これは介護と医療どちらですか?介護と医療が連携する場合の対処方法を解説

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narumi

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訪問介護のヘルパーはサービス時でも、医療行為や医療機関との連携を求められる状況が発生する場合もあります。

今回は、そんな状況時での対応の仕方について紹介します。

介護なのに医療行為?

訪問介護でのヘルパーさんのボーダーライン

利用者宅へ訪問し、介護サービスを行うヘルパーですが、利用者の日常生活には些細な形でも医療行為を必要とする様な事態や、簡単な処置対応を求められる事があります。

・自宅で家具にぶつけてしまい、手に小さな擦り傷ができてしまった。

・高血圧と診断されており、毎日血圧を測るように主治医から言われている。

・脊柱管狭窄症の為、屈伸動作が難しくなかなか足の爪が切れない。

・ドライアイが強く、医師より点眼薬が処方されている。

・加齢による乾皮症で、ワセリンが処方されている。

・利用者の手が不自由な為、口腔ケアや義歯洗浄ができない。

サービス開始前のケアマネージャーや訪問介護事業所側のモニタリングやアセスメントで以下の事柄を確認します。

・利用者のADL(日常生活動作)やIADL(手段的日常生活動作)

・身体的にどういった動作ができて、どういった動作が難しいのか

・日常生活では何ができて何が難しいのか

・傷病歴や生活環境等

基本的には、ケアマネージャーの立てたケアプランに則り、訪問介護計画が立てられサービスを行うのですが、時に身体介護においてこれは医行為ではないのか?とヘルパーが判断に迷う事もあります。

基本的に訪問介護のヘルパーは医療行為を行う事はできませんが、下記の図の様に厚生労働省より「医行為ではないと考えられる」とされる事例があるので参照して下さい。

例えば訪問介護サービスにおいて、食事介助と図の⑤にある様に食後の口腔ケアと義歯洗浄まで訪問介護計画にある場合は、計画通りサービスを行わなければなりません。

私達も普段の生活で、食事の後に歯みがきをしたり、人によっては義歯のケアをする事は何の疑問も持たないでしょう。

利用者も同じで、口腔内外に炎症も病例も特に何も無く、食事を安全に行った後の清潔保持の為に行う口腔ケアや義歯洗浄は、ケアプランに立てられていれば、ヘルパーは口腔ケアの介助や見守り的援助にて対応します。

但し、利用者の口内に歯周病や酷い歯槽膿漏があったり、口腔内潰瘍やヘルペスの症状があり医師による診察や治療が行われている状態での口腔ケアや義歯洗浄となると、話は違ってきます。

明らかに医師の対応が必要となる状態=重篤な状態での口腔ケアを行う時は、必ず医師の指示書や看護師の指導の下にサービスを行う必要があります。

そういった場合では基本的には処置や医療行為を求められる為、軽微な状態とは言えず介護対応はできません。

その際は訪問介護ではなく訪問看護での対応となる場合もあるので、利用者の状態においては安易に自己判断したり利用者の言い分要求を鵜呑みにして言われるまま対応したりせず、ケアマネージャーや訪問介護事業所等に報告した上で正しく利用者に応じる等の注意が必要です。

訪問介護でヘルパーができる医療行為は、利用者の心身状態が安定しており、入院の必要が無く、医療技術や専門的な管理、処置を伴う事が無い状態である場合に軽微で簡易的なもののみ行えるものです。

ヘルパーができる医療行為の例外として、研修を受講した介護福祉士が行える喀痰吸引と経管栄養がありますが、「たん吸引は咽頭の手前まで」や「経管栄養の胃ろうや腸ろうの状態確認は看護師対応」等行為にはできる行為とできない行為があるので注意が必要です。

医療機関で訪問介護?

