 アンガーマネジメントとは? アンガーマネジメントとは、1970年代にアメリカで生まれた「怒りと感情と上手に付き合うための心理トレーニング」です。 怒らなくすることが目的ではなく、怒る必要があるときは上手に怒り、怒る必要がないときは怒らなくする方法を知り、トレーニングを積んで日常で活かすことが目的です。 職場の上司や同僚、家族などの怒りに対応することで、イライラなどの感情に振り回されなくなり、ストレスの解消にもつながります。 特に怒りの感情を抱えたままの介護は、不健康なメンタルの介護となってしまい、利用者や介護士との人間関係を悪化させてしまうことがあります。 アンガーマネジメントで怒りをコントロールし、よりよい人間関係を築けるようになりましょう。 アンガーマネジメントを行うメリット アンガーマネジメントを行うことで、以下のメリットを得ることができます。 他人の印象を良くすることができる 「怒り」をコントロールできないと、周りに怒りをぶつけてしまうことになることがあります。 それは、利用者さんだけでなく、一緒に働いている同僚にも悪印象を持たれてしまいます。 アンガーマネジメントを行うことで、怒りをコントロールできるようになります。 そのため、周囲の人たちに怒りをぶつけることがなくなり、人間関係を円滑にすることは可能です。 また、自分の感情をコントロールできるようになることで、相手に自分の感情や考えを正確に伝えられるようになります。 冷静に判断ができる 介護の仕事をしていると、事故が起こったり、利用者さんの体調に異変が起きることがあります。 そのようなときには介護職員として慌てず冷静に判断することがとても重要です。 冷静になることで、誤った判断をすることが少なくなります。 時間を無駄にしなくなる 怒りに身を任せると、無駄な行動をしがちになります。 アンガーマネジメントができるようになると、時間を有効活用することができ、仕事の効率化につながります。 ストレスがなくなる ストレスはさまざまな病気の原因になります。怒りはストレスをためてしまう原因の1つです。 ストレスがたまらないようになれば仕事をスムーズにすすめることや、プライベートも有意義に過ごすことができます。 アンガーマネジメントの実践ポイント 怒りから脱出する方法はさまざまです。 ここでは、アンガーマネジメントの実践ポイントとなる自分なりの怒りからの切り抜け方を紹介します。 自分に合った怒りのコントロール方法を見つけてください。 怒りから脱出する方法5つ 職場でも家庭でも、怒りを感じたら、次の5つの方法を試してください。 すべてを実践する必要はありません。 自分の怒りの感情が少しでもコントロールできれば、あなたに合う怒りからの脱出方法です。 ①6秒ルール 怒りを感じたら、6秒待つルールで理性を取り戻す方法です。 6秒待てば、人は理性的になれると言われています。 心の中で6秒カウントする方法が一般的ですが、何も考えない、好きな歌のサビを心の中で思い出すなどの方法もあります。 ②グラウンディング 怒りとは別の方向に意識を集中させ、怒りから目をそらす方法です。 例えば、机にコップがあれば、きれいな白色で取っ手が小さいなどと感じるなど、別の所に意識を変え、観察する間に冷静さを取り戻す方法です。 ③コーピングマントラ 自分の気持ちを落ち着かせる言葉を準備しておき、怒りを感じたらその言葉を思い出し、頭の中で自分に言い聞かせる方法です。 例えば、「落ち着け、何とかなる」「大丈夫」という自己暗示的な言葉が効果的です。 ④ストップシンキング 怒りを感じたときに、思考を停止する方法です。 頭の中に「白い紙」や「ごみ箱に怒りを捨てる」などをイメージし、怒りの思考を停止する方法が効果的です。 ⑤その場から離れる どうしても我慢できない怒りで冷静になれない場合は、その場から一度離れ、気分転換する方法も効果的です。 急ぎの用事でなければ、他の場所に移動しひと呼吸おいてから元の場所に戻る方法が効果的です。 怒りについての4つの誤解 私たちは生きている限り、怒りの感情を捨て去ることはできません。 自分の感情に任せた怒りの表現は、相手にとってマイナスなイメージしか与えません。 ここでは、怒りに任せた自己表現となる怒りについての4つの誤解を解いていきます。 ①怒りは悪だ 怒りは本人が生命の危険や尊厳にかかわる危険信号を感じとり、その対処となる防衛反応との1つです。 そのため、怒りの感情と上手に付き合えば、自身のパワーアップにもなります。 怒りの感情を悪者と決めつければ、怒りのエネルギーを溜め込んだ状態が続き、心身に影響を及ぼす可能性もあるのです。 ②怒ればどうにかなる 相手を怒りで抑えつけることは、根本的な解決にはなりません。 怒りにまかせて、力ずくで相手を抑え込むことは、その場しのぎの対応でしかありません。 怒りだけで物事を解決する方法は、長期的にみれば、状況の悪化をまねくだけです。 ③怒りは吐き出すべき 怒りは吐き出すべきという考えの人は、怒りの最中にさまざまな出来事を思い出し、ますます怒りがパワーアップする可能性があります。 たとえ怒りを吐き出し、すっきりした気持ちになったとしても、相手には負の感情しか芽生えません。 人間関係に亀裂が入る可能性があります。 ④怒りは制御不能 怒りは、初めは1つの要素であったものが、最後にはあらゆる要素が積み重なることもあります。 一度、怒りを感じて相手を攻撃してしまえば、自分で感情を制御不能になることもあるのです。 怒りとの向き合い方 怒りとの向き合い方を知ることは、自分の怒りの度合いを確認するためにも必要です。 ここでは、怒りと向き合うための基準となる尺度や境界線、怒りのタイプ、怒り方について紹介します。 自分を客観視する方法なので、参考にしてください。 怒りの尺度を知る 怒りの尺度を知らないと、客観視できなくなってしまい、感情のコントロールは無理だと諦めてしまいます。 自分なりの怒りの尺度を決めて、客観視できるようになれば、状況に応じた怒りのレベルが分かるため、今後の対応の参考になるのです。 怒りのレベルを10段階に分け客観視すれば、今の状態が分かり、冷静さを保てるようになります。 【怒りのレベル】 0~1:穏やか(ストレス、イライラを感じない) 2~3:不愉快(イラつき、不愉快な気分) 4~6:腹が立つ(怒りを表していないが、相当な怒りを感じている) 7~9:爆発直前の怒り(我を忘れるほどの怒り) 10 :震えが止まらないほどの怒り、憤怒、爆発状態) 怒りの境界線を明確化する 自分自身または職場で「許せる」「何とか許せる」「全く許せない」の 3つのゾーンを決め、怒りの境界線を明確化します。 怒りをゾーン分けすることで、無駄なイライラが減り、怒りをコントロールできます。 怒りのタイプを知る 怒りのタイプを知ることで、怒りへの対処方法も考えやすくなります。 アンガーマネジメントでの怒りのタイプ5つと特長、対処方法は次のとおりです。 怒りのタイプ 特長 対処方法 ①熱血柴犬 タイプ 自分の信念を曲げない、自他ともに厳しい。 正義感が強い できる・できないの線引きする ②白黒パンダ タイプ 何事も白黒をはっきりさせる、完璧主義者 主観、客観、事実を切り分ける ③俺様ライオン タイプ リーダー的存在で責任感が強いが、自分本位 権利・義務・要求を混同せず 整理しておく ④頑固ヒツジ タイプ 穏やかに見られるが、意外にかたくなで頑固 自分の常識ルールをポジティブに言い換える ⑤慎重ウサギ タイプ 慎重派だが、他人を信用せず、 ストレスを溜め込む 上手くいった例外ケースを 解決策の糸口にする 【参照した書籍】 マンガでわかる・介護職のためのアンガーマネジメント(誠文堂新光社) 叱り方を変える 介護には、ついやってしまう4つの叱り方があります。 怒りに任せた叱り方では、相手を不快にさせるだけで何も伝わりません。 特にNGワードを使えば、利用者や職場の人間関係が悪化します。 NGワードに気をつけて叱れば、相手を不快にせず、自分の気持ちも伝えられるようになるため、意識して実践していきましょう。 4つの叱り方NGワードとNG例および改善例は次の表のとおりです。 叱り方NGワード NG例 改善例 ①過去を持ち出す 前から、何度も言っているのに! 今のやり方は、100点満点で60点ぐらいかな ②相手を責める なぜ、できない? 次からどうすれば良いか、一緒に考えよう ③強い口調 仕事がいつも遅いなぁ 他の業務もあるから、〇時までに終わらせるようにやってみて ④程度表現 ひどいな、しっかりしてよ! あいまいな表現は避け、具体的な内容で示す 【参照した書籍】 マンガでわかる・介護職のためのアンガーマネジメント(誠文堂新光社) アンガーマネジメントはトレーニングが必要 アンガーマネジメントには、トレーニングが必要です。 今日知ったから、明日から使えるという簡単なものではありません。 しかし、日々のトレーニングを積み重ねることで、自分の怒りや上司、同僚、家族の怒りにも上手に対応できるようになります。 アンガーマネジメントで、更によりよい介護の実現が可能です。 ケースバイケースで対応する知識を少しずつ増やして実践すれば さまざまなテクニックが習得でき、役立てられます。 まとめ 介護は、利用者と接する機会が多々あります。 特に身体に接する介助があるため、利用者や他の介護士からの言動に 怒りを覚えることもあるでしょう。 しかし、感情を押し殺す、または爆発させる態度は、お互いの信頼関係を築けません。 アンガーマネジメントは、怒りをコントロールするトレーニングです。 トレーニングを積むことで、不必要な怒りの感情に振り回されなくなります。 介護は、自分と相手の感情に常に向き合わなければなりません。 自分の怒りを抑えられないと感じた方は、この機会に一度、トレーニングしてみてはいかがでしょうか。 最後までお読みいただきましてありがとうございます。
昨今《特養》というワードがかなり聞かれるようになり、社会に浸透してきました。 ただ入居施設の中では低価格で利用できることから、入居待ちをしている方も非常に多くいらっしゃいます。 家族の方もいつ入居できるのか分からないまま、不安な中日々一生懸命に介護されている方も多いのではないでしょうか。 その不安を少しでも払拭するために、今回は特養にスムーズに入居するための方法はあるのか?入居の待機期間にできることはあるか?などをお伝えします。 《特養》の特徴とは? 《特養》とは特別養護老人ホームの略で、文字通り生活のサポートが必要になった高齢者の方が安心して暮らせるための施設です。 公的な施設のため入居施設の中では低価格で利用できます。 病気による入院や特別な事情がない限りは基本的に入居されると最期を特養で迎えられることがほとんどです。 ちなみに同じく入居施設の老人保健施設は自宅で健康に過ごす在宅復帰が目的のため、原則3か月限定の入居となります。 有料老人ホーム等の施設と、どの程度価格の面で違いがあるのかご説明します。 価格 まず大きな違いは特養に入居する際に支払う入居金が必要ないことです。 有料老人ホームであれば築年数やサービス体制などで差はありますが、低いところで0円、高いところで数百万必要となってきます。 また同じく入居施設であるグループホームと比較するとこちらは少し安く0円~百万程です。 ただグループホームは認知症と医師に診断されることが入居条件になるので、入居できる方が絞られます。 では月額料金を比較するとどうでしょうか。 特養の場合はその時の所得によって個人差があるのですが、基本的にどんな所得状況であっても15万円程あれば1か月利用することができます。 しかし有料老人ホームは最低でも15万円~となることが多いです。 施設が新しかったり、サービスが充実している有料老人ホームであれば、30万円近く必要となるケースもあります。 これに加えて、特養であっても有料老人ホームであっても、病院での治療費や美容室代、季節のイベント代などが別途必要となります。 数か月の入居であればなんとか有料老人ホームで頑張れたとしても、最期までとなると月にかかってくるお金は検討したいところ。 これが特養の入居待ちが多い所以です。 入居条件 特養に入居するには原則要介護3以上あり、65歳以上であることなど、いくつか条件があります。 ただし64歳以下であっても特定疾病を持っている方は入居することができます。 また特養入居中に要介護2や1に下がってしまった場合、退所になることはありませんので安心してください。 特養の入居待ち問題 特養は入居条件を設けているとはいえ、かなり多くの方が入居待ちをしています。 これは社会問題となっており《特養の入居待ち問題》と言われています。 厚生労働省の調査によると、令和元年の段階で29.2万人が特養の入居待ちをしている状況だということです。 2015年の介護保険法改正により入所条件が要介護3以上と制限されたので待機人数は減りましたが、まだまだ入居待ちをしている方がかなり多くいます。 色々な条件がそろえば比較的スムーズに入居できる場合もありますが、長い方だと年単位で待っている方もいらっしゃいます。 どういった状況であればスムーズに入居することが可能かをご説明します。 《特養》にスムーズに入居する条件とは? 特養にスムーズに入るためには、以下の事柄に気を付けることが重要です。 ①ケアマネージャーに状況を詳細に伝える 一番大切なのは身近なサポーターであるケアマネージャーに今の介護の状況についてしっかりと伝えることです。 例えば認知症の症状が強く介護が辛くなっている、寝たきり状態なので介護者の身体に負担がかかっているなどです。 ケアマネージャーは特養の相談員と関わることも多いので、情報をたくさん持っています。 今の状況をケアマネージャーに伝えておくことで、待機期間が少なく入居できるチャンスがあるかもしれません。 ②特養の入所申込書をしっかり記入する 特養に入居したいと思った場合、まずは入所申込書を記入し提出する必要があります。 入所申込書を提出し、その後数多くいる待機者の中から選ばれるまで待機期間となります。 入所決定となる順番は早い者勝ちではなく、ご本人や介護者の状況によって優先度は変わってくるのです。 特養の入居待ちをしている方は、日ごろ要介護3以上の方を介護しています。 皆さん介護に疲れていたり、何か理由があって特養に入居してほしいと思って申し込みしていますので、同じような状況の方が多くいらっしゃいます。 その中で他の方と差をつけるために特養の入所申込書をしっかりと埋めて、今の状況をきちんと理解してもらいましょう。 嘘をつくことはしてはいけませんが、謙虚に記入する必要はありません。 ③複数の特養に申し込みしておく 特養の申し込みは1施設ではなく、複数申し込むことが可能です。 複数というのは申込みの地域によって変わります。 例えば横浜市だと5施設までと決められていますし、特に制限を設けない地域もあります。 申込み予定の地域はどのようになっているのか確認しておきましょう。 また複数の特養に申込みをしたあと無事特養への入居が決定した場合は、申込みをおこなった全ての施設へ必ず入所したことを伝えておきましょう。 ④ショートステイの連続利用を検討する 原則ショートステイは基本的に2泊3日や長くても2週間ほどの利用ですが、状況によってはショートステイを長期間利用することもできます。 これをショートステイの”ロング”と呼びます。 ロング利用することによって、特養にそのまま入居できるケースがあります。 ただしロング利用するにはいくつか条件があるので注意しましょう。 まずショートステイはあくまで”ショート”ですので、31日目の利用日は介護保険の利用ができません。 31日目は完全に自費となり、そして再び1日目から30日目までは、介護保険の利用、31日目が自費というローテーションとなります。 自費の日がある分、1か月の請求額は上がってきます。 もう1つの注意がそもそも空きがあるかどうかです。 ショートステイも人気の介護サービスですので、空きがない場合やロングの利用は難しいこともあります。 本人と介護者の状況などでやむを得ない場合は、ケアマネージャーと相談してショートステイのロング利用は可能かを検討してみましょう。 ⑤ユニット型の施設を検討する 特養には従来型とユニット型があります。 従来型は多床室も多く入所している人数がかなり多いのが特徴です。 ユニット型は個室も多く少人数制であることが特徴です。 一見ユニット型に魅力を感じますが、ユニット型の方が費用が高くなってしまうのがデメリットです。 特養に入居する魅力はやはり価格の面でしょう。 ですのでユニット型の特養の方が入居待ちが少ないケースもあります。 必ずしもそうというわけではありませんが、利用料金が高くても早く入居したいと考える方は検討しましょう。 《特養》の待機期間中にできることは? 待機期間だからといって何もせず待っているのは少しもったいないかもしれません。 