高齢者の暮らしを支える住宅改修。
有効に使って、要介護者も介護する人も共に暮らしやすいようにしたいですよね。
介護保険での住宅改修ができるのは下記の5箇所と決まっています。
|
これから、それぞれのポイントや注意点を紹介します。
手すりの取り付け
介護保険の住宅改修でもっとも工事件数が多いのが、手すりの取り付けです。
手すりは、歩行や立ち上がりの補助をする働きがあります。
そんな手すりですが、たくさん取り付けても意味がありません。
邪魔になって通路が狭くなったり、使わない可能性があるからです。
生活動線や本人の能力を考慮したうえで、手すりを取り付けるようにしましょう。
手すりの役割
手すりの役割は、以下のようなものがあります。
|
それぞれ、詳しく紹介していきます。
立ち上がりの補助
加齢とともに筋力が落ちて、立ち上がりに時間がかかったり、1人でできなくなりがちです。
そうなると、誰かの手助けが必要になって、介護の負担が増えることになってしまいます。
しかし、すりにつかまれば、立ち上がりが楽にできるようになります。
手すりが、立ち上がりを助けてくれるからです。
たとえば、トイレの壁に手すりを取り付けた場合には、手すりにつかまってスムーズに立ち上がることができます。
1人で立ち上がりができるようになるためにも、介護負担が増えないためにも、補助をしてくれる手すりの取り付けが重要です。
歩行の補助や誘導
加齢とともに落ちるのは、筋力だけではありません。
バランス能力も低くなってふらつきが多くなり、転びやすい状態になります。
壁に手すりを取り付けることで、転ばずに歩くことができます。
手すりが、ふらつかずにバランスをとる支えになるからです。
例えば、夜中にトイレに行きたくなると、トイレまで移動するために暗い場所を歩かなくてはなりません。
そんな時に廊下にに手すりがあることで、移動を助けてくれたり、誘導してくれるので、転ばずに歩くことができます。
転ばずに目的地まで歩くためにも、手すりの取り付けが重要になります。
手すりの種類
手すりには、大きくわけて、5種類あります。
|
しかし、どのタイプを取り付ければいいのか迷ってしまいがちです。
それぞれ、どんな時に使用するのか、詳しく解説します。
横手すり
横手すりは、地面に対して水平に取り付ける手すりで、もっとも一般的なタイプです。
つかまって移動する時に使用できるため、廊下や玄関への取り付けが多くみられます。
縦手すり(I型)
縦手すりは、地面に対して垂直に取り付ける手すりです。
段差を上がる時や立ち上がりの時の補助になるので、玄関やトイレに取り付けることが多いタイプになります。
L字型
L字型の手すりは、横手すりと縦手すりが一体化したものです。
立ち上がりと立位保持の手助けをするので、トイレや浴室に取り付けることが多くみられます。
階段用
階段用の手すりは、階段の昇り降りを補助する手すりです。
両側にとりつけることが望ましいですが、片側だけの時は降りる時の利き手側に取り付けるようにしましょう。
しかし高齢者は自室を1階にしていることが多いため、使用する頻度が少ないです。
据え置き型
床に置いて使用するタイプの手すりです。
手すりを取り付けることができない場所にも置くことができます。
工事を必要としないため、住宅改修での対応はできません。
福祉用具貸与での対応になります。
段差の解消
次に、段差の解消です。
対象は、自宅内の各部屋の間の床の段差と、玄関から道路までの通路の段差になります。
電力で稼働する段差昇降機や工事を伴わないスロープは、福祉用具貸与の対象外になりますので注意しましょう。
それでは、場所別に解説していきます。
玄関
玄関の上がりかまちは、高齢者にとって大きな障害です。
特に日本家屋は段差が高く、上がるのが大変だからです。
工事としては式台の設置が行われますが、工事を伴わない場合は、介護保険の対象外になります。
駐車場
高齢者にとって屋外の移動は段差も多く、転倒のリスクが高くなります。
