家族に介護が必要な状況となり、「初めて認定調査を受けることになった」という方は、何が必要か分からず不安でいっぱいではないでしょうか。
認定調査は介護者と要介護者にとって非常に大切なものです。
今回は認定調査を受けるにあたって、必要なものや当日スムーズに行えるように事前に準備しておくと良いものをご紹介します。
「認定調査」について
では認定調査とはどのようなものなのかを解説します。
認定調査とは?
認定調査とは要介護申請後に申請を受けた市区町村が訪問員を派遣し、要介護者がどの程度自立しているのかを調査することです。
認定調査の聞き取り先は本人と立ち会っている家族や施設の方になります。
これは要介護認定を受けるには必ず必要なことで、デイサービスやヘルパーなどの介護サービスを利用したい方にとって認定調査は必須です。
認定調査を受けるためには?
認定調査を受ける前に、まず市区町村へ要介護認定の申請を行うことが必要です。
要介護認定に必要なものは以下の通りです。
・申請書(市区町村の窓口またはホームページよりダウンロード可能です) ・マイナンバーカードまたは通知書 ・介護保険被保険者証(65歳以上) ・健康保険被保険者証(64歳以下) |
ただし、各市町村によって必要なものが異なる場合があるので、事前に役所のホームページなどで確認しておくようにしましょう。
また、かかりつけ医がいる方はその診察券も用意しておくようにしてください。
また認定調査と並行して、市区町村から要介護者のかかりつけ医に「主治医の意見書」を作成するように申し入れがあります。
主治医の意見書とは要介護者の既往歴など、介護するにあたって重要な情報が記載されている大切な書類のことです。
市区町村からかかりつけ医へ依頼されますが、事前に病院へ相談しておくとスムーズですので可能であれば前もって打診しておきましょう。
かかりつけ医がいない要介護者は市区町村が指定した医師を受診することになります。
認定調査の内容とは?
認定調査の所要時間は30分~1時間程度で、74項目を対象に要介護者の普段の様子や困りごとについて調査します。
74項目の調査内容は以下の5つの分野に分かれます。
①身体機能、起居動作・・・立位、座位が保てるか、麻痺があるかどうかなど ②生活機能・・・食事や入浴、排泄が可能かなど ③認知機能・・・生年月日や短期記憶、意思の伝達が可能かなど ④精神、行動障害・・・被害的な思考ではないか、情緒が安定しているかなど ⑤社会への適応・・・簡単な調理が可能か、薬や金銭の管理が可能かなど |
これは一部を抜粋したもので全てではありません。
実際の調査はさらに詳細な内容になります。
「認定調査」を受ける前に準備しておくことは?
74項目と聞くと、不安を感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
その不安から認定調査が終わった後に言い残しや聞き残しがないようにすることが大切です。
当日スムーズに進むように5つのポイントに分けて、事前に準備しておくと良いことをお話します。
①普段の様子を理解しておく
どんな時に介護のサポートが必要だと感じたのかということです。
食事なのか入浴なのか、外出先でなのか都度メモをしておいてください。
徘徊や会話の受け答えが以前と違うと感じた介護者は、動画や写真に残すのも良いでしょう。
特に介護度が低い場合は、初対面の調査員にとってどの程度介護が必要だと理解するのは難しいです。
麻痺があったり、不穏であったり明らかに介護が必要な方であれば、分かりやすいのですが、明るく出迎え、自分で歩行ができている様子を見ると「しっかりしている」という第一印象を受けます。
調査の短い時間の中で、症状が出るとは限りません。
ですので普段の様子をありのまま伝えることはとても大切です。
②介護者の困りごとを確認しておく
普段の様子を踏まえ、介護者がどんなことで困っているのかを調査員に伝えましょう。
勿論調査対象となるのは要介護者ですが、介護者がどのようなことで困っているのかを伝えることも大切です。
また介護者である家族の住まいが遠方であったり、自身にも体調に問題があったりと介護をすることが難しい方もいます。
介護者の置かれている状況も併せて説明しましょう。
③認定調査の項目を把握しておく
74項目を記憶する必要はありませんが、当日回答に困らないために調査項目に目を通しておきましょう。
普段の生活で意識していなかったことや、調査項目を見ることで思い出す困りごともあるかもしれません。
④要介護者に聞かれたくないことはメモで伝える