介護疲れを少しでも軽減するために工夫してみましょう。 ①ショートステイやデイサービスを利用する すでに利用している方も多くいらっしゃるでしょう。 先ほどショートステイのロング利用についてお話ししましたが、ロング利用でなくてもショートステイを利用することで、そこの施設の職員と顔見知りになることができます。 施設としても初めてお会いする方をお迎えするより、普段からADLや精神状態を理解している方をお迎えする方が安心です。 ショートステイ利用から特養に入所となる可能性もあります。 また特養に併設しているデイサービスを利用すると、上記と同じような流れになるケースも考えられます。 介護疲れの軽減ももちろんですが、こういった理由もショートステイやデイサービスを利用するメリットです。 ②老人保健施設や有料老人ホームを利用する これは直接特養の入所に繋がるわけではありません。 介護疲れ軽減のために検討してみましょう。 最期まで有料老人ホームを利用するとお金の面でかなりの負担となりますが、待機期間中の一時的な利用であれば可能だという方は有料老人ホームに連絡してください。 もし一時的であっても難しい方は老人保健施設、所謂《老健》の利用をケアマネージャーに相談しましょう。 ただし老健も人気施設であること、また原則3か月で一度退所となってしまうので気をつけてください。 まとめ いかがでしたでしょうか。 早く特養に入居したいのになかなか決定しなかったり、いつ入居できるのか分からず精神的にも不安になりますよね。 これを読んだ方が少しでも不安から解消されると幸いです。 以下、まとめになります。 ・特養は入居金がいらず、月額の利用料金も入居施設の中では低価格で利用できる。 ・特養には2015年より原則65歳以上の要介護3以上の利用条件が設定されている。 ・令和元年の時点で特養の入居待ちは29.2万人となっており、状況によってはすぐの入居が難しい場合も多い。 ・ケアマネージャーに今の状況をしっかりと説明し、施設の情報収集を行う。 ・特養の申込みは地域によるが複数施設可能で、入所申込書を書く際は詳細に状況を記入する。 ・ショートステイは原則一時的な利用であるが、状況によってはロング利用も可能であるのでケアマネージャーに相談する。 ・従来型よりは少し利用料の高いユニット型を検討することで早く入居できるケースもある。 ・待機期間はショートステイやデイサービスを利用することで、その施設の職員にADLや精神状態を理解してもらうことで入居に繋がるケースもある。 最後までお読みいただきましてありがとうございます。
介護を続けるためには、医療従事者や介護従事者の方の協力は不可欠です。 しかし、大切な家族の介護を他人に任せられないという考えで介護を利用者だけで抱え込むと、質の良い介護の提供は受けられません。 この記事では、利用者側からとるべきケアマネジャーや介護士とのコミュニケーション方法について紹介します。 基本的なコミュニケーションは信頼関係を結ぶ大事な要素になりますので、利用者の方はぜひ参考にしてください。 ケアマネジャーや介護士とのコミュニケーション方法 介護を始めるための第一歩は、ケアマネジャーや介護士とのコミュニケーションです。 介護の質は、利用者とケアマネジャー、介護士との信頼関係によって変わります。 しかし、一部の利用者の中にはすべて自分の考えが通るという思い込みが激しい人がいるのも事実です。 その思い込みを招く原因は、ケアマネジャーや介護士の役割や仕事内容など利用者の理解不足ともいえます。 利用者とケアマネジャー、介護士の関係が良好でなければ、要介護者にとって良質な介護にはなりません。 介護施設などを利用するまでに、ケアマネジャーや介護士の役割や仕事内容について知ることが大切です。 ケアマネジャーとのコミュニケーション 利用者にとって、ケアマネジャーとのコミュニケーションは、一番大切で基本です。 ケアマネジャーと信頼関係を築くためには、利用者は、役割と仕事内容を知ったうえで、協力を求めることになります。 ケアマネジャーの役割、仕事内容とは? ケアマネジャーの正式名称は、介護支援専門員です。 介護を初めて担う介護者にとって、施設との連絡や調整、最適な介護サービスの利用など、ケアマネジャーは欠かせない存在になります。 まずは、利用者の知識として、ケアマネジャーの役割や仕事内容を知っておきましょう。 ケアマネージャーの役割、仕事内容は次のとおりです。 ケアプランの作成 要介護者の介護度や健康状態などを把握し、ケアプランを作成します。 介護保険サービスを利用しながら、目標を決め、自立できる生活に向けて支援します。 利用者と介護施設との調整役 訪問介護の利用や介護施設、福祉施設などの介護サービス事業者との調整を行います。 また、介護施設に対する要望やクレームなどの対応や調整役も担っています。 ケアマネージャーの種類とは ケアマネジャーは、所属先によって居宅ケアマネジャーと施設ケアマネジャーに分かれ、仕事内容も異なります。 居宅ケアマネ 通所介護施設となる居宅介護支援事業所に所属するケアマネジャーで、在宅介護を支援する仕事です。 在宅で介護サービスを受ける利用者のケアプランの作成や関係個所との調整を行います。 施設ケアマネ 特別養護老人ホームや介護老人福祉施設に所属するケアマネジャーで、施設に入居する利用者のサポートが主な仕事です。 施設内の利用者を担当するため、居宅ケアマネジャーに比べ、担当する利用者が多くなる可能性があります。 介護士とのコミュニケーション ケアマネジャーとのコミュニケーションも大切ですが、直接、利用者の介護に携わる介護士とのコミュニケーションも大切です。 介護士の役割、仕事内容は次のとおりです。 介護士の役割や仕事内容とは? 通所施設または入所施設で、利用者が安心して日常生活を過ごせるように身の回りの世話や相談などの介護サービスを提供します。 所属する介護サービス事業者の形態によって、若干異なりますが、主な仕事内容は、次のとおりです。 身体介護 利用者の日常生活のお世話をします。 主に「排泄介助」「入浴介助」「食事介助」「移乗介助」があり、直接利用者の身体に触れて介護します。 生活援助 食事の準備や掃除、洗濯など、身の回りをサポートします。 利用者のニーズに沿った生活援助を行います。 その他 リハビリやレクリエーションなど、身体や精神面のケアを行います。 利用者はどうあるべき? 利用者は、ケアマネジャーや介護士の役割や仕事内容を知ったうえで対応することが大切です。 お互いの意思疎通が良好にできなければ、適切な介護につながりません。 ここでは、利用者が気をつけたいポイントを紹介します。 要介護者が気をつけたいポイント3つ 特に高齢者に多いと思われるのが、ケアマネジャーや介護士に対するハラスメントです。 利用しているから当たり前という考えは、適切な介護サービスを受けられなくなる可能性があるため、要注意です。 すべて自分の要望が通ると思わない 要介護者の中には、自分の要求がすべて通ると思われる人もいます。 しかし、ケアマネジャーや介護士は、役割と仕事が決められています。 仕事の範囲外の要求には応えられないことを理解しておきましょう。 暴言暴力は慎む 暴言暴力は、慎まなければなりません。 ケアマネジャー、介護士も人間です。感情があります。 利用者と反対の立場で物事を考えるなど気持ちを改めることが必要です。 体調や気分などを伝えておく 体調や気分が悪いなど、身体の不調は介護者に伝えておくことが大切です。 介護士は、日々、利用者と接しているとはいえ、すべての利用者の体調を把握できるとは限りません。 身体の不調は、事前に介護士に伝えるなどの情報共有が必要です。 介護者が気をつけたいポイント3つ 介護者である家族は、要介護者の状況を良く知る立場です。 しかし、ケアマネジャーや介護士に上手く伝えないとトラブルの原因にもなりかねません。 要介護者の気持ちを理解し、介護士とコミュニケーションを取り、適切な介護につなげることが介護者の立場です。 利用しているという立場で物事を考えていると、1人で抱える介護になりかねないため、注意が必要です。 ひとりで介護を続けられない 介護者ひとりでは、介護は続けられません。 ケアマネや介護士の協力がなければ、独りよがりの介護になり、要介護が自立した生活に向けた支援にはならないのです。 介護サービスによって介護が成り立っていることを理解しなければなりません。 介護士にもスキルの差がある 介護士の経験年数や年齢などによって、介護スキルには差があります。 すべての介護士のスキルは同等という思い込みは、必要以上の介護を要求することにもつながります。 仕事内容を理解した上で、介護士によってスキルに差があることを理解し、無理な要求は、避けなければなりません。 困ったときは都度、確認する 介護ではさまざまな問題に直面するため、困ったときはその都度ケアマネジャーに確認することも大切です。 介護者は、排泄介助や食事介助、リハビリ方法など悩むことが多くあります。 しかし、現状の介助方法がすべて正しいとは限りません。 誤った介護方法は、要介護者にとって苦痛になるのです。 困ったときは、その都度ケアマネや介護士に確認し、必要であれば看護師やリハビリの担当者に協力を仰ぐことが大切です。 利用者とケアマネジャー、介護士とのコミュニケーションは大切 利用者とケアマネジャー、介護士のコミュニケーションは、介護を続けるためには大切です。 ここでは、利用者としてのコミュニケーション方法の取り方について紹介します。 特に現場をよく知る介護士は、介護者にとっては強い味方です。 お互いの立場をよく理解し、信頼関係を結ぶことが、より良い介護につながります。 口頭だけでなく、連絡ノートやITツールを活用する 伝えたい内容は、口頭だけでなく、連絡ノートに書き留めることが大切です。 口頭による伝え方は、多くの利用者を担当する介護士にとっては情報として残りにくいことも考えられます。 連絡ノートに必要な内容を書き留め、特に重要な内容については口頭でも伝えることが確実に意思疎通できる方法です。 また、ITツールを活用した連絡方法も有効な手段です。 LINEやメールなどのコミュニケーション方法でも記録が残り、確実に意思疎通が図れます。 なお、ITツールはスマートフォンやipadなどを活用し、ご高齢の方でも使いやすい大きな文字や簡素化した入力方法にしたり、体温やSPO2の指示などの数値は選択式にするなどの工夫をすれば、活用度が高まります。 介護士によって態度を変えない 介護士によって、利用者が態度を変えることは、良くありません。 利用者によっては、第一印象が良くない介護士とのコミュニケーションを避ける傾向にあります。 特に介護者は、すべての介護士と協調性を持たないと、介護は成り立ちません。 介護士は、介護者の良き相棒であると認識しておきましょう。 まとめ コミュニケーション能力は、ケアマネジャーや介護士に求められるスキルですが、利用者にも必要です。 意思疎通が少ない介護は、利用者と介護従事者との確執を生み、介護の質を左右します。 介護従事者だけにコミュニケーション能力を求めるだけでは、一法通行の介護になり、利用者が望む介護サービスから遠ざかります。 利用者は、ケアマネジャーや介護士の役割や仕事内容を知ることで仕事範囲外のサービスを求める行為を避けることが大切です。 最後までお読みいただきましてありがとうございます。
そろそろ家族を介護施設へと検討している人向けに、介護施設での勤務経験者が教える、良い介護施設の特徴や、選び方についてお伝えしていきます。 介護施設勤務経験者が伝える良い介護施設の見分け方 ではどのようなことに気を付けて良い施設を見つければよいのか、そのポイントについてご紹介します。 1,入居者の身だしなみが整っている ここでいう身だしなみとは以下の事柄を指します。 ・髭が剃られている ・髪が整えられている ・服が汚れていない、皺が寄ってくちゃくちゃになっていないできちんと着られている 介護施設の場合、朝方は特に忙しいです。 数人の高齢者を介護職員1人で起こさなければなりません。 1人の着替えや更衣を行いながら、他の入居者から呼ばれたら対応しなければいけないので、バタバタします。 そんな忙しい中でも、整容を心掛けることができる介護職員がいる施設は、良い介護施設の特徴の1つです。 2,どんな人にも挨拶をする ブラックな介護施設の特徴として以下のことが挙げられることが多いです。 ・職員の表情に覇気がない ・疲れ切っている ・職員の身だしなみが整えられていない 良い介護職員の特徴としては「誰にでも挨拶をする」ことが挙げられます。 介護施設にはリネン業者や清掃業者など外部の業者も出入りしていますので、外部の方と接触する機会が案外多いものなのです。 しかし、介護職員の中には、家族には挨拶をするけれど外部の業者には挨拶をしないという人が多いです。 なぜなら「外部の業者にまで挨拶をする、精神的な余裕がない」からです。 良い介護職員は、外部の業者に会ったら挨拶して会釈します。 これは「誰にでも挨拶をする」という考えもあるのですが、もう1つ理由があります。 それは「外部の業者がどんな人なのか」を把握しておくためです。 清掃業者は、入居者や利用者の居室に入り掃除をすることがあります。 居室には入居者や利用者の私物があり、高価な物が置かれている場合もあるのです。 「清掃業者が居室の掃除をしているフリをして、物を盗んだ」ということも起こりえます。 なので良い介護職員はこうした防犯上の理由から、外部の業者にも挨拶し、どんな人が出入りしているのかを把握しているのです。 3,整理整頓されている これは介護施設に限らずどこの職場においても共通されていることですが、整理整頓は、仕事を効率的に進めるにあたって、必要不可欠です。 介護施設の場合は多くの物があります 物が散らかっているとどこに何があるのか探すだけで時間がかかるだけでなく、無くなったものが書類や薬などだと大きな問題になってしまいます。 しかし、日中は入居者や利用者の対応をしなければいけないので、整理整頓をするのは難しいです。 そのため夜勤の空いている時間に整理整頓をしたり、薬や書類を必要な場所に保管するといった作業を行うことが多いです。 もし介護施設を見学する機会があれば、入居者や利用者が集まる食堂の様子を見ることをおすすめします。 以下のような施設は要注意です。 ・入居者や利用者の塗り絵や貼り絵が無造作に置かれている ・通いで来ている利用者の連絡帳が適切な場所に置かれていない ・薬が出しっぱなしである 4.換気がされている 新型コロナウイルスが流行し始めてから注目され始めたのが「換気」です。 介護施設ではコロナが流行る前から「標準予防策」として、換気や消毒が日常的に行われています。 良い介護施設が行っている換気方法としては以下のようなものがあります。 ・入居者や利用者が食堂にいるときに、居室の窓を開けて換気をしている。 ・居室に戻る少し前に窓を閉め、その日の気温に合わせて温度を調節している。 ・居室で寝たきりの人は入浴に行っている間に窓を開け、入浴から戻ってくる少し前に窓を閉めている。 この方法は、介護職員にとっては「手間」です。 しかし換気を行わないと居室に匂いがこもってしまうため、入居者や利用者が不快な思いをするだけでなく、体調不良等何かあったときに、介護職員が気づきにくいことがあるのです。 5,介護施設にいるどの職種の人も、爪が切られている 「なぜ爪?」と思う人もいるかもしれません。 介護施設では介護職員や看護師だけでなく、ケアマネジャーや事務職の人も入居者や利用者と関わります。 爪が伸びていると入居者や利用者の皮膚を引っ掻いてしまい、ケガをさせてしまう可能性があるのです。 「家族を介護施設に利用させたい」と考えているのであれば、現場の職員だけでなく事務職の爪もさりげなく確認しましょう。 爪が切りそろえられていれば、入居者や利用者と関わっても安心な、良い介護施設であると言えます。 良い介護施設を見分けるにはどうすれば良いか ここまで、良い介護施設の特徴についてお伝えしてきました。 しかし、「良い介護施設を見分けるにはどうすれば良いか」「見学に行く時間もそんなに取れない」と悩む人も多いのではないでしょうか。 ここからは良い介護施設を見分ける方法について3つのポイントを紹介していきます。 1,利用する本人や家族にとって「何を最優先にするか」を明確にしておく 良い介護施設を見分けるに当たってまずやるべきことは、「何を最優先にするか」をはっきりとしておくことです。 ・本人が介護が必要になり、日中見てくれるところであればどこでも良い ・自宅から近く、何かあれば駆けつけられる ・送迎の時間を柔軟に対応してくれる ・緊急の泊まりにも対応してくれる 等、在宅介護において本人や家族の生活上、介護施設に何を求めているかは各家庭によって異なります。 ケアマネジャーに要望を伝えやすくする為にも、「その介護施設に何を1番求めるか」を明確にしておきましょう。 