この記事では、介護を「作業」としてこなす人と、「ケア」として向き合う人の違いについて紹介します。
またお互い協力して仕事ができる方法についてもお伝えします。
介護を「作業」としてこなす人の特徴
1,「速さ」「効率」を重視している
介護を「作業」としてこなしている人は、何よりも「速さ」「効率」を重視しています。
その為、想定外のことが起こったり、声かけに拒否があっても、無理矢理にでも連れて行こうとし、業務時間内に介助を終わらせようとします。
この考え方は、在宅よりも施設、特に多床室のような従来型特養で働いている人に多いです。
従来型特養は、何十人ものケアを時間内で終わらせなければなりません。
その為「速く終わらせること」を求められた結果、「速く、効率的に終わらせることが最優先」という思考回路になってしまうのです。
2,ケアの理由について考えていない
施設内で行う介護(ケア)は、ケアプランに基づいて行われています。
それは、「なぜそのケアがその人にとって必要なのか」という、根拠あり、それを基にケアを行う必要があるからです。
しかし介護を「作業」としてこなしている人の場合、根拠についてあまり考えていません。
「そう決まっているから」と、疑問を持ったり改善しようとせず、自分の業務をこなすことを最優先事項としているのです。
介護を「ケア」として向き合う人の特徴
1,入居者や利用者の気持ちを重視している
介護を「ケア」として向き合っている人は、入居者や利用者の気持ちを重視し
1人1人丁寧に向き合っています。
例えば入浴の声かけをして嫌がったとき、「今は無理に行ってもダメだから、時間を置いて声をかけてみよう」と考え方を変えることができます。
また入居者や利用者の気持ちに向き合って対応しているので、不穏な人でもその人が対応すると、落ち着くことが多いです。
2,ケアを行う根拠を把握している
ケアとして向き合っている人は、ケアプランの内容を把握し、「なぜこのケアを行うのか」という根拠を明確に説明することができる人が多いです。
根拠を知っていることで、新人職員などに教えるときに分かりやすく説明することができます。
また「ケア」として向き合っている人は、入居者や利用者の状態は日々変化しているということを知っています。
なので「ケアプランではこのようなケアを行うとあるけれど、今のこの人には、適応しているのか」と疑問を持ち、改善点を他職種に提案することができるのです。
どちらが正しいとは言えない
上記にて介護を「作業」としてこなす人と、「ケア」として向き合っている人の特徴についてお伝えしてきました。
ここまでだと「仕事としては、ケアとして向き合っている人の方が良いのではないか?」と思いがちです。
しかし実際は、「どちらが正しい」とは、一概には言えないのです。
というのも、介護業務というのは、限られた時間内と人数で業務を回さなければなりません。
その中で、入居者や利用者1人1人に丁寧に向き合っていたら、業務時間内に仕事が終わらなくなってしまいます。
それは、他の職員に迷惑がかかってしまうことになります。
そのため、ある程度「作業」としてこなすことも、必要なことなのです。
両者が協力するために
ここでは、介護を「作業」としてこなす人と、「ケア」として向き合う人が、お互い協力する為に、何をすると良いのかお伝えしていきます。
①お互いを知る
両者が協力するためにまず必要なことは、「お互いを知る」ことです。
具体的には
・日々どのように介護業務を行っているか ・どのような価値観や考え方を持って行っているのか ・他の職員の業務に支障が出ていないか |
ということが挙げられます。
特に最後の「他の職員の業務に支障が出ていないか」という点を忘れないでおきましょう。
支障が出ていなければ、お互い考え方や価値観を変えず、現状維持するという方法もあります。
人の価値観というのは、簡単に変えることができません。
なので、無理に考え方を変えようとすると、かえって関係性が悪化してしまい、施設全体が悪くなってしまう可能性があります。
②問題について共有する
お互いについて知ることができたら、次は「今施設の中で問題になっていることは何か」を、共有しましょう。
例えば「ナースコールで頻回に呼ぶ利用者がいて、業務が進まない」という問題が挙げられたとします。
介護を「作業」としてこなす人であれば、
「頻回に呼ばれて、業務が進まない」
という点に着目します。
しかし「ケア」として向き合っている人の場合、
「なぜ呼ぶのだろうか」
「寂しいからなのか、何か訴えがあるからなのか」
と、疑問を持ちます。
このように同じ問題でも、着目点が異なるのです。
③お互いの価値観を用いて、意見を聴く
上記のような問題が発生した場合、お互いの価値観を用いて意見を提案しましょう。
介護を「作業」としてこなす人であれば
「業務が進まないから、ナースコールは無視する」
「何回も呼ばないで欲しい」と、注意する
という意見が出てきがちです。
一見すると「介護職としてどうなのか」と思いがちです。
しかし利用者の中には、用もないのに何回も呼ぶ人もいます。
なので時には、注意するということも必要なのです。
一方「ケア」として向き合う人の場合
「日中居室に籠もりがちですることがないので、呼ぶのではないか」
「何か役割を持たせると良いのではないか」
と、疑問や改善点を思い浮かべます。
重要なのは「お互い、相手の意見に最初から否定しない」ことです。
自分にとって意にそぐわない意見だとしても、その人にとっては
「明確な理由があって」話をしています。
「そういう考え方もありますね」と、相手に伝えることで、相手もこちら側の意見を受け入れやすくなります。
④試行錯誤してみる
お互いの立場で意見が出てきたら、実際にやってみましょう。
上記の「ナースコールが頻回な人の対応」については
・役割を持たせて、不安な気持ちを軽減させる ・夜ナースコールが頻回な場合は、日中活動の時間を増やす ・看護師や相談員、ご家族様にも相談し、精神科に受診し、薬を処方してもらう ・それでも頻回な場合は、理由を伝えて「何回も呼ばないで欲しい」と言う |
といった方法を実践してみましょう。
しかし、1回で成功するとは限りません。
何回も行い、どれがその人にとって1番良い方法なのか、実践してみましょう。
試行錯誤していく中で、「作業」としてこなす人、「ケア」として向き合う人それぞれの価値観が共有されるようになり、結束し、協調して仕事に取り組めるようになります。
試行錯誤した結果、ナースコールが減れば、介護職員の負担が軽減されるだけでなく、利用者本人も不安が減り、施設での生活を快適に送れるようになります。
介護の仕事は、試行錯誤
介護業務、特に施設内のケアというのは、日々同じことの繰り返しに見えるので、単純労働でルーチンの業務だと思いがちです。
しかし上記でも挙げましたが、入居者や利用者の状態は日々変化していくので、臨機応変な対応が求められます。
また医療のように「治癒」という明確なゴールが設定しづらいので、介護職だけでなく、ケアを受ける本人や、他の職種と一緒に、ケアを考え続ける必要があります。
これからのケアは、お互いの価値観ややり方を理解し、「どうすればより良くなれるか」を考え続けることが、求められるのです。
まとめ
ここまで介護を作業としてこなす人、「ケア」として向き合う人の違いについて解説してきました。
介護を「作業」としてこなす人の特徴は、「速さ」「効率」を重視している ・「ケア」として向き合う人の特徴は、ケアを行う根拠を理解しながら ・限られた時間と人数で業務を回さなければいけない以上 ・両者が協力するためには、お互いの価値観ややり方を理解した上で |
最後までお読みいただきましてありがとうございます。