皆さんは、記憶が失われていくアルツハイマー型認知症の症状改善に対する新たな試みが「NHK BS」の放送で紹介されたのをご存知ですか。
これまでは、薬による症状の進行を遅らせることが主な治療であった認知症が、生活習慣を徹底的に見直すことで症状を緩和するという新たな試みがクローズアップされて紹介されました。
認知症の症状や対策、改善事例を知ることで、認知症に対処できる明るい未来も見えてきているのです。
この記事では、認知症に苦しむ患者や家族にアメリカの脳科学者が提案した新たな治療法の模索など、最新の認知症に関する情報について紹介します。
未だ課題はありますが、認知症に苦しむ方やご家族の方は ぜひご一読ください。
認知症の症状改善に新たな試み
認知症は、今まで、改善する治療法はなく、唯一、薬で症状の進行を抑えるだけの対処法しかない症状でした。
しかし、現在では症状を改善させようとする新たな試みが注目されています。
その方法とは、食事や運動という生活習慣の改善により、症状を改善させる試みです。
ここでは、生活習慣を改善することで、認知症の症状を改善させる新しい方法について紹介します。
生活習慣改善は新たな認知症対策
認知症の患者数は、アメリカで約600万人、日本では約400万人といわれています。
認知症に苦しむ患者や家族は、社会でさまざまな制約を受けてしまいます。
認知症で日常生活まで支障を生じている現状を改善するために、主に薬による治療を受けているのが現状です。
しかし、近年、アメリカの脳研究者であり、アルツハイマー病の権威である医学博士デール・ブレデセン氏の30年間の研究の成果が世界で脚光を浴びています。
薬に頼らない認知症予防
デール・ブレデセン氏によると、認知症は薬だけの治療は症状の進行を抑えるだけで、根本的な治療ではないため、新たな治療法が必要だと説いていました。
その新しい治療法とは、生活習慣の改善(リコード法)です。
この方法は、薬に頼らず、生活の中心となる5つの習慣を見直すことで認知症を改善しようとする試みです。
生活習慣の基本5か条(リコード法)
生活習慣の基本5か条とは、次の5つの習慣を見直せば、認知症に効果があるとされ、リコード法と呼ばれています。
食事・・・・糖質を野菜中心の食生活に変える(ブロッコリーは特に効果的) 運動・・・・毎日30分以上の有酸素運動を行う 睡眠・・・・8時間の睡眠が必要 プチ断食・・夕食は寝る前の3時間までに摂る、夕食から朝食まで12時間は空ける ストレス軽減・・めい想する その他の環境・・毒性物質(カビ、大気汚染など)も影響する |
ヘルスコーチとの二人三脚
ヘルスコーチとは、医師の診断結果に基づき、生活習慣や環境を指導する役割を担います。
医師は病気の専門家ですが、食事などの生活習慣に対する具体的な改善方法までは提示しません。
特に認知症の症状改善には、生活習慣の改善が効果的であるため、ヘルスコーチによる生活改善が主体の治療が必要になります。
ヘルスコーチと患者や家族との二人三脚が大切なのです。
ある脳研究者の挑戦
アメリカの脳科学者でアルツハイマー病の権威であるデール・ブレデセン博士は、カリフォルニア大学で30年、認知症の研究を行ってきました。
その研究の中で、脳には1,000億個の神経細胞があり、アルツハイマー型認知症は神経細胞の先端のシナプスが死滅するメカニズムで発症することを突きとめたのです。
しかし、認知症の症状はさまざまで、現状は薬で症状の進行を抑える治療に留まっています。
デール・ブレデセン博士は、生活習慣の改善により認知症は改善するという信念のもとに、アルツハイマー病協会(アメリカ・シカゴ)に協力を求めています。
認知症の現状
認知症の現状として、人によって症状はさまざまです。。
しかし、医師の処方や診察、ヘルスコーチの指導による生活習慣を改善することで、認知症の進行は抑えられている症例を紹介します。
【日本人男性の例】
父親の介護中に物忘れが多くなった自分に気づき、病院で診察を受けた結果、認知症の発症を告げられました。
彼は薬を処方されたことにショックを受けます。
当時は保険会社勤めをしていましたが、ますます物忘れが進行していきます。
彼は、このまま仕事を続けると会社にも迷惑がかかると考え、退職しました。
現在は農業を営んでいます。
彼は、デール・ブレデセン博士のセミナーで感銘を受け、生活習慣の改善に努めるようになりました。