2,複数の施設を候補として挙げておく 介護施設を利用すると決めたら、複数の介護施設を候補として挙げましょう。 この時注意してもらいたいのは「ネットの評判や口コミ情報はあてにならない」ということです。 介護施設を探すときに最も良く使われる手段はネットです。 その介護施設の評価を投稿できるサイトも数多くありますが、悪評が多くなりがちです。 例えば利用している本人が「泊まったときに何回も呼んだけれど、来てくれなかった」と家族に言ったとします。 この言葉だけ聞くと、「なんて対応の悪い介護施設だ」と思いますよね。 しかし実際は数分おきに何てこと無い用事で呼び、その内の1回のことを言っていたのであれば、どうでしょうか。 誰だって仕事中に何回も呼ばれたら、嫌になってしまいます。 このようにネットで書かれている評判の多くは個人の一方的な意見なので、あまり参考にしないことをおすすめします。 3,質問に対し、分かりやすく説明してくれるか ・泊まるときに何が必要か、持っていって悪いものは何か ・利用料金はどの程度かかるのか 等の質問に対し、介護施設側が家族側に説明する場面があります。 その時、専門用語を使わずに一般的な言葉で説明してくれる職員であれば、良い介護施設であると言えます。 「施設側でもケガや転倒がないように最善は尽くしますが、夜間は職員が少なく、対応しきれない場合もあります。その点ご理解頂けると幸いです」等と、予めデメリットも家族側に伝える施設であれば尚良いです。 介護施設側にとって、デメリットを伝えるということは「施設の欠点を伝える」ことになります。 しかしこうした欠点を伝え、かつ「もし○○ということが起きた場合△△という対応を取らせていただきます」と介護施設側から説明を受けていればもし利用中に何かあっても、安心です。 施設見学のときに質問できる機会があったら、デメリットについても聞いてみましょう。 まとめ 良い介護施設のポイント ・入居者や利用者の身だしなみが整えられている ・職員が家族だけでなく、外部の業者にも挨拶をする ・食堂や居室が整理整頓されている ・換気がされている ・介護職員だけでなく、事務職も爪が切りそろえられている 良い介護施設を見分ける特徴 ・「介護施設に何を求めるか」を明確にする ・選ぶときは事前に複数候補として挙げる。介護施設の評判サイトは個人的意見が強いので当てにしない ・デメリットについても説明してくれるかどうか確認する 最後までお読みいただきましてありがとうございます。
介護サービスを必要とする高齢者が安心して生活を送るために重要な「特定施設」。 今回は、特定施設の特徴メリット・デメリットを紹介します。 特定施設入居者生活介護とは 特定施設入居者生活介護は、特定施設の入居者が受けられる介護保険サービスです。 入居者はサービスを受けるために、毎月利用料を支払う必要があります。 特定施設入居者生活介護には、「一般型」と「外部サービス利用型」の2種類があります。 一般型は、特定施設の事業者が介護サービスをすべて提供するものです。 外部サービス利用型は、マネジメントは事業者が行い、介護サービスは外部に委託します。 入居者が自立した生活ができるよう、ケアマネジャーが作成したケアプランに基づいて介護サービスを提供します。 他にも、身体機能の回復を目的としたリハビリテーションなどの機能訓練家事や食事などの日常生活上の支援サービスを行います。 特定施設の入居対象 下の表に、特定施設の種類とそれぞれの入居対象に必要な条件を記載しています。 都道府県の指定種別 入居対象 特定施設入居者生活介護 介護専用型 要介護1〜5 特定施設入居者生活介護 混合型 自立・要支援1〜2、要介護1〜5 地域密着型特定施設入居者生活介護 同市区町村に住民票があり要介護1以上 介護予防特定施設入居者生活介護 要支援1〜2 出典:学研ココファン 特定施設には、「介護専用型」「混合型」「地域密着型」「介護予防型」の4種類があります。 混合型と介護予防型は、高齢者の入居施設の中でも要支援の方でも利用できる施設です。 都道府県からどの指定を受けているかによって、それぞれ入居対象者が異なります。 「要介護」や「要支援」は、介護をどのくらい必要とするかを7段階で表す要介護度状態区分で、以下の表のように区分されます。 介護度 状態 要支援1 家事などの身の回りの世話の一部に見守りや手助けを必要とする。 立つ、歩くなどの動作に一部の介助を必要とすることがある。 排泄や食事はほとんどひとりで行える。 要支援2 家事や整容などの身の回りの世話に見守りや手助けを必要とする。 立つ、歩くなどの動作に支えを必要とする。 排泄や食事はほとんどひとりで行える。 要介護1 家事や整容などの身の回りの世話に見守りや手助けを必要とする。 立つ、歩くなどの動作に支えを必要とする。 排泄や食事はほとんどひとりで行える。 混乱や理解の低下が見られることがある。 要介護2 家事や整容などの身の回りの世話全般に見守りや手助けを必要とする。 立つ、歩くなどの動作に支えを必要とする。 排泄や食事に見守りや手助けを必要とすることがある。 混乱や理解の低下が見られることがある。 要介護3 家事や整容などの身の回りの世話をひとりで行えない。 立つ、歩くなどの動作をひとりで行えない。 排泄がひとりで行えない。 認知機能の低下が見られることがある。 要介護4 家事や整容などの身の回りの世話がほとんどできない。 立つ、歩くなどの動作がほとんどできない。 排泄がほとんどできない。 認知機能の低下が見られることがある。 要介護5 家事や整容などの身の回りの世話ができない。 立つ、歩くなどの動作ができない。 排泄や食事ができない。 認知機能の低下が見られることがある。 出典:パナソニックのエイジフリー 要支援1は、生活する上で見守りや一部の介助を必要とする方、要介護5は、ほぼ寝たきりの方と言えます。 介護度は、身体的な面だけではなく、認知機能や不安症状などの内面的、精神的な面も影響します。 特定施設に該当する施設 特定施設に該当する施設は以下の4つです。 有料老人ホーム サービス付き高齢者向け住宅(一部のみ) ケアハウス(経費老人ホーム) 養護老人ホーム 特定施設それぞれの特徴と、どのような人におすすめであるか解説します。 有料老人ホーム 有料老人ホームは、高齢者が心身の健康を維持しながら生活できるように配慮された住宅です。 有料老人ホームには、以下の3種類があります。 主に要介護者向けの「介護付き」 自立から要介護者まで入居可能な「住宅型」 自立している方対象の「健康型」 食事、家事援助、介護、健康管理などのサービスを受けられます。 どのような高齢者におすすめ? 有料老人ホームは、共有スペースを設けている場合も多く、他者とコミュニケーションを取りたい人に向いている施設です。 レクリエーションなど他の入居者との交流の場が設けられるため、孤独を感じることなく生活できることが魅力です。 新しい人との繋がりも期待できます。 参考となる有料老人ホームはこちら サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) サ高住は、国土交通省・厚生労働省が所管する施設であり、バリアフリー設計で、高齢者が安心して住める環境が整っていることが魅力です。 施設によっては、日常の外出や買い物、旅行など自由な生活を送ることができます。 どのような高齢者におすすめ? サ高住は、一人で暮らすことに不安のある人、自宅と変わらない生活を送りたい人に向いている施設です。 家族や友人との外出や外泊などに関するルールが少なく、施設に入居しても家族や友人との関わりも十分に確保できます。 家族や友人との時間も大切にしたい人に最適です。 参考となるサ高住はこちら ケアハウス ケアハウスは、自治体の助成を受けて運営されている経費老人ホームであり、「自立型」と「介護型」の2種類があります。 「自立型」のケアハウスは60歳以上で、家族による支援が受けられない高齢者が対象となります。 また、介護が必要になると外部の事業者との契約が必要です。 「介護型」のケアハウスは、常駐する介護スタッフから食事・入浴・排泄などのサービスが受けられます。 どのような高齢者におすすめ? ケアハウスは、一人暮らしに不安があり費用を抑えて生活を送りたい人向けの施設です。 ケアハウスは自治体の助成を受けているため、比較的安価で入居できることが魅力です。 参考となるケアハウスはこちら 養護老人ホーム 養護老人ホームは、精神的・経済的な理由で在宅生活が困難な高齢者の社会復帰を促す施設です。 入居基準は自立している高齢者で、自治体による調査と判定が必要となります。 長期的な利用はできず、自立した生活が送れるようになると退去します。 どのような高齢者におすすめ? 収入がない、身寄りがいないなどの不安を抱えている高齢者に向いている施設です。 生活費は公費で賄われるため、費用面の負担も少なく、一時的に入居したいと考えている方に最適です。 参考になる養護老人ホームはこちら 特定施設に入居するとどう変わる? では、特定施設に入居するとどのような変化があるのでしょうか? 特定施設のメリット、デメリット 特定施設のメリットは以下の通りです。 毎月定額で介護サービスを利用できる。 施設によっては、一人暮らしと変わらない自由な生活を送ることができる。 24時間365日、身体介護や生活支援等の介護サービスを受けられる。 入居者に合わせた介護計画を立ててもらえる。 病気の進行や老化によって介護度が上がっても、継続して入居できる。 特定施設のデメリットは以下のことが考えられます。 外部のサービスを受けられなくなる。 毎月定額のため、自立しているなど介護度が低いと割高になる場合がある。 特定施設に入居すること 特定施設のメリットやデメリットを踏まえ、特定施設に入居するとどう変わるのか説明します。 家族と生活したり住み慣れた環境で暮らしていた高齢者が、突然知らない方たちと生活することは簡単なことではありません。 近くに家族がいないことや共同生活でのルールなど、不安は付き物です。 しかし、特定施設は人員基準により人員の配置が整っています。 看護や介護の専門スタッフが揃っており、日常生活をより安心して過ごせることが特徴です。 24時間の介護サービスも受けられるため、緊急時にも対応してもらえます。 入居者も家族も安心できる環境であることが特定施設の魅力です。 まとめ 今回は、特定施設の特徴や、メリット・デメリットについてお伝えしました。 利用者の介護度に応じて入居可能な特定施設が異なる。 特定施設には、有料老人ホーム、サ高住、ケアハウス、養護老人ホームの4種類がある。 特定施設は、24時間介護サービスを受けられるため長期的な入居が可能である。 特定施設に入居すると、入居者も家族も安心して生活できる。 最後までご覧くださり、ありがとうございます。
皆さんは、記憶が失われていくアルツハイマー型認知症の症状改善に対する新たな試みが「NHK BS」の放送で紹介されたのをご存知ですか。 これまでは、薬による症状の進行を遅らせることが主な治療であった認知症が、生活習慣を徹底的に見直すことで症状を緩和するという新たな試みがクローズアップされて紹介されました。 認知症の症状や対策、改善事例を知ることで、認知症に対処できる明るい未来も見えてきているのです。 この記事では、認知症に苦しむ患者や家族にアメリカの脳科学者が提案した新たな治療法の模索など、最新の認知症に関する情報について紹介します。 未だ課題はありますが、認知症に苦しむ方やご家族の方は ぜひご一読ください。 認知症の症状改善に新たな試み 認知症は、今まで、改善する治療法はなく、唯一、薬で症状の進行を抑えるだけの対処法しかない症状でした。 しかし、現在では症状を改善させようとする新たな試みが注目されています。 その方法とは、食事や運動という生活習慣の改善により、症状を改善させる試みです。 ここでは、生活習慣を改善することで、認知症の症状を改善させる新しい方法について紹介します。 生活習慣改善は新たな認知症対策 認知症の患者数は、アメリカで約600万人、日本では約400万人といわれています。 認知症に苦しむ患者や家族は、社会でさまざまな制約を受けてしまいます。 認知症で日常生活まで支障を生じている現状を改善するために、主に薬による治療を受けているのが現状です。 しかし、近年、アメリカの脳研究者であり、アルツハイマー病の権威である医学博士デール・ブレデセン氏の30年間の研究の成果が世界で脚光を浴びています。 薬に頼らない認知症予防 デール・ブレデセン氏によると、認知症は薬だけの治療は症状の進行を抑えるだけで、根本的な治療ではないため、新たな治療法が必要だと説いていました。 その新しい治療法とは、生活習慣の改善(リコード法)です。 この方法は、薬に頼らず、生活の中心となる5つの習慣を見直すことで認知症を改善しようとする試みです。 生活習慣の基本5か条(リコード法) 生活習慣の基本5か条とは、次の5つの習慣を見直せば、認知症に効果があるとされ、リコード法と呼ばれています。 食事・・・・糖質を野菜中心の食生活に変える(ブロッコリーは特に効果的) 運動・・・・毎日30分以上の有酸素運動を行う 睡眠・・・・8時間の睡眠が必要 プチ断食・・夕食は寝る前の3時間までに摂る、夕食から朝食まで12時間は空ける ストレス軽減・・めい想する その他の環境・・毒性物質(カビ、大気汚染など)も影響する ヘルスコーチとの二人三脚 ヘルスコーチとは、医師の診断結果に基づき、生活習慣や環境を指導する役割を担います。 医師は病気の専門家ですが、食事などの生活習慣に対する具体的な改善方法までは提示しません。 特に認知症の症状改善には、生活習慣の改善が効果的であるため、ヘルスコーチによる生活改善が主体の治療が必要になります。 ヘルスコーチと患者や家族との二人三脚が大切なのです。 ある脳研究者の挑戦 アメリカの脳科学者でアルツハイマー病の権威であるデール・ブレデセン博士は、カリフォルニア大学で30年、認知症の研究を行ってきました。 その研究の中で、脳には1,000億個の神経細胞があり、アルツハイマー型認知症は神経細胞の先端のシナプスが死滅するメカニズムで発症することを突きとめたのです。 しかし、認知症の症状はさまざまで、現状は薬で症状の進行を抑える治療に留まっています。 デール・ブレデセン博士は、生活習慣の改善により認知症は改善するという信念のもとに、アルツハイマー病協会(アメリカ・シカゴ)に協力を求めています。 認知症の現状 認知症の現状として、人によって症状はさまざまです。。 しかし、医師の処方や診察、ヘルスコーチの指導による生活習慣を改善することで、認知症の進行は抑えられている症例を紹介します。 【日本人男性の例】 父親の介護中に物忘れが多くなった自分に気づき、病院で診察を受けた結果、認知症の発症を告げられました。 彼は薬を処方されたことにショックを受けます。 当時は保険会社勤めをしていましたが、ますます物忘れが進行していきます。 彼は、このまま仕事を続けると会社にも迷惑がかかると考え、退職しました。 現在は農業を営んでいます。 彼は、デール・ブレデセン博士のセミナーで感銘を受け、生活習慣の改善に努めるようになりました。 現在は進行の症状は少しずつではありますが抑えられています。 【アメリカ人女性の例】 親しい知人でも名前と顔を思い出せないほど認知症の症状が進行していました。 自分が認知機能が低下していると考えると日々怖く感じてしまい、日常生活に不安を感じていました。 生活習慣を改善した結果、認知症の進行が少しずつ抑えられ、4か月が経過した頃から効果を感じ始めるようになりました。 認知症の薬は症状の進行を抑えるだけ アミロイドβという物質は、早ければ40代から脳内に蓄積し始めます。 アミロイドβは、アルツハイマー病に重大な影響を与えるといわれています。 そのため、現在の新薬はアミロイドβ仮説に基づき開発されたものが患者に処方されています。 しかし、新薬でも認知機能の低下を完全に抑えることはできないのが実態です。 認知症に至るメカニズム 認知症に深く関わっているアミロイドβは、アミロイド前駆体タンパク質(APP)が大きく関与しているのです。 APPは脳細胞の運命を決めるともいわれる物質で、神経細胞に密集した斑点を形成します。 APPが蓄積すると脳は徐々に本来の機能を失い。認知症を発症します。 人によって認知症の症状はさまざま 「もの忘れ」と「認知症」の大きな違いは、体験の一部のみ忘れるか、過去の経験や体験を忘れるかです。 認知機能の低下には、次の6段階に分かれます。 非常に軽度 若干のもの忘れはあるが、日常生活に支障がない段階です。 軽度 家族や友人が変化に気づく段階です。 中等度 明らかな症状が見られる段階です。 やや重度 記憶障害や認知障害があり、サポートが必要な段階です。 