介護職からケアマネジャーに転身しようと考えているが、仕事内容に対して不安を感じている人は多いのではないでしょうか?
ここでは介護職からケアマネジャーへ転身する際に知っておいた方が良い知識について説明します。
介護支援専門員(ケアマネジャー)になるには
介護職からケアマネジャーになるには、介護福祉士の場合、最短で5年の実務経験が必要です。
ケアマネジャー試験の要件として、
「指定の国家資格にもとづく業務に通算5年以上(かつ900日以上)従事」または「施設などで相談援助業務に通算5年以上(かつ900日以上)従事」している事とされています。
施設などでの相談業務については、老人福祉施設での生活相談員または老人保健施設での支援相談員、障害者施設での計画相談に携わる相談支援専門員などが対象となり、主に社会福祉士などの有資格者が対象となります。
ケアマネジャーの試験は2017年まで法定資格がなくても、実務経験が10年以上あれば試験を受ける事ができましたが、2018年より無資格による受験は出来なくなりました。
受験対象となる指定の国家資格
ケアマネジャーの試験には以下のいずれかの国家資格を保有していることが条件です。
・医師・歯科医師・薬剤師・保健師・助産師・看護師・准看護師 ・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・介護福祉士・社会福祉士 ・精神保健福祉士・視能訓練士・義肢装具士・歯科衛生士 ・あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師 ・柔道整復師・栄養士 |
無資格の介護職からケアマネジャーへ転身するには、3年の実務経験を経て介護福祉士試験に合格し、5年の実務経験後、ケアマネジャーを目指すケースが多いです。
居宅ケアマネジャーと施設ケアマネジャーの違い
ケアマネジャーは居宅介護支援事業所の居宅ケアマネジャーと老人福祉施設や老人保健施設などの施設ケアマネジャーに区分されます。
居宅ケアマネジャーは約35件程度の担当利用者のケアマネジメントを行い、利用者の在宅生活に対する課題を分析し継続した生活が出来るよう、居宅サービスを組み合わせ居宅サービス計画書を作成します。
一方、施設ケアマネジャーは施設規模によりますが、約100件程度の入居者のケアマネジメントを行い施設内で本人らしい生活が継続できるよう施設サービス計画書を作成します。
居宅ケアマネと施設ケアマネでは担当件数の違いはあるものの、ケアマネジメントのプロセスは一緒は一緒なので働き方にあわせて選ぶとよいでしょう。
ケアマネジメントのプロセス
ケアマネジャーは利用者が在宅や施設で自分らしい生活を継続出来るよう支援していくため、次のケアマネジメントの過程を行う必要があります。
ケアマネジメントの流れ
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状況に応じてアセスメントに戻ることがあります。
インテークの注意点
インテークの際、利用者に対して複数のサービス事業所などを紹介し、選択できるようにする必要があります。
サービス事業所の選定理由も説明できるようにしなければなりません。
アセスメントの注意点
アセスメントはケアプランのサービス内容に対して根拠となるよう、23項目の課題分析標準項目について客観的に評価分析する必要があります。
ケアマネジャーの質問力によって利用者の課題の抽出が異なる場合があるため注意が必要です。
ケアプラン作成の注意点
特定事業所加算を算定している居宅介護支援事業所は、ケアプランにインフォーマルサービスの位置づけをしなくてはいけません。
多様な主体などが提供する生活支援として、社会資源の調整や介護保険外のサービスについての知識や情報も必要です。
モニタリングの注意点
ケアプラン作成後、月に一回以上利用者とのモニタリング訪問面談を実施し、結果を記録しなければなりません。
利用者や家族の満足度の確認のほか、新たな課題が発生していないか、サービス状況の聞き取りだけではなく、実際の生活環境から観察することも必要です。
その他、担当者会議の開催やケアプランの交付など、ケアマネジメントが適切に行えていない場合には運営基準減算となってしまうので注意が必要です。
要介護認定と認定調査
ケアマネジャーの業務として、介護認定更新の申請代行や認定調査の委託業務があります。
ケアマネジャーは利用者が切れ目がなく適切にサービスが受けられるよう、介護保険証の確認、必要に応じ、更新に伴う手続きに対して支援しなければなりません。
福祉用具貸与サービスの中には、車椅子や特殊寝台など、要介護2以上でなければ基本使用できないサービスや、要介護3以上が入所要件となる特別養護老人ホームなどがあります。