訪問介護はその名の通り、ヘルパーが利用者宅にて訪問して行われるものですが、利用者宅から出て対応する事が必要とされる場合もあります。

日常生活に必要な動作であれば、訪問介護として認められるものもあり、その認められるものに「医療機関への受診対応」も条件によっては可能です。

「ちょっと風邪ひいたから病院行ってくる。」

「毎月の定期受診だから月末病院に行かないといけない。」

「入れ歯のかみ合わせが悪くてご飯が食べにくい、歯医者に掛からないといけない。」

様々な理由により、生活に医療が関わってくるものですが、基本的に医療機関への受診対応は訪問介護ではできないとされています。

ですが、医療機関への対応が利用者一人では困難な場合や利用者の取り巻く環境や、介護を要する事が明らかに認められる状況によっては、事前対応次第で訪問介護にて対応する事が可能となります。

【院内介助ができる条件】

①要介護度1~5の認定がある利用者

②医療関係者の介助が望めないと事前に確認済の場合

③当日、家族や身内の通院付添いが望めない場合

④院内で常時見守りや介助が必要とされる場合

介護タクシーを利用される場合、訪問介護の基本として当然ながら病院内の院内介助は医療機関対応の為行えませんが、上記にある①~④全てに該当する場合は対応可能となる事もあります。

ここで注意したいのは、ヘルパーが介助できるのは受診受付、院内での移動や、トイレ介助、病院代支払い、薬の受取りです。

心身不安定で一人で待ち時間を過ごす事が困難な場合は条件により介助可能ですが、検査や処置、診察は医療対応の為、介護保険である訪問介護のヘルパーは対応できません。

では、認知症の傾向があったり、または視聴覚が困難な利用者が訪問介護を利用して受診した場合、どうなるでしょうか?

医師の診察において病状の報告や診断結果を受け対応する事は医療対応の為、訪問介護では対応できない事とされています。

この場合は上記でも述べましたが、事前対応によりヘルパー同席が可能になる事もあります。

全ての自治体が事前対応可能とは限らない為、利用者居住区の自治体に相談が必要です。

対象となる利用者が、どの動作に介助を要するのか、またはどこからが医療対応で介護対応では無くなるのかをよく確認した上で線引きし、対応しなければなりません。

介護側が計画通り対応を行っていても、突如介助や見守りを要する事があったり、医師や看護師の説明を聞いたり、利用者の状態を報告したりと、医療と介護の対応が混乱する事も多々ある為、その場その場に応じた臨機応変な対応が求められます。

医療機関で訪問介護(通院介助、院内介助)を行う為に必要な事は下記の図を参照して下さい。

あくまでも「訪問介護対応」で介助しないと病院に受診する事ができない為に、ヘルパーを介して行われるものが、通院介助または院内介助です。

訪問介護対応という事は、先程にもあった通り事前確認やそれに伴う打合せや会議、計画書の作成、記録または報告書の作成等が必要となるという事です。

要介護度認定があっても看護師の介助があれば一人でも受診できたり、医師とのやり取りが可能な場合は、ヘルパーは立ち入る事はできません。

身内や家族の様に寄り添う気持ちは大切ですが、介護保険を利用している事を忘れずに対応しましょう。

皮膚は人の身体の信号機です

訪問介護では、要介護の利用者でも自身で何等かの形でも動ける利用者と、自身の思うようには動けない利用者がいます。

(ここでは、施設や医療機関に入所せず自宅で家族の援助を受けながら過ごす寝たきりに近い状態を指します。)

そういった利用者への介護は、ほぼ身体介護メインである事が多いのですが、「寝たきり」状態である場合、ケアマネージャーのプランを踏まえた上で更に注意すべき点がいくつかあります。

ヘルパーは訪問介護を通じて利用者の状態を確認した上で、「おかしいな?」「あれ?前回より状態悪くなってる!」と感じたら、状況や状態の報告を行い、適切な判断や今後の対応を検討しなければなりません。