重度 さらに記憶障害の進行が顕著になり、人格が変わる、大幅なサポートが必要な段階です。 非常に重度 アルツハイマー病の最終段階といわれ、環境への反応や会話が成立しない 異常な反射対応、筋肉の硬直なども見られるようになります。 生活習慣改善は認知症を予防する 認知症は病名ではなく、脳の認知機能の低下による症状です。 認知症を引き起こす疾患はさまざまですが、その中でも、次の4つの疾患が多数を占めています。 1.アルツハイマー型認知症 2.脳疾患性認知症 3.レビー小体型認知症 4.前頭側頭型認知症 この4つの疾患の内、脳疾患性認知症だけは脳血管に障害を受けて発症したものですが、その他3つの認知症は、脳の神経変性により発症します。 脳の神経変性は、主に糖分の摂りすぎによるインスリンの増加や、ビタミン・ホルモン不足などが引き金だと指摘されています。 生活習慣を見直し健康状態を保つことが、脳の神経変性を抑える効果があるのです。 生活習慣を改善したことで認知症への効果は? 2014年にデール・ブレデセン博士が論文で発表して以降、さまざまな症例の患者にリコード法を試みており、改善効果は次のとおりです。 軽度の認知障害・・・・・改善効果は50%程度 早期アルツハイマー病・・改善効果は30%程度 重度アルツハイマー病・・改善は困難 リコード法による症状の改善は、軽度から早期のアルツハイマー病に効果があると見られます。 今後の課題 リコード法はアルツハイマー病の新しい治療法ですが、すべてが確立された治療ではありません。 未だ、残された課題があります。 高額な検査費用 日本では、リコード法を活用した医療が進んでおらず、一部の医療機関しか対応していないのが現状です。 また、日本国内ではすべての検査ができず、海外に検査依頼しているため、高額な検査費用(約40万円)がかかります。 ヘルスコーチの絶対数の少なさ ヘルスコーチの絶対的な少なさも、リコード法の妨げになっています。 継続的な生活改善を続けるためには、ヘルスコーチによる指導や医師の治療が必要です。 ヘルスコーチの育成も課題の1つです。 まとめ この記事をまとめると次のとおりです。 ・認知症で処方される薬は、症状の進行を抑えるだけである ・生活習慣の見直しで症状を改善する可能性がある ・生活の基本5か条(リコード法)を知る ・早期の発見、対応に効果がある ・ヘルスコーチの協力が不可欠である 認知症が進行すると、日常生活でさまざまな問題が生じます。 また、患者や家族は悩み、苦しみ、場合によっては生命の危険を及ぼす行動をとるなど、社会的な問題を抱えています。 しかし、処方される薬に頼ることなく、患者本人や家族の努力の積み重ねでも症状が改善できる治療法もあることを覚えておいてください。 認知症は進行する前の早期発見、対応がポイントです。
介護が始まればさまざまな介護サービスを利用することになります。 サービスの数が多くあるため、当初はケアプラン中心の介護になるでしょう。 この記事は、ケアプランをベースに介護の中心となる家族に向けて、負担感の少ない介護になるように、必要なサービスや特徴、メリットを紹介します。 基本的な内容を知れば、家族の希望を盛り込んだケアプラン見直しの提案、調整ができます。 ぜひ参考にしてください。 介護のベースはケアプラン 介護のベースはケアマネジャーが作成するケアプランになるため、ケアマネジャーとの連携は欠かせません。 介護保険サービスを詳しく知らない場合、ケアマネジャーが中心で介護が進みます。 しかし、介護経験を積みスキルが向上した介護者になれば、ケアプランの見直しをケアマネジャーに提案することが必要になる時が来るでしょう。 家族の要望を盛り込んだケアプランも重要 ケアプランは利用者のための計画書ですが、家族の希望を盛り込んだケアプランも重要です。 なぜなら、利用者と家族にとって、より良いケアプランが、介護を続ける秘訣の1つだからです。 ここでは、家族の希望を踏まえたケアプランにするための4つのポイントを紹介します。 ①家族の要望を整理する 利用者だけでなく、家族の希望を整理する必要があります。 家族の健康状態や家庭の経済状況、介護者の経験年数、生活環境の変化等を考慮しながら、これからの介護に関する希望を整理しておけば、ケアプランに反映しやすくなります。 ②サービス内容・限度基準額を確認する 利用しているサービス内容と利用限度基準額を確認しておきましょう。 サービス内容や利用する頻度やレンタル福祉用具等をチェックし、現在の利用限度基準額と実際の自己負担額を確認しておくことは大切です。 ③介護保険サービスを知る 介護保険サービスを知ることも大切なポイントの1つです。 介護保険サービスは数が多く、さらに細分化されています。 利用しているサービスに目を通し、要介護状態区分やケアプランの目標に合ったサービスなのか確認しておくことも大切です。 特に定期的な介護認定による要介護度の見直しによってケアプランも変わるため、注意しておきましょう。 ④経済状況の変化に見合ったケアプランの見直し 家庭の経済状況の変化に見合ったケアプランの見直しも、時には必要です。 介護にかかる費用は、福祉用具や介護用品など、意外に出費がかさみます。 経済的に苦しい状況が続くと、家族の精神的、経済的負担が大きくなります。 少しでも経済状況に不安がある場合は、早めにケアマネジャーにケアプランの見直しを依頼しましょう。 家族のニーズを積極的に伝え、ケアマネジャー任せの介護になっていないか確認することも大切です。 要介護認定でサービスが決まる 要介護度認定で、利用できるサービスが決まります。 要介護認定とは、介護サービスの利用希望者に対し介護の必要性を判断するためのもので、「要支援」「要介護」で判定、区分けされます。 要支援認定 介護の必要性はないが、自立した生活のための見守りや手助けなど、介護予防が必要な状態を指します。 要支援1,2の2段階あり、介護保険を利用した介護予防サービスが使えます。 要介護認定 すでに介護が必要な状態を指します。 要介護度は5段階あり、介護保険サービスのすべてが使えます。 介護保険サービスとは 介護保険サービスとは、介護保険を利用して受けられるサービスです。 要支援は、地域総括支援センターで作成するケアプランに基づき、居宅または地域密着型サービスを利用できます。 一方、要介護はすべての介護サービスを利用できますが、ケアプランによって利用できるサービスが増減します。 また、介護サービスには、保険適用の「介護保険サービス」と保険適用外の「介護保険外サービス」があるため、利用する際は注意が必要です。 介護保険サービスの自己負担割合 介護保険を利用するサービスで、自己負担割合は、原則、支給限度額までは1割負担です。 ただし、一定の所得がある人は、所得額によって、2割または3割負担になります。 要支援で利用できるサービス 要介護を防ぐために、次のような介護予防サービスが受けられます。 自宅訪問 施設通所 施設短期宿泊 要介護で利用できるサービス 要介護で利用できるサービスは、次のとおりです。 自宅訪問 通所介護 通所リハビリ 短期入所 特定施設型 介護保険外サービス 介護保険外サービスは、全額、自己負担になります。 しかし、日常生活をサポートするサービスのため生活環境に合わせた利用ができます。 一例として、次のようなサービスがあります。 家事代行 配食(宅食) 訪問理容 洗濯代行 送迎 要介護度で自己負担額が変わるサービスもある 要介護度が増すと介護保険からの支給限度額が増えるため、多くのサービスが利用でき、お得と思われる人もいるでしょう。 しかし、サービスによっては自己負担額が一定の場合と変わる場合があり、利用状況によっては、自己負担額が増えることも考えられます。 特にサービスを追加する場合は、ケアマネジャーに自己負担額の確認などが必要です。 自己負担額が一定のサービス 要介護度に関係なく、自己負担額が一定のサービスは次のとおりです。 訪問看護 訪問リハビリ 訪問入浴 訪問介護 居宅療養管理 福祉用具レンタル 利用状況により負担額が変わるサービス 要介護度や健康状態の変化などで、利用状況により負担額が変わるサービスは、次のとおりです。 通所介護 通所リハビリ 短期入所介護 小規模多機能型居宅介護 特定施設介護 知っておきたい介護保険サービスの種類や特徴、メリット 介護する環境や生活スタイルの変化に応じ、各種サービスの組み替えが必要な時もあります。 ここでは、家族として、知っておきたい介護保険サービスの種類や特徴、利用者側のメリットを簡単に紹介します。 介護保険サービスの種類や特徴、メリット 介護保険サービスの種類は、居宅や施設、地域密着型サービスの3種類あります。 それぞれの特徴や利用者側のメリットは次のとおりです。 居宅サービスの特徴とメリット 居宅サービスとは、家で介護サービスを受けられるものです。 特徴 通所サービスや短期入所サービスなどを併用して利用でき、介護者のニーズに合わせられます。 メリット 在宅で生活でき、必要時または希望に応じた介護保険サービスが受けられます。 施設サービスの特徴とメリット 施設サービスとは施設への通所や入居することで受けられるサービスです。 特徴 介護老人福祉施設や介護老人保健施設で介護を受けられるため、容態の急変などに迅速に対応できます。 メリット 専門的な知識、経験を持つ職員によるケアを受けられるため、利用者の心身の負担が減らせます。 地域密着型サービスとメリット 地域密着型サービスとは住み慣れた地域で生活できるように、市町村指定の事業者が行っているサービスです。 特徴 住み慣れた地域で介護や医療が受けられます メリット 小規模多機能型居宅介護を利用すれば1つの事業所で通所や短期入所ができるなど、自宅と施設の両方でサービスを受けられます。 家族の希望を反映したケアプランにする 家族の希望を反映したケアプランにすれば、介護者の負担感は減ります。 介護負担を減らすことは、自宅で介護を続けるための優先課題です。 施設に任せた介護は、ケアマネジャーや事業所の介護士とトラブルに発展する可能性もあります。 介護にかかる費用を減らせば家族に介護負担がかかり、介護サービスの回数を増やせば介護負担は減りますが、介護費用が重くのしかかります。 家族は積極的に介護にかかわり、介護保険サービスや介護保険外サービスを上手に利用することが、支出のバランスを取り、負担感の少ない介護になるのです。 まとめ この記事のポイントは以下の5つです。 ・ケアプランには積極的に家族の希望も考慮することが大切 ・家族からも意見提起すれば、より良い介護になる ・家族が積極的にかかわらない介護は、ケアマネジャーや介護士とのトラブルの種になる ・利用する介護サービスの情報を知っておく ・利用者と家族で考えを共有しておく ただし、利用者が判断できない場合、介護者が責任を担う 介護サービスの基本となるケアプランは、時には家族の精神的、肉体的、経済的な課題に沿った内容へ見直すことも必要です。 しかし、介護サービスの種類は多く、利用する種類や回数によって、負担額も変わります。 介護の中心は家族です。 家族は、ライフスタイルの変化も留意したケアプランへの見直しを積極的にケアマネジャーに提案してもいいのではないでしょうか。
ヘルパーが訪問介護サービスを行う際はケアプランに沿ったサービスが基本です。 今回は判断に迷う、あいまいなグレーゾーンと呼ばれる事例とその対応の仕方を解説します。 訪問介護でヘルパーができる事とできない事 訪問介護のヘルパーにはできる仕事内容が決められています。 まずはその基本的なところを確認していきましょう。 訪問介護は3つのサービスに分けられる 訪問介護は訪問介護員(以下「ヘルパー」という)が介護認定を受けた利用者の居宅を訪問し、身体介護や生活援助などを提供するものを言います。 訪問介護に入るヘルパーは、介護福祉士や実務者研修修了者、初任者研修修了者、旧基礎研修修了者、訪問介護員1級又は2級(ヘルパー1級又は2級)のいずれかの資格が無いとサービスに入る事はできません。 (※2018年新設の「生活援助従事者研修修了者」という生活援助限定の資格もあります。) 訪問介護は下記の3つにサービスが分けられます。 身体介護 生活援助 通院等乗降介助 利用者の身体に直接触れる 必要性のある介助。 身体介護以外の利用者が 日常生活を送る上で 必要な生活支援をする介助。 一般的には介護タクシーが 行う事が多い。 ※食事、排泄、入浴、更衣 身体整容、移動・移乗 通院・外出、起床・寝床など ※調理、配膳・後片付け、洗濯 掃除、整理整頓、買い物 ベッドメイクなど ※車への乗降、乗車前 または降車後の移動、受診手続き 薬の受取りなど 訪問介護のヘルパーは利用者のケアマネージャーが立てたケアプランに沿って、利用者本人の為の自立した日常生活に関する身体介護や生活援助サービスを行うものです。 あくまでも訪問介護は介護保険内のサービスですので、ケアプランに含まれていない、ただ利用者がしてほしい事や、その家族、同居者の為のサービスを行う事はできません。 重ねて「医行為」と呼ばれる医師・看護師が行う行為は、ヘルパーが行う事を禁止されています。 *ヘルパーが行える医療行為には、医行為に該当しないものや、一定の研修を受けたヘルパーのみが行える医療行為もあります。 介護サービスをはじめるときには、介護保険内のサービスの有無、できる事できない事の説明をきちんと行い、双方で理解しておくことがとても重要です。 しかし、関わり合いが長くなると「ついでに」「ちょっとだけ」「あの人はしてくれるのに」と ヘルパーに代行を少しずつ依頼してくる事もあるようです。 介護保険ではできないサービス、ケアプランに無いサービスを相談された時は、一旦訪問介護事業所に持ち帰りましょう。 そして、サービス提供責任者やケアマネージャーに報告した上で、利用者が感じている困った事をどうすれば解決できるのかを考え、対応していく事も必要となるでしょう。 ケアプランの変更や追加、自費サービスでの対応を勧める場合もありますし、断りを入れる場合もあります。 利用者本人が、在宅生活を送る上で困難且つ必要とされる身体・生活動作について、介護保険を利用し、日々自立した生活を過ごす事ができるようにケアプランに沿ったサービスを提供することが訪問介護なのです。 訪問介護でヘルパーが迷うグレーゾーン 訪問介護は利用するのにわかりにくいところも多くあります。 ここではそのようなグレーゾーンの対処法について解説します。 同居者や家族がいる場合 まず訪問介護サービスを行う際、利用者本人が独居状態か、その家族や同居者がどういう状態や状況にあるのかを把握する必要があります。 訪問介護の主なサービスである身体介護や生活援助は、その状態や状況によってはサービスが受けられない事もあるのです。 同居者や家族等がいても、サービスができるかどうかは下記の表の通りです。 できる できない 〇身体介護 ※見守り的援助も身体介護であるので可。 但し「ただ見守る」「ただ声掛けする」は 見守り的援助とはならない。 ×生活援助 ※原則的に同居者や家族等がいる場合は不可。 但し「障害や疾病、やむを得ない理由」がある場合は 認められる事もある。 ここでの「障害や疾病がある場合」とは、「同居者や家族等が何らかの障害や疾病がある為に 家事をすることが困難な状態」にある事をいいます。 「やむを得ない場合」は「障害や疾病は無いが家事ができない(する事を見込めない)状態」に ある事をいいます。 やむを得ない場合とは ①同居者や家族等が高齢であり、それに伴う筋力低下等の身体能力低下の為に家事をする事が困難な場合 ②同居者や家族等が全員介護認定を受けている場合 ③同居者や家族等に深刻な問題が発生している場合(関係断絶、虐待、介護放棄等) ④同居者や家族等に介護疲れが目立ち、共倒れの危険性があると判断される場合 ⑤同居者や家族等が就労等で不在とする時間が長く、利用者の安全・健康・衛生上に援助を必要とする事が高く求められる場合 生活援助は、「家事や生活動作を手伝ってくれないと毎日の生活が成り立たない」為に介護保険を利用してその成り立たない部分を援助するサービスです。 同居者や家族、利用者本人のその時の感情や根拠の無い憶測、個人的な要望だけでは行う事はできません。 例えば、妻が利用者で夫は要支援、同居する息子夫婦は共に仕事の為、日中は不在とします。 同居者や家族が複数人いる場合、「必要な部分を同居者や家族が分担すれば日常生活は可能」と 判断された場合は「やむを得ない」状態や状況とは考えられずにサービスを外される事もあります。 また生活援助では、居宅においての共有部分での掃除はできません。 <共有部分とは> 居間、寝室、玄関、台所、浴室、トイレ等の居住する人が共有して利用する場所 <注意事項> ・原則として生活援助の掃除は不可。 (利用者だけでなく同居者や家族等も使用する場所で、日中の不在時でなくても 在宅時や時間のある時に掃除ができると考えられる為) ・やむを得ない場合とはの5例に該当する理由がある場合 生活をする上での安全性、自立性、衛生面、健康維持の全ての必要性が 認められた場合は生活援助サービスの提供が可能。 単に「日中は仕事で誰もいないし、利用者の夫は要支援で掃除機を持ったり移動する事が難しいので、利用者も一人で掃除するのは危ないから生活援助(寝室や居室等の掃除)に入ってほしい。」 という同居者や家族の希望だけではサービスは行えないという事です。 寝室の掃除や整理整頓に際しては、夫と利用者の共有スペースにあたります。 そのため、共に要介護と要支援という事で、夫側の要支援である総合事業の訪問型サービスを利用するという方法や、利用者の見守り的援助(身体介護)として寝室の掃除や整理整頓を行うといった方法もあります。 見守り的援助の場合 見守り的援助とは、要介護である利用者が自立した生活を送る為の支援です。 毎日の身体動作や生活動作、日々過ごす生活の質が落ちないように、維持・向上するという観点から利用者の安全を確保しつつ、何かあった場合はすぐに介助できる状態で行う見守り等の事をいいます。 同居者がいる例にもありました「見守り的援助」は身体介護となりますが、あくまでも「自立した生活をする為の支援」でありただ見守るだけ、ただ声を掛けるだけでは見守り的援助とはなりません。 また生活動作に対してあいまいな解釈で対応すると生活援助と判断されて身体介護としてサービスが行えなくなる場合もあります。 例えば、独居で要介護1の利用者が洗濯物を取入れて衣類をたたみ収納するといった一連の動作を行う身体介護のプランがあるとします。 ヘルパーは利用者が動作上どうしても難しい所、援助が必要な所は一緒に行うといった手助けをする事で利用者が未だ持っている自立した動作ができる機能の維持を促します。 動作時にふらつきや転倒といった事故が発生しないように、また体調の不具合や疲労感の有無を確認する為に見守りや声掛けを行う事は、見守り的援助であり身体介護サービスとなります。 また、ヘルパーが洗濯物の取入れをし、その間利用者は別の動作をしていた場合、(居間を片付けていた等)は、ヘルパーと利用者が一緒に行っていない為、洗濯物の取入れは生活援助となり、見守り的援助には適用せず身体介護から外れる事になります。 院内介助の場合 訪問介護はその名の通り利用者宅へ訪問しヘルパーが利用者の為に行うサービスです。 そのため、院内介助の場合は居宅では無い場所でのサービスの為、本来は介護保険のサービスとは言えません。 また病院は医療機関であり、病院内での介助は本来は病院のスタッフが対応するものとされ、介護保険ではなく医療保険が適用されます。 但し理由によっては、介護保険としてサービスができる場合(通院等乗降介助、訪問介護で身体介護・見守り的援助対応)もあります。 訪問介護でヘルパーが対応する場合は下表の通りの流れとなります。 <訪問介護にてヘルパーが院内介助を行うまでの流れ> 訪問介護で院内介助サービスが可能となる理由(必要性) ①受診する病院のスタッフによる対応ができない、または困難である場合。 ②利用者に家族や同居者がいるが、介助を要するにも関わらず付き添いができない場合。 ③利用者が院内の移動に介助を必要とする場合。 ④認知症や精神的不安定な症状があり、常に見守りを必要とする場合。 ⑤トイレ等の排泄介助を必要とする場合。 ⑥視覚、聴覚に不自由がある場合。 ↓ ケアマネージャーによる病院への事前確認(電話確認可) ↙ ↘ 病院側の受診時の院内介助対応が可能 ・介護保険サービス不可 (医療での対応) 病院側の受診時の院内介助対応が不可 ・支援経過記録(ケアマネージャー) ①事前に病院側への介助依頼した内容の記録 ②病院スタッフが介助できない理由 ③利用者が受診時に必要とされるサービス ↓ ・サービス担当者会議の開催 (訪問介護側、利用者側の参加) ↓ ・サービス計画書に記載し、説明、配布 ↓ ・訪問介護計画書に追加、説明、配布 ↓ ヘルパーによる院内介助が可能。 例えば、下記のような状態・状況があるとします。 認知症外来、神経内科、血液検査の受診予定がある利用者 認知症レベルは重度で日常生活自立度がⅢa 家族は今回付き添えません。院内では徘徊行動する可能性が高く、見守りが必要とされています。 排泄もいつ排泄意が来るか不明な上に、トイレ介助が必要な状態です。 院内の移動もどこへ向かっているのかが分からず移動時は声掛けや見守りが必要な状態です。 この場合、明らかに介助を必要とされる状態にあるのですが、病院側が院内介助の体制が整わないとの理由で医療での院内介助は見込めなくなりました。 注意すべき点は、訪問介護で院内介助と認められるのは、「受診手続き、病院内の移動・移乗介助や見守り的援助、トイレでの排泄介助、清潔動作、医療費の支払い、薬の受取り」となります。 待ち時間や診察や検査の立ち合いは、訪問介護としては認められません。 但し、例にあるように利用者の認知症レベルが重度のⅢaである事から、検査や診察等の医療行為以外は院内介助として認められる事になりました。 この場合は「自立生活支援の為の見守り的援助」として介助の内容や掛かった時間、利用者の状態をサービス実施記録や計画書に記載し、ケアマネに実施報告を行っています。 繰り返し言いますが、院内介助は病院側のスタッフが対応とするのが原則です。 本来は医療で対応するものであり、介護で対応する時は何等かの理由がある場合であり、単なる家族の付き添いの代わりではないのです。 まとめ 今回は訪問介護において、訪問介護の基本と3つのあいまいなグレーゾーンについての解説や事例、対応方法をお話しました。 ・訪問介護は、身体介護・生活援助・通院等乗降介助の3つに分けられる。 ・訪問介護はケアマネージャーのプランに則ったサービスを行う。 ・同居者や家族がいる場合は、本来は身体介護以外は入れない。 ・生活援助は「障害や疾病、やむを得ない理由」がある場合のみ、同居者や家族がいてもサービス可能である。 ・見守り的援助とは身体介護の区分で、利用者と共に行いつつ、何かあればすぐに介助できる状態で見守りや声掛けをしながら動作、作業を行う援助である。 ・院内介助は原則として医療の管轄であるが、利用者の状態や状況により介護の必要性が認められた場合はヘルパーによる院内介助が可能となる。 最後まで読んで下さりありがとうございました。
「突然、家族に介護が必要になった」 このような可能性は誰にでもあります。 そうなったときに慌てないようにしたいものですが、いざ自分が直面したときには何から始めればよいのでしょうか。 こんな時に頼りになるのがケアマネージャー(以下ケアマネ)です。 今回の記事では、ケアマネが担っている仕事はどのようなものなのかをご紹介していきます。 ケアマネは介護保険を利用するのに必要な存在 介護保険制度は一般の方々にはわかりづらく、すべてを理解するのはかなり困難でもあります。 介護保険を利用したい場合、その道のプロにお願いするのが一番いい方法です。 介護保険の利用を、その方に一番合った形で提案してくれる存在、それがケアマネージャーです。 ケアマネージャーは居宅(きょたく)介護支援事業所というところに所属しています。 居宅と略されることも多いです。 それではここからケアマネの具体的な仕事を見てみましょう。 ケアプラン作成 実は毎月の保険料を払っているだけでは介護保険サービスを利用することができません。 介護保険サービスを利用するには、必ず「ケアプラン」というものが必要になります。 ケアマネの大きな役割の1つが、ケアプランの作成です。 ケアプランとは ケアプランとは、その方の課題を解決するためにどのようなサービスがどの程度必要なのかを盛り込んだ計画書のことです。 ケアプランに記載されていないサービスを利用しても保険給付は受けられないということに注意が必要です。 インテーク ケアプランを作成するために、利用者の現在の状態を把握する必要があります。 まず、電話や対面などで、本人や家族の悩みや課題、体調や環境などを聞きます。 この行為はインテークと呼ばれます。 アセスメント ケアプランを作成するためには「その利用者がどのような方なのか」「どういった価値観を持ち、現在はどのような生活環境にあるのか」といったことを知る必要があります。 そして「どのような生活を望んでいるのか」「それを実現するための課題や問題点は何か」を明確にしていきます。 このために必要な情報を利用者本人や家族から聞き取りし、解決すべき課題を抽出するその行為をアセスメントといいます。 インテークでは聞き出せなかった深い部分まで聞き出せるよう、細かい点まで質問していきます。 たとえば、脳梗塞で倒れて入院中のAさんが「以前のように自宅に戻って生活したい」という要望を持っていたとします。 ケアマネは以下の各項目について課題がないか、Aさんをチェックしていきます。 ・後遺症はあるのか ・リハビリは必要なのか ・自宅で入浴はできるか ・服薬の管理はできるのか ・リハビリ以外に必要なサービスはないか ・他に困り事はないか 等 なお、インテークもしくはアセスメントで経済状況を聞かれることがあります。 年金の受給額など、ケアマネとして知っておかなければならないことだからです。 それはショートステイの利用や、いざ施設に入所するとなったときに、支払いを抑えることができる給付を受けられるかどうかの判断材料にするためです。 しかし、経済的な事情を尋ねるというのはケアマネにとっても聞きづらいものです。 人間関係がしっかりと構築された後ではますます聞きづらくなってしまいます。 そのため、ケアマネも「経済事情は割り切って早めに聞いてしまおう」と決めている人も多いので、1度目もしくは2度目の面談で経済状況を質問されるケースがあります。 ケアプラン原案作成 アセスメントが終わったら、その方の課題を解決するために、またはその方のニーズに応えるためにケアプランを作成します。 先ほど例に挙げたAさんであれば、 ・リハビリが必要なら「訪問リハビリ」「デイケア」 ・自宅内での手すりの設置や段差解消が必要なら「福祉用具」 ・自宅で一人での入浴が難しければ「訪問介護」「訪問入浴」「デイサービス」 といった選択肢が浮かんできます。 それらを基にケアプランの原案が作成されます。 担当者会議 ケアプラン原案を基に、ケアマネや本人・家族、また利用するサービスを提供する業者や主治医等と担当者会議を行います。 ここで本人や家族、また関係者からプラン内容に問題がないか等の意見を聞き、ケアプランに修正の必要があれば、原案を修正し、利用者や家族に同意を得ます。 そうして出来上がったケアプランが利用者や家族に交付され、利用者、もしくは家族にはサインや押印をしてもらいます。 モニタリング ケアプランに基づいたサービスがきちんと提供されているか、また、提供されているサービスで問題はないか、過不足はないか等を確認するために、ケアマネは月に1回以上利用者宅を訪問します。 モニタリングの結果、ケアプランの再考が必要だと判断された場合には、再度、アセスメントから実施し、ケアプランを再度作成します。 以上がケアプラン作成の流れです。 ここで一つ注意点があります。 ケアマネは何十人も担当していますので、月に1度訪問するのがやっとです。 本当は相談したいことや伝えたいことがあるのに、そこで「特に問題ありません」と答えてしまうと、ケアマネが問題に気付くことができず、来月の訪問まで待たなければなりません。 何かあればモニタリング時に相談するようにしましょう。 もちろんモニタリングの時だけでなく、随時、電話で相談することは可能です。 ケアプランには有効期間がある ケアマネにプランを作成してもらっても、ケアプランには有効期間があります。 高齢者は状態も変わりやすいためです。 有効期間の終了日が近づいてくると、再度アセスメントからケアプラン交付までの流れを繰り返し、新たなプランの交付を受けます。 なお、有効期間はケアマネが管理するものですので、利用者や家族の方が気にしなければならないものではありません。 申請代行 ケアプラン作成以外にもケアマネにお願いする業務があります。 それが申請代行と呼ばれるものです。 申請代行とは、利用者の意思を踏まえて申請書の入手や記入(自署部分は除く)、提出を本人に代わって行うものです。 介護保険を利用するには認定を受けなければなりませんが、その認定を受けるためには申請が必要になります。 利用者本人や家族が役所へ行かなくても、ケアマネが代わりに行ってくれるのが申請代行です。 申請した書類が受理されると調査のために認定調査員がやってきます。 これは申請代行を行ったケアマネ以外の第三者となります。 調査員が生活状態や身体の状況、認知機能など聞き取り、介護度を決定する認定審査会に提出する資料を作成するのです。 調査には通常ですと、30分から1時間程度かかりますが、これはあくまでも目安です。 場合によってはもっと短いケースもありますし、長く時間がかかる場合もあります。 利用者本人だけでは質問の受け答えが難しい場合には、家族の方が同席するようにしてください。 なお、申請を行ってから認定が下りるまでは通常は一か月ほどかかります。 その他の相談にも乗ってくれる 申請を代行するのは介護保険関係だけではありません。 たとえば、生活に困っている方には生活保護の申請を行うこともあります。 行政から届く書類は難解なものも多いので、手続きの相談に乗ってくれます。 また、在宅生活を続けていくのが難しいという方も多くいらっしゃいますが、もちろん施設への入所の相談にも乗ってくれます。 まとめ 最後に、今回の記事の内容をまとめてみます。 ・介護保険サービスを利用するにはケアプランが必要 ・ケアプランを作成するのはケアマネ ・ケアプラン作成のスタンダードな流れは以下のとおり ① インテーク ② アセスメント ③ ケアプラン原案作成 ④ 担当者会議開催 ⑤ モニタリング ・ケアプランは有効期間がある ・ケアマネは介護保険、その他の書類の申請業務を代行してくれる ・施設入所の相談もケアマネに ケアプランは「自分らしく生きるための大切な計画書」です。 作成してもらう際にはしっかりと希望を伝え、納得のいくプランを作成してもらうようにしてください。 最後までお読みいただきましてありがとうございます。
