通院介助とはどんなもの?トラブルになりやすい事例もご紹介!

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narumi

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訪問介護サービスの一つに、利用者の病院受診の一連を介助する「通院介助」があります。

今回は通院介助一連に纏わるトラブルや対応について、事例を交えながら紹介します。

通院介助とはどんな介助?

ここでは通院介護がどのようなサービスなのかを解説します。

病院受診する為に利用者の移動支援を行う介護サービスです。

訪問介護サービスには、大きく分けて「身体介護」「生活援助」「通院等乗降介助」の3つに分かれます。

通院介助は下記の図の通り①~⑤の対応の仕方があり、其々の介助に分けられています。

①と②に代表されるのは介護タクシーで、介護資格のある運転手が病院への行き帰りの対応を行うものです。

一般的に通院等乗降介助と呼ばれるもので、病院受診前の準備や外出する為の身体介護(移動・移乗・整容・更衣・排泄等)も含まれます。

③は病院へ受診する為の外出介助で、帰宅まで訪問介護のためヘルパーが対応しますが、院内は基本病院側の対応となる為、介護保険適用外となります。

例外として、病院側が対応できない、院内での家族付き添い対応ができない、利用者の心身不安定による見守りや介助を要する等、理由によってはケアマネージャーが事前確認の上で訪問介護にて院内介助が行える場合もあります。

④の様に介護度が4~5と重度で相当時間数の身体介護を必要とする場合は、病院受診前の準備や外出する為の身体介護(移動・移乗・整容・更衣・排泄等)も、通院等乗降介助の乗車前や降車後介助の一環とならずに身体介護中心型という形になります。

⑤は要介護認定(介護度1~5)の利用者が病院受診をする前と後に、受診に関連する介助ではない別の身体介護中心の介護を30分~1時間程度以上のサービスを行う場合が対象となります。

①~⑤に関して、要介護度認定を受けた利用者が病院受診前後の介助を訪問介護サービス(介護保険)で対応し。病院内の対応は医療機関である病院側(医療保険)が対応する事が前提です。

但し③でも述べましたが、例外として院内介助も介護サービスとして対応できるケースもあります。

要支援の人はどうするの?

基本的に通院介助は要介護認定を受けた利用者でケアマネージャーがケアプランに通院介助が必要であると記載され、訪問介護を計画された場合のみです。

要支援1~2の認定を受けた利用者は、通院等乗降介助は介護保険サービスとして算定できません。

要支援は簡単に言うと「基本的に日常生活を送る能力は持っているが、支援を必要する部分もある」という事を示しいます。

そのため、要支援者の介助は、

「自分でできる事は自分で行う」

「できない事のみ支援する」

「できない事が少しでもできる様になる」

という利用者が自立を維持しながら日々を過ごせる為の支援であると考えると分かりやすいかもしれません。

要支援者と認定された場合、「移動」という動作・行動が自身でできる状態にある事が多く、通院に関してもヘルパーが介助する必要性は無いと判断される傾向にあります。

また要支援は、日常生活支援総合事業の訪問型サービス(旧:介護予防訪問介護)という形でヘルパーがサービスに入る事もありますが、週に1~3回程度で月に4~13回程度入るといった回数が決まっています。

月に回数が定められている中で、病院受診が毎週あるとは考えづらい点や、病院までの移動にヘルパーの介助の必要性を問われる点からも、要支援の認定を受けた利用者がヘルパーによる通院介助を受けづらいとされるのです。

要支援であっても病院受診をするのに不安な面がある場合等、理由によっては支援を受ける事ができる例もあります。

(例1)要支援認定であるが、現病歴による後遺症があり、身体の動きが悪く、躓いたり転倒する危険性があり、日常生活において支障がある場合。

(例2)入院していた要支援の利用者が退院し、退院後の日々の生活において身体状態の不安定がみられ、支援を必要とする場合。

他にも色々なケースがありますが、いずれもヘルパーによる支援が必要とされる場合は、ケアマネージャーや包括支援センター、市町村等の自治体と相談や協議を行い、その上でケアプランに必要性を謳う事で可能となる事もあります。

