介護保険の上限を超過したときはどうすればよい?対処方法や自己負担を軽減する方法について解説

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narumi

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介護保険制度では、要介護度によって受けられるサービス料の上限が決まっています。

ケアマネジャーは、決められた上限の範囲におさまるようにサービスを調整しなければなりません。

本記事では、介護保険の上限が決まっていることや、この上限を超過した場合の対策、自己負担を軽くする制度について解説します。

介護保険の上限は区分支給限度基準額で決まっている

介護保険のサービスは、訪問介護やショートステイ等のサービスごとに使用できる単位数が決められています。

そして、要介護度によって1ヶ月間に使用できる単位数の上限が決められており、それを区分支給限度基準額といいます。

区分支給限度基準額とは

区分支給限度基準額とは、要介護度ごとに設定された介護保険サービスの月の上限を単位数として設定しているものです。

介護保険はサービス毎に単位が決められており、ケアマネジャーは区分支給限度基準額を超えない範囲で、サービスを組み合わせて調整します。

利用者の自己負担は、所得によって1〜3割に設定されていますが、在宅介護を続けていくと、加齢やADLの低下にともない必要なサービス量は増えるものです。

サービス量が増えると、自己負担とともに介護保険の公的なお金の利用も増えていきます。

しかし、財源に限りがあるので上限が設けられているため、その範囲内でサービスを調整するよう求められています。

○在宅サービスの区分支給限度額と自己負担額

区分支給限度基準額(単位)利用限度額

(円)

1割負担の時の

自己負担額(円)

要支援15,03250,3205,032
要支援210,531105,31010,531
要介護116,765167,65016,765
要介護219,705197,05019,705
要介護327,048270,48027,048
要介護430,938309,38030,938
要介護536,217362,17036,217

※1割負担、1単位=10円の場合

参考:目黒区 区分支給限度額(介護保険から給付される一か月あたりの上限額)

区分支給限度額を超過すると全額自己負担になる

区分支給限度基準額を超過してしまった場合、超過した分の介護保険は利用できないので、全額自己負担で支払うことになります。

例えば、1割負担で要介護5の人が1ヶ月に400,000円分の介護保険サービスを利用したとします。

1割負担の支払額は40,000円ですが、限度額は36,217円なので、40,000−36,217の3,783円分超過してしまいます。

この場合、超過した3,783円は全額自己負担になりますので負担額は10倍の37,830円です。

全ての負担額の1割負担分の36,217円と全額自己負担分の37,830円を足して、74,047円がこの方の自己負担額になります。

急に負担が増えてしまいますので、ケアマネジャーは上限の範囲内でサービス調整する必要があります。

介護保険の上限を超えないようにするための対策の一つは、要介護度の区分変更を申請することです。

介護保険の上限を超えないようにするには区分変更を申請する

介護保険の上限を超えないようにするには区分変更申請が有効です。

要介護度が上がると区分支給限度基準額が上がりますので、利用できるサービスの量を増やせるからです。

例を挙げると以下のようになります。

  • 要介護1の時は車椅子のレンタルができなかったが、要介護3になったらできるようになった。
  • 要介護2では他のサービスとの兼ね合いでショートステイが1週間しか利用できなかったが、要介護4になったことで10日利用できるようになった。
  • 特養入所を考えているが、要介護2の状態では入所できないので要介護3以上にしたい。

上記のように、区分支給限度基準額を超えてしまいそうな時は区分変更申請が有効です。

ケアマネジャーとして、利用者本人や家族の生活状況を見ながら提案してみるのもよいでしょう。

しかし、ご利用者様のご家族から「要介護度が上がると自己負担が増えてしまうので困る」という声が聞こえてくることもあるかもしれません。

次は自己負担を軽減させる制度について解説していきます。

介護保険の自己負担を軽くする制度

在宅介護を続ける上で、費用負担を軽くすることも大きなポイントです。

ここでは、自己負担を軽くする制度である「高額介護サービス費」「介護保険負担限度額認定」や、「介護保険料を滞納すると自己負担が増える」ことについて説明します。

高額介護サービス費

参考:厚生労働省 令和3年8月利用分から高額介護サービス費の負担限度額が見直されます

高額介護サービス費は、「1ヶ月に支払った利用者負担の合計が所得に応じた負担限度額を超えた時に、超えた分が払い戻される」制度です。

例えば、市町村民税が課税されていて課税所得が380万円未満の人は、上限額44,400円になっているので、1か月の費用が50,000円かかった場合後から6,000円が返還されます。

介護保険の給付対象外の食費や、全額自己負担分は対象にはなりません。

該当する時に、市町村から申請書が届きますので、必要事項を記載して役所へ提出します。

次回以降は自動で振り込まれますが、はじめに申請をしないともらえないので注意が必要です。

介護保険負担限度額認定

介護保険負担限度額認定は、ショートステイや特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院などの介護保険施設を利用する際の負担軽減対策です。

これらの施設の利用料金は、介護保険の自己負担分(1〜3割負担)と食費、居住費が主なものになります。

このうち、食費と居住費が住民税の課税状況や年金額、預貯金などによって段階的に減額されます。

施設入所の場合は通常15〜16万円かかる利用料金が半額程度になる場合もあります。

要件が複雑ですので、役所の介護保険窓口で対象になるのかどうか確認してみてはいかがでしょうか。

介護保険料の滞納

こちらは自己負担を軽くするというよりは、負担を重くしないようにするための注意点です。

40歳から納付義務のある介護保険料は、健康保険料とあわせて納付します。

年金を受給するようになると、特別徴収といって年金から天引きされるのが基本です。

ただし、年金額が年間18万円未満だったり年度途中で65歳になったり、引っ越したりすると普通徴収になり、納付書や口座振替で支払うことになります。

介護保険料を滞納すると、期間によって以下のようなペナルティが課せられるので、注意しましょう。

滞納期間対応内容
1年以上介護保険給付の支払い方法の変更(償還払い化)通常1〜3割負担のところ、一旦10割支払い、その後申請をして7〜9割分の払い戻しを受ける。
1年6か月以上介護保険給付の一時差し止め一旦10割支払った後、7〜9割の払い戻しが差し止められる。介護保険料を支払えば払い戻されるが、支払わないと差し止め分から差し引かれる場合がある。
2年以上介護保険給付の減額時効により介護保険料が納付できなくなる。

また、通常1〜3割の自己負担が3〜4割負担になり、高額介護サービス費の対象外になる。

介護保険料を滞納すると上記のようなペナルティが課され、自己負担が重くなります。

滞納すると市町村から督促状や催告書が送られてきますので、速やかに納付しましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

本記事では、介護保険の上限や、上限を超過した場合の対策と、自己負担を軽くする制度について解説しました。

  • 介護保険の上限は区分支給限度基準額で決まっている
  • 区分支給限度基準額を超過すると、超過した分は全額自己負担になる
  • 区分支給限度基準額を超えないようにするには要介護度の区分変更申請が有効
  • 介護保険の自己負担を軽減させるには、高額介護サービス費や介護保険負担限度額認定などの制度を活用する
  • 介護保険料を滞納すると自己負担が重くなる場合がある

介護保険の制度は複雑で、利用者やその家族が自ら理解して制度を活用することは現実的ではありません。

ケアマネジャーには利用者やその家族が安心してサービスを受けられるよう、制度をうまく活用し導く役割が求められています。

最後までお読みいただきありがとうございました。