高齢化率が上昇している日本において、ケアマネの役割はますます重要になってきています。
2022年9月に総務省が発表した、日本の総人口における高齢者(65歳以上)の割合は29.1%です。
これはざっくり言うと10人に3人は高齢者ということです。
しかし、ケアマネの受験者数は年々減少しています。
これには「業務負担の増加」「やらなければならない業務が多く負担が大きい」「対価が低い」などの理由が挙げられます。
これらについて1つ1つ見ていきましょう。
ケアマネって何をする人?
そもそもケアマネの業務には以下のようなものがあります。
・状態の把握 ・課題の抽出 ・利用者、家族からの聞き取り ・ケアプランの作成 ・担当者会議の開催 |
ケアマネの業務を進める中で、他職種の専門的な意見を聞いたりすることも重要です。
リハビリが必要な利用者であれば理学療法士や作業療法士、または言語聴覚士といったリハビリの専門家、医療的なケアが必要であれば医師や看護師などです。
デイサービスや訪問介護、福祉用具等々それぞれの専門家に意見を募ることができれば、多角的な視点でより良いケアプランが作成できる可能性も高まります。
居宅と施設で違いがあるものの、どちらのケアマネもメイン業務は利用者の困りごとを解決していくことだといえます。
ただ、居宅ケアマネと施設ケアマネでは業務内容には違いがあります。
居宅ケアマネの業務
新たな利用者への居宅ケアマネの最初の仕事は、利用者宅を訪問して面談し、アセスメントを取ることです。
その上で、困りごとや課題を抽出し、ケアプランの原案を作成します。
そして担当者会議を開催といった流れがオーソドックスでしょう。
そこで出た意見を検討し、必要であればプランを修正、その後にモニタリング(当初のケアプランを継続してもよいか、それとも変更の必要があるかの確認・検討を行うこと)を行っていきます。
また、その他で居宅ケアマネで重要なことは「介護度に応じて設定されている『区分支給限度額(介護保険では介護度に応じて給付される上限額が決まっておりその限度額のこと)』を越えないように、月のサービス利用状況を把握すること」です。
限度額を超えると介護保険は利用できず、自費で支払いを行わなくてはならなくなってしまいますので、充分気を付けなくてはいけません。
施設ケアマネの業務
施設ケアマネは、その施設で過ごされる方のプランを作成します。
利用者宅の訪問がない他は、居宅ケアマネと流れは一緒です。
流れは一緒とはいえ、自宅と施設では環境面で大きな違いがあるため、同一の利用者の方でも在宅か施設課で大きくケアプランは変わってくるでしょう。
また、施設ケアマネは人手が足りないときには介護職の手伝いをしたり、夜勤に入ったりするというケースも見聞きします。
生活相談員のヘルプをしている施設もあります。
そういった中で、ケアプランを立案・作成し、担当者会議を開催していくことになります。
さらに毎月のモニタリング等々の業務があるというわけです。
ケアマネの担当件数は何件まで?
これらの業務をこなしながら、ケアマネ一人当たりが受け持てる件数はどれくらいなのでしょうか。
居宅ケアマネについては、その事業所がICT(業務の効率化を図るためにコンピュータ技術を活用すること)を導入しているかどうかで変わってきます。
・居宅ケアマネ(ICTを導入している場合)➡44件まで ・居宅ケアマネ(ICTを導入していない場合)➡39件まで ・施設ケアマネ➡99件まで |
ただし、上記を越える件数を受け持ってはいけないわけではありません。
1件当たりの報酬は減額されてしまいますが、受け持つこと自体は可能です。
なお、要支援の利用者は2件で要介護1件相当という計算になります。
ところで、居宅ケアマネと施設ケアマネで担当件数が大きく違うのはなぜでしょうか。
居宅ケアマネは、利用者の自宅はもちろんのこと、これから利用するかもしれないデイサービスの見学や、入院している利用者様の状態把握のために病院に行ったり、カンファレンスに呼ばれることもあります。
そのため、各事業所や役所、病院、地域包括支援センターなどの関係機関を訪問する機会も多く、面談や移動などにも多くの時間を割かなければなりません。
それに対し、施設ケアマネは多くの業務が施設内で完結できますので、その分、対応可能な件数も多く設定されています。
ケアマネの適正な担当件数は?
