訪問介護の仕事は、施設型の介護とは違った特殊な技術を必要とします。
介護スキル以外の能力で必要なこともあれば、施設とはまた違った環境下での介護スキルなど、同じ介護でも大きな違いがあります。
今回は、そんな訪問介護で必要な介護技術を、経験者がお伝えします。
訪問介護に特化した技術って何?
今回の記事では、訪問介護に特化した技術で、筆者自身が経験して必要と感じた技術やスキルをお伝えしていこうと思います。
実際の現場での体験談をもとに書いていきますので、今訪問介護をやっている方や、これからやろうと思う方の参考になれればと思います。
土地勘は必ず身に付けよう
当たり前の話ですが、訪問介護は施設介護と違い、広大な土地を介護のために移動しています。
本当であれば介護技術を例にあげるのですが、私は最初に訪問介護ならではの「土地勘」の大切さをお伝えしたいと思います。
訪問介護は基本的に自転車で行う方が多いと思います。
他にも場所によっては車で訪問したり、徒歩で向かう時もあるかもしれません。
どちらにせよ、この時大切になってくるのが土地勘です。
私自身、最初は慣れない土地で複雑な道や、訪問先の場所などは事前に調べて向かっていました。
私が訪問介護をやっていた時は、スマホなどの便利な機器もなく、地図に頼っての訪問でした。
地図だと行き先を見つけるのが一苦労で、スマホが出来てからは非常に助かったのを覚えています。
訪問介護は、訪問件数によっては土地勘がないことで大きくタイムロスを起こす可能性があります。
そうすると、一つ一つのケアが疎かになり、いいサービスが提供できなくなってしまうのです。
そのため、訪問先の道を覚えて土地勘をつけることは、スムーズな仕事にも役立ちますし、サービスの質の向上にも繋がります。
大切なことですので、しっかり土地勘を身につけてください。
安全運転を心がけよう
介護をするために一軒一軒のお宅に自転車や車で移動するので、訪問介護は常に事故と隣り合わせです。
なぜここまで当たり前のことを言うのか、それには大きな理由があります。
これは私が前いた職場であった事です。
訪問を終えてステーションに戻ると、管理者だけ急遽本社に来るように連絡が入ったのです。
今までになかった事ですから、みんな何が起こったのかとソワソワしていたのを覚えています。
結論から言うと、他のステーションの訪問介護員が、移動中に大きなトラックに撥ねられて還らぬ人となったのです。
しかもその事故が起こった事故現場は、私自身よく通る場所でした。
その事故現場の近さを聞いて、私自身ゾッとしたのを今でも覚えています。
一歩間違えたら私自身も、同じ運命を辿っていたかもしれないからです。
なぜ事故にあったのか?
色々な調べで分かったことは、事故に遭った職員は以下の3点から事故に遭ったとみられています。
①次の仕事先に急いで向かっていた
②車の位置や安全確認を怠っていた
③車通りの多い道路を走ろうとしていた
当時の事故の様子だと、その職員は車と車の間から道路に飛び出して、自転車を漕ごうとしていた時に事故にあったようなのです。
これは訪問介護ならではの事故です。
施設型の介護だと、基本的にこんなことにはなりません。
しかし、訪問介護はケアの時間が長引いたり、訪問件数が多かったりすると、どうしても移動を急いでしまいがちです。
もちろん無理なシフトを回らせる職場も悪いです。
危ないと感じたら慌てずに行動し、明らかに無理なシフトを渡された時は、正直にシフト作成者に伝えてみてください。
大切なことなので念押ししますが、命は一度失ったら2度と戻りません。
なので無理をせず無事故を心がけて、訪問先の移動を行ってください。
介護技術で必要と感じたもの
前回の章では、技術の中でも自身の身を守るための技術をお伝えしました。
この章では、実際の介護技術を経験談も交えてお伝えしていきます。
何かしらのお役に立てれば、幸いです。
ご利用者様・家族と仲良くなる技術