例えば認知機能の低下により介護が必要だと介護者が判断していた場合、「認知症の可能性がある」と心配していることを要介護者の耳に入れたくない方も多いです。
困っている事実を伝えたくても、要介護者の前で初対面の調査員にありのままを伝えることに抵抗を感じる介護者もいるでしょう。
その時は要介護者から少し離れた場所で会話したり、メモを使って伝えてみたりしましょう。
⑤病気や怪我なども伝え漏れがないようにする
主治医の意見書があってもそこに全ての既往歴が記載されているとは限りません。
また長年のかかりつけ医が作成した場合ではなく、市区町村が指定した病院で主治医を作成した場合は漏れがある可能性もあります。
些細なことでも良いのでしっかりと伝えましょう。
「認定調査」で気をつけたいこと
認定調査で決定される介護度はとても重要です。
介護度によって受けることができる介護サービスに制限があったり、介護保険を利用できる額も変わってきます。
調査員に適切な判断をしてもらえず実際の介護度より低く判定されてしまった場合、介護者にとっては大きな負担となりかねませんので注意が必要です。
ここでは特に気をつけたい点を2つご紹介します。
①認定調査にはなるべく立ち合いましょう
すでに入所をしていて施設で認定調査を受ける場合はそこの施設職員が立ち合うことが多いですが、自宅で受ける場合は要介護者本人1人で受けることができます。
遠方であったり、やむを得ない都合でどうしても難しい場合を除き、認定調査には必ず立ち合ってください。
認定調査に立ち会う人数に制限は基本的にありません。
様々な目線から調査員に現状を伝えましょう。
立ち合いが必要な理由を例として挙げると、初対面の方やお客さんを前にすると普段よりハキハキと話すことができたり、調子が良くなったりするという話を耳にしたことはありませんでしょうか?
また歩行にふらつきのある方が認定調査の際にしっかり歩いてまるで別人のようになるなどは聞いたことがありますよね。
調査員に「何でもできる方だ」と判断されてしまうことを避けるために、本人1人だけで認定調査を受けることはなるべく避けましょう。
また先ほど話した通り、介護者や家族の立場から困っていることを伝える必要もあります。
②「認定調査」について要介護者にどのように伝えるか
後期高齢者であったり、自覚症状が強くある方は「介護サービスを日常に取り入れよう」と言われても抵抗なく受け入れられるかもしれません。
しかしまだ60代、70代で周りに介護を受けている人が少ない年齢の方や、自覚症状のない方はいきなり「介護」と言われると受け入れ難いものです。
そのような方に「介護サービスを使ってほしいから認定調査を受けよう」と伝えるとどうでしょうか。
調査員が訪問しても普段の姿で認定調査が受けられなかったり、頑張ってしまったり、そもそも認定調査を受けてくれない可能性もあります。
ですので「認定調査を受けよう」ではなく、「市から健康調査のために調査員が来る」というような直接的な表現を避けて要介護者の自尊心を傷つけないように配慮しましょう。
このような表現を要介護者にすることで、嘘をついているような感覚になり罪悪感のある方もいます。
そのような場合は要介護者と向き合い、介護者自身が困っていることや協力してほしいことを本人に伝えてみましょう。
気持ちが上手く伝われば要介護者、介護者両者ともに積極的に認定調査を受けることができます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
初めての認定調査で分からないことも多く緊張してしまいますが、要介護者本人がなるべく普段通りの様子でいることが一番大切です。
適切な判断をしてもらえるように立ち会う方はサポートに努めましょう。
・要介護認定を受けるために認定調査は必須で、申請した市区町村から調査員が訪問する。 ・かかりつけ医がいる方は事前に打診しておくと主治医の意見書をスムーズに作成できる。 ・認定調査では74項目の質問をされて、およそ30分~1時間の時間を要する。 ・要介護者の普段の様子を理解しておき、メモや動画などに残すことが良い。 ・介護者の立場から困っていることをメモしておく。 ・認定調査の当日に焦りがないように調査項目には目を通しておく。 ・要介護者に聞かれたくないが、調査員に伝えたいことはメモに書いて渡す。 ・主治医の意見書だけでは不十分な場合もあるので、既往歴や身体で心配のある部分は伝える。 ・要介護者1人だけで認定調査を受けることも可能だが、普段と違う振る舞いをしてしまう恐れもあるので可能な限り調査には立ち会う。 ・「介護」というワードから認定調査に構えてしまう要介護者には直接的な表現は避ける。 |
最後までお読みいただきありがとうございます。