2000年に介護保険制度が創設され、20年以上が経過しました。
全国に多くの介護施設が作られてきた中、残念ながら入居や利用に注意すべき問題のある介護施設も見受けられます。
ここでは、ご家族の方が介護施設を見分ける確認ポイントをお伝えしていきます。
確認したい4つのポイント
1,「見学お断り」の施設は要注意
施設の利用を検討する前に、見学ができるかどうか施設側に確認してみましょう。
見学のお願いをした段階で、「うちの施設では、見学は無理です」と言われたら、その施設は要注意です。
施設側としては「入居者のプライバシーを守るため」と断りをいれてくることが多いです。
しかし介護保険などの公的資金を使っている施設であれば、国民には見る権利があります。
入居者のプライバシーを守りながら施設を見学できる方法を考えていない施設というのは、その時点で問題です。
見学を拒否する背景として
・劣悪なケアをしている ・身体拘束など、入居者や利用者が自由に生活できない |
といったことが挙げられます。
しかし、最近は新型コロナの影響で、見学を制限する施設もあるため、「見学できないから、悪い施設だ」とは一概には言えません。
ですが良い施設は、以下のような制限を設けることで、見学者への対応を可能な限り行っています。
・予め見学可能な日時を伝える ・見学者には検温と消毒、マスクやディスポグローブを着用してもらう ・入浴場など、入居者や利用者がいない場所だけでも案内する |
逆に、なんの工夫も交渉もなく見学を一切お断りする施設は要注意です。
その様な施設は候補から外しましょう。
2,私物の持ち込めない介護施設は、認知症の対応ができていない
施設内の見学ができないのであれば、私物を持ち込めるかどうか確認してみましょう。
なぜなら、私物は認知症の人にとって「自分を保つための必需品」だからです。
住み慣れた家から突然、無機質な部屋にベッドだけの空間に移動されたら誰だって不安になりますよね。
そんなとき、私物があることで、心の不安が軽減されるのです。
「私物が多いと、他の入居者とトラブルになったりしないの?」
と、不安に思う人もいますよね。
確かに認知症の中には「私の物だ」と考え、勝手に他人の物を取ることがあります。
しかしそのトラブルを防ぐのは、介護職員など施設側の役割です。
知識があり経験豊富なスタッフであれば、私物を持ってくる人に対しては、
・物を取られないよう、私物は部屋から出さないように依頼をする ・食堂など皆が集まる場所で使う場合は、必ず名前を書いてもらうようお願いする |
と、事前に説明をします。
また物を取りやすい入居者や利用者がいる場合は、その人と距離を取ったり、私物を持ってきている人には状況を説明して、なるべく私物を共用スペースへ持ってこないように伝えます。
良い介護施設であれば、職員は自然とこの対応を取ることができます。
「私物を持ってこられると、困ります」と断る施設は、スキルがない職員が多いと考えた方が良いです。
3,機械浴を自慢する介護施設は要注意
介護施設を見学するとき、特にチェックしてもらいたいのが「お風呂場」です。
介護施設の中には、ストレッチャー浴やリフト浴などの機械浴(特殊浴槽)を自慢そうに見せているところもあります。
しかしこういう施設は、考え方が古いです。
ストレッチャーに乗せられた入浴は、怖いし恥ずかしいものなのです。
中には「こんな身体になってしまった」と情けなくなり、ますます閉じこもりがちになってしまう方もいらっしゃいます。
また一般浴に対しても、プールのように広い埋め込み式の浴槽を使っている施設は、古い考え方が残っていることが多いです。
埋め込み式の浴槽は、バリアフリーという言葉を誤解し、段差をまたがないですむようにと作られたものです。
浴槽が広いと掴まる場所がないので溺れそうになります。
また階段の昇降ができる人というのは、施設の入所者では滅多にいません。
そのため「自分の家ではお風呂に入れていたのに、施設に入所したら入れなくなった」という事態が起こりうるのです。
最近の一般浴は、家庭と同じような浴槽に、浴槽と同じ高さの洗い台を設置して入ることが多いです。
浴槽を跨がず片足ずつ浴槽に入れれば、立てない人や歩けない人でも、家庭と同じように入ることができます。
4,施設の運営状態を公表していない事業所は、要注意
介護施設を「終の棲家」と考えている場合、運営している事業所の財務状況や運営状態をチェックしておきましょう。
経営状態の良くない事業所が運営している施設に入居した場合、運営事業者が変わってサービスの質が低下したり、最悪の場合倒産によって退去を求められる場合があるからです。
最近の事業所は、ホームページで決算書などを公表していることが多いです。
視点を変えれば、運営状態を入居希望者に公表しない事業所は、情報公開に前向きでないとも取れるので、注意しましょう。
更に確認したい3つの情報とは!?
事業所が公表している情報で着目してほしい情報は、下記の3つです。
1,入居率
施設のオープンから数年経っているのに入居率が極端に低い場合、施設に何らかの問題がある可能性があります。
2,退去者数
入院や死亡以外に退去者数が多い施設は、トラブルや劣悪な環境など、様々な原因が潜んでいる可能性があります。
3,職員の離職率
職員の離職率が高い施設は、労働環境が良くなかったり、サービスの質が低いことが考えられます。
もしトラブルが起こったら、どうすれば良い?
ここまで、注意すべき介護施設のポイントをお伝えしてきました。
しかし、どんなに吟味して選んだ介護施設でも、トラブルは発生するものです。
場合によっては、退去を求められる可能性もあります。
せっかく時間や手間をかけて選んだ施設を、離れたくないという人もいますよね。
そこで、ここではトラブルが起こったときにどうすれば良いか、お伝えしていきます。
1,施設に相談する
利用している中で気になる点や些細なことがあれば、現場スタッフなどの施設に相談しましょう。
現場レベルで解決できれば、大きなトラブルへの発展を防ぐことができます。
状況が改善されない場合は、施設や運営会社へ訴えましょう。
2,第三者へ相談する
施設や運営会社に相談しても解決されない場合や、苦情が言いにくい場合もあります。
そんなときは、第三者へ相談するという方法をとりましょう。
気軽に相談できる電話相談もありますし、市区町村の苦情相談窓口もあります。
連絡先は、施設の契約書や重要事項説明書に「苦情相談窓口」と明記されていることが多いので、予め確認しておくとよいでしょう。
3,国保連へ申し立てる
最終手段として「国保連(国民健康保険団体連合会)」へ申し立てましょう。
国保連は、都道府県と市町村、国民健康保険連合組合が運営している法人です。
国保連では介護相談窓口を設置しており、介護保険サービスについての苦情を受け付けています。
市区町村には介護保険施設の指定を取り消す権限があり、国保連は介護サービス事業者に対して調査や指導、助言を行う権限があります。
トラブルの内容や改善状況によっては、住み替えの検討が最善策となる可能性もあるということも、考えておくと良いです。
まとめ
・施設見学お断りの介護施設は、劣悪な環境など他人に見せられない部分があるのかも知れない
・私物を持ち込めない介護施設は、認知症の対応が上手くできない施設であることが多い
・機械浴を自慢する介護施設は、昔ながらの介護のやり方をしている
・施設の運営状態を公表していない施設は、情報公開に消極的であったり、運営状態が悪いことが多い
・トラブルが起こったら、施設に相談する。
・施設に言いにくい場合は、市区町村の苦情相談窓口や国保連の介護相談窓口へ相談する。
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