筋力やバランス能力など、身体機能が低下しているからです。
たとえば、病院に行く時など外出の際には、駐車場に移動する必要があります。
駐車場までに段差など障害がある時は、スロープを設置したり、階段の段数を増やして、一段ごとの高さを低くすることができます。
敷居
若い人にとってなんともない少しの段差でも、高齢者にとっては転ぶ要因になります。
敷居などは取り外すことが難しいので、小さなスロープを取り付けて段差を解消します。
この時、1/4〜1/5の勾配にすることがポイントです。
滑りの防止及び移動の円滑等のための床または通路面の材料の変更
床などの通路は素材によっては、滑りやすく転倒しやすい要因になっています。
材料を変更することで、転倒予防を図ることができるのです。
もしくは、畳やカーペットでは車椅子の運びが悪いため材料を変更することで、移動をしやすくなります。
ただし、生活動線以外の工事や老朽化によるものは、対象外ですので注意してください。
引き戸等への扉の取替え
日本の玄関は、「開き戸」が多く使われています。
しかし、「開き戸」は、筋力が低下した人にとっては、開け閉めがつらいものになります。
扉の開け閉め時に、扉の開きしろを考慮するため、筋力やバランスが必要になるからです。
そこで、「引き戸」にすることで、扉の開きしろを気にせずに開け閉めができます。
ちなみに、ドアノブをレバー型に変更することも、住宅改修の対象です。
ただし、扉の老朽化といった交換は、対象外になっています。
洋式便器への取替え
洋式便器への取替えは、和式便器を洋式便器に取り替える場合が一般的に想定されています。
その他、どういった工事が対象になるのか、紹介します。
和式便器を洋式便器へ
現代では少なくなりましたが、日本家屋では和式便器が主流で、現在も残存しているところがあります。
ですが、和式便器は高齢者にとって、使いにくいものです。
しゃがむ動作をする必要がありますが、足の変形から痛みを伴い困難になっていきます。
また、筋力も低下しているので、しゃがんだはいいものの、立ち上がれなかったりすることもあります。
こういった時に、洋式便器への交換は有用です。
暖房・洗浄機能付便器への取替え
現在洋式のものを交換はできませんが、和式を洋式に変更する時は住宅改修の対象になります。
便器の取替えに伴う給排水設備工事
便器を取り替える時は、水回りの交換も必要になりますが、給排水にかかわる工事も住宅改修の対象です。
ただし、もともと水洗だったトイレのみになります。
便器の取替えに伴う床材変更
便器を取替える時は、床や壁も改修が必要になりますが、これも対象になります。
こういった時は対象外
住宅改修の対象外にもなる工事もあります。
|
基本的に、新設する場合は対象外です。
既存のものを交換する場合のみ対象になりますので、ご注意ください。
まとめ
ここまで、介護保険での住宅改修のポイントや注意点を箇所別にわけて、紹介してきました。
・手すりは歩行や立ち上がりの補助をするが、たくさん取りつけても意味がない。 手すりは数タイプあるので、目的や場所によってわける。 ・段差解消は自宅内の各部屋の間の床の段差と、玄関から道路までの通路の段差をなくすもの。 工事を伴わない段差解消機やスロープの取り付けは、住宅改修の対象にならない。 ・床または通路面の材料の変更は、生活動線以外や老朽化によるものは対象外。 ・引き戸等への扉の取替えは、高齢者にとって開け閉めが難しい開き戸を取替える時に有用。 開けやすいドアノブへの変更も住宅改修の対象だが、老朽化による扉の交換は対象外。 ・洋式便器への取替えは、一般的に和式便器を洋式便器に変更する時。 洋式トイレやペーパーホルダーを新設する場合は対象外。 |
親に元気に家で過ごしてもらうために、住宅改修を利用して生活環境を整えましょう。
そのためには、箇所別にポイントを把握しておくことが大切です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。