但し要介護の利用者の様な通院介助ではなく、外出支援(移動支援)という形での対応です。

そのため、介護タクシー(介護保険適用)は利用できない代わりに福祉タクシー(介護保険の適用無し)で対応する等の対応になります。

あくまでも「支援」であり「介助」では無い事と、基本的に要支援対象者は通院介助は介護保険では認められない傾向にあると考えた方が良いでしょう。

利用者の思惑、ヘルパーの困惑

通院介助を行う上でサービスの内容を確認するのは当然です。

例えば、訪問介護側と利用者側で「通院介助にかかる費用」や、「どこまで介助が可能なのか」「病院受診後ついでに、と急な依頼への対応」など、色々と確認しなければいけない事があります。

ケアマネージャーからも通院介助をケアプランに追加する際は事前に説明等を行いますが、介護を行う側と受ける側双方が認識を共有しておかなければなりません。

<下記の図にある、様々なトラブルに繋がってしまう言動事例も参照下さい。>

 

移動手段もいろいろ、意外とお金もかかる?

「病院受診は訪問介護でヘルパーが対応するから大丈夫だ。」と、受診に関する一連の行動や必要とされる介護のみにクローズアップされがちです。

しかし、介護保険とは別にお金がかかる場合もある事を忘れてはいけません。

勿論、ヘルパーも通院介助においてできる事・できない事の認識をしておく事は絶対です。

例えば、利用者側からすれば「訪問介護サービスでの介護利用だから1割負担(又は2割負担)で済む」との認識をされている場合もあります。

間違いでは無いのですが、通院等乗降介助では「利用者宅から車両で病院へ移動し、受診手続きや薬の受取り等対応しまた利用者宅へ移動する介助」に該当する介護サービスのみ、介護単価で行われます。

当然、車両運賃は介護サービスには含まれません。

介護タクシーでは、通院等乗降介助の介護サービス費とタクシーとしての運賃との合算で請求されます。

介護タクシーを利用しない場合でも、ヘルパーの介助を伴いながら各交通機関を利用した際は
利用者本人の交通機関の運賃と共にヘルパーの運賃も発生します。

一般タクシーを利用する場合は乗合となる為に、1人でも2人でも料金は同じです。

しかし、バスや電車を利用する場合は2人分の運賃が発生し、それは利用者負担となるのです。

また院内介助を行う際に、介護保険対応とならない場合は自費サービスを利用される事があります。

自費サービスは介護保険の様に1割負担(又は2割負担)ではなく、全額負担であったり、介護事業所による金額設定が為されています。

そのため、介護サービス費用の感覚でいくと割高に感じるかもしれません。

重ねて院内での時間が長くなれば、自費サービスの時間も長くなります。

また、通院介助の総額が高額になる場合もあるので、ヘルパーに介助を依頼したいけれど金銭面での負担が苦となることがあります。

利用者側のストレスが、更にトラブルへと発展しかねない状況を生み出す原因とも成り得るのです。

予め、利用者へのモニタリングで病院への経路や受診に掛かる時間を確認しておき、費用を概算し、事前に書面化してお知らせしておく事が出来たらお互い安心かもしれません。

いざ病院へ!と行ったはいいけれど。

何度も言いますが、基本的に病院内での対応は医療管轄である病院側であり、介護保険での利用はできません。

でも実際は、病院受診で受付を済ませて、診察又は検査で待つ間や呼ばれて対応する際に病院側の介助は無く、ヘルパーが対応する事態になる事も少なくはありません。

病院側も人手不足であったり、ヘルパーの付添があるならばそちらで対応したらいいと言う様な言動を取られた事もヘルパーを経験した者ならばあるでしょう。

そんな病院内での対応に関するトラブルの例です。

何れも、通院介助を行う訪問介護側と病院側との連携・確認不足による不手際がトラブルに繋がってしまったケースです。

事前にケアマネージャーと病院側との確認はなされており、その通りに進むべきではあるのですが
まれにこういった予想しなかった事態になってしまう事も起こり得るのです。

事前確認し、ケアプランに追加された後、訪問介護側でも通院介助時の訪問介護計画や予定の再確認
予測外の事態に備えての対応策を講じておく等、訪問介護側もヘルパーと再度情報を共有して介助を行う様にしていく事が重要になってきます。