1人のケアマネで99人の利用者を受け持つことが可能なのでしょうか。
可能だとしても、それが利用者のためだといえるのでしょうか。
この点では疑問を感じざるを得ません。
それは居宅ケアマネでも施設ケアマネでも同様です。
1ヵ月の稼働時間の中で、39人ないし44人、もしくは100人の利用者を担当し、ケアプランを作成し、加えて担当者会議を行わなくてはいけません。
その他にも、入退院の調整が必要な場合もあるでしょうし、居宅ケアマネは要介護の方には訪問してモニタリングを行わなくてはなりません。
また、事業所の見学に行くこともあれば、家族と話し合うこともあるでしょう。
加えて研修があったり、管理者であれば事業所内での問題の解決にも当たる必要があります。
当然ケアマネとしては利用者の状態を把握していなければなりません。
つまり、常時40人以上の利用者の状態を把握しておくということですが、利用者ご本人からは大きな変化がないと連絡をくれないケースも多々あります。
それを考えると、担当件数ギリギリまで受け持つのは好ましいとはいえないでしょう。
ケアマネの担当件数は年々増加傾向
しかし、ケアマネ1人当たりの担当件数は年々増加傾向にあります。
担当可能件数ギリギリまで受け持つかどうかは、事業所の方針によるところも大きいので、ケアマネ業務を考えている方は必ず確認しておくとよいでしょう。
担当件数が増加しているのは次のような要因が考えられます。
① 高齢者の増加 ② ケアマネが不足している ③ 待遇が改善されない |
介護保険を利用する方が増加している昨今、ケアプランを作成するケアマネの人数も増加しなければ、1人当たりが受け持つ人数も増加していくのは必然です。
しかし、冒頭で触れたようにケアマネの受験者数は年々減少傾向です。
2018年には前年に比べて、なんと6割以上も受験者が減少するという衝撃的な数字でした。
ケアマネの報酬は適切なのか?
この原因は、1つにはケアマネの業務内容と報酬が釣り合っていないからだと言われています。
介護職に対する処遇改善は進んでいますが、ケアマネについては責任の大きさの割にはそういった恩恵が少なく、待遇面に満足できないという方が多くいます。
一時期は介護職の待遇が社会的にも問題となっていましたが、今はケアマネの社会的な評価の低さが問題視されるようになってきています。
そのためケアマネを志す人も少なく、また現在ケアマネ業務に従事していても、離れて行ってしまう方も多くなってきています。
現在はケアマネの待遇改善を望む声も多くなりました。
まとめ
最後に今回の記事の要点をまとめます。
・ケアマネの業務は多岐にわたるが、メインは利用者の困りごとを解決するケアプランを作成すること ・居宅と施設ではケアマネの業務には大きな違いがある ・ケアマネ1人当たりの担当件数は以下のとおり ① ICT活用居宅事業所は44件 ② ICT未活用居宅事業所は39件 ③ 施設ケアマネは99件 これ以上担当することも可能だが、1件当たりの報酬が減額される ・担当件数ギリギリまで受け持つと、業務が回らなくなる恐れがある ・ケアマネを志望する人は減少傾向 ・ケアマネの待遇改善が求められている ・実際に何人を受け持つかは、最終的には事業所の判断になる |
ケアマネは資格を取るにも、また更新時も長時間の研修が必要になります。
利用者・ご家族と向き合って問題を解決していくチームの中心者ともいうべき役割といえるでしょう。
責任が重い分、やりがいのある仕事です。
それだけに1人1人の利用者に丁寧に対応していくためにも、適切な担当件数で働ける事業所を選択するのも一つの手段です。
最後までお読みいただきありがとうございます。