要介護度によって使えるサービスに制限があるため、利用者の状況に応じ区分変更申請を行うことも必要な業務の一つでしょう。
要介護認定におけるプロセス
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認定調査は市町村職員または市町村から委託を受けた事業者の介護支援専門員が、全国一律の基準と様式を使用し調査を行います。
認定調査項目を理解することで利用者の介護状態を予測し、サービス調整が図れるでしょう。
給付管理・請求業務
ケアマネジャーの業務に給付管理があります。
国保連への請求業務はサービス提供月の翌月10日までに行わなければなりません。
居宅介護支援事業所の請求業務はサービス事業所のサービス提供票の実績を確認し、「給付管理票」と「居宅介護支援介護給付費明細書」を作成します。
給付管理に誤りがあるとサービス提供事業所に支払いが行われなくなるため、細心の注意が必要です。
期間中は通常業務をこなしながらレセプト提出準備をしなければならないため、スケジュール管理にも留意しましょう。
地域包括支援センターとの関わり
居宅介護支援事業や小規模多機能型居宅介護などのケアマネジャーは、予防支援の委託業務に携わることがあります。
予防支援の委託業務に携わる場合、介護予防支援や介護予防ケアマネジメントにより、要支援者などに対し総合事業によるサービス等が適切に提供できるよう、ケアマネジメントしていく必要があります。
地域包括支援センターの主な業務
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地域包括支援センターはさまざまな地域課題に対応できるよう、主任介護支援専門員、社会福祉士、保健師などの3つの専門職がいるため、困難事例を抱えた場合でも助言や情報提供をしてもらえるので、積極的に関わっていくとよいでしょう。
業務で役立つ資格
ケアマネジャーはケアマネジメントや各種の介護申請以外に各種書類の作成などにも対応しなければなりません。
介護請求業務や認知症の方の権利擁護、高齢者虐待など地域の問題などにも多岐にわたるため
業務に役立つ資格を活用してみましょう。
業務で役立つ資格は以下のようなものがあります。
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介護事務管理士
介護保険施設や居宅介護支援事業所などで介護サービスにかかる費用の請求や、ケアマネジャーの補助的な事務をする専門職です。
介護報酬明細書などの作成業務に対する知識や過誤請求対応などのトラブルを防ぐことができます。
福祉用具専門相談員
福祉用具専門員は利用者の心身の状況、希望や置かれている環境などに応じ、専門的な知識にもとづき福祉用具の選定や使用についての助言、福祉用具の機能、安全性、衛生状態などについての点検・調整を行います。
福祉用具貸与サービスや特定福祉用具購入をプランニングする際に活用できる資格の一つです。
福祉住環境コーディネーター
高齢者や障がい者などに配慮した住宅の改修や生活環境のあり方について提案したり、住宅改修のプランニングなどを行います。
介護保険の住宅改修の「住宅改修が必要な理由書」の作成に対しての知識を学ぶことができます。
認知症介護実践者研修
認知症介護実践者研修では、認知症介護について深く学ぶことができます。
グループホームや小規模多機能型居宅介護で働くケアマネジャーや計画作成担当者などは、認知症介護実践者研修の修了者を配置する義務があります。
2021年4月からは無資格で働く介護職は認知症介護基礎研修の受講が義務化されたこともあり、認知症ケアについての知識についてはさらに必要となってくるでしょう。
社会福祉士
社会福祉士は高齢者や身体障がい者、知的障がい者、児童など援護を必要とする人や、その家族に対し相談や助言、指導、援助を行います。
地域包括支援センターの必須専門職の一つであるとともに、地域福祉のコーディネーターとしての役割や権利擁護など、利用者を取り巻く社会問題の解決に対する知識やネットワークを構築する資格であり、ケアマネジャーの業務でも役立つ資格の一つです。
まとめ
介護職からケアマネジャーになる場合、最短でも介護福祉士で5年の経験年数が必要です。
ケアマネジメントは、一定のプロセスを遵守する必要があり、適切なプロセスを行わないと基準違反となってしまいます。
居宅介護支援事業所で働くケアマネジャーは、さまざまな居宅サービス事業所のサービスについての理解も必要です。
しかし、利用者の望む生活を支援するため、介護職の経験をいかし、障がい者自立支援や医療保険サービス、地域のインフォーマルなサービスなどを、活用できるケアマネジャーを目指してみてはどうでしょうか。
最後までお読みいただきましてありがとうございました。