訪問介護は施設型と違い、被介護者以外に家族とも会話をする時があります。
このような時、しっかりと挨拶や一般的な社会人らしい振る舞いを心がけてください。
家族は介護サービスだけしてもらえればいいと言うわけではありません。
個人差はもちろんありますが、実は訪問介護員の所作を一つ一つ、細かく見ていたりします。
その行動次第では、「この人に任せて平気かしら?」と思われるかもしれません。
そのため、挨拶や言動、清潔感や服装など家族と関わる上で気をつける点はたくさんあります。
訪問介護の大切な点として、訪問したらまずはご利用者様と家族、どちらとも仲良くなる必要があります。
大切なのでお伝えしておきます。
基本的に1人で対応する技術
訪問介護は1人で仕事をするため、1人で仕事をしていたい人にとってはいい環境です。
ただそれは、裏を返せば1人で全ての業務をこなし、問題に対処していかねばならないと言うことです。
実はこの技術と経験は、施設型の介護をする時にもいろいろな面で役に立ちます。
役に立つポイントとしては以下の点です。
①トラブルなどがあっても動じなくなる
②頼る人のいない環境下での判断経験値がつく
③1人で状況を打開する技術力が身に付く
今回は訪問介護をする上で必要な技術の話ですが、この1人で状況を打開できるスキルを身につければ、訪問介護以外の業態で仕事をする時も役立ちます。
さらに一言付け加えると、どの職場に行っても応用の効く人として重宝される強みもあります。
ぜひ意識して身につけてください。
1人で状況判断する技術
訪問介護をしていると、突然のトラブルに巻き込まれることが時々あります。
これは場合によっては不可避なことも多いです。
例えば訪問時にご利用者様が突然の熱発で倒れていたり、食事介助中に嘔吐したりなどがあります。
これらは職員に咄嗟の判断を必要と迫るものが多く、すぐにその場で対処することが必要です。
基本的には電話などを使い、管理者に状況を説明して打開策を聞くのも良いです。
そちらの方が何かあったときに、介護士自身の身を守ることにもつながるからです。
しかし突発的で、今すぐの対処が必要なときは致し方ありません。
ご自身の経験則ですぐに対処する必要があります。
ここからは実際に私が体験した内容を1つ紹介して、どのように対応したのかも記載しようと思います。
訪問したら床が汚物まみれで、ご利用者様が転倒されていた
その方は身体機能が落ちている男性のご利用者様で、その方には居室清掃のサービスを提供しています。
訪問すると玄関から異臭がしていて、その臭いの原因を確認するべくトイレの近くを見ると、トイレの前に失敗した形跡がありました。
臭いの原因はその失敗した汚物が原因だったようで、さらにご利用者様はその汚物で足を滑らせたのか転倒されていたのです。
衛生的にも悪く、そのままの状況を管理者に伝えて判断を仰ごうとしましたが繋がりません。
そのままにしておくわけにもいかないので、まずはご利用者様の様子を確認しました。
頭を打った形跡もなく、意識もはっきりしていることを確認できたため、ゆっくりと一部介助をしながら起こします。
その後、着ていた服が汚れていたので、急いで着替えをし、床の汚物を処理や、着ていた洋服を洗ってその後洗濯機にかけました。
居室の換気もして空気の入れ替えもし、なんとか環境も落ち着いてくると、ご利用者様も安堵の表情です。
その後経過報告を行うと、判断を特に咎められることもなくご利用者様に至っては経過観察になりました。
このように、突然の出来事に対してご利用者様に適切な対処をすることがとても大事です。
まとめ
訪問介護の職員にとって必要な技術を一言でまとめるなら、「個で解決出来る力」ではないでしょうか。
それは介護技術だけの話ではなく、自身の安全を守ることも必要となってきます。
訪問介護は介護技術を基礎としてまずは移動中の安全を確保することが最優先だと感じました。
今後も違う視点からの発信をしていきたいです。