「施設で認知症の方のプライバシーや自由って守られてるの?」「もし自分の母親が認知症になったらどうなるんだろう?」と不安になりませんか。 今回の記事では認知症のかたの尊厳に関して、介護歴10年の介護福祉士が分かりやすく解説します。 介護現場で重度認知症のかたの尊厳は守られているのか? 「重度認知症」と「尊厳」という言葉、介護の世界ではよく聞く言葉です。 まずは言葉の意味を確認していきましょう。 重度認知症とはどういう状態? 重度認知症の方は自分のいる場所や時間、人の顔の判断が難しくなります。 それに、トイレや食事、衣類の更衣、お風呂といった日常生活を営む上で必要な生活動作を一人で行うことが困難になります。 普段の生活を営む上で介護者の助けが常に必要な状態です。 尊厳とは何か? 尊厳とは、その人の自尊心を守り人間を人間として扱うことです。 当たり前のことですが、お互いを尊重し自分がされて嫌なことは相手にもしないことです。 言葉の意味を押さえた上で介護の現場で重度認知症の方の尊厳が守られているか考えてみましょう。 結論としては認知症の方の尊厳は完璧には守られてはいないのが実情になります。 なぜなら「施設のハード面」や「施設のルール」、「介護職員の質」に左右される側面が大きいからです。 尊厳を「守れている施設」もあれば、「守れてない施設」もあり、「尊厳を守れている職員」もいれば、「守れてない職員」もいます。 なぜ重度認知症のかたの尊厳は守られないのか? ①どこかで重度認知症の方を下に見ている?馬鹿にしている? 当たり前のことですが人を馬鹿にするような行為は許されることではありません。 ただ、職員の中には重度認知症の方に対して、見下すような態度をする職員がいることは否定できません。 では、どのような心理が働いて重度認知症の方を見下すのでしょうか。 考えられる主な心理的な理由として、以下の内容が考えられます。 「どうせ言っても分からないから…」 「しゃべれないから別にいいや…」 「どうせすぐに忘れてしまうから…」 等 このような介護職員の心理が原因となり、重度認知症のかたの「羞恥心」や「自尊心」、「自由」を無視したような対応に繋がると考えられます。 ②重度認知症の方は意思表示をすることが困難なので介護士が主導ですべて決めてしまう 私たちは自分で意思表示をして、日常の生活を選択しています。 「いつ起きていつ寝るか」「いつ何を食べるか」「いつお風呂に入るか」など、様々な選択を自分の意思で判断して行っています。 しかし重度認知症のかたは自分の意思を表示することが困難な状態です。 頭では自分の考えがグルグルと巡っているのに肝心の言葉がなかなか出てきません。 本来であれば過去の生活歴や趣味嗜好に配慮したうえで介護職員が認知症の方の選択をサポートするのが理想です。 ただ、現状では介護職員が独断で判断している部分が多いのではないでしょうか。 ③施設のルールやハード面で尊厳の保持が難しい場合もある 介護施設では施設の種類により、入居者様の人数が多い施設もあれば少ない施設もあります。 ただ、基本的にどの施設でも集団での生活になります。 このような状況の中で、一人一人の趣味嗜好や要望に応えるのは困難な状況です。 重度認知症の方の尊厳が守られてないってどういう状況? では実際に尊厳の保持が守られてないってどういう状況なのか具体例を交えて解説していきます。 トイレ 排泄はズボンを下げ下半身を露出させるため、羞恥心に配慮すべき行為であります。 ただ、重度の認知症の方になると自分でズボンを下ろすことも困難な状態です。 それに便器という認識もできない方もいます。 そのため、介護職員がトイレへ付き添い介助するケースがほとんどです。 他人が隣にいる状態で用を足すことは誰でも嫌なものです。 お風呂 お風呂に入ることも羞恥心に配慮すべき行為で、誰しもが他者に裸を見られたくないでしょう。 ただ、前述したトイレと同様に認知症のかたは一人でお風呂に入ることが困難な状態です。 そのため、介護者に身体を洗ってもらうことになります。 大きい特別養護老人ホームなどでは、大浴場に複数の利用者様を入れる所もあります。 とても入居者様の羞恥心に配慮しているとは言えない状況です。 不適切な声かけ 認知症の方に対して不適切な声かけをする職員がいることも否定できません。 例えば、食事の時に「あーん」と赤ちゃん言葉を使ったり、トイレに誘導するときに「しっこ行こうか」など、羞恥心や自尊心を傷つける発言をする職員がいます。 逆の立場になったら馬鹿にされているようで嫌な気分になるのではないでしょうか。 相手の自尊心を傷つけないためにも言葉遣いには細心の注意を払うべきです。 本人の選択の自由が制限されている 介護施設では集団での生活になるため、施設のルールやタイムスケジュールで運用されていることが多いです。 例えば以下のような内容があります。 起床時間や就寝時間 食事の時間やメニュー 入浴の曜日や時間 外出の制限……等 私たちのような健常者から見ればいかにも窮屈な生活です。 言葉や向精神薬での抑制 認知症の方には様々な症状があります。 同じ言動を繰り返したり、帰宅願望だったりと様々です。 なかには徘徊する認知症の方が歩き回り他者の居室に入ったり、他者の私物を盗ったりすることもあります。 介護職員が徘徊などを制止するために「動かないでください」「立ったら危ないですよ」と制止する事もあります。 夜間帯など介護職員の人数に限りがある場合は、向精神薬で行動を抑制することもあります。 どうすれば重度認知症の方の尊厳は守られる? ではどのようにすれば重度認知症の方の尊厳を守れるのでしょうか? 「学校からイジメをなくそう」と同じようになかなか難しい問題ではあります。 ここでは尊厳を守るための3つのポイントをご紹介します。 ①職員の教育 接遇やプライバシーに関する研修を繰り返し行うことによって、他者の尊厳や自尊心を守ることの大切さを潜在意識まで刷り込むことが大切です。 研修を定期的に行うことが難しい施設もあると思います。 そういった場合には、朝礼などで遵守すべき行動規範を読み合わせるのも良いでしょう。 事業所のビジョンや目指すべき介護を繰り返し伝えることは重要です。 あと、不適切な職員は採用しないに尽きます。 ②職員間でお互いを相互評価する まず「相互評価で何を評価するのか?」が重要です。 「利用者様を制止する言動はないか」「利用者様を馬鹿にした言動をしてないか」「羞恥心に配慮した介助ができているか」など…。 こういった項目を職員間で無記名で評価することにより、不適切な言動の抑止力になるのではないでしょうか。 もちろん賞与の査定基準にすることも検討して良いでしょう。 ③職員一人一人が心の余裕を持つために無駄な業務は減らす 人間誰でも忙しくて時間に追われると、心の余裕が無くなりイライラするものです。 そういう時に入居者様に対して不適切な言動をすることがあるのではないでしょうか。 「ちょっと待ってください」「座ってください」と行動を制限する発言をしたり、利用者様の意思も確認せずに勝手にトイレに連れて行ったりと様々あるかもしれません。 忙しいことで一番重要な入居者様の「尊厳」や「自尊心」「羞恥心」を守れないのであれば本末転倒です。 思い切って利用者様にとって不必要な業務を排除してみるのも重要です。 「委員会」や「無駄な会議」、「書き物」「昔からの慣習で行っている業務」など削れる業務は削りましょう。 削って不都合があれば、また再開すれば良いのです。 まとめ ここまで重度認知症の方の尊厳の保持に関して解説してきました。 現状では尊厳を保持することは難しい側面があります。 ただ、取り組み次第では防げることもあります。最後に復習していきましょう。 重度認知症の方の尊厳の保持は守られてないのが現状である 重度認知症の方の尊厳を守るために職員の研修をすべきである 重度認知症の方の尊厳を守るために不適切な職員の採用は見送るべきである 重度認知症の方の尊厳を守るために職員間の相互評価を取り入れるべきである 重度認知症の方の尊厳を守るために職員の業務量を減らし余裕を持たせるべきである 最後までお読み頂きありがとうございました。
あなたは、アンガーマネジメントという言葉を知っていますか? 介護者や介護現場で働く介護士は、怒りやストレスでメンタルが保てないこともあります。 この記事では、そのようなときに役立つアンガーマネジメントを紹介します。 このマネジメントを知り、実践すれば、安全で安心な介護につながるため 介護に携わる方は、ぜひご一読ください。 アンガーマネジメントとは? アンガーマネジメントとは、1970年代にアメリカで生まれた「怒りと感情と上手に付き合うための心理トレーニング」です。 怒らなくすることが目的ではなく、怒る必要があるときは上手に怒り、怒る必要がないときは怒らなくする方法を知り、トレーニングを積んで日常で活かすことが目的です。 職場の上司や同僚、家族などの怒りに対応することで、イライラなどの感情に振り回されなくなり、ストレスの解消にもつながります。 特に怒りの感情を抱えたままの介護は、不健康なメンタルの介護となってしまい、利用者や介護士との人間関係を悪化させてしまうことがあります。 アンガーマネジメントで怒りをコントロールし、よりよい人間関係を築けるようになりましょう。 アンガーマネジメントを行うメリット アンガーマネジメントを行うことで、以下のメリットを得ることができます。 他人の印象を良くすることができる 「怒り」をコントロールできないと、周りに怒りをぶつけてしまうことになることがあります。 それは、利用者さんだけでなく、一緒に働いている同僚にも悪印象を持たれてしまいます。 アンガーマネジメントを行うことで、怒りをコントロールできるようになります。 そのため、周囲の人たちに怒りをぶつけることがなくなり、人間関係を円滑にすることは可能です。 また、自分の感情をコントロールできるようになることで、相手に自分の感情や考えを正確に伝えられるようになります。 冷静に判断ができる 介護の仕事をしていると、事故が起こったり、利用者さんの体調に異変が起きることがあります。 そのようなときには介護職員として慌てず冷静に判断することがとても重要です。 冷静になることで、誤った判断をすることが少なくなります。 時間を無駄にしなくなる 怒りに身を任せると、無駄な行動をしがちになります。 アンガーマネジメントができるようになると、時間を有効活用することができ、仕事の効率化につながります。 ストレスがなくなる ストレスはさまざまな病気の原因になります。怒りはストレスをためてしまう原因の1つです。 ストレスがたまらないようになれば仕事をスムーズにすすめることや、プライベートも有意義に過ごすことができます。 アンガーマネジメントの実践ポイント 怒りから脱出する方法はさまざまです。 ここでは、アンガーマネジメントの実践ポイントとなる自分なりの怒りからの切り抜け方を紹介します。 自分に合った怒りのコントロール方法を見つけてください。 怒りから脱出する方法5つ 職場でも家庭でも、怒りを感じたら、次の5つの方法を試してください。 すべてを実践する必要はありません。 自分の怒りの感情が少しでもコントロールできれば、あなたに合う怒りからの脱出方法です。 ①6秒ルール 怒りを感じたら、6秒待つルールで理性を取り戻す方法です。 6秒待てば、人は理性的になれると言われています。 心の中で6秒カウントする方法が一般的ですが、何も考えない、好きな歌のサビを心の中で思い出すなどの方法もあります。 ②グラウンディング 怒りとは別の方向に意識を集中させ、怒りから目をそらす方法です。 例えば、机にコップがあれば、きれいな白色で取っ手が小さいなどと感じるなど、別の所に意識を変え、観察する間に冷静さを取り戻す方法です。 ③コーピングマントラ 自分の気持ちを落ち着かせる言葉を準備しておき、怒りを感じたらその言葉を思い出し、頭の中で自分に言い聞かせる方法です。 例えば、「落ち着け、何とかなる」「大丈夫」という自己暗示的な言葉が効果的です。 ④ストップシンキング 怒りを感じたときに、思考を停止する方法です。 頭の中に「白い紙」や「ごみ箱に怒りを捨てる」などをイメージし、怒りの思考を停止する方法が効果的です。 ⑤その場から離れる どうしても我慢できない怒りで冷静になれない場合は、その場から一度離れ、気分転換する方法も効果的です。 急ぎの用事でなければ、他の場所に移動しひと呼吸おいてから元の場所に戻る方法が効果的です。 怒りについての4つの誤解 私たちは生きている限り、怒りの感情を捨て去ることはできません。 自分の感情に任せた怒りの表現は、相手にとってマイナスなイメージしか与えません。 ここでは、怒りに任せた自己表現となる怒りについての4つの誤解を解いていきます。 ①怒りは悪だ 怒りは本人が生命の危険や尊厳にかかわる危険信号を感じとり、その対処となる防衛反応との1つです。 そのため、怒りの感情と上手に付き合えば、自身のパワーアップにもなります。 怒りの感情を悪者と決めつければ、怒りのエネルギーを溜め込んだ状態が続き、心身に影響を及ぼす可能性もあるのです。 ②怒ればどうにかなる 相手を怒りで抑えつけることは、根本的な解決にはなりません。 怒りにまかせて、力ずくで相手を抑え込むことは、その場しのぎの対応でしかありません。 怒りだけで物事を解決する方法は、長期的にみれば、状況の悪化をまねくだけです。 ③怒りは吐き出すべき 怒りは吐き出すべきという考えの人は、怒りの最中にさまざまな出来事を思い出し、ますます怒りがパワーアップする可能性があります。 たとえ怒りを吐き出し、すっきりした気持ちになったとしても、相手には負の感情しか芽生えません。 人間関係に亀裂が入る可能性があります。 ④怒りは制御不能 怒りは、初めは1つの要素であったものが、最後にはあらゆる要素が積み重なることもあります。 一度、怒りを感じて相手を攻撃してしまえば、自分で感情を制御不能になることもあるのです。 怒りとの向き合い方 怒りとの向き合い方を知ることは、自分の怒りの度合いを確認するためにも必要です。 ここでは、怒りと向き合うための基準となる尺度や境界線、怒りのタイプ、怒り方について紹介します。 自分を客観視する方法なので、参考にしてください。 怒りの尺度を知る 怒りの尺度を知らないと、客観視できなくなってしまい、感情のコントロールは無理だと諦めてしまいます。 自分なりの怒りの尺度を決めて、客観視できるようになれば、状況に応じた怒りのレベルが分かるため、今後の対応の参考になるのです。 怒りのレベルを10段階に分け客観視すれば、今の状態が分かり、冷静さを保てるようになります。 【怒りのレベル】 0~1:穏やか(ストレス、イライラを感じない) 2~3:不愉快(イラつき、不愉快な気分) 4~6:腹が立つ(怒りを表していないが、相当な怒りを感じている) 7~9:爆発直前の怒り(我を忘れるほどの怒り) 10 :震えが止まらないほどの怒り、憤怒、爆発状態) 怒りの境界線を明確化する 自分自身または職場で「許せる」「何とか許せる」「全く許せない」の 3つのゾーンを決め、怒りの境界線を明確化します。 怒りをゾーン分けすることで、無駄なイライラが減り、怒りをコントロールできます。 怒りのタイプを知る 怒りのタイプを知ることで、怒りへの対処方法も考えやすくなります。 アンガーマネジメントでの怒りのタイプ5つと特長、対処方法は次のとおりです。 怒りのタイプ 特長 対処方法 ①熱血柴犬 タイプ 自分の信念を曲げない、自他ともに厳しい。 正義感が強い できる・できないの線引きする ②白黒パンダ タイプ 何事も白黒をはっきりさせる、完璧主義者 主観、客観、事実を切り分ける ③俺様ライオン タイプ リーダー的存在で責任感が強いが、自分本位 権利・義務・要求を混同せず 整理しておく ④頑固ヒツジ タイプ 穏やかに見られるが、意外にかたくなで頑固 自分の常識ルールをポジティブに言い換える ⑤慎重ウサギ タイプ 慎重派だが、他人を信用せず、 ストレスを溜め込む 上手くいった例外ケースを 解決策の糸口にする 【参照した書籍】 マンガでわかる・介護職のためのアンガーマネジメント(誠文堂新光社) 叱り方を変える 介護には、ついやってしまう4つの叱り方があります。 怒りに任せた叱り方では、相手を不快にさせるだけで何も伝わりません。 特にNGワードを使えば、利用者や職場の人間関係が悪化します。 NGワードに気をつけて叱れば、相手を不快にせず、自分の気持ちも伝えられるようになるため、意識して実践していきましょう。 4つの叱り方NGワードとNG例および改善例は次の表のとおりです。 叱り方NGワード NG例 改善例 ①過去を持ち出す 前から、何度も言っているのに! 今のやり方は、100点満点で60点ぐらいかな ②相手を責める なぜ、できない? 次からどうすれば良いか、一緒に考えよう ③強い口調 仕事がいつも遅いなぁ 他の業務もあるから、〇時までに終わらせるようにやってみて ④程度表現 ひどいな、しっかりしてよ! あいまいな表現は避け、具体的な内容で示す 【参照した書籍】 マンガでわかる・介護職のためのアンガーマネジメント(誠文堂新光社) アンガーマネジメントはトレーニングが必要 アンガーマネジメントには、トレーニングが必要です。 今日知ったから、明日から使えるという簡単なものではありません。 しかし、日々のトレーニングを積み重ねることで、自分の怒りや上司、同僚、家族の怒りにも上手に対応できるようになります。 アンガーマネジメントで、更によりよい介護の実現が可能です。 ケースバイケースで対応する知識を少しずつ増やして実践すれば さまざまなテクニックが習得でき、役立てられます。 まとめ 介護は、利用者と接する機会が多々あります。 特に身体に接する介助があるため、利用者や他の介護士からの言動に 怒りを覚えることもあるでしょう。 しかし、感情を押し殺す、または爆発させる態度は、お互いの信頼関係を築けません。 アンガーマネジメントは、怒りをコントロールするトレーニングです。 トレーニングを積むことで、不必要な怒りの感情に振り回されなくなります。 介護は、自分と相手の感情に常に向き合わなければなりません。 自分の怒りを抑えられないと感じた方は、この機会に一度、トレーニングしてみてはいかがでしょうか。 最後までお読みいただきましてありがとうございます。