また、自費サービスが発生する場合は、利用者側にも了解を得る形をしっかり取って双方できる限り負担の掛からないようにしなければなりません。

利用者側と訪問介護側で金銭面以外でもこんなトラブルが発生する事もあります。

①~③の例を上げましたが、通院介助を行う前はきちんと説明をして了承を得ていても、いざ病院に行く=外出するとなると「ああしたい、こうしたい」の欲求が出てくる事もあるようです。

①の様に「ちょっとだけ良いだろう」という考えでヘルパーに依頼してくる事もあります。

これは訪問介護で対応可能なのか?ケアプランにその介助内容は含まれているか?をよく考えて対応し、分からない場合は訪問介護事業所の責任者に報告・連絡・相談が必要です。

②のケースは、たまたまその利用者の訪問介護計画に買い物や整理整頓の見守り的支援があった為に
可能となったサービスです。

これが「美容室に寄って帰りたい」や「娘家族のお土産買って帰りたい」等であった場合は対応不可となります。

③に関して滅多に無いとは思われますが、利用者やその家族からの「訪問介護の契約をしているから、ヘルパーに何でも頼んでおけば良い」という考えの下に出た発言です。

訪問介護のヘルパーによくある「何でも屋」扱いですが、ここでは利用者からきちんと断ってくれた為、トラブルとはなりませんでした。

ヘルパーは第三者からの突然の言動にも落ち着いて対応できないといけません。

他にも色々とトラブルへ繋がる様な事態が発生する事もあります。

基本はケアマネージャーと病院側で確認した上で計画された訪問介護(通院介助)の計画をよく確認し、当日どう対応するのかをヘルパー含めたチームで理解し対応する事が求められます。

また、ヘルパー自身が対応に困る事態が起きた場合は、すぐに訪問介護事業所へ連絡することが重要です。

サービス提供責任者や、場合によってはケアマネージャーに対応を依頼する事も必要となります。

ヘルパー自身の曖昧な判断で対応したり、良かれと思って対応した結果、後に難しいトラブルへと発展してしまう事にも繋がりかねません。

病院という在宅外での介護の為、臨機応変な対応が求められる場合もありますが、あくまでも訪問介護サービスである事を踏まえた上での対応にヘルパーは従事しましょう。

まとめ

今回は通院介助についてや介助時のトラブル、対応等を紹介しました。

・通院介助とは、要介護度認定を受けた利用者が病院受診をする為に行われる訪問介護であり、通院等乗降介助や身体介護中心型といった形がある。

・基本的に病院内は医療機関の対応となるが、事前確認によっては訪問介護で対応する事もある。

・要支援は通院介助の対象外であるが、場合によっては外出支援として対応できる事もある。

・通院介助では利用者の負担が介護保険以外にも発生する事があるので、双方の確認が必要である。

・訪問介護で院内の介助を行う場合は、病院側と訪問介護側との連携や確認が再度必要であり、利用者との間にも自費サービスが発生する場合の確認を行っておく必要がある。

・利用者と訪問介護側の間でも、通院介助をする際にできる事やできない事の確認を行い、双方が理解しておく必要がある。

通院介助は各自治体によっての解釈が異なる場合があります。

利用者の居住する自治体が、どこまで通院に対し、介護対応を許容するのかをよく確認した上で、病院側、利用者側、訪問介護側との連携を踏まえてサービスする事も大切です。

訪問介護でヘルパーが通院介助を行う為の情報の一つとしてお役立て下さい。