図の①や②の場合は、状況によっては医師の診断が必要になりますし、介護ではなく訪問看護対応となる事もあります。

図③の場合、医師の診断やケアマネージャーとの検討、利用者の身体状態によっては訪問リハビリ対応となり、介護との連携を図っていく形になる事もあります。

図④~⑤に関して特に図④の場合、皮膚に状態悪化がみられ、褥瘡が確認された場合は注意が必要です。

褥瘡部への処置は医療行為ですので介護では対応できませんが、排泄により患部周辺が汚染された場合は、清拭対応としてヘルパーが介護を行います。

排泄物で汚染されたまま放置では状態悪化に繋がる為、排泄汚染されている場合は、患部周辺の洗浄、ガーゼやパットの交換、おむつやリハビリパンツの交換はヘルパーが対応します。

褥瘡、床ずれは同じ体勢により同じ個所に体圧が掛かってしまった場合にできる事が多いので、体位を定期的に動かし圧を分散させる必要があります。

それと同じくして、栄養摂取においても食事による栄養が摂取できなくなり、低栄養になってくると褥瘡ができやすく、また発症しても治りにくくなってしまいます。

食事による栄養摂取の為には、嚥下状態も大きく関わってきますし、上下肢の動きも体圧分散に繋がる上に、排泄などの基本的な身体動作に上下肢の動きは必須な為、その動作が維持できるかどうかは褥瘡発症のリスク増減に関わってくるので注意が必要です。

図①~⑤は全て連動しており、訪問介護でヘルパーが対応する介助は一つ一つが全て重要なものであると同時に、目に見えてその状態の良し悪しを教えてくれるのが「利用者の皮膚」であったりします。

・特に状態に問題なく、その利用者なりの日常生活が送れていたら青信号です。

・日常生活は送れているけれども、何らかの「あれ?おかしいな?」が
みられたら黄信号です。

・はっきりと異常が確認されたら赤信号で、医療対応が必要です。

介護で対応すべき範囲と医療で対応すべき範囲を理解し、利用者から出される信号を正しく受け取り、日常生活を送るという道路を走る車の一つが介護であると考えられるならば、訪問介護にて
ヘルパーがどう対応すれば良いのかが分かってくるでしょう。

まとめ

今回は、訪問介護のヘルパーが、医療行為や医療機関との連携を求められる状況時での対応の仕方について紹介しました。

・利用者の日常生活には、医療行為を必要とする様な事態や簡単な処置対応を
求められる事があり、基本的には医療行為はできないが、介護で対応可能と
解釈されたヘルパーができる医療行為がある。
・ヘルパーができる医療行為でも、医療(医師や看護士等)との連携が求められる。・医療機関への受診対応も訪問介護サービスの一つであり
介助を行うには条件や事前または事後の対応が含まれる。
・通院または院内介助を計画されサービスを実施しても
介護で行えるサービスと行えないサービスがある。
・訪問介護で寝たきりや思うように自身で動けない利用者へのサービスでは
ケアプランの他にも気を付けなければならない点があり、実際サービスに入って
認識や確認できる事が少なくない。
・嚥下、栄養、可動域、皮膚、排泄の5点は連動しており
皮膚状態は身体全体の良し悪しを現す信号である。

・状態の変化の気付きを意識して生活状況の対応をし、状態の異常時は
すぐに医療との連携を図る事ができる最前線にいるのがヘルパーであるので
訪問介護時はサービスは繋がっている事を意識して行う。

「医療と介護の連携」と言われると難しく捉えられがちですが、基本的にできる事やできない事をきちんと踏まえた上で、サービスを行えば特に問題はないのです。

訪問介護で身体介護を行う、通院または院内介助を行う、身体介護で利用者の状態をよく確認する、これらは全て利用者の日常生活を安全に送る為の一つで、全ては連動しているのだと考えられたならば介護に対しての理解も深まるでしょう。

不安を持ったままサービスを行えば利用者にも不安が伝わります。

「ヘルパーは介護のプロだ」と自信を持って訪問介護サービスを行いましょう。