昨今《特養》というワードがかなり聞かれるようになり、社会に浸透してきました。 ただ入居施設の中では低価格で利用できることから、入居待ちをしている方も非常に多くいらっしゃいます。 家族の方もいつ入居できるのか分からないまま、不安な中日々一生懸命に介護されている方も多いのではないでしょうか。 その不安を少しでも払拭するために、今回は特養にスムーズに入居するための方法はあるのか?入居の待機期間にできることはあるか?などをお伝えします。 《特養》の特徴とは? 《特養》とは特別養護老人ホームの略で、文字通り生活のサポートが必要になった高齢者の方が安心して暮らせるための施設です。 公的な施設のため入居施設の中では低価格で利用できます。 病気による入院や特別な事情がない限りは基本的に入居されると最期を特養で迎えられることがほとんどです。 ちなみに同じく入居施設の老人保健施設は自宅で健康に過ごす在宅復帰が目的のため、原則3か月限定の入居となります。 有料老人ホーム等の施設と、どの程度価格の面で違いがあるのかご説明します。 価格 まず大きな違いは特養に入居する際に支払う入居金が必要ないことです。 有料老人ホームであれば築年数やサービス体制などで差はありますが、低いところで0円、高いところで数百万必要となってきます。 また同じく入居施設であるグループホームと比較するとこちらは少し安く0円~百万程です。 ただグループホームは認知症と医師に診断されることが入居条件になるので、入居できる方が絞られます。 では月額料金を比較するとどうでしょうか。 特養の場合はその時の所得によって個人差があるのですが、基本的にどんな所得状況であっても15万円程あれば1か月利用することができます。 しかし有料老人ホームは最低でも15万円~となることが多いです。 施設が新しかったり、サービスが充実している有料老人ホームであれば、30万円近く必要となるケースもあります。 これに加えて、特養であっても有料老人ホームであっても、病院での治療費や美容室代、季節のイベント代などが別途必要となります。 数か月の入居であればなんとか有料老人ホームで頑張れたとしても、最期までとなると月にかかってくるお金は検討したいところ。 これが特養の入居待ちが多い所以です。 入居条件 特養に入居するには原則要介護3以上あり、65歳以上であることなど、いくつか条件があります。 ただし64歳以下であっても特定疾病を持っている方は入居することができます。 また特養入居中に要介護2や1に下がってしまった場合、退所になることはありませんので安心してください。 特養の入居待ち問題 特養は入居条件を設けているとはいえ、かなり多くの方が入居待ちをしています。 これは社会問題となっており《特養の入居待ち問題》と言われています。 厚生労働省の調査によると、令和元年の段階で29.2万人が特養の入居待ちをしている状況だということです。 2015年の介護保険法改正により入所条件が要介護3以上と制限されたので待機人数は減りましたが、まだまだ入居待ちをしている方がかなり多くいます。 色々な条件がそろえば比較的スムーズに入居できる場合もありますが、長い方だと年単位で待っている方もいらっしゃいます。 どういった状況であればスムーズに入居することが可能かをご説明します。 《特養》にスムーズに入居する条件とは? 特養にスムーズに入るためには、以下の事柄に気を付けることが重要です。 ①ケアマネージャーに状況を詳細に伝える 一番大切なのは身近なサポーターであるケアマネージャーに今の介護の状況についてしっかりと伝えることです。 例えば認知症の症状が強く介護が辛くなっている、寝たきり状態なので介護者の身体に負担がかかっているなどです。 ケアマネージャーは特養の相談員と関わることも多いので、情報をたくさん持っています。 今の状況をケアマネージャーに伝えておくことで、待機期間が少なく入居できるチャンスがあるかもしれません。 ②特養の入所申込書をしっかり記入する 特養に入居したいと思った場合、まずは入所申込書を記入し提出する必要があります。 入所申込書を提出し、その後数多くいる待機者の中から選ばれるまで待機期間となります。 入所決定となる順番は早い者勝ちではなく、ご本人や介護者の状況によって優先度は変わってくるのです。 特養の入居待ちをしている方は、日ごろ要介護3以上の方を介護しています。 皆さん介護に疲れていたり、何か理由があって特養に入居してほしいと思って申し込みしていますので、同じような状況の方が多くいらっしゃいます。 その中で他の方と差をつけるために特養の入所申込書をしっかりと埋めて、今の状況をきちんと理解してもらいましょう。 嘘をつくことはしてはいけませんが、謙虚に記入する必要はありません。 ③複数の特養に申し込みしておく 特養の申し込みは1施設ではなく、複数申し込むことが可能です。 複数というのは申込みの地域によって変わります。 例えば横浜市だと5施設までと決められていますし、特に制限を設けない地域もあります。 申込み予定の地域はどのようになっているのか確認しておきましょう。 また複数の特養に申込みをしたあと無事特養への入居が決定した場合は、申込みをおこなった全ての施設へ必ず入所したことを伝えておきましょう。 ④ショートステイの連続利用を検討する 原則ショートステイは基本的に2泊3日や長くても2週間ほどの利用ですが、状況によってはショートステイを長期間利用することもできます。 これをショートステイの”ロング”と呼びます。 ロング利用することによって、特養にそのまま入居できるケースがあります。 ただしロング利用するにはいくつか条件があるので注意しましょう。 まずショートステイはあくまで”ショート”ですので、31日目の利用日は介護保険の利用ができません。 31日目は完全に自費となり、そして再び1日目から30日目までは、介護保険の利用、31日目が自費というローテーションとなります。 自費の日がある分、1か月の請求額は上がってきます。 もう1つの注意がそもそも空きがあるかどうかです。 ショートステイも人気の介護サービスですので、空きがない場合やロングの利用は難しいこともあります。 本人と介護者の状況などでやむを得ない場合は、ケアマネージャーと相談してショートステイのロング利用は可能かを検討してみましょう。 ⑤ユニット型の施設を検討する 特養には従来型とユニット型があります。 従来型は多床室も多く入所している人数がかなり多いのが特徴です。 ユニット型は個室も多く少人数制であることが特徴です。 一見ユニット型に魅力を感じますが、ユニット型の方が費用が高くなってしまうのがデメリットです。 特養に入居する魅力はやはり価格の面でしょう。 ですのでユニット型の特養の方が入居待ちが少ないケースもあります。 必ずしもそうというわけではありませんが、利用料金が高くても早く入居したいと考える方は検討しましょう。 《特養》の待機期間中にできることは? 待機期間だからといって何もせず待っているのは少しもったいないかもしれません。 介護疲れを少しでも軽減するために工夫してみましょう。 ①ショートステイやデイサービスを利用する すでに利用している方も多くいらっしゃるでしょう。 先ほどショートステイのロング利用についてお話ししましたが、ロング利用でなくてもショートステイを利用することで、そこの施設の職員と顔見知りになることができます。 施設としても初めてお会いする方をお迎えするより、普段からADLや精神状態を理解している方をお迎えする方が安心です。 ショートステイ利用から特養に入所となる可能性もあります。 また特養に併設しているデイサービスを利用すると、上記と同じような流れになるケースも考えられます。 介護疲れの軽減ももちろんですが、こういった理由もショートステイやデイサービスを利用するメリットです。 ②老人保健施設や有料老人ホームを利用する これは直接特養の入所に繋がるわけではありません。 介護疲れ軽減のために検討してみましょう。 最期まで有料老人ホームを利用するとお金の面でかなりの負担となりますが、待機期間中の一時的な利用であれば可能だという方は有料老人ホームに連絡してください。 もし一時的であっても難しい方は老人保健施設、所謂《老健》の利用をケアマネージャーに相談しましょう。 ただし老健も人気施設であること、また原則3か月で一度退所となってしまうので気をつけてください。 まとめ いかがでしたでしょうか。 早く特養に入居したいのになかなか決定しなかったり、いつ入居できるのか分からず精神的にも不安になりますよね。 これを読んだ方が少しでも不安から解消されると幸いです。 以下、まとめになります。 ・特養は入居金がいらず、月額の利用料金も入居施設の中では低価格で利用できる。 ・特養には2015年より原則65歳以上の要介護3以上の利用条件が設定されている。 ・令和元年の時点で特養の入居待ちは29.2万人となっており、状況によってはすぐの入居が難しい場合も多い。 ・ケアマネージャーに今の状況をしっかりと説明し、施設の情報収集を行う。 ・特養の申込みは地域によるが複数施設可能で、入所申込書を書く際は詳細に状況を記入する。 ・ショートステイは原則一時的な利用であるが、状況によってはロング利用も可能であるのでケアマネージャーに相談する。 ・従来型よりは少し利用料の高いユニット型を検討することで早く入居できるケースもある。 ・待機期間はショートステイやデイサービスを利用することで、その施設の職員にADLや精神状態を理解してもらうことで入居に繋がるケースもある。 最後までお読みいただきましてありがとうございます。
介護を続けるためには、医療従事者や介護従事者の方の協力は不可欠です。 しかし、大切な家族の介護を他人に任せられないという考えで介護を利用者だけで抱え込むと、質の良い介護の提供は受けられません。 この記事では、利用者側からとるべきケアマネジャーや介護士とのコミュニケーション方法について紹介します。 基本的なコミュニケーションは信頼関係を結ぶ大事な要素になりますので、利用者の方はぜひ参考にしてください。 ケアマネジャーや介護士とのコミュニケーション方法 介護を始めるための第一歩は、ケアマネジャーや介護士とのコミュニケーションです。 介護の質は、利用者とケアマネジャー、介護士との信頼関係によって変わります。 しかし、一部の利用者の中にはすべて自分の考えが通るという思い込みが激しい人がいるのも事実です。 その思い込みを招く原因は、ケアマネジャーや介護士の役割や仕事内容など利用者の理解不足ともいえます。 利用者とケアマネジャー、介護士の関係が良好でなければ、要介護者にとって良質な介護にはなりません。 介護施設などを利用するまでに、ケアマネジャーや介護士の役割や仕事内容について知ることが大切です。 ケアマネジャーとのコミュニケーション 利用者にとって、ケアマネジャーとのコミュニケーションは、一番大切で基本です。 ケアマネジャーと信頼関係を築くためには、利用者は、役割と仕事内容を知ったうえで、協力を求めることになります。 ケアマネジャーの役割、仕事内容とは? ケアマネジャーの正式名称は、介護支援専門員です。 介護を初めて担う介護者にとって、施設との連絡や調整、最適な介護サービスの利用など、ケアマネジャーは欠かせない存在になります。 まずは、利用者の知識として、ケアマネジャーの役割や仕事内容を知っておきましょう。 ケアマネージャーの役割、仕事内容は次のとおりです。 ケアプランの作成 要介護者の介護度や健康状態などを把握し、ケアプランを作成します。 介護保険サービスを利用しながら、目標を決め、自立できる生活に向けて支援します。 利用者と介護施設との調整役 訪問介護の利用や介護施設、福祉施設などの介護サービス事業者との調整を行います。 また、介護施設に対する要望やクレームなどの対応や調整役も担っています。 ケアマネージャーの種類とは ケアマネジャーは、所属先によって居宅ケアマネジャーと施設ケアマネジャーに分かれ、仕事内容も異なります。 居宅ケアマネ 通所介護施設となる居宅介護支援事業所に所属するケアマネジャーで、在宅介護を支援する仕事です。 在宅で介護サービスを受ける利用者のケアプランの作成や関係個所との調整を行います。 施設ケアマネ 特別養護老人ホームや介護老人福祉施設に所属するケアマネジャーで、施設に入居する利用者のサポートが主な仕事です。 施設内の利用者を担当するため、居宅ケアマネジャーに比べ、担当する利用者が多くなる可能性があります。 介護士とのコミュニケーション ケアマネジャーとのコミュニケーションも大切ですが、直接、利用者の介護に携わる介護士とのコミュニケーションも大切です。 介護士の役割、仕事内容は次のとおりです。 介護士の役割や仕事内容とは? 通所施設または入所施設で、利用者が安心して日常生活を過ごせるように身の回りの世話や相談などの介護サービスを提供します。 所属する介護サービス事業者の形態によって、若干異なりますが、主な仕事内容は、次のとおりです。 身体介護 利用者の日常生活のお世話をします。 主に「排泄介助」「入浴介助」「食事介助」「移乗介助」があり、直接利用者の身体に触れて介護します。 生活援助 食事の準備や掃除、洗濯など、身の回りをサポートします。 利用者のニーズに沿った生活援助を行います。 その他 リハビリやレクリエーションなど、身体や精神面のケアを行います。 利用者はどうあるべき? 利用者は、ケアマネジャーや介護士の役割や仕事内容を知ったうえで対応することが大切です。 お互いの意思疎通が良好にできなければ、適切な介護につながりません。 ここでは、利用者が気をつけたいポイントを紹介します。 要介護者が気をつけたいポイント3つ 特に高齢者に多いと思われるのが、ケアマネジャーや介護士に対するハラスメントです。 利用しているから当たり前という考えは、適切な介護サービスを受けられなくなる可能性があるため、要注意です。 すべて自分の要望が通ると思わない 要介護者の中には、自分の要求がすべて通ると思われる人もいます。 しかし、ケアマネジャーや介護士は、役割と仕事が決められています。 仕事の範囲外の要求には応えられないことを理解しておきましょう。 暴言暴力は慎む 暴言暴力は、慎まなければなりません。 ケアマネジャー、介護士も人間です。感情があります。 利用者と反対の立場で物事を考えるなど気持ちを改めることが必要です。 体調や気分などを伝えておく 体調や気分が悪いなど、身体の不調は介護者に伝えておくことが大切です。 介護士は、日々、利用者と接しているとはいえ、すべての利用者の体調を把握できるとは限りません。 身体の不調は、事前に介護士に伝えるなどの情報共有が必要です。 介護者が気をつけたいポイント3つ 介護者である家族は、要介護者の状況を良く知る立場です。 しかし、ケアマネジャーや介護士に上手く伝えないとトラブルの原因にもなりかねません。 要介護者の気持ちを理解し、介護士とコミュニケーションを取り、適切な介護につなげることが介護者の立場です。 利用しているという立場で物事を考えていると、1人で抱える介護になりかねないため、注意が必要です。 ひとりで介護を続けられない 介護者ひとりでは、介護は続けられません。 ケアマネや介護士の協力がなければ、独りよがりの介護になり、要介護が自立した生活に向けた支援にはならないのです。 介護サービスによって介護が成り立っていることを理解しなければなりません。 介護士にもスキルの差がある 介護士の経験年数や年齢などによって、介護スキルには差があります。 すべての介護士のスキルは同等という思い込みは、必要以上の介護を要求することにもつながります。 仕事内容を理解した上で、介護士によってスキルに差があることを理解し、無理な要求は、避けなければなりません。 困ったときは都度、確認する 介護ではさまざまな問題に直面するため、困ったときはその都度ケアマネジャーに確認することも大切です。 介護者は、排泄介助や食事介助、リハビリ方法など悩むことが多くあります。 しかし、現状の介助方法がすべて正しいとは限りません。 誤った介護方法は、要介護者にとって苦痛になるのです。 困ったときは、その都度ケアマネや介護士に確認し、必要であれば看護師やリハビリの担当者に協力を仰ぐことが大切です。 利用者とケアマネジャー、介護士とのコミュニケーションは大切 利用者とケアマネジャー、介護士のコミュニケーションは、介護を続けるためには大切です。 ここでは、利用者としてのコミュニケーション方法の取り方について紹介します。 特に現場をよく知る介護士は、介護者にとっては強い味方です。 お互いの立場をよく理解し、信頼関係を結ぶことが、より良い介護につながります。 口頭だけでなく、連絡ノートやITツールを活用する 伝えたい内容は、口頭だけでなく、連絡ノートに書き留めることが大切です。 口頭による伝え方は、多くの利用者を担当する介護士にとっては情報として残りにくいことも考えられます。 連絡ノートに必要な内容を書き留め、特に重要な内容については口頭でも伝えることが確実に意思疎通できる方法です。 また、ITツールを活用した連絡方法も有効な手段です。 LINEやメールなどのコミュニケーション方法でも記録が残り、確実に意思疎通が図れます。 なお、ITツールはスマートフォンやipadなどを活用し、ご高齢の方でも使いやすい大きな文字や簡素化した入力方法にしたり、体温やSPO2の指示などの数値は選択式にするなどの工夫をすれば、活用度が高まります。 介護士によって態度を変えない 介護士によって、利用者が態度を変えることは、良くありません。 利用者によっては、第一印象が良くない介護士とのコミュニケーションを避ける傾向にあります。 特に介護者は、すべての介護士と協調性を持たないと、介護は成り立ちません。 介護士は、介護者の良き相棒であると認識しておきましょう。 まとめ コミュニケーション能力は、ケアマネジャーや介護士に求められるスキルですが、利用者にも必要です。 意思疎通が少ない介護は、利用者と介護従事者との確執を生み、介護の質を左右します。 介護従事者だけにコミュニケーション能力を求めるだけでは、一法通行の介護になり、利用者が望む介護サービスから遠ざかります。 利用者は、ケアマネジャーや介護士の役割や仕事内容を知ることで仕事範囲外のサービスを求める行為を避けることが大切です。 最後までお読みいただきましてありがとうございます。