現在は進行の症状は少しずつではありますが抑えられています。
【アメリカ人女性の例】
親しい知人でも名前と顔を思い出せないほど認知症の症状が進行していました。
自分が認知機能が低下していると考えると日々怖く感じてしまい、日常生活に不安を感じていました。
生活習慣を改善した結果、認知症の進行が少しずつ抑えられ、4か月が経過した頃から効果を感じ始めるようになりました。
認知症の薬は症状の進行を抑えるだけ
アミロイドβという物質は、早ければ40代から脳内に蓄積し始めます。
アミロイドβは、アルツハイマー病に重大な影響を与えるといわれています。
そのため、現在の新薬はアミロイドβ仮説に基づき開発されたものが患者に処方されています。
しかし、新薬でも認知機能の低下を完全に抑えることはできないのが実態です。
認知症に至るメカニズム
認知症に深く関わっているアミロイドβは、アミロイド前駆体タンパク質(APP)が大きく関与しているのです。
APPは脳細胞の運命を決めるともいわれる物質で、神経細胞に密集した斑点を形成します。
APPが蓄積すると脳は徐々に本来の機能を失い。認知症を発症します。
人によって認知症の症状はさまざま
「もの忘れ」と「認知症」の大きな違いは、体験の一部のみ忘れるか、過去の経験や体験を忘れるかです。
認知機能の低下には、次の6段階に分かれます。
非常に軽度 | 若干のもの忘れはあるが、日常生活に支障がない段階です。 |
軽度 | 家族や友人が変化に気づく段階です。 |
中等度 | 明らかな症状が見られる段階です。 |
やや重度 | 記憶障害や認知障害があり、サポートが必要な段階です。 |
重度 | さらに記憶障害の進行が顕著になり、人格が変わる、大幅なサポートが必要な段階です。 |
非常に重度 | アルツハイマー病の最終段階といわれ、環境への反応や会話が成立しない 異常な反射対応、筋肉の硬直なども見られるようになります。 |
生活習慣改善は認知症を予防する
認知症は病名ではなく、脳の認知機能の低下による症状です。
認知症を引き起こす疾患はさまざまですが、その中でも、次の4つの疾患が多数を占めています。
1.アルツハイマー型認知症 2.脳疾患性認知症 3.レビー小体型認知症 4.前頭側頭型認知症 |
この4つの疾患の内、脳疾患性認知症だけは脳血管に障害を受けて発症したものですが、その他3つの認知症は、脳の神経変性により発症します。
脳の神経変性は、主に糖分の摂りすぎによるインスリンの増加や、ビタミン・ホルモン不足などが引き金だと指摘されています。
生活習慣を見直し健康状態を保つことが、脳の神経変性を抑える効果があるのです。
生活習慣を改善したことで認知症への効果は?
2014年にデール・ブレデセン博士が論文で発表して以降、さまざまな症例の患者にリコード法を試みており、改善効果は次のとおりです。
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リコード法による症状の改善は、軽度から早期のアルツハイマー病に効果があると見られます。
今後の課題
リコード法はアルツハイマー病の新しい治療法ですが、すべてが確立された治療ではありません。
未だ、残された課題があります。
高額な検査費用
日本では、リコード法を活用した医療が進んでおらず、一部の医療機関しか対応していないのが現状です。
また、日本国内ではすべての検査ができず、海外に検査依頼しているため、高額な検査費用(約40万円)がかかります。
ヘルスコーチの絶対数の少なさ
ヘルスコーチの絶対的な少なさも、リコード法の妨げになっています。
継続的な生活改善を続けるためには、ヘルスコーチによる指導や医師の治療が必要です。
ヘルスコーチの育成も課題の1つです。
まとめ
この記事をまとめると次のとおりです。
・認知症で処方される薬は、症状の進行を抑えるだけである ・生活習慣の見直しで症状を改善する可能性がある ・生活の基本5か条(リコード法)を知る ・早期の発見、対応に効果がある ・ヘルスコーチの協力が不可欠である |
認知症が進行すると、日常生活でさまざまな問題が生じます。
また、患者や家族は悩み、苦しみ、場合によっては生命の危険を及ぼす行動をとるなど、社会的な問題を抱えています。
しかし、処方される薬に頼ることなく、患者本人や家族の努力の積み重ねでも症状が改善できる治療法もあることを覚えておいてください。
認知症は進行する前の早期発見、対応がポイントです。