そろそろ家族を介護施設へと検討している人向けに、介護施設での勤務経験者が教える、良い介護施設の特徴や、選び方についてお伝えしていきます。 介護施設勤務経験者が伝える良い介護施設の見分け方 ではどのようなことに気を付けて良い施設を見つければよいのか、そのポイントについてご紹介します。 1,入居者の身だしなみが整っている ここでいう身だしなみとは以下の事柄を指します。 ・髭が剃られている ・髪が整えられている ・服が汚れていない、皺が寄ってくちゃくちゃになっていないできちんと着られている 介護施設の場合、朝方は特に忙しいです。 数人の高齢者を介護職員1人で起こさなければなりません。 1人の着替えや更衣を行いながら、他の入居者から呼ばれたら対応しなければいけないので、バタバタします。 そんな忙しい中でも、整容を心掛けることができる介護職員がいる施設は、良い介護施設の特徴の1つです。 2,どんな人にも挨拶をする ブラックな介護施設の特徴として以下のことが挙げられることが多いです。 ・職員の表情に覇気がない ・疲れ切っている ・職員の身だしなみが整えられていない 良い介護職員の特徴としては「誰にでも挨拶をする」ことが挙げられます。 介護施設にはリネン業者や清掃業者など外部の業者も出入りしていますので、外部の方と接触する機会が案外多いものなのです。 しかし、介護職員の中には、家族には挨拶をするけれど外部の業者には挨拶をしないという人が多いです。 なぜなら「外部の業者にまで挨拶をする、精神的な余裕がない」からです。 良い介護職員は、外部の業者に会ったら挨拶して会釈します。 これは「誰にでも挨拶をする」という考えもあるのですが、もう1つ理由があります。 それは「外部の業者がどんな人なのか」を把握しておくためです。 清掃業者は、入居者や利用者の居室に入り掃除をすることがあります。 居室には入居者や利用者の私物があり、高価な物が置かれている場合もあるのです。 「清掃業者が居室の掃除をしているフリをして、物を盗んだ」ということも起こりえます。 なので良い介護職員はこうした防犯上の理由から、外部の業者にも挨拶し、どんな人が出入りしているのかを把握しているのです。 3,整理整頓されている これは介護施設に限らずどこの職場においても共通されていることですが、整理整頓は、仕事を効率的に進めるにあたって、必要不可欠です。 介護施設の場合は多くの物があります 物が散らかっているとどこに何があるのか探すだけで時間がかかるだけでなく、無くなったものが書類や薬などだと大きな問題になってしまいます。 しかし、日中は入居者や利用者の対応をしなければいけないので、整理整頓をするのは難しいです。 そのため夜勤の空いている時間に整理整頓をしたり、薬や書類を必要な場所に保管するといった作業を行うことが多いです。 もし介護施設を見学する機会があれば、入居者や利用者が集まる食堂の様子を見ることをおすすめします。 以下のような施設は要注意です。 ・入居者や利用者の塗り絵や貼り絵が無造作に置かれている ・通いで来ている利用者の連絡帳が適切な場所に置かれていない ・薬が出しっぱなしである 4.換気がされている 新型コロナウイルスが流行し始めてから注目され始めたのが「換気」です。 介護施設ではコロナが流行る前から「標準予防策」として、換気や消毒が日常的に行われています。 良い介護施設が行っている換気方法としては以下のようなものがあります。 ・入居者や利用者が食堂にいるときに、居室の窓を開けて換気をしている。 ・居室に戻る少し前に窓を閉め、その日の気温に合わせて温度を調節している。 ・居室で寝たきりの人は入浴に行っている間に窓を開け、入浴から戻ってくる少し前に窓を閉めている。 この方法は、介護職員にとっては「手間」です。 しかし換気を行わないと居室に匂いがこもってしまうため、入居者や利用者が不快な思いをするだけでなく、体調不良等何かあったときに、介護職員が気づきにくいことがあるのです。 5,介護施設にいるどの職種の人も、爪が切られている 「なぜ爪?」と思う人もいるかもしれません。 介護施設では介護職員や看護師だけでなく、ケアマネジャーや事務職の人も入居者や利用者と関わります。 爪が伸びていると入居者や利用者の皮膚を引っ掻いてしまい、ケガをさせてしまう可能性があるのです。 「家族を介護施設に利用させたい」と考えているのであれば、現場の職員だけでなく事務職の爪もさりげなく確認しましょう。 爪が切りそろえられていれば、入居者や利用者と関わっても安心な、良い介護施設であると言えます。 良い介護施設を見分けるにはどうすれば良いか ここまで、良い介護施設の特徴についてお伝えしてきました。 しかし、「良い介護施設を見分けるにはどうすれば良いか」「見学に行く時間もそんなに取れない」と悩む人も多いのではないでしょうか。 ここからは良い介護施設を見分ける方法について3つのポイントを紹介していきます。 1,利用する本人や家族にとって「何を最優先にするか」を明確にしておく 良い介護施設を見分けるに当たってまずやるべきことは、「何を最優先にするか」をはっきりとしておくことです。 ・本人が介護が必要になり、日中見てくれるところであればどこでも良い ・自宅から近く、何かあれば駆けつけられる ・送迎の時間を柔軟に対応してくれる ・緊急の泊まりにも対応してくれる 等、在宅介護において本人や家族の生活上、介護施設に何を求めているかは各家庭によって異なります。 ケアマネジャーに要望を伝えやすくする為にも、「その介護施設に何を1番求めるか」を明確にしておきましょう。 2,複数の施設を候補として挙げておく 介護施設を利用すると決めたら、複数の介護施設を候補として挙げましょう。 この時注意してもらいたいのは「ネットの評判や口コミ情報はあてにならない」ということです。 介護施設を探すときに最も良く使われる手段はネットです。 その介護施設の評価を投稿できるサイトも数多くありますが、悪評が多くなりがちです。 例えば利用している本人が「泊まったときに何回も呼んだけれど、来てくれなかった」と家族に言ったとします。 この言葉だけ聞くと、「なんて対応の悪い介護施設だ」と思いますよね。 しかし実際は数分おきに何てこと無い用事で呼び、その内の1回のことを言っていたのであれば、どうでしょうか。 誰だって仕事中に何回も呼ばれたら、嫌になってしまいます。 このようにネットで書かれている評判の多くは個人の一方的な意見なので、あまり参考にしないことをおすすめします。 3,質問に対し、分かりやすく説明してくれるか ・泊まるときに何が必要か、持っていって悪いものは何か ・利用料金はどの程度かかるのか 等の質問に対し、介護施設側が家族側に説明する場面があります。 その時、専門用語を使わずに一般的な言葉で説明してくれる職員であれば、良い介護施設であると言えます。 「施設側でもケガや転倒がないように最善は尽くしますが、夜間は職員が少なく、対応しきれない場合もあります。その点ご理解頂けると幸いです」等と、予めデメリットも家族側に伝える施設であれば尚良いです。 介護施設側にとって、デメリットを伝えるということは「施設の欠点を伝える」ことになります。 しかしこうした欠点を伝え、かつ「もし○○ということが起きた場合△△という対応を取らせていただきます」と介護施設側から説明を受けていればもし利用中に何かあっても、安心です。 施設見学のときに質問できる機会があったら、デメリットについても聞いてみましょう。 まとめ 良い介護施設のポイント ・入居者や利用者の身だしなみが整えられている ・職員が家族だけでなく、外部の業者にも挨拶をする ・食堂や居室が整理整頓されている ・換気がされている ・介護職員だけでなく、事務職も爪が切りそろえられている 良い介護施設を見分ける特徴 ・「介護施設に何を求めるか」を明確にする ・選ぶときは事前に複数候補として挙げる。介護施設の評判サイトは個人的意見が強いので当てにしない ・デメリットについても説明してくれるかどうか確認する 最後までお読みいただきましてありがとうございます。
介護サービスを必要とする高齢者が安心して生活を送るために重要な「特定施設」。 今回は、特定施設の特徴メリット・デメリットを紹介します。 特定施設入居者生活介護とは 特定施設入居者生活介護は、特定施設の入居者が受けられる介護保険サービスです。 入居者はサービスを受けるために、毎月利用料を支払う必要があります。 特定施設入居者生活介護には、「一般型」と「外部サービス利用型」の2種類があります。 一般型は、特定施設の事業者が介護サービスをすべて提供するものです。 外部サービス利用型は、マネジメントは事業者が行い、介護サービスは外部に委託します。 入居者が自立した生活ができるよう、ケアマネジャーが作成したケアプランに基づいて介護サービスを提供します。 他にも、身体機能の回復を目的としたリハビリテーションなどの機能訓練家事や食事などの日常生活上の支援サービスを行います。 特定施設の入居対象 下の表に、特定施設の種類とそれぞれの入居対象に必要な条件を記載しています。 都道府県の指定種別 入居対象 特定施設入居者生活介護 介護専用型 要介護1〜5 特定施設入居者生活介護 混合型 自立・要支援1〜2、要介護1〜5 地域密着型特定施設入居者生活介護 同市区町村に住民票があり要介護1以上 介護予防特定施設入居者生活介護 要支援1〜2 出典:学研ココファン 特定施設には、「介護専用型」「混合型」「地域密着型」「介護予防型」の4種類があります。 混合型と介護予防型は、高齢者の入居施設の中でも要支援の方でも利用できる施設です。 都道府県からどの指定を受けているかによって、それぞれ入居対象者が異なります。 「要介護」や「要支援」は、介護をどのくらい必要とするかを7段階で表す要介護度状態区分で、以下の表のように区分されます。 介護度 状態 要支援1 家事などの身の回りの世話の一部に見守りや手助けを必要とする。 立つ、歩くなどの動作に一部の介助を必要とすることがある。 排泄や食事はほとんどひとりで行える。 要支援2 家事や整容などの身の回りの世話に見守りや手助けを必要とする。 立つ、歩くなどの動作に支えを必要とする。 排泄や食事はほとんどひとりで行える。 要介護1 家事や整容などの身の回りの世話に見守りや手助けを必要とする。 立つ、歩くなどの動作に支えを必要とする。 排泄や食事はほとんどひとりで行える。 混乱や理解の低下が見られることがある。 要介護2 家事や整容などの身の回りの世話全般に見守りや手助けを必要とする。 立つ、歩くなどの動作に支えを必要とする。 排泄や食事に見守りや手助けを必要とすることがある。 混乱や理解の低下が見られることがある。 要介護3 家事や整容などの身の回りの世話をひとりで行えない。 立つ、歩くなどの動作をひとりで行えない。 排泄がひとりで行えない。 認知機能の低下が見られることがある。 要介護4 家事や整容などの身の回りの世話がほとんどできない。 立つ、歩くなどの動作がほとんどできない。 排泄がほとんどできない。 認知機能の低下が見られることがある。 要介護5 家事や整容などの身の回りの世話ができない。 立つ、歩くなどの動作ができない。 排泄や食事ができない。 認知機能の低下が見られることがある。 出典:パナソニックのエイジフリー 要支援1は、生活する上で見守りや一部の介助を必要とする方、要介護5は、ほぼ寝たきりの方と言えます。 介護度は、身体的な面だけではなく、認知機能や不安症状などの内面的、精神的な面も影響します。 特定施設に該当する施設 特定施設に該当する施設は以下の4つです。 有料老人ホーム サービス付き高齢者向け住宅(一部のみ) ケアハウス(経費老人ホーム) 養護老人ホーム 特定施設それぞれの特徴と、どのような人におすすめであるか解説します。 有料老人ホーム 有料老人ホームは、高齢者が心身の健康を維持しながら生活できるように配慮された住宅です。 有料老人ホームには、以下の3種類があります。 主に要介護者向けの「介護付き」 自立から要介護者まで入居可能な「住宅型」 自立している方対象の「健康型」 食事、家事援助、介護、健康管理などのサービスを受けられます。 どのような高齢者におすすめ? 有料老人ホームは、共有スペースを設けている場合も多く、他者とコミュニケーションを取りたい人に向いている施設です。 レクリエーションなど他の入居者との交流の場が設けられるため、孤独を感じることなく生活できることが魅力です。 新しい人との繋がりも期待できます。 参考となる有料老人ホームはこちら サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) サ高住は、国土交通省・厚生労働省が所管する施設であり、バリアフリー設計で、高齢者が安心して住める環境が整っていることが魅力です。 施設によっては、日常の外出や買い物、旅行など自由な生活を送ることができます。 どのような高齢者におすすめ? サ高住は、一人で暮らすことに不安のある人、自宅と変わらない生活を送りたい人に向いている施設です。 家族や友人との外出や外泊などに関するルールが少なく、施設に入居しても家族や友人との関わりも十分に確保できます。 家族や友人との時間も大切にしたい人に最適です。 参考となるサ高住はこちら ケアハウス ケアハウスは、自治体の助成を受けて運営されている経費老人ホームであり、「自立型」と「介護型」の2種類があります。 「自立型」のケアハウスは60歳以上で、家族による支援が受けられない高齢者が対象となります。 また、介護が必要になると外部の事業者との契約が必要です。 「介護型」のケアハウスは、常駐する介護スタッフから食事・入浴・排泄などのサービスが受けられます。 どのような高齢者におすすめ? ケアハウスは、一人暮らしに不安があり費用を抑えて生活を送りたい人向けの施設です。 ケアハウスは自治体の助成を受けているため、比較的安価で入居できることが魅力です。 参考となるケアハウスはこちら 養護老人ホーム 養護老人ホームは、精神的・経済的な理由で在宅生活が困難な高齢者の社会復帰を促す施設です。 入居基準は自立している高齢者で、自治体による調査と判定が必要となります。 長期的な利用はできず、自立した生活が送れるようになると退去します。 どのような高齢者におすすめ? 収入がない、身寄りがいないなどの不安を抱えている高齢者に向いている施設です。 生活費は公費で賄われるため、費用面の負担も少なく、一時的に入居したいと考えている方に最適です。 参考になる養護老人ホームはこちら 特定施設に入居するとどう変わる? では、特定施設に入居するとどのような変化があるのでしょうか? 特定施設のメリット、デメリット 特定施設のメリットは以下の通りです。 毎月定額で介護サービスを利用できる。 施設によっては、一人暮らしと変わらない自由な生活を送ることができる。 24時間365日、身体介護や生活支援等の介護サービスを受けられる。 入居者に合わせた介護計画を立ててもらえる。 病気の進行や老化によって介護度が上がっても、継続して入居できる。 特定施設のデメリットは以下のことが考えられます。 外部のサービスを受けられなくなる。 毎月定額のため、自立しているなど介護度が低いと割高になる場合がある。 特定施設に入居すること 特定施設のメリットやデメリットを踏まえ、特定施設に入居するとどう変わるのか説明します。 家族と生活したり住み慣れた環境で暮らしていた高齢者が、突然知らない方たちと生活することは簡単なことではありません。 近くに家族がいないことや共同生活でのルールなど、不安は付き物です。 しかし、特定施設は人員基準により人員の配置が整っています。 看護や介護の専門スタッフが揃っており、日常生活をより安心して過ごせることが特徴です。 24時間の介護サービスも受けられるため、緊急時にも対応してもらえます。 入居者も家族も安心できる環境であることが特定施設の魅力です。 まとめ 今回は、特定施設の特徴や、メリット・デメリットについてお伝えしました。 利用者の介護度に応じて入居可能な特定施設が異なる。 特定施設には、有料老人ホーム、サ高住、ケアハウス、養護老人ホームの4種類がある。 特定施設は、24時間介護サービスを受けられるため長期的な入居が可能である。 特定施設に入居すると、入居者も家族も安心して生活できる。 最後までご覧くださり、